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米国ORSA対応へ向けた準備

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米国ORSA対応へ向けた準備
Focus on: ORSA
2011 年 8 月
米国 ORSA 対応へ向けた準備
リスクとソルベンシーの自己評価(ORSA)は、米国の保険会社にとって規制上の
枠組みの重要な一部となってきている。今般、NAIC は、自己評価への期待事項
および ORSA 結果報告にかかわる提案を記載した ORSA ガイダンスマニュアル
の草案を公表した。本レポートは、マニュアルの主な特徴、今後の ORSA 対応に
あたり保険会社に及ぼすであろう影響について考察したものである。
ORSA を実施することにより、規制当局は、保険会社のエンタープライズ・リスク・マネジメント
(ERM)への取組みを詳細に把握することができる。また、ORSA をコミュニケーションツールとし
て効果的に用いれば、企業のリスク管理を補完することもできる。
ハイライト

NAIC の ORSA ガイダンス
マニュアル草案の要件と規
制当局の期待

実務的観点から見た ORSA
と必要な対応

ORSA が事業計画やリスク
管理に与える影響と ORSA
の活用方法

リスクと資本の管理は保険事業の中核をなすものであり、保険業界では ERM が管理手法として
定着し始めている。多くの大手保険会社では適切な ERM 体制を整備しており、経営者は ERM
に基づき事業を運営し、与えられたリスク水準に対し、リターン・オン・キャピタルの最適化を図っ
ている。各国の規制当局は ORSA を ERM の中核となる構成要素として捉えており、自国の保険
会社のリスクとソルベンシー評価能力の向上に向けて重点的に取り組み始めている。
米国では、NAIC がソルベンシー近代化委員会(Solvency Modernization Initiative 以下、
「SMI」とする)の活動として、米国 ORSA の要件を策定した。NAIC は 2011 年 2 月に一回目の
草案を公表し、2011 年春季全国会議において業界の代表者に詳細な意見を求めていた。1 今
夏、NAIC は公開電話会議を繰り返し開催し、ORSA 要件について議論した上で、2011 年 8 月
5 日に ORSA ガイダンスマニュアル(以下、「マニュアル」とする)の草案を発表した。
米国 ORSA の今後の動向
と ORSA によるリスク管理、
規制監督面での実務上の
改善点
マニュアルには、NAIC の現時点での ORSA に対する期待事項が記載されており、業界からの
意見が大きく反映されている。特に、北米大手保険会社の最高リスク管理責任者(CRO)から構
成される北米 CRO 評議会の意見が強く反映された内容となっている。当評議会は、保険リスク
管理におけるベストプラクティスを確立、促進していくことを使命としている。この使命を果たすた
め、北米 CRO 評議会は、NAIC 主催で 2011 年 7 月 21 日に開催された ERM シンポジウムに
おいて、効果的な ERM 枠組みにおける主な特徴や、資本モデルの確立・使用に関する評議会
の見解を公表した。評議会のプレゼンテーションは NAIC に高く評価され、マニュアルを策定す
る上でのガイダンスとしての役割を果たした。
効果的な ERM の枠組みを整備している大手保険会社にとっては、ORSA 報告およびレビュー
はそれほど大きな変更をもたらすものではない。NAIC の意図は、保険会社によるリスク管理へ
の取り組みを把握することであり、新たな規制要件を義務付けることではない。そのため、ORSA
結果報告は既存プロセスの延長線上にあると考えられる。
一方、その他の保険会社については、ORSA を実行するために ERM 体制の自己確認が
必要となり、その過程で ERM 体制における要改善点が発生する可能性が高い。その結
果、ERM 体制整備に向けた取組みが強化されることが予想される。
本レポートでは、マニュアルの主な特徴を説明し、ORSA 対応にあたっての実務上の課題、推奨
事項、チャンスとなる事項などを取り上げる。
1
ORSA 草案および NAIC 春季会議での討論に関する詳細な考察については、以下のリンク先に掲載されている PwC の
公表資料「Preparing for the US ORSA(「米国 ORSA 対応」)」を参照。
http://www.pwc.com/us/en/insurance/publications/risk-and-capital-US-ORSA.jhtml
NAIC の ORSA ガイダンスマニュアル草案
SMI のグループソルベンシー問題ワーキンググループ(以下、「ワーキンググループ」とする)は、2011 年 8 月 5 日にマニュアル草
案を公表し、8 月 25 日までコメントを募集していた。ワーキンググループは、2011 年 8 月 27 日から 9 月 1 日にかけてフィラデルフ
ィアで開催される夏季全国会議において、業界の意見を求めて議論を行い、最終的には 11 月に開催予定の秋季全国会議でマニ
ュアルを確定させたいと考えている。
ORSA 報告における主な特徴は以下の表のとおりである。
トピック
重要な提案事項
対象範囲および
適用対象

ORSA 報告は、保険持株会社規制法の Form B に基づき実施されると考えられている。同規制法は、持株会社体制の傘
下にある保険会社を対象としており、大半の保険会社が適用対象となるものである。また、NAIC の電話会議において、最
低保険料基準を超える保険会社についても ORSA 要件が適用される旨が示唆されている。

NAIC の提案では、個々の保険会社の年間元受正味保険料とグループ会社以外の受再保険料の合算額(ただし、海外
元受・受再保険料を含むが、連邦穀物保険会社および全米洪水保険制度の再保険料は除く)が 5 億ドル未満、かつ、保
険グループの年間元受正味保険料と受再保険料の合算額(ただし、海外元受および受再保険料を含むが、連邦穀物保
険会社および全米洪水保険制度の再保険料およびグループ会社の再保険料は除く)が 10 億ドルを超えない場合は、保
険会社および(または)保険グループは ORSA 要件の適用を免除される。また、特段の事情がある場合には、保険会社は
州保険監督官に対して適用免除を申請することができる。

しかしながら、上記にかかわらず、州保険監督官の判断によって特段の事情に基づき ORSA 報告を要求される場合1や、
保険会社が問題を抱えている場合には ORSA 報告を求められる場合もある旨がマニュアル草案で提案されている。
頻度

保険会社および(または)保険グループは、毎年、ERM プロセスの一環としてリスクとソルベンシーの自己評価を実施しな
ければならない旨が提案されている。しかし、マニュアル草案は、保険監督官に対して、毎年 ORSA 報告を要求またはレ
ビューすることを義務付けているものではない。ただし、(セクション 3 に含まれる)経済価値ベースのソルベンシー評価に
ついては、保険監督官はいつでも報告を求めることができるとされている。
セクション 1 - リスク管
理方針の内容

セクション 1 では、保険会社および(または)保険グループの ERM 枠組みにかかわる項目について記載している。マニュ
アル草案では、以下の 5 つの項目を ERM の枠組みに組み込むことが求められているが、これは、2011 年 7 月 21 日に
NAIC が開催した ERM シンポジウムにおいて CRO 評議会がワーキンググループに対して行なったプレゼンテーションの
内容に基づいており、業界の ERM 対応の現状を反映しているものである。

-
リスクカルチャーおよびガバナンス
-
リスク識別および優先順位付け
-
リスク選好度、許容度および限度
-
リスク管理および統制
-
リスク報告およびコミュニケーション
上記の ERM の枠組みの項目に加え、ORSA 報告のセクション 1 には、保険会社および(または)保険グループのリスク管
理方針の要約が記載されている。その中では、リスク区分、リスク選好度、リスク許容度、リスク管理、リスクモニタリングプロ
セスについて詳述することに加えて、投資方針、保険引受方針、保険金引受方針、保全処理、ALM、リスク保有方針、再
保険取引の相手先にかかわる方針、グループリスク管理、M&A 活動あるいは方針、報酬やインセンティブの管理、その他
ERM にかかわる活動について言及した上で、日々の事業運営においてこれらがどのように利用されているかについても
記載されている。
1
例えば、2011 年 7 月 29 日にニューヨーク州保険局が発行したサーキュラーレター草案では、全ての保険会社に対して、ORSA プロセスを含めた正式な ERM 体
制を機能させることを推奨すると共に、法定の審査プロセスとあわせて、保険会社のリスク管理能力の評価を開始する予定であることが示唆されている。
PwC 米国 ORSA 対応へ向けた準備 2
NAIC の ORSA ガイダンスマニュアル草案
トピック
重要な提案事項
セクション 2 - 通常およ
びストレス時のリスクエク
スポージャーの定量測
定

セクション 2 では、セクション 1 で認識された各リスクについて、通常およびストレス時でのリスクエクスポージャーの定量的
測定を記載している。また、認識されたリスク、測定方法、主要な前提、妥当な負のシナリオに基づいた測定結果に関して
も、詳細に説明されている。

また、セクション 2 では、リスク許容度ステートメントとリスク限度の決定方法について、定量的および定性的な要素も含め
て説明されている。

マニュアルには、規制当局が期待するリスク測定にかかわる情報の例示が一部挙げられている。なお、これらは規範的な
ものとして挙げられているのではない。これには、各リスク区分に対するエクスポージャー総額、各区分についての通常お
よびストレス時における翌年の予想支払額、保険会社および(または)保険グループの倒産を引き起こし得るストレステスト
における要因といった情報が含まれている。

保険グループレベルでストレステストやシナリオテストが実施されている場合、保険監督官は保険グループに対してテスト
結果を個々の会社に当てはめるよう求めることができる。また、マニュアルでは、保険監督官が ORSA にあたって考慮すべ
きストレスへのインプットを提示することを認めているが、全ての保険会社および(または)保険グループを対象とした標準
的なストレスの条件を規制当局が定めることは求めていない。
PwC 米国 ORSA 対応へ向けた準備 3
NAIC の ORSA ガイダンスマニュアル草案
セクション 3 - グループ
の経済資本と予測ソル
ベンシー評価

セクション 3 では、保険会社および(または)保険グループが今後 2~5 年の間に必要とする資本をどのように算定してい
るかについて記載している。これには、同期間の事業計画に基づいた経済資本の評価および予測ソルベンシー評価が含
まれなければいけない。
経済資本評価

経済資本評価においては、リスクプロファイルに見合った自己資本を評価し、当該評価の結果をどのように意思決定プロ
セスで利用しているかを説明しなければならない。また、規制上の最低所要資本ではなく、保険会社および(または)保険
グループが事業目的を達成する上で必要と考える自己資本の水準を説明しなければならない。

当該評価は、前年度末について毎年実施し、以下の項目について記述式で説明しなければならない。以下の項目は、
2011 年 7 月 21 日に NAIC が開催した ERM シンポジウムにおいて CRO 評議会がワーキンググループに対して行なった
プレゼンテーションの内容に基づいており、業界の ERM 対応の現状を反映することを意図しているものである。

-
ソルベンシーの定義
-
リスクエクスポージャーのタイムホライズン
-
モデル化するリスク
-
リスクの数値化方法
-
測定基準(VaR、TVaR、破産確率など)
-
自己資本の目標水準
-
分散の考慮
自己資本評価にあたっては、グループ間取引は除外し、持株会社の負債から生ずるレバレッジを勘案しなければならな
い。分散効果を明確に特定し、グループ内の資本流用の制限を考慮しなければならない。さらに、当該評価においては、
グループ内における伝染リスク、集中リスクおよび複雑性リスクを反映しなければならない。
予測ソルベンシー評価

予測ソルベンシー評価では、現行の自己資本規制、資本の質、リスク管理方針やリスクプロファイルを勘案した上で、保険
会社および(または)保険グループが 2~5 年間の事業計画を実行する上で必要な自己資本を保有していることを立証し
なければならない。当該評価はフォワードルッキングなものでなければならず、通常およびストレス時の両方を考慮しなけ
ればならない。

評価の結果、保険会社および(または)保険グループが十分な自己資本を保有していない場合には、セクション 3 におい
て、保険会社および(または)保険グループによる解決策を説明しなければならない。
PwC 米国 ORSA 対応へ向けた準備 3
マニュアル草案の要件を満たすために
ERM プログラムの内容を記載
ORSA 報告にはリスク管理の実態を反映
活用すべきである。しかしながら、活用で
きる水準まで体制が確立していない場合、
保険会社は自社の ERM プログラムにつ
いて、上記の観点をどのようにして明確
に定めていくかということを早急に検討し
始めることが有益なことである。
しかしながら、マニュアルには、法人単体
による報告を保険グループの報告とどの
ように関連付けるべきであるか、また、保
険グループによる評価から法人単体の
結果をどのように得るのかというような実
務上の課題については、明確な指針が
マニュアル草案の要件を満たすために
多くの保険グループにとって、免許取得、 示されていない。
は、保険会社は ORSA 報告にあたって、 その他の規制上および税務上の要件な
ソルベンシーII の枠組みを推進している
セクション 1 に自社の ERM の枠組みの
どのようにグループ構築にかかわる意思
欧州規制当局およびバミューダ諸島中
詳細な記述を行い、セクション 2 に事業
決定に影響を及ぼす要素が数多くあるこ
央銀行は共に、保険グループがグルー
がさらされているリスクの種類とその定
とを考えると、法人形態がリスク管理方法
プレベルのみでの ORSA 情報を報告す
量的情報をそれぞれ開示する必要があ
の実態を反映しているとは限らない。
ることを認める旨の提案を行っている。
る。
米国においては、例えば価格設定に関
つまり、保険会社には、現在のリスクとリ
する規制により、多くの保険グループは
現時点では、NAIC と業界は、
スクプロファイルの変動見込みについて、 グループ会社間の潜在的な利益プール
グループによるリスク管理の
リスク選好度・許容度、リスクプロファイル
を統一された基準で管理した保険会社
および事業戦略を考慮したリスク管理態
を数多く保有している。
実態と整合性のある水準で
勢を明確に説明することが求められる。
そのため、整合的な管理方法、プールさ
ORSA の評価を実施すべき
れた利益、移転可能・流用可能な資本を
ORSA の目指すべき目的は、 持つ複数の法人間において、グループ であるという点において意見
ERM プログラムのすべての ERM プログラムが異なるものである可能 が一致している。
要素を一つにまとめ、保険会 性は低いであろう。
これにより、単一グループによる ORSA
NAIC と業界は、保険グループによるリス
社が自社のリスク管理態勢に ク 管 理 の 実 態 と 整 合 性 を 取 り な が ら 報告という規制上の仕組みは確立される
おいて確立されている原則 ORSA の評価を実施すべきであるという ものの、グループの報告の内容が実際ど
のようなものとなるのかという問題は解消
に則り、積極的に行動してい 点において意見が一致している。
されていない。
ることを立証することにある。 また、NAIC はマニュアル草案公表まで 保険グループにとっては、マニュアル草
の一連の討議を通じて、保険グループに
案の公開草案期間やその後の審議期間
対して、グループと法人単体で、重複す
上記の点において ERM プログラムが既
において、ORSA 報告を実施する上での
るような報告は求めない意向を明確に示
に明確に定められている場合、ORSA 報
実務上の影響を評価することが重要であ
している。
告にあたっては既存の資料を最大限に
ると考えられる。
リスク選好度およびそれが意思決定へ与
える影響を明確に説明できない場合に
は、ERM プロセスの改善が必要となると
考えられる。
ORSA が目指すべき目的は、ERM の全
ての要素を一つにまとめ、保険会社が自
社のリスク管理態勢において確立されて
いる原則に則り、積極的に行動している
ことを立証することにある。
ORSA 報告では、以下の ERM 要素を含める:
ガバナンス
オーナーシップや取締役以下の職責を含む ERM の枠組みにかかわ
るガバナンス体制
リスク選好度
リスク選好度の決定方法、事業戦略との関連性に関する記述
リスクの特定
事業にかかわるキーリスク、当該リスクを識別・優先順位付ける上で用
いたプロセスに関する記述
リスクの測定
手法、使用した測定基準、測定の頻度や測定結果を含めた上で、リス
ク測定方法を詳述
リスクのモニタリング
リスク選好度やより広範な制限事項に対するリスク基準を適時にモニ
タリングするために整備されているプロセス
リスク管理
リスク管理の目的に照らして、あるいは予め定めた閾値基準を超えた
場合に、保険会社が取るリスク管理の対応策
PwC 米国 ORSA 対応へ向けた準備 4
予測ソルベンシー評価の実施
経済資本と予測ソルベンシー評価
セクション 3 の必要資本の評価は、現在
および将来において ORSA 報告の中核
をなすものである。
当該評価にあたっては、規制当局の規
制に細心の注意を払わなければならな
いが、要求されている所定の資本水準で
はなく、注意を払うべきは基本的には内
部評価プロセスに基づく、保険会社独自
の資本水準でなければならない。
認識されたリスクと事業上求
められる経済資本や規制資
本との明確な関係を把握す
ることが ORSA 報告の主要
な目的である。
したがって、保険会社は業務状況の変
化の潜在的な影響の定量化および理解
のための重要なモデリングおよび分析を
実施し、説明する必要がある。
OSRA に 2 年から 5 年の事業計画を組
み込む
当該マニュアルでは、保険会社が実効
性のある事業計画の策定に要する期間
を考慮して、自らが 2 年から 5 年の期間
事業を継続出来る能力の評価を ORSA
報告で説明することを求めている。
認識されたリスクと事業上求められる経
済資本や規制資本との間の明確な関係
を把握することが、ORSA 報告の主要な
目的である。
保険会社が検討しなければ
ならない重要な問題は、今後
2 年から 5 年という期間につ
いて、リスクと必要資本を評
価するために信頼できるデ
ータが入手可能かどうかであ
る。
したがって、強固な事業計画プロセスが
整備されていることを伝えることは、完全
かつ強固なプロセスが整備されているこ
とを利害関係者が直接判断する上でも、
ERM の枠組み全体が強固であることを
推測する上でも、ORSA 報告上必要不可
欠なものである。
ORSA プロセスに戦略・事業計画を反映
し、正確かつ詳細な文書化の要求事項
を定めることにより、保険会社の事業計
必要資本について規制による評価と経
画策定プロセスにより一層注目が集まる
営陣による評価は著しく異なる場合があ
る。そのため、監督当局は、取締役会が、 であろう。
リスクプロファイルや事業目的の達成の
ために、どの程度の資本を保有する計画
であるかに関して検討したことを報告の
中で示すことを期待している。
ORSA 報告のための段階的なアプローチ:
当該マニュアルでは、ORSA プロセスが
評価
経営陣は ORSA 報告を作成するにあたって、業務上どの程度対応できているか
単にソルベンシーの水準に関する警告
について評価する必要がある。
情報を提供する役割のみではないことを
報告の内容に明確なビジョンがあるか。
明確にしている。将来の資本水準の予測
は、事業計画を考慮し、予想されるリスク
リスク管理プロセスが明確に定められているか。
を反映したもので、上級経営陣が潜在的
報告の体制を決定する(グループ vs.法人単体を含む)。
な問題を理解し、対処できるようなもので
人材、システム、プロセスにかかわるオペレーション上の影響は何か。
なければならない。
NAIC は、保険会社のフォワードルッキン
グな評価が意思決定において統合的な
ツールとなり、資本の予測が事業戦略と
事業計画に対してフィードバックループ
の役割を果たすことを期待している。
詳細なストレステストおよびシナリオテスト
を実施することは、潜在的な脅威とその
結果生じる経営陣による行動を特定する
上で非常に重要であるとされている。
識別
報告対象となる成果、報告を完了するために必要なデータを識別する。可能な
限り、デザインおよび内容に関するベストプラクティスを活用するため、他の分野
での実績分析など、業界調査を実施する。
定義
入手可能なリスクと資本データを利用した上で、ORSA 報告を定義・作成する。
情報のユーザー間で回覧する。
導入
現在のプロセスとの差異を評価する。
-
報告
-
人材
-
プロセス
-
データ
ORSA 報告を作成し、報告プロセスに組み込むための導入計画を策定する。
PwC 米国 ORSA 対応へ向けた準備 5
ORSA の米国の規制への取り込み
保険会社が検討しなければならない重
要な問題は、今後 2 年から 5 年という期
間のリスクと必要資本を評価するために
信頼できるデータが入手可能かどうかで
ある。
があったが、マニュアル草案を策定する
ための時間が限られているため、ワーキ
ンググループは電話会議では利害関係
者からの広範なコメントを受け付けなかっ
た。
多くの保険会社は、このプロセスを支え
るために、システムやデータに投資をす
る必要があると考えられる。事業計画策
定のために統制およびレビューの手続き
が構築されており、既に厳格なものと認
識されてはいるが、プロセスの厳格さを
一段と強化することが可能である。
しかし、最近、NAIC は ERM シンポジウ
ムに出席することができなかった保険会
社のために、ERM 質問表(2011 年 8 月
26 日 が 提 出 期 限 ) を 作 成 し 、 個 別 の
ERM 実務について説明する機会を設け
ている。
事業計画策定および報告の向上により、
資本の予測評価を、より有用な分析、計
画策定、案件管理のツールとして使用す
ることが可能になり、将来計画の見直し
に有益であると考えられる。
米国における ORSA の次のステップ
ORSA ガイダンスマニュアルは、2011 年
8 月 25 日までコメントを募集し、2011 年
8 月 27 日から 2011 年 9 月 1 日にフィラ
デルフィアで開催される NAIC 夏季全国
会議のワーキンググループのセッション
内で業界のフィードバックについての討
議が行われる予定である。マニュアルの
公表は、11 月の秋季全国会議に予定さ
れている。
予想通り、米国の ORSA にかかわる議論
は、今日までに、保険業界から高い関心
が寄せられた。
CRO 評議会は、米国の保険業界におけ
る現行の ERM 実務の理解を具体化する
ために NAIC と密接に連携し、ジャクソン
ビルにおける NAIC の ERM シンポジウ
ムのワーキンググループのプレゼンテー
ションを実施している。
ORSA ガイダンスマニュアル
は、2011 年 8 月 25 日までコ
メントを募集し、NAIC 夏季全
国会議のワーキンググルー
プのセッション内で業界のフ
ィードバックについての討議
が行われる予定である。マニ
ュアルの公表は、11 月の秋
季全国会議に予定されてい
る。
したがって、現在のコンサルテーションお
よび夏季全国会議で入手された情報の
内容は重要である。マニュアル草案の内
容は、今後数カ月でさらに変更される可
能性がある。
ORSA と ERM の米国の規制への統合
性に関して疑問を投げかけている者もい
る。
米国の規制の枠組みでは、州の規制当
局に著しく柔軟な対応を認めているため、
要件によっては、保険会社と監督者双方
に不必要な水準の規定が課され、既に
実施されたリスクベースの評価の品質が
向上しないのではないかと危惧するもの
もいる。
しかしながら、CRO 評議会を含む多数の
委員や業界の解説者は、提案を評価し
ており、ERM に一層重点が置かれること
により、規制当局は保険会社独自のプロ
セスとリスク管理に対する姿勢により深い
洞察を得ることが可能となり、最終的に規
制プロセスが向上するものと期待してい
る。
さらに、自社のリスクに対して、強固な統
制を整備していることを立証できた保険
会社は、金融検査の頻度を減らせるとい
う恩恵を受けることも期待されている。
多数の委員や業界の解説者
は、ERM に一層重点が置か
れることにより、規制当局は
保険会社独自のプロセスとリ
スク管理に対する姿勢により
深い洞察を得ることができる
と期待している。
金融検査プロセスにおける米国の ORSA
と ERM 計画の評価が、SMI の一環として
実施される。
保 険 会 社 に よ っ て は 、 ERM の 構 築 と
ORSA 報告のプロセス導入には、多大な
投資が必要であると考えられている。
予想通り、米国の ORSA に
係る議論は保険業界から高
い関心が寄せられた。
これらの提案は、国際通貨基金(IMF)に
よる直近の金融セクター評価プログラム
(FSAP)の米国におけるレビューの結果
により提出された勧告に対応するものの
一部である。米国におけるレビューの結
果は、2010 年 5 月に公表されている。
しかし、投資により、リスクと資本の管理
が強化され、規制当局による審査プロセ
スが一層強固になり、洞察力が深まり、か
つ審査自体がさほど徹底したものではな
くなる可能性がある。
今夏、業界から幅広くワーキンググルー
プの公開電話会議の討論への参加希望
委員や解説者の中には、ERM と ORSA
の提案が米国の規制にもたらす価値増
加について懐疑的であり、新規制の必要
PwC 米国 ORSA 対応へ向けた準備 6
今後の対応
準備について
本レポートで概略を述べた動向は、多くの米国の保険会社に重大な影響を及ぼすものである。ORSA の規制は、急速に進展してお
り、現在の ORSA ガイダンスマニュアル公開草案の期間は、米国における議論に、影響を与える可能性がある。
将来的には、自社の ERM の枠組みを明確に文書化し、コミュニケーション戦略と整合している強固な ORSA 報告は、強固なリスク
と資本管理能力が整備されていることを規制当局に明確に伝えることができるものであり、さらに、監督プロセスに長期にわたってポ
ジティブな影響を及ぼすことができる。したがって、早期に準備を開始することが重要となるであろう。
以下の対応を行うことにより、貴社の ORSA 報告の作成にあたって実践的なステップを踏むことができ、評価に対して万全の準備が
できるものである。

取り組み:

評価:

確認:

文書化:

強化:
ORSA ガイダンスマニュアル草案と自社の組織に対して要件をどのように適用させるかを検討することで、
NAIC の討議に自社の見解を反映することができる。
自社の ERM と資本評価プログラムの主な特徴および利害関係者に伝達したいメッセージを検討することに
より、ORSA 報告の内容の範囲を決定することができる。
現在の ERM の枠組み範囲と文書化、評価指標および業務において実際に運用されている証跡を確認す
ることにより、自社の ERM 作業を最新のものに更新することができる。
ERM プログラムを文書化し、ORSA 報告の作成を開始することにより、潜在的な差異を把握し、規制当局の
観点から現在の自社の伝達能力を評価することができる。
ORSA 報告により、自社の ERM の枠組みを第三者的視点から検討する機会が与えられ、自社が引き続き
向上すべき分野を特定することができる。
PwC 米国 ORSA 対応へ向けた準備 7
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