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仕事が楽しい人File.27:メイさん(現地スタッフ:店舗開発職など) 頼れる

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仕事が楽しい人File.27:メイさん(現地スタッフ:店舗開発職など) 頼れる
仕事が楽しい人File.27:メイさん(現地スタッフ:店舗開発職など)
◆頼れる現地スタッフとは
メイさんは、ベトナムのハノイで日本人が経営する飲食店の店舗開発からスタッフ教育、
そしてマーケティングも含めた多岐の仕事に携わっています。
レストランで提供する料理はお好み焼きやお寿司ですが、ターゲットとする顧客は、日本
からベトナムに赴任した日本人ではなく、ベトナムの人たちをメインとして経営し、繁盛
しています。
ここ最近、日本食は諸外国で人気があるため、海外進出を果たす企業が年々増えています
が、上手くいかなかったという話もよく聞かれます。
海外進出を成功させるには、レストランに限らずどの事業分野においても、その国のこと
をよく知っている、有能で信頼できる現地スタッフの存在が不可欠です。
今回は、そのスタッフの代表としてメイさんの仕事ぶりを紹介します。
メイさんは大学で日本語を選考し、卒業後はJETRO(日本貿易振興機構)への就職を
志し、JASSO(独立行政法人日本学生支援機構)からの奨学金を受けて、日本の大学
に留学もしました。ところが、大学時代に日本に関わる数々のイベントの企画に従事した
ことから、このレストランを立ち上げる日本人経営者と出会い、
「志のある人のために一肌脱ぎたい」
との思いから、飲食店の仕事に関わるようになりました。
今から3年前にお好み焼き系レストランを立ち上げ、予定通りに売上もあがり上々の滑り
出しのようでしたが、思わぬところに落とし穴がありました。
それは、仕入れ原価。
原価率が高いことが気になり、仕入れ金額を念入りに調べると、各食材が小売店で買った
ほうが安いのではないかと思える程の高値で購入していたことがわかりました。
この時メイさんは、仕入れ業者に「騙された」と思ったそうです。
この事実に気づいたメイさんと日本人経営者は、仕入れ業者に価格交渉を試みますが取り
合ってもらえません。であれば、この仕入れ業者の取引を止め、自ら直接食材を買い付け
ようと市場へ足を運びました。
朝の1時に店を出て、市場へ1時30分に到着。
メイさんがはじめて市場を目にした時、人のあまりの多さに圧倒されました。
「なんでもあるし、すごい活気だなぁ」とドギマギしたそうです。
気を落ち着けて、野菜や肉を買い付ける交渉を始めると、初顔の自分たちを、誰も相手に
してくれません。
それもそのはずで、まだ、お好み焼き店1店舗。それほど大きな店ではなかったため、買
い付ける量も、まるで、一般家庭の主婦が小売店で買い物をするのに等しい量でした。
ですから、市場の人に、
「この商品はいくらですか」と聞いても答えてもくれず、時には「お
前はなんなんだ!」と声を荒げて怒られることもありました。
誰かが取引に応じてくれないかと毎朝市場へ通いましたが、なかなか目処が立ちません。
このような活動を、メイさんは、1ヶ月間続けました。
でも、上手くいきませんでした。
「どうすれば、取引に応じてくれるのだろう」
とメイさんは、悩みました。そして、知人に相談もしてみました。
すると、卵を購入している業者さんが、
「俺が、市場の人たちを紹介してあげるよ」
と名乗りを上げてくれました。
この瞬間から状況は一変しました。
少ない量でも、市場の人は笑顔で食材を売ってくれるようになり、市場のおじさん、おば
さんと急速に仲良くなりました。
一山越えたメイさんでしたが、まだまだ、苦難は続きます。
(続きは、
「平堀が感じ取ったメイさんの日本人魂」をお読みください)
◆メイさんが大切にするキーワード
「感動」
お客さんにもスタッフにも感動をしてもらいたい。
どうやったら感動できるのだろうかと考えて、常に人と接しています。
◆メイさんのパワー○○
「頑張っている人の姿を見る」こと
日本文化週間立ち上げの実行委員を務めたときに、経験の浅さから、
各分野の調整に苦労し、私には無理だと諦めかけたことがありました。
そんな後ろ向きな気持ちになったとき、先輩たちが必死に頑張っている姿が目に飛び込ん
できました。
その瞬間、自然に私も頑張ろうという気持ちになりました。
それ以来、
「頑張っている人の姿」を見ると、やる気スイッチが入ります。
◆メイさんのコツコツ
「知人に定期的にメールをする」こと
携帯電話の個人リストに、1,000人位の知人が登録されていますが、定期的に、この
リストを確認し、しばらく音信が不通になっている知人にメールをしています。
◆平堀が感じ取ったメイさんの日本人魂
メイさんは、大学を卒業して社会人経験を積まずに、飲食店の立ち上げに挑みました。
先に紹介した市場の開拓はほんの一例で、今日までに数々の苦難に遭遇し、それをことご
とく克服してきました。
まさにズブのど素人が事業を立ち上げてきたのです。
メイさんは、今の仕事に就くまでは、飲食店で働いている人たちとの接点もなく、管理の
手を抜くとすぐにサボるスタッフを目にして、
「なんていう人たちなんだろう」
と軽蔑した気持ちになり、スタッフとは、何度も衝突しました。
何回注意しても同じことを繰り返し、時には、店の食材や現金を盗む人たちもいて、
「この人たちは、人間じゃない」
とも思ったそうです。
このメイさんのスタッフへの猜疑心を溶かしたのは、“メイさんのパワー○○”に記した、
「頑張っている人の姿を見る」ことの精神でした。
サボったり、騙したり、盗んだり、暴れたりするとしか印象のないスタッフに、つぶさに
目を向けると、料理の仕込みや掃除をする、ひたむきな“一生懸命の姿”がたくさん目に
飛び込んできました。
すると彼らの気持ちが手に取るようにわかりだし、これまでにないような親密感を持って
コミュニケーションが取れるようになりました。
その時までのメイさんは、スタッフの気持ちを“理解できない”と思っていましたが、そ
うではなくて、
“理解したくない”と、自らスタッフとの距離を遠ざけていた自分に気づき
ました。
メイさんに、
「今の仕事をしていて、一番嬉しかったのはどんなことですか」と尋ねました。
メイさんは、
「社長とスタッフの考え方の食い違いを埋める仲立ちをして、お互いの気持ち
が通じ合った時です」と答えてくれました。この解答は、次のようにも翻訳できます。
「日本人とベトナム人の考え方の食い違いを埋める仲立ちをして、お互いの気持ちが通じ
合った時」と。
メイさんが勤務する会社の社長は日本人で、スタッフはベトナム人だからです。
話は飛びますが、メイさんは、小さい頃から日本人みたいだねと、友だちから言われてい
たそうです。それは、礼儀正しく、お辞儀をするから。
お辞儀は両親に教えられたわけではなく、日本人がこのような習慣があるとも知らずに、
自然にしていました。
メイさんには、私が欲しかった竹製のカーペットの買い物にもお付き合いいただきました。
この時に値下げ交渉をするメイさんはいたって礼儀正しく、店員さんと真摯に粘り強く話
を進めている様子が伝わり、私は、好感を持ちました。
もし、この姿が日本人らしいのであれば、騙される方が悪いと言われている地域に行った
としても、
“礼儀”は、人と人との心を結びつける媒介になり得るのだと、メイさんから教
えられた気がしました。
市場の開拓も、スタッフと経営者との関係づくりも、メイさんの“礼儀”が礎を築いた。
我々日本人が、どこかで失いかけている大切な精神を、メイさんは呼び起こしてくれまし
た。
◆メイさんのプロフィール
職業:現地スタッフ(店舗開発など)
所属:コミュニティーラボベトナム㈱(community-labs.com)
◆店舗開発とは?
現地スタッフという職種はないので、メイさんのメイン職種を取り上げました。
(13 歳からのハローワーク公式サイトから抜粋しました)
新しく店舗を設ける際に、条件にあった土地を探し、開店までのサポートをする人。周辺
の商業特性を調査・分析、用地交渉、資金計画、店舗設計、設備手配、ロゴや看板のデザ
イン、スタッフ研修にいたるまで、各分野の専門家をコーディネートしながら全てを取り
仕切る。建築会社、設計事務所、店舗プロデュース会社や経営コンサルティング会社、ま
たは企業にて店舗開発担当として活躍する。企画力、マーケティング知識はもちろん、開
店に向けて多くの専門家や業者と連携をとってスムーズに進行させるため、自分のイメー
ジや考えを明確に伝える力、交渉力も必要だ。
◆現地スタッフに求められる能力
礼儀正しさ:人と人とを結びつける礎を築く力
ブレない心:事業を立ち上げる狙いを理解し、迎合せずに毅然と交渉する精神力
執着心:粘り強く物事に取り組む力
感情移入:相手の気持ちになって物事を考える力
語学力:国境を越えた人脈形成に絶対に必要な力
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