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企業評価の新しい潮流と環境経営

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企業評価の新しい潮流と環境経営
特別寄稿
企業評価の新しい潮流と環境経営
長谷川
直
哉
<目次>
な影響を及ぼしつつある.国内外のマーケット
1.課題と視角
において,企業の環境性,社会性,倫理性を投
2.企業価値とは何か
資判断の要素として取り込む社会的責任投資
2.1企業価値はどのようにして決まるか
(以下,SRIと表記)が大きく注目されている.
2.2 無形資産と企業価値
3.CSRとSRIの本格的展開
わが国では,CSRの中でも環境性に関する議
論が先行しており,環境問題を意識した企業経
3.l CSRへの関心の高まり
営の総称として環境経営という用語が定着して
3.2SRIの急速な発展
いる.しかし,環境経営については確立した定
4.わが国企業の環境アカウンタビリティー
義がなく,使用する論者の立場でさまざま定義
4.1 環境報告書の動向
づけが行われている.ここでは環境経営を企業
4.2 環境会計情報の開示
活動のあらゆるプロセスにおいて環境負荷の削
4.2 環境会計の必要性
減を目指す経営行動と定義する.
5.環境ブランドが生み出す企業価値
5.2 環境格付
今や企業は製品・サービスはもとより,生
産・流通過程など,企業活動のあらゆる側面で
環境保全を意識した活動を迫られており,企業
5.2ユ 環境格付の目的
経営者は「環境」を経営戦略においてどのよう
5.2.2 環境格付における評価スクリーン
に位置づけるのかが,マネジメント上の大きな
5.3 環境格付と株式価値の関係
課題となっている.この背景には,環境をはじ
6.環境経営と企業評価のフレームワーク
めとする社会的利益への対応の仕方によっては,
6.1環境経営に対する市場のガバナンス
企業の長期的成長性が大きく左右される可能性
6.2新しい企業評価ルールの創出
が出てきたことがある.米国におけるエンロン
5.1エコファンドの投資哲学と企業価値
事件,日本における雪印・日本ハム事件が物語
1.課題と視角
るように,反社会的な行動をとった場合,長期
的に培われた企業ブランドといえども,一夜に
地球環境問題の深刻化,経済のグローバル化
して崩壊してしまうのである.
および消費者意識の変化によって企業の社会的
CSRを推進する新しい投資手法として期待さ
責任(以下,CSRと表記)への関心が高まって
れているSRIは,投資家が投資を行う際に,経
いる.CSRに対する認識が強まっていく流れ中
済的パフォーマンスの観点からだけではなく,
で,資本市場における投資メカニズムにも大き
投資先企業の社会的側面も考慮して投資判断を
32(306)
横浜経営研究 第24巻 第4号(2004)
行う投資行動と定義することができる.投資の
討を進めていくこととする.
第一義的な目的は経済的収益の追求にあるが,
2.企業価値とは何か
SRIは経済的収益だけを投資の目的とするので
はなく,投資対象企業の活動が社会にとって有
2.1企業価値はどのようにして決まるのか
益かどうかという要素を加味して行う投資であ
企業価値については,一般的に企業の自己資
る.アメリカやイギリスなどでは,SRIはミュ
本の市場価値と負債の市場価値との合計として
ーチュアルファンドを通じて投資家に提供され
認識されている.また,企業価値は企業の株式
ており,投資形態の一つとして定着している.
価値との意味で使用されているケースもある.
わが国においても,1999年に本格的なエコファ
本稿では,企業価値を企業の自己資本の市:場価
ンドが設定されてからSRIに対する関心が徐々
値と負債の市場価値を合計した市場価値と定義
に高まっている.
する.この定義に従うと企業価値は次ぎの計算
SRIはなぜこのように注目されるようになっ
式で示すことができる.
たのであろうか.欧米諸国では資本市場の発達
によって,市場中心主義が普及してきた.市場
企業価値 二 株式価値 + 負債価値
での企業評価は財務データに基づいて行われる
有者は株主であり,企業経営の目的はこの株主
ことから,計算構造上の理由によって財務デー
価値を最大化することにあるという考え方が広
タに盛り込むことの出来なかった環境保全活動
まっている.この考え方の下では,株主以外の
などは,市場での評価対象とはされてこなかっ
ステークホルダーの利益についてはほとんど考
た.しかし,環境保全活動の重要性は投資家や
慮されない.前述のように企業価値を株式価値
消費者など一般市民社会で幅広く認識されてい
と負債価値の総和と考えると,経営者にとって
る.こうしたステークホルダーの意識変化を受
企業価値を向上させることとは株式価値を向上
けて,多くの企業が環境問題への取組みを強化
させることとほぼ同義である.何故なら,負債
している.市民の多くは,企業が利潤だけを追
価値は金利水準が変化すれば,それに応じて変
求していたのでは,地球環境の将来は非常に危
化するものの株式価値に比べ変動幅は小さく,
険な状態に陥ると考え始めている.さらに,バ
また金利水準は経営者にとっては外部から与え
ブル経済の崩壊を経験した社会では,市民の価
られる所与の変数であり,コントロールが難し
値観にも変化が現れている.すなわち,利益だ
いからである.この株主価値は以下の計算式で
けを追求することが,真に幸福な社会を招来す
表すことができる.
るのかという疑念である.市民の価値観が変化
株主価値=株式価値二株式時価総額
し始めているのにもかかわらず,いまだに利益
至上主義の呪縛が企業行動や投資行動を制約し
二1心あたりの株価 × 発行済み株式数
つまり,企業価値の向上,株主価値の向上,
ていることも事実である.SRIとは,このよう
株価の上昇は基本的に一致する関係にあるとみ
な利益至上主義の呪縛を解くことによって,投
.ることができる.企業価値と株価が基本的に一
資と市民社会の問に,新しい価値観を産み出そ
致するとの考え方に基づき,市場では企業価値
うとするものである.
や株価の評価に関して様々な手法が開発されて
以上のような認識に基づいて,本稿は環境経
いる.ここでは以下の3種類に大別して整理す
営が企業価値の形成にどのような影響をもたら
る.
近年,企業価値に関する議論では,企業の所
すのか,また企業価値の決定要素として環境経
①テクニカル価値評価法
営をどのように評価していくのかというテーマ
過去の株価の動きを記録したチャート分析
を中心に環境経営と企業価値の関係について検
等によって将来の株価の方向性を予測する
企業評価の新しい潮流と環境経営(長谷川直哉)
(307)33
手法である.この手法は過去の価格変化は
関する詳細なデータの入手が困難な消費者は,
将来の価格変化に関する情報を内包してい
ブランドイメージを考慮して製品購入を決定す
ないとする効率的市場仮説に反するもので
る度合いが高いことが明かとなった.この結果
あり,その有効性については否定的な見方
は,ブランドカが企業の競争力の源泉として重
が主流となっている.
要な意味を持っていることを示している.この
②相対価値評価法
ような流れを受けて,環境経営も株式価値を向
競合する企業間でPER(株価収益率:株
価/1株あたり利益)やPBR(株価純資産
倍率:株価/1株あたり純資産)等の投資
上させる無形資産として認識されるようになっ
指標を比較することによって株価や企業価
することによって,環境ブランドイメージの向
値の割高・割安を判断する手法である.こ
上に取り組むようになっている.企業は環境ブ
の手法では比較対象となっている他社の
PERやPBRそのものが割高または割安とな
っている場合に,正確な判断を下すことが
ランドカを向上させるために環境コミュニケー
境報告書が使用されている.環境報告書を発行
難しいという欠点を持っている.
する企業はここ数年急増しているが,こうした
③本源的価値評価法
背景には環境コミュニケーションを強化するこ
企業価値や株式価値の本源的な投資価値を
とによって,環境ブランドカを向上させようと
求める手法であり,配当割引モデルとキャ
いう企業戦略が存在している.
ッシュフロー割引モデルが代表的な手法で
ある.配当割引モデルでは将来にわたる配
てきている.環境経営に積極的に取り組んでい
る企業は,環境経営に関する情報を進んで公開
ションを推進しているが,そのツールとして環:
3.CSRとSRIの本格的展開
にわたるキャッシュフローを適切な割引率
3.1CSRへの関心の高まり
近年,CSRに対する国際的な関心が高まって
で割り引くことによって現在価値を求める
いるが,その背景には多国籍企業などによる企
ものである.
業活動のグローバル化が進展するにつれて先進
当をキャッシュフロー割引モデルでは将来
国と発展途上国間の貧富の格差を拡大し,環境
2.2 無形資産と企業価値
破壊をもたらすという懸念が広がったことがあ
1990年代後半から,企業価値の向上の源泉と
る.また,消費者の意識や行動が多様化し,企
して無形資産に対する関心が急速に高まってい
業が提供する製品やサービスの品質や価格に対
る.欧米では,無形資産の評価手法やモデルが
する評価だけでなく,企業自身の環境保全活動
開発され,無形資産と株価との関係に関する実
や人権,労働問題に対する姿勢や取組みに関心
証分析から無形資産が企業価値向上の源泉であ
を持つ傾向が強まっている.こうした消費者の
ることが明かにされつつある.日経BP環境経
営フ牙一ラムが実施した第1回環境ブランド調
行動は,グリーンコンシューマーリズムとも呼
査(2000年)によると,消費者が情報機i器製品
は,消費者も環境破壊の当事者であるとの認識
を購入する際に重視する項目として「製品のブ
に立って,消費者自らが大量消費社会からの脱
ランド」を上位1位から3位までにあげた回答
却を図ろうとする理念である.グリーンコンシ
者は22.7%に達している.同じ質問に対して企
ューマーは,環境面から企業行動の変革をせま
業間取引では,「企業または製品のブランド」
る消費者と位置付けられている.すなわち,通
を上位1位から3位にあげた回答は11.6%にと
常の消費行動において,価格が相対的に高価で
どまっている.企業問取引に比べ企業や製品に
あっても環境に負荷を与えない商品を厳選して
ばれている.グリーンコンシューマーリズムと
34(308)
横浜経営研究 第24巻 第4号(2004)
購入するとともに,環境に有害な商品や企業行
1997年 Social Accountability 8000(米国)
動を監視し,場合によっては商品をボイコット
規格公表
するような消費者である.
1999年 Accountability lOOO(英国)規格
企業評価に対する価値観の多様化は消費者だ
公表
けに限定されるものではない.株主や投資家な
1999年前Ethics Compliance Standard 2000
どにも同様の変化がみられるのである.従来の
(日本)規格公表
投資家は,投資に際して将来的に株価が上昇す
1999年 Global Sullivan Principles公表
る可能性や配当等を考慮した利回りの良し悪し
1999年 UN, Global Compact公表
といった経済的要素のみを基準として投資先を
1999年 Global Reporting Initiative,報告書
決定してきた.このこと自体に問題があるわけ
作成のためのガイドライン公表
ではない.しかし,その資金が何らかの事業に
投下され,その事業が結果的に私たちの生活に
2000年 イギリス,CSR担当大臣任命
2000年 イギリス,年金法改正
はね返ってたり,自分の価値観や倫理感と相容
2001年 ISO, CSRの規格化検討をスタート
れない事業に関わってしまいかねないという危
2001年 EU, CSRに関するグリーンペーパ
険性も持っている.欧米では一部の投資家の中
一公表
に経済的パフォーマンスの観点からだけではな
2002年 EU, CSRに関するホワイトペーパ
く,投資先企業の社会的側面も考慮して投資判
一公表
断を行う動きが見られるようになっている.こ
イギリスのDTI(貿易産業省)は企業がCSR
うした投資行動は,SRIと呼ばれるものである
を推進することによる利益として,「企業イメ
ことは既に述べたとおりである.投資の第一義
ージの向上」,「競争力獲i得」,「リスクマネジメ
的な目的は経済的収益の追求にあるが,SRIは
ント」の3点をあげている.「企業イメージの
経済的収益だけを投資の目的とするのではなく,
向上」とは,従業員,環境,人権,地域投資な
投資対象企業の行動が社会にとって有益かどう
どへの配慮が,企業イメージを向上させること
かという要素を加味して行う投資である.
によって,消費者や投資家の信頼感を獲得でき
こうした動きを後押しするような形で,欧州
るというものである.「競争力獲得」は,効率
では様々な法改正や規制の制定がなされている.
的な環境経営,優良なサプライヤーとの取引,
イギリスでの年金法改正は年金基金の運用受託
顧客の支持,有能な従業員採用を通じて企業の
者に対して,SRI的視点を運用時の評価項目に
競争力そのものが強化されることを意味してい
加えているかどうかの公表を求めており,CSR
る.「リスクマネジメント」は,財務面,法規
を推進するためにSRIに法的裏付けを与えたも
制の強化,ステークホルダー対応に関するリス
のとして画期的な意味を持っている.以下は,
クのコントロールが可能になると述べている.
CSRに関する国際的な動向を時系列的に整理し
特にEUでは, CSRを推進するキーワードと
たものであるが,欧州を中心にCSRへの取組み
して「Social Cohesion(社会結合)」が使われ
が強化されている.
ている.EUはEU域内の企業がCSRを推進する
1976年 OECD多国籍企業ガイドライン公表
1991年 経団連企業行動憲章公表,1996年改
ことにより,EU統合の最終的目標である,「経
済発展」「競争力強化」「雇用創出」に貢献する
訂,2002年企業行動憲章公表
と考えCSRを支援しているのである.
1992年 Business for Social Responsibility
(BSR,米国)発足
3.2 SRIの急速な発展
1994年 コー円卓会議,企業行動指針公表
SRIは先に述べたように,投資を行う際に財
(309)35
企業評価の新しい潮流と環境経営(長谷川直哉)
(単位:億ドル)
(表1)米国におけるSRI運用残高の推移
1995年11月
1997年11月
1999年ll月
2001年11月
スクリーニング(①)
1,650
5,290
14,970
20,300
株主行動(②)
5,290
7,360
9,220
9,030
40
40
54
76
N/A
840
2,650
6,010
合計(①+②+③一④)
6,980
11,850
21,594
23,396
全運用資産に占める割合
N/A
9%
13%
12%
コミュニティ投資(③)
スクリーニングと株主行動の両
福
実施(④)
(出所)Social Investment Forum 2001 Report on Socially Responsible Investing Trends in the United States
務的要素だけではなく,企業の環境保全活動や
1999年末と比べて字8%の増加となっている.特
社会への対応等も考慮して投資先を決定する投
に,SRIに関して急速な発展が見られるのがフ
資手法である.SRIは一般的に以下の手法に分
ランスであり,1999年末と比べてファンド数が
類されている.
3倍に増加している.イギリスでは,55の金融
■スクリーニング
機関が個人投資家向けにSRIファンドを提供し
企業の環境やCSRへの対応を考慮して投資
ている.
先を選定すること.
■株主行動
4.わが国企業の環境アカウンタビリティー
企業の環境やCSRへの対応に関して,株主
として対話を求め,株主提案を行い,議決
4.1 環境報告書の動向
権を行使すること.
れているが,環境経営の進展という観点でみる
■コミュニティ投資
と,必ずしもこうした呼び方は相応しくない.
マイノリティや低所得者居住地域の発展を
それでは,環境経営の進展状況を環境報告書の
支援するために低利の融資プログラムや投
発行数を例に見てみることにしよう.
資を行うことであり,主にアメリカ・イギ
環境省が実施した「環境にやさしい企業行動
リスで実施されている.
調査」報告書(2001年3月)では,環境報告書
(表1)はアメリカにおけるSRI残高を手法
を発行する企業数は1996年度の104社から2000
別に分類したものであるが,スクリーニングが
年度の430社へと約4.13倍に拡大している.特
全体の86.7%を占めている.
に直近1∼2年における発行企業数の拡大は顕
(図1)は,欧州におけるSRIの残高推移を
示したものである.SRIファンドは1999年末か
ら2001年末の2年間で30%増加し,111億ユー
著である.
1990年代の日本経済は失われた10年と表現さ
環境報告書を発行する企業数が増加した理由
ロから144億ユーロに増加している.また,ヨ
として,二つの要因が考えられる.第一は,
1999年に国内企業を対象としたSRIの一種であ
ーロッパ全体の個人投資家向けSRIファンドの
るエコファンドの運用が開始され,環境経営情
純資産残高の58%をイギリスとスウェーデンと
報が企業評価や株価に影響する可能性が高まっ
オランダの3ヶ国で占める.この3国にイタリ
てきたことが,環境経営能力に関する情報発信
アとベルギーを加えると全残高の80%に達する.
を企業に促す要因のなったのである.
2001年末のSRIファンドの数は280本であり,
第二は,環境報告書作成の指針となるフレー
36(310)
横浜経営研究 第24巻 第4号(2004)
(図1)欧州におけるSRI残高推移
英国
オランダ
4.97
砺幽掃碍冨敷 黒ウ飴
ュゆ臼争与餌ぜ 喬串瞬 酔噂‡嶋酔画中
5舘・くち ウ嵩争 中忘牽§争舘惇峯二 雪}㌻ 《ら曳き
’騰03
細亀踊鋼 鯉鍍舞μ
1,879
□2001年12月
1.68
箒ミ 懲窓慧緻象韓纏 1融
91ぎ灘
」2001年6月
蛯P999年12月
P,621
スウェーデン
5,911
凝濫:誌;講峯
1,322
1,578
イタリア
ベルギー
C843
苧‘馨,酔中、豊寧竃ζ峯鼻㍗亭琶毎這舞雪毎蓉ぐ‡宕ζ奪ζ竃寧醇驚=
、灘四恩麗浄愚轄,翫
512
980
2297
1,416
1・170
スイス
フランス
茎旙ザ£嶺冨鵜瀬畠八寸卸臼 P,368
1,124
’輪一一一・輿9・一
護70
ドイツ
スペイン
薪材町
1,917
837
647
鞭215
O
0 1,000
2,000
3,000
4,000
5ρ00
6,000
7ρ00
単位:百万ユーロ
ムワークに関する基準整備である.GRI
との認識が普及したことから,環境報告書を媒
(Global Reporting Initiative)の「経済的,環
体として環境保全活動を開示する企業が増えて
境的,社会的パフォーマンスを報告する持続可
いるのである.
能性報告のガイドライン(以下,GRIガイドラ
言い換えるならば,環境報告書を発行する企
インと表記)」や環境省の「環境報告書ガイド
業が拡大しているということは,消費者,株主,
ライン(2000年版)」が提示されたことによっ
従業員など直接的に企業と関係を有する主体だ
て,企業は一定のフォーマットで環境報告書の
けではなく,地域住民等からなる様々なステー
作成が出来るになっている.例えば「GRIガイ
クホルダーとの相互依存によって存続している
ドライン」では,経済性要素,環境性要素,社
という認識を企業自身が強く抱くようになって
会性要素のそれぞれ要素毎にビジョンと目標を
いることを示しているのである.すなわち,環
策定し,それを実現していくための方針,組織
境問題に関して企業がステークホルダーから期
体制,マネジメントシステムを開示することを
待されている内容を開示し,それによってステ
企業に対して求めている.
ークホルダーに対する社会的責任を履行しよう
企業の経済的活動に関する情報開示は,伝統
としているのである.
的には企業会計が担ってきた領域であり,企業
財務報告書によって示される企業の経済的要
活動の制約条件(二経営資源)として,ヒト,
素に対する評価は,上場企業であれば証券アナ
モノ,カネのみが想定されていた時代において
リストや投資家によって足下の業績動向や将来
は,財務報告書を通じて企業活動が明かにされ
的な競争力が評価され,最終的には市場におい
てきた.しかし,地球環境問題への関心が高ま
て株価という形で表される.しかし,環境性要
るにつれて,環境が企業活動の制約条件である
素や社会性要素は伝統的な投資理論では評価対
企業評価の新しい潮流と環境経営(長谷川直哉)
(311)37
象とはされていない.さらに,環境的要素や社
使用してきた企業に対する意識変革を求め,あ
会的要素に対するステークホルダーの評価も明
らゆるステークホルダーの共有財産である公共
確な形で株価へ反映される訳でもない.しかし,
財としての地球環境を利用した事業活動に関す
雪印や日本ハムの例が示すように,環:境や社会
るアカウンタビリティーのフレームワークを規
に反する企業活動に対するステークホルダーの
定しているのである.環境会計は,マクロ環境
評価は企業存続を左右するほど厳しい形となっ
会計(国民経済計算)とミクロ環境会計(企業
て現れるのである.したがって,企業は自らの
会計)から干城されているが,環境省の環境会
存続をかけて環境報告書等を通じて環境保全活
計ガイドラインは後者を対象としている.環境
動や社会的責任活動を開示し,ステークホルダ
会計ガイドライン(2000年)以降,環境会計情
ーとのコミュニケーションを図る努力を続けて
報の開示方法は,投入した環境保全コストとそ
いく必要がある.
の結果もたらされた経済効果の両者を対比させ
る考え方が主流となりつつある.環境会計情報
4.2 環境会計情報の開示
の具体的な実践例としては,リコーと宝酒造が
環:境報告書の開示内容が充実化される過程で
他社を一歩リードしている.
環境会計に関する情報開示を行う企業も徐々に
リコーは環境負荷を削減しつつ経済価値を産
拡大している.先に述べた環境省の「環境にや
み出す環境経営を実現するためのツールとして
さしい企業行動調査」報告書によると,環境会
グループ全体での環境会計の構築が必要である
計を導入している企業は有効回答数1,291社の
という認識を持っている.同社が環境会計情報
うち298社(約23.1%)であり,導入を検討し
の開示を始めたのは1999年版の環境報告書から
ていると回答した企業333社を加えても,全体
であった.同社の環境会計は,コーポーレート
の半数にも満たない状況である.環境会計が注
環境会計とセグメント環境会計から構成されて
目されるようになったのは,環境省が1999年3
いる.コーポーレート環境会計とは,コスト
月に「環境保全コストの把握及び公表に関する
(貨幣単位)・経済効果(貨幣単位)・環境保
ガイドライン(中間とりまとめ)」を公表して
全効果(物量単位)を開示し,環境負荷項目ご
からである.その後,環境省は2000年5月に
との環境負荷削減効果を把握している.セグメ
「環境会計システムの導入のためのガイドライ
ント会計では,事業所ごとの環境設備投資やプ
ン」,2002年3月に「環境会計ガイドライン
ロジェクトの開始に先だって投資に対する効果
2002年版」を公表し,企業の内部管理ツールお
の予測を実施している.
よび社会とのコミュニケーションを図るための
宝酒造は1998年から環境会計情報の開示を行
外部ツールとしての環境会計のフレームワーク
っている.同社の環境会計の特徴は環境負荷削
の構築を試みている.
減状況を独自に定めた「ECO」(エコ)という
環境会計ガイドラインは,環境会計を「企業
指標によって把握していることである.「ECO」
等が,持続可能な発展を目指して,社会との良
は環境負荷削減緑字ECOと社会貢献緑字ECO
好な関係を保ちつつ,環境保全への取組を効率
の区分されている.前者は,環境負荷の改善状
的かつ効果的に推進していくことを目的として,
況を示したものであり,環境負荷の重要性によ
事業活動における環境保全コストとその活動に
ってウェイト付けを行った上で加重平均したも
より得られた効果を認識し,可能な限り定量的
のである.後者は地球環境保護や環境教育活動
(貨幣単位又は物量単位)に測定し伝達する仕
にいくら投入したかを示したものであり,前年
組み」1)と定義している.つまり,環境会計は
度対比で算出される.
地球環境をコストフリーの資源として無制限に
環境会計は,その利用目的から外部環境会計
38(312)
横浜経営研究 第24巻 第4号(2004)
と内部環境会計に区別される.外部環境会計は,
資す機能は後者である.
主としてエコファンドをはじめとする投資家,
ステークホルダーからの環境経営に対する要
株主,消費者等のステークホルダーが投資意思
請の高まりや各種の環境規制の強化がなされる
決定や環境保全活動のガバナンスに利用するた
なかで,環境性や安全性に対する制約から企業
めの情報を提供する会計である.一方,内部環
が使用可能な資源が制限され,リサイクルを前
境会計は,環境保全コスト・環:境保全効果・環
提とした生産プロセスへの転換が求められてい
境保全対策に伴う経済効果等を把握して,経営
る.こうした状況は,企業にとっては追加的な
資源の最適配分を行うための情報を提供する会
コスト負担の増加となって企業経営を圧迫する
計である.わが国の環境会計は実務面では外部
ことにもなりかねない.つまり,環境保全活動
環境会計からスタートしたという経緯を持つが,
を行うにあたって負担しなければならないコス
今後は循環型社会の形成推進を受けて内部環境
ト(以下,環境コストと表記)と,そこから産
会計の比重が高まっていくと考えられる.
み出される経済効果を正確に把握し,適切な経
近年,環境負荷を削減し循環型社会を形成す
営意思決定を行っていくことがトップマネジメ
るための法規制が実施されているが,2001年1
ントに求められる重要な経営課題となっている.
月に施行された循環型社会形成推進基本法は,
「内部環境会計」の主たる目的は「製品,工
①社会の物質循環の確保,②天然資源の消費抑
場,事業部および全社における各レベルの経営
制,③環境負荷の低減を求めている.同法に基
者およびスタッフの意思決定を容易にするため
づき,容器包装リサイクル法(2000年4月施行),
に,環境保全活動および投資等の環境保全上必
家電リサイクル法(2001年4月施行),③建設
要とされる活動に伴う財務的影響および生態的
資材リサイクル法(2001年5月施行),④家庭
影響について,記録,分析および報告すること
用パソコンリサイクル法(2003年10月施行),
である」2)と定義されている.環境コストを正
⑤自動車リサイクル法(2004年施行予定)等の
確に把握し,その配分を最適化することによっ
規制が実施され,製品やサービスのライフサイ
て,経済的効果の最大化を目指す企業にとって,
クルコスティング(LCC)が企業経営にとって
「内部環境会計」の経営意思決定における重要
不可欠の要素となりつつある.
性はますます拡大していくものと予想される.
こうした循環型社会形成の推進を受けて,企
わが国では,1999年にSRIの一種であるエコ
業のトップマネジメントは,環境保全活動と競
ファンドの運用が開始されたが,現在に至るま
争戦略を両立させる意思決定を行うことが求め
で13本(投資残高約856億円)の投資信託が設
られているのである.つまり,環境経営を推進
定されている.米国ではネガティブスクリーン
するための意思決定に有用な情報を提供するこ
とを目的としている内部環境会計から提供され
型SRIが多いのに対し,日本では環境への配慮
や製品・サービスの安全性等に対する姿勢が評
る経営情報が,企業の持続可能性を大きく左右
価できる企業に投資するポジティブスクリーン
していくと考えられる.
型SRIが主流となっている.したがって,株主
や投資家を始めとするステークホルダーに企業
4.3 環境会計の必要性
の環;境行動の理念や事業活動における環境保全
環境会計はその機能から,「内部環境会計」
活動,さらにその成果を的確に開示していくこ
と「外部環境会計」という二つの側面を持って
とが,企業の評価に大きな影響をもたらすこと
いることは既に述べたとおりである.企業内部
になると予想されている.環境会計のもう一つ
の意思決定に資する機能が前者であり,エコフ
の機能である「外部環境会計」は,このような
ァンド等の外部ステークホルダーの意思決定に
株主,投資家,市民社会等の企業外部のステー
企業評価の新しい潮流と環境経営(長谷川直哉)
クホルダーに対するアカウンタビリティーを果
たす上で重要な役割を担うことが期待されてい
(313)39
5.環境ブランドが生み出す企業価値
るのである.
5.1 エコファンドの投資哲学と企業価値
環境会計ガイドラインは「外部環境会計」を
わが国で現在運用されているエコファンドの
「企業等の環境保全への取組を定量的に測定し
多くは「環境問題に積極的に取り組む企業は,
た結果を開示することによって,消費者や投資
中長期的な視点からもみると企業価値が上昇す
家,地域住民等の外部の利害関係者の意思決定
る可能性が高い」という投資哲学の下で環境保
に影響を与える機能」3)と定義している.エコ
全活動に関する定性評価を中心にファンドに組
ファンドを始めとするわが国のSRIファンドの
入れる銘柄を決定している.ここでいう企業価
行っている企業評価の多くは,PLAN−DO−
値とは株式価値を意味しており,市場で決定さ
SEEの視点から企業の環境保全活動システムの
れる株価が将来的に上昇する可能性が高いとい
フレームワークの整備状況や遂行体制に関する
うことである.このような投資哲学が採用され
定性評価が中心であり,「外部環境会計」はあ
る具体的根拠として,以下の諸点が考えられる
くまで参考データとして扱われているのが現状
が,その内容について検討してみよう.
である.その理由は,そもそも「外部環境会計」
①リスク要因の予防的排除
として開示される情報量が少ないことや開示情
リスクマネジメントの観点からみると,環境
報の測定基準が企業間で異なっていること等が
もリスク要因の一つと捉えることができる.
外部ステークホルダーの意思決定ツールとして
環境リスクへの予防的対応を行うことで,不
の利用を著しく制限しているからである.CSR
に関する社会の関心が高まるにつれて,CSRに
測の損失が発生するリスクを抑制することが
対する企業の経営姿勢や情報開示が企業業績や
力発電所のトラブル隠蔽事件は,実際に環境
株価に少なからず影響を与えていくことが考え
汚染を発生させたものではなかったが,環境
られる.
保全に対する企業姿勢を問われ,トップマネ
できる.2002年に発生した,東京電力の原子
「外部環境会計」は,企業がCSRという外部
ステークホルダーが求めるルールをいかに遵守
ジメントである会長および社長が辞職する結
しつつ,経済的利益を獲得したのかを開示した
環境保全に対する企業姿勢が反社会的行為と
ものであり,いかに高い収益を獲得しても,社
認識されたことによって失われた信頼を回復
会の要求するルールを逸脱した企業は評価され
するためには,多くの時間と費用を要するこ
ないのである.コーポレートガバナンスの観点
とになるのである.
からわが国でも機関投資家を中心にCSRを評価
②コスト削減ツールとしての利用
するための枠組みが構築されつつあり,CSRと
環境保全の観点から生産プロセスやサービス
株式投資との関係が強まっていく傾向を示して
の内容を見直すことによって環境負荷の低減
いる.企業はこうした企業活動へのカバナンス
が図られるのみならず,資源の再利用・代替
強化に対応し,適正な企業評価を獲得していく
資源の利用によってコスト削減の可能性があ
ために「外部環境会計」を外部ステークホルダ
る.例えばアサヒビールでは,設備投資の増
ーとのコミュニケーション・ツールの中核と位
強によって生産活動によって発生する二酸化
置付け活用していくべきである.
炭素の回収装置を充実化させたことで,地球
果となり,株価への影響も少なからずあった.
温暖化対策としての二酸化炭素の発生削減と
外部から調達していた二酸化炭素の購入費用
の削減を実現している.
40(314)
横浜経営研究 第24巻 第4号(2004)
(表2)国内自動車メーカーのリサイクル事業展開
主な取り組み
リサイクル設計に向け
スフィードバック体制
概要
メーカー
トヨタ自動車
自動車リサイクル研究所を設立し、解体/リサイクル性に係わる情
のフィードバック体制を強化
フ整備
日産自動車
関連会社に委託して、情報のフィードバック体制を整備
リサイクル性評価シス
自動車メーカー
新型車を対象とするリサイクル性の事前評価システムを開発
eムの構築
e社
、
自動車メーカー
部品の素材単一化や、エンプラからPPへの代替推進など解体・リサ
e社
Cクルを容易にするための部材変更
潟Tイクルの推進
富士重工
本田技研
トヨタ自動車
解体事業者と共同で自動車用窓ガラスをグラスウールにリサイクル
キる事業を展開。更に本体として自動車リサイクル事業に参入。
使用済み自動車から回収したバンパー(PP製)を100%新車用にリ
Tイクルする技術を確立
ASRの精密分別による有価金属の回収・リサイクルを実証
(出所)内藤貴子、竹ヶ原啓介「使用済み自動車リサイクルを巡る展望と課題」『調査第36号』日本政策投資銀行、2002年、53頁より作成
③法規制に対する主体的な対応
では,何故ビジネスチャンスが拡大するので
循環:型社会の形成を推進するために循環型社
あろうか.ここでは2004年に自動車リサイクル
会形成推進基本法(2001年1月施行)が制定
法の施行が予定されている自動車業界を例にと
され,さらに廃棄物の適正処理とリサイクル
ってみてみよう.
の推進を目的とした廃棄物処理法(2001年4
自動車リサイクル法の施行によって,自動車
月施行),資源有効利用促進法(2001年4月)
メーカーは資源循環システムを盛り込んだ新し
が制定された.これらは,高度経済成長によ
い生産プロセスを構築する責任を負ったことに
って産み出された大量生産・大量消費・大量
なる.部品・資材調達をはじめ,設計・生産プ
廃棄という経済プロセスからの脱却を目指し
ロセスの全ての段階においてリサイクルを意識
ているのである.このような新たな法令の制
した生産・流通システムを開発していかなけれ
定や規制内容の強化に対して,企業自らが主
ばならない.同法で自動車メーカーに義務付け
体的な対応を行うことによって市場からの信
られるリサイクル目標は,エアバッグのリサイ
頼を獲i得し,不可避的な環境保全コストの増
クル率が2005年に85%,ASR(Automobile
加を相対的に抑制することが可能となるので
Shredder Residue)リサイクル率が2005年に
ある.
30%(リサイクル実効率88%相当),2010年に
④成長要因の取り込み
50%(同92%相当),2015年に70%(同95%相
環境問題に主体的に対応することで,市民社
当)となっている.ASRのリサイクル技術は現
会が企業に対して期待する社会的責任の遂
行が可能となり,顧客層の拡大や人材の確保
段階では確立しておらず,また,ASRはフロン
やエアバッグに比べ処理コストが高いため,自
が期待できる.また,環境保全活動を通じて
動車リサイクル法で義務付けられた目標を達成
蓄積したノウハウを活用した製品開発,市場
するためには,低コストで効率的なリサイクル
開拓などのビジネスチャンスが拡大する.
システムの開発が必要となっている.表2は国
内自動車メーカーのリサイクル事業の展開状況
企業評価の新しい潮流と環境経営(長谷川直哉)
(315)41
をまとめたものである.自動車メーカー各社は,
は現実的に不可能である.社債の格付は,投資
複数のグループに分かれてリサイクルシステム
家が投資に際して,企業の信用リスクを把握す
構築を図っており,今後,使用済み自動車のリ
るための補完機能を持つように,環境格付は,
サイクルコストのミニマム化がメーカーの競争
ステークホルダーが企業の環境保全行動を理解
力に大きく影響してくるものと考えられる.
するための補完機能を持つためのものであると
5.2 環境情報による環境格付
位置づけるべきである.環境格付が環境サステ
ナビリティー貢献性という視点から企業めあら
5.2.1 環境格付の目的
ゆる活動を評価するものであることから,投資
われわれが一般的に格付と呼んでいるものは,
家,金融機関,取引先,消費者,地域住民など
事業会社や金融機関あるいは国が発行する債券
のステークホルダーがそれぞれの立場で環境格
(社債・コマーシャルペーパー)の元本および
付を利用することができるのである.
利息が予定通り支払われる確実性の程度(信用
わが国は,二酸化炭素の排出による地球温暖
リスク)を分析し,ランキング付けするもので
化,エネルギー資源の枯渇,酸性雨の発生など
ある.債券格付は,あくまで資本市場における
大量生産・大量消費に起因するさまざまな環境
投資家を対象にしたものであり,投資行為にお
問題の解決を迫られる一方で,長期化する不景
けるリスク判断の指標として利用されているの
気によって経済的利益の追求への欲望は,企
が,今や企業だけなく一国の経済運営にまで影
業・個人を問わずますます過熱化している.こ
響力を持つ指標として広く浸透している.
のようなアンバランスを早急に是正するための
それでは,環境格付とはどのように定義づけ
社会経済システム改革を追求していかなければ
られるのだろうか.環境格付プロジェクト
ならない.この意味からも環境格付は,経済的
[2002]は「企業の環境経営における3つのボ
利益の追求と環境保全を両立させるためのシス
トムラインー自然,社会,経済一を押さえて,
テム改革の一環として行われなければならない.
企業の環境サステナビリティー維持と環境保全
環境格付は,環境性を評価の中核とし,これに
の実現に対する貢献度(環境サステナビリティ
社会性および経済性を加味して行われるもので
貢献性)を基軸として企業の全活動を評価する」
ある.つまり,環境格付は企業が行う事業活動
と環境格付を定義している.本稿ではこの定義
のプロセスを環境性の視点から評価する格付で
に基づいてその意味するところを検討していく
あるといえよう.
ことにしよう.
債券格付には,「情報の非対称性の是正」お
環境問題への取り組みが企業活動の将来性に
よび「情報生産コストの軽減」効果があるとさ
大きな影響力を持つと考えられようになってい
れてきたが,環境格付にも,同様の効果がある
ることは既に述べたとおりである.企業にとっ
と考えられる.企業の環境行動に関する情報は,
ては,自らの環境保全行動をステークホルダー
環境報告書など企業サイドからのディスクロジ
から正しく評価されることが経営戦略上も必要
ャーによって容易に入手することができるよう
であり,環境報告書などを通じて自律的・主体
になってきた.しかし,ステークホルダーが十
的に情報開示を行っている.しかし,企業が提
分な情報を得ることができたとしても,その情
供している多種多様なディスクロジャーをあら
報を分析し理解するためには,専門的な知識や
ゆるステークホルダーが理解できるとは限らな
い.2000年度において430社が環境報告書を作
能力や一定のコストが必要と考えられる.欧米
成・公開している4)が,個人がこれらの環境報
し,わかりやすい形で市民に情報提供を行う
告書のすべてに目を通して相対比較を行うこと
NPOも多いが,わが国のNPOがこうした役割
諸国では,企業や国が発行する環境情報を分析
42(316)
横浜経営研究 第24巻 第4号(2004)
を担うには,まだまだ時間を要するといわざる
・取引業者への協力要請
を得ない.環境格付は,情報の発行体と受け手
の「情報の非対称性」を埋めるとともに環境清
②環境情報開示および環境コミュニケーション
報の収集・分析等に要する「情報生産コスト」
自社の事業活動に伴って発生する環境関連情
を軽減する効果がある.
報をどの程度開示しているのか,環境関連情報
をステークホルダーに伝える取組みを主体的に
5.2.2 環境格付における評価スクリーン
行っているか等が評価される.環境格付が企業
損保ジャパン・アセットマネジメントが運用
の事業活動のプロセスを評価するものであるた
を行っているエコファンドでは,企業の環境保
め,環境コミュニケーションは事業活動の結果
全活動を「環境マネジメントの展開状況」,「環
報告としての役割だけではなく,事業活動の遂
境情報開示および環境コミュニケーション」,
行過程で生じた問題をステークホルダーととも
「環境負荷および環境効率の改善」という三つ
に解決の手段として位置づけられるべきもので
の視点から分析している.ここでは,3項目か
らなる評価スクリーンのポイントについてみて
ある.環境格付が企業とステークホルダーの関
心領域を明らかし,環境問題の解決へ向けた両
いくことにする.
者の協働関係構築には,双方向コミュニケーシ
①環境マネジメントの展開状況
ョンを確立することが不可欠である.この意味
環境マネジメントは,環境サステナビリティ
では,環境コミュニケーションは環境マネジメ
ー経営を推進するうえで,最も重要な要素とい
ントシステムの根幹を担うものといえる.環境
える.企業が組織体として環境性を反映した事
情報開示および環境コミュニケーションの評価
業活動を継続するためには,トップマネジメン
スクリーンは以下の項目を中心に構成されてい
トから従業員の一人一人に至るまでが,環境保
る.
全活動に対する価値観を共有することが必要で
・環境コミュニケーションに関する方針
ある.次に,共有化された価値観に基づく具体
・ステークホルダー(消費者,投資家,地域
的なアクションプログラムにしたがって,全従
社会,取引先)とのコミュニケーション
業員は各々の職務を応じた具体な行動として実
践されなければならない.ISO14001’ 焉C企業
・社員とのコミュニケーション
のあらゆる活動領域における環境パフォーマン
・海外事業拠点における地域社会とのコミュ
スの改善を継続的,組織的にマネジメントする
ニケーション
・環境報告書の開示内容
ことを目的として導入されているが,マネジメ
ントの重要性を認識している点は環境格付も
③環境負荷・環境効率の改善状況
ISOI4001と共通性を持っている.環境マネジ
事業活動に伴って発生する環境負荷について,
メントの展開状況に関する評価スクリーンは以
どのような改善計画を有しているのか.また,
下の項目を中心に構成されている.
改善状況を踏まえ今後どのような具体的な改善
・環境方針の内容,環境方針が及び範囲
施策を行うのか等が,環境格付の関心領域とな
・環境マネジメントを展開するための専門組
る.例えば,生産部門では,製造プロセスや製
織(職務分掌,スタッフ)
品に関する環境負荷改善計画の策定と実施状況,
・内部環境監査の実施(実施対象,監査項目,
環境効率改善に向けた技術開発,ライフサイク
評価方法,取締役会への報告)
ル・アセスメントの実施状況などが主な評価対
・海外事業拠点への指導・支援
象となる.環境負荷・環境効率の改善状況の評
・ISO14001の取得範囲
価スクリーンは以下の項目を中心に構成されて
(317)43
企業評価の新しい潮流と環境経営(長谷川直哉)
(図2)
さややつがケゆゆザぴヲれロゆいサやツやひツゆツドヴゆサ ゆリサめロねなりげサいワゆザハゆいがケゆひりめがにサゆがバゆワゆケツゆ サゆゆヘサいひゆぴゆをレいりヤゲワヤザゆヲマケザめりでワザひワやいゆがゆでリヤがゆやケめ すひすいケでヤドがヴゆをやな
鴇晒剛…節w岬帽
1 蕪、葺 ・ :
L∬砕}吊
1 蕪 :
な セ
奎
1 霧惑 1
ξ 4
践 1
1 纂 l
》 ・
i璽赫 i
二心
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ノ 》
ジ が セ
’
1睾難壁 :
享㌃
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黙∼
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} 論 禽
ホ ぐ
φ
: 盤,奮 ;
層飾㍉穿
壷 奪
農
│瀦
: 霊 1
罫
ヲ山
ホ ホ
軸ぜ浄《
然%海鯵眠淋 ノ
・ 肇鳶 ・
紳魂
鼻
: 零 l
l 桑蔭 :
: 」四脚 謡鱗囎馨 轟鞭澱 訟銭・騰 3壌轟騰 撫距鮪 3鋤艇i 諏舞擦ぎ 轟湊・灘 論嚢・ξ辮 轟舞欝;
き モ
・ 一鱗蓑牌燃鱒・織窒蜘 ……隔題搬箋翻き ・
1.騨__牌___。_。鱒___⇔聞ヴ塾__。___γ。鷲__。__ゆ。桝餌煙___。纏__。_卿陣。騨輝蝉__替騨。_Ψ躰。。。_繍鰍襯捻。3
(出所)Domini Social Investments, http://www.domini.com/search/index.htm
いる.
2)は米国のK:LD社が組成した「Domini 400
(生産プロセス)
Social Index」のパフォーマンスを示したもの
・製造工程における環境削減目標の策定とパ
である.1990年1月∼2000年1月までの10年間
フオーマンス情報の把握
において,「Domini 400 Social Index」が
・環境に関する技術開発への取り組み
「S&P500」をほぼ全期間上回っていることが示
・化学物質の管理状況
されている.
・省エネ・省資源の取り組み
・廃棄・排出物削減の取り組み
運用パフォーマンスは,通常,いくつかの項
・土壌・地下水汚染対策の実施状況
目に分解して評価される.一般的な株式投資の
場合は,「市場リスク連動効果」「業種配分効果」
(製品・サービス)
「個別銘柄選択効果」「その他要因」といった項
・製品の環境パフォーマンス情報の把握
目に分解してパフォーマンスへの寄与度を定量
・ライフサイクル・アセスメントの導入
的に算出している.しかし,現状のパフォーマ
・グリーン購入の実施方針・実施状況
ンス評価システムでは,非定量項目である
「SRI効果」を測定することができない.「SRI
5.3 環境格付と株式価値の関係
効果」は「その他要因」に含まれる一要素とし
エコファンドの運用実績を評価する際に議論
て片づけられてしまうのが一般的である.モダ
の対象となるのが,環境格付と運用パフォーマ
ン・ポートフォリオ理論では,理論的に説明が
ンスの関係についてである.欧米ではSRIファ
ンドの投資成果を評価するベンチマークとなる
できない現象はアノマリー(anomaly:異例,
変則)と呼ばれるが,エコファンドにおける環
インデックスが組成され,SRIファンドの優位
境スクリーンもパフォーマンスに対する定量的
性を説明する根拠として使用されている.(図
な説明が出来ない事ことから一種のアノマリー
横浜経営研究 第24巻 第4号(2004)
44(318)
(表4)
ポートフォリオ
収益率(%)
値
年率
アクティブ
ベンチマーク
リスク(%)
収益率(%)
リスク(%)
収益率(%)
リスク(%)
一20.24
483
一30.74
4.7
10.5
1.4
一5.18
16.71
一8.28
16.29
3ユ
4.85
と見られている.こうしたことが,エコファン
ースの時価総額ベースでのパフォーマンスを市
ド等のSRIファンドの優i位性を曖昧にしている
場平均であるTOPIX(東証株価指数)と比較
のである.こうした課題を抱えながらも,SRI
は運用実績を着実に積み上げており,運用パフ
【測定条件等】
ォーマンスが現状の定量的分析になじまないこ
ポートフォリオ:環境ユニバース
とを理由に,SRI投資を否定することは出来な
ウエイティング:時価総額
いといえよう.
ベンチマーク:TOPIX
一般的な投資スタンスでは,SRI投資は,環
境・社会・倫理的側面を反映させた評価スクリ
セクター種別:東証33業種
ーンによって投資対象となるユニバースを制約
期 間:1999年10月∼2003年12月
するため,運用パフォーマンスとはトレードオ
ベータ値:0.957
したものである5).
期 種:月次
フの関係にあると見られてきた.しかし,一連
の企業による不祥事を踏まえ,リスクマネジメ
測定機間における株価収益率は,「環境ユニ
ントの観点から社会的利益の達成が企業評価に
バース」が一20.24%に対して,ベンチマーク
とってはプラスであると認識されるようになっ
であるTOPIXは一30.74%にとなっており,「環
てきている.つまり,SRIと運用パフォーマン
境ユニバース」が10.50ポイントほどTOPIXを
スはトレードオフの関係にあるのではなく,む
上回っている.リスク(標準偏差)は「環境ユ
しろ相関性が高いと認識され始めているのであ
ニバース」が4.83%に対してTOPIXは4.70%と
る.
やや「環境ユニバース」の方が高くなっている.
ここでは,損保ジャパン・アセットマネジメ
しかし,1リスクあたりの収益率(シャープレ
ントのエコファンド(損保ジャパン・グリーン
シオ)は「環境ユニバース」が一4.19に対して
オープン)を例にとって,環境格付と株式価値
TOPIXは一6.54であり「環境ユニバース」が優i
の関係についてみてみよう.
れているという結果を示している.ベータ値と
損保ジャパン・アセットマネジメントのエコ
は,市場収益率(TOPIX)を説明変数,個別
ファンドは,既に述べた環境スクリーニングに
よって,投資対象となる企業を抽出している.
銘柄を被説明変数として回帰分析を行い,その
連動i生を表すものである.ベータ値が1のとき,
これらの企業群は環境ユニバースと呼ばれてい
市場収益率(TOPIX)が1%上昇するときに
る.実際のファンドに組入れる銘柄は,この環
その銘柄の時価上昇率も1%であると推測でき
境ユニバースに含まれる中の企業の中から財務
る.ベータ値が1より大きい場合は,市場が上
的スクリーニングを経て抽出される.この環境
昇するときにそれ以上の割合で上昇し,逆に市
ユニバースは2003年3月現在330社で構成され
ている.(表4)は,環境ユニバースが組成さ
場が下落するときにそれ以上の割合で下落する
れた1999年10月∼2003年12月までの環:境ユニバ
去3年間の収益率実績をもとに算出したヒスト
ことになる.本分析で使用したベータ値は,過
企業評価の新しい潮流と環境経営(長谷川直哉)
(319)45
(図3)
…鐵 TOP【x一 盤
簸熱_漁∴{1
智無翁’ 解’曲φ㊨豊舘俘” ・・♂v綿 ’箱M臥
1義民韓::;跨1蔓:一匹玉賦:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i
馨霧多…!::::::::::駅…玉::::::二£:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;
鍛蚤曇i藝1塞熱二il套1[鑑能莞ll蓑ゴ
iil謬ll蒸1;ll蒸lll蒸1黛誉ll鷺
5◎
諾鑑魂試犠㌶轟轟轟轟魂銭試
リカルベータである.「環境ユニバース全体」
のベータ値は0.957であり,ほぼ市場収益率に
連動する特性を有している.
ねが必要であろう.
6.環境経営と企業評価のフレームワーク
以上の実証分析が示すように,環境という非
6.1 環境経営に対する市場のガバナンス
財務的基準によって選別された環境ユニバース
環境への取り組みを企業評価の中心に据える
の投資収益率が市場平均(TOPIX)を上回っ
という考え方は,企業の本質を問い直すもので
たことは,環境ユニバースを選択した際の環境
ある.最近,企業価値の創造を標榜する企業価
基準が投資収益率にプラス寄与する可能性を示
値経営が注目を集めている.企業価値経営論で
している.この結果は,環:境格付が相対的に高
は,財務会計論や経営戦略論の成果を取り入れ
格付である企業の株式価値(株価)は中長期的
ながら,ROA(総資産利益率)やROE(総資
に上昇する可能性が高いというエコファンドの
本利益率)といった資本効率を表す指標を重視
投資哲学に対して一定の説明力を与えたものと
するものである.
考えることができる.言い換えるならば,非財
企業価値経営論では,「業績評価」「投資意思
務的効果を定量的に算出することができない現
決定」「インセンティブ・システム」「コミュニ
状では,環境要素の投資収益率への寄与度を具
ケーション活動」が経営戦略を支える柱となっ
体的に提示することに限界があるが,その相関
ており,従来の財務指標において非財務指標を
性は十分を推定できるといえよう.但し,実証
業績評価指標に加える試みを行っている.ここ
分析の測定期間が3年6ヶ月と短期間であるこ
で取り入れられた非財務指標は,「顧客のロイ
とからも,今後長期にわたる実証分析の積み重
ヤリティー・満足度」,「従業員のスキルアップ」,
46(320)
横浜経営研究 第24巻 第4号(2004)
「製品品質」など,業績の先行指標となるもの’
にして複雑化する企業行動の評価軸を提示する
に限られている.(伊東・加賀谷[2001])
ものである.株価に代表される企業評価が行き
企業価値経営論は,経済的組織体としての側
すぎた結果,企業目的の方向性がステークホル
面を強調したものである.つまり,企業をヒト,
ダーの求めるものとは乖離してしまったのでは
モノ,カネの結合体である企業が生み出す付加
ないだろうか.環境格付には,企業とステーク
価値を精緻化した財務指標で捉えようとする考
ホルダー双方の価値観の仲介役としての機能が
え方である.そこでは,付加価値の算出効率が
求められている.
重要視され,より少ないコストで高い付加価値
を算出する企業が収益性の高いエクセレント・
6.2 新しい企業評価ルールの創出
カンパニーとして評価される.企業活動の目的
エコファンドにおける環境格付やSRIファン
としての利潤獲得を否定するものでないが,利
ドにおける社会性・倫理性評価は,財務データ
潤獲i得だけに目的を限定する必要はないのでは
に基づく経済的評価を中心に行ってきた従来の
ないだろうか.環境格付の発想は,企業を利潤
企業評価に新しいルールを付加しようという試
獲得のみを追求する経済的組織体とし,企業価
みである.市場中心主義を肯定する立場は,市
値を株価を基準として評価してきた従来の企業
場には企業に関するあらゆる情報取り込まれ,
価値観に疑問を感じるところがらスタートして
その情報に基づいて企業価値が決定されている.
いる.
したがって,市場における企業評価(二株価)
企業を取り巻く状況は,日々変容し複雑化し
が唯一無二ものものであるという立場をとって
ている.企業経営は,こうした複雑化した要素
いる.しかし,今までみてきたように,市場で
を総合判断し,その中から企業の本質的な目的
は財務データとして取り込まれない情報は企業
を見出す作業である.企業に対して環境配慮型
価値を決定する要素とはなっていないのである.
経営を求める声が高まっているが,これに対し
て「環境問題を経営目的として取り込んでも株
つまり,環境保全活動をはじめとするCSRに関
する要素は,現在の市場ルールでは企業価値の
価が上がらない」という経営者がいる.企業が
構成要素とはなり得ないのである.A.ギデン
環境問題を避けることが出来ないことは経営者
ス[2000]は,「市場はほとんどすべてのとこ
の多くが認識している.しかし,その成果を評
ろで公共の善に資するという考えは愚かなもの
価する枠組みが確立していないために評価自体
である.市場は,それ自体が提供することが出
が曖昧になってしまうことを懸念している.し
来ない社会的・倫理的フレームワークなしに機
たがって,経営者は経営判断を単純化するため
に,株価を最大にすることを企業目的として設
能することができない」と指摘している.CSR
は企業の経済的利潤追求を否定するものではな
定しているケースが案外多いのではないだろう
い.むしろ,持続可能な成長という枠組みの下
か.こうした経営者の行動に対して,「株価を
で,企業の経済的利潤の獲得と社会的責任を両
単純化の基準に用いていいかどうか自体に大き
立させようとすることを目的としている.その
な疑問を感じるが,それ以上に曖昧になってし
ためには,企業価値に対する新しい概念を定着
まうから単純化するという発想自体が,企業と
させる必要がある.現在の市場における企業評
いう複雑な存在を率いていく立場の経営者とい
価システムでは,CSRを取り込んだ企業評価が
う存在の意味とはそぐわない」という指摘もあ
る.(伊丹敬之[2001])
できないことは明らかである.したがって,
CSRを企業評価の決定要素に加えた新しい企業
環境格付は,企業評価を株価という単純化し
評価のフレームワーク構築が必要となるのであ
た枠組みで捉えるのではなく,環境問題を視点
る.欧米で発展してきたSRIは, CSRを取り込
企業評価の新しい潮流と環境経営(長谷川直哉)
(321)47
んだ企業評価の一つの方向性を示したものであ
5)分析ツールとして日経QUICK情報株式会社が
る.現在の日本は,欧米流のCSRの考え方をベ
提供しているAMSUS(Asset Management
ースにしつつ,わが国の市民社会が求めるCSR
Support System)のバックテストソフトを分析
ツールとして使用した.
を組入れた企業評価の新しいフレームワークを
模索している段階である.わが国では,地球環
境問題に対する危機感の高まりから,環境面に
関するCSRを組み込んだ企業評価が進んでいる.
エコファンドはその代表的な事例である.しか
し,市民社会が求めるCSRは環境だけではない。
欧米諸国において,CSRとして取り上げられて
いる項目は非常に幅広い領域に及んでいる.日
本が欧米流のCSRをそのまま受けいれる必要は
ないが,今後,企業価値の決定要素としての影
響力が高まっていくと考えられるCSRに対する
市民社会のコンセンサスを構築していく必要が
あるといえよう.
注
1)環境省『環境会計ガイドライン(2002年版)』
2002年,3頁
2)河野正男『生態会計論』森山書店,1998年,
281頁
3)前掲『環境会計ガイドライン(2002年版)』3
頁
参 考 文 献
河野正男『生態会計論』森山書店,1998年
河野正男『環境会計 理論.と実践』中央経済社,
2001年
環境格付プロジェクト著
『環境格付の考え方一環境格付のステークホル
ダーと評価理論』税務経理協会,2002年
環境省『環:境会計ガイドライン(2002年版)』2002年
環境省『環境会計ガイドブック(2002年版)』2002年
谷本寛治編著『SRI社会的責任投資入門 市場が企
業迫る新たに規律』日本経済新聞社,2003年
高巌・辻義信他著「企業の社会的責任 求められる
新たな経営観』日本規格協会,2003年
水口 剛『企業評価のための環境会計』中央経済社,
2002年
渡部一亮『アングロサクソン・モデルの本質 株主
資本主義のカルチャー』ダイヤモンド社,2003
年
伊藤邦雄・加賀谷哲之「企業価値と無形資産経営」
『一橋ビジネスレビュー2001年WIN(49巻3号)』
2001年12月
伊丹敬之「企業という生き物」
『一橋ビジネスレビュー2001年WIN(49巻3号)』
2001年12月
4)河野正男・朴鐘敏「環境報告書の動向と特徴」
『横浜野国際社会科学研究第7巻第2号』2002
年,95頁
〔はせがわ
なおや 損保ジャパン・アセットマネジメント(株)
運用部投信運用グループ部長〕
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