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消化器系の機能と働き[ PDF: 2.8MB]

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消化器系の機能と働き[ PDF: 2.8MB]
平成22年度 特別養護老人ホームにおける看護職員と
介護職員によるケア連携共同のための研修事業
消化器系の機能と働き
特定医療法人杏林会
鴻江病院 理事長
鴻江 和洋
1
今回の研修の目的

胃瘻の処置の介護職との連携
 安全な胃瘻の処置
 危険に対する認識を共有化
 そのためには職員全員がそのことを知っておく
必要がある
 特に介護職への教育が皆さんに任せられている
本日のメニュー
消化器系のしくみと働き
消化器の機能
口腔
上部・下部消化管
肝臓・胆嚢・膵臓
嚥下と嚥下障害と誤嚥
経管栄養が必要となる状態と疾病
経腸栄養法の種類
胃瘻の種類と造設法
胃瘻の処置
胃瘻のトラブル
経腸栄養剤
嚥下職
異常の察知
3
ポイント
嚥下障害の理解
誤嚥の状態像の理解
胃瘻の処置とトラブルの理解
異常の察知能力
4
消化器の機能(⼝腔)
咀嚼
唾液との混合
炭⽔化物の分解
5
消化器の機能(胃・⼗⼆指腸)
• 胃
– 蛋⽩の分解
• (ペプシン・塩酸)
– 混合
• ⼗⼆指腸
– 脂肪・蛋⽩の分解
• (胆汁・膵液)
6
消化器の機能(肝・膵)
• 肝臓
– 代謝(再合成)・貯蔵
– 解毒
– 胆汁⽣成
• 膵臓
– 脂肪分解(リパーゼ)
– 蛋⽩分解(トリプシン)
– 炭⽔化物(アミラーゼ)
– インシュリン分泌
– グルカゴン分泌
マルターぜ)
7
• 十二指腸
– 胆汁と膵液
の混合
• 小腸
– 消化・吸収
– 腸液の分泌
– 免疫応答
8
• 大腸
– 水分・電解質の
吸収
– 便の形成・蓄積
– 排便
9
なぜ経管栄養
経口摂取不能
各種嚥下障害→肺炎・窒息
全身衰弱→栄養不良
認知症・うつ病→食べ方を忘れる
意識障害
消化器の器質的狭窄
消化器の機能的低下
10
嚥下
⾷物を認識して⼝に取り込むこ
とに始まり、胃に⾄るまでの⼀
連の過程
先⾏期・準備期・
⼝腔期・咽頭期・⾷道期
11
嚥下器官の仕組み
12
①先行期
飲食物の形や量、
質を認識する
13
②準備期
飲食物を噛み砕き、
飲み込みやすい形状にする
14
③口腔期
飲食物を口(口腔)
から喉(咽頭)に
送り込む
15
④咽頭期
飲食物を咽頭から
食道へ送り込む
“ごっくん”が起こる時期
16
⑤食道期
飲食物を食道から
胃へ送り込む
17
食物の流れ
18
嚥下造影(VF)
正常嚥下
19
誤嚥
VFのビデオ参照
20
誤嚥
21
内視鏡(口から十二指腸)
22
経鼻胃管挿入
23
胃への空気注入
24
嚥下障害の症状
・食事中、食後のムセ
・痰
・飲み込んだ後に痰がらみのある声に
なる
・喉に食物が残っているような違和感
がある
・発熱
・食べ物の好みが変わる
・食事をするのが疲れる.時間の延長
25
嚥下障害をきたす疾患
脳血管障害
球麻痺・仮性球麻痺・多発脳梗塞等
神経難病
ALS・パーキンソン病等
認知症・うつ病
薬剤の副作用
頭頚部の悪性疾患
加齢
その他
26
⾼齢者の嚥下障害
加齢に伴うもの
口腔内の唾液の減少
歯の脱落
嚥下に関与する筋力減退
嚥下反射の遅延
その他
窒息・脱水・低栄養・誤嚥性肺炎
致命的
27
経腸栄養法の種類
経腸栄養
Enteral nutrition
経腸栄養法
経口栄養法
経鼻栄養
経瘻孔法
食道瘻
胃瘻
腸瘻
28
経管栄養の各種特徴
特徴
経鼻胃管 挿入・抜去が簡単
不快感あり
先端位置の確認が難
胃瘻
(PEG)
不快感がない
局所麻酔で造設可
長期設置が可
先端確認の必要なし
適応
嚥下障害
術後の一時的栄養管理
嚥下障害
長期の栄養管理
栄養補助
29
各種経管栄養の特徴
特徴
食道瘻 挿入がやや複雑
(PTEG) 胃切後でも可
取り扱いがやや複雑
腸瘻
腹壁切開が必要
術後の栄養路多
閉塞しやすい
長期は難
管理がやや難
適応
嚥下障害
胃切後
腹水存在でも可
嚥下障害
術後の一時的栄養管理
逆流性誤嚥時
30
PTEG(経皮経食道胃管)
食道にバルーン
を挿入し
同部に頚部より
穿刺
ガイドワイアー
に沿わせてダイ
レーターで拡張
胃管挿入
31
PTEG挿入後
32
空腸瘻
33
胃瘻
34
適したカテーテルを
35
胃瘻カテーテルの種類
36
●胃瘻カテーテルの比較
チューブとボタン
チューブ
接続が簡単
チューブ内が不
潔
チューブが邪魔
自抜の可能性
ボタン
接続が煩雑
チューブ内衛生的
体表すっきりリハ
に有利
逆流防止弁
37
●胃瘻カテーテルの比較
バンパーとバルーン
バンパー
自抜されにくい
交換時期が長い
3~6~12か
月
交換がやや難
水の入れ替えが
不要
バルーン
自抜されやすい
交換時期が短い
1~3カ月
交換が簡単
バルーン内の蒸
留水の入れ替え
が必要
38
バルーンタイプ
交換が簡単は、抜けやすいということ
バンパー
ボタン
※注水孔バルブがある
39
ボタン型の特徴
メーカー純正の規格に合った接続
チューブが必要
●先端が直角に曲
がった持続投与用(A)、
●まっすぐのボーラス
(手押し)投与用(B)、
●減圧用(C)
(B)
(C)
(A)
接続チューブをつけて、
やっと一人前
40
古くなったチューブ
41
胃瘻の造設手技
PULL/PUSH法
簡便で短時間ででき安全。しかし
感染あり30%
イントロデューサー法
感染が無いのがメリット・やや出
血が多い。
源法・・チューブ径が小さい・バルー
ンタイプだけ
ダイレクト法。セルジンガー法・・
チューブ径が大きい。バンパータイプ
も可
42
胃瘻の造設
43
胃瘻の交換
44
胃瘻のトラブル
自己抜去
気分不良
漏れ
瘻孔表皮の糜爛・潰瘍
スキントラブル
閉塞
感染
嘔吐・下痢
その他
45
自己抜去
抜去を発見時すぐにチューブを挿
入(清潔な尿道フォーレが最適)
自然抜去はほとんどバルーンタイプ
毎日バルーンの蒸留水を確認
瘻孔閉鎖を防ぐのが大事
抜去後必ず医師に連絡
46
バルーンの蒸留水の確認
47
交換時のトラブル
48
事故抜去
オムツ交換・入浴介護時
カテーテル刺入時部の位置に注意
ベッドからの移乗
カテーテルを服の中にしまう
49
気分不良
頻呼吸・頻脈
発熱
心不全
呼吸不全
対応:投与速度の調節
冷汗
投与中止
50
瘻孔からの漏れ
これが一番厄介
体位の検討
右側臥位
なるべく頭部挙上を
チューブの回転確認
遊びが必要・締め過ぎない
投与速度の検討
胃内ガスの吸引
スキントラブルの防止
その他
51
スキントラブル
肉芽の形成
発赤糜爛
52
スキントラブルの予防
毎日の洗浄
水道水でOK
石鹸は弱酸性
消毒不要
チューブを締め過ぎない
回転を確認
羽根の方向を移動
53
閉塞・感染
ほとんどが薬剤
漢方薬
カマグ、その他
の粉薬
粉砕・非可溶性
薬剤
ぬるま湯を大き
めの注射器で
ゆっくり注入
簡易懸濁法で薬
注入
チューブタイプ
は流動食投与後
白湯を十分流し
その後酢水を充
填
汚れがひどく
なったらチュー
ブ交換
調整後は長く放
置しない
54
その他
胃瘻でも口腔ケアは必要
入浴はそのまま可能
器具はカテーテルの機能に合っ
たものを使用
会社によってチューブが異なる
メディコン・シャーウッド・ボス
トン・クリエートメディック・
トップ・オリンパス
55
胃食道逆流(GER)
誤嚥性肺炎の大きな原因
症状
胸やけ・胸痛
原因
食道裂孔ヘルニア
噴門括約筋の劣化
経鼻経管栄養チューブの留置
意識障害
胃の手術
胃の運動不全(手術・鎮静剤・ドーパミ
ン等)
腸閉塞等の通過障害
56
嘔吐
通過障害
器質的
機能的
薬剤
感染・発熱
その他
投与速度が速すぎる
その他
57
下痢
ほとんどが投与速度の速すぎ
投与速度を統一
体位によって投与速度が変化
その他流動食の浸透圧高
流動食の種類の検討
感染
できるだけ閉鎖式を使用
消毒をまめに
長時間放置しない
温度
その他
58
便秘
原因は個体側にあることが多い
器質性・機能性
経腸栄養剤の検討
繊維を多く含むものを
水分不足
薬剤(抗コリン剤・向精神薬
等)
59
経腸栄養剤の比較
組成
成分栄養剤※
エレンタール
消化態経腸栄養剤腸※
ツウィンライン
エンテルード
半消化態経腸栄養剤
濃厚流動食
窒素源
アミノ酸
アミノ酸・ペプチド
蛋白質
蛋白質
糖質
デキストリン
デキストリン
デキストリン
デンプン
脂質
極めて少ない
やや少ない
やや少ない
多い
繊維成分
—
—
±
±
味・香り
不良
不良
比較的良好
比較的良好
消化
一部不要
一部不要
必要
必要
残渣
極めて少ない
極めて少ない
あり
あり
浸透圧
高い
高い
比較的低い
低い
※医薬品で医師の処方が必要
60
病態に応じた経腸栄養剤
糖尿病→インスロー等
肝不全→アミノレバンEN等
腎不全→リーナレン等
呼吸不全→プルモケア等
※いずれも医薬品で医師の処方が必要
61
嚥下食ピラミッド
62
誤嚥しやすい食品
形がかわりにくい 喉に残りやすい
むせやすい
誤嚥しやすい
液体と固体が
混在するもの
口の中で水分と
繊維の多いもの 粘りのあるもの さらさらした液体
噛み切れないもの パサパサしたもの 酸味の強いもの 固形に分かれるもの
ごぼう たけのこ
たこ イカ
餅 団子
カステラ パン
お茶 水
梅干 レモン
高野豆腐
お茶漬け
63
飲み込みにくい食べ物
サラサラした液体
バラバラになる物
にゃく
パサパサした物
ベトベトした物
硬い物
れんこん
酸っぱい物
例)水、お茶、汁物
例)かまぼこ、こん
例)パン、高野豆腐
例)餅、だんご
例)たこ、ごぼう、
例)酢の物、柑橘類
64
食べやすくする工夫
水分にはトロミをつける
野菜は生ではなく、煮物にする
パサパサしたものにはあんかけをか
ける
ご飯はお粥もしくは柔らかく炊く
重度の嚥下障害の場合は、ミキサー
にかけ、ピューレ状かゼリー状にす
る
65
今回の実施ガイドラインについて
ガイドラインはよく検討されている
バンパータイプはチューブが胃内にあるか否かの確
認は不要。ただしバルーンタイプは蒸留水を必ず
チェック。
余り難しく考えると施設側が受け入れ拒否に走る可
能性あり
基本的に胃瘻は食事介助よりも安全
経鼻胃管の管理は介護職には無理。ただし準備は
可能
異常の発見をたたきこむ
バイタルサインの取り方を徹底的に訓練を(胃瘻の
処置だけの問題ではない。すべてに通じる)
今後胃瘻の造設基準を検討する必要あり(医療機関サ
イド)
66
まとめ
嚥下障害と誤嚥の理解
胃瘻カテーテルには4種類あり
胃瘻のトラブル
自己抜去・漏れ・スキントラブ
ル・下痢・嘔吐。etc.
経腸栄養剤にも多種類あり
異常の発見能力向上
67
※時間があれば追加
人の一生を考える
どこからが人の始まりでどこまで
が人の最期か不明な時代
科学技術の進歩が生み出した現代
の大きな問題
どこからが人の始まり
か?
DNA?
受精卵?・・・人工授精etc.
一つの細胞?・・・iPS細胞・胚細胞・幹
細胞etc.
赤ちゃん?・・・代理出産etc.
人の死の移り変わり
50年前の人の死はどうだったか?
床の間に蒲団がしいてあり、そこでじい
ちゃん・ばあちゃんが静かに息を引き取り、
医者が来て最期を確認してくれた。(おく
りびとの世界)
現代は病院であるいは施設で酸素・点滴を
しながら亡くなることが多い。
どこまでが人間の生命か?
昔は食べられなくなったらそこまで
が人間の生命と考えられていて自宅
で静かに亡くなった。
現在は医療技術の進歩で食べられな
くてもいろんな延命の方法あり。
心臓が動かなくても・腎臓が働かな
くても・呼吸ができなくても生きる
ことが可能な時代となった。
幸せな最期とは?
20数年の老人医療の経験を通して
はたして何人の方に幸せな最期を過ご
していただけたか疑問。
人の最期のパターン
人の死にはいろんな形がある
加齢による自然死
事故による死
病気による死(がん・難病・その他)
人の終末期のいろいろ
① 急に心肺停止状態になり植物状
態になった時(救急現場におけ
る終末期)
② がんの末期
③ 神経難病が進行し呼吸・嚥下が
できなくなった時
④ 加齢により全身の機能が低下し
て呼吸・嚥下ができなくなった
時
人間の最期はには前記の4つの場合がある
①は臓器移植の場合に問題となる。対象者は意
識がほとんどないことが多く、数日のうちに亡
くなることが多い。
②はどんなに最先端の医療行為を行おうとも少
なくとも数カ月のうちになくなることが多い。
いずれにしても①②は近いうちに死が訪れるの
で倫理上の問題はあっても介護上はあまり問題
とならない。
③④は何らかの医療行為を施せば長年月生存
可能であるためにその間の介護をどうするか
が問題となる。特に③はまだ若年者が多いの
と最期まで意識がはっきりしているのが倫理
上の大きな問題点としてある。
しかし圧倒的に多いのは④である。これをど
う考えるかが今後の日本の大きな介護問題と
なる。特に地域包括ケアを推進するのであれ
ば?
今後の介護問題
重介護の最期をどうするか
認知症の最期をどうするか
日本人の死生観を十分議論し考える
時が来たのでは?
キュアからケアへのパラダイムチェ
ンジを
77
お疲れさまでした
阿蘇の日没
78
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