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第2章 国等の制度・法案の動向

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第2章 国等の制度・法案の動向
第2章 国等の制度・法案の動向
1.大都市圏制度
(1)大都市圏制度の変遷
わが国では、戦後の急速な経済成長に伴い、首都への産業及び人口の集中とこれに伴う
環境の悪化が著しくなった。そこで、1957(昭和 32)年、首都への産業及び人口の過度の
集中の抑制と、政治、経済、文化等の中心として相応しい首都圏の建設とその秩序ある発
展を図ることを目的として「首都圏整備法」が制定された。また、同法に基づき、業務核
都市制度、近郊緑地保全制度、工業等制限制度等に係る法律が定められた。
2006 年、
「大都市圏整備法に基づく政策区域制度の見直しの方向について(報告)」
(国土
審議会大都市圏制度調査専門委員会)にて、首都圏の過度な成長・抑制を目的とした一連
の大都市圏制度は、一定の成果をみたことが示されている。
(2)大都市圏戦略の策定
2009 年 6 月 12 日には、大都市圏制度に関する政策のあり方について調査審議するため、
国土審議会広域自立・成長政策委員会の下に大都市圏政策ワーキングチーム(浅見泰司座
長)を設置し、以下のように中間取りまとめを行っている。
図表 0-1 国土審議会大都市圏政策ワーキングチーム中間とりまとめ(概要)
資料)国土交通省ウェブサイト
25
2010 年5月に「国土交通省成長戦略」が取りまとめられ、今後、さらなる発展可能性が
期待できる分野として、海洋、観光、航空、国際展開・官民連携、住宅・都市の 5 分野が示
されるとともに、利用者利便性の拡大、地域活性化・雇用拡大・内需拡大、国際化の促進と
いう 3 つの観点から経済成長の促進に繋がる「優先的に実施すべき事項」が提示された。
大都市圏戦略の基本法案は、首都、中部、近畿の都市圏ごとにある整備法などを約 50 年
ぶりに抜本改正し一本化するもので、国が、首都圏など三大都市圏に人や資本を呼び込み、
国際競争力を高める全体像を示す「大都市圏戦略」を策定し、地方自治体が都市圏ごとの
特性を生かす「戦略計画」を策定するとされている。2010 年9月には、大都市圏戦略の具
体的な内容の検討を進めるため「国土審議会政策部会国土政策検討委員会大都市圏戦略検
討グループ」が設置され、有識者らを中心に、7回の討議が進められた。
図表 0-2 国土交通省「新経済成長戦略会議重点項目」における大都市圏戦略関係の記述
資料)国土交通省「成長戦略会議報告書」2010 年5月 17 日公表
2012 年3月現在、国土交通省は、2012 年度概算要求において、大都市圏戦略の策定に関
し、
「国際競争力の強化や都市機能の適正配置、災害に強い大都市の形成といった課題に対
応し、官民で目標を共有し具体的な施策を検討の上策定」と記載している。
26
2.総合特区制度
(1)概要
首相官邸地域活性化統合本部会合(都市再生本部、構造改革特別区域推進本部、地域再
生本部及び中心市街地活性化本部が統合され、2007 年 10 月 9 日の閣議決定に伴い、以降
合同開催)は、2011 年8月に、総合特区制度の第一次指定申請を開始した(8/15~9/30)。
総合特区制度の概要は以下の通りであり、「必然性と本気度があり、実現可能性の高い区
域に国と地域の政策資源を集中する」としている。
図表 0-3 総合特区制度の概要
資料)内閣府地域活性化総合事務局ウェブサイトより
(2)申請状況
第一次の申請期間である 2011 年9月 30 日までの申請状況についてみると、指定申請件
数は 88 件であり、うち国際戦略総合特区は 11 件、地域活性化総合特区は 77 件であった。
申請件数を地域別にみると、国際戦略総合特区については、4件が首都圏から提出され
ており、地域活性化総合特区については、同 10 件となっている。
図表 0-4 総合特区制度第一次指定申請の結果(地域ブロック別)
北陸圏
九州圏
特区分類
北海道 東北圏 首都圏
・
近畿圏 中国圏 四国圏
・
その他
中部圏
沖縄県
国際戦略総合特
1
1
4
2
1
0
0
1
1
区(全 11 件)
地域活性化総合
4
11
10
12
9
10
8
11
2
特区(全 77 件)
注 )その他は圏域をまたぐ申請
資料)首相官邸ウェブサイト
27
(3)採択結果
2011 年 12 月 22 日の内閣官房地域活性化統合事務局、内閣府地域活性化推進室発表によ
れば、総合特別区域の第一次指定として、国際戦略総合特区が7地区、また、地域活性化
総合特区が 26 地区、採択された。
図表 0-5 採択結果
資料)総務省景気対応検討チーム「総合特区等を活用した日本再生、復興の推進~新産業の創出と雇用促
進に伴う内需拡大によるデフレからの脱却~」2012 年2月 27 日
国際戦略総合特区については、首都圏内から、
「つくば国際戦略総合特区~つくばにおけ
る科学技術の集積を活用したライフイノベーション・グリーンイノベーションの推進~(茨
城県、つくば市、国立大学法人筑波大学)」
「東京都アジアヘッドクォーター特区(東京都)」
「京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区(神奈川県、横浜市、川崎市)
」の3
件が採択された。
各採択事業の概要は次に示す通りである。
28
図表 0-6 首都圏における国際戦略特区認定結果
申請者
名称
指定範囲
目標達成に向けた実施(予定)事項
茨城県
及びつ
くば市
つくば国際戦略総
合特区~つくばに
おける科学技術の
集積を活用したラ
イフイノベーショ
ン・グリーンイノ
ベーションの推進
~
東京都アジアヘッ
ドクォーター特区
つくば市の全
域並びに龍ヶ
崎市並びに茨
城県那珂郡東
海村及び稲敷
郡阿見町の区
域の一部
①つくばを変える新しい産学官連携システム
の構築
②次世代がん治療(BNCT)の開発実用化
③生活支援ロボットの実用化
④藻類バイオマスエネルギーの実用化
⑤TIA-nano 世界的ナノテク拠点の形成
東京都
神奈川
県、横浜
市及び
川崎市
京浜臨海部ライフ
イノベーション国
際戦略総合特区
東京都千代田
区、中央区、港
区、新宿区、江
東区、品川区、
大田区及び渋
谷区の区域の
一部
① ビジネス環境の整備
・外国企業の東京への進出及び日本でのビジ
ネスの円滑化のためのワンストップサービ
スや日本法人設立等の支援制度の整備
②生活環境の整備
・外国企業の従業員やその家族の生活支援(多
言語による情報提供・相談機関の設置)
③都市インフラの整備
・大規模災害時の事業継続等のための高い防
災対応能力の整備、帰宅困難者ステーショ
ンの機能を有するスペース等の確保
・平時から省エネ、省 CO2、特区対象区域内
の電力・熱自給率を高める自立・分散型エ
ネルギーネットワークを構築する。
④誘致・ビジネス交流活動
・海外誘致企業セミナーの活用や MICE の誘
致・開催支援等を通じ外国企業の東京に対
する認知度の向上を図る。海外への継続的
な PR、日本企業とのビジネスマッチング
等事業支援
横 浜 市 及 び 川 ①健診データを活用した検体バンク・検体情
崎市の区域の
報ネットワークの整備
一部
②革新的な医薬品・医療機器の新たな評価・
解決手法の確立と国際共同治験の迅速化
③ニーズ主導のマッチングによるベンチャー
企業等の創出、産業化
資料)首相官邸ウェブサイト
また、地域活性化総合特区に関しては、千葉県内から、柏市「柏の葉キャンパス公民学
連携による自律した都市経営」特区が採択された。
29
3.統合型リゾートの政策動向
(1)諸外国の動向
①カジノ・エンターテイメント産業の導入パターンの整理
カジノ等を含むエンターテイメント産業の立地特性について、既往文献では様々な分類
が試みられている。諸外国の動向を目的別に整理すると図表 0-7、設置場所別にみると図表
0-8 のとおりとなる。
図表 0-7 導入目的別分類
目的分類
・モナコ:高級リゾート地内に設置
・オーストラリア:政府主導の観光産業の増進が図る中で設置。
・ニュージーランド:自然を中心とした観光資源の魅力を付加す
る目的で設置
観光促進
観光施設の修復と
再開発の中で導入
活経
性済
化の
導入事例
・ニュージャージー州アトランティックシティ:1977 年に合
法化し大規模なカジノホテルを中心に施設集積が進む
地域経済の衰退か ・ミシシッピ州チェニカ・ビロクシ:農業の機械化等に伴う失業
ら経済的復興を目
対策(1992 年合法化)
的として導入
・韓国江原道(カンウォンド):廃坑地域の活性化(2000 年設立)
税収確保
・ネバダ州ラスベガス:1929 年大恐慌の税収丌足を補う目的
で設置、ドイツ(バーデンバーデン)
、ニュージーランドなど
その他
・韓国ソウル:行政政策の一環として外貨獲得を目的に導入
・英国:違法カジノを排除するために合法化
資料)沖縄県「2007 年度カジノ・エンターテイメント検討事業調査報告書」2008 年7月
図表 0-8 導入場所別分類
分類
観光地
型
地
上
型
船
上
型
特性
代表都市
○アトランティックシティ(ニュージャージ
○観光地にあるカジノで、観光客が主要顧客
ー州)
○多くの場合、カジノは観光ホテルの内部にある
○ラスベガス(ネバダ州)
か、併設された付属施設(共同使用)であり、
○ニューオーリンズ(ルイジアナ州)
大規模なものが中心である
都市・
郊外型
○都市の中心部もしくは郊外にあるカジノで、地
元住民や都市型観光客が主要顧客である
○ブラックホーク(コロラド州)
○デトロイト(ミシガン州)
州・国
境型
○米国におけるインディアン自治区カジノ(その
州の一部で許可されているゲームについて自
治区内では規制なしに営業できる(州との協議
は必要)
)
、インターネットを利用したカジノ等
○チュニカ(ミシシッピ
州)
○定期的に周航し出発点に戻ってくるカジノ船
○ゲイリー(インディアナ
州)
○ダベンポート(アイオワ
州)
遊覧ク
ルーズ
型
ドック
サイト
型
○主な特徴としては、①経費が安い(土地代が丌
要、警備や地元住民対策も最小限)、②地元住
民等からの反対運動が尐ない、③犯罪等のコン
トロールがしやすい、など。
○シカゴ(イリノイ州)
○桟橋につながれたまま動かないカジノ船
○主な特徴としては、①入場時間が制限されな ○シュラベポート(ルイジ
アナ州)
い、②天候に影響されない、③船を動かす人
員・費用・空間が丌要、④重量制限がないなど。
資料)沖縄県「エンターテイメント事業可能性調査報告書」2003 年4月
30
②事例研究
諸外国の事例について、その概要を整理する。
図表 0-9 諸外国の導入例
都市 項目
ラ
ス
ベ
ガ
ス
マ
カ
オ
韓
国
シ
ン
ガ
ポ
ー
ル
概要
立
地
概
況
○1931年、ネバダ州が‘ギャンブル合法化法案(AD98号)’を可決
○1989年、カジノ機能やエンターテイメント施設を併設したホテルが開業、以後
大規模なホテルカジノの立地が進む。2010年時点で14.9万室。
○ホテル内は、カジノのほか、動物園、遊園地、スパやプール等の施設が併設。ホ
テル・都市内では毎晩エンターテイメントショーが開催される点も特徴。
○市内カジノ専門店、コンビニ等様々な場所で24時間ギャンブルをを楽しめる
実
績
○年間訪問客数は、3,733万人(2010年)。
○客室稼働率は8割で、全米平均よりも2割程度高い。
○初めて訪れる観光客は18%で、リピーターが多い。
○カジノによる収入は、58億ドル(およそ4,640億円)
立
地
概
況
○1847年、ポルトガル政府によりカジノが合法化。
○1999年、中国返還後も、中国政府が唯一カジノ事業を認める行政地区に
○2002年1者独占状態から市場開放。2004年、初の外資系カジノ開業、2006
年本格的な複合型カジノリゾート誕生
○カジノライセンスは6社が保有。2010年時点で、31施設が立地。過半はホテ
ル内に立地し、24時間楽しめる。
○ホテル内はラスベガスと同様各種エンターテイメント機能も充実する他、市内に
は、カジノ以外に、マカオタワー、ゴルフコース、競馬、世界遺産等立地
実
績
○年間訪問客数は、2,500万人(2010年)で、前年度比15%増。訪問客の過半
は中国人。本土のビザ発給要件緩和に伴い訪問客増加。
○客室稼働率は7割。客室供給量の急増にも関わらず、高水準を維持。
○2010年のカジノ収入は前年比57.8%の約2兆円でラスベガスの4倍
○実効カジノ税収は売上に対する39%。2010年の政府歳入の86%がカジノ税
立
地
概
況
○1967年、外貨獲得や韓国客誘致を目的にカジノ解禁。
○2000年、炭坑地域の再生に向けた税収増を目的に、国内客も利用可能な施設と
して江原道に「江原ランド」がオープン。2011年現在、17ヶ所のホテル併設
型カジノが立地しアジア随一。主に外国人観光客向け(江原ランド除く)。
○ホテル内は、カジノのほか、ショースペースやミーティングスペース等設置。様々
なエンターテイメントが楽しめる。
実
績
○1990年代、外国人専用カジノの年間訪問客数は50~60万人で推移。うち、6
割は日本人。近年は、パラダイスウォーカーヒルで年間約40万人。
○国内市場におけるカジノ場の設置数は既に飽和状態なうえ、マカオやシンガポー
ルのカジノ解禁を背景に、経営状況が悪化しているとの指摘もある。
立
地
概
況
実
績
○1960年代以降、シンガポール政府は、失業者対策の一環として観光産業の育成
を推進。しかし2000年代初頭、観光収入の減尐や、ASEAN内での外国人観光
客の訪問先シェア割合の低迷等に危機感を持ち、魅力ある観光資源の構築の必要
性を認識し、2005年、カジノを含む統合リゾート計画を閣議決定。
○リゾート地と、都心部にコンセプトの異なる2つのIRを整備。
○カジノ施設は、MICE政策(ホテル、エンターテイメント施設、コンベンション
施設等)による大規模都市開発の1施設として整備されている。
○2010年開業後、年間来訪客数が968万人(2009年)→1,160万人に増加。
○観光収入は、126億シンガポール$(2009年)→188億(2010年)に増加。
資料)各種ウェブサイト等より三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング作成
31
③導入時のメリット・デメリット
観光客の誘致や雇用創出・税収効果等が期待される一方、ギャンブル依存症、犯罪の誘
発、教育・地域環境への悪影響や、観光地としてのイメージダウン等の指摘もある。
図表 0-10
メリット・デメリット
項目
メ
リ
ッ
ト
デ
メ
リ
ッ
ト
意見
○閑散期の観光客誘致に貢献、GDP の押し上げ効果、公共・民間投
資の活発化、商店街の活性化/等
観光客の誘致、
地域振興
→顧客の大半は地元住民のため資金流入は起き難い、カジノ合法化に
より宝くじの売上が落ち、各種基金が経済的に困難な状況との意見
○直接雇用・間接雇用の創出、失業率の低下、他産業に比べ高い雇用
を創出/等
直接・間接雇用
の創出
→海外からの出稼者受け入れが原因で、失業率は改善されていないと
の意見
ゲーミング収益に ○高いカジノ税収入
よる税収効果
○地価上昇による固定資産税の増加
ギ ャ ン ブ ル 依 ×ギャンブル依存症に陥る割合は、プレイヤー人口の1~2%程度
(米国ゲーミング影響調査委員会 NGISC 調べ)
存症患者の増
加
→一方で「上記には様々な対応方策がある」との意見
×カジノが存在する地域の犯罪率は他地域と比べ2倍以上であり、国
内犯罪率が減尐する中で増加傾向(USNews&WorldReport)
犯罪の誘発
→一方で、カジノを原因とする犯罪は増えていない(米国 NGISC)、
「上記に対する様々な対応策がある」との意見
×勤労意欲の低下・学校の中退・大金のつぎ込み等青尐年への悪影響
教育・地域環境
(米国ネバダ州)
、質屋の乱立等風紀の乱れ(韓国・江原道ランド)
への悪影響
→一方で「上記に対する様々な対応方策がある」との意見
観光地として
×健全なファミリーリゾートとしてのイメージダウンが懸念される
のイメージダウン
資料)沖縄県「エンターテイメント事業可能性調査報告書」2003 年4月
(2)国内での検討状況
①国等の動向
2004 年以降、カジノ等に係る法制度の見直し等の議論が行われている。
図表 0-11
カジノの導入に向けた国等の動向
○国際観光産業としてのカジノを考える議員連盟(自由民主党)が、ゲーミング(カジノ)法基
本構想案を公表(2004.6)
○自由民主党政務調査会内に「カジノ・エンターテイメント検討小委員会」設置(2006.2)、「我が国にお
けるカジノ・エンターテイメント導入に向けての基本方針」策定(2006.6)
○民主党政策調査会内に「新時代娯楽産業健全育成プロジェクトチーム」設立(2008.6)
○カジノ合法化法案の成立を目指し、超党派議連の「国際観光産業振興議員連盟」発足(2010.4)、
カジノを中心とした複合観光施設の国内整備に向けた議員立法「特定複合観光施設区域の整備
の推進に関する法律案」をまとめる(2011.8)
資料)各種資料より三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング作成
②地方自治体の動向
国の動きと並行して、各地域においても、カジノを含む統合リゾートの導入を検討する
協議会を立ち上げ、特区申請を行うなどの動きがある。
32
図表 0-12
カジノの導入に向けた地方自治体の主な動き
都道府県
活動概要
神奈川県・和歌山 2010 年、カジノ実現に向けた取り組みを推進することを目的とした「カ
県・沖縄県
ジノ・エンターテイメント研究会」を発足
沖縄県
2007 年から 2008 年にかけて「カジノ・エンターテイメント検討委員会」
にて、沖縄型統合リゾートモデルとして3案を検討・提示
大阪府
2010 年、大阪エンターテイメント都市構想推進検討会を設置。統合型リ
ゾート立地に向けた基本コンセプト素案を作成
東京都
2003 年、静岡県、大阪府、和歌山県、宮崎県、神奈川県と共に「地方自
治体カジノ研究会」を設置。臨海副都心を候補地に、カジノ誘致の構想検討。
長崎県、福岡県、 経済団体等が「西九州統合型リゾート研究会」を発足。佐世保市のハウステ
佐賀県
ンボス等を候補地として、エコリゾートコンプレックス構想提唱
北海道、秋田県、 自治体や商工会等によりカジノ誘致に向けた検討がなされている。特区申請
石川県等
を行っている地区もある(いずれも却下)
資料)各種資料より三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング作成
(3)今後の検討に向けた課題の整理
今後 IR 施設等に係る検討を行う際のポイントを整理してみる。第 1 のポイントは、幕張
新都心の都市機能の状況である。幕張新都心は、成田空港からの交通アクセスがバス利用
で約 40 分と比較的近く、外国からの来街者が期待できる。また、ホテルやコンベンション
施設といった IR 機能の構成要素となる都市機能が立地している。第 2 のポイントは、幕張
ベイタウンや、今後整備が予定されている若葉住宅地区などの良好な住環境や、高等教育
機関等が集積している点であり、カジノ導入に関しては、地域の治安維持や依存症の問題
等の対策検討も不可欠である。
また、
(1)
(2)で整理したように、わが国が整備を検討すべき IR 施設の競合先は東ア
ジア諸国である。日本の国際競争力を強化する上で IR 導入の検討の余地はあるが、施設立
地地域周辺が経済波及効果を享受するためには、競合先との国際比較を十分に行った上で
国家戦略・地域振興戦略を策定し、
カジノ等を含む IR のスペックを決めていく必要がある。
例えば、シンガポールの IR は、カジノ以外にも、最新のコンベンション機能や宿泊機能
等を備えた数十 ha に渡る国家プロジェクトとして整備され、一方、マカオや韓国等では、
カジノがホテル等へ併設されている。
また、ラスベガス等では、カジノハウス等、都市内各所でギャンブルを楽しむ環境が整
っている上、ショーをはじめとした世界有数のエンターテイメント機能・産業の集積が、
地域経済効果をもたらしているが、カジノの歴史や欧米のショー文化を持たないわが国に
おいて、どのような地域振興戦略を採るべきか、十分な検討が必要だろう。
いずれにしても、わが国では、カジノを含む IR の導入について検討中である。
(2)で
整理した「国際観光産業振興議員連盟」がまとめた「特定複合観光施設区域の整備の推進
に関する法律案」では、IR は、カジノ施設のほか、会議場施設、レクリエーション施設、
展示施設、宿泊施設その他観光の振興に寄与すると認めらる施設が一体となっている施設
であって、民設民営が基本であると思われるため、当面は一連の動向を十分把握していく
ことが重要である。
33
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