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Musin による3次元 Kissing Number の決定について

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Musin による3次元 Kissing Number の決定について
Musinによる3次元Kissing Numberの決定について
教育内容・方法開発専攻
認識形成系教育コース
自然系分野(数学)
M 1 1 1 4 9 G
井 口 景 視
論文のテーマと背景
η次元ユークリッド空間Rnにおいて,互
いに重ならないように1つの球に接すること
のできる(その球と)同じ半径の球の最大個数
をη次元のkissing numberといい為(η)と表
す.このん(η)を求める問題をKissingNumber
Prob1emという.
た(3)≧12であることは,実験すれば容易に
わかる.ん(3)=12であるか,κ(3):13で
あるかは,1694年のIsaac NewtonとDavid
Gregoryの論争に遡るといわれているが,事の
真偽は定かでない.ん(3)=12の最初の証明
は,1953年にSch廿tteとvan der Waerdenに
でRnの球面座標,§113ではLegendre多項式
について,説明する.
2章では,3次元Kissing Numberん(3)が12
であることを,Musinの方法で導く.ん(3)≧
12はよく知られた事実であるが,為(3)〈13
を示す部分が難しい.MusinはLegendre多項
式局(4≧O)の非負係数一次結合として表さ
れる9次多項式∫(t)を巧妙に選び,単位球面
82土の有限集合X={”1,、、.,”n}に対して,
吻,”ゴの球面距離をφ力として,
η
8(X)一Σ∫(…φ1ゴ),
{,5=1
よって得られた1次いで,1956年にLeechに
と定め,Legendre多項式局の加法定理を用
よる,短く難解な証明が発表されている.1979
いて不等式
年には,A,M.Od1yzkoとN.J.A.S1oaneに
より,De1sarteの方法を用いたん(8):240,
n
Σ片(…φ11)≧O
ん(24)=196560,およびん(4)≦25の証明
{,ゴ:1
が得られる.そして,遂に,2003年,O.Musin
を示し,それより3(X)≧η2を導いた、この
はDe1sarteの方法を拡張してん(4)=24の
論文では,Legendre多項式の加法定理ではな
証明に成功するが,証明の詳細は,2008年の
く,より一般なGegenbauer多項式の加法公式
論文発表を待つことになる.2006年,Musin
はκ(4)=24の証明方法を3次元に適用し,
を用いて上の不等式を導く.
§2.2では,原点を中心とする単位球面32に,
ん(3)=12の新しい証明を与えた.本論文で
互いに交わることなく接する単位球面の接点
は,このMusinの新しい証明について考察す
のなす集合Xに対して,8(X)〈13ηが成り
る.なお,現在1,2,3,4,8,24次元のkissing
立つことを示す.8(X)≧η2に注意すれば,
numberのみが確定している.
直ちにん(3)=12が得られる.8(X)<13n
を示すために
論文の構成
η
1章では,後章で必要となる用語や定理につ
ゴ=1
いて説明する.§1.1で球面上の余弦定理,§1.2
昂(X)一Σ∫(…φ11)
とおき,さらに,∫(cosφ{ゴ)>Oの部分の和
§3.3では,まず,Harm(5帆一1)の2元ψ,ψ
に対して,内積(,)を
叩)一Σ∫(…φ11)
(ψ,ψ)r、土1一ム.、舳/)・/
ゴ
を取り出す、 η(X)<13を導くために,
∫(cosφ{ゴ)〉0となるような点吻と,吻の対
と定義する1ただし,13例■11は3n11の面積,
極点eOからできる点配置eO,μ1,...,μmを考察
dξは積分要素である.次に,Gaussの公式
し,m≦4を示す1㎜=3の場合は蜘,吻,μ3
ん・舳一ム.1/}/
が球面正三角形の頂点であること,m=4の
場合もV1,吻,g3,リ4が等辺な球面四角形の頂
点であることを利用して,刀(X)〈13を導く.
を示し,それを用いて,直和分解
3章では,調和多項式の基本事項,Gaussの
H趾m(3n一’)一㊥H・・叫(3n−1)
公式などをを説明した後,Gegenbauer多項式
{≧O
の加法公式を証明する.また,2章のん(3)=12
の証明で用いだしegendre多項式に関する不等
式を証明する.
§3.1では,ラプラシアン△,グラディエン
ト▽などを定義し,R上のη変数多項式環
P(Rη)の線形変換△の核Harm(Rn)に含ま
が直交分解であることを導く.
§3.4では,直交群0(R几)のHarmゼ(5η一1)
への作用について考察する.σ∈0(Rn),g∈
Harm4(8帆一1)に対して
(σオψ)(ξ)=ψ(ξσ)(ξ∈8n−1)
れる多項式として,調和多項式を定義する.ま
た,ゼ次斉次多項式のなす空間Ho叫(Rn)が
と定めると,σヰψ∈Harm乏(8n−1)となり,σ→
σ‡は0(Rη)から直交群0(Harm老(3帆Il))へ
・…側㊦…㊥(・2)[ξ]・・mゼ.。【ξ](・几)
と直和分解されることを示す.
§3.2では,Rn上の多項式関数を原点を中
心とする単位球面8卜1に制限して得られる,
5η■1土の多項式関数が,調和多項式を制限し
て得られるものに一致することを示す.さら
に,多項式関数の間の環準同型
の群準同型となる.0(1Rη一1)によって固定さ
れるHarm4(3η一1)の多項式を帯球関数と呼び,
その全体をZ4(3帆一ユ)と表す、Harm4(5肌一ユ)
の正規直交基物を選び,3帆一1×8m■1土の
関数
w
F(ξ,η)一Σψ1(ξ)舳)(ξ,η∈3帆一’)
{三1
ρ:P(Rn)→P(8η■1)
を定義し,その性質を利用して,η≧2の
とき,Zゼ(3作1)が1次元であることを示す一
から誘導される線形写像
ρ:H・㎜(Rn)→P(8n■1)
が線形同型であることを示す.これより,直和
分解
Z4(3n−1)に含まれる多項式からGegenbauer
多項式Q,帆(t)を定義し,加法公式
G乏,几(/ξ,η/)=F(ξ,η)
を証明する.最後に,Legendre多項式につい
P(8性■1)一㊥H・・ml(3η’1)
ての不等式を導く.
ゼ≧O
主任指導教員 松山 廣
が導かれる.
指導教員松山 廣
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