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憲法9条改変問題 Q アンド A

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憲法9条改変問題 Q アンド A
憲法9条改変問題 Q アンド A
改訂 2006 年 2 月 15 日
水草修治・補足コメント菅原正道
日本国憲法 第二章 戦争の放棄
第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武
力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認
めない。
序
立憲主義
Q0.立憲主義とはなにを意味しているのか?
A.立憲主義とは、<憲法は国のために民を縛るものではなく、民のために国を縛るものだ>という
ことを意味している。歴史的には 13 世紀英国でジョン王の悪政に抗し、諸侯が団結して王に認めさ
せたマグナ・カルタ(大憲章)に始まる。日本国憲法第 99 条にも、憲法が国家公務員を縛るものだと
いうことが明記されている。
第99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護
する義務を負ふ。
Q0-2.自民党の新憲法草案はどのように 9 条を変えようとしているのか?
A.新憲法草案は以下のとおり。
自民党 新憲法草案(2005 年 11 月 22 日)
第二章 安全保障
第九条(第一項は改訂なしなので省略)
第九条の二 我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指
揮権者とする自衛軍を保持する。
2 自衛軍は、前項の規定による任務を遂行するための活動を行うにつき、法律の定めるところに
より、国会の承認その他の統制に服する。
3 自衛軍は、
第一項の規定による任務を遂行するための活動のほか、
法律の定めるところにより、
国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び緊急事態における公の秩
序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。
4 前二項に定めるもののほか、自衛軍の組織及び統制に関する事項は、法律で定める。
*改変のポイントは次の 4 つである。
1.章の名称の変化:
「戦争の放棄」⇒「安全保障」
軍事力によらない平和から、軍事力による平和という大転換を意味している。
2.
「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。
」⇒ 「自衛軍を保持する」
3.「国会の承認その他の統制」と言われている意味は、自衛軍は国会の承認なしで、総理大臣だけで
も活動可能であるということである。
4.自衛軍の活動内容は言い換えると、次の4点である。問題は特に②と③である。
①国防
1
②国連軍、米軍の戦争への加担
③有事における国内秩序の維持のため自衛軍は国民に銃を向ける。
④災害救援活動。
第1章
国防について
Q1. 他国が日本を侵略してきたとき国民を守る軍隊を持つことは当然ではないか?
A. アジアの隣国がわが国を侵略することは想定できない。日本を侵略する国は具体的にはどの国か。
中国?北朝鮮?資源のない日本を侵略する危険を冒して、彼らにどういう得があるか?・・・何もな
い。アジアの他国の侵略を想定することはナンセンスである。
また、軍隊は個々の国民を守るためには機能しない。軍隊は他国を攻撃し、自国の国家体制を維持
するために機能するものであって、個々の国民を守る組織ではない。国家体制維持のためには国民を
犠牲にする。たとえば沖縄戦のときに、沖縄県民をより多く死に追いやったのは米軍よりも日本軍で
あった。 新憲法草案第 9 条でも、
「緊急事態における公の秩序を維持し」とあるように、自衛軍は
国家体制維持のため国民に銃を向ける。
Q2. 北朝鮮はテポドンの実験をして実際に日本をおどしている。本当に北朝鮮からテポドンによる
攻撃がある可能性はないのか?
A. ない。北朝鮮が日本を攻めても、何の得もないからである。
その立場に組するわけではないが、軍事力による抑止論から見ても可能性はないことを、軍事評論
家前田哲男氏が述べている。
第一にテポドンに搭載できる爆薬は 1 トン未満であるのに対して、自衛隊が 48 機保有するF2攻
撃機の搭載爆薬は8トンで、これでピョンヤンまで往復することができる。つまり日本にテポドンを
発射した場合、報復のほうがはるかに大きい。
第二に北朝鮮の GNP、人口、軍事力、日本との間に海をはさんでいるという地理的なことを考え
ても、テポドン以外に脅威はほとんどない。それを『世界最大の軍事大国』アメリカと『世界第二の
経済大国』日本が組まなければやられるというお話は、憲法を変えたい人々がほどこしたどぎつい厚
化粧である。
北朝鮮の指導者金正日氏は狡猾で合理的な政治家である。必敗の戦争はしない。北朝鮮が日本にテ
ポドンを暴発させる唯一の可能性は、米軍が北朝鮮を日本の基地から先制攻撃した場合である。ゆえ
に肝心なことは米軍に北朝鮮を先制攻撃させないことである。
菅原正道:北朝鮮から発射されたミサイルが日本を飛び越えて太平洋に着弾したと政府が公式に発
表し、マスコミもそう報じているのは世界中で日本だけである。米、中、露、韓国政府もマスコミも
あれはロケット打ち上げ実験の失敗という公式見解を出している。それを認めずに国民世論操作が行
われているのである。
Q3. 台湾独立をめぐって、米国が中国と戦争になる可能性があるといわれるが?
A. 米中戦争の可能性は相互に経済的に依存性が強いゆえに、ありえない。13億人という大市場を
失うなどということは米国の財界が決して許さない。中国にとっても、輸出相手国の第一位は米国、
第二位香港、第三位日本である。米日を敵に回せば中国の経済は破滅する。ゆえにかりに台湾独立問
題をめぐって小競り合いはあっても戦争は起こせない状況である。
Q4. 米軍基地があるから日本は他国の軍事的脅威から守られているのではないか?
A. 軍事基地こそ攻撃の標的となる。先の戦争で、山や野原や田畑が爆撃されただろうか? 爆撃は
2
軍事基地・軍需工場に集中してなされる。軍事基地があるからこそ、危険なのである。(Q24-2
6を参照)
菅:広島の原爆はほぼ正確に、中国(地方の意)軍司令部の真上に投下されている。長崎に原爆が落
とされたのも軍のための造船所があったからである。軍事基地は他国の攻撃の標的にこそなれ、決し
てわたしたちを守らない(守れない)。
Q5. では米国の意図としては、なんのため日本に基地を配置しているのか?
A. 米軍基地は、日本を守るためではなく、米国が日本とアジアを支配下に置くために配置されてい
るのである。米国は、アジアが連帯して、アジアでの主導権を失うことを恐れている。ネオコン(米
国新保守派)は、アジアへの関与は主導権を握ることが目的であると明言している。現在、米軍再編
が行なわれ、ワシントンやグァムに分散していた司令部が日本に集中されつつある。朝鮮、台湾海峡、
インド-パキスタン、中東での戦争を効率よくするためである。
米軍基地は日本各地に 134 箇所あり、面積で言うとその 75 パーセントが沖縄に集中している。米
兵は日本に 7 万人駐留している。この基地を維持するために日本はいわゆる「思いやり予算」として
2006 年度 2326 億円を計上している。日本に駐留させておくほうが、米国にとっては安上がりなので
ある。
Q6. 他国の過激派によるテロを防ぐためにも軍隊が必要ではないのか?
A. テロが軍隊で防げるという宣伝は空想である。それは、最大の軍事大国米国がテロを防げないこ
とで実証済みである。テロは、その原因である貧困や国家間の憎しみを取り除く平和外交によっての
み、防ぐことができる。また目先の具体的なテロ対策は警察によるのであって、軍隊ではどうにもな
らない。テロだけでなく、戦争も、平和外交によってのみ防ぐことができる。平和外交こそ最も現実
的なテロや戦争の抑止力であり、そのためにこそ税金を使うべきである。
菅:
「戦争」というものが独立して起るのではない。戦争も政治の一部であり、結果でもある。戦争
になった時点で政治としては失政であり、政治の機能不全である。戦争を選択肢に入れない政治が目
指される
べきである。
第2章
国際貢献・集団的自衛権
Q7.北朝鮮も中国も、日本を侵略する可能性がないならば、どうして政府は改憲をして日本を戦争
できる国にしたいのか?
A. 米軍や国連軍の戦争に加担するためである。
Q8. 改憲論議で話題になっている「集団的自衛権」とは、なにか?
A. 国連軍・米軍の戦争に日本が加担するための権利である。一般化していえば、集団的自衛権とは、
<自国と密接な関係にある他国に対して第三者による武力攻撃があった場合に、自国が直接に攻撃さ
れなくても、第三者による武力攻撃を実力をもって阻止・排除する権利>である。具体的には、日本
を攻撃されたのでない場合でも、米国が第三者の国と戦争をすれば日本自衛軍が世界中どこにでも出
かけて行って戦争をするための権利である。これではもはや自衛軍とはいえない。
Q9.米国が日本有事の際に集団的自衛権を行使して戦おうというのだから、日本が米国有事の際、
米国のために戦うというのは信義として当然ではなかろうか?
3
A
米国の侵略戦争を止めることこそ友国としての信義である。
米国の場合、イラクに対してそうしたように、自国が武力攻撃を実際に受けなくても、石油欲しさ
に、
「大量破壊兵器がある」などと口実を作って先制攻撃をしかけてしまう。言うまでもなく、これは
侵略戦争である。日本は集団的自衛権の行使だといって、米国の侵略戦争に付き合うべきだろうか。
あなたの友人があなたを「強盗に行こうぜ」と誘ったら、
「よし一緒に強盗に出かけよう」というので
なく、むしろ、
「バカな事はやめろ」と止めてやることこそ信義というものではないか。
Q10. 強盗のたとえはひどすぎないだろうか。たとえば米国はフセイン政権が大量破壊兵器を持つ
と思ったから――後に、実際にはなかったことがわかったのだが――、世界の平和にとって脅威であ
るからイラクを攻めたのではないのか?
A. 「大量破壊兵器」は、石油欲しさゆえの嘘の口実にすぎなかった。
8 年間、イラクに対する国連査察団長を務めたスコット・リッターの証言によれば、米国政府は、
査察団がイラクに大量破壊兵器がないことを確かめ、公表することを望まなかったので、
その査察を妨
害した。大量破壊兵器がないことが判れば、攻める口実がなくなるからである。またCIAの報告書
は大量破壊兵器が確実にあるというものではなかったのに、ブッシュ政権は報告書を意図的に曲解し
て大量破壊兵器があると断言して先制攻撃をしたのであり、現在、CIA関係者がブッシュ政権を訴
えている。実際には、ブッシュ政権は、ただイラクの石油を欲し、戦争で兵器を消費して、死の商人
を儲けさせたかったのである。
Q11. ブッシュ政権は圧政に苦しむイラク国民の解放と民主化のために、フセイン政権を倒したの
ではないのか?
A. ブッシュ政権が欲している民主化された政府とは、米国のいいなりになる傀儡政権にすぎない。
ブッシュ政権はイラク戦争においても、反対を押し切って劣化ウラン弾を 7 万 5000 発も使用した。
結果、イラクの国土はチェルノブイリ化し、民は被曝して永久に消えない放射能障害を受けた。それ
どころか、米兵も他国の兵士たちまでも被曝している。しかも、ブッシュ政権は被曝した米兵のめん
どうも見ようとしない。
ブッシュ政権はイラク国民の幸福どころか、
自国の兵士の幸福さえも考えず、
ひたすら政権の基盤である石油・軍需産業に金儲けさせたいだけである。
Q12. 国連との関係でいえば、PKO 活動や人道復興援助のみならず、武力行使をともなう国際貢
献もしなければ、日本は世界の孤児になってしまわないか?
A. 武力行使による国際貢献ではなく、平和的手段による国際貢献こそ真に役立つ国際貢献である。
武力行使によって平和を作り出そうというのは、現在のイラクにおける米軍の悲惨なありさまに見る
ように妄想か虚偽にすぎない。現実には、武力行使は憎しみや恨みを残すだけである。日本政府が武
力行使による国際貢献で気を使っている相手は、イラク国民ではなく、米国のネオコンの連中であろ
う。
Q13. では日本のアジアにおける平和は基本的にどのように構築すべきなのか?
A.アジアの近隣諸国と仲良くすることである。近隣諸国からの脅威がなくなれば、もはや米国に守
ってもらう必要がなくなる。近い国同士で平和条約を結ぶのが得策である。もちろん、その際、アジ
アにおける覇権を失いたくない米国をも敵に回さないようにする外交的な知恵が必要である。
Q14. わが国の防衛関係費と経済協力費は現在どれほどなのか?
A.2005 年度(平成 17 年)予算(財務省原案)でみると、防衛関係費は 4 兆 8563 億円。防衛費は一般
歳出の 1 割を超えている。一方で、経済協力費は 7404 億円と、防衛費の 7 分の1。
4
第3章
戦争を作る人々――死の商人、軍産複合体
Q15. 多くの人が平和を望んでいるのに、なぜ世界で戦争がやまないのか?その具体的理由は?
A. 金儲けのために戦争をつくる死の商人の勢力がいるからである。
冷戦終結後、各地の戦争は民族対立・宗教対立などがその理由だと言われるが、それがほんとうの
理由ではない。いかに民族・宗教がちがって争ったとしても、機関銃や大砲や戦車が無ければ戦争に
はならないからである。戦争とは素手で殴りあうことではないのである。戦争がやまない理由は、紛
争の火種があるところに武器を売りさばく死の商人の国々があるからである。死の商人たちにとって
は、戦争が必要なのである。残念ながら戦争を望んでいる者たちがいるのである。
Q16. 死の商人とはだれか?
A. 死の商人とは武器輸出国の軍産複合体である。現在、武器輸出国の第一位は米国、第二位は英国、
第三位フランス、第四位ロシア、第五位と第六位が中国とドイツ。これら六カ国で世界の武器輸出の
実に90パーセントを占めている。この六カ国のうち五カ国が世界平和を作ることを目指しているは
ずの国連の常任理事国である。これらの国々では、軍部と軍需産業が癒着した軍産複合体が政治を牛
耳っており、
彼らこそ死の商人の正体である。
国連が本気で世界に平和をもたらすことを望むならば、
武器輸出を全面禁止すればよい。素手で戦争はできないのだから。しかし、彼らは実際には平和を望
まず、戦争で金儲けをしているのである。
Q17.米国における死の商人(軍産複合体)の政治への影響はどの程度か?
A.事実上、米国政府は死の商人に乗っ取られてしまっている。
たとえば米国ブッシュ政権はどうか。「ブッシュ政権の32人もの高官が以前、軍需産業の役員や
株主 をつとめていた。彼らは、そのことを恥じることもなく、とことん利用しようとしている」(世
界政策研究所ウィリアム・ハートゥング)。ブッシュ大統領は、 石油企業アルプスト・エネルギー創
設、石油企業ハーケン重役だった。チェイニー副大統領は石油企業ハリバートン会長兼最高経営責任
者、国防長官(湾岸戦争時)だった。チェイニー夫人は軍需企業ロッキード・マーチン重役であり、
ラムズフェルド国防長官はロッキード・マーチンのシンクタンク・ランド゛コーポ゜レーション理事
長。パウエル国務長官は、統合参謀本部議長(湾岸戦争時)だった。アーミテージ国務副長官は軍人
出身であり、国防次官補(レーガン政権時)。エバンズ商務長官は石油企業トム・ブラウン社長、ラ
イス国防担当補佐官は石油企業シェブロン重役。イングランド海軍長官は軍需企業ゼネラル・ダイナ
ミクス副社長。ロッシュ空軍長官は、軍需企業ノースロップ・グラマン副社長。ホワイト陸軍長官は
退役軍人でエンロン・エネルギー・サービス副会長。
Q18.米国経済の軍事産業への依存はどのようなものか?
A. 米国経済は戦争中毒に陥っている。米国では兵士は 140 万人、軍需産業従事者は 2000 万人に
のぼる。武器は戦争をしないと消費しないから、米国はどうしても景気対策として戦争をしなければ
成り立たない状況にある。
菅:一度戦争をし、軍備が拡大されると元に戻るのは非常に困難になる。増大した軍需産業は雇用を
生み、それで食べて行かなければならない人がそれだけ増える。兵器は消耗品(毎日使われる車やテレ
ビのような)ではないので、戦争で使われなければ新しい需要は生まれない。需要が増えなければ儲か
5
らない。また、消耗品ではないが消費期限があって、それが大体10年と言われている。これに附合
するかのように米国は10年に一度大規模な戦闘をする。(陰では在庫一掃セールと言われている)一
度戦争をして戦争で稼がなければ成り立たない国なったらおしまいなのである。
Q19. 死の商人の手口をもう少し具体的に知りたいのだが。
A. 「イラン・イラク戦争」を例にあげよう。死の商人は当時、紛争当事国双方の軍拡政策に手を貸
した。結果イラクを世界第4位の軍事国家に仕立て上げたのは、アメリカ、フランス、イギリス、ド
イツ、イタリア、ソ連などの、湾岸戦争の中核を成した多国籍軍の国々であった。ここにも国連常任
理事国が名を連ねている。これらの国々は、“ホメイニ革命”の中東への波及阻止という大義名分を掲
げながら、膨大な兵器をイラク・イラン双方に売って荒稼ぎしていた。死の商人たちが火に油を注い
だせいで、
「イラン・イラク戦争」は長期化し双方の死傷者は、合計100万人を超える。これによ
ってサダム・フセインのイラク軍は強大化した。
湾岸戦争についても、もと米国司法長官ラムゼー・クラークは言う。
「中東で戦争を望んでいたの
はイラクではなく、米国の巨大勢力だった。つまり、巨額な予算を維持したい国防総省、中東への武
器販売と国内の軍事契約に依存する軍需産業、原油価格に対する支配力強化と利益の増大を望む石油
会社、ソ連の崩壊を米軍の中東常駐の絶好の機会と考え、石油資源の支配による巨大な地政学的勢力
を 21 世紀に向け構築しようとするブッシュ政権だった。
」(クラーク『湾岸戦争』p39)石油資本をバ
ックとする父ブッシュ政権は、
「アラブの石油はアラブのために」というスローガンを掲げるサダム・
フセイン政権は許しがたい存在であった。そこで、父ブッシュ政権はクウェートに働きかけてフセイ
ンに経済戦争をさせ、孤立化させた。経済的困窮を打開しようとサダム・フセインがイラク侵攻計画
を進めたが、米国はこれを逐一知っていながら無関心を装う声明を発表し、そして実際にサダム・フ
セインがクウェートに侵攻すると非難して、圧倒的な軍事力をもって徹底的に叩いたのである。
Q20.湾岸戦争で死の商人たちはどれほどの利益を得たのか?
A. 46 兆円を超える。湾岸戦争前、軍産複合体は“冷戦終結”のせいで、全米で1位と2位の軍事企業
「マクダネル・ダクラス社」と「ゼネラル・ダイナミックス」の両社は経営危機に陥っていたが、湾
岸戦争のおかげで立ち直った。
「砂漠の嵐作戦」で中東に展開したミサイル、戦車、ヘリコプター、戦
闘機といった陸・空の主要兵器だけで総額は約 2740 億ドル(約 36 兆 1680 億円)にのぼる。石油産
業は、1990 年末の四半期で、米国大手石油18社の純益は前年の250%という額に達し、ブッシュ
大統領とベーカー国務長官は、故郷テキサスの一族と米国軍事産業界に莫大な利益をもたらした。
更に湾岸戦争後、破壊されたクウェート復興事業(約 800 億ドル、およそ 10 兆 4000 億円)のほ
とんどは、世界最大の建設会社「ベクテル社」をはじめとするアメリカの企業が受注し、残りをイギ
リスがさらっていった。彼らは、中東を破壊し、中東を再建し、中東に莫大な負債をもたらすという
パターンを繰り返して巨億の富を得てきたのである。まさに、死の商人は戦場で流される血をすする
どころか、がぶ飲みして肥え太る吸血鬼である。
Q21. しかし、火種がなければ油を注いでも火はつかない。紛争当事国にも問題があるのではない
か?
A. そのとおりである。だからこそ、日本はアジア地域で平和外交を積極的に展開すべきであって、
今、首相たちがしているように、
靖国参拝を強行するなどしてアジアに緊張をもたらし戦争の火種をつ
くるべきではない。それこそ死の商人たちの思う壺である。
Q22. わが国は現在、世界の死の商人のリストの上位には挙がっていないようだが、憲法9条を変
えたらどうなるのか?
A. トップクラスの死の商人となる。現政権は死の商人を目指しているのかもしれない。
6
わが国は平和憲法のもとに、国際紛争の当事国又はその恐れのある国向けの武器輸出を禁止するとい
う武器輸出三原則第三項に抑制されてきたので、武器輸出額は世界第9位である。技術も資本もある日
本が大規模な武器輸出による金儲けに走らなかったことこそ、もっとも効果的で具体的な世界平和への
貢献である。死の商人たちが紛争の火種に油を注いで金儲けをして、大火事にし、後始末に自国の旗を
掲げて PKO や PKF を派遣してさらに金儲けするマッチポンプ式の欺瞞よりも、ずっと実効がある。
しかし、もし憲法9条を改変すれば、日本は財界の後押しを受けつつ、米軍との共闘のために、武器
輸出三原則も破棄するであろう。そうなれば日本も死の商人、吸血鬼リストの上位ランク入りを果たす
であろう。わが国は戦争で金儲けをする「普通の国」になるべきではない。
菅:自分の家族・友人がどこの国の兵器によって殺されたか?ということを戦争遺族は憎しみとして
心に刻むと言われている。爆弾やミサイルのかけらに JAPAN の文字が刻まれているだけで、その戦闘
に参加したのと同じくらいの憎悪を引き受けるのである。
Q23。 わが国では現在、死の商人の政府に対する働きかけはあるのか?
A. ある。すでに、経団連は 2004 年 7 月 20 日「今後の防衛力整備のあり方について――防衛生産・技
術基盤の強化に向けて」という意見書を政府に対して提出し、安全保障環境の変化と危機を強調し、武
器輸出三原則の再検討を要求している。現実に、北朝鮮からの弾道ミサイルに備えると称して、2005
年 12 月防衛庁は現在のものよりもさらに高性能で高価な迎撃ミサイルを、来春から米国と共同開発す
る計画に着手すると、発表した。予算は 3000 億円!しかも、専門家によればミサイル迎撃は技術的に
不可能だといわれている。3000 億円はまったくどぶに捨てたも同然である。
今後、米軍再編と九条改変が成るならば、日本でも米国のように軍産複合体が政治・経済・軍事を牛
耳ることになってしまうであろう。
(Q16を参照)
第4章
もし 9 条が改変されると、どうなるか?
Q.24.首相は、アジア諸国の批判を無視し、あえて靖国神社参拝を強行しているが、それには、ど
のような目的と効果があるのだろうか?
A. 第一に、戦没者遺族は与党の票田である。
第二に、国家のための戦死者をたたえることによって、今後、自衛軍派遣で死ぬ人々が戦死を名
誉に思うようにすることである。
第三に、中国や北朝鮮からの反感を買い非難を受けることで、中国・北朝鮮の脅威を演出し、国
民のうちに「9 条改憲やむなし」という雰囲気を盛り上げるためである。
第四に、中国・北朝鮮の軍事的脅威を演出することによって、軍事費増額に説得力を与え、軍需
産業を儲けさせるためである。
(Q16 を参照)
Q25。9 条が改変されて自衛軍ができたなら、だれが軍に入るのか?
A. 当面は現状と同じ志願制である。しかし、外国に行って人殺しをし、自分も殺されるのが軍隊で
あるから、入隊志願者の確保は困難になるであろう。それでは、自衛軍が成り立たないので、政府は
「愛国心教育」をするために、憲法とともに教育基本法も変えることを図り、また、戦死したら国で
も祀ってあげますよという宣伝をするために首相は靖国参拝を強行している。
Q26.イラクに派遣された米軍はおもにどういう人々から成っているのか?
A. 米軍の多くは定職の無い有色人種の貧困者層から成っている。戦争は米国にとってはいわば最大
の公共事業である。
日本では、弱肉強食のアメリカ経済を理想としてきた現政権によって、貧富の格差を拡大する規制
7
緩和政策が矢継ぎ早に出され、社会は少数の金持ち層と大多数の貧困者層に二分化されつつある。非
正規社員の平均月収は 12 万円で、正規社員の4分の 1 である。米国と同じような構図で、日本まで、
定職の無い若者たちは生活苦から自衛軍にはいるかもしれない。彼らを戦場に送り出し、国家財政は
逼迫し福祉は切り捨てられ、軍需産業のみが肥え太るという米国のような国にしてはならない。
Q27.改憲して自衛軍ができても、志願者が少なければどうするのか?
A.実際に自衛軍が米国の侵略戦争に加担して、多くの犠牲者が出れば、志願者が確保できないとい
う状況になるであろう。そうすると、徴兵制が施行されることになるであろう。若者たち、私たちの
子どもたち、孫たちが米軍の始めた戦争に「集団的自衛権」ゆえに強制されて行き、人を殺したり人に
殺されるということになる。悲惨なのは戦争にかり出された者達とその家族・遺族であり、巨億の富
を得るのは米国と日本の軍産複合体と呼ばれる死の商人である。
Q28.日本が米軍や国連軍への軍事的参加をすると、日本の社会ではどのようなことが起るだろう
か?
A.日本は、英国などと同様、日々テロの恐怖に怯える生活をしなければならなくなる。しかも、自
衛軍は戦争に行って殺し、かつ殺されるから、当人と遺族は悲惨である。また、自衛軍兵士を確保す
るために、政府は教育基本法を改訂して「愛国心」を育成したり、靖国参拝を一層盛んに行ない、い
よいよ周辺諸国の反感を買うだろう。それでも志願者が足りない場合、徴兵制に移行する。そして、
軍事費は一層拡大し、すでに破産に近い状態の国家財政は一層逼迫し、福祉は切り捨てられる。その
莫大な税金は、政治家たちの背後にいる死の商人である日米の軍産複合体のふところに入ることにな
る。軍需産業が拡大し、政府・官僚・軍隊と癒着すると、米国と同じように戦争をしないでは成り立
たない経済構造、つまり、戦争中毒症状に陥る。
第5章
平和のつくりかた
Q29.日本以外に戦争放棄を謳う憲法を持つ国はあるのか?
A. 29 カ国ある。たとえば中米のコスタリカでは 1949 年以来、戦争を放棄し、実際に軍備を放棄す
ることによって、あの戦火の絶えない中米という地域において、平和を維持してきた。
ちなみに、第二次大戦以前からの非武装国家は、アンドラ、サンマリノ、ルクセンブルク、リヒテ
ンシュタイン、アイスランド、モナコ、ヴァチカン。独立年と非軍事化が同時に非武装国家は、モル
ジブ、セントクリストファー・ネイヴィス、セントルシア、センロヴィンセント・グレナディーン、
モーリシャス、パラオ、ヴィヌアツ、ソロモン群島、サモア、キリバツ、ナウル、クック諸島、ツヴ
ァル、ニウエ、ミクロネシア連邦、マーシャル群島。独立以降に非軍事化した国は、コスタリカ、ド
ミニカ、グレナダ、パナマ、ハイチ、トンガである。(前田朗「軍隊のいない国家、軍隊のいない世界」
『法と民主主義』2005・6No.399)
Q30. 軍備がないコスタリカを外国はなぜ攻めないのか?
A. 軍備がないので、他国は戦争をしかける口実のつくりようがないからである。事実、過去に三度
コスタリカは紛争に侵略を受けそうになったが、再軍備を選択せず、コスタリカの立場を世界に訴え
た。世界は侵略者を非難して圧力をかけたので、彼らは撤退せざるを得なかった。侵略者は、
「わたし
は石油が欲しいから」とは言えず、
「大量破壊兵器をもっている」とか「暴政が行なわれているから、
民を解放しなければならない」などという大義名分をもうけて侵略をするものである。しかし、軍備
の無いコスタリカに関しては、そうした侵略の大義名分のつくりようがない。
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Q31. もう一度確認したい。では日本のアジアにおける平和は基本的にどのように構築すべきなの
か?
A.アジアの近隣諸国と仲良くすることである。近隣諸国からの脅威がなくなれば、もはや米国に守
ってもらう必要がなくなる。もちろん、その際、日本に基地を置いてアジアを支配している米国をも
決して敵に回さないようにする外交的な知恵と努力が必要である。
そのためには、憲法9条を堅持することが基本である。
菅:自分たちの身に引きつけて考えてみよう。隣人の名前も顔も知らない。挨拶もしない。何をして
いるのかも分からなければ「不審」に思うかもしれない。そんな時私たちはもしものトラブルのため
に「武装」するのだろうか?まず挨拶を交わし、自己紹介し、人間関係を作ろうと努力しないだろう
か?よく知っている、行き来のある隣人は私たちの生活にとって脅威にはならないのだ。
Q32. 今後、改憲に向けてどのような動きがあるのだろうか?
A. 「改憲のための国民投票手続き法案」が国会に提出され、通れば、発議、国民投票となる。
憲法96条によれば、<憲法改正は国会各議院の総議員の三分の二以上の賛成で発議され、国民投票
においてその過半数の賛成を必要とする>とある。与党と野党第一党民主党はともに改憲の立場である
から、現状ではいつでも改憲の発議ができる状況である。
憲法調査会が提出した「改憲のための国民投票の手続き法案」は①「国民投票の過半数」を「有効
投票数の過半数」と解釈し、②改憲発議から投票まで最短わずか三十日で国民投票ができ、③最低投
票率も定めず、④刑罰をもって教員・公務員の投票活動を制限し、外国人の投票活動を禁止し、⑤マ
スコミが虚偽の記載をすれば「二年以下の禁固」で処罰するという情報統制を規定している。
法案は、国民に考える時間も、知識も、自由も与えず、与党案説明を鵜呑みにさせて国民投票に向
かわせることを意図している。
また、改憲の焦点は、いうまでもなく九条の戦争放棄条項だが、政府はほかにプライバシー法、環
境保護法など国民受けする法案を9条とセットで国民に賛否を問うつもりである。
Q33.わたしたちはどうすればよいだろうか?
A. 私たちとしては、しっかりと 9 条のたいせつさを学び、伝え、この国民投票において「改憲に反
対」の意思表示が過半数を取れるようにすべきである。
また、戦争に依存しない経済と文明を作りあげていく道を学び、実行することが必要である。
<参考> http://www.magazine9.jp/q_a/index.html
http://rerundata.hypermart.net/ura/hexagon/floors/floorA3F.html#01
http://www.lee-net.com/iraq_oil.html
http://www.adachirikiya.com/costarica.html
http://www.getglobal.com/war/iraqwar4.html
http://www.anpo-osk.jp/kiti/nihon.htm
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