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第6章 技能の継承,発展に向けた支援の強化

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第6章 技能の継承,発展に向けた支援の強化
第6章 技能の継承,発 展に向けた支援の 強化
現在,技能者の高齢化が進み,在職者や高校生等の若年者を対象とした後継者の育
成が大きな課題となっています。
このため,若年者がすすんで技能者となるよう,技能者の社会的評価を向上させる
とともに,次代の技能の担い手の技能水準の向上を目指す必要があります。
第1 現状と
現状と課題
1 技能継承への
技能継承への取組状況
への取組状況
(1)企業等が行う技能継承の取組状況
現在,技能者の高齢化に伴い,県内の5割近くの企業にとって,技能の継承が大き
な課題となっています。
このうち8割の企業は,現在,熟練技能者を「雇用延長・再雇用し,指導者として
活用」しています。
また,「技能継承の取組が思いどおりに進まない」企業が,5割近くに達していま
す。その主な理由は,「技能継承の方法がわからない」,
「技能継承を行う時間的余裕
がない」,「人材育成風土が醸成されていない」などが中心となっています。
こうしたことから,円滑な技能継承のためには,技能伝承のための方法について
の情報提供と,人材育成に向けた職場風土の形成による職場環境の改善が重要です。
「ある」と回答した場合,その問題に対して行っている取組内容を教えてください
(%)
100
貴社では団塊の世代の退職等により発生する
技能継承の問題がありますか
82.2
80
60
40
どちらでも
ない
23%
32.9
24.7
ある
44%
ない
33%
【資料:広島県「技能振興に関する調査」】
20
-
11.0
技
能
継
承
のへ
いな 取
組
い はほ
と
ん
ど
で
き
て
-
高
度
な
り技
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計要
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変に
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の
や
16.4
16.4
不
足
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技
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遣を
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用,
契
約
社
技
能
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を
るい 絞
り
込
ん
で
伝
承
5.5
技
能
を
要
す
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部
分
を
外
注
し
て
るい
新
規
学
卒
者
の
採
用
を
増
や
し
て
るい
19.2
12.3
特 技 雇 職
別 能 用 能
な 等 延 要
層教 を 長 件
書
に育 文
技 訓 書 再・ 成を 等
能練 化 雇 図を
伝に い ・ 活用 っ 整
承よ るマ 用し て 備
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て , ュ 指 る,
若 ア 導 計
るい 年 ル 者 画
化 と 的
中・ し し に
堅 て て 育
技能継承の取組が思い通りに進まない要因がありますか
「ある」と回答した場合,どのような要因があるとお考えですか
(%)
60
47.9
46.6
40
34.2
26.0
どちらでもな
い
38%
ある
46%
ない
16%
【資料:広島県「技能振興に関する調査」】
20
0
技
能
か 継承
らの
な方
い法
が
わ
17.8
15.0
12.3
13.7
技
従能
業継
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めっ
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も
技
社
技
技
人
の技
金能
能
員 的能
能 さ材
銭継
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継 者継
育
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余を い 対 が事 がを い 活 い 風
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がう
なた
す
時
指
醸
が
る
間
導
成
いめ
い
(2)職業能力評価制度の活用状況
労働者が,計画的なキャリア形成やスキルアップに積極的に取り組むためには,
習得した職業能力を客観的に評価する「ものさし」としての評価制度が必要です。
この「ものさし」のひとつが,技能検定制度です。
技能検定制度は,労働者の有する技能を一定の基準によって検定するものです。
広島県内の技能検定の受検者は,平成18年以降大幅に増加し,平成20年には
制度創設以来最高の6,963人に達しました。このような受検者の増加に伴い,合
格者も平成20年に2,965人に達し,制度発足以来最高となりました。
このうち,高校生についてみると,平成18年以降毎年増加しており,平成22
年には平成18年に比べ,3級の受検者数は2.5倍,合格者は3.1倍に達しまし
た。また,在職者を主な受検対象としている2級についても,同期間に受検者が
5.9倍,合格者が3.4倍となっています。
このように,技能検定制度が,在職者のみならず,県内の高等学校の工業科,総
合学科の多くで,
「専門的知識・技能の向上」や「技能向上意欲」などを目的に活用
されています。
しかし,技能検定合格者であることを,採用に当たり考慮している企業は,5割
(「かなり考慮する」+「やや考慮する」)にとどまっています。一方,処遇を改善
する企業は7割に達しています。その主なものは,
「資格手当」,
「奨励金等の一時金」,
「人事考課上で考慮」が中心となっています。
なお,高等学校においては,技能検定制度の実施に際して,「受検のための経済的
負担が大きい」,「学校現場にコーデネートできるノウハウが不足している」等の問
題点の指摘があります。
このため,技能検定制度が企業や教育現場で積極的に活用されるためには,社会
全体が,この制度に関する理解を一層高めるとともに,この制度を「ものさし」と
して,企業・団体や教育現場が,技能習得意欲や技能向上に向けて活用することが
必要です。
技能検定の受検についてどのように思われますか
(人)
10
8
6
6
4
3
2
2
0 0技 受 受 受
能 検 検 検
の
が 検定 を目 指
導
わ 合 指 す が ため
か 格 い すな る大 の
ら に 生 い 指き 経
な よ 徒 導い 済
いる が 者 的
効 い が 負
果 な い 担
8
8
従業員の採用にあたり技能検定合
格者であることを考慮しますか
(%)
40
36.2
28.4
30
9
6
4
学
校
の
負
担
が
大
き
い
4
学
校
の
ま 社会
たっ 的評
価
が
高
学
校
全
体
の
活
力
が
高
ま
る
円
滑
な
就
職
が
で
き
る
19.0
20
技
能
向
上
意
欲
が
高
ま
る
専
門
的
知
し 識・
た技
能
が
向
上
6.0
-
ど
ち
ら
と
も
い
え
な
い
11.2
ま あ や か
ま や な
たっ り 考 り
く 考 慮 考
考 慮 す 慮
慮 し る す
る
し て
て い
い な
な い
い
【資料:広島県「技能振興に関する調査」】
【資料:広島県「高等学校における技能振興」】
技能者が技能検定に合格したときに何らかの処遇改
善をおこなっていますか
10
「行っている」と回答した場合,どのような処遇改善を
おこなっていますか
60
(%)
55.7
50
行なってい
ない
31% 行っている
69%
40
30
20.3
20
15.2
12.7
10
0
【資料:広島県「技能振興に関する調査」】
36.7
34.2
人
事
考
課
上
で
考
慮
社
内
資
格
制
度
面
で
考
慮
昇
進
昇・
格
等
のへ
反
映
3.8
賞
与
で
の
考
慮
奨
励
金
な
ど
一
時
金
資
格
手
当
昇
給
【資料:広島県「技能振興に関する調査」】
2 技能尊重社会の
技能尊重社会の実現に
実現に向けた取組
けた取組の
取組の強化
(1)ひろしまマイスターの認定と活動
技能尊重気運を醸成するため,本県産業を特長づけている機械金属系製造業や建
設業を中心に,卓越した技能者の中で特に優れた者を「ひろしまマイスター」とし
て認定し,学校や業界団体及び各種イベントを通じ技能指導や技能実演などの活動
を行っていただいています。
この制度は,県内企業の6割,高等学校(工業系)のほぼ全校で周知されているも
のの,実際の活動では,在職者に対しては,特定の業界団体の中での活動に限定さ
れ,活動に広がりがないのが現状です。
また,高等学校においても,技能指導のための材料費等の負担が大きいことや,
学校にノウハウが不足しているため,近年漸減状況にあります。
このため,今後,
「ひろしまマイスター」制度が,業界や学校において積極的に活
用され,技能水準の向上と,技能に対する社会的関心を高めることができるよう,
一層の周知に努めるとともに,マイスター活動が地域ニーズに対応したものである
必要があります。
100
(回)
80
60
40
20 10 14
6 5
0
小中学生
ひろしまマイスター活動状況
78
H19
68
H20
H21
H22
59
40
35
76 65
高校生
高技専
20 26
3
在職者
(2)技能尊重気運醸成活動の状況
労働者の技能を向上させ,我が国産業の基盤を確かなものとするために,技能者の
処遇面を含めた社会的評価の向上を図るとともに,若年者も進んで技能労働者を目
指すような環境を整備するなど,技能を振興し,技能を尊重する気運を醸成するこ
とが重要です。
若年者の技能離れが見られる中で,技能の振興や技能労働者の地位の向上を図る
には,技能の魅力や重要性の啓発を図ることが必要です。
このため,
「ものづくり」分野を中心とした熟練技能の重要性についての県民各層
の理解を深め,技能の受け皿となる若年人材の継続的な確保・育成を目的に,公共・
民間の職業訓練機関や技能士会等,職業能力開発に携わる機関が連携して,
「ひろし
ま技能フェア」を開催しています。
また,教育現場における活動としては,
「ひろしまマイスター」などを活用した「技
能講習」を行なうとともに, 工業科以外の高校生や小中学生が「ものづくり」に対し
ても親しみと理解を深めることができるよう,
「ものづくり」の大切さに関する講演
等を行っています。
さらに,技能者が培ってきた力を競う場である技能五輪全国大会など各種技能競
技大会への参加や,卓越した技能者に対する県知事表彰など,各種表彰を引き続き
行っています。
こうした技能尊重気運醸成活動は,未だ十分な周知啓発がなされているとはいえ
ず,今後ともものづくりに対する関心を高め,技能に対する理解を社会全体に浸透
させていくことが必要です。
ひろしま技能フェアの来場者数の推移
年度
H17
H18
H19
H20
H21
H22
来場者数
5,200
5,800
6,500
6,900
6,900
3,000 ※
(人)
※22 年は開催期間を 2 日間から 1 日間に短縮して開催。
第2 施策
施策の
の方向
1 企業等が
企業等が行う技能継承の
技能継承の取組への
取組への支援
への支援
(1)背景
広島県の基幹産業を支える技能者の高齢化が進んでおり,今後,この優れた技能
を中堅在職者へ技能継承することが大きな課題となっています。
(2)取組の方向
ア 技能の円滑な継承
「ものづくり」分野での「技能の継承」が,円滑に実施されるためには,人材育
成に向けた職場風土の形成や,職場環境の改善,指導できる人材の確保・育成など
多くの課題があります。
また,一企業で技能継承に取り組むことが困難な場合は,同じ地域や職種の中小
企業が共同で実施できるような仕組みづくりが必要です。
このため,県では,中小企業が行う技能継承の取組に対して,
「ひろしまマイスタ
ー」を派遣し,技能指導を行うとともに,円滑な技能継承ができるよう継承方法の
見直しや,指導者の育成・確保などについて,必要な助言・指導を行っています。
また,円滑な技能継承ができるよう人材育成に向けた職場風土の形成を促すため,
事業主に対する啓発を強化する必要があります。
また,企業の枠を超えた技能継承の取組の必要性についても,事業主団体等に対
する啓発を進めていきます。
この他,技能継承の方法についても,必要な情報提供を行っていく必要がありま
す。
イ
技能検定の普及拡大
技能検定制度の人事管理や労働者の技能習得意欲の向上のための有効性を広く周
知することにより,ものづくりに関わる企業・団体への普及・拡大とその積極的活
用を促すとともに,次代を担う若者を育成・確保するため,教育現場においても技
能検定の受検奨励に努めているところです。
また,後継者育成の観点から,若年者や学校現場を中心とした受検に向けた取組
に対して,経済的・業務的負担の軽減のための支援措置が必要です。
2 技能尊重社会の
技能尊重社会の実現に
実現に向けた取組
けた取組の
取組の強化
(1)背景
「ものづくり産業」の技能継承や後継者育成・確保が円滑に進むためには,技能
者の社会的評価が向上し,若年者が進んで技能者を目指す社会の実現が必要です。
(2)取組の方向
ア
ひろしまマイスターを活用した技能振興
技能が尊重される社会を実現するためには,企業・団体や学校との連携を深めな
がら,地域社会に対してものづくり技能の重要性を広く浸透させ,社会的評価の向
上を図る必要があります。このため,ひろしまマイスターによる技能指導や技能実演
により,技能の重要性を広めていきます。
このため,技能指導に対するニーズが高い高校や,「ものづくり」への関心を高め
ることが求められる小中学校等で行われる活動に対して,必要な支援が必要です。
また,在職者を対象とした活動に対しては,業界団体が中心となって,業界の中小
企業労働者の技能向上と後継者育成を図るため,必要な情報提供を行う必要があり
ます。
なお,
「ひろしまマイスター制度」が平成14年度に創設し,10年が経過するこ
とに伴い,改めて技能尊重気運の醸成や円滑な技能継承を効果的に担えるよう,制
度を再点検する必要があります。見直しに当たっては,業界・教育現場等のニーズ
を把握した上で,積極的に活動できるものとする必要があります。
イ
啓発活動の強化
若年者の技能離れがみられる中で,技能の振興や技能労働者の地位の向上を図る
には,技能の魅力や重要性の啓発を図ることが必要です。
このため,熟練技能の重要性について県民各層の理解を深め,技能の受け皿とな
る若年人材の継続的な確保・育成を図ることを目的として,「ひろしま技能フェア」
を開催します。
また,技能五輪全国大会を始めとする各種競技大会への参加や職業能力開発に関
わる表彰制度は,技能者に努力目標を与えるとともに,県民に対して技能の重要性
を広める役割を担っており,技能者の社会的地位と技能水準の向上につながること
から,今後とも積極的に広報啓発を行います。
なお,次代を担う技能者を確保していくため,こうした啓発活動の実施に当たっ
ては,小中学生から高校生までの若者各層に対して,一層の関心が高まるよう,そ
して,関心の度合いを確かめながら工夫を凝らした取組を常に検討し展開していく
必要があります。
第3 数値目標
これまでに述べてきた技能の継承・発展に関する施策や方針の具体化を通じて,ひ
とりでも多くの若者が,進んで「ものづくり」の世界へ入職した上で,技能習得意欲
を持ちながら技能士としてのスキルアップを図り,全体の技能レベルが向上していく
ことが重要です。
このため,施策の成果を明確化できる指標として,技能検定受検者数及び合格者数
を掲げ,受検者数,合格者数ともに高水準で推移している過去5年間の数値をもとに,
計画の終期である平成27年度には7,000人の受検者,3,000人を上回る合
格者になることを目指し,今後5年間で34,500人の受検者数と,15,000
人の合格者数を目標とします。
技能検定合格者数
単位:(人)
実
目標値
績
H18
H19
H20
H21
H22
計
(H23~H27)
受検者数
6,049
6,258
6,963
6,539
6,591
32,400
34,500
合格者数
2,470
2,476
2,965
2,877
2,877
13,665
15,000
※基礎級合格者を除く
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