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本文 - J
MOLECULAR SCIENCE
Review
Mol. Sci. 9, A0079 (2015)
大気不均一反応化学と計算化学
Atmospheric Heterogeneous Reaction Chemistry and
Theoretical Molecular Science
秋元 肇
Hajime Akimoto
In recent years much of interest in atmospheric chemistry has been focused on atmospheric aerosols. In this article,
laboratory kinetic studies and related quantum chemical theoretical studies on typical processes of formation and transformation of organic aerosols have been reviewed. Specifically, it targets on the topics of heterogeneous reactions of
atmospheric O3 and OH with organic compounds at the surface of aerosols, and aqueous-phase reactions of dialdehydes
(glyoxal and methylglyoxal) in cloud and aerosol particles. In order to attain better understanding on such processes,
fundamental studies based on molecular science are needed, and closer collaboration between atmospheric chemistry
and theoretical computational chemistry is proposed.
Keywords: organic aerosols, heterogeneous gas-surface reaction, aqueous-phase organic chemistry, atmospheric chemistry, computational chemistry
1.
はじめに
成分からなっているのが大きな特徴である。実際の大気エ
本稿はかつて分子科学の一分野である光化学 ・ 反応化学
アロゾルでは,硫酸イオン,硝酸イオンなどを含む微小液
の研究に身を置き,その後大気化学研究へ転身した著者が,
滴に有機化合物が同時に溶け込んだり,ススなどの固体粒
現時点での大気化学と分子科学,特に量子理論計算化学と
子表面に有機化合物が吸着したり,固体の有機物粒子の表
の今後の collaboration を期待して,これら両分野の研究者
面に硫酸が被覆するなど多様な形態をとっている。これま
へ贈る大気不均一反応化学に係わる最近の実験室化学研究
で大気エアロゾルは,粒子径,重量濃度,バルクとしての
と計算化学研究のレビューである。
光吸収 ・ 散乱能,水蒸気凝縮能などの物理的パラメータで
大気化学とは,自然起源・人為起源発生源からの大気微
取り扱われることが多く,それらの化学的生成過程,光学
量成分の放出,大気中での輸送とそれに伴う物理・化学的
的性質,水親和性などについて,分子構造に立脚した物理
変質,大気からの湿性・乾性沈着による除去という一連の
化学的議論は余りなされてこなかった。
物質収支に係わるプロセスを明らかにすることによって,
大気エアロゾルの物理化学的な議論が遅れている一つの
大気微量成分の地球規模での空間的分布・時間的変動とそ
大きな理由としては,大気微粒子中で主要な割合を占める
れらの生物地球化学循環を解明することを目指したシステ
有機エアロゾル(organic aerosol, OA)に関する研究が困難
ム科学的な学問分野である。したがって大気化学は伝統的
であったことが挙げられる。OA は化学組成が非常に複雑
学問分野でいうところの物理化学,分析化学,大気物理学,
なものが多く,それらの分子レベルでの化学的同定は,比
気象学,生理・生態学などが統合された学際的分野である
較的最近になって超高分解能質量分析計などの開発によっ
が,このような全体論的学問を体系的に成立させるために
てようやく実現したのが実情である。OA に関する分子科
は,それを構成する各要素科学がきちんと整えられている
学的研究で最も期待される成果は,一つは大気中において
ことが重要である。
各種の OA を生成・変質させる不均一反応過程の解明であ
大気化学は歴史的にオゾン層破壊,酸性雨,光化学大気
り,もう一つは OA の水蒸気凝縮能・雲生成能など OA 表
汚染などの科学的解明と政策的決定に大きな役割を果たし
面における水分子との相互作用の解明である。本稿では,
てきたが,最近では健康影響と共に気候変動に大きな影
こうした最近の大気化学的関心事のうちで,不均一反応化
響 1,2 を及ぼす PM2.5(粒径 2.5 μ m 以下の微小粒子)に代表
学に係わる最近の計算化学研究を実験室的化学研究と並べ
されるエアロゾルに最大の関心が寄せられている。エアロ
て紹介する。水蒸気凝縮能に関しては,本稿では取り扱わ
ゾルとは大気中に浮遊する固体または液体の粒子を意味す
ないが,両者には水分子とエアロゾル粒子表面との相互作
るが,その化学組成としては土壌粒子,海塩粒子,スス,
用という点で共通の側面があるものと思われる。
硫酸塩,硝酸塩などの無機化学成分の他に多くの有機化学
©Japan Society for Molecular Science
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(page number not for citation purpose)
Mol. Sci. 9, A0079 (2015)
Review
2.
大気不均一反応化学
学種へ変質することが知られており,これを大気中のエイ
大気化学を構成する膨大な数の気相均一系反応に関して
ジング(aging)と呼んでいる。エアロゾルのエイジングは
は,光化学反応,無機 ・ 有機化合物にかかわる素反応,酸
バイオマス燃焼,自動車排気ガスなどのトレーサーとして
化反応機構を含め膨大な実験データが蓄積され,一部を除
用いられる飽和・不飽和脂肪酸,環状有機化合物,多環芳
いて大筋で既に解明なされていると言っても過言ではない。
香族化合物(polycyclic aromatic hydrocarbon, PAH)などに
これらについては最近の拙著「大気反応化学」 にまとめら
ついて比較的多くの研究がされてきている。これら気相化
れているので参照して頂ければ幸いである。こうした大気
学種と有機エアロゾル粒子との不均一反応に対する反応論
化学反応の一つの特徴は,そこに含まれるほとんどの主要
的な興味として,エアロゾル界面における反応速度・反応
な反応について,ab initio 理論計算がなされていることで
過程の気相反応・バルク液相反応との違いがある。ここで
あり,上記の教科書 では極力それらの引用に努めた。量
は O3, OH と粒子表面の有機化合物との不均一反応を例に
子化学計算による反応の遷移状態の分子構造,エネルギー
とって,最近の研究をみてみよう。こうした大気不均一反
曲面に基づく反応経路,反応速度定数の推定などが,直接
応 に つ い て は,George and Abbatt9, Valsaraj10 に よ る レ
測定による室内実験の結果に,本質的な理解を与えること
ビューがあり有用である。
3
3
によって,大気反応研究はより強固な学問的信頼性を勝ち
実験的研究
得てきたと言って良いであろう。
3.1
一方,大気反応化学の最近の大きな関心事である大気微
大気中におけるエアロゾル表面上の典型的な反応として
粒子生成に係わる不均一反応(heterogeneous reaction),多
O3 と不飽和脂肪酸,OH と高沸点飽和炭化水素,O3, OH と
相反応(multiphase reaction)に関しては,量子化学計算が
多環芳香族化合物などを挙げることができる。これらの反
なされている例はまだ非常に数少ない。ちなみに大気中の
応の場としてはエアロゾル水溶液表面,固体エアロゾル表
分子が霧滴,雨滴などの液体粒子と衝突してこれに取り込
面の両者があり,それぞれの条件での室内実験がなされて
まれ,液相での反応が進行する一連の過程を多相反応,エ
いる。個々の反応には分子論的に当然それぞれ異なったプ
アロゾルの液体・固体粒子の表面で反応する場合を不均一
ロセスが含まれるが,これらの表面反応には気相反応,液
反応と呼ぶことが多いが,両者は混用されることも多く,
相バルク反応に比較して共通の特色がみられており,量子
本稿ではこれらを共に不均一反応の名の下に取り扱う。大
化学的理論による解釈が待たれている段階である。ちなみ
気中における不均一反応の研究は,対流圏化学では酸性雨
に,ここで取り上げるオレイン酸(oleic acid, C18H34O2),
に係わる雲水中の SO2, H2O2, O3 などの反応,成層圏化学
1 テトラデセン(tetradecene, C14H28),パルミチン酸(pal-
ではオゾンホールの生成に係わる極成層圏雲(polar strato-
mitic acid, C15H31COOH),スクワラン(squalane, C30H62),
spheric cloud, PSC)上の HCl, HNO3, ClONO2 などの反応な
代 表 的 な PAH と し て の ベ ン ゾ ピ レ ン(benzo[a]pyrene,
どが,これまで最もよく研究されており,これらに関して
C20H12, BaP)の化学構造式を Figure 1 に示す。
は既に多くの現象が解明されている 。
気相の O3 による粒子状不飽和有機化合物の酸化反応の
こうした無機化合物の不均一反応化学に対し,現在最も
典型例として,オレイン酸などの二重結合を持つ常温で液
関心が持たれているのは対流圏における不均一有機反応化
体の不飽和脂肪酸との反応がある。たとえば実験的に得ら
学である。OA は一般に重量で大気中全微小粒子の 20−
れた 298 K におけるオレイン酸に対する O3 の表面での反
50%を占めている が,OA には発生源から直接排出される
応確率(反応取り込み係数 γ r)は (8.0±1.0)×10–4 と報告さ
一次有機エアロゾル(primary organic aerosol, POA)と大気
れている 11。取り込み係数(uptake coefficient, γ )とは気体
中で気体分子から生成される二次有機エアロゾル(second-
分子の粒子への衝突数に対する気体分子の消失数の比とし
ary organic aerosol, SOA)とがあり,一般に OA の 60−90%
て実験的に得られる数値であり,衝突分子が粒子内で反応
。SOA については,現
によって消失する場合の係数を特に反応取り込み係数 γ r と
3
4
は SOA であることが知られている
5,6
在なお野外での観測値に比較してモデルによるシミュレー
ションが過小評価をもたらすことが報告されている 7,8 が,
こうした不一致の根本原因は,SOA の生成 ・ 消滅に関わる
不均一反応が反応化学としてきちんと解明されていないた
めである。
3.
気相 O3, OH と粒子表面有機化合物の気液・気固
界面反応:エアロゾルの大気中エイジング
大気中に放出された一次エアロゾルは,気相の O3, OH,
NO3 などの酸化性活性種と反応して,より酸化が進んだ化
Figure 1. Molecular structure of typical organic compounds mentioned
in the text.
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呼んでいる。ちなみに,分子動力学計算から得られる適応
るという形でも見いだされている 25。表面反応のメカニズ
係数(accommodation coefficient, α )は気体分子が粒子表面
ムに関しては,表面に衝突した活性種が直接表面分子と反
に 1 回衝突したときその分子が表面に留まる確率として定
応する Eley̶Rideal(ER)機構と,活性種が表面分子に一
義され,この分子は再び表面から離脱する可能性があるの
旦吸着され,この吸着分子を介して反応が進行する Lang-
で一般に γ ≤ α であり,定義から α , γ の最大値は 1 である。
muir̶Hinshelwood(L-H)機構が知られている。実験的に
上記の取り込み係数はほぼ 10 回に 1 回の反応確率に相当
はこれら両メカニズムは有機分子の擬一次反応速度定数が,
し,これは気相での O3−オレイン酸反応に比べて 3 桁ほど
反応活性種濃度に直線となるか,飽和曲線となるかによっ
大きな値である。気相反応に比較して O3 に対する表面反
て判定される 9。Figure 3 は気相の O3 とスス上に皮膜され
応の速度の増大は,不飽和脂肪酸の他,長鎖アルケンであ
たベンゾピレン減衰の擬一次反応速度定数の O3 濃度依存
る 1 テトラデセン ,不飽和リン脂質の 1-oleoyl-2-palmi-
性を示すが,反応速度が O3 濃度に対し飽和曲線を示す L-H
toyl-sn-glycero- 3-phosphocholine(OPPC) ,端末にビニル
型の特徴を持っていることを示している 26。同様の結果は,
基を持つ C3, C8 不飽和化合物の自己組織化した単分子膜 14
O3 とアゼライン酸(azelaic acid, HOOC(CH2)7COOH)粒子
でも報告されており,エアロゾル上の不均一反応の一つの
上の BaP27,液相でのナフタレン,アントラセン,いくつ
大きな特徴である。
かの PAH の反応 23,24 に対しても得られている。一方,O3
気相の OH ラジカルによる有機エアロゾルの酸化反応は
と PAH の反応性は基板粒子によって大きく左右され,O3
スクワランのような長鎖飽和炭化水素やパルミチン酸,ス
の水滴中アントラセンへの取り込み係数は水滴表面が 1 オ
テアリン酸(stearic acid, C17H35COOH)のような飽和脂肪
クタノール(1-octanol)で被覆された場合 5 倍大きくなる
酸の液滴・被覆膜表面との反応が実験室的に研究されてい
こと 28,O3 は乾燥 NaCl 粒子上に被覆された BaP とは反応
る。スクワラン液滴では OH の取り込み係数は 0.25−0.30
しない 27 ことなどが報告されている。
3
12
13
と非常に大きい 15,16。反応経路としては Figure 2 に示され
るような,酸化による含酸素官能基の付加(functionalization)と C-C 結合の切断(fragmentation)の競争
17
に興味
3.2
理論的研究
なぜ表面不均一反応が気相反応やバルクの液相反応に比
を持たれている。
べて反応速度が大きいのかに関連して,いくつかの分子動
最近 Enami ら 18,19 はマイクロジェットを用いた新しい実
力学(molecular dynamics, MD)計算がなされている。動力
験手法で O2 存在下での気相の OH と水溶液表面のカルボン
学的研究としては,一つは水界面への大気分子の吸着過程
酸,ジカルボン酸との反応の中間体ラジカルを直接検出し,
の熱力学的計算であり,他は吸着分子に対する気相,液相
これらの実験からは表面反応では OH による H 原子引き抜
の O3, OH などとの反応性の研究である。まず,大気̶水
きによるペルオキシラジカルからのアルコール,カルボン
滴界面への O3, OH などの吸着過程に関しては,O3 のよう
酸,ヒドロペルオキシドなどの含酸素生成物と共に,オキ
な疎水性分子,OH のような親水性分子にかかわらず界面
シラジカルの β 開裂によるフラグメント化合物が生成する
での Gibbs エネルギーが極小を持つこと 29,さらに OH の
事が確認されている。こうした反応経路はバルク液相中の
場合,吸着界面での極小値 ΔaG がバルクの水和エネルギー
OH とモノカルボン酸,ジカルボン酸との反応経路 20 と全
ΔsG より約 1 kcal mol–1(kcal mol–1 = 4.184 kJ mol-1)小さ
く異なることが興味深い。
いことが示されている 30。
気相の O3, OH と PAH や芳香族炭化水素エアロゾルとの
また,芳香族化合物(ベンゼン,ナフタレン,フェナン
反応は PAH の発がん性などの観点から関心がもたれ,水滴
へ取り込み 21,22 や表面反応 23,24 に関しての多くの実験的研
究がなされている。ここでも気相反応に比較して表面反応
の加速が実験的に得られているが,表面における反応の促
進は粒径が小さくなるにつれて overall の反応速度が増大す
Figure 2. Example of fragmentation and functionalization pathways in
the oxidation of organic compounds at the air-water interface (Kroll et
al.17).
Figure 3. Pseudo-first-order BaP decay rate coefficients as a function
of gas-phase ozone concentration showing Langmuir-Hinshelwood
mechanism (Pöschl et al.26).
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トレン,アントラセン)など多くの大気分子の水表面に対
する吸着・溶媒和(solvation)Gibbs エネルギーの理論計算
がなされ,それらの Gibbs エネルギーが界面で極小を持つ
など,熱力学的な量は実験値と良く一致する結果が得られ
ている 21,31,32。さらに興味深いことに,界面での Gibbs エ
ネルギーの極小はバルクの水和エネルギーの値より低く,
界面での吸着分子がバルクでの水和分子に移行するにはか
なり大きな障壁があることが,芳香族化合物について示さ
21,31
。このことは水滴に取りこまれる
れている(Figure 4)
多くの大気中の有機分子は気液界面に多く存在し,気相の
O3, OH などとの反応の効率を高めている一因となっている
と考えられる。
水溶液表面における反応速度の促進の理由について,
Figure 4. Potential of mean force for moving anthracene through the
air-water interface. The experimental hydration energies obtained from
the Henry s law constants in several measurements are displayed as
horizontal lines (Vácha et al.21).
Watanabe ら 33 はバルクの水溶液中では水素結合の網が張り
巡らされているが,表面分子では水素結合が断ち切られて
いるため反応が起こりやすくなっている可能性を示唆して
いる。また Jung and Markus34 は,界面上の水分子の自由
OH 基と反応有機分子の相互作用が界面反応を促進するこ
とについての理論的考察を行っている。Kuo and Mundy35 に
よる ab initio MD 計算では個々の H2O 分子の最高被占軌道
の平均値が気液界面に近づくにつれ増加し,平均的に界面
がバルクより多くの反応状態を含むと言う結果が得られて
いる。その他,界面における分子配向が動力学的に反応促
進に有利である可能性などが Johnson ら 36 により示唆され
ている。気相,液相反応に比較しての表面における反応速
度の増大や反応経路の違いについては,今後の大きな研究
Figure 5. Energy profile for the reaction of O3 with the BaP on soot
(Shiraiwa et al.40).
課題と思われる。
O3 の有機物表面への衝突過程に関しては,Vieceli ら 37 は
み係数が増大するのか 28,34 などいくつもの興味深い謎があ
金表面へ吸着させた 1-octenthiolate 単分子層,液体 1 テト
り,今後理論的量子化学研究が待たれている。
ラデセン,OPPC 単分子層などに対し,古典 MD 計算を行
ている。また PAH38 や graphene39 に対する Density Function
雲霧水滴,エアロゾル水溶液中のグリオキザール
類の化学反応:ジカルボン酸・オリゴマーの生成
theory(DFT)による計算からも,O3 の表面での滞在時間
大気中の SOA にはジカルボン酸,多官能基オリゴマー
は数 ns の桁であるという結果が示唆されている。しかしな
(数個から数 10 個のモノマー分子からなる分子量 100−
い,O3 の表面での滞在時間は数 100 ps 以下との結果を得
4.
がら上にみたように O3 と PAH などの反応はすべて L-H 機
1000 の重合体)などが主成分として含まれていることが知
構であるということが実験的に実証されており,この結果
られている。それらの生成機構は長い間謎であったが,最
はこれらの理論計算とは相容れない。最近 O3 と BaP との
近これらはグリオキザール,メチルグリオキザールなどを
はこれまでの実験と計算とか
前駆体とする雲霧水滴やエアロゾル水溶液中の化学反応で
ら O3 とエアロゾル表面上の反応では長寿命(>100 s)の活
生成される事が実験的に明らかとなってきている 41。グリ
性酸素中間体(reactive oxygen intermediate, ROI)が生成す
オキザール,メチルグリオキザールなどの反応の特色は,
る事を示し,これまでの MD 計算と実験の不一致を解消し
これらの分子が水溶液中で水和物として存在することが反
ている。Figure 5 は O3 とスス上の BaP に対するエネルギー
応に大きく係わっていることであり,前項でみた水滴界面
表面反応に対し Shiraiwa ら
40
断面図であるが,ROI としてトリオキシルビラジカル,ま
での有機分子の反応とは別に,本項ではバルクの有機反応
たは一次オゾナイドのような化学種が想定されている。
における溶媒としての水分子の関わりがポイントとなる。
有機エアロゾル上の気体分子の取り込みと不均一反応に
雲霧水滴,エアロゾル水溶液中の SOA 生成反応に関しては
関してはこの他にも,例えば有機反応種が吸着している基
Kroll and Seinfeld42,Herrmann ら 43,Kolb ら 44 の総説が参
板粒子によってなぜ O3 との反応性が異なるのか 27,表面
考になる。
が他の分子の単分子膜で覆われることによってなぜ取り込
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4.1 実験的研究
水溶液中におけるグリオキザール,メチルグリオキザー
(3)
ルなど反応の特質は,これらの分子が次式のように水和物
を生成し,それらが反応分子となっていることである。
CHOCHO(aq) + H2O ⇄ CHOCH(OH)2
(1)
HCOCH(OH)2 + H2O ⇄ (OH)2CHCH(OH)2
(2)
のようなヘミアセタールが生成し,ヘミアセタールからは
さらに脱水反応によってより安定な 5 員環を持ったオリゴ
マーを生成する 48–50。
水溶液中のグリオキザールはほとんどが2水和物
CH(OH)2CH(OH)2 として存在し 44,メチルグリオキザール
では 1 水和物と 2 水和物の比は約 60:40 と実験的に求めら
れている 45,46。これらの化合物は気相,水溶液相で OH と
(4)
容易に反応するが,気相での OH 反応ではグリオキザール
は CO, CO2, H2O などに分解され,シュウ酸など C-C 骨格
を保持した生成物は生成しない 47。一方,雲霧水滴など水
溶液中のグリオキザールと液相中の OH の反応は,Figure 6
(5)
のような機構でグリオキシル酸,シュウ酸などを生成する
ことが実験的に知られており 41,この反応は大気中のジカ
また,エアロゾル水溶液中の別のタイプの非ラジカル性
ルボン酸の生成反応として重要である。この反応性の違い
有機反応として,酸触媒アルドール縮合反応によるオリゴ
は水和によるグリオキザール反応の安定化によってもたら
マー生成が知られている。例えばメチルグリオキザールの
されている。
場合,
一方,グリオキザールなどが硫酸酸性エアロゾルなどに
高濃度で取りこまれた場合には,ラジカル反応ではなく,
(6)
有機化学でよく知られた酸触媒ヘミアセタール・アセター
ル生成反応による縮合的な反応が起こることが最近実験的
に明らかにされている 48–50。例えばグリオキザール 1 水和
(7)
物,2 水和物からは
Figure 6. Mechanism for aqueous-phase reaction of glyoxal with OH radicals to form oxalic acid
and other products (Lim et al.41).
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アルデヒド,アセトアルデヒド,アセトン,ブタナール,
(8)
ヘキサナールなどのモノカルボニル化合物およびグリオキ
ザールの水和反応およびアルドール縮合反応に対する標準
のような反応である 51。有機エアロゾル中のオリゴマーの
反応エンタルピー Δr H (gas) および標準反応 Gibbs エネル
存在は,ある種のオリゴマーが太陽光の波長領域の光を吸
ギー ΔrG (aq) を初めて量子化学的に計算し,水和反応の
収することから,放射収支・気候変動の観点からも関心が
ΔrG (aq) はホルムアルデヒドに対してはほとんど 0 に近い
持たれている 。
小さな負の値であるが,他のモノカルボニル化合物では正
52
この他,SO42–, NO3–, NH4+ などを高濃度で含むエアロゾ
の値であること,アルドール縮合の ΔrG (aq) がアルデヒド
ル水溶液中では,有機硫酸塩 ,有機硝酸塩 ,イミダ
については小さな負の値であるが,アセトンに対しては正
などが生成することが知られているが,ここで
の値であることなどを示した。これに対しグリオキザール
53
ゾール類
55
54
は省略する。
では反応(1),(2)による 1 水和物,2 水和物が生成する過
程の標準反応 Gibbs エネルギーがそれぞれ – 4.14, – 10.56
4.2 理論的研究
kcal mol–1 と負の値であり,これらから反応(3)−(5)でヘミ
有機分子の化学反応が水分子の関与によって反応速度や
アセタールを経る環状アセタールの生成反応が負の ΔrG (aq)
反応経路にどのような影響を受けるかという問題は,反応
を与え熱力学的に有利であることを示している。これらの
動力学的にも非常に興味深い課題である。大気化学におい
結果は前項の実験事実をよく説明している。
ては,大気中における HO2 ラジカルの重要な反応である
さらに,Kua ら 66 は溶媒影響を記述した密度汎関数理論
HO2 + NO → OH + NO2
→ HNO3
HO2 + HO2 → H2O2 + O2
(9)
計算を水溶液中のグリオキザールの水和反応および二量化
(10)
反応に対して行い,反応生成物の相対 Gibbs エネルギーと
(11)
遷移状態エネルギーを求めている。Gibbs エネルギーおよ
の反応が,HO2 が大気中の H2O 分子と HO2•H2O 錯体を形
成することによって促進されることが知られている
。
56,57
び活性化 Gibbs エネルギーに対して得られた計算結果を
Figure 7 に,水和反応および二量化反応の遷移状態の分子
HO2 の自己反応(11)に対する H2O 分子による促進(触媒効
構造をそれぞれ Figure 8, 9 に示す。
果)に関しては ab initio 計算もなされている 58。ラジカル−
Figure 7 からわかるようにグリオキザール(1)から 1 水
分子反応に対する水分子の触媒効果に関しては,OH +
和物(2)が生成する反応の ΔrG は – 2.8 kcal mol–1,2 水和
CH3CHO•H2O 反応などに対する理論計算がなされ 59,H2O
物(3)が生成する反応の ΔrG は – 4.7 kcal mol–1 であり,
分子による反応の促進効果が認められている。しかしなが
2 水和物の生成が熱力学的にも有利であることが示されて
ら,OH•H2O 錯体 60 を含めこれらの水錯体は大気中での存
いる。また,1 水和物生成反応に 1 個の水分子だけが含ま
在比率が低いため,大気化学反応として重要な役割を果た
れるなら 4 中心(Figure 8 左上図)遷移状態エネルギーは
しているとは考えられていない 。グリオキザールに関し
Δ‡G = 37.0 kcal mol–1 であるが,2 個の水分子が関与する 6
ても,上のアセトアルデヒドの場合と同様,H2O 1 分子が
中心(Figure 8 右上図)遷移状態(H1)では Δ‡G = 18.5
付加したグリオキザール・水錯体と OH との反応は,H2O
kcal mol–1 と後者の反応経路の方が有利である。さらに 1 水
無しの反応に比べて促進されることが量子化学計算によっ
和物(1)にもう 1 分子の水が水和し 2 水和物(3)を生成す
61
て示されている 。しかしこの場合も H2O の付加過程が
62
Gibbs エネルギー的に有利でないため,大気中のグリオキ
ザール・水錯体生成を含めた総括反応速度は,通常の気相
反応に比較して無視できるとされている 63。一方気相中で
メチルグリオキザールが液相中と同様に
(12)
の反応で 1 水和物を生成する事が赤外吸収スペクトルによ
る分光学的実験で見いだされ,量子化学的理論計算からも
確かめられている 64。
SOA 生成に直接的に重要な水溶液中のグリオキザール,
メチルグリオキザールの反応に関しては,密度汎関数理論
を用いた計算が報告されている 65–67。Tong ら 65 はホルム
Figure 7. Monomers and dimers considered in the transformation of
glyoxal in aqueous solution including relative free energies (in kcal
mol–1) for all species in solution referenced to glyoxal and water. Transition states are in parentheses (Kua et al.66).
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2 水和物より熱力学的に安定で,この結果は実験的に求め
られた 1 水和物と 2 水和物の比と定性的に一致している。
アルドール縮合過程は,エアロゾル中にさらに分子量の大
きなオリゴマーを生成する重要な反応であるが,オリゴ
マー生成に至る過程の量子化学的理論計算は,著者の知る
限りまだ報告されていない。
5.
大気エアロゾルに関するその他の量子化学計算研
究例
有機エアロゾルの生成過程としては,本稿で述べた水溶
Figure 8. Transition state structures for hydration of glyoxal to form
glyoxal dihydrate (Kua et al.66).
液中のラジカル反応,非ラジカル反応による水和・二量
化・縮合過程の他に,芳香族化合物,イソプレン,テルペ
ンなどの人為起源・自然起源炭化水素の OH, O3, NO3 によ
る気相酸化反応からの直接生成も重要である。これらに関
しても従来の気相反応過程に対する ab initio 計算の発展と
しての理論的計算がなされている 68 が,ここでは省略する。
また,無機化合物の大気不均一反応に関しては,前に述
べた雲水酸性化や PSC 上反応以外に,海塩粒子と大気中の
OH, O3 による気相へのハロゲン化合物の放出に関わる反応
過程に興味が持たれてきた。こうした過程に関連して,
Jungwirth and Tobias69 が電解質水溶液表面の分子動力学シ
ミュレーションにより,海塩中では Cl– にくらべてはるか
に存在割合の小さな Br–, I– などが優先的に水表面に露出す
ることを示した有名な研究がある。この研究が大きな刺激
Figure 9. Transition state structures for dimerization reactions of glyoxal (Kua et al.66).
となり,この分野の理論的研究が進むと共に大気化学と計
算機化学が協同して大気中プロセスの科学的解明を目指し
た一つの良い例となっているが,本稿は有機エアロゾルに
る遷移状態(H2)
(Figure 8 右下)は Δ‡G = 15.5 kcal mol–1
焦点を絞ったためここでは取り上げていない。
であり,グリオキザールの場合 2 水和物の生成が有利であ
まとめと今後の計算化学への期待
ることが理論的にも示されている。なお,Figure 8 の左下
6.
図は水和反応に 3 個の水分子が関与する場合の遷移状態の
本稿でみたような水溶液中の有機化学反応 70 に対する量
構造を示している。
子化学的理論研究はまだ緒に就いたばかりである。大気化
また,単体グリオキザール,1 水和物,2 水和物間の二量
学の立場からは有機エアロゾルの生成・消滅を本質的に理
化反応も Figure 7 に見られるように熱力学的に有利であり,
解し,その定量的予測精度を向上させるために,新しい量
Figure 9 に計算から得られたそれぞれの反応の遷移状態が
子化学計算が不均一系多相反応化学に対して重要な役割を
示 さ れ て い る(D11: 1+1+H2O; D12: 1+2+H2O; D22: 2+2+
演じてくれることを強く期待している。
H2O; D23: 2+3+H2O)。さ ら に,閉 環 反 応(4 → 7, 5 → 8,
一方,理論分子化学の立場からは,C, H, O, N, S 原子を
5 → 9)に対しても同様の計算がなされ,Figure 7 にみるよ
対象とした不均一反応,クラスターより大きなオリゴマー,
うに特に 8 の生成が熱力学的にも活性化 Gibbs エネルギー
水和構造・水溶媒効果を取りこんだ有機化学反応などは,
の面からも有利であるとの結論が得られている。この結果
新しい基礎科学分野として興味深い研究対象であると思わ
は実験事実とも一致する。また,実験的に得られている 1
れる。生体分子,触媒分子の他に巨大分子系の計算化学 71
水和物と 2 水和物からのヘミアセタール 6 の生成(式(3))
のもう一つの分野への理論分子化学の発展が望まれる。も
も熱力学的に有利であることが,Figure 7 からみてとれる。
う一つの分野の広がりが,基礎・応用の両面でどこまでの
同様の計算はメチルグリオキザールについてもなされ,
広がりを持つかはまだ見切れないが,大気化学はその一つ
上と同様の水和・二量化・閉環反応のほか,式(6)−(8)
の糸口なのではないかと思われる。
でみたアルドール縮合反応に対し,反応の Gibbs エネルギー
や活性化 Gibbs エネルギーが求められている。メチルグリ
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Mol. Sci. 9, A0079 (2015)
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10472.
秋元 肇(あきもと はじめ)
所属:国立環境研究所地球環境研究センター
専門分野:大気化学
連絡先:〒 305-0046 茨城県つくば市小野川 16-2
電子メール:[email protected]
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