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『できる自分』を実感し生活に生かそうとする家庭科学習

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『できる自分』を実感し生活に生かそうとする家庭科学習
家庭科
研究テーマについて
◆ 研究テーマ
実践的・体験的な活動
をとおして,『できる自
分』を実感し生活に生か
そうとする家庭科学習
◆ めざす子ども
「できる喜び」を味わい,学んだこと
を生活に生かそうとする子ども
川﨑 夕子
岩見 ミカ
平川 祐子
家庭科学習は,家庭の在り方や家族の人間関係への関心をより
高め,学校における学習と家族や地域社会における実践とを結び
付けながら,よりよい生活への実践的な態度を育む学習である。
「実践的・体験的な活動」とは,設定した課題を基に,観察,
実験,調査等を行う中で,必要な情報を収集しそれらを整理した
り,分析したりしていく活動のことである。
「
『できる自分』を実
感し,生活に生かそうとする」とは,身に付けた知識及び技能の
有効性や必要性を実感し「学んだことを家庭でも使ってみたい。
」
などの思いをもって主体的に試しながら,よりよい生活をめざそ
うとする実践的な姿である。昨年度の研究で資料提示の内容が子
どもの実態や生活に応じていなかったために,自分の課題として
捉えることができなかったり,小集団で話し合う際に,実践的・
体験的な活動から分かったことを伝えるだけで,他者の多様な考
えを自分の考えと比較して考えを深められなかったりという課
題が見えてきた。
そこで本年度は,身近な生活の課題を自分の課題として気付か
せるための出合わせ方を工夫する。また,家庭科にかかわる生活
経験や学びの実態の違いを生かした小集団の話合い活動を設定
し,自分の考えと友達の考えを比較する中で,自分の考えを見つ
め直したり,他者のよさを認めたりしながらよりよい方法を実感
するための手立てを追究することで,めざす子どもの姿に迫るこ
とにした。
家庭科研究部の考える「思考内容が深まっている姿」
自分の課題をもち,実践的・体験的な活動をとおして友達や教師と対話する中で,共感したりもう一度自分の考
えを見つめ直したりして,よりよい方法を実感する姿
教材等との出合わせ方
この前作った
固ゆで卵よりも
黄身が柔らかい
ものが好きだか
ら…。
思考を主体的に始めさせるために,こんな手立てをとりました。
子どもの実態に応じた身近な生活と関連した資料提示の工夫
みんなはどのような固さの
ゆで卵を作りたい?
買物の映像ですが,この2人
は何を迷っているのだろうね?
例えば○○と
△△では,どちら
を選びますか?
他者とのかかわらせ方
思考内容の深まりをもたせるために,こんな手立てをとりました。
根拠をもって説明させるための話し合い方の工夫
・ 既習内容や生活経験を基にした根拠
ゆで時間が3分
だと,黄身がとろ
とろしているよ。
どんな結果で,どんなこと
が分かりましたか?
・ 小集団における思考したことの比較
みんなは,何を
考えて物を選びま
すか?
ページ数は同じ
なのかな?この2
冊のノートの厚さ
を比べてみよう。
・ 全体での練り上げ
研究内容
自信をもって学び合う子どもを育むための学習指導の在り方
1 思考を主体的に始めさせるための教材等との出合わせ方
⑴ 子どもの実態に応じた身近な生活と関連した資料提示の工夫
2 思考内容の深まりをもたせるための他者とのかかわらせ方
⑴ 根拠をもって説明させるための話し合い方の工夫
自信をもって学び合う子どもを育むための学習指導の在り方
1 思考を主体的に始めさせるための教材等との出合わせ方
⑴ 子どもの実態に応じた身近な生活と関連した資料提示の工夫
思考を深めさせていくために,まず,子どもが身近な生活の課題を自分のこととして捉え,目的意識をもって取り組んで
いくような「出合い」を工夫する必要がある。
題材「自分でやってみよう」では,最後に野菜サラダを作るという目的意識をもたせるために,子どもの好みの「とろ
とろ」
「半熟」
「固ゆで」の3種類のゆで卵をのせた野菜サラダを用意した。
とろとろ
半熟
みんなは
どのような
固さのゆで
卵を作りた
い?
固ゆで
子どもは前時に固ゆで卵を作る活動をとおして,固ゆで卵のゆで時間と固さを知った。しかし,半熟等の言葉は知って
いるものの,固ゆで卵以外のゆで時間までは知らないのが実態であった。そこで,上記の写真のような順番で実物投影機
で映し出し,
「みんなはどのような固さのゆで卵を作りたいか。
」と問うことで,ゆでる時間と固さの関係に気付かせなが
ら自分の好みの固さを見つけられるようにした。そうすることで,ゆでる調理への意欲につながると考えた。
固ゆで卵よりも黄身が柔らかいもの
を作りたいね。固ゆで卵は 12 分だった
から,半分くらいの時間じゃないかな。
目的意識をもつ
題材「金銭や物の大切さを考えよう」では,生活の中でよくある場面を導入で提示した。教師が旅行先のベトナムで民
族衣装アオザイを購入したが,1回も着用していないという経験を話し実物を見せることで,
「欲しい物があった時には
どのようなことを考えればよいのか。
」という課題に気付くことができるようにした。
欲しくて買ったのに,
なぜ,1回も着ることが
なかったのかな。
自分の課題として捉える
ああ,ぼくにも
こんな経験あった
な…。
さらに,黒板にアオザイの写真を提示すること
で,学習の際に再度想起したり確認したりするため
の手がかりとした。
2 思考内容の深まりをもたせるための他者とのかかわらせ方
⑴ 根拠をもって説明するための話し合い方の工夫
実践的・体験的な活動をとおして思考したことは,教師との対話や友達との考えの比較により深まっていく。その際に,自
分の経験や学んだ知識を使って「固ゆで卵の時は 12 分かかったということは,半熟だったらゆでる時間は短いはずだね。
」
などの根拠をもって説明することによって,自分の考えを見つめ直したり,他者の考えのよさを認めたりすることができ
る。そこで,根拠をもって説明することができるようにするために次のような手立てをとった。
小集団における思考したことの比較
第5学年「自分でやってみよう」
第5学年「金銭や物の使い方を考えよう」
自分たちの好みのゆで卵のゆで時間について,実験しな
がら様子を観察し,気付いたことを話し合った。
「家や学校で使うノートが必要なので,買わなければならな
い。
」という問題場面を設定し,次の3種類のノートで話合いを
行った。
前時に固ゆで卵作りを
行い,固ゆで卵のゆで時間
と固さを観察させた。それ
を基準として,ゆで時間の
予想を立てさせ実験させ
た。間
① 1冊120円(再生紙利用)
② 1冊100円
③ ②と同じノートだが3冊で270円
どうして3冊270円を
選んだの?
既習内容を基にした根拠のもたせ方
友達と話し合うことで,たくさん気付くことができた。
友達の考えのよさに気付く
だって,3冊買っておけば,次の
ノートがなくなった時に…。
生活経験を基にした根拠のもたせ方
全体での練り上げ
この2つの黄身を比
べると,こちらの方が
とろとろになっていま
すよね。だから,こち
らの方が…。
なるほど。
地球に優しいこと
は大事だな。
根拠をもって説明する
ゆでる時間の違うゆで卵の写真を,あえて順番を違えて貼
り,子どもが正しく貼り直したときに「なぜ,その順番です
か。
」と問うことで,根拠をもって説明できるようにした。
ゆでる時間と固さの関係
が分かったので,私の好き
な半熟のゆで卵を作ること
ができます。
ゆでる時間と固さの関係を使って自分の好みのゆで卵作りに
生かそうとしていた。
友達の意見を聞いて③から①
へ自分の考えを変えていた。
目的に応じた物選びの必要感
に基づいた発表が多く見られた。
ぼくは,やっぱり,地球に優
しい再生紙利用のノートを選
びます。たくさんのノートが必
要だったら,再生紙で何冊かま
とめて買いたいです。
「授業のことを思
い出し,欲しい物が必
要かどうか考えて買
った。
」など,学んだ
ことを,実際の買物場
面で生かしている姿
が見られた。
(日記)
共感したり自分の考えを見つめ直したりして
よりよい方法を実感する
成果と課題
1 成果
○ 子どもの実態や生活に応じた問題場面を実物や映像で提示することで,本当の自分の課題として捉え考えることができ
るようになってきた。
○ 自分の生活経験等から自分なりの考えをもたせ,実践的・体験的な活動をとおして話し合わせたことで,友達と考えを
比較しながら生活をよりよくする方法を実感していくことができるようになってきた。
2 課題
○ 全体で練り上げる話合いを充実させながらも,知識及び技能の習得をより確かにしていく必要がある。
参考文献:小学校学習指導要領解説 家庭科編 文部科学省 2008
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