...

個人情報保護法施行後1年間の相談概要について

by user

on
Category: Documents
10

views

Report

Comments

Transcript

個人情報保護法施行後1年間の相談概要について
記者説明会資料
平成 18 年 6 月 7 日
独立行政法人 国民生活センター
個人情報保護法施行後1年間の相談概要について
はじめに
個人情報の保護に関する法律(以下、「個人情報保護法」という。)の全面施行から、本
年 4 月で1年を迎えた。その間、個人情報の相談窓口には、いわゆる「過剰反応」といわ
れる問題や事業者の個人情報保護法に対する無理解や認識不足からトラブルとなっている
相談、個人情報保護法やガイドラインを形式的に守っているからよいとする事業者の対応
についての相談、販売促進活動への個人情報の利用停止や個人情報の流通経路の開示に関
する相談等 14,000 件を超える相談が寄せられた。
そこで、今後の個人情報保護を考える上での参考として、個人情報保護法全面施行から 1
年を経た個人情報相談窓口における相談動向・相談事例等をとりまとめた。
昨年 4 月 1 日に個人情報保護法が全面施行され、事業者等による個人情報の保護対策が
急ピッチで進められていく一方で、電話勧誘等の個人情報を利用した販売促進活動に関連
した相談が連日寄せられるなど、施行当初から消費者の関心が高かったといえる。事業者
等の漏えい対策への強化や、個人情報の利用目的の公表等がなされ、行政による個人情報
保護法に基づく勧告が行われるなど同法が社会に浸透しつつあることがうかがえる。
一方、法律施行後の 4 月 25 日に発生したJR宝塚線(福知山線)の脱線事故時において
医療機関が家族に対して安否情報の提供を拒むなど、いわゆる「過剰反応」といわれる問
題が発生した。しかし、こうした問題は事件や事故といった状況下に限ったことではなか
った。当センターの相談窓口には、教育現場での緊急連絡網や卒業アルバムの制作や、地
域の防災マップの作成など、さまざまな場面で戸惑いと混乱が生じていることがうかがえ
る相談も寄せられた。個人情報保護法の理念や適用範囲、内容が社会に浸透するには時間
を要するものと考えられる。
なお、当センターでは、11 月7日に、いわゆる「過剰反応」に関する相談等をとりまと
め、その中で個別の具体的な対応についての事例の積み上げと、解釈基準の明確化を通し
て広く社会のコンセンサスを獲得することを今後の課題の一つとして提示した。
(*1)
その後、政府はこのような現場の混乱を収拾し、各種の事案に適切に対応するため、本
年 2 月 28 日に個人情報保護関係省庁連絡会議を開き、関係省庁で対応策に関する情報を共
有し、今後生じる問題に迅速に対応すること等を申し合わせた。関係省庁は、ガイドライ
ン等の改訂を実施し、法制度の周知徹底を図っている(末尾の参考資料1 参照)。
(*1)独立行政法人国民生活センター「最近の個人情報相談事例にみる動向と問題点-法へのいわゆる
「過剰反応」を含めて-」(平成 17 年 11 月 7 日公表)
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20051107_2.html
1
1.相談件数等について
(1)総件数等
全国の個人情報相談窓口に寄せられた平成 17 年度の個人情報に関する相談は 14,154 件
である(平成 18 年 5 月 31 日登録分)
。
四半期別相談件数をみると第 3 四半期までは、
多少の増減はあるものの概ね 3,500~4,000
件で推移している。本年に入って、1~3 月については、3,000 件に満たなくなっている。
表1
四半期別相談件数
平成 17 年
4~6 月
国民生活センター
登録件数(*2)
内閣府
登録件数(*3)
合計
7~9 月
10~12 月
平成 18 年
1~3 月
合計
3,568
3,230
3,731
2,327
12,856
602
277
215
204
1,298
4,170
3,507
3,946
2,531
14,154
(*2)全国の消費生活センターから国民生活センターに伝送されて登録されたものである。個人情報相談
窓口を開設している消費生活センター等が受付けた苦情相談データのみを収集している。以下、こ
のデータをもとに分析した。
(*3)全国の個人情報保護条例の相談担当部局等から内閣府に伝送されて登録されたものである。個人情
報相談窓口を開設している個人情報保護条例の相談担当部局等が受付けた苦情相談データのみを
収集している。
(2)相談者の属性
国民生活センター登録件数 12,856 件のうち、男性からの相談は 5,840 件(45.4%)で、女
性からの相談は 6,859 件(53.4%)であり、団体・不明は 157 件(1.2%)であった。
また、職業別にみると給与生活者が 5,911 件(46.0%)、家事従事者が 3,203 件(24.9%)、
無職が 1,981 件(15.4%)、自営・自由業が 862 件(6.7%)、学生が 254 件(2.0%)
、その
他が 645 件(5.0%)であった。
(3)事業分野別相談件数
事業分野別に相談件数をみると、「医療・福祉」分野が 248 件(1.9%)、「金融・信用」
分野が 1,562 件(12.1%)、
「情報通信」分野が 1,901 件(14.8%)、
「その他の事業分野」
「不
明」が 9,298 件(72.3%)であった。
(4)苦情分類別相談件数
苦情分類別に相談をみると、「不適正な取得」に関する相談が 6,433 件、「漏えい・紛失」
に関する相談は 3,293 件、「同意のない提供」に関する相談が 1,928 件と続いている。
2
表2
苦情分類別相談件数(複数回答)
内容
件数
割合(%)
不適正な取得
不正な手段によって個人情報を取得しているとの相
談
6,433
50.0
漏えい・紛失
個人情報が外部に漏えいしているとの相談
3,293
25.6
同意のない提供
個人情報をあらかじめ本人の同意を取らないで第三
者に提供していると思われる相談や共同利用の手続
きに不備がある相談
1,928
15.0
目的外利用
事業者が本人に対して利用目的を知らせていない相
談や、利用目的以外に個人情報を利用している相談
1,582
12.3
740
5.8
663
5.2
開示等
開示・訂正等・利用停止に関する相談
苦情等の窓口対応 事業者の窓口対応に関する相談
情報内容の誤り
情報内容に誤りのある個人情報を利用している相談
248
1.9
委託先等の監督
従業者や委託先の監督が適切でないとの相談
188
1.5
オプトアウト(本人の求めにより個人情報の第三者
提 供 を 停 止 す る こ と) に 関 す る 相 談
88
0.7
1,769
13.8
オプトアウト違反
その他
法 律 の 定 義 や 適 用に 関 す る 相 談 等
(*4)割合は、国民生活センター登録件数 12,856 件を 100%とした構成比である。
2.個人情報の取扱いに関する相談
(1)個人情報の取得元や流通経路に関する相談(「不適正な取得」・
「同意のない提供」)
個人情報相談窓口にはさまざまな相談が寄せられている。中でも、
「不正な手段によって
個人情報を取得しているのではないか」といった「不適正な取得」に関する相談が 50.0%
と最も多く、「同意のない提供」についても相談が寄せられている(15.0%)。事業者の個
人情報の取得方法について不安や疑問を抱いていることが分かる。
<事例1:引越し先に突然届いたゴールドカードの申込書>
夫宛に、信販会社からゴールドカードの申込の DM が 3 ヶ月前に引っ越したばかりの新
住所に届いた。ゴールドカードの申込書のため、資産や夫の勤続年数などの個人情報も取
得されているのではないかと気味が悪い。どこからこのような情報を取得しているのか知
りたい。
(30 歳代・女性・家事従事者)
<事例2:オプトアウトのために取得元を聞いても答えない名簿業者>
未公開株の電話勧誘があったので、個人情報の取得元を聞き、個人情報を削除するため
に取得元の名簿業者に連絡した。当該名簿業者に個人情報の削除と取得元の開示を求めた
ところ、当該名簿業者の保有する個人情報の削除には応じるが、取得元については機密事
項であり教えられないと拒否された。オプトアウト(*5)を申し出るためには、どの事業
者が個人情報を保有しているのかを知らなければならないのに、取得元を教えないのは、
個人情報保護法違反ではないのか。
(30 歳代・男性・給与生活者)
(*5)本人からの申し出により個人情報の第三者提供を停止すること。
3
氏名・電話番号のような基本的な個人情報のみを利用した販売促進活動についても、自
己の情報の流通過程に疑念や不安を抱く声も多いが(事例 8、9 参照)、より多くの個人情
報を活用した販売促進活動に利用されたケースでは、その不安感が増しているように思わ
れる。
また、昨秋当センターが実施した『第 36 回国民生活動向調査』(以下、「動向調査」とい
う。末尾の参考資料 2 参照)の個人情報関連の設問への回答結果をみても、「自分の情報
をどこから取得したのか、聞いたが教えてもらえなかった」ということを、個人情報の取
り扱いに関してした嫌な思いとして 15.3%の人があげている。
個人情報保護法では、保有個人データに限って開示請求に応じる義務を個人情報取扱事
業者(*6)に課している。したがって、個人情報の取得元や流通経路が、保有個人データ
として取り扱われている場合には開示の対象となるが、そうでない場合には個人情報保護
法上、開示義務があるとまではいえない。どのような情報が保有個人データとなっている
か、消費者からは把握することも困難なため、消費者が自己の情報の流通経路を知ること
は容易ではない。
また、個人情報保護法では、第三者提供を目的とする場合には、その旨を利用目的に記載
しなければならず、あらかじめ本人の同意なく第三者提供をする場合で、法律の例外事由
に該当しないときには、オプトアウトを設けておかなくてはならない。
オプトアウトの申し出を受けた個人情報取扱事業者はその後の第三者提供を停止しなけ
ればならないので、利用目的をよく読んで第三者提供について確認し、第三者提供を希望
しない場合には、その旨を当該事業者に直接伝え、オプトアウトを申し出ることも有効で
ある。
しかし、相談にもあるように、流通経路を知り得ないことから、どの名簿を元に個人情報
を取得したのか分からず、結果的にオプトアウトが利用できないケースも目立っている。
(*6)5,000 件を超える個人情報をコンピューターなどを用いて検索することができるよう体系的に構成
した個人情報データベース等を事業活動に利用している事業者のこと。
(2)個人情報の漏えいに関する相談(「漏えい・紛失」)
個人情報保護法施行後も、個人情報漏えいのニュースは後を絶たず、相談窓口にも「漏
えい・紛失」に関する相談が 25.6%と 2 番目に多く寄せられている。
「動向調査」でも、15.0%の人が「名簿やインターネット、メールから自分の個人情報
が漏えいしたようだ」と答えている。漏えいに伴う被害等が、漏えい時には想定できない
ことから漠然とした不安を消費者は抱いており、消費者側で個人情報の流通経路を把握で
きない現状が、消費者の不安に拍車をかけていると考えられる。
また、漏えい後の対応について個人情報保護法では特段の定めがないため、漏えいその
ものだけでなく、漏えい後の事業者の対応をめぐって相談になっているケースもある。
4
<事例3:個人情報の漏えいを公表しない書籍販売サイト>
書籍の販売サイトを利用していた。突然、当該サイトより「昨年 11 月に個人情報を漏え
いした」という趣旨のお詫びの文書が届いた。3 ヶ月近く経過しており、なぜ今頃になって
手紙が届くのだろうか。また、当該サイトは、漏えいの事実を公表していないが、マスコ
ミなどでの社告の必要はないのか。個人情報の漏えい後の対応等については法律で決まっ
ていないのか。
(40 歳代・女性・家事従事者)
<事例4:カルテの紛失を公表しない病院>
通院している病院から、検査報告書を紛失したという通知が届いた。研究員が電子カル
テをプリントアウトし帰宅途中で紛失したとある。通知では、責任の所在が明らかにされ
ておらず、ホームページ等での公表もない。病院に問い合わせたところ、自治体の担当課
には報告したが、担当省庁には報告していないと言われ、きちんと指導されるのか不安で
ある。病院に対して、何を求めることができるのか。損害賠償は可能なのか。検査報告書
には、名前や年齢、診断結果、臨床結果、臨床所見、病歴が書かれている。
(30 歳代・女性・給与生活者)
行政機関や認定個人情報保護団体(*7)への個人情報の漏えい事故の報告や公表のあり
方については、個人情報保護法上ルール化されてはいない。しかし、
「個人情報の保護に関
する基本方針」(平成 16 年 4 月 2 日 閣議決定)において、
「個人情報の漏えい等の事案が
発生した場合は、…(中略)…可能な限り事実関係等を公表することが重要である」とさ
れていることを踏まえ、医療分野等のようにガイドラインや業界団体の自主基準、各種業
法等で主務大臣への報告など漏えい後の対応等について定められている分野もある。ただ
し、具体的にどのような対応をとるかについては事業者の自主的な判断に委ねられている。
したがって、漏えい事故が発生した事実を消費者が把握できない場合もあり、二次被害
の防止、類似事案の発生回避等の観点から、可能な限り事実関係等を公表することが重要
であろう。
(*7)個人情報の適正な取扱いの確保のため主務大臣が認定した、苦情の処理や対象事業者に対する情報
の提供などを行う団体のこと。
(3)利用目的に関する相談(「目的外利用」)
苦情分類別の相談件数をみると「利用目的以外に個人情報を利用しているのではないか」、
「利用目的を教えてもらえなかった」といった「目的外利用」に関する相談も目立ってい
る(12.3%)
。
個人情報取扱事業者は、個人情報の利用の目的をできる限り特定し、その利用目的の達
成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱ってはならないとされており、利用目的を通
知・公表等することになっている。個人情報保護法施行後、多くの事業者がホームページ
等で利用目的を公表するようになってきている。契約に際し利用目的を確認した上で契約
をするかどうかを判断することができる環境になりつつあるが、この利用目的をめぐる相
談も寄せられている。
5
<事例5:賃貸借契約後に求められた運転免許証等>
マンションの賃貸借契約を結んだ後に、大家から運転免許証と健康保険証のコピーを求
められた。契約者がどういういった人か知りたいというのが理由らしいが、これら 2 つの
情報で契約者の信用性を判断できるとは思えない。提出する必要があるのだろうか。個人
情報保護法では、利用目的はできる限り特定しなければならないはずだ。
(不明・男性・給与生活者)
<事例6:利用目的がきちんと明示されなかった旅館>
旅館に泊まる際に、宿帳に氏名や連絡先等の個人情報を記入した。その際、DM等の案
内の可否を問う欄があったので「可」とした。その後、携帯電話にリゾート会員権の勧誘
電話が突然かかってきたので、個人情報の取得元を問いただすと、この旅館だと言われた。
旅館の責任者に問い合わせたところ、宿帳に記入した情報は本社で管理されグループ会社
内で利用しているが、グループ会社内での利用なので全く問題はないとういう態度で、十
分な説明もなかった。宿帳の記入時には、第三者提供やグループ会社内での利用について
は一切触れられていなかった。
(40 歳代・男性・自営・自由業)
<事例7:同意書の提出を拒否したら残債の返済を求めた金融機関>
父が事業のために、自治体と民間金融機関が協調して行う融資制度を利用して長年借入
れをしている銀行から、契約の更新時に個人情報の取扱いに関する同意書を提出するよう
に言われた。同意書には、返済が滞った場合、家族の情報(預金残高・住所・氏名・生年
月日・続柄)を債権管理回収業者に提供するとある。私を含め保証人でもない家族の情報
がなぜ提供されなければならないのか納得できなかったので、銀行に苦情を申し出たとこ
ろ、同意書は顧問弁護士と相談の上で作成しており、提出できないのであれば、契約の更
新はできないので、残債の返済も検討するように言われた。
(20 歳代・男性・給与生活者)
利用目的に関する相談の内容はさまざまであるが、個人情報保護法上では個人情報の利
用目的は個人情報取扱事業者が定めることができるため、その利用目的の内容が取引上の
地位の優位性を利用している場合や、住宅など代替が利きにくい契約の場合には、消費者
側に不利な利用目的が設定されるなどで特にトラブルになりやすい。契約の締結など本来
の目的を達成するために不本意ながら同意をする場合まで、安易に全ての項目にわたって
問題なく「同意」があったとすることは、消費者の理解を得にくいと考えられる。相談事
例のようなケースでは、事業者が消費者に対して合理的な説明をし得るのか疑問が残る。
「動向調査」でも、「申込書やアンケートに記入する際、書きたくない情報を書くよう強
制された」(4.7%)、「契約しようとしたら、個人情報の利用の同意書に署名を求められた」
(4.1%)など、利用目的に関して嫌な思いをしたと感じる人がいることが分かる。
消費者の理解を十分に得ないままに同意を求めたり、広範な利用目的すべてに同意しな
ければ契約しないといった事業者の姿勢が消費者の不安を増幅させていると考えられる。
消費者としては、契約の申し込みやアンケートの記入など、個人情報を記載し事業者へ提
供する前に、当該事業者がどのようにその個人情報を利用するのかを確認し、納得できる
内容かどうかを確かめた上で個人情報を提供するようにすることが大切であろう。特に、
「解約後や契約不成立の際に個人情報がどのように扱われるのか」、「どのような場合に個
6
人情報の利用停止や削除等に応じているのか」といった点や、第三者提供の有無などにつ
いても確認しておくと、トラブルになりにくいと思われる。
(4)販売促進活動に利用される個人情報の取扱いに関する相談
(「開示等」
・「同意のない提供」・「目的外利用」
)
相談窓口には、電話勧誘やダイレクトメールなどの販売促進活動に利用されている個人
情報に関する相談も目立っている。「なぜ自分の個人情報を知っているのか」「どのように
個人情報が利用されているのかわからない」といった相談のほか、「勧誘そのものを止めさ
せたい」といった相談が目立つ。
「動向調査」で個人的な情報の取り扱いで嫌な思いをしたこととして最も多くの人があげ
たのが、「知らない業者から電話での勧誘があった」で 8 割以上に上った。次いで、「知ら
ない業者からのダイレクトメールが来た」が 7 割以上であり、相談窓口にも同様の相談が
寄せられている。
<事例8:投資用マンションのしつこい電話勧誘>
知らない不動産会社からの投資用マンションに関する電話勧誘がしつこい。複数の担当
者から勤務先や自宅にかかってくる。購入する意思がないことをそのつど伝えているが、
しつこく電話がかかってきて迷惑している。個人情報を削除してほしい。また、勧誘電話
を止める方法を知りたい。
(40 歳代・男性・給与生活者)
<事例9:頻繁に届くヤミ金融などのダイレクトメール>
利用したことのないヤミ金融からのダイレクトメールが頻繁に届いたり、法務局を名乗
る不審なハガキが届く。自分の個人情報が、知らないところで転々と流通しているようで
不安である。本人からの求めがあれば、個人情報を削除するようにしてほしい。
(不明・男性・不明)
電話勧誘やダイレクトメール等、勧誘そのもの自体を迷惑だと感じている消費者も多く、
勧誘等の販売促進活動に個人情報を利用されることに不安を覚える消費者も目立つように
なっている。個人情報保護法では、当該個人情報取扱事業者が定めた利用目的の範囲を超
えて個人情報を取り扱っている場合や、偽り等の不正な手段により個人情報を取得した場
合に限り、事業者は利用停止等に応じなければならないとなっている。したがって、この
ような事情がない場合には、個人情報保護法上、利用停止等に応じる義務までは生じない。
したがって、電話勧誘については従来通り再勧誘を禁止している特定商取引法や、迷惑
な方法等による勧誘を禁止している宅地建物取引業法、商品取引所法等の電話勧誘販売に
関する規制を活用することになる。契約の意思がない場合には、契約はしない旨をはっき
りと伝え、手短かに電話を切ることも大切である。
7
3.個人情報の取扱いについて求められること
(1)消費者は限定的な利用を希望
相談事例をみてみると、消費者は知らない事業者が自分の個人情報を把握し、自分の知
らないところで利用されていることに強い不安感を抱いていることが分かる。個人情報保
護法では、個人情報取扱事業者に対し、利用目的を特定することを求めたり、第三者提供
を制限してはいるが、個人情報保護法施行後もなお多くの消費者が個人情報の取扱いにつ
いて事業者任せにすることを危惧していると考えられる。
「動向調査」では、個人情報の利用について「個人情報は一切利用してほしくない」と答
えた人は 26.2%いるが、42.1%の人は「個人情報をまったく提供しないで生活することは
できないので、慎重に扱ってくれればよい」と答えている。また、「個人情報の扱いについ
ては特に気にしないので、いろいろな情報がほしい」という人は、わずか 1.1%で、多くの
人が自分の個人情報がどのように取り扱われるかに関心を持っていることがわかる。
「自分
が同意をした事業者だけ利用しても構わない(40.0%)」
、
「限られた情報なら、利用しても
構わない(14.5%)」と、個人情報の取扱いについては限定的な利用が必要であると考えて
いる人が多数派といえる。
(2)事業者等には消費者の信頼を得るための努力を期待
これまで取り上げた事例のように、事業者の個人情報の悪用や団体等が個人情報の取扱
いについてずさんなケースの相談も寄せられており、個人情報保護法に対する認識も十分
でない現状もうかがえる。 また逆に、個人情報保護法を理由に従来行っていた消費者への
サービスを取り止めるなどで苦情につながるケース等も見受けられる。
法律やガイドラインを遵守するのは当然であるが、ただ、形式的・機械的に対応するの
ではなく、「個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護する」との法の目的を
達成していくには、消費者の信頼を獲得(回復)するための事業者自らによる積極的な取
組みが一層求められる。
(本件に関するお問い合わせ先)
相談調査部:03‐5475‐3711
8
参考資料 1
各省庁のガイドラインや解説の見直し等についての具体例
関係省庁は、いわゆる「過剰反応」等についてガイドライン等の見直しを行っている。以下、
その具体例である。
(国民生活センターによる抜粋)
。
<学校関係>
「学校における生徒等に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき
措置に関する指針」の解説を改訂し(平成 18 年 2 月 1 日)
、これまで学校運営上必要としてき
た緊急連絡網等の連絡名簿については、取得時に適切に同意を得る手続を取ることにより、従
来どおり作成・配布することができる(なお、本人の同意が得られない場合は、同意する者の
範囲で作成、配布するなど適切に対処する必要がある。
)ことを明らかにした。
また、学校行事で撮影された写真等の展示・提供について、
「学校行事で撮影された写真等に
ついては、そのまま保存するような場合は、通常、特定の個人情報を容易に検索できるものと
は言えません。このような場合、当該写真等は、
『個人データ』には該当しないため、学校が、
それを展示したり、生徒や保護者に提供したりすることについて、個人情報保護法第 23 条の本
人の同意を求める手続きは必要ありません。
」と明示している。
詳細に関しては、文部科学省 http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/16/11/04111602.htm を参照。
<経済産業関係>
「個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドライン」等に関
する Q&A を更新した(平成 18 年 2 月 2 日)
。更新内容は、①弁護士法 23 条の 2 に基づく弁護
士会照会に関すること、②刑事訴訟法 197 条 2 項に基づく照会、同法 507 条に基づく照会に関
すること、③過去に販売した製品に不具合が発生し、製品を回収する場合について購入者全員
から第三者提供についての同意を得ることが困難な場合についての対応方法をあげている。
詳細に関しては、経済産業省 http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/privacy/q&a.htm を参照。
<医療・介護関係>
「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」
(平成 18
年 4 月 21 日改正)及び、
「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガ
イドラインに関するQ&A(事例集)
」の改正を随時行っている(平成 17 年 3 月 28 日、平成
17 年 5 月 20 日、平成 17 年 8 月 5 日、平成 17 年 11 月 29 日、平成 18 年 4 月 21 日改正)
。
大規模災害や事故等における対応や、捜査照会等への対応等を追加している。
詳細に関しては、厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/seisaku/kojin/index.html を参照。
同様に、関係省庁は分野ごとにガイドラインや解説の見直しを行っており、個人情報保護法
に対する周知徹底を図っている。
関係省庁の取組みに関しては、各省庁のホームページ等を参照してほしい。
なお、内閣府のホームページ http://www5.cao.go.jp/seikatsu/kojin /index.html に各省庁へのリンク
集が掲載されている。
9
参考資料2
『第 36 回 国民生活動向調査』(個人情報関連)について
調査について
当センターが平成 17 年 10 月 14 日~11 月 16 日に、政令指定都市および東京 23 区に居住する世帯人員 2 以上世帯の 20 歳
以上 69 歳以下の既婚女性 3,000 人を対象(層化二段無作為抽出法)に行った。有効回収 1,624(有効回収率 54.1%)である。
特定テーマと時系列テーマからなる調査で、その中で、個人情報関連の設問が 4 つ含まれている。
1.個人情報保護法の周知度について
「法律の内容をよく知っている」
「法律の内容をある程度知っている」を合わせた周知度は 34.7%と、他の消費者
関連法規と比較しても高く、昨年度と比較しても 20 ポイント上昇しており、消費者の関心の高さがうかがえる。
「
(マ
スコミなどで)見聞きたことがある」と答えた人を含めると 93.8%に上っている。
2.個人的な情報の取扱いで嫌だったこと
個人的な情報の取扱いに関して、嫌な思いをしたことがあると答えた人(全体の 56.8%)にどのようなことがあっ
たかをたずねた。
表1 個人的な情報の取扱いで嫌だったこと(n=923)
(複数回答)
割合(%)
知らない業者から電話での勧誘があった
知らない業者からダイレクトメールが来た
子どもの学年や自分の年齢を特定しての勧誘があった
架空請求のハガキが来た
自分の情報をどこから入手したのか聞いたのに、教えてもらえなかった
名簿やインターネット、メールから自分の個人情報が漏えいしたようだ
申込書やアンケート等に記入する際、書きたくない情報を書くよう強制された
銀行等から、満期だからと他の金融商品を勧める電話があった
契約をしようとしたら、個人情報利用の同意書に署名を求められた
電話でアンケートに答えたが、個人情報を何に利用するのか教えてくれなかった
携帯電話で知らない人から名前や住所を聞き出されそうになった
その他
無回答
81.5
74.3
37.1
16.4
15.3
15.0
4.7
4.3
4.1
2.2
1.5
4.7
0.1
3.個人情報の取扱いについて望むこと
表2 個人情報の取扱いについて望むこと(n=1624)
(複数回答)
割合(%)
情報漏えいや悪用について罰則を強化してほしい
個人情報をまったく提供しないで生活することはできないので、
慎重に扱ってくれればよい
自分が同意した事業者だけ、利用しても構わない
個人情報は一切利用してほしくない
限られた情報なら、利用しても構わない
個人情報の扱いについては特に気にしないので、いろいろな情報がほしい
その他
特に望むことはない
無回答
49.8
42.1
40.0
26.2
14.5
1.1
1.5
1.5
2.1
10
<title>個人情報保護法施行後1年間の相談概要について</title>
11
Fly UP