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基調講演:「青少年の意欲を高める体験活動」

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基調講演:「青少年の意欲を高める体験活動」
基調講演:「青少年の意欲を高める体験活動」
今西
幸蔵
氏(天理大学人間学部人間関係学科教授)
講師略歴
1947年大阪府生まれ。大阪府立高等学校,大阪府教育委員
会事務局,大阪府立文化情報センター,京都文化短期大学,京
都学園大学などに勤務した後,現職。
専門研究分野は,生涯学習支援と生涯教育(学校教育や社会教
育)など。
全国体験活動ボランティア活動総合推進センターアドバイザー,日本ボランティア
社会研究所理事,日本ボランティア学習協会理事
1.新しい教育基本法について
昨年末に教育基本法が変わり,私なりに新しい教育基本法を見ながら思うことがある。
特に,今度の教育基本法で大事なことは,「公共の精神を尊び,豊かな人間性と創造性
を備える」という大変大事なことが出てきている。「公共性」という言葉は,大変難し
い言葉でいろいろな解釈もあるが,私たちが生きて学ぶ中で,外に向けて人間が自分を
形成するということで,そのことの意味が問われる基本法だ。
これまで,日本の教育は,自分の内面に向けたものが多く,「自分の内面を高める」,
「人格を高める」ことに終始してしまう教育が強かったのではないかと思っている。も
ちろん,それは大事なことだが,もう一方に,社会というものがあり,その社会とのか
かわりが必要になってくる。
従って,新しい教育基本法で,「公共ということ」の意味が問われたことと,従来 か
ら日本でずっと培われてきた「内面形成」,「個人の人格の形成」という非常に重要な問
題の二つをバランスよく活かしながら,新しい日本という国をつくっていくことが大事
だと私は解釈している。そういう意味で,外に向けていろいろなことを学んでいく力を
考えた時,今日のテーマである体験活動がとても大事な問題として浮かび上がってくる。
教育基本法の改正で,私個人の立場から一番うれしかったのは,生涯学習の理念が明
確にされたことで,日本の教育に関する基本的理念として,生涯学習の理念ということ
が,新教育基本法第3条で示されている。第3条の文章の前半の部分が,人格の完成と
いう,自分個人を磨くことであり,後半の文章で,社会に向かってそれを発揮していく
ということが書かれている。
また,社会教育の分野からも,家庭教育,幼児期の教育,あるいは学校,家庭,地域
との連携という,きめ細かな教育の在り方が新教育法では求められている。
2.青少年の課題と今後の教育施策
(1)青少年の現状のとらえ方
一般社会で今の青少年のことを厳しく批判する方々がいるが,私は大学の教員として
今の学生を見ていて,そうは見ていない。ほとんどの学生は勤勉に頑張っているし,前
- 1 -
向きである。大学で授業をしていても,きちんと話を聞いていて,私が難しい話をする
と,たちまち質問がとんでくる。
ただ残念ながら,確実に前に進んでいるかといえば,難しい問題がある。いろいろな
事柄を挙げて,その事柄について明るい方向でとらえているか,暗い方向でとらえてい
るかという質問を 20 ほどの項目について行ったことがある。例えば,「日本の未来は繁
栄すると思うか」とか,そういう質問を 20 ほど作って実施した。明るい方を 10,暗い
方を 0 として測定したら,私が前に勤務していた大学の学生は 3.7 という結果だった。
これは,その大学の学生たちが特に低いというのではなくて,全国的な結果を見ても,
同じ検査で3点台という数字が出ている。
つまり,真ん中の5よりも下の方へ行っているわけで,将来に対して彼らは必ずしも
明るい展望を持っているわけではないことがわかる。そして,もっと大事なことは,今
の自分を肯定的に見えていないということである。私の目から見て,今の学生はまじめ
に一生懸命やっているにもかかわらず,必ずしも自信を持ってやっているわけではない。
不安を持ってやっているという言い方をすれば大げさになるかもしれないが,自信がな
い中,手探りでやっているという感じがする。
(2)現代の青少年の課題
現代の青少年の課題として,六つあ
ると考えている。このいずれもが青少
年にとって大きな課題で,特に三番目
に自尊感情という用語を使ったが,自
分自身を肯定的にとらえる,自分自身
を将来発展するものととらえる,英語
で「self-esteem」という
ふうな概念で呼ぶが,そういった力が
必ずしも十分に形成されていない。
それから,大きな課題として六番目
の「発達課題から見た青少年の特性が
現代の青少年の課題
①青少年が持つ価値観の変化が著しい。
②社会規範を守る意識が欠如している。
③自 尊 感 情 が低 く,自 己 概 念 を形 成 する力 が弱
い。
④自己中心的で,自己抑制力が十分ではない。
⑤将 来 の職 業 生 活 や市 民 生 活 に 対 する展 望 が
見えない者が増加しつつある。
⑥発達課題から見た青少年の特性が十分に発揮
されない者が増加しつつある。
十分に発揮されない者が増加しつつある」と考えている。例えば,発達段階や発達課題
を明確にしたハビーガーストとか,人間のライフサイクルを明確にしたレビンソンとか,
あるいは心理学的な要素を加えたエリクソン,そういう研究者がそれぞれの人間の人生
の各時期,ライフステージに応じた発達課題と,そこにおける人間の成長というものに
ついていろいろ定義しているが,それが疑わしくなってきているのが現状である。
つまり,発達課題が十分に形成されていない。例えば,青年が青年らしい特徴を発揮
していないということを感じることが多い。それは,発達課題そのものが,従来の人間
の在り様を研究した結果から出たもので,当然,時代が変われば価値観が変わり,発達
課題も変わって当たり前なのだが,ただ現実的に青少年の特性というものが発達課題ど
おりになっていない。青年という定義,あるいは少年という定義,こういう定義すら実
は困難になりつつある。ボーダーがはっきりしない,ボーダーレスの時代になっていて,
これは,今からますます大きな問題となってくると感じている。
- 2 -
(3)青少年を取り巻くさまざまな課題
青少年を取り巻くさまざまな種類の
青少年を取り巻くさまざまな課題
課題がある。
①家 庭 教 育 ,学 校 教 育 や地 域 の教 育 力 が弱 体
特に,①の家庭教育に関しては,新
化している。
教育基本法でもその重要性が強く出て
②家 庭 や社 会 の変 容 により,さまざまな経 験 ・体
いる。家庭教育に大きな問題があるこ
験不足や交流機会の不足が生じている。
とは,昨今指摘されているが,家庭教
③社会のあり方や価値観の変化が,青少年の生
育の場で自我が形成されにくくなって
き方に強い影響を与えている。
いる。他にも問題があるが,この自我
④各 種 の情 報 の一 部 に,青 少 年 にマイナスの影
が形成されにくいという問題が,私は
響を与える情報が存在する。
一番大きな問題だと思っている。
⑤青 少 年 の成 長 に必 要 な「発 達 資 産 」の獲 得 の
そのことに関して,学生の卒業論文
実態に二分化傾向が見られる。
で,親子のコミュニケーションを含め
⑥「外 発 的 動 機 」(問 題 解 決 型 )よりも,「内 発 的
た親子関係についての調査をした学生
動 機」(自 己 実 現 型)を強 く触 発させるような社
がいた。その中で,親が一人の人間と
会環境が存在する。
しての考えや感情を持った存在として
子どもに対峙していないということが見えてきた。アンケート調査などでは,子ども自
身は親との関係はうまくいっていると答えながら,実は内面が満たされていない。子ど
もの要求に対して,親は親の価値観で子どもにきちんと対応すればよいのだが,親自身
が自分の考えを明確にせず,子どもの要求に対してかわす・そらす場合が多い。その結
果,子どもは自分が受け入れられていないと感じている。そういうことを考えた時に,
子どもの自我が形成されにくいという状況がつくられる。
社会全体でも,昔は地域に怖い大人がいて,指導的立場で厳しく子どもをしつけ,指
導していた。ところが,今やそういう方もなかなか見られなくなった。地域の人たちも,
指導することが難しいと感じて,関わらなくなった。家庭にも地域にも困難な問題があ
る中で,子どもたちが今育てられていることに,大きな問題を感じている。
⑤のところで,青少年の成長に必要な「発達資産」と書いたが,この「発達資産」と
いうのは,子どもたちが成長していく上で必要な様々な学習機会や学習の資源などを呼
んでいる。国立教育政策研究所社会教育実践研究センターが,平成 17 年度に,学校教
育,社会教育,地域の団体の活動者を対象として意識調査をしたところ,99%の方々が,
体験活動が大変大事で,子どもたちの成長に必要な資産だと答えている。ところが,実
際には,96%の方々が体験活動の場が十分に提供されていないと答えている。
そして,「発達資産」の獲得に関連することであるが,最近の子どもたちの学力の 評
価をみると,「ふたこぶらくだ」現象が起きている。外的にいろいろな経験を積むこと
について,「十分」,「不十分」の両方に山があって,大きな問題だと感じている。
⑥のように,日本の今までの教育というのは,外的な動機よりも内的な動機を中心に
やり過ぎてきているのではないかと感じている。内的な動機は当然大事なことだが,外
的な動機,外発的動機,問題解決型の取り組みが要るのではないかと強く思っている。
(4)青少年の意欲の様相の理念的な分類
中央教育審議会から出された中間のまとめ「青少年の意欲を高め,心と体の相伴った
- 3 -
成長を促す方策について」の中で,青少年活動を進め学習活動を進めていく上で,すぐ
にやらなければいけない課題に,学習相談がある。
基本的に,人間の社会化においては,①学習の機会を与えること,②指導者を育成す
ること,③情報をきちんと提供することの3つの要素で支援していかなければいけない
と感じている。情報提供も含めて,学習の相談をきちんとやることが大事なことである。
中間のまとめにも,基礎的な体力の低下や不足,青少年の価値観等と社会的期待との
相違,意欲から行動に移る段階でのつまずきが書かれているが,子どもたちのさまざま
な学習を阻害する要因として,子どもたちを取り巻く境遇に関する問題と心理的な要因
があると考えられる。そうしたものを適切に取り除くことと同時に,適切な情報を与え
ることが学習相談の大きな役割と思っている。心理学のカウンセリングの技法などを取
り入れながら,一人ひとりに対してきちんとした学習相談体制を作ることが,今後,必
要なのではないかと考えている。
2.体験活動の役割
(1)体験活動がめざす学力
これからの日本社会で必要な学力とは何かということについて,いろいろ考えている
が,一つには従来の日本の教育がつくってきた学力観を大切にしながら,一方では,国
際社会における学力も視野に入れていく必要があると考えている。
ドロールレポートに,ユネスコの学力観の一つが示され,Learning to know(知るこ
とを 学ぶ ),Learning to do( 為 すこ とを 学 ぶ ), Learning to live together(共 に 生
きることを学ぶ),Learning to be(人間として生きることを学ぶ)ということがいわ
れている。この「よく知ること」,「適切な実践活動」,「生活を踏まえた集団活動」,「相
互理解」,「市民として生きること」は体験活動の中で求められる学力である。つまり,
国際社会で求められている学力は,極めて体験活動において具現化されるものである。
そうだから,私たちが今,体験活動に取り組むことは非常に重要な意味を持ってくる。
21 世紀の国際社会で最も重要なキーワードは,「信頼」だといわれている。この「信
頼」という言葉は,「ソーシャル・キャピタル」と表現される。他者とよりよい関係を持
つということで,社会全体から見れば,争いはマイナスで,個人的に勝者と敗者があっ
たとしても,社会全体の効果からいえば,必ずしも勝者と敗者ができてうまく収まって
いるとはいえない。お互いがきちんと主体性を発揮して,相手を相互理解して共生して
いくということが大事で,体験活動の中ではこういうことを学んでいく必要がある。
OECD の PISA などの調査でいう学力とは,道具を使う力や異質な集団で交流する力,
自らを律する自律性を持つ力などのことをいっている。これまで述べてきたことをふま
えると,国際的な学力は,実は体験活動によって培われるものだと思っている。
(2)調査結果から見た子どもの体験活動
1998 年の文科省の調査については,生涯学習審議会答申にも出ているが,体験活動を
一生懸命にやっている子どもほど道徳心や正義感が身に付いているという傾向がみえ
る。結局,体験活動と,本来持つべき人間としての役割は,実は一致してくるというこ
とがデータでも出ている。
- 4 -
3.体験活動のねらいと効果
(1)自然体験活動のねらいと効果
「体験活動のねらいと効果」について,まず自然体験において,自然と接することの
非常に大事なことは,思いやりの心を育てることである。人間は自分だけで生きている
わけではなく,他者が存在するわけで,その他者に対する思いをはせるということだ。
京都府の教育委員会主催で,丹後半島での体験活動のプログラムを作ったことがある。
それに基づいて,京都市に近い都会の子どもたちを丹後半島に連れて行って,合宿させ
た。海浜体験で,小学生は,潮の香を「海って臭い」と言ったりする。都会の子どもは,
テレビ画面などで海を見たり,電車や車などで海の横を通ったりしたことはあるが,実
際に海の水に足をつけるとか,海の水を触るということはあまりないからである。だか
ら,海のにおいがすることに驚くわけである。人間にとって一番大事なのは五感で,こ
の五感を子どものころに高めることが大事なのに,高まっていないことは大きな問題で
ある。
また,漁師の方々との交流から,子どもたちは漁師の仕事の大変さを知るとと もに,
人間が一人で生きているのではなく,大勢の人と助け合って生きていることを知る。こ
れは,直接,自然体験からの学びではないが,自然と闘って生きている人たちを知ると
いうことの意味は非常に大きい。他にも,自然体験からは,感動体験などを得ることも
できる。
(2)その他の体験活動のねらいと効果
社会奉仕体験や交流体験,勤労体験,芸術文化体験などの体験活動でも様々な効果が
見られる。芸術文化体験で触れておきたいのは,今回のフォーラムで事例発表をされる
淡路子ども人形浄瑠璃で,淡路島にある南あわじ市という町で行われている。子どもた
ちが,大人顔負けのせりふで人形浄瑠璃を行っている。これは,地域の財産を知ること
であるし,その体験を通して子どもたちはいろいろなことを学んでいく。演劇というの
は総合芸術で,その中でいろいろなことを学ぶことができる。
障害のある方が演劇を通して,自己実現をしたり,人間としてのさまざまな能力を発
揮したりしている事例も全国的にたくさん出てきている。芝居や演劇を通して,いろい
ろなことが学べる。そういう体験活動のすごさがあると思っている。
(3)意欲を高める体験活動を進めるプログラムのポイント
国の政策として,平成 13 年度に学校教育法第 18 条や社会教育法の第5条で体験活動
の重要性について示されている。それに伴い,学校教育でも社会教育でも,熱心に体験
活動は進められている。
体験活動を進めていく中で,ポイントについて 9 つにまとめた。
まず,体験活動を進めるためのポイントとして,好奇心を高めるようなプログラムを
作るということが,大事である。「何があるのかな」,「何が起こるのかな」といった期
待,未知なるものに対する期待が一番大事だ。それと同時に,「やってみたら面白い」
ということが,大事なことだ。大人でも引き込まれて,やっていくようなゲームがある。
そういう楽しさ,面白さがあるプログラムを作ることが一番大事だ。ただ,もちろんそ
れだけで終わるのではなくて,これは入り口の部分である。
次に,参加者がためになるとか,得をするということを感じることだ。青年の場合,
- 5 -
やる中で,やって良かった,
自分自身の成長につながっ
意欲を高める体験活動を進めるプログラムのポイント
たと思うことを求めている。 ①参加者が強い興味や関心を持ち,また好奇心を高めること。
そういうことを積み重ねて
②参加者が「ためになる」「得をする」と感じること。
いくことによって,彼らは
③声かけがあって,チームの一員として活動できること。
自分を見つけていく。
④参加者や支援者の一人ひとりが自分を認められたり,求めら
三つ目には,チームを作
れたりすると感じること。
るということである。本当
⑤参加者間で適切な競争の原理が働かせること。
は場に入りたいのだが,何
⑥良い意味での「あおり」があって,それに応えることが楽しいと
らかの阻害要因があって,
集団の中に入り込めないと
いう子どもたちがいる。そ
ういう場合,継続的に声掛
けをすることが必要で,声
掛けをすると迷惑だと思っ
てはいけない。
「 やってみよ
感じること。
⑦リーダーに引 っ張 る力 があって,先 行 力 が強 いような展 開 に
すること。
⑧指導者や支援者が楽しく感じ,意欲を持ってサポートできるよ
うな展開にすること。
⑨参加者の中で自分の世界を作ってしまう者が出 ないように各
自の出番があること。
うよ」とか,
「今度来ません
か」とかの声掛けをしていくことが大事である。
四番目として,自分を認められたり,求められたりすることが大事なことである。自
分の存在が他者から評価されることは,生きがいややりがいにつながる。生きがいやや
りがいという言葉は,他者が存在しなかったら出てこない言葉だ。それがあってはじめ
て,人間は自分を自分らしくとらえることができる。
そのことは,例えば,褒めるということがそれにあたり,全国の市町村の中には子ほ
め条例などやっている町などもある。小さな町でしかできないことかもしれないが,精
神というのはとても大事なことだ。子どもを褒めるということの意味は,単に子どもに
迎合して,子どもを持ち上げるというのではない。子ども自身のそれぞれの個性や能力
を見つけて,それを適切に,肯定的にとらえてあげることが大事なことである。
五つ目に,競争の原理について書いたが,何もどんどん競わせて,順番をつけること
をいっているわけではない。しかし,人間の社会においては,適切な競争の原理を入れ
た方がよい場合もある。いろいろなことをやっていく中で,その競争を楽しむというこ
とである。
六つ目に,ある意味での「あおり」があるということである。これは,ある種の誘動
性という言葉で呼んでいる。要するに,「やってみようよ」ということで,社会教育の
言葉でいうと,奨励という言葉になる。「誘い動かす」,「やってみようよ」という「あ
おり」があって,それに対して答えてもらう。そこに楽しいと感じることがあれば,よ
いのではないかと思う。
七つ目に,リーダーが引っ張る力があって,どんどん前へ向かって進んでいく展開に
することである。体験活動,ボランティア活動も大切だが,リーダーの育成を進めてい
く必要がある。そのためには,国や地方公共団体は,予算を出してリーダー育成をさら
に進めていって欲しいと考えている。
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八つ目としては,指導者,支援者が楽しく感じ,意欲を持ってサポートできるような
展開にすることが大切である。支援する人が,実は本当は主人公だということもある。
例えば,通学合宿は,子どもたちが数日間社会教育施設などで生活して,学校に通うこ
とであるが,子どもたち自身にとっても大きな力になるが,実は,通学合宿を計画,立
案し,あるいは支援してくれる方々にとっても,大きな教育の機会になっている。支援
する立場の人が,本当は学習者であるということがある。そういう意味で,指導者や支
援者が楽しく感じるようなプログラムを作ることが大切である。
最後に,参加者の中でそれぞれが出番を持つことが大事なことである。必ず自分の出
番があるというふうにプログラムを作っていくことが必要であると考える。そういうプ
ログラム作りは大変難しいが,社会教育や生涯学習,あるいはそれに関連する指導者は,
そのプログラム作りができるかどうかが,指導者の専門性ではないかというふうに私は
考えている。私たちが指導者であるということの専門性は,このプログラム作りがどれ
だけできるかということにかかわってくると思う。
体験活動というものが,私のいろいろな意味での人間性を育ててきたと思っている。
自分自身を振り返ってみても,子どものころからキャンプをやったり,青少年活動に取
り組んできたりというこれまでの経緯が,今の私にとっての大きな財産になっている。
そのことは,日常の世界では発見できないことを発見したということである。それと
同時に,体験活動を通して私自身が自分の持っているある種の力を見つけることができ
たと思っている。なかなか人間は,自分の力というものを自分自身で発見することが難
しい。普段なかなか見つからないけれども,何かの時に見つかるという時がある。その
何かの時の1つに,体験活動を通して生じる場面にあると思っている。
も う 1 つ 大 事 な こ と は , 仲 間 づ く り で あ る 。 み ん な と 一 緒 に や る と い う ,「 to live
together」という言葉をユネスコの言葉として引用したが,お互いが信頼し合って,手
を取り合っていくことが,新しい日本の国をつくっていくということにつながっていく。
あるいは,地球市民という言葉をあえて使うが,地球市民として,私たちが私たちの役
割を果たしていくということにつながっていくというふうに私は確信している。
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