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枠組壁工法の天井懐に着目した上下階間遮音性能に関する研究 報告書

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枠組壁工法の天井懐に着目した上下階間遮音性能に関する研究 報告書
第3回(2006年)坪井記念研究助成
枠組壁工法の天井懐に着目した上下階間遮音性能に関する研究
報告書
平成19年3月
北海道立北方建築総合研究所
廣田 誠一
鈴木 大隆
財団法人日本建築総合試験所 田中 学
目 次
1.研究の目的
・・・・・・・・・・・・・ 2
2.研究の概要
・・・・・・・・・・・・・ 3
3.測定の概要
・・・・・・・・・・・・・ 4
4.基本性能の把握
・・・・・・・・・・・・・ 9
(1) 重量床衝撃音レベル
(2) 衝撃時間内応答インピーダンス
5.重量床衝撃音レベル低減要素の検討
・・・・・・・・・・・・・10
(1) 床構造の高インピーダンス化
1)床構造の構成と駆動点インピーダンスの関係
2)根太の高剛性化
3)床構造の高剛性化
4)面密度の増加
(2) 防振吊木などによる振動減衰効果
1)測定概要
2)測定結果
(3) 天井面材の選択
1)ボード状天井材
①音響放射係数
②重量床衝撃音レベルと振動速度レベルの測定
③高剛性天井
2)シート状天井材
(4) 床開放工法の検討
1)測定概要
2)測定結果
6.設計資料
・・・・・・・・・・・・・37
7.まとめ
・・・・・・・・・・・・・38
-1-
1.研究の目的
木造床の遮音性能向上のための研究は既に多くの研究機関で行われており、重量床衝撃音レベルについて
は厚さ 150mm のコンクリートスラブ相当の遮音性能を有する工法も実現している。しかし、枠組壁工法を含
む木造の多世帯同居型の戸建住宅や共同住宅では、依然として騒音の問題はなくなっていない。
既往研究の重量床衝撃音レベル低減方法は、主に「床の高剛性化」、「面密度の増加」、「独立天井化による
振動絶縁」によるが、高い性能を実現するための工法提案が多く、施工の手間および必要資材が大幅に増え、
コスト増に直結する手法といえる。このため実用技術として採用しにくく、騒音問題の減少につながってい
ないと思われる。
本研究では、これらの低減方法を含めて、枠組壁工法における実用的な技術として行える工法の提案を目
的に、平成17年度の本研究にて、天井懐内への吸音材の挿入や床表面仕上げ材の違いと吸音材の関係など
について実験を行い、軽量床衝撃音レベルの実用的な改善方法について整理しまとめた。
本年度は、主に重量床衝撃音対策について、考えられる方法の効果を実測により把握し、効果的かつ実用
的な対策を整理しまとめる。
-2-
2.研究の概要
本研究の概要を以下に示す。また、研究のフローを図 2-1 に示す。
1.基本性能の把握
基本床の衝撃時間内応答インピーダンス
2.重量床衝撃音低減要素の検討
(1) 床構造の高インピーダンス化
①床構造の構成と駆動点イ
ンピーダンスの関係
基本データ収集し曲げ剛性、
駆動点 インピーダンス の算
出、整理
②根太の高剛性化
根太ころび止め
鋼板による補強
③面密度の増加
ALC 材、木毛セメント板など
を付加
床衝撃音レベル測定
振動速度測定
(2) 防振吊木などによる振動減衰効果
①独立根太による方法
2×6 材を使用した場合
②防振吊木による方法
市販防振吊木を使用した場
合
③防振バーによる場合
市販防振バーを使用した場
合
④組み合わせた場合
防振吊木+防振バーを使用
した場合
床衝撃音レベル
振動速度測定
(3) 天井面材の選択
①音響放射係数
主な天井材の音響放射係数
を把握
床衝撃音レベル
振動速度測定
②高剛性天井の可能性
天井材を簡単なパネル化し
独立天井根太から支持
音響放射係数算出
③シート状天井の可能性
天井部分にポリエチレンフ
ィルムを使用する
床衝撃音レベル測定
床周りのスリット、床面ガ
ラリの2パターン
床衝撃音レベル
振動速度測定
(4) 床開放工法の検討
①開口率と床衝撃音レベル
の関係
3.枠組み壁工法の床遮音対策設計資料作成
図 2-1
-3-
研究のフロー
3.測定の概要
(1) 測定方法
1)床衝撃音レベルの測定
床衝撃音レベルの測定は、図 3-1 に示す JIS A 1416 に規定されている RC 造の TypeⅡ残響室の天井部
分に、枠組壁工法で一般的な天井懐仕様を設置。その床面を各標準衝撃源で加振し、受音室内で床衝撃
音レベルを測定した。
この測定は JIS A 1418-1,1418-2,1440 に準じて、L 数などの評価は JIS A 1419-2 に従って行った。
軽量床衝撃音レベルの測定には標準軽量衝撃源として JIS A 1440 に規定されているタッピングマシン
を使用した。
重量床衝撃音レベルの測定には標準重量衝撃源として JIA A 1418-2 に規定されている衝撃特性(1)(衝
撃力 約 4,200N、衝撃時間 20±2ms)のバングマシンと衝撃特性(2)(衝撃力 約 1,500N、衝撃時間 20
±2ms)のボールを使用した。
なお、ボールを用いた重量床衝撃音の L 数や遮音等級の評価は JIS では可能となっているが、一般的
にはまだ評価方法として認知されていないところがある。本報告書ではボールでの結果も L 数や遮音等
級で示すが、取り扱いには注意が必要である。
加振点は図 3-1(1)に示す5点とした。受音点は図 3-1(2)に示す5点とした。測定に使用した機器を図
3-2 に示す。
本測定は、ISO 140-111)や既往の論文2),3)を参考に、試験室の天井部分に枠組壁工法の床、天井を設置
して測定を行った。下室に相当する試験室の壁、床はRC造である。実際の枠組壁工法の建物の場合は、
床から根太を通じて下室の壁から放射される側路伝搬音を無視できないが、ここでは取り扱わず、床及
び天井で構成される天井懐に着目して効果を把握するため、壁が無い状態で測定を行った。
2)振動加速度及び速度の測定
床及び天井の振動加速度及び速度の測定は、電荷出力型加速度検出器(小野測器NP-2130)を測定面に
両面テープ又はマグネットによって取り付け、チャージアンプ(小野測器 CH-1200)を介してFFTアナラ
イザ(小野測器DS2000)で分析処理した。
3)床のインピーダンスの測定
床の任意の点に上記の加速度検出器を設置し、所定の衝撃点をインパクトハンマー(PCB 086D20)で
3回打撃し、平均の衝撃力 F(N) と振動速度応答 v (m/s)を測定する。
インピーダンスはF/v (kg/s)で求めた。また、衝撃時間内応答インピーダンス Z (kg/s)は式①より衝
撃力及び振動速度応答の時系列波形より、ハンマーの衝撃時間(t)内の衝撃力 F (N)及び振動速度 v
(m/s)を対象として以下の式により求めた。
t
Z=
∫ F (t ) dt
∫ v(t ) dt
0
t
2
・・・・・式①
2
0
1) ISO 140-11:Laboratory measurements of the reduction of transmitted impact noise by floor coverings on a lightweight standard
floor
2) 井上勝夫・橘秀樹・安岡正人・片寄昇, 標準木造床構造による床仕上げ構造の床衝撃音レベル低減量の測定, 日本建築学会大会梗概
集2002年,D-1分冊,p.235
3) 阿部恭子・片寄昇・米澤房雄・井上勝夫・安岡正人, 標準木造床構造による床仕上げ構造の床衝撃音レベル低減量の実験室測定方法
の検討, 日本建築学会大会梗概集 , 2003年,D-1分冊,p.57
-4-
4708
3754
試験用床
マイク高さ
H=600
3648
2844
マイク高さ
H=900
3
マイク高さ
H=1,800
3
マイク高さ
H=1,800
2
5
マイク高さ
H=1,200
1
4
1
マイク高さ
H=600
4
マイク高さ
H=900
マイク高さ
H=1,500
2
5
マイク高さ
H=1,200
マイク高さ
H=1,500
受音点
床衝撃音加振点及び音圧レベル差受音点
(1) 遮音試験室平面(試験体部分)
(2) 遮音試験室平面(受音室断面)
4153
3754
460
2844
試験用床
600
250
600
試験用床
3650
2740
試験室1 (受音室)
250
250
250
3650
(3) 遮音試験室断面1
(4) 遮音試験室断面2
図 3-1
遮音試験室概要
パーソナルコンピューター
ボール
ボール
リオン製●●
リオン YI-01
FFT分析器
小野測器 DS-2000
バングマシン
サツキ製作所 T型
タッピングマ
タシン
ッピングマシン
FI-01
リリオン
オン製 ●●
1m
測定対象床構造
マイクロフォン
小野測器製
図 3-2
3090
試験室1(受音室)
3090
2740
3090
(室容積61.6m3)
床衝撃音レベル測定機器ブロック図
-5-
表 3-1
測定に使用した機器
(1)床衝撃音レベルの測定機器
測定機器名
標準軽量衝撃源
標準重量衝撃源
分析器
マイク
マイク用アンプ
音源用パワーアンプ
イコライザー
スピーカー
型
番
タッピングマシン RION 製 FI-01
バングマシン:サツキ製作所製 ボール:リオン製 YI-01
Onosokki DS-2000
Onosokki MI-1233 受音室用 5 本
Onosokki MI-3110 受音室用 5 本
YAMAHA POWER AMPLIFIER MODEL HC2700
Panasonic WZ-AE31
残響時間測定用音源 RION
FFTアナライザー
ONOSOKKI DS-2000
チャージアンプ
ONOSOKKI CH-1200
DS-0290
AC Power Unit
EXT TRIG IN
POWE R
EXT SAMP IN
SIGNAL OUT
REMOTE
DS-2100
Multi-Channel Data Station
INPUT
DS-0264
LEVEL
OVER
INPUT
LEVEL
OVER
INPUT
INPUT
LE VEL
OV ER
LEVEL
OVER
4ch Input Unit
INPUT
衝撃力 F
[N]
DS-0264
LEVEL
OVER
INPUT
LEVEL
OVER
INPUT
LEVEL
OVER
INPUT
DS-0262
LEVEL
OVER
INPUT
LEVEL
OVER
2ch Input Unit
インパルスハンマ
PCB 086-D20
加速度検出器
ONOSOKKI NP-2130
振動速度
パソコン
チャージ
アンプ
床構造
v [m/s]
図 3-3
インピーダンス測定機器ブロック図
-6-
INPUT
LE VEL
OV ER
4ch Input Unit
(2) 基本試験体
基本となる床構造の直張天井と独立天井の試験室への設置状況と隙間などの処理状況を図 3-4 から 3-7 に
示す。
3640
455
455
76 235
76
89
38
図 3-5
直張天井仕様の設置状況
油粘土
油粘土
シリコンシーリング
シリコンシーリング
シリコンシーリング
油粘土
油粘土
床根太 2×10材@455
EPDM(幅33mm×厚さ10mm)
(1)
EPDM(幅33mm×厚さ10mm)
設置部断面詳細1
(2)
床根太 2×10材@455
(3)
図 3-6
根太の留め付け状況詳細
直張天井仕様の設置状況詳細
-7-
設置部断面詳細2
3640
455
455
76
140
76 235
38
89
38
455
455
図 3-7
独立天井仕様の設置状況
油粘土
油粘土
シリコンシーリング
シリコンシーリング
遮音シート 厚さ6mm
遮音シート 厚さ6mm
シリコンシーリング
油粘土
シリコンシーリング
油粘土
床根太 2×10材@455
天井根太 2×6材@455
天井根太 2×6材@455
EPDM(幅33mm×厚さ10mm)
(1)
EPDM(幅33mm×厚さ10mm)
設置部断面詳細1
(2) 設置部断面詳細2
斜めビス打ち
コーススレッド75mm×3本
床根太 2×10材@455
天井根太 2×6材@455
(3)
図 3-8
床根太 2×10材@455
根太の留め付け状況詳細
独立天井仕様の設置状況詳細
-8-
4.基本性能の把握
基本となる直張天井及び独立天井は、図 4-1 に示すように 455mm 間隔の 2×10 材の床根太の上に厚さ 15mm
のサネ付き合板と厚さ 12mm のフロアー材を敷き、天井は床根太の下面に直接天井仕上げ材を施工する直張天
井と、2×6 材の天井根太を床根太と独立させて壁(側根太)から支持するようにした独立天井の2種類とし
た。これらの床の床衝撃音レベル、床面のインピーダンスを測定、算出した。
遮音フロアー材など置き敷き
構造用合板(さね付き)15mm
根太38mm×235mm
石膏ボード12.5mm
76
455
76
76
235
235
76
フロアー材12mm
構造用合板(さね付き)15mm
根太38mm×235mm
天井根太38mm×140mm
石膏ボード12.5mm
38
89
89
455
38
455
(1) 直張天井
(2) 独立天井
図 4-1 基本床の構成
(1)重量床衝撃音レベル
直張天井、独立天井の床衝撃音レベルの測定結果を図 4-2 に示す。L 数を表 4-1 に示す。
直張天井仕様と独立天井仕様の重量床衝撃音レベルの L 数を比較すると、独立天井仕様の方がバングマ
シンを用いた場合に 3dB、ボールを用いた場合に 1dB 小さい値になった。
120
120
110
110
100
100
90
90
床衝撃音レベル [dB]
Lr-85
80
Lr-80
70
60
Lr-85
80
Lr-80
Lr-75
70
60
50
40
D-01
直張
天井
独立
天井
S-01
2000
1000
125
独立
天井
S-01
63
2000
1000
20
500
20
250
30
125
30
500
D-01
直張
天井
40
250
50
63
床衝撃音レベル [dB]
Lr-90
オクターブバンド中心周波数 [Hz]
オクターブバンド中心周波数 [Hz]
(1)バングマシン
(2)ボール
図 4-2 重量床衝撃音レベル
表 4-1 L 数一覧
直張天井
独立天井
重量床衝撃音(バングマシン)
85
82
重量床衝撃音(ボール)
78
77
-9-
加振点毎の床衝撃音レベルの結果を図 4-3 に示す。
重量床衝撃音レベルは 63Hz の周波数でバングマシン、ボールともに 3dB 程度のばらつきがある。本試験
体は周囲の壁の上に載せただけであるため、床構造の端部の拘束が弱い状態である。よって、RC スラブの
ように端部拘束の影響によりインピーダンスが増加し、壁に近い点ほど床衝撃音レベルが小さくなる傾向
は見られなかった。
120
120
110
1
3
5
100
Lr-85
80
Lr-80
70
105.9
63Hz
108.5
107.2
108.8
108.0
床衝撃音レベル [dB]
Lr-90
Lr-85
80
Lr-80
70
60
104.4
63Hz
104.4
106.2
106.4
90.5
125Hz
92.2
50
90.6
92.6
88.6
105.2
87.2
125Hz
86.1
87.9
88.2
79.7
80.5
74.1
73.0
71.1
73.7
衝撃位置
2
3
1
75.7
250Hz
75.8
79.4
76.5
77.1
30
4
67.5
500Hz
66.7
68.3
68.8
重量床衝撃音レベル(バングマシン)
120
120
110
1
3
5
100
1
3
5
110
2
4
2
4
100
90
Lr-85
Lr-80
Lr-75
70
100.3
63Hz
102.7
100.1
102.3
101.2
床衝撃音レベル [dB]
90
80
Lr-85
80
Lr-80
Lr-75
70
60
97.7
63Hz
99.5
100.1
101.3
91.9
125Hz
91.4
50
87.5
89.1
88.0
84.1
80.5
100.1
84.5
125Hz
84.8
84.2
83.8
250Hz
40
80.4
82.6
81.5
73.8
72.7
500Hz
73.8
72.9
71.7
衝撃位置
2
3
1
83.4
75.6
250Hz
78.8
76.2
77.6
78.6
衝撃位置
2
3
1
5
30
4
65.0
500Hz
69.0
64.5
68.9
64.3
5
4
125
63
1000
500
250
125
63
2000
オクターブバンド中心周波数 [Hz]
オクターブバンド中心周波数 [Hz]
(1) 直張天井
図 4-4
2000
20
20
1000
30
2000
(2) 独立天井
図 4-3
40
4
1000
250
125
63
2000
1000
500
250
125
63
(1) 直張天井
50
5
オクターブバンド中心周波数 [Hz]
オクターブバンド中心周波数 [Hz]
床衝撃音レベル [dB]
65.3
20
20
60
衝撃位置
2
3
1
5
500
30
40
80.0
71.6
500Hz
86.2
81.1
78.4
500
40
250Hz
250
床衝撃音レベル [dB]
90
Lr-90
50
2
4
100
90
60
1
3
5
110
2
4
(2) 独立天井
重量床衝撃音レベル(ボール)
- 10 -
(2) 衝撃時間内応答インピーダンス
基本となる直張天井と独立天井の加振点別の衝撃時間内応答インピーダンスを図 4-5 に示す。加振点2を
除き全ての加振点で直張天井が独立天井のインピーダンスを上回っている。これは、直張天井は根太に直接
石膏ボードを留め付けるため、曲げ剛性が向上したことによると思われる。
衝撃時間内応答インピーダンス[dB]
100
直張天井
独立天井
90
80.7
80
82
79.8 81
80.4 80
78.6 79.5
78.4
77.4
80.6 78.9
70
60
50
1
2
3
4
5
Ave.
加振点
図 4-5
基本床の衝撃時間内応答インピーダンス
- 11 -
5.重量床衝撃音レベル低減要素の検討
(1) 床構造の高インピーダンス化
床衝撃音レベル低減の方法の一つとして床構造の駆動点インピーダンスを大きくすることが挙げられる。
駆動点インピーダンスは式②で表され、面密度と剛性で決まることがわかる。
Zb = 8 B ⋅ m
B = I ⋅E
・・・・・式②
・・・・式③
B : 床断面の曲げ剛性 [N・m2]
m : 床構造の面密度 [kg/m2]
I : 断面二次モーメント[cm4]
E : ヤング率[N/m2]
駆動点インピーダンスレベル(dB)= 20 ⋅ Log10 ( Zb )
式②、③から基本床の駆動点インピーダンスレベルを算出すると、直張天井 92.4dB、独立天井 91.5dB とな
る。前項の基本床の衝撃時間応答インピーダンスの測定結果と比較すると 10dB 程度小さい値となっている。
これは、実際の床構造は、根太がある部分と無い部分で剛性の違いがあるのに対し、計算では全面に平均の
剛性があるとして算出しているためと考えられる。
面材を使用する場合は断面が一様であるため、計算値と実測値で差が少ないと思われる。
1)床構造の構成と駆動点インピーダンスの関係
①根太せいについて
根太2×6材、2×8材、2×10材、2×12材の駆動点インピーダンスの算出結果を図 5-1 に示す。
計算は根太などの剛性に加え、材料増加による面密度の増加も考慮している。また、ビスや釘などの留付け
は構造的に一体していないものとして扱い、剛性は各部位材の加算とした。
根太間隔は 303mm とし、根太上に合板 12mm と 15mm を重ねた(接着なし)状態とした。
駆動点インピーダンスレベルの差は、そのまま床衝撃音レベル低減量につながる。つまり、2×8 材は 91dB、
2×10 材は 94dB、2×12 材は 97dB であるから、3dB ずつ向上することがわかる。
(合板12+下地合板15,根太間隔303)
駆動点インピーダンスレベル [dB]
110
105
100
2×12 材
2×10 材
95
L-70
L-75
2×8 材
90
2×6 材
85
80
0
100
200
300
400
根太せい [mm]
図 5-1
根太せいと駆動点インピーダンスレベルの関係
- 12 -
②根太数について
根太数は通常 455mm 間隔であるが、この間隔を狭くした場合の駆動点インピーダンスを算出した。
根太数は通常の 910mm あたり 3 本=@303、4 本、5 本、6 本=@150mm、7 本、8 本、10 本、12 本=@75mm の8間
隔、根太は 2×6 材、2×8 材、2×10 材、2×12 材の4種類とした。算出結果を図 5-2 に示す。
各根太材とも間隔を狭くすることによる駆動点インピーダンスレベルの上昇量は変わらない。根太本数を
2 本から 3 倍の6本とすると 5dB、6 倍の12本とすると 13dB の向上となる。
(合板
駆動点インピーダンス レベル [dB]
110
下地合板
,根太
)
2×12
105
2×10
100
2×8
L-60
L-65
L-70
95
L-75
90
85
2×6
80
0
100
200
300
400
500
根太間隔 [mm]
図 5-2
根太数と駆動点インピーダンスレベルの関係
③床下地合板の厚さについて
根太を 2×10 材@303 として、その上に床下地合板と合板 12mm をのせる構成のうち、床下地合板の厚さを変
化させた場合の駆動点インピーダンスレベルを算出した。厚さは 12mm、15mm、21mm、24mm、28mm、30mm、
45mm(30mm+15mm)、51mm(30mm+21mm)、60mm(30mm+30mm)の9種類とした。図 5-3 に算出結果を示す。
合板の厚さが 15mm から 30mm になったことによるインピーダンスレベルの増加は 1dB、60mm の場合は 3dB
であった。
駆動点インピーダンス レベル [dB]
110
105
24mm
51mm
30mm
15mm
100
L-70
95
L-75
45mm
90
60mm
28mm
12mm
21mm
85
80
10
20
30
40
50
60
下地合板厚さ [mm]
図 5-3
床下地合板の厚さと駆動点インピーダンスレベルの関係
- 13 -
④面密度の増加について
床下地合板の上に重量物を付加して面密度を増加した場合の駆動点インピーダンスを算出した。構成は 2
×10 材の根太@303 の上に床下地合板 15mm、重量付加物、合板 12mmとし、重量付加物は厚さ 50mmで比重を 0、
0.5、0.7、0.8、1.0、1.2、1.5、2.0 までの8種類、つまり面密度で 40kg/m2から 140kg/m2まで増加させた。
結果を図 5-4 に示す。
重量付加物が無い場合に比べ、ALC 材並みの比重 0.7 を付加した場合に駆動点インピーダンスレベルは 3dB、
比重 1.0 を付加した場合に 4dB、1.5 を付加した場合は 5dB の向上となった。
根太
駆動点インピーダンス レベル [dB]
110
,根太間隔
)
105
L-65
100
L-70
95
L-75
90
85
80
0
図 5-4
0.5
1
1.5
比重
2
重量付加(面密度増)と駆動点インピーダンスレベルの関係
⑤根太材のヤング率について
根太材のヤング率はSPFの場合、1.0×1010 [N/m2]程度であるが、実際にはばらつきがあると思われる。この
ばらつきの程度について、本研究では調査は行わなかったが、ヤング率の違いが駆動点インピーダンスに与
える影響を確認するため算出した。ヤング率は 0.1×1010 [N/m2]から 3.0×1010 [N/m2]までとした。
図 5-5 に算出結果を示す。
日本農林規格に定める枠組壁工法構造用製材のヤング率は 0.5×1010 [N/m2]∼1.3×1010 [N/m2]となっている。
このヤング率の差による駆動点インピーダンスレベルの差は 3dBである。
根太間隔
駆動点インピーダンス レベル [dB]
110
)
2.0×1010
105
3.0×1010
100
L-70
0.8×1010
95
L-75
0.5×1010
1.0×1010
90
85
0.6×1010
0.3×1010
0.1×1010
80
1.0E+09
1.0E+10
1.0E+11
ヤング率 [N/m 2 ]
図 5-5
根太のヤング率と駆動点インピーダンスの関係
- 14 -
⑥まとめ
各部材の構成の違いによる駆動点インピーダンスレベルを算出して、床衝撃音レベルの改善効果を確認し
た。やはり、根太せいを大きくすることが最も効果が高いことがわかる。その他の方法は、現実的な範囲で
は 5dB 程度の向上にとどまる。
これ以上の効果を必要とする場合は、更にインピーダンスを増加させることになるが、その場合は床下地合
板と根太、根太下に面材を接着材で貼り付け、構造的に一体化する方法などが必要になってくるだろう。
- 15 -
2)根太の高剛性化
①根太ころび止め
床構造は床全体が一体化することにより全体のインピーダンスが向上する。木造の根太床は構造上一体化
しているとはいえない状態であるため、根太間にころび止めを設置することによる一体化の効果を確認する。
ころび止めの入れ方は図 5-6 に示すように、なし、1本(2,730mm 間)
、3本、5本とした。
図 5-7 に重量床衝撃音レベルの測定結果を示す。ころび止めの本数によって、床衝撃音レベルに差はみら
れなかった。むしろ5本入れた場合には 63Hz の周波数帯域でわずかに増加した。
表 5-1 に基準床ところび止めを5本入れた場合の各加振点の衝撃時間内応答インピーダンスレベルを示す。
(1)ころび止めなし
(2)1本
(3)3本
(4)5本
図 5-6 ころび止めの入れ方
- 16 -
110
110
基本仕様
C-01
C-02
C-03
Lr-80
床衝撃音レベル [dB]
90
基本仕様
100
C-01
C-02
90
床衝撃音レベル [dB]
100
80
70
Lr-80
80
70
60
60
50
50
40
C-03
40
63
125
250
500
1k
周波数帯域 [Hz]
2k
(1)バングマシンの結果
63
125
250
500
1k
周波数帯域 [Hz]
2k
(2)ボールの結果
図 5-7 重量床衝撃音レベル測定結果
表 5-1 各床の加振点ごとの衝撃時間内応答インピーダンスレベル
加振点1
加振点2
加振点3
加振点4
加振点5
基準床
77.1
74.0
79.4
78.4
79.3
ころび止め 5 本(C-03)
75.6
71.8
80.4
79.9
80.6
インピーダンスレベルは、加振点3、4、5でわずかに大きくなっているが、加振点1、2では小さくな
った。これは、根太上下両面に面材を接着するなどの構造的一体化を図らない限り、ころび止めのビス止め
程度では一体化しているとはいえないことを示している。
- 17 -
②根太の剛性向上
根太せいを大きくして床組みの厚さを増すことは、スタッドの高さを変更せずに行えば、天井高さの減少
を招き、スタッドを高くする場合は、壁などの面積が増加しコストアップに直結する。
そこで、根太のせいを大きくせずに床衝撃音レベルを低減する方法として、根太自体の剛性を向上させる
方法の検討を行った。
根太材の材質を鋼製にすると効果が高いが、ここでは木根太を使用して、施工後に改修することも考慮に
入れ、木根太の周りに薄い鋼板を巻き、接着する方法を検討した。検討方法は、根太に鋼板を巻きつけた状
態の断面二次モーメントを求め、鋼板を巻きつけない床構造に対してどの程度剛性が向上するかを計算した。
計算に用いた断面モデルを図 5-8 に示す。
鋼板の厚さと剛性の関係を図 5-9 に示す。0.35mm 及び 0.4mm 鋼板を使用すると約 1.5 倍、0.8mm 鋼板で約 2
倍剛性が向上する。
木根太と鋼板補強根太の剛性の関係を図 5-10 に示す。2×10 材を鋼板で補強した場合、鋼板の厚さが 0.7mm
程度で 2×12 材と同等の剛性を有することがわかる。
これらの結果から駆動点インピーダンス Zb を算出し、補強の有無で比較すると 0.4mm で 2dB、1.0mm で 4dB
の差となる。2×10 材そのもの剛性が高いため、床衝撃音レベルの低減効果を期待する場合は、補強に使う鋼
板をある程度厚くしなければ効果が現れにくいだろう。
0.0004m 0.038m
1.0E+06
0.0004m
9.0E+05
0.235m
0.1179m
中立軸
A材(鋼板)
E = 2.06×1011 N/m2
8.0E+05
7.0E+05
6.0E+05
2×10材の剛性値
5.0E+05
4.0E+05
3.0E+05
補強なし
2.0E+05
1.0E+05
0.0E+00
0.0
0.0002m
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
補強鋼板の厚さ [mm]
図 5-8
計算モデル補強
図 5-9 鋼板の厚さと剛性の関係
1.0E+06
鋼板による補強
9.0E+05
根太1本の剛性 E・I [N/m2]
0.1087m
根太1本の剛性 E・I [N・m2]
B材(木材S-P-F)
E = 1.0×1010 N/m2
0.80mm
0.60mm
8.0E+05
7.0E+05
2×12材
0.50mm
6.0E+05
0.40mm
5.0E+05
0.35mm
2×10材
4.0E+05
3.0E+05
2×8材
2.0E+05
2×4材
1.0E+05
2×6材
0.0E+00
0
0.1
0.2
0.3
0.4
根太せい [m]
図 5-10 木根太材と鋼板補強根太の剛性の関係
- 18 -
3)床構造の高剛性化
①床構造の概要
前項では、根太の高剛性化を検討したが、本項では根太と床合板を一体化することによる床構造の高剛性
化を検討した。
根太のみ、根太の上面に合板、根太の上下面に合板といった構成では、根太と合板を釘止めにするか、接
着して構造上一体化するかによって、断面二次モーメントは大きく異なる。
検討した断面構成は、根太下の全面に合板を張り付けると独立天井用の根太を床根太の下に設けることに
なる。これでは天井の高さが低くなため、実用的な方法として図 5-11 に示すように根太下の合板は 455mm 飛
ばしに入れることとし、合板が入らない根太間に天井用の根太を設けた。
合板は上下とも 300mm 間隔でビス止めするとともに、スチレン系2液式接着材で接着した。
合板12mm
298.5
合板15mm+フローリング12mm
天井根太@910
天井パネル
図 5-11 床の構成
②衝撃時間内応答インピーダンスの測定
衝撃時間内応答インピーダンスを図 5-12 に示す。
全ての加振点で独立天井のインピーダンスを若干上回っているが、計算ではおよそ 4dB 程度向上すると思
われたが、実際には 2dB 程度の向上にしかなっていない。
これは、計算ではビス止めの場合のビスの拘束力は考慮されていないこと、接着材を使用しているが完全
に一体化していないこと、合板は前面が一体ではなく根太間で継ぎ目があることなどから、計算どおりの剛
性向上が期待できないと推測される。
衝撃時間内応答インピーダンス[dB]
100
根太下合板接着
根太上下合板接着
90
81.9
80
79.2
81.9
79.2
81.7
79.3
78.8
79.6
77.3
79.5
78.8 80.9
70
60
50
1
2
3
4
5
加振点
図 5-12 衝撃時間内応答インピーダンス
③重量床衝撃音レベルの測定
- 19 -
Ave.
重量床衝撃音レベルの測定は、根太下(455mm 飛ばし)に合板を接着した場合、これに GW32K-100mm を挿入
した場合、更に床合板を接着した場合の3種類行った。なお、天井は高剛性天井(F-01 と同)とした。
測定結果を図 5-13 に示す。63Hz を見るとバングマシン、ボールともに F-01 に比べて 5dB 程度床衝撃音レ
ベルが大きくなっている。床構造の衝撃インピーダンスは若干向上してはいるが、根太下合板追加の効果は
見られない。これは、F-01 の天井根太は 455mm 間隔であったが、根太下に合板を使用した場合は 910mm 間隔
となるため、天井のインピーダンスが低下したと思われる。
根太上の合板を接着した効果はほとんど見られなかった。これは前述の理由が考えられる。
以上の結果から、根太の上下面の合板を接着するなどして剛性を向上する方法は、現状の床構成を大きく
変えない場合は、大きな効果を望めないといえる。対策としては、床をパネル化することが考えられるが実
用的とはいえないだろう。
110
110
根太下半合板 バング
根太下半合板 GW バング
根太下半合板 GW 床接着 バング
F-01
100
根太下半合板 ボール
根太下半合板 GW ボール
根太下半合板 GW 床接着 ボール
F-01
100
90
床衝撃音レベル [dB]
床衝撃音レベル [dB]
90
80
70
80
70
60
50
60
40
50
30
40
20
63
125
250
500
1k
2k
63
中心周波数帯域 [Hz]
125
250
500
1k
2k
中心周波数帯域 [Hz]
(1)バングマシン
(2)ボール
図 5-13 重量床衝撃音レベル
4) 面密度の増加
根太などの高剛性化と共に、床構造のインピーダンス増加に寄与する面密度の増加に着目し、面密度と床
衝撃音レベルの関係を実験により検証した。
重量付加材として使用したのは、既に市場に出回っている ALC 材と、比重が大きい木毛セメント板の2種
類である。本州では床にモルタルを流し込む、湿式工法も行われているが、施工性、工期などを考慮して乾
式工法に絞った。
ALC材は厚さ 50mm、2×6 サイズで比重は約 0.7 である。面密度は 30kg/m2。一枚当たりの重量は約 33kgであ
る。木毛セメント板は、厚さ 50mmで、サイズは 606mm×455mm、比重は約 1.2、面密度は 50Kg/m2。一枚当たり
の重量は 14kgである。
ALC 材は市販のものを使用したが、木毛セメント板は、床遮音用として試作した専用品である。写真 5-1、
5-2 に使用した ALC 材と木毛セメント板を示す。
床の断面構成は根太 2×10 材@303 の上に床下地合板 15mm(実付き)を敷きビス止め、その上に重量付加物を
敷きビスで止め、合板 12mm、フローリング 12mm を乗せビスで留め付けた。
- 20 -
写真 5-1 ALC 板の施工状況
写真 5-2
使用した木毛セメント板の試作品
図 5-14 に重量床衝撃音レベルの測定結果を示す。重量床衝撃音レベル遮音等級の決定周波数である 63Hz
帯域を見ると、重量を付加しない基本床に対して ALC 板は 7dB、木毛セメント板は 10dB の低減となった。
計算値よりも実測値の方が、改善量が大きかった理由は、5.
(1)で示したように、基本床構造のインピ
ーダンスが計算よりも実際の方が小さいことが原因と思われる。
図 5-15 に ALC 板及び木毛セメント板の場合の衝撃時間内応答インピーダンスの測定結果を示す。基準床に
比べて ALC 板は加振点1で最大の7dB の増加が見られる。木毛セメント板は加振点5で 10dB の増加が見られ
る。いずれも加振点によってばらつきが大きく、平均しても駆動点インピーダンスの計算値よりは小さくな
る。これは、合板などのわずかな浮きなどの加振源の衝撃力を減少させる要素が影響していると思われる。
実際の施工では、床構造が計算に近い性能を発揮できるように、精度よく、できる限り接着剤を併用して納
めることが重要といえる。
- 21 -
110
110
100
100
90
90
床衝撃音レベル [dB]
120
80
Lr-80
Lr-75
70
60
50
独立天井
独立天井+木毛
独立天井+ALC
40
30
80
70
60
50
独立天井
独立天井+木毛
独立天井+ALC
40
30
20
20
63
125
250
63
500 1000 2000
125 250 500 1000 2000
オクターブバンド中心周波数 [Hz]
オクターブバンド中心周波数 [Hz]
(1) バングマシン
(2) ボール
図 5-14 重量床衝撃音レベル測定結果
100
衝撃時間内応答インピーダンス[dB]
床衝撃音レベル [dB]
120
独立天井
90
80
85.6 85.8
78.6
85.1
84.7
80.4 80.1
独立天井+木毛
79.8
独立天井+ALC
88.3
86.2
83.5
85.1
83
79.4
78.4
77.4
78.9
70
60
50
1
2
3
4
5
加振点
図 5-15 衝撃時間内応答インピーダンス測定結果
- 22 -
Ave.
83.3
(2) 防振吊木などによる振動減衰効果
床衝撃音レベルの低減には、床構造のインピーダンス向上のほかに、下室への音の放射板となる天井から
の放射音を低減することが重要である。
基本となる独立天井の構成方法は、2×4 や 2×6 材を壁から支持して天井材を張る方法である。この他に市
販の防振吊木を用いる方法もある。本項では、一般に行われている独立天井の構成方法のいくつかを取り上
げ、比較測定を行い効果的な方法を示す。
1)測定概要
防振吊木は、市販の3種類とした。形状は2種類あり、緩衝材を圧縮、引張方向で利用し振動を減衰させ
るタイプが2種類(D-01、D-02)、緩衝材をせん断方向で使用して減衰させるタイプ(D-03)が1種類である。
この他、吊木ではないが、天井根太に板バネを介して天井材を留め付ける直張天井とほぼ同様に施工でき
る部材(D-05)、この板バネ部材と防振吊木の最も性能が良かったものを組み合わせた場合(D-04)の測定も行
った。
防振吊木の配置を図 5-16 に示す。
合板15mm(さね付き)
フローリング
285
417
2×4材
防振吊木
石膏ボード12.5mm
根太(2×10材@455)
(1)縦断面
3754
2×4材
2844
防振吊木
防振吊木
910
910
910
根太(2×10材@455)
910
1820
(2)平断面
図 5-16 防振吊木の配置
- 23 -
910
2)測定結果
各仕様の重量床衝撃音レベル測定結果を図 5-17 及び表 5-2 に示す。なお、板バネ部材と防振吊木の最も性
能が良かったものを組み合わせた D-04 は、D-03 と板バネ部材を組み合わせた構成とした。
バングマシンの測定結果から、防振吊木3種類の L 数をみると D-01 は基本の独立天井と比べ 4dB の向上、
D-02 は 2dB の向上、D-03 は 5dB となった。
インパルスハンマによる加振の床と天井の振動速度差の測定結果を図 5-18 に示す。D-02 が 63Hz、80Hz の
周波数帯域で他より 5dB ほど振動が伝わりやすくなっていることがわかる。これは床衝撃音レベルの測定結
果にも現れており、D-02 の 63Hz 帯域が他より床衝撃音レベルが大きくなっている。
その他の周波数帯域では防振吊木間の大きな差は見られなかった。このことから、D-02 の床衝撃音レベル
の測定結果のうち 250Hz から 1kHz にかけて、他より床衝撃音レベルが大きくなっていることは、防振吊木の
影響ではないと思われる。
以上の結果より、いずれの防振吊木も基準床より振動減衰効果が高いが、D-02 は 63Hz 帯域付近で若干他よ
110
110
100
100
90
90
床衝撃音レベル [dB]
床衝撃音レベル [dB]
り性能が劣るといえる。
80
70
基本仕様
D-01
D-02
D-03
Lr-80
60
50
80
70
基本仕様
60
D-01
D-02
50
D-03
Lr-80
40
63
125
250
500
1k
2k
周波数帯域 [Hz]
(1)バングマシン
40
63
125
250
500
1k
周波数帯域 [Hz]
(2)ボール
図 5-17 防振吊木などの重量床衝撃音レベル測定結果
- 24 -
2k
表 5-2
防振吊木の重量床衝撃音レベル測定結果
(1)バングマシン
周波数[Hz]
基本仕様
D-01
D-02
D-03
63
107
103
105
102
125
89
93
90
85
250
79
77
84
74
500
69
68
78
67
1k
61
64
72
60
2k
59
66
66
60
L数
84
80
82
79
(2) ボール
基本仕様
D-01
D-02
D-03
63
99
98
98
96
125
83
86
86
81
250
76
74
76
73
500
64
67
70
66
1k
56
61
62
57
2k
53
61
57
56
L数
76
75
75
73
50
50
40
40
振動速度レベル差[dB]
D-01
D-02
D-03
基準床
30
20
10
D-01
D-02
D-03
基準床
30
20
10
0
0
1/3 oct.中心周波数[Hz]
1/1 oct.中心周波数[Hz]
(1)1/3 オクターブバンド
(2)オクターブバンド
4000
2000
1000
500
250
125
2500
2000
1600
1250
800
1000
630
500
400
315
250
200
160
125
80
100
63
50
63
-10
-10
31.5
振動速度レベル差[dB]
周波数[Hz]
図 5-18 床と天井の振動速度レベル差
板バネを使用した D-05 及び吊木と組み合わせた D-04 の重量床衝撃音レベルの測定結果を図 5-19 及び表
5-3 に示す。
バングマシンの場合の L 数は、基本床の独立天井に比べ D-05 は 3dB の低下、D-04 は 3dB の向上になった。
D-05 は直張の結果よりも低くなる可能性がある。
インパルスハンマによる加振の床と天井の振動速度差の測定結果を図 5-20 に示す。D-04 は基準床に比べほ
とんどの周波数帯域で大きくなっている。
D-05 は、500Hz 帯域より下の周波数帯域ではあまり効果がみられなかった。
- 25 -
100
100
90
90
床衝撃音レベル [dB]
110
床衝撃音レベル [dB]
110
80
70
基本仕様
直張
D-05
D-04
Lr-80
60
50
80
70
基本仕様
直張
D-05
D-04
Lr-80
60
50
40
40
63
125
250
500
1k
周波数帯域 [Hz]
2k
63
(1)バングマシン
125
250
500
1k
周波数帯域 [Hz]
(2)ボール
図 5-19 板バネなどの重量床衝撃音レベル測定結果
表 5-3
板バネなどの重量床衝撃音レベル測定結果
(1)バングマシン
周波数[Hz]
基本仕様
D-04
D-05
直張
63
107
104
110
108
125
89
87
92
91
250
79
77
80
80
500
69
69
72
73
1k
61
64
64
68
2k
59
66
65
66
L数
84
81
87
85
(2) ボール
周波数[Hz]
基本仕様
D-04
D-05
直張
63
99
98
102
101
125
83
83
88
89
250
76
73
81
82
500
64
67
72
73
1k
56
59
62
65
2k
53
60
58
60
L数
76
74
78
78
- 26 -
2k
50
40
40
振動速度レベル差[dB]
D-04
D-05
基準床
30
20
10
D-04
D-05
基準床
30
20
10
0
0
1/3 oct.中心周波数[Hz]
1/1 oct.中心周波数[Hz]
(1)1/3 オクターブバンド
(2)オクターブバンド
4000
2000
1000
500
250
125
2500
2000
1600
1250
800
1000
630
500
400
315
250
200
160
125
80
100
63
50
63
-10
-10
31.5
振動速度レベル差[dB]
50
図 5-20 床と天井の振動速度レベル差
③まとめ
市販の防振吊木は、低音域で若干の性能差があるが、2×6材による独立天井と同程度の性能を有してい
るといえる。しかし、重量床衝撃音レベルを向上させるためには、更に効果を高めたいところであり、今後
の製品開発が望まれる。
- 27 -
(3) 天井面材の選択
1)ボード状天井材
床面を加振し、床構造が振動し、それが天井面に伝わり音を放射する。この関係は式③で表される4) 5)。
Ls = La + 10Log10 (S A) − 20Log10 f + 10Log10σ + 36
・・・式①
ただし、
Ls
: 音圧レベル[dB]
La
: 振動加速度レベル[dB]
S
: 有効放射面積[m2]
A
: 吸音力 [m2]
f
: 周波数 [Hz]
10Log10σ : 音響放射係数
この式から、受音室の音圧レベルを決定づける要素は天井面の振動速度、天井面積であることがわかる。
前項では主に天井面の振動速度を小さくすることに主眼をおいてきたが、本項では、音響放射係数に着目し、
天井材の音響放射係数と床衝撃音レベルとの関係を実験的に検討する。
① 音響放射係数
A. 測定概要
音響放射係数は、図 5-21 のように一辺が1mの音響箱に試料を設置し、試料にテニスボールを 200mm の高
さから落下させ加振し、加速度検出器で試料の振動速度を、マイクで音響箱内の音圧レベルをそれぞれ測定
し式①を用いて算出した。
テニスボール
試料
加速度検出器
200mm
音響箱
マイク
図 5-21 音響放射係数の測定方法
4) 羽染他 コンクリート壁と乾式間仕切り壁の音響放射係数に関する実験的検討 東急建設技術研究所所報
No.20 1994
5) 橋本典久、澤田紘次 各種振動板の音響放射特性に関する実験検討 日本建築学会計画系論文集 第 525 号 p9-14,1999.11
- 28 -
B. 試料の選定
試料は 63Hzの周波数帯域付近で音響放射係数がなるべく小さいものとするために、既往の論文5)を参考に
検討した結果、石膏ボードや合板などの一般的な建材に対して、塩ビ板 5mmと鋼板 3.2mmの音響放射係数が小
さいことがわかった。そこで、
天井材として使用できる可能性のある塩ビ板 5mm(面密度 7.0kg/m2)を取り上げ、
その他、一般的な建材である石膏ボード 12.5mm(面密度 8.8kg/m2)、市販の天井材 15mm(高密度ロックウール
板+遮音シート、面密度 6.7kg/m2)
、グラスウール板 96K-15mm(面密度 1.2kg/m2)の4種類を試料とした。
C. 測定結果
音響放射係数の測定結果を図 5-22 に示す。
63Hz帯域では、石膏ボードと市販天井材が、GW96Kと塩ビ板に比べてやや大きい値となった。125Hz帯域で
は、石膏ボードが最も大きく、ついでGW96K、市販天井材、塩ビ板の順に小さくなった。全体でみると市販天
井材の音響放射係数が最も小さい値となった。ただし、低音域では面材の振動モードの影響がでるため本測
定のような 1m角の試験体の結果を 10m2の天井面の放射と一致しない部分があることに注意が必要である。
10
石膏ボード12.5mm
市販天井材15mm
GW96K15mm
塩ビ板5mm
-10
-20
-30
1/1 oct 中心周波数帯域 [Hz]
図 5-22 音響放射係数測定結果
- 29 -
2000
1000
500
250
125
-40
63
10Logδ
0
②重量床衝撃音レベルと振動速度レベルの測定
音響放射係数の測定試料の中から塩ビ板(E-01)と市販天井材(E-02)を選び、前述の試験室で床衝撃音レベ
ル及び振動速度レベルの測定を行った。
A. 床衝撃音レベル
重量床衝撃音レベルの測定結果を図 5-23 に示す。バングマシン、ボールとも市販天井材が基本床に比べて
1∼2dB 程度小さい値となっている。しかし、前項の測定結果の音響放射係数の差はこれには表れていない。
110
110
基本仕様
100
E-01
E-02
90
床衝撃音レベル [dB]
90
床衝撃音レベル [dB]
100
基本仕様
E-01
E-02
Lr-80
80
70
80
70
60
60
50
50
40
Lr-80
40
63
125
250
500
1k
周波数帯域 [Hz]
2k
63
(1)バングマシン
重量床衝撃音レベル測定結果
(1)バングマシン
周波数[Hz]
基本仕様
250
500
1k
周波数帯域 [Hz]
(2)ボール
図 5-23 重量床衝撃音レベル測定結果
表 5-4
125
E-01
E-02
直張
63
107
109
106
108
125
89
89
87
91
250
79
80
78
80
500
69
70
69
73
1k
61
62
60
68
2k
59
54
52
66
L数
84
86
83
85
- 30 -
2k
(2) ボール
周波数[Hz]
基本仕様
E-01
E-02
直張
63
99
100
98
101
125
83
83
81
89
250
76
75
75
82
500
64
62
62
73
1k
56
55
53
65
2k
53
49
46
60
L数
76
77
75
78
B. 振動速度レベル
振動速度レベルの測定結果を図 5-24 に示す。塩ビ板は基本床と同程度の振動速度レベル差であった。市販
天井材は 500Hz の周波数帯域で基本床(石膏ボード)より振動速度の差が大きくなっている。
以上の結果から、独立天井の場合の重量床衝撃音レベルは、天井材の音響放射係数の違いによる影響は小
さいことがわかった。これは床面の振動による床面裏からの放射音が天井を通過して、室内に伝わる空気伝
搬音が大きいためと思われる。天井懐への吸音材の挿入などにより床裏面からの放射音を低減した場合は、
音響放射係数の違いが現れてくると思われる。
50
50
40
E-01
E-02
基準床
30
振動速度レベル差[dB]
20
10
E-01
E-02
基準床
30
20
10
0
0
4000
2000
1000
500
250
125
2500
2000
1600
1250
800
1000
630
500
400
315
250
200
160
125
80
100
63
50
63
-10
-10
31.5
振動速度レベル差[dB]
40
1/1 oct.中心周波数[Hz]
1/3 oct.中心周波数[Hz]
(1)1/3 オクターブバンド
(2)オクターブバンド
図 5-24 床と天井の振動速度レベル差
③ 高剛性天井
前項の結果から、天井面に伝わる振動を防振吊木などでなるべく小さくすることは有効であるが、市販部
材では限界があること、天井面材に音響放射係数の小さい材料を使用することは効果がほとんどないことな
どがわかったが、本項では、天井材自体のインピーダンスを向上し振動しにくくする方法を検討した。
これは天井材をパネル化することによって曲げ剛性と面密度を高めてインピーダンスを増加させる方法で
ある。
高剛性天井の断面を図 5-25 に示す。なお、接着材を併用することでより高剛性化が図れるが、ここではビ
ス止めのみとした。
- 31 -
石膏ボード12.5mm
胴縁
グラスウール32K-45mm
910
910
70
1820
910
910
1820
図 5-25 高剛性天井パネル
図 5-26 及び表 5-5 に床衝撃音レベル、図 5-27 に床面と天井面の振動速度レベル差の測定結果を示す。重量床衝撃音レ
ベルの測定結果は、バングマシンでは、基本床に比べて 63Hz 帯域で 7dB、L 数は 7dB 向上。ボールでは、同 8dB、L 数は
8dB の向上になった。振動速度差をみると 63Hz 帯域で 7dB の差となっており、振動速度差がそのまま床衝撃音レベル差
に現れている。
110
110
基本仕様
100
80
70
F-01
80
70
60
60
50
50
40
Lr-80
90
床衝撃音レベル [dB]
90
床衝撃音レベル [dB]
100
基本仕様
F-01
Lr-80
40
63
125
250
500
1k
周波数帯域 [Hz]
2k
63
(1)バングマシン
125
250
500
1k
周波数帯域 [Hz]
(2)ボール
図 5-26 重量床衝撃音レベル測定結果
- 32 -
2k
表 5-5
重量床衝撃音レベル測定結果
(1)バングマシン
周波数[Hz]
基本仕様
F-01
直張
63
107
100
108
125
89
84
91
250
79
74
80
500
69
64
73
1k
61
57
68
2k
59
54
66
L数
84
77
85
(2) ボール
基本仕様
F-01
直張
63
99
91
101
125
83
78
89
250
76
68
82
500
64
60
73
1k
56
51
65
2k
53
47
60
L数
76
68
78
50
40
40
振動速度レベル差[dB]
50
F-01
基準床
30
20
10
F-01
基準床
30
20
10
0
0
1/3 oct.中心周波数[Hz]
1/1 oct.中心周波数[Hz]
(1)1/3 オクターブバンド
(2)オクターブバンド
図 5-27 床と天井の振動速度レベル差
- 33 -
4000
2000
1000
500
250
125
63
2500
2000
1600
1250
800
1000
630
500
400
315
250
200
160
125
80
100
63
31.5
-10
-10
50
振動速度レベル差[dB]
周波数[Hz]
2)シート状天井
受音室の音圧は天井からの振動放射による部分が大きいが、5.(3) 2)で検討したボード状の天井材のう
ち、音響放射係数が小さい面材を使用しても重量床衝撃音レベルの低減に大きな効果が得られなかった。こ
のため、天井材をボード状ではなく、音が放射しにくいシート状とした場合の重量床衝撃音レベル低減効果
についての検討を行った。
試験体の構成は独立天井で、天井の石膏ボードが無い場合、これに厚さ 1mm の遮音シートを施工した場合、
これにグラスウール 32K-100mm を天井懐に挿入した場合の3仕様とした。
測定項目はバングマシンとボール加振の重量床衝撃音レベルの測定とした。測定結果を図 5-28 に示す。
110
110
100
100
90
80
床衝撃音レベル [dB]
床衝撃音レベル [dB]
90
80
70
70
60
50
60
40
天井なし
50
天井なし
天井遮音シート
天井遮音シート
30
天井遮音シート+GW
天井遮音シート+GW
40
20
63
125
250
500
1k
2k
1/3 oct.中心周波数帯域 [Hz]
63
125
250
500
1k
2k
1/3 oct.中心周波数帯域 [Hz]
(1) バングマシン
(2) ボール
図 5-28 シート状天井の重量床衝撃音レベル測定結果
重量床衝撃音レベル等級決定周波数の 63Hz帯域をみると、いずれの仕様もほぼ同じ値となった。これは、
床の合板が音を放射しているということが大きな要因であるためと思われる。既往の論文6)で、床をグレーチ
ングとすることにより 63Hz帯域の床衝撃音レベルを低減できることを示しているが、本検討の結果から天井
面の対策だけでは効果がほとんど無いといえる。
天井面材を音響放射係数とインピーダンスに着目して選定し評価を行った。この結果、材料の違いによる
音響放射係数の差は 10dB 程度あるが、床面の振動による床懐内への放射音を遮断するような天井面材を使用
しなければ、音響放射係数の違いは相殺されて効果が得られなくなる。
また、天井面材のインピーダンスを向上する方法は、床衝撃音レベル低減のために有効な方法である。た
だし、重量がかさむため施工性に若干難があることなどが課題である。
天井からの放射音を低減するために天井材をシート状としたことは床衝撃音レベルの低減効果が得られな
かった。同時に床面からの放射音対策を行う必要がある。
- 34 -
(4)床開放工法の検討
床を加振して天井が振動し、下室に音が放射される場合に、直接の振動伝達の他に、天井懐が空気バネと
なり振動を伝える。この場合のバネによる振動伝達を小さくするために床面に開口を設けた場合の床衝撃音
レベルの測定を行い、開口量とレベルの関係を検討した。
1)測定概要
床の構成は、直張天井の場合は床面と天井面がほぼ一体で振動するため、天井懐のバネの影響が小さくな
ると考えられる。よって、独立天井について測定を行った。天井懐内に吸音材は入れていない。
開口は写真 5-3 に示すように 60φとし、455mm 間隔で根太間に1個と2個の2通りとした。測定項目は重
量床衝撃音レベル(バングマシン、ボール)とした。
また、加振点は通常対角線を等分した5点とするが、根太が 455mm 間隔の場合は全ての点で根太上となる。
空気バネの影響を考慮すると根太上よりも根太間の方の影響が大きくなると考え、根太上の加振点を横にず
らし、根太間を加振するパターンを加えた。
写真 5-3 床の開口
2)測定結果
バングマシンを用いた場合の測定結果を図 5-29 に、ボールを用いた場合を図 5-30 に示す。加振した瞬間
に開口から勢い良く空気が流出するが、開口量の違いによる床衝撃音レベルの変化はほとんど見られなかっ
た。
RCスラブにおける乾式二重床の周辺部開放の有無による重量床衝撃レベルの結果7)をみると、周辺部を開
放することにより数dB向上している。本床構造では、おそらくRC造に比較して気密度が低いこと、床下空間
の容積が大きいことなどにより空気バネによる影響が小さくなっていると思われる。
- 35 -
110
110
110
バング 穴なし 根太横
バング 穴なし 根太上
100
バング 穴1あり 根太上
90
63
2000
125
63
1/3 oct.中心周波数帯域 [Hz]
1000
40
500
40
250
40
2000
50
1000
50
500
50
250
60
125
60
63
60
1/3 oct.中心周波数帯域 [Hz]
(1) 根太上加振の場合
2000
70
1000
70
80
500
80
250
70
90
床衝撃音レベル [dB]
床衝撃音レベル [dB]
80
バング 穴なし 根太横
バング 穴2あり 根太横
バング 穴2あり 根太上
90
床衝撃音レベル [dB]
バング 穴なし 根太上
100
バング 穴1あり 根太横
125
100
1/3 oct.中心周波数帯域 [Hz]
(2) 根太横加振の場合
(3) 根太上加振と根太横加振の違い
図 5-29 重量床衝撃音レベルの測定結果(バングマシン)
110
110
100
100
ボール 穴1あり 根太横
ボール 穴なし 根太横
ボール 穴2あり 根太横
90
70
1/3 oct.中心周波数帯域 [Hz]
(1) 根太上加振の場合
2000
1000
500
250
40
125
40
63
40
2000
50
1000
50
500
50
250
60
125
60
63
60
1/3 oct.中心周波数帯域 [Hz]
(2) 根太横加振の場合
1/3 oct.中心周波数帯域 [Hz]
(3) 根太上加振と根太横加振の違い
図 5-30 重量床衝撃音レベルの測定結果(ボール)
6) 福島寛和 他 木質系構造の床衝撃音低減工法に関する実験的研究 日本建築学会計画系論文集 第 419 号 1991.1
7) 古賀貴士 他 コンクリートスラブ上に設置された木質系二重床の重量床衝撃音改善量に対する空気ばねの影響に関する実
験的研究 日本建築学会計画系論文集 第 546 号 2001.8
- 36 -
2000
70
80
1000
70
80
125
80
床衝撃音レベル [dB]
床衝撃音レベル [dB]
90
63
90
500
ボール 穴1あり 根太上
ボール 穴2あり 根太上
床衝撃音レベル [dB]
ボール 穴なし 根太上
ボール 穴なし 根太横
ボール 穴なし 根太上
100
250
110
6.設計資料
本研究で得られた結果を基に重量床衝撃音レベル低減方法と L 数の変化を図 6-1 に示す。これは重量床衝
撃音を低減するための設計を行う際に対応策として考えられる方法とその効果を示したものである。現場に
おける設計施工の方向としては、天井の高剛性化などによるインピーダンス増加、床の面密度の増加、天井
の防振化の3つについて必要に応じて組み合わせて計画することが有効である。
なお、ここで示した効果は壁が無い床構造のみの結果であるため、実住宅に適用する際は効果が小さくな
る可能性がある。
+4dB
+2dB
0dB
-2dB
-4dB
-6dB
-8dB
-10dB
独立天井
2×6
直張天井
天井塩ビ
天井硬質 RW
天井高剛性化
天井材の音響放射係数
転び止め1本
転び止め3本
床根太の高剛性化
転び止め5本
床根太下合板接着
床根太下合板接着
+GW
床根太下合板接着
+GW+床合板接着
床構造の高剛性化
防振吊木1
防振バー
防振吊木2
防振吊木3
防振吊木3
+防振バー
防振吊木などによる振動減衰効果
面密度増
+30kg/m2
面密度増
+50kg/m2
面密度の増加
床面開口
60φ/455
床開放工法
床面開口
60φ×2/455
天井なし
天井
遮音シート
天井のシート化
天井
遮音シート+GW
図 6-1
重量床衝撃音レベル低減方法と L 数変化一覧
- 37 -
7.まとめ
重量床衝撃音レベルを低減するために考えられる実用的な要素について、計算および実測によってその効
果を検討した。検討した要素は以下の4つである。
・床構造の高インピーダンス化
・防振吊木などによる振動減衰効果
・天井面材の選択
・床開放工法の検討
「床構造の高インピーダンス化」については、床構造の構成と駆動点インピーダンスの関係を整理し示す
と共に、
「根太の高剛性化」
、
「床構造の高剛性化」
、
「面密度の増加」について検討を行った。この結果、床上
に面密度の大きい材料を敷込む「面密度の増加」を行うことで計算値と同等以上の約 10dB の低減量が得られ
た。この方法の大きな利点は単に敷込むだけで効果を得られることである。
これに対して、根太の上下面に合板などを接着する「床構造の高剛性化」は、計算よりも効果が小さかっ
た。合板の張り方、接着材の種類などが効果に影響すると思われる。
「根太の高剛性化」についても同様のこ
とが考えられる。
以上のことから、現場で行う「床の高剛性化」や「根太の高剛性化」は不確かな要素が大きいため、
「面密
度の増加」を行う方が確実な効果を得られるといえる。
「防振吊木などによる振動減衰効果」については、市販の防振吊木は、低音域で若干の性能差があるが、
2×6材による独立天井と同程度の性能を有しているといえる。重量床衝撃音レベルを向上させるためには、
更に効果を高めたいところであるが、床からの振動を減衰させる方法としては安価で効果がある方法と言え
る。
「天井面材の選択」については、音響放射係数の違いは床衝撃音レベルの低減に対する効果が得られなか
ったが、天井面材のインピーダンスを向上する方法では、床衝撃音レベル低減のために有効といえる。ただ
し、重量がかさむため施工性に若干難があることなどが課題である。
「床開放工法の検討」については、本検討のなかでは効果が見られなかった。
以上の結果から、床面の面密度を向上させ、高インピーダンスな天井を防振吊木もしくは天井根太で吊る
方法が、現場における実用的な改善方向といえる。
より高い重量床衝撃音レベルの低減量を得るためには、現在流通している根太せいは 235mm 程度が限界で
あり、これ以上大きいものがないため大きな効果を期待できないが、トラスなどを使用し、せいを大きくす
ることが可能であれば、剛性向上の効果は高いため非常に有効な方法といえる。この様な工法改良を含めた
性能向上方法の検討が今後の課題となるだろう。
- 38 -
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