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抗体医薬

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抗体医薬
平成26年度
特許出願技術動向調査報告書(概要)
抗体医薬
平成27年3月
特
許
庁
問い合わせ先
特許庁総務部企画調査課 知財動向班
電話:03-3581-1101(内線2155)
目
次
第1章
抗体医薬の概要
「抗体医薬」とは、生体内で病原体などの非自己物質やがん細胞などの異常な細胞を認
識して殺滅することにより、生体を感染、疾患から保護する役目を有する免疫系の主役で
ある「抗体」を主成分とした医薬品を指す。
「抗体医薬」は標的となる抗原に対して特異的
要
約
に結合するため、副作用の少ない効果的な治療薬として期待されており、これまでに日米
欧で 50 種以上の抗体医薬が承認されている。
本調査においては、応用面に重きを置き、抗体を医薬として製品化するのに必要な様々
な技術の中でも製品に近い技術、及びそのような技術が活用された抗体製品を「抗体医薬」
本
編
として定義する。
本調査では「抗体医薬」を「要素技術」と「応用産業」に大別し、
「要素技術」は、新規
な抗体医薬を探索し、その特性を最適化し、製剤化し、医薬品として製造するまでの過程
で必要な技術であり、
「抗体探索技術」、
「新規な抗体分子」、
「抗体最適化技術」、
「製剤技術」、
第
1
部
「製造技術」から構成されている。また、これらの技術に特徴のある抗体医薬もここに含
まれる。「応用産業」は、最終的に製品として上市されることを目指した「抗体医薬製品」
そのものであり、主として新規な標的に特徴のある抗体医薬である。現在、ヒトのみなら
ず動物向けにも、様々な疾患を対象に「抗体医薬製品」が開発・販売されており、最近で
は、特許切れを迎えた抗体医薬に対するバイオシミラーも登場してきている。
表1
第
2
部
「抗体医薬」の技術概要
構成技術
要素技術
抗体探索技術
新規な抗体分子
抗体最適化技術
製剤技術
製造技術
応用産業
抗体医薬製品
概要
開発する元(プロトタイプ)となる抗体(リード抗体)を見いだすための技術で、抗体作製方法、抗体ライ
ブラリー構築法、スクリーニング法等に区分される。
低分子化(抗体の機能パーツの利用)、抗体様スカフォールド(非抗体骨格の利用)、アプタマー(特
定の分子と特異的に結合する核酸分子やペプチド)、二重特異性抗体(2種類の抗原に同時に結合
できる抗体)、抗体医薬複合体(細胞障害性医薬、放射性同位体等との複合体化)等に区分される。
抗原結合特性(親和性、特異性)の最適化、薬物動態(血漿中半減期の延長)の改善、物理化学的
性質の改善(抗体分子の安定性、溶解性、抗体溶液の粘性、抗体分子の均一性)、免疫原性の低減
(キメラ化、ヒト化、完全ヒト型等)、エフェクター機能の最適化等 、抗体分子そのものの改変により、そ
の特性を最適化する技術等に区分され、これらの技術に特徴のある抗体医薬もここに含まれる。
抗体溶液の安定性・溶解性向上、凍結乾燥、プレフィルドなど、抗体医薬分子の最適化によらず、溶
媒、添加剤、剤型など製剤上の工夫に関する技術等に区分され、これらの技術に特徴のある抗体医
薬もここに含まれる。
生産株の改良(細胞株とその遺伝的改変)、培養(培地、培養条件、リアクター等)、通常の動物細胞
ではないその他の生産システム(植物、動物個体、微生物、昆虫、鶏卵等)、精製(クロマト・担体、膜
分離等)、品質評価(抗体の性質解析技術等)等に区分され、これらの技術に特徴のある抗体医薬も
ここに含まれる。
「がん」、「自己免疫疾患、臓器移植時の拒絶」、「心臓血管疾患」、「消化管疾患」、「眼疾患」、「感染
症」、「筋骨格系疾患」、「神経疾患」、「呼吸器疾患」、「皮膚疾患」、「その他の疾患」を対象に、様々
な抗原を標的とした「抗体医薬製品」が開発・販売されている。
これらの「要素技術」、「応用産業」、並びに「抗体医薬」に関連するその他の技術(「遺
伝子工学」、
「タンパク工学」、
「生物物理学」、
「生物化学工学」等)との関係を図 1 に示す。
- 1 -
第
3
部
第
4
部
第
5
部
第
6
部
資
料
編
目
次
図1
「抗体医薬」の技術俯瞰図
【抗体探索技術】
・抗体作製方法
・抗体ライブラリー構築法
・スクリーニング法 等
→リード抗体の探索技術
要
約
本
編
要
素
技
術
第
1
部
【新規な抗体分子】
・低分子化
・抗体様スカフォールド(非抗体骨格)
・抗体酵素
・多価抗体、二重特異性抗体
・抗体医薬複合体 等
→新たな構造の抗体分子
【抗体最適化技術】
・抗原結合特性の最適化
・薬物動態の改善
・物理化学的性質の改善
・免疫原性の低減
・エフェクター機能の最適化 等
→抗体分子そのものの改変による
機能の最適化
【製造技術】
・生産株の改良
・培養(培地、培養条件、リアクター等)
・その他の生産システム(植物、動物個
体、微生物、昆虫、鶏卵等)
・精製(クロマト担体、膜分離等)
・品質評価(抗体の性質解析技術等) 等
→製品として抗体医薬を製造する技術
【製剤技術】
・抗体溶液の安定性・溶解性向上
・凍結乾燥
・プレフィルド 等
→製剤上の工夫に関する技術
第
2
部
第
3
部
今回の調査範囲
応
用
産
業
遺伝子工学
生物物理学
タンパク工学
生物化学工学
muromonab-CD3 (1986); abciximab (1994); rituximab (1997); daclizumab (1997); basiliximab (1998);
infliximab (1998); palivizumab (1998); trastuzumab (1998); etanercept (1998); gemtuzumab ozogamicin
【抗体医薬製品】
(2000); alemtuzumab (2001); ibritumomab tiuxetan (2002); adalimumab (2002); iodine 131 Tositumomab
ヒトあるいは動物の「がん」、「自己免疫疾患、臓器移植時の拒絶」、「心臓血管疾患」、「消化
(2003); omalizumab (2003); efalizumab (2003); alefacept (2003); bevacizumab (2004); cetuximab (2004);
管疾患」、「眼疾患」、「感染症」、「筋骨格系疾患」、「神経疾患」、「呼吸器疾患」、「皮膚疾患」
natalizumab
(2004); abatacept (2005); ranibizumab (2006); panitumumab (2006); eculizumab (2007);
等、様々な疾患を対象とする、多様な抗原を標的とした「抗体医薬製品」。「ファースト・イン・ク
certolizumab
pegol (2008); rilonacept (2008); romiplostim (2008); catumaxomab (2009); golimumab
ラス(その分野で初めて)」や「ベスト・イン・クラス(その分野で最高の効能)」を目指した新薬の
(2009);
ustekinumab (2009); canakinumab (2009); ofatumumab (2009); tocilizumab (2010); denosumab
(2010);
brentuximab vedotin (2011); ipilimumab (2011); belimumab (2011); belatacept (2011); aflibercept
開発が行われているほか、「バイオシミラー(後発バイオ医薬品)」抗体も登場してきている。
(2011); pertuzumab (2012); raxibacumab (2012); mogamulizumab (2012); trastuzumab emtansine (2013);
obinutuzumab (2013)
第
4
部
なお、本調査においては、応用面に重きを置き、抗体を医薬として製品化するのに必要
第
5
部
な様々な技術の中でも製品に近い技術、及びそのような技術が活用された抗体製品を「抗
体医薬」として定義しており、上記の技術俯瞰図で基礎的色彩の濃い「抗体探索技術」は、
今回の調査対象から除外する。
第
6
部
資
料
編
- 2 -
目
次
第2章
抗体医薬の市場環境
第1節
抗体医薬の市場の現状
世界の医薬品売上高ランキング上位 10 位までの製品の合計売上高とその内訳の推移
(2002 年~2013 年)を図 2 に示す。rituximab が 2005 年に初めてトップ 10 入りして以
要
約
来、抗体医薬の合計売上高は着実に増加し、2005 年の 3,867 百万ドルから 2013 年の
52,298 百万ドルへと約 13.5 倍増えており、より上位のランキングに進出する抗体医薬
が増えていることが分かる。一方、低分子化合物医薬は 47,210 百万ドル(2005 年)か
ら 21,737 百万ドル(2013 年)へと半減している。このように現在の医薬品市場で、抗
体医薬は大きな位置を占めていることが分かる。
図2
世界の医薬品売上高ランキング上位 10 位までの合計売上高推移とその内訳
(2002 年~2013 年、単位:百万ドル)
90,000
80,000
7,867
70,000
売
上
げ
(
百
万
ド
ル
)
5,116
50,000
40,000
6,675
第
1
部
6,555
5,746
60,000
本
編
31,896
6,027
6,701 6,145
16,498 24,349
3,867 13,681
6,885
36,796
32,546
47,128
52,298
第
2
部
30,000
20,000
49,582 47,210
49,570
41,534 45,307
41,325 44,229 41,931 42,703 43,386
21,854 21,737
10,000
0
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
第
3
部
年
低分子医薬品
抗体医薬
それ以外のバイオ医薬
セジデム・ストラテジックデータ(株)ユート・ブレーン事業部データを基に(株)三菱化学テクノリサ
ーチ作成。
注:「Fc 融合蛋白質」については、抗体そのものではないが、抗体のパーツを活用しており、広義の抗体医
薬に含めた。抗体医薬は 2005 年に初めてトップ 10 入りした。トップ 10 合計売上高が 2012 年に、前年
に比べて減少したのは、2011 年に売上げの 1 位及び 2 位を占めていた低分子医薬品が特許切れを迎え、
ジェネリック医薬品に市場を侵食され、共にトップ 10 圏外に去ったためである。
「それ以外のバイオ医
薬」では、組換えヒトエリスロポエチン製剤が上位にあったが、次第に売り上げが低下し、 2009 年に
ランク外に去った。2012 年には組換えヒトインスリン製剤がトップ 10 入りしている。
2002 年以来、毎年増加していたトップ 10 合計売上高が 2012 年に、前年に比べて 6,579
第
4
部
第
5
部
百万ドル(8%)減の 75,537 百万ドルと初めて減少したのは、いわゆる「2010 年問題」
により、2011 年に売上げの 1 位及び 2 位(合計 200 億ドル以上)を占めていた低分子医
薬品が特許切れを迎え、ジェネリック医薬品に市場を侵食され、共にトップ 10 圏外に去
ったためである。「2010 年問題」とは、製薬各社の売上げの中心を占める主力製品の多
第
6
部
くが 2010 年以降、一斉に特許切れを迎え、ジェネリック医薬品の登場により売上げが大
きく落ち込み、各社の収益に重大な影響をもたらしたという問題である。
- 3 -
資
料
編
目
次
2013 年の世界の医薬品売上高ランキングの上位を表 2 に示す。上位 4 位までを抗体医
薬(Fc 融合蛋白質を含む)が占め、上位 10 品のうち 6 品目が抗体医薬であり、低分子
化合物は 3 品目にすぎない。トップ 10 合計売上高約 81,902 百万ドル中、抗体医薬(Fc
要
約
融合蛋白質含む)は合計 52,298 百万ドルで 64.6%を占めており、低分子化合物の 26.2%
を大きく上回っている。このように現在の医薬品市場で、抗体医薬は大きな位置を占め
ていることが分かる。
本
編
第
1
部
第
2
部
表2
2013 年の世界の医薬品売上高ランキング
順位 製品名
一般名
種類
売上げ(百万ドル)
1 Humira
adalimumab
抗体
11,024
2 Remicade
infliximab
抗体
9,727
3 Rituxan/MabThera
rituximab
抗体
8,906
4 Enbrel
etanercept
Fc融合蛋白質
8,791
5 Advair/Seretide
fluticasone+salmeterol
低分子化合物
8,756
6 Lantus
insulin analogue
その他のバイオ医薬
7,867
7 Avastin
bevacizumab
抗体
7,023
8 Herceptin
trastuzumab
抗体
6,827
9 Crestor
rosuvastatin
低分子化合物
6,718
10 Januvia
sitagliptin
低分子化合物
6,263
製品名、一般名、売上高はセジデム・ストラテジックデータ(株)ユート・ブレーン事業部調べ
注 1:「Fc 融合蛋白質」については、抗体そのものではないが、抗体のパーツを活用しており、広義の抗体
医薬に含めた。
注 2:Humira は Abbvie Biotechnology、Remicade は Janssen Biotech、Rituxan は Biogen Idec、MabThera
は F.Hoffmann-La Roche、Enbrel は Immunex、Advair/Seretide は Glaxo Group、Lantus は Sanofi-Aventis
Deutschland、Avastin 及び Herceptin は Genentech、Crestor は IPR Pharmaceuticals、Januvia は
Merck Sharp & Dohme の登録商標である。
第
3
部
第
4
部
第
5
部
第
6
部
資
料
編
- 4 -
目
次
第2節
抗体医薬の市場規模と今後の推移
調査レポート「Global Protein Therapeutics Market Outlook 2018 (RNCOS, January
2014)」によると、モノクローナル抗体医薬の市場規模は、2012 年末で約 460 億米ドル
相当で、複合年間成長率約 8%で 2018 年には 772 億ドルに達する(図 3)。同レポートで
は、成長を支える要因として、開発者にとって抗体医薬がブロックバスターとなり得る
要
約
魅力があること、高額だが保険の適用が得られること、抗体医薬の開発期間が低分子医
薬品に比べてはるかに短いことを挙げている。また、多くの抗体医薬ががんや炎症・免
疫疾患など unmet need の疾患領域を対象とすること、複数の適応で承認されるものが多
く 1 品目で多数の患者を対象にできること、将来的にこれらの疾患の患者数が増えると
予測されることを挙げている。
図3
本
編
世界のモノクローナル抗体医薬市場(Billion US$, 2012-2018)
第
1
部
第
2
部
出典:Global Protein Therapeutics Market Outlook 2018 (RNCOS, January 2014)
注:2012 年及び 2013 年は推定値、2014 年以降は予測値
第3節
第
3
部
抗体医薬の開発状況
抗体医薬の開発状況について、既に上市されている製品及び現在開発中の品目につい
て調査を行った。
これまでに日米欧のいずれかにおいて承認された抗体医薬(その後、取り下げられた
第
4
部
ものも含む。「Fc 融合蛋白質」については、抗体そのものではないが、抗体のパーツを
活用しており、広義の抗体医薬に含めた。)を表 3 にまとめる。1986 年に米国でマウス
モノクローナル抗体 muromonab-CD3 が承認されて以来、約 50 品目が承認されている。標
的として CD20、CD52、TNFα、HER2、IL-6R、EGFR 等を認識するものが複数製品ある。こ
れらのうち、約 8 割は米国企業により開発され、欧州企業が開発したのは 10 品目(米国
第
5
部
企業との連携で開発した 2 品目を含む)、日本企業が開発したのは 3 品目(tocilizumab
(中外製薬)、mogamulizumab(協和発酵キリン)、nivolumab(小野薬品工業/Medarex
(Bristol-Myers Squibb が買収)))であり、米国の大手製薬企業に後れをとっている。
- 5 -
第
6
部
資
料
編
目
次
表3
種類
要
約
本
編
マウス
抗体
キメラ
抗体
第
1
部
ヒト化
抗体
第
2
部
第
3
部
第
4
部
第
5
部
これまでに日米欧で認可された抗体医薬
名称
資
料
編
主要な適応疾患
起源
承認
欧州
NA
日本
1991
muromonabCD3
ibritumomab
tiuxetan
iodine 131
tositumomab
catumaxomab
Orthoclone
OKT3 *1
Zevalin *2
CD3
腎移植後の急性拒絶反応
米国
CD20
B細胞性非ホジキンリンパ腫
米国
2002
2004
2008
Bexxar *3
CD20
ホジキンリンパ腫
米国
2003
NA
NA
Removab *4
癌性腹水
欧州
NA
2009
NA
blinatumomab
Blincyto *5
急性リンパ芽球性白血病
米国
2014
NA
NA
abciximab
ReoPro *6
心筋虚血
米国
1994
NA
NA
rituximab
Rituxan *7/
MabThera *8
Simulect *9
Remicade *10
Erbitux *11
Adcetris *12
EpCAM,
CD3
CD19,
CD3
GPIIb/
IIIa
CD20
B細胞性非ホジキンリンパ腫
米国
1997
1998
2001
CD25
TNFα
EGFR
CD30
腎移植後の急性拒絶反応
関節リウマチ
頭頸部癌、結腸・直腸癌
ホジキンリンパ腫
欧州
米国
米国
米国
1998
1998
2004
2011
1998
1999
2004
2012
2002
2002
2008
2014
Resmia/
Inflectra *13
Sylvant *1
Zenapax *8
TNFα
関節リウマチ
韓国
NA
2013
2014
IL-6R
CD25
多中心性キャッスルマン病
腎移植後の急性拒絶反応
米国
米国
2014
1997
NA
NA
palivizumab
Synagis *14
RSウイルス感染
米国
1998
2002
trastuzumab
gemtuzumab
ozogamicin
alemtuzumab
Herceptin *15
Mylotarg *16
RSV F
protein
HER2
CD33
2014
1999
(取下)
1999
転移性乳癌
急性骨髄性白血病
米国
米国
2000
拒絶
2001
2005
Campath *17
CD52
B細胞性慢性リンパ性白血病
欧州
Xolair *9
Raptiva *15
IgE
CD11
喘息
尋常性乾癬
米国
米国
bevacizumab
natalizumab
Avastin *15
Tysabri *7
結腸・直腸癌
多発性硬化症
米国
米国
tocilizumab
Actemra *18
VEGF
α4
integrin
IL-6R
2001
(取下)
2005
2004
(取下)
2005
2006
NA
omalizumab
efalizumab
1998
2000
(取下)
2001
(取下)
2003
2003
(取下)
2004
2004
日本
2010
2009
2005
ranibizumab
eculizumab
certolizumab
pegol
mogamulizumab
Lucentis *15
Soliris *19
Cimzia *20
VEGF-A
C5
TNFα
米国
米国
欧州
2006
2007
2008
2007
2007
2009
2009
2010
2012
Poteligeo *21
CCR4
日本
NA
NA
2012
pertuzumab
Perjeta *15
HER2
米国
2012
2013
2013
trastuzumab
emtansine
obinutuzumab
Kadcyla *15
HER2
キャッスルマン病、
関節リウマチ
加齢黄斑変性
発作性夜間血色素尿症
関節リウマチ、
重症クローン病
CCR4陽性成人T細胞白血病
リンパ腫
HER2陽性手術不能又は再
発乳癌
HER2陽性転移・再発乳癌
米国
2013
2013
2013
Gazyva *15/
Gazyvaro *8
Lemtrada *17
Entyvio *22
CD20
慢性リンパ性白血病
米国
2013
2014
NA
CD52
α4β7
integrin
PD-1
再発寛解型多発性硬化症
潰瘍性大腸炎、
クローン病
黒色腫
欧州
米国
2014
2014
2013
2014
NA
NA
米国
2014
NA
NA
TNFα
EGFR
TNFα
関節リウマチ
結腸・直腸癌
関節リウマチ
乾癬
欧州
米国
米国
米国
2002
2006
2009
2009
2003
2007
2009
2009
2008
2010
2011
2011
クリオピリン関連
周期性症候群
慢性リンパ性白血病
欧州
2009
2009
2011
欧州
2009
2010
2013
basiliximab
infliximab
cetuximab
brentuximab
vedotin
Infliximab
biosimilar
siltuximab
daclizumab
pembrolizumab
第
6
部
標的
米国
1986
alemtuzumab
vedolizumab
ヒト
抗体
商品名
adalimumab
panitumumab
golimumab
ustekinumab
KEYTRUDA
*23
Humira *24
Vectibix *25
Simponi *1
Stelara *1
canakinumab
Ilaris *9
IL-1β
ofatumumab
Arzerra *3
CD20
IL12,
IL23-p40
- 6 -
2009
NA
2007
2014
目
次
種類
ヒト
抗体
続き
Fc
融合
蛋白
質
名称
denosumab
商品名
ipilimumab
belimumab
raxibacumab
Prolia/
Xgeva *5
Yervoy *26
Benlysta *3
ABthrax
ramucirumab
nivolumab
etanercept
Cyramza *11
Opdivo *26
Enbrel *25
alefacept
abatacept
Amevive *27
Orencia *26
rilonacept
Arcalyst *28
romiplostim
belatacept
NPLate *5
Nulojix *26
aflibercept
Eylea *28
標的
主要な適応疾患
起源
承認
欧州
2010
RANKL
骨病変、骨粗鬆症
米国
米国
2010
TLA4
BlyS
炭疽菌
毒素
VEGFR2
PD-1
TNFα,
LTα
CD2
CD80/
CD86
IL-1
黒色腫
SLE
吸入炭疽、
肺炭疽
胃がん
黒色腫
関節リウマチ
米国
米国/欧州
米国/欧州
2011
2011
2012
2011
2011
NA
NA
NA
NA
米国
日本/米国
米国
2014
2014
1998
NA
NA
200
NA
2014
2005
尋常性乾癬
関節リウマチ
米国
米国
2003
2005
NA
2007
NA
2010
クリオピリン関連
周期熱症候群
血小板減少性紫斑病
腎移植拒絶の防止
米国
2008
2009
NA
米国
米国
2008
2011
2009
2011
2011
NA
加齢黄斑変性
米国
2011
2012
2012
TPOR
CD80/
CD86
VEGF
日本
2012
国立医薬品食品衛生研究所生物薬品部「これまでに日米欧で認可された抗体医薬品および融合タンパク質
医薬品(2014 年 4 月 4 日)」、「これまでに日米欧で認可された抗体医薬品(2014 年 10 月 7 日)」を基に、
厚生労働省、米国 FDA 及び欧州委員会の承認状況から補足(2014 年 12 月末時点)。
注 1:「Fc 融合蛋白質」については、抗体そのものではないが、抗体のパーツを活用しており、広義の抗体
医薬とした。「起源」はその抗体を初めて開発した企業の所属国、「 NA」は未承認を指す。
注 2:*1 は Johnson & Johnson、*2 は RIT Oncology、*3 は GlaxoSmithKline、*4 は Fresenius Biotech、
*5 は Amgen、*6 は Eli Lilly and Company、*7 は Biogen Idec、*8 は F. Hoffmann-La Roche、*9 は
Novartis、*10 は Janssen Biotech、*11 は ImClone、*12 は Seattle Genetics、*13 は Hospira、*14
は MedImmune、*15 は Genentech、*16 は Wyeth、*17 は Genzyme、*18 中外製薬、*19 は Alexion
Pharmaceuticals、*20 は UCB Pharma、*21 は協和発酵キリン、*22 は Millennium Pharmaceuticals、
*23 は Merck Sharp & Dohme、*24 は Abbvie Biotechnology、*25 は Immunex、*26 は Bristol-Myers Squibb、
*27 は Astellas US、*28 は Regeneron Pharmaceuticals の登録商標である。
これまで承認された 52 品目のうち、
「がん」を対象とするものが 23 品目、関節リウマ
チ等の「自己免疫疾患、臓器移植時の拒絶」を対象とするものが 16 品目で、この 2 分野
だけで全体の約 75%を占めている。それ以外の疾患分野は 1~3 品目にとどまっている。
要
約
本
編
第
1
部
第
2
部
第
3
部
なお 52 品目のうち、抗体医薬複合体は 4 品目、二重特異性抗体は 2 品目である。
米国で事業を行っている主要な研究開発志向型の製薬企業とバイオテクノロジー企業
を 代 表 す る 団 体 1 で あ る 米 国 研 究 製 薬 工 業 協 会 ( Pharmaceutical Research and
第
4
部
Manufacturers of America(PhRMA))の資料より、抗体医薬の開発状況についてまとめ
た(表 4)。PhRMA の会員企業は、米国籍企業だけでなく、米国に研究開発機能を有する
欧州あるいは日本等の企業の米国子会社を含め約 50 社となっている。ここに挙げた数値
は、飽くまでも PhRMA 資料からとりまとめたものであり、現在開発中の抗体医薬を網羅
したものではないことに注意が必要である。
第
5
部
第
6
部
1
http://www.phrma-jp.org/(2015.01.30 アクセス)
- 7 -
資
料
編
目
次
表4
PhRMA 資料による抗体医薬の開発状況
Phase
phase 1
要
約
本
編
第
1
部
疾患分野
がん
自己免疫疾患、
臓器移植時の拒絶
心臓血管疾患
消化管疾患
眼疾患
感染症
筋骨格系疾患
神経疾患
呼吸器疾患
皮膚疾患
その他の疾患
合計
phase 1/2
phase 2
phase 2/3
phase 3
申請中
合計
100
27
23
3
79
32
0
0
31
20
5
5
238
87
2
3
4
18
4
12
6
1
15
192
0
0
0
1
0
1
0
1
1
30
14
10
6
10
8
12
17
7
19
214
1
1
0
0
0
2
0
0
1
5
8
4
3
5
8
3
3
5
2
92
0
1
1
1
3
0
0
0
0
16
25
19
14
35
23
30
26
14
38
549
PhRMA のレポート「Medicines in Development」シリーズの Biologics(2013.02 時点)、Leukemia & Lymphoma
(2013.04 時点)、Heart Disease & Stroke(2013.05 時点)、Neurological Disorders(2013.07 時点)、Rare
Disease( 2013.09 時点)、Alzheimer’s Disease( 2013.10 時点)、Infectious Disease( 2013.11 時点)、Diabetes
(2014.02 時点)、Older Americans(2014.06 時点)、Arthritis(2014.07 時点)、HIV/AIDS(2014.08 時点)
より(株)三菱化学テクノリサーチが取りまとめ。
注:同一開発品で疾患分野が異なるものは個々にカウント。ここに挙げた数値は、飽くまでも PhRMA がと
りまとめたものであり、現在開発中の抗体医薬を網羅したものではないことに注意が必要である。
第
2
部
これまでに承認された抗体医薬の適応分野で品目数の多かった「がん」及び「自己免
疫疾患、臓器移植時の拒絶」は、現在開発中の数も他の疾患分野より多く、開発後期の
phase にあるものが多い。同時に phase 1~1/2 の開発初期にあるものも多く、現在も活
発に研究開発が行われており、抗体医薬の中心的な適応疾患分野であることが分かる。
それ以外の疾患は、いずれも約 15~35 件の開発が行われており、まだ承認された製品の
第
3
部
無い「神経疾患」に関しても活発に開発が行われており、近い将来、上市されるものも
出てくると考えられる。これらの抗体医薬のうち、
「抗体医薬複合体」が 45 件、
「二重特
異性抗体」が 7 件であり、全体の開発件数の約 8%を「抗体医薬複合体」が占めていた。
「二重特異性抗体」の件数は少ないが、phase 2 に至っているものがある。
第
4
部
海外及び日本の主要な製薬企業の開発品目総数とそのうちの抗体医薬数、及び抗体医
薬の臨床開発フェーズを表 5 及び表 6 にまとめた。
海外の大手製薬企業では、従来の低分子化合物が主力の所が多いが、Genentech を傘
下に抱える Roche、AstraZeneca、Bristol-Myers Squibb、バイオベンチャーに発する Amgen
第
5
部
は抗体医薬の比重が高い。
表5
海外の主要な製薬企業のパイプライン
企業名
第
6
部
資
料
編
所在
開発総数
うち抗体医薬
phase1
phase 2
10
5
0
0
14
17
備考
Pfizer
Novartis
Roche
米国
スイス
スイス
76
52
71
品目数
18
8
33
Sanofi
Merck & Co.
フランス
米国
47
31
15
4
5
0
9
1
2
3
GlaxoSmithKline
イギリス
96
19
4
10
9
- 8 -
phase 3
4
0
25
2014.08.07時点
2014.07.17時点
2014.07.24時点、Genentech
含む
2014.07時点
2014.07.31時点、phase 2以
上
2014.02時点
目
次
企業名
所在
開発総数
うち抗体医薬
phase1
phase 2
0
0
備考
Johnson & Johnson
米国
19
品目数
3
phase 3
3
AstraZeneca
Eli Lilly
Abbvie
イギリス
米国
米国
62
58
20
33
19
7
17
5
0
11
9
6
7
5
5
Amgen
Teva
Pharmaceuticals
Bristol-Myers Squibb
米国
イスラエル
38
19
21
1
10
0
7
0
10
3
米国
24
13
10
1
2
2014.07.15時点、Janssen
Pharmaceuticalのlate stage
開発品を収載
2014.06.30時点
2014.07.17時点
2014.09.11アクセス、phase 2
以上
2014.02.17時点
2014.09.11アクセス、phase 2
以上
2014.07.10時点
各社ホームページより(株)三菱化学テクノリサーチまとめ
注:開発総数(低分子化合物、抗体医薬、その他のバイオ医薬等)と抗体医薬の数は品目数、臨床開発フ
ェーズは異なる適応疾患をそれぞれカウント、phase 3 には申請中を含む、。
日本企業では、中外製薬(ロシュグループ)及び協和発酵キリンは抗体医薬の比率が
高いが、その他の企業では 10 品目未満である。なお抗体医薬のうちの「自社」には、買
収した欧米企業由来の品目も含まれる。
表6
要
約
本
編
第
1
部
日本の主要な製薬企業のパイプライン
企業名
武田薬品工業
アステラス製薬
第一三共
大塚製薬
エーザイ
田辺三菱製薬
中外製薬
協和発酵キリン
開発品
総数
48
48
30
31
25
22
24
23
うち抗体医薬
自社
導入
2
3
4
4
3
2
0
0
5
1
0
1
5
7
7
3
phase 1
自社 導入
1
2
4
0
3
1
0
0
1
1
0
0
0
1
3
2
phase 2
自社 導入
1
1
0
0
0
2
0
0
6
0
0
0
4
0
6
0
phase 3
自社 導入
2
4
0
4
0
3
0
0
1
0
0
5
2
9
3
1
備考
2014.08.01時点
2014.08時点
2014.07時点
2014.06末時点、phase 1以上
2014年度第1四半期末
2014.07.29時点
2014.07.24時点
2014.07.23時点
各社ホームページより(株)三菱化学テクノリサーチまとめ
注:開発総数と抗体医薬の数は品目数、臨床開発フェーズは異なる適応疾患をそれぞれカウント、phase 1/2
は 2 にカウント、phase 3 には申請中を含む。
第
2
部
第
3
部
また主要企業の抗体医薬に関連する M&A を表 7 にまとめた。欧米の大手製薬企業は、
2000 年代の半ばから複数の抗体関連のベンチャー企業を買収しており、日本の製薬企業
はそれから数年遅れて同様の動きを見せている。
表7
第
4
部
主要企業の抗体医薬に関連する M&A
企業名
Pfizer
GlaxoSmithKline
Sanofi
AstraZeneca
Johnson & Johnson
Merck & Co.
時期
2005
2006
2009
2006
2012
2011
2006
2007
2013
2013
1999
2010
2006
2006
概要
抗体最適化技術のBiorenを買収
中枢神経系医薬開発のRinat Neuroscienceを買収
Wyethを買収
次世代抗体医薬domain antibodiesを開発するDomantisを買収
バイオ医薬開発のHuman Genome Sciencesを買収
バイオ医薬開発のGenzymeを買収
Cambridge Antibody Technologyを買収
MedImmuneを買収、Cambridge Antibody TechnologyをMedImmuneに統合
MedImmune、抗体医薬複合体技術に特化したSpirogenを買収
MedImmune、抗がん抗体医薬等を開発するAmplimmuneを買収
抗体医薬を手掛けるCentocorを買収
バイオ医薬開発・製造のCrucellを買収
糖鎖工学技術を保有するGlycoFiを買収
抗体医薬を開発するAbmaxisを買収
- 9 -
第
5
部
第
6
部
資
料
編
目
次
企業名
Roche
時期
2002
2005
2006
2007
要
約
Bristol-Myers Squibb
本
編
第
1
部
2008
2009
2009
2010
1986
2003
2008
2002
2006
2012
2008
2007
2008
2009
2007
Eli Lilly
Amgen
武田薬品工業
エーザイ
第一三共
富士フイルム
アステラス製薬
概要
中外製薬と戦略提携、傘下に収める
糖鎖改変技術を有するGlycArt Biotechnologyを買収
子会社Genentechが、抗体医薬を開発するTanoxを買収
遺伝子改変動物によるヒト抗体製造技術を保有するTherapeutic Human
Polyclonalsを買収
抗体選抜技術を保有するARIUS Researchを買収
Genentechを完全買収
高親和性の完全ヒト型抗体を産生する組換え動物技術、次世代抗体医薬複合
体技術を保有するMedarexを買収
バイオ医薬開発のZymoGeneticsを買収
抗体医薬開発を手掛けるHybritechを買収
バイオ医薬探索・最適化技術を保有するApplied Molecular Evolutionを買収
抗体医薬Erbituxを開発したImClone Systemsを買収
炎症分野のImmunexを買収
抗体医薬を開発するAbgenixを買収
抗体医薬を開発するMicrometを買収
バイオ医薬を開発するMillennium Pharmaceuticalsを買収
抗体医薬を開発するMorphotekを買収
がん領域の抗体医薬を開発するU3 Pharmaを買収
抗体関連ベンチャーのペルセウスプロテオミクスを子会社化
がん領域の抗体医薬を開発するAgensysを買収
各社ホームページより(株)三菱化学テクノリサーチ調べ(2014.10.06 まで)
注:Erbitux は ImClone Systems の登録商標である。
第
2
部
主要企業の抗体医薬に関連する提携・ライセンス等の動きに見ると、大手製薬企業同
士では、お互いの抗体医薬あるいは低分子医薬を持ち寄り、組合せ剤としての適性を臨
床試験で評価する動きが見られる。また、ヒト抗体、抗体医薬複合体など、高機能化技
術を保有するベンチャー企業との提携も見られた(表 8)。
第
3
部
第
4
部
第
5
部
第
6
部
資
料
編
表8
主要企業の抗体医薬に関連する提携・ライセンス等の動き
当事者
Pfizer
相手
Merck & Co.
時期
20140826
Roche
AREVA Med
20120727
Merck & Co.
GlaxoSmithKline
20131218
Johnson &
Johnson
Genmab
20120830
AstraZeneca
協和発酵キリン
20140730
Amgen
Xencor
20110106
Bristol-Myers
Squibb
Roche
20110602
Eli Lilly
Zymeworks
20141022
概要
PfizerのcrizotinibとMerckが開発中の抗PD-1抗体の組合せの可能性を、ALK陽性進行
性/転移性非小細胞肺がんを対象としたphase 1b臨床試験で確認することで合意。
Rocheと仏Areva子会社AREVA Med、がん細胞を殺傷するα線放射性免疫治療法の開
発で戦略提携。RocheのPharma Research and Early Development (pRED)部門と
AREVA Medは、Rocheの改変抗体とAREVA Med放射性核種Lead-212を組み合わせた
効果を評価する。Rocheが臨床開発後の商業化に関して独占権を保有する。
Merck & Co.、GlaxoSmithKlineとの間でMerckの抗PD-1抗体MK-3475を
GlaxoSmithKlineの経口キナーゼ阻害剤pazopanibと組み合わせ、腎細胞がんで評価す
るphase 1/2臨床試験を行うことで合意。
Janssen Biotech、デンマークGenmabとの間で、現在、再発性・難治性多発性骨髄腫を
対象にphase 1/2臨床試験中の抗ヒトCD38抗体daratumumab (HuMax-CD38)に関する
世界ライセンス・開発で合意。Genmabは、Janssenに対して、daratumumab及びバックア
ップCD38ヒト抗体を開発・商業化する世界独占ライセンス供与する。
AstraZeneca、協和発酵キリンとの間で複数の固形腫瘍に対して三つの探索医薬の二
つの組合せの安全性と効能を評価するphase 1/2臨床試験で提携。AstraZenecaの抗
PD-L1抗体MEDI4736との抗CTLA-4抗体tremelimumabを、協和発酵キリンの抗CCR4
抗体mogamulizumabと組み合わせる。両社は共同で治験に資金を拠出し、治験は協和
発酵キリンが実施する。
AmgenとXencor、CD19及びCD32bを標的とするFc-engineeredモノクローナル抗体
XmAb5871の開発で提携。XmAb5871は自己免疫疾患の治療薬で前臨床開発後期に
ある。Amgenは予め規定したphase 2臨床試験の完了を受け、世界独占ライセンスを受
けるオプションを保有する。Xencorはそれまでの臨床試験を行い、Amgenはそれ以降の
開発を行う。
Bristol-Myers SquibbとRoche、Bristol-Myers SquibbのCTLA-4阻害剤ipilimumabと
Rocheの経口BRAF阻害剤vemurafenibの組合せを、特定のタイプの転移性黒色腫患者
で評価する臨床試験提携で合意。両社はphase 1/2臨床試験を実施し、結果が良好な
場合は、組合せの更なる開発を行うことがある。
ZymeworksとEli Lilly、ZymeworksのAzymetricプラットフォームを利用して新規な二重特
異性抗体を開発するという2014年1月に取り交わした戦略提携を延長。
- 10 -
目
次
当事者
武田薬品工業
相手
Trianni
時期
20140331
アステラス製薬
Ambrx
20130405
協和発酵キリン
Amgen
20110124
概要
武田薬品工業と米Trianniが保有するモノクローナル抗体作製の基盤技術であるTrianni
マウスの使用権を獲得するライセンス契約を締結。この契約により、武田薬品は、革新
的なキメラ遺伝子デザインを有するTrianniの基盤技術により、完全ヒト型抗体の疾患治
療に向けての最適化が容易になる。
アステラス製薬、米Ambrxと、新規の抗体医薬複合体(ADC)の創製と開発に関する提
携契約を締結。Ambrxは、独自のリンカーと薬物を導入するとともに、薬物を抗体の特
定の部位に結合させる技術を用いて、ADCを進化させた。アステラス製薬は、がん領域
におけるADCを全世界で開発・商業化する権利を取得する。
協和発酵キリン、米Amgenが創製したAMG827(抗IL-17受容体完全ヒト抗体)をキリン・
アムジェンより日本、中国、アジア諸国における独占的、開発・販売権を取得するライセ
ンス契約を締結。
各社ホームページより(株)三菱化学テクノリサーチ調べ(2011 年以降、2014 年 10 月 22 日時点)
注:HuMax は Genmab の登録商標である。
第4節
要
約
本
編
バイオシミラー抗体医薬の開発状況
先行するバイオ医薬品の独占的販売期間(特許期間及び製造販売承認のために提出し
た臨床試験及びその他のデータの保護期間)が終了すると後発バイオ医薬品(バイオシ
ミラー)の登録と販売が可能となる。
第
1
部
遺伝子工学等の技術を用いて製造された第一世代のバイオ医薬品の中には、独占的販
売期間が失効したものもあり、バイオシミラーが市場に進出するようになってきた(例
えば欧州で 2006 年に遺伝子組換え天然型ヒト成長ホルモン製剤 somatropin のバイオシ
ミラーが承認)。医薬品市場で大きな売上げを誇る抗体医薬に関しても、独占的販売期間
第
2
部
が失効し、バイオシミラーが登場した。
世界各国で承認されたバイオシミラー抗体医薬を表 9 にまとめる。先進国の中では、
韓国 Celltrion 社の infliximab のバイオシミラーが 2012 年 7 月に韓国で、2013 年 9 月
に欧州で、2014 年 7 月に日本で承認されたのが最初である。インド等で承認されている
第
3
部
ものについては、必ずしも先進国の厳格なバイオシミラーの承認プロセスと同等のプロ
セスで承認されたわけではないものもあると考えられるが、ここでは先行製品とは異な
る企業により商業化された場合も含めて「バイオシミラー抗体医薬」として取りまとめ
た。
表9
第
4
部
世界各国で承認されたバイオシミラー抗体医薬
企業名
Biocad
Biocon
Celltrion
所属
国
ロシア
インド
韓国
先行製品
(一般名)
rituximab
trastuzumab
infliximab
infliximab
infliximab
対象疾患
非ホジキンB細胞リンパ腫
HER2陽性転移性乳がん
「既存治療で効果不十分な関節リ
ウマチ」「中等度から重度の活動期
にあるクローン病の治療及び維持
療法」「外瘻を有するクローン病の
治療及び維持療法」「中等度から
重度の潰瘍性大腸炎の治療」
関節リウマチ、強直性脊椎炎、潰
瘍性大腸炎、クローン病、乾癬等
関節リウマチ、強直性脊椎炎、潰
瘍性大腸炎、クローン病、乾癬性
関節炎、乾癬等
- 11 -
パートナー
承認国
Mylan
日本化薬
ロシア
インド
日本
製造/販売承
認
2014年4月
2013年11月
2014年7月
韓国
2012年7月
欧州
2013年9月
Hospira
第
5
部
第
6
部
資
料
編
目
次
企業名
Celltrion続き
要
約
本
編
第
1
部
第
2
部
第
4
部
先行製品
(一般名)
infliximab
trastuzumab
対象疾患
パートナー
承認国
関節リウマチ、強直性脊椎炎、潰
瘍性大腸炎、クローン病、乾癬性
関節炎、乾癬等
初期及び進行性(転移性)HER2陽
性乳がん、進行性(転移性)胃がん
非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性
白血病、関節リウマチ
関節リウマチ、強直性脊椎炎、潰
瘍性大腸炎、クローン病、乾癬性
関節炎、乾癬
Hospira
コロンビ
ア
製造/販売承
認
2013年12月
韓国
2014年1月
インド
2007年4月発
売
2014年9月
Dr. Reddy's
Laboratories
EPIRUS
Biopharmaceu
ticals
Hanwha
Chemical
インド
rituximab
米国
infliximab
韓国
etanercept
Intas
Pharmaceutic
als
Reliance Life
Sciences
インド
rituximab
非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性
白血病
インド
インド
abciximab
インド
2013年4月
Shanghai
Celgen
Bio-Pharmac
eutical
Shanghai CP
Guojian
Pharmaceutic
al
中国
etanercept
経皮冠動脈インターベンションを受
ける患者の心虚血性合併症の予
防
強直性脊椎炎
中国
2011年1月承
認、同10月上
市
中国
etanercept
関節リウマチ、強直性脊椎炎、若
年性突発性関節リウマチ、乾癬性
関節炎
インド
2013年4月発
売
etanercept
関節リウマチ、強直性脊椎炎、乾
癬
腎臓移植時の拒絶抑制
関節リウマチ、強直性脊椎炎、若
年性突発性関節リウマチ、乾癬性
関節炎
中国
2006年発売
Zydus Cadila
第
3
部
所属
国
韓国
インド
daclizumab
adalimumab
Ranbaxy
Laboratories
インド
韓国
Cipla
中国
インド
2014年11月
承認、2015年
上半期発売
予定
2013年4月発
売
2014年12月
承認
各社ホームページ等より(株)三菱化学テクノリサーチ調べ(2014 年 12 月末時点)。
注:インド等で承認されているものについては、必ずしも先進国の厳格なバイオシミラーの承認プロセス
と同等のプロセスで承認されたわけではないものもあると考えられるが、ここでは先行製品とは異なる
企業により商業化された場合も含めて「バイオシミラー抗体」として取りまとめた。
現在開発中のバイオシミラー抗体医薬を、対照となる先行製品ごとに開発の phase を
表 10 にまとめる。2014 年 9 月 30 日時点で、57 件(同一開発品で複数の適応疾患を対象
としているものを含む)のバイオシミラー抗体医薬の臨床開発が確認された。対照とな
る先行医薬としては、rituximab が 15 件、adalimumab が 11 件、trastuzumab が 10 件で
あった。また phase では phase 1 が 16 件、phase 3 が 36 件であった。
第
5
部
第
6
部
資
料
編
- 12 -
目
次
表 10
バイオシミラー抗体医薬品の開発の概況
Phase
先行製品
(一般名)
adalimumab
bevacizumab
etanercept
infliximab
ranibizumab
rituximab
trastuzumab
合計
phase 1
phase 1/2
5
2
1
3
0
4
1
16
0
0
0
0
1
2
0
3
phase 2
phase 3
0
0
0
0
0
0
2
2
合計
6
3
6
5
0
9
7
36
11
5
7
8
1
15
10
57
2014 年 9 月末時点、(株)三菱化学テクノリサーチ調べ
要
約
本
編
大手~中堅の製薬企業で自らバイオシミラー抗体医薬の開発を手掛けているのは、米
国の Amgen 及び Pfizer、ドイツ Boehringer Ingelheim の 3 社である。また、スイス
Novartis も後発医薬事業部門 Sandoz を通じて、バイオシミラー抗体医薬の開発を行っ
ている。大手製薬企業で米国 Baxter International は Coherus BioSciences と、ドイツ
Merck Serono はインド Dr. Reddy’s Laboratories と、米国 Merck は韓国 Samsung グルー
第
1
部
プと米国 Biogen Idec の合弁企業である Samsung Bioepis とバイオシミラー抗体医薬の
開発で提携している。日本企業では、第一三共が米国 Coherus BioSciences と提携して
臨床開発を日本で行っている。また、富士フイルムと協和発酵キリンは、バイオシミラ
ー医薬品の開発・製造・販売を行う合弁会社「協和キリン富士フイルムバイオロジクス」
を発足させた。それ以外の企業では、ロシアの Biocad、韓国の Celltrion が多数の品目
第
2
部
で臨床開発を実施している。
第
3
部
第
4
部
第
5
部
第
6
部
- 13 -
資
料
編
目
次
第3章
抗体医薬に関わる政策動向
第1節
要
約
政策動向
1.日本
日本では、平成 23 年度~27 年度までの 5 年間を計画期間とした中期計画である第 4
期科学技術基本計画(2011 年 8 月閣議決定) 1との整合性を保ちつつ、最近の状況変化
を織り込み、科学技術イノベーション政策の実現に向けて実行していく政策を取りまと
めた短期の行動プログラムを持つ科学技術イノベーション総合戦略が閣議決定(2013 年
本
編
6 月)された。
「科学技術イノベーション総合戦略」では、2030 年の我が国の将来のある
べき社会・経済の姿の実現を図るとともに、経済再生を強力に推進するため、科学技術
イノベーションが重点的に取り組むべき課題として 5 点が挙げられているが、その中に、
「国際社会の先駆けとなる健康長寿社会の実現」が挙げられている。
第
1
部
「国際社会の先駆けとなる健康長寿社会の実現」に関して、抗体医薬の関係する施策
として、経済産業省関連では「次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業」
が挙げられる。平成 27 年度の同事業は前年度と同額の要求がされている。
第
2
部
医薬品産業は、本来、日本が強みを持つ技術であるにもかかわらず、大幅な輸入超過
が続いている。とりわけ 2000 年以降バイオ医薬品が市場の多くを占めるようになるとと
もに、輸入超過の割合はますます大きくなっているのが現状である。今後、バイオシミ
ラーが医薬品において大きな位置を占めるようになるとバイオ医薬品の割合はますます
増えていくと予想される。経済産業省では、このような状況に対応するため、平成 25
第
3
部
年度より次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業を委託あるいは補助事業
として開始し、国内におけるバイオ医薬品、とりわけ抗体医薬の製造技術を結集し支援
することによって日本の医薬品の輸入超過の状態の解消を目指している 2。
本事業では、抗体医薬複合体や二重特異性抗体等を始めとする次世代バイオ医薬品等
第
4
部
の製造に対応するため、細胞培養によりタンパク質を生産する上流プロセスと、生産さ
れたタンパク質を精製し原薬とする下流プロセスを技術革新するとともに、これらをプ
ラットフォーム化することにより全体として最適化し、薬効が高く副作用の少ない次世
代抗体医薬等の高効率かつ革新的な製造技術に資する産業技術基盤の確立及びその製品
化・実用化を目指している。大学、研究所、民間企業が一体となった「次世代バイオ医
第
5
部
薬品製造技術研究組合(MAB)」が組織され、新しい抗体製造プラットフォームの構築に
向けて研究開発が進められている。
第
6
部
1
http://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/kihon4.html(2014.09.21 アクセス)
2
資
料
編
http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/bio/Yosan/26nenndoyosangaisan.pdf
(2014.09.27 アクセス)
- 14 -
目
次
図4
次世代バイオ医薬品製造技術研究組合(MAB)の概要
要
約
本
編
第
1
部
第
2
部
http://www.bio.tokushima-u.ac.jp/joi3cbrkm-588/?action=common_download_main&upload_id=2171(201
4.10.1 アクセス)
平成 27 年度の厚生労働省の概算要求の中で、「世界に先駆けた革新的医薬品・医療機
器等の実用化等」1は、抗体医薬に代表される新しい医薬品分野の技術開発において、欧
第
3
部
米に後れをとった現状に対応する施策であり、単に科学技術のみならず、臨床試験、承
認申請等を含めた医薬開発を国全体で支援しようとするものである。抗体医薬は厚生労
働科学研究費の中で大型の個別事業として取り上げられてはいないが、バイオ医薬品の
一つとして、あるいは疾患に対応する事業の中で多数取り上げられている。
第
4
部
文部科学省の重点分野のひとつ、
「ライフサイエンスによるイノベーション創出」にお
いてバイオ医薬が直接関連するテーマの 1 つが「革新的バイオ医薬品創出基盤技術開発
事業」2である。この事業は、我が国のバイオ医薬品の国際競争力を強化するため、バイ
オ医薬品の創出に関する先端的技術を有する機関に対して、製薬企業が抱える技術的課
第
5
部
題の解決や世界初の革新的な次世代技術の創出を委託するものである。また、技術振興
予算の柱である科研費の中には抗体医薬に関連するものが多数ある。更に比較的大型の
競争的助成金である独立行政法人科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業の
一つ、CREST においても抗体医薬に関するプロジェクトが採択されている。
1
第
6
部
http://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/15syokan/dl/02-01.pdf(2014.09.27 アクセス)
2
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2014/08/29/1351653_1.p
(2014.09.27 アクセス)
- 15 -
資
料
編
目
次
また、2014 年 5 月 23 日に「健康・医療戦略推進法」及び「独立行政法人日本医療研
究開発機構法」が成立したことにより、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)
が 2015 年 4 月 1 日に発足することとなった。その設立目的は「医療分野の研究開発にお
要
約
ける基礎から実用化までの一貫した研究開発の推進・成果の円滑な実用化及び医療分野
の研究開発のための環境の整備を総合的かつ効果的に行うため、健康・医療戦略推進本
部が作成する医療分野研究開発推進計画に基づき、医療分野の研究開発及びその環境の
整備の実施、助成等の業務を行うこと」としている。バイオ医薬の製造技術の開発補助
や 、 橋 渡 し 研 究 の 体 制 整 備 も 重 要 な 業 務 と し て 取 り 上 げ ら れ て お り 、「 基 礎 か ら
本
編
Translational」、
「Translational から臨床研究・実用化」というプロセスの一貫支援体
制の確立と支援により日本の医療研究の促進を目指している。
2.米国
第
1
部
バイオ医薬に関する米国政府の政策として、バイオシミラーに関する規制や保険制度、
医薬の承認プロセスは非常に重要な問題である。バイオシミラーについては、2015 年度
の予算教書でも制度改革の提案を行っている。オバマ政権は医療保険制度改革を通じ 10
年間で約 4,000 億ドルの医療費削減を目指しており、2015 年度の予算における提案の一
つがバイオシミラーの開発の促進である。米国でも医療費が財政を圧迫しており、高価
第
2
部
なバイオ医薬品の価格低減は大きな目標となっている。米国でのバイオ医薬品のデータ
保護期間は、現在 12 年間であり、その間後続品の承認は行われない。これを 7 年間に短
縮するという提案が予算案に含まれており、実現すれば、バイオシミラーの開発が加速
されると考えられる。当然ながらこのような後続品への代替促進策に対して先発品メー
カーは反発している 1。
第
3
部
研究開発の助成に関して米国における生命科学・生命医学研究振興の中心的機関であ
る National Institutes of Health(NIH)の 2014 年度の予算額は年間 300 億ドル(1
ドル 109 円換算で約 3 兆 2,700 億円)を予定しており、日本の研究開発予算全体の約 8
割に達している。また、2015 年度の米国予算教書において 2015 年度の NIH の予算額は
第
4
部
302 億ドルで、米国連邦政府の R&D 予算(1,340 億ドル)の 20%を超えるものとなって
いる。なお、ここでいう「年度」は米国の「会計年度」であり、前年 10 月 1 日~当年 9
月 30 日を指す。NIH では、外部(extramural)研究資金として全体の 83%を大学等に配
分する一方、11%を内部向け(intramural)研究資金として、傘下の 27 研究所・センタ
ーにおける研究に振り向けている。NIH の助成金の多くは各疾患分野の課題に対して行
第
5
部
われており、この中で多数の抗体医薬関連の助成金が拠出されている。
このほか、国防総省(Department of Defense)も NIH 同様に、7 割を外部に資金提供
し、3 割を軍所属研究所などでの内部研究に充てている 2。国防高等研究計画局(Defense
第
6
部
Advanced Research Projects Agency:DARPA)は 1958 年に創設された国防総省の内局の
1
2
資
料
編
http://www.phrma-jp.org/archives/pdf/140206_pressrelease.pdf(2014.10.01 アクセス)
米国 DARPA(国防高等研究計画局)の概要 科学技術振興機構研究開発戦略センター海外動向ユニット
北場 林(2013.06.26)、http://www.jst.go.jp/crds/pdf/2013/FU/US20130626.pdf
(2015.01.21 アクセス)
- 16 -
目
次
一つで、大きな革新をもたらす見込みのあるハイリスク・ハイペイオフ研究の実用化を
目指して研究助成を行っている。助成分野は多岐にわたっているが、例えば、2014 年 10
月に、DNA をベースにした感染症領域のモノクローナル抗体医薬の開発で、University of
Pennsylvania、Inovio Pharmaceuticals 及び MedImmune の三者に 1,220 万ドルの助成を
行うことを発表している。このプロジェクトでは、モノクローナル抗体をコードするプ
要
約
ラスミド DNA を、直接人体に投与し、体内で抗体を産生させることを目指している 1。
このように米国では複数のソースから、大学、企業等による抗体医薬に関連したプロ
ジェクトに助成が行われるとともに、政府機関そのものも開発を行っている。これらの
成果が、第4章、第5章で述べるように「アメリカ合衆国」名義の特許出願あるいは NIH
本
編
からの論文発表につながっている。
この他、バイオ医薬品製造の効率化を目指して、多くのバイオ医薬品の製造に用いら
れている CHO(Chinese Hamster Ovary)細胞の研究から迫ろうという動きもある。2006
年 3 月、米国化学工学会(AIChE)の Society for Biological Engineering(SBE)の後
第
1
部
援の下、大手製薬企業、バイオテクノロジー企業が参加し、参加企業のリソースを持ち
寄 り ゲ ノ ム 解 析 用 の ツ ー ル を 開 発 す る コ ン ソ ー シ ア ム ( Consortium for CHO Cell
Genomics)が設立された。研究は、Wei-Shou Hu(米国 University of Minnesota)及び
Miranda Yap(シンガポール Bioprocessing Technology Institute, Agency for Science,
Technology and Research)が主導した 2。このコンソーシアムの成果を基に、SBE は 2013
第
2
部
年 4 月、新たなコンソーシアムを立ち上げた。コンソーシアムの主査は引き続き Wei-Shou
Hu が務め、Bioprocessing Technology Institute とともにポストゲノムの研究を通じて、
CHO ゲノムの更なる解析を行い、細胞株の安定性を予測するツール、糖鎖パターンを制
御するツール、トランスクリプトーム分析ツールの開発を目指すとしている 3。
第
3
部
3.欧州
欧州連合(EU)では、科学分野の研究開発への財政的支援制度として、Framework
Programme が設定されており、2007 年 1 月に第 7 次計画(FP7)が開始され、9 領域を対
象としており総予算は 532 億ユーロであった。2014 年 1 月にその後継プログラムとして
第
4
部
Horizon 2020 が開始された。全体の予算は FP7 から大幅に増額し 770 億ユーロとなった。
他の予算が減額となる中、特別の取り扱いを受けている。
抗体あるいはバイオ医薬に関連する支援プロジェクトとして Horizon 2020 の Marie
Sklodowska-Curie Innovative Training Networks(ITN)の一環として「enhancing CHO
第
5
部
Systems Biology(eCHO Systems) 4」が進められている。
1
2
3
4
http://www.genengnews.com/gen-news-highlights/darpa-awards-12-2m-to-study-dna-mabs-forinfectious-disease/81250496/(2015.01.21 アクセス)
Agency for Science, Technology and Research プレスリリース(2006.03.03)及び AIChE プレスリリー
ス(2007.03)
Society for Biological Engineering プレスリリース(2013.04.23)
http://www.echo-systems.eu/home.html(2015.02.18 アクセス)
- 17 -
第
6
部
資
料
編
目
次
eCHO Systems では、近年明らかになってきたゲノム情報や CHO 細胞に関する多くのオ
ミックスデータ等の情報を統合し解析することにより合成生物学とシステム生物学のツ
ールを作成し、次世代の CHO プラットフォームを開発することである。また同時に、次
要
約
世代のバイオ医薬とバイオシミラー製造のための CHO 生産プラットフォームの構築を担
う企業研究者や技術者の育成を目指している。
このプログラムでは四つのアカデミック及び 15 の企業パートナーが協力し、バイオ医
薬の製造のために CHO 細胞プラットフォームの構築を目標として 15 名の PhD を育成しよ
本
編
うと計画している。2015 年 2 月現在、五つのパートナーがこのプロジェクトのための候
補者を採用している(Technical University of Denmark、University of Kent、Dublin
City University、acib GmbH、UCB Pharma SA)。
第
1
部
このような EU 全体としての研究開発支援の他、各国レベルで抗体医薬を含むバイオ医
薬産業振興の施策が取られている。例えば、アイルランドは税制での優遇措置、研究開
発補助金を始めとして、積極的に海外企業を誘致する政策をとっており、ライフサイエ
ンス分野はそのひとつである。アイルランド政府産業開発庁(IDA Ireland)は、アイル
ランドにおける研究開発やビジネスの有利さを訴える詳細な日本語のホームページを開
第
2
部
設するなど極めて積極的である 1。多くの大手製薬会社がアイルランドに拠点を持ってお
り、日本の武田薬品工業やアステラス製薬なども研究開発、生産拠点を置いている。
4.中国
中国では 2006 年に「国家中長期科学技術発展計画(2006~2020 年)」で 15 年間の科学
第
3
部
技術政策の方針を示しており、7 大戦略的振興産業に医薬、動植物、工業用微生物菌種
等の遺伝子資源データベース構築等を含めた「バイオ産業」が掲げられている。この計
画の中、現在は 2011 年 7 月に策定された「第 12 次五カ年計画」(2011-2015 年)が進
められているところである 2。また、バイオ医薬産業を発展させ技術移転を図るために、
2005 年には国家発展改革委員会により石家庄、深圳、長春で「バイオ産業基地」の建設
第
4
部
が承認されたが 3、その後数が増え、現在は 20 以上の基地ができている。
5.韓国
韓国では日本同様、科学技術基本法に基づいた科学技術基本計画を 5 年毎に策定して
いる。現在の第 3 次科学技術基本計画(2013 年~2017 年)は朴槿恵政権において 2013
第
5
部
年 7 月に策定された。ここでは五つの推進分野、20 の推進課題、及び 30 の国家戦略技
術がとりあげられている。
韓国の医薬品市場は国内規模が小さく、産業の発展のためには輸出に頼らざるを得な
第
6
部
い状況にある。また、とりわけ人口の少ない韓国での開発は容易ではない。国家として
1
2
3
資
料
編
http://www.idaireland.jp/news-media/publications/library-publications/ida-irelandpublications/IDA%20Ireland%20General%20Brochure.pdf(2014.09.29 アクセス)
http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/kihon5/2kai/siryo2-4.pdf(2014.09.29 アクセス)
http://www.jc-web.or.jp/JCobj/Cnt/katobio.pdf(2014.09.29 アクセス)
- 18 -
目
次
は次の成長牽引産業としてバイオ医薬品産業の中でもバイオ後続品をターゲットとした
戦略をとった。すなわち成長戦略の一つとしてバイオシミラー分野を定め、国内事業環
境の整備と企業を支援した。2020 年のバイオシミラー世界 1 位をめざし、2010 年に、
「バ
イオシミラーのグローバル輸出産業化戦略」を策定した。朴大統領は 2014 年 7 月、第
11 回国家科学技術諮問会議の席上、2020 年までにバイオ産業で世界 7 大国入りする青写
要
約
真を示すとともに、高い競争力を備えたバイオ企業 50 社を育成し、グローバルバイオ新
薬も 10 個以上発売するという目標を明らかにした。まず、2016 年までにバイオシミラ
ーの最大生産国となり、2020 年には輸出 10 兆ウォンを達成する。このように韓国政府
は、バイオシミラーの開発を支援する動きを見せている 1。現在では、セルトリオンやサ
ムスンバイオロジクスなどが、バイオシミラーの大規模な受託生産のための積極的な設
本
編
備投資を行い、日本を含めた海外にライセンスするまでになっている。
6.その他
(1)カナダ
カナダには多くの中小のバイオ医薬品企業が存在するが、カナダ政府は生命科学分
第
1
部
野を重視し、このような中小企業のために多様な支援を行っている。具体的には、ヘ
ルスケア分野開発支援の基金、臨床初期段階までの支援、国際的な企業との提携支援、
研究開発に関する優遇税制措置など多様な対策を行っている 2。連邦政府はそのような
中小企業支援のほかにも多くの産業政策をとっており、研究開発の助成金による支援
もその一つである。研究助成機関の一つである自然科学技術研究評議会(NSERC)は大
第
2
部
学の基礎研究を支援するとともに、産学連携を進めている。
その中の一つが抗体医薬の研究開発を支援する MabNet である。NSERC の製造部門は
分子生物学者、生化学者、細胞生物学者、化学工学者を集め、抗体の最適な生産法を
第
3
部
設計するネットワーク(MabNet)を組織し、毎年数百万ドルの資金を提供している。
MabNet はカナダの 8 大学、協賛企業や三つの政府機関から構成され、マニトバ大学の
コーディネーションセンターを中心に運営されている 3。MabNet の目的は、抗体の糖
鎖の機能的特性を理解するために、単一あるいは一定の制限された構造の糖鎖を持つ
抗体を生産するバイオプロセスを開発することであり、それにより、抗体のエフェク
第
4
部
ター機能をコントロールすることを目指している。
(2)シンガポール
シンガポール政府が 2000 年にバイオ医科学産業の発展に向けた重点的取組みを開
始して以来、経済開発庁(EDB)は科学技術研究所や保険省、及び大学教育施設等、公
第
5
部
的機関と緊密に連携して科学・臨床研究のインフラ整備を図ってきた。EDB は、バイ
オ医薬品、ビッグデータ、消費財、宇宙産業の 4 部門を新たな成長重点分野に位置付
けており、これら重点分野への投資が拡大している。それにより世界各地から企業や
優秀な人材をひきつけ、事業を発展させる強みとしている。
1
2
3
http://www.etoday.co.kr/news/section/newsview.php?idxno=951742(2014.08.31 アクセス)
http://www.ic.gc.ca/eic/site/lsg-pdsv.nsf/eng/h_hn01725.html (2014.10.30 アクセス)
http://mabnet.info/home/ (2014.10.30 アクセス)
- 19 -
第
6
部
資
料
編
目
次
現在、多くの大手企業を含めた製薬企業にとって重要な製造拠点となっている。生
物製剤や細胞療法など新しい分野への展開を行うために GlaxoSmithKline、Novartis、
Baxter、Lonza、Roche がシンガポールに生物製剤の主要施設を設立する考えであるこ
要
約
とを発表している。実際バイオ医薬品に関しては 2013 年 2 月には Novartis がバイオ
医薬製造プラントを着工(投資総額 5 億米ドル)、2013 年 3 月には米国 Amgen が初め
てアジアにバイオ医薬品の製造工場を着工した(投資総額 2 億米ドル)。更に、米
ThermoFisher Scientific は 2013 年 8 月、バイオ医薬品工場を開所した。現在、世界
のバイオ製薬企業トップ 10 社のうち 7 社と大手医療技術企業 25 社がシンガポールで
本
編
製造を行っている。シンガポールのバイオメディカル分野の生産額は 2000 年の 4800
億円から 2012 年にはおよそ 5 倍の約 2 兆 3200 億円に増大した 1。
(3)キューバ
第
1
部
2011 年にキューバの共産党によって承認された改革ガイドラインに従い、キューバ
政府は、バイオテクノロジー及び製薬産業における製造、医療、サービスの提供の販
売 に 関 わ る 38 社 を 含 む 新 ビ ジ ネ ス グ ル ー プ を 設 置 し た 。 新 し い グ ル ー プ は
BioCubaFarma として活動し、「ビジネスの原則によって運営される」としている。キ
ューバにおける科学と技術開発を通じて人々の健康を向上させ、輸出可能な商品やサ
第
2
部
ービスを作り出すことを目的としている。また、これは同時に多数の従業員の解雇を
含むキューバの社会主義モデルの改革であるとしている。
また 2014 年、キューバの International Centre for Genetic Engineering and
Biotechnology( ICGEB) は 、 ア ル ゼ ン チ ン の 科 学 技 術 研 究 の 国 民 評 議 会 ( Consejo
第
3
部
Nacional de Investigaciones Científicas y Técnicas:CONICET)と共同してバイオ
テクノロジーの研究開発センターを設立することを合意した。これは「より高いステ
ージ」の学術協力の一環であり、新規の製品と利益につながることを期待している 2。
彼らは同時に、新たにナノ材料の分野でも協力し、ナノテクノロジーを利用したがん、
B 型、C 型肝炎等の診断システムやワクチンや医薬を創製するための新しい方法を開発
第
4
部
する。また、キューバはマレーシアの lnno Biologics やタイの Siam Bioscience など
多数の外国企業と共同しバイオ医薬の開発を進めている 3 。BioCubaFarma グループの
予測によると、この部門の輸出は今後 5 年間で 50 億ドルに達すると発表した。
第
5
部
第
6
部
https://www.jetro.go.jp/world/gtir/2014/pdf/2014-sg.pdf (2014.10.30 アクセス)
http://lainfo.es/en/2014/11/28/cuba-and-argentina-signed-agreements-on-scientific-cooperation
/(2014.12.27 アクセス)
3
http://www.asean-j.net/21443/(2014.12.27 アクセス)
1
2
資
料
編
- 20 -
目
次
第2節
バイオシミラー医薬品の規制
バイオシミラー医薬品の普及と既存市場の代替に当たっては、各国の規制の方針によ
りそのスピードも変わってくると思われる。そこで、各国・地域のバイオシミラー医薬
品に関する規制の動向を調査した。
「バイオシミラー」の定義は、各国・地域あるいは機
関で若干異なる(表 11)。
表 11
要
約
バイオシミラーの定義
国・地域、機関
日本
米国
欧州
世界保健機関
定義
バイオ後続品とは、「国内で既に新有効成分含有医薬品として
承認されたバイオテクノロジー応用医薬品と同等/同質の品
質、安全性、有効性を有する医薬品として、異なる製造販売業
者により開発される医薬品」
バイオシミラーとは、「臨床的に不活性な成分に関して、微細な
差異があったとしても、対照医薬品に対して、高度な類似性を
示す生物 学的な製品 で、安全性 、純度 、効力 に関 して、対照
医薬品との間に臨床的に意味のある差異がない」
「バイオシミラーは既に承認された先発バイオ医薬品(対照医
薬 品)の活 性成 分 と同 種 の成 分を含 む生 物学 的医 薬 品 であ
る。バイオシミラーは、包括的な同等性試験に基づいた品質特
性、生物学的活性、安全性及び有効性の観点から、対照医薬
品との類似性(similarity)を示す。」
類似バイオ医薬品(similar biotherapeutic product)とは、「既
に認可を取得した対照バイオ医薬品に対して、品質 、安全性
及び有効性の点で類似しているバイオ医薬品」
出典
バイオ後続品の品質・安全性・有効性
確保のための指針(薬食審査発第
0304007 号、2009 年 3 月 4 日)
本
編
Biologics Price Competition and
Innovation Act of 2009
Guideline on Similar Biological
Medicinal Products(2014.10)
Guidelines on evaluation of similar
Biotherapeutic Products (SBPs),
Annex 2, Technical Report Series No.
977, 2009
1.日本の動向
第
1
部
第
2
部
バイオテクノロジー応用医薬品(バイオ医薬品)は、有効成分が分子量数千~数十万
のペプチドあるいは蛋白質であり、化学合成医薬品と異なり既存薬との有効成分の同一
性を実証することが困難である。一方、バイオ医薬品に関する製法及び解析技術等の進
歩にともない、諸外国で、バイオ医薬品と同等/同質の医薬品としてバイオ後続品の開
発が行われるようになったことを受け、厚生労働省では、厚生労働科学研究費補助金厚
第
3
部
生労働科学研究事業「バイオジェネリックの品質・有効性・安全性評価法に関する研究」
において検討を行った。その研究結果を踏まえ、2009 年 3 月 4 日に「バイオ後続品の承
認申請について(薬食審査発第 0304004 号)」が通知され、医薬品申請における新たな区
分として、
「バイオ後続品」が追加された。これによりバイオ後続品は、新有効成分含有
医薬品やジェネリック医薬品とは区別して取り扱われることとなった。
更に同日、
「バイオ後続品の品質・安全性・有効性確保のための指針(薬食発第 0304007
号)」が発出され、バイオ後続品の定義、対象範囲、及びバイオ後続品の品質・有効性・
安全性確保に関する考え方などが示された。バイオ後続品とは、
「国内で既に新有効成分
第
4
部
第
5
部
含有医薬品として承認されたバイオテクノロジー応用医薬品(先行バイオ医薬品)と同
等/同質の品質、安全性、有効性を有する医薬品として、異なる製造販売業者により開
発される医薬品」のことを指す。
第
6
部
2.米国の動向
米国ではオバマ政権下 2010 年 3 月、Patient Protection and Affordable Care Act
が成立した。本法の Title VII に Biologics Price Competition and Innovation Act(BPCI
- 21 -
資
料
編
目
次
Act)が含まれ、これにより Public Health Service Act(PHS Act)の Section 351 は
修正、subsection (k)が設けられ、FDA の承認を受けたバイオ医薬製品に対して“承認
を受けたバイオ医薬又は“は認を受けたバイオ医薬製品に対しであると実証された製品
要
約
に関する「簡略化承認(abbreviated licensure)」の道筋が規定された。BPCI Act では、
バイオシミラーの承認申請に必要な情報を規定するとともに、対照バイオ医薬品が最初
の承認を受けてから 12 年間は、バイオシミラー製品の承認を行わず、また同じく 4 年間
はバイオシミラー製品の承認申請を受理しないとしている。また、Department of Health
and Human Services 長官に対して、subsection (k)に基づく承認に関するガイダンスを
本
編
発行することを許諾した。その結果、幾つかのガイダンス(案)が発表されているが、
まだ正式に確定したものはない。
しかしながら、2015 年 1 月、FDA の Oncologic Drugs Advisory Committee は、Novartis
第
1
部
子会社である Sandoz が申請していた filgrastim(granulocyte colony-stimulating
factor アナログ)のバイオシミラー(対照薬は Amgen の NEUPOGEN、NEUPOGEN は Amgen
の登録商標である)の承認を推奨した 1。これを受け FDA は 2015 年 3 月 6 日、同製品を
正式に承認し、米国初のバイオシミラー医薬品が誕生した 2このように米国でも、バイオ
シミラーが流通する土台は次第に整いつつある。
第
2
部
3.欧州の動向
欧 州 で は 、 医 薬 製 品 の 承 認 に 関 す る 指 令 Directive 2001/83/EC of the European
Parliament and the Council of 6 November 2001 on the Community code relating to
medicinal products for human use がバイオシミラーの承認に関する法的根拠となって
第
3
部
いる(Article 10 (4))。また ANNEX I の Part II, Section 4 にバイオシミラーの承認
申請に必要な情報の概要を述べるとともに、EMA の発行するガイドラインに詳細が記載
される旨の記述がある。
4.中国の動向
第
4
部
中国では 2014 年 10 月 29 日、国家食品薬品監督管理総局の薬品審評中心(China Food
and Drug Administration, Center for Drug Evaluation)よりバイオシミラーに関する
ガ イ ド ラ イ ン 「 生 物 類 似 薬 研 発 評 価 技 術 指 導 原 則 ( Guidelines for research and
evaluation techniques for biosimilars)」案が発表された。本ガイドライン案では、
バイオシミラーは、
「品質、安全性及び効能に関して対照薬と類似し、同一のアミノ酸配
第
5
部
列を有する治療用生物学的製品であり、対照薬は中国で承認された先発バイオ医薬」と
なっている。このガイドラインは、2015 年 2 月 28 日、
「生物類似薬研発評価技術指導原
則(試行)」として発布された(国家食品薬品監督管理総局通告 2015 年第 7 号) 3。
第
6
部
資
料
編
1
Novartis プレスリリース(2015.01.07 付け、2015.01.08 アクセス)
http://www.novartis.com/newsroom/media-releases/en/2015/1885139.shtml
2
Novartis プレスリリース(2015.03.06 付け、2015.03.08 アクセス)
http://www.novartis.com/newsroom/media-releases/en/2015/1900097.shtml
3
http://www.sda.gov.cn/WS01/CL0087/115103.html(2015.03.03 アクセス)
- 22 -
目
次
5.韓国の動向
韓国ではバイオシミラーは、
「生物学的製剤等の品目許可・審査規定」の第 2 条(定義)
の 10.に、「同等生物医薬品」として、「すでに製造販売・輸入品目許可を受けた品目と
品質及び非臨床・臨床的同等性が立証された生物医薬品をいう」と定義され、承認の道
筋が確立している 1。
要
約
2009 年 9 月に Korea Food & Drug Administration( 現 Ministry of Food and Drug Safety)
より、Guidelines on the Evaluation of Biosimilar Products が発行されている(2014
年 4 月時点で、改訂作業中とのこと)。品目特異的ガイドラインとして、 2013 年に
Guideline on non-clinical and clinical evaluation of monoclonal antibody
本
編
biosimilar products が発行されている。
第
1
部
第
2
部
第
3
部
第
4
部
第
5
部
第
6
部
1
Biosimilar regulation in Republic of Korea and Asia-Pacific Economic Cooperation (APEC)
developments(Ministry of Food and Drug Safety, Jeewon Joung 発表資料、April 2014)
http://www.gpaconferences.com/presentations/bios14/5_Jeewon_Young.pdf (2014.09.08 アクセス)
- 23 -
資
料
編
目
次
第4章
抗体医薬の特許動向
本調査においては、抗体医薬製品及び抗体医薬に必要な要素技術を解析の対象としてい
要
約
るが、国際特許分類、抗体医薬に関連するキーワード等を組合せて検索を行い、抽出され
た特許文献を母集団とし、それらを「要素技術」、「応用産業」の該当する各技術区分に分
類した。技術俯瞰図の項で述べたが、抗体の取得、ハイブリドーマの作製、抗体のスクリ
ーニング法等、基礎色の強い技術については、解析の対象としていない。したがって、要
素技術については、今回の検索式では完全には抽出しきれないことに留意が必要である。
本
編
図5
今回の調査の解析対象
要素技術
第
1
部
第
2
部
C12N15/00
C12P21/08
主に、抗体の製造
や最適化の方法に
関する発明等
要
素
技
術
新規抗体
抗体の製造方法
抗体含有医薬で
用途に特徴
今回の調査範囲
G01N33/53
抗体を使用した診
断に関する発明等
A61K39/395
抗体を有効成分とし
て含む医薬品につ
いての発明
応用技術
第
4
部
第
5
部
第
6
部
資
料
編
【抗体最適化技術】
・抗原結合特性の最適化
・薬物動態の改善
・物理化学的性質の改善
・免疫原性の低減
・エフェクター機能の最適化 等
→抗体分子そのものの改変による
機能の最適化
【製剤技術】
・抗体溶液の安定性・溶解性向上
・凍結乾燥
・プレフィルド 等
→製剤上の工夫に関する技術
抗体含有医薬で
抗体自身や製法
に特徴
臨床試験の報告
第
3
部
【抗体探索技術】
・抗体作製方法
・抗体ライブラリー構築法
・スクリーニング法 等
→リード抗体の探索技術
C07K16/00
主に、新しい抗体に
関する発明等
- 24 -
応
用
産
業
今回の調査範囲
【新規な抗体分子】
・低分子化
・抗体様スカフォールド(非抗体骨格)
・抗体酵素
・多価抗体、二重特異性抗体
・抗体医薬複合体 等
→新たな構造の抗体分子
【製造技術】
・生産株の改良
・培養(培地、培養条件、リアクター等)
・その他の生産システム(植物、動物個
体、微生物、昆虫、鶏卵等)
・精製(クロマト担体、膜分離等)
・品質評価(抗体の性質解析技術等) 等
→製品として抗体医薬を製造する技術
遺伝子工学
生物物理学
タンパク工学
生物化学工学
muromonab-CD3 (1986); abciximab (1994); rituximab (1997); daclizumab (1997); basiliximab (1998);
infliximab (1998); palivizumab (1998); trastuzumab (1998); etanercept (1998); gemtuzumab ozogamicin
【抗体医薬製品】
(2000); alemtuzumab (2001); ibritumomab tiuxetan (2002); adalimumab (2002); iodine 131 Tositumomab
ヒトあるいは動物の「がん」、「自己免疫疾患、臓器移植時の拒絶」、「心臓血管疾患」、「消化
(2003); omalizumab (2003); efalizumab (2003); alefacept (2003); bevacizumab (2004); cetuximab (2004);
管疾患」、「眼疾患」、「感染症」、「筋骨格系疾患」、「神経疾患」、「呼吸器疾患」、「皮膚疾患」
natalizumab
(2004); abatacept (2005); ranibizumab (2006); panitumumab (2006); eculizumab (2007);
等、様々な疾患を対象とする、多様な抗原を標的とした「抗体医薬製品」。「ファースト・イン・ク
certolizumab
pegol (2008); rilonacept (2008); romiplostim (2008); catumaxomab (2009); golimumab
ラス(その分野で初めて)」や「ベスト・イン・クラス(その分野で最高の効能)」を目指した新薬の
(2009);
ustekinumab (2009); canakinumab (2009); ofatumumab (2009); tocilizumab (2010); denosumab
(2010);
brentuximab vedotin (2011); ipilimumab (2011); belimumab (2011); belatacept (2011); aflibercept
開発が行われている他、「バイオシミラー(後発バイオ医薬品)」抗体も登場してきている。
(2011); pertuzumab (2012); raxibacumab (2012); mogamulizumab (2012); trastuzumab emtansine (2013);
obinutuzumab (2013)
目
次
第1節
全体動向
出願先国別-出願人国籍別の出願件数を図 6 に示す。日米欧中韓いずれの国籍の出願
人も自国・地域が主要な出願先となっているが、日米欧韓国籍出願人の自国・地域への
出願が総件数の約 30%~40%であるのに対して、中国籍出願人は 80%以上で自国への出願
が中心であり、海外への出願件数が少ない。日米欧州国籍出願人の中国及び韓国への出
要
約
願は約 7%~9%であり、大きな差はなかった。
図6
出願先国別-出願人国籍別出願件数及び比率(出願年(優先権主張年):1971~2012 年)
出願先国
日米欧中韓
4,157
(100%)
17,204
(100%)
10,289
(100%)
日本
1,423
(34.2%)
3,021
(17.6%)
1,693
(16.5%)
米国
906
(21.8%)
6,461
(37.6%)
2,549
(24.8%)
欧州
中国
韓国
1,154
(27.8%)
5,280
(30.7%)
357
(8.6%)
1,322
(7.7%)
934
(9.1%)
317
(7.6%)
1,120
(6.5%)
796
(7.7%)
日本
米国
欧州
408
(100%) 1,953
(100%)
730
(100%)
87
(21.3%)
51
(7.0%)
41
(5.6%)
606
(83.0%)
7
(1.0%)
中国
出願人国籍
271
(13.9%)
45
(11.0%)
25
(3.4%)
4,317
(42.0%)
本
編
701
(35.9%)
63
(15.4%)
691
(35.4%)
37
(9.1%)
186
(9.5%)
176
(43.1%)
104
(5.3%)
韓国
第
1
部
その他
第
2
部
第
3
部
第
4
部
第
5
部
第
6
部
- 25 -
資
料
編
目
次
日米欧中韓への出願の出願先国別-出願人国籍別の出願件数収支を図 7 に示す。円の
大きさ、線の太さは件数に比例して表示してある。また線の色は出願人の国籍を示して
いる。米国籍出願人は積極的に外国出願を行い、いずれの国・地域においても最大のシ
要
約
ェアを占め、欧州及び日本国籍出願人がそれに次いでいる。中国及び韓国籍出願人は、
日米欧州国籍出願人に比べると、他国・地域への線が細く外国出願件数が少ない。
図7
出願先国別-出願人国籍別出願件数収支(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):
1971~2012 年)
本
編
日本への出願
6,478件
その他
271件
4.2%
日本国籍
1,423件
22.0%
欧州国籍
1,693件
26.1%
第
1
部
米国籍
3,021件
46.6%
米国への出願
10,755件
第
2
部
韓国籍
45件
0.7%
中国籍
25件
0.4%
韓国籍
87件
0.8%
その他
701件
6.5%
中国籍
51件
0.5%
3,021件
欧州への出願
11,546件
1,693件
日本国籍
906件
8.4%
25件
韓国籍
63件
0.5%
45件
中国籍
41件
0.4%
1,154件
906件
欧州国籍
4,317件
37.4%
2,549件
米国籍
6,461件
60.1%
41件
米国籍
5,280件
45.7%
87件
51件
63件
1,322件
357件
317件
第
4
部
中国籍 韓国籍
606件
37件
17.6%
1.1%
その他
186件
5.4%
934件
日本国籍
357件
10.4%
7件
37件
第
5
部
欧州国籍
934件
27.1%
米国籍
1,322件
38.4%
第
6
部
資
料
編
796件
1,120件
中国への出願
3,442件
日本国籍
1,154件
10.0%
5,280件
欧州国籍
2,549件
23.7%
第
3
部
その他
691件
6.0%
- 26 -
韓国籍
176件
中国籍 7.0%
7件
0.3%
欧州国籍
796件
31.6%
その他
104件
4.1% 日本国籍
317件
12.6%
米国籍
1,120件
44.4%
韓国への出願
2,520件
目
次
抗体医薬の出願人国籍別の出願状況を日米欧中韓への出願の公報単位での合計数で解
析を行った。出願年(優先権主張年)
:1971 年~2012 年で、日米欧中韓へ 34,741 件の特
許出願が行われている。出願人国籍別の出願件数を表 12 に示す。米国籍出願人が 17,204
件、次いで日本国籍出願人が 4,157 件、以下、ドイツ、イギリス、スイス、フランスと
続いているが、7 位以下は 1,000 件未満となっている。その他の国では、カナダ、オー
要
約
ストラリア、イスラエル、ロシア、キューバが比較的出願件数が多い。
表 12
出願人国籍別出願件数(日米欧中韓への出願 、出願年(優先権主張年):1971~2012 年)
出願人国籍
米国
日本
ドイツ
イギリス
スイス
フランス
中国
カナダ
デンマーク
韓国
ベルギー
イタリア
オーストラリア
オランダ
イスラエル
スウェーデン
ロシア
オーストリア
アイルランド
キューバ
台湾
スペイン
国・地域
米国
日本
欧州
欧州
欧州
欧州
中国
その他
欧州
韓国
欧州
欧州
その他
欧州
その他
欧州
その他
欧州
欧州
その他
その他
欧州
出願件数
17,204
4,157
2,326
2,137
2,022
1,316
730
635
467
408
407
403
399
368
324
289
213
155
155
140
98
71
出願人国籍
ノルウェー
フィンランド
インド
ルクセンブルク
シンガポール
ニュージーランド
メキシコ
アルゼンチン
スロヴェニア
南アフリカ
ブラジル
ポルトガル
トルコ
バルバドス
ギリシャ
タイ
エストニア
リトアニア
スロヴァキア
ルーマニア
マレーシア
不明
合計
国・地域
欧州
欧州
その他
欧州
その他
その他
その他
その他
欧州
その他
その他
欧州
欧州
その他
欧州
その他
欧州
欧州
欧州
欧州
その他
その他
出願件数
56
52
40
31
24
18
13
11
11
9
7
7
5
5
4
3
2
2
2
1
1
13
34,741
本
編
第
1
部
第
2
部
第
3
部
キューバについては、他の特許出願技術動向調査では、上位にあまり見られない国で
あるが、日本の第一三共が CIMAB(キューバ)で創製された抗ヒト EGFR 組換えヒト化モ
ノクローナル抗体(nimotuzumab)を導入、日本での開発を行う(2014 年 4 月に phase 3
臨床試験の中止を発表)など、研究開発力があることがうかがわれ、出願件数の多さが
それを裏付けている。
第
4
部
第
5
部
第
6
部
- 27 -
資
料
編
目
次
出願人国籍別の出願件数推移及び出願件数比率を図 8 に示す。1987 年に出願件数が一
挙に 500 件台に増加し、その後増加を続け 2002 年には 2,000 件を突破した。2003 年は
約 2,400 件以上となり、その後減少していたが、2009 年より再び増加する兆しを見せて
要
約
いる。米国籍出願人は 2002 年~2006 年にかけて年間 1,000 件以上の出願を行い、日本
国籍、欧州国籍出願人がそれに次いでいる。合計では米国籍出願人が約 50%、欧州国籍
出願人が約 30%、日本国籍出願人が 10%強のシェアを有している。
本
編
図 8
出願人国籍別出願件数推移及び出願件数比率(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張
年):1971~2012 年)
3,000
2,500
第
1
部
優先権主張
1971-1991年
2,000
出
願 1,500
件
数
1,000
627
579
500
第
2
部
4
6
9
4
29
19
24
34
83
108
147
567
157
1971 1972 1973 1974 1975 1976 1977 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991
優先権主張
1992-2012年
2,431
2,454
2,241
2,099
2,366
2,000
2,104
1,894
2,019
1,823
出
願 1,500
件
数
1,000
1,456
938
678
652
753
1,806
1,432
1,315
960
731
477
第
4
部
674
3,000
2,500
第
3
部
1
683
357
500
1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
出願年(優先権主張年)
出願人国籍
日本
第
5
部
第
6
部
米国
欧州
韓国籍
408件
1.2%
中国
その他
1,953件
5.6%
その他
合計
日本国籍
4,157件
12.0%
中国籍
730件
2.1%
欧州国籍
10,289件
29.6%
韓国
米国籍
17,204件
49.5%
合計
34,741 件
注:2011 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない
可能性がある。
資
料
編
- 28 -
目
次
日米欧中韓への出願における出願人国籍別-出願人属性 1別出願件数を示す(図 9)。
図9
出願人国籍別-出願人属性別出願件数比率(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年)
:
1971~2012 年)
a.日本国籍出願人
b.米国籍出願人
共同
出願
868件
20.9%
個人
66件
1.6%
個人
170件
1.0%
企業
2,896件
69.7%
大学
159件
3.8%
本
編
企業
11,929件
69.3%
大学
1,473件
8.6%
合計
4,157件
c.欧州国籍出願人
個人
198件
1.9%
共同
出願
2,434件
14.1%
研究
機関
1,198件
7.0%
研究
機関
168件
4.0%
合計
17,204件
共同
出願
1,703件
16.6%
共同
出願
80件
11.0%
企業
249件
34.1%
第
2
部
個人
89件
12.2%
企業
7,303件
71.0%
大学
383件
3.7%
研究
機関
169件
23.2%
合計
10,289件
第
3
部
大学
143件
19.6%
合計
730件
第
4
部
e.韓国籍出願人
共同
出願
78件
19.1%
第
5
部
企業
195件
47.8%
研究
機関
53件
13.0%
大学
81件
19.9%
1
第
1
部
d.中国籍出願人
研究
機関
702件
6.8%
個人
1件
0.2%
要
約
合計
408件
第
6
部
出願人の属性は「企業」、
「大学」、
「研究機関」
(大学以外の研究機関)、
「個人」、これらの「共同出願」
(企業と企業の
共同出願、企業と大学の共同出願等)とした。
- 29 -
資
料
編
目
次
共同出願詳細
要
約
本
編
第
1
部
企
企
企
企
大
大
大
研
研
個
企
大
企
企
企
-
企
大
研
個
大
研
個
研
個
個
研
研
大
大
大
- 個
- 個
- 研
- 個
- 研 - 個
合計
共同出願比率
日本国籍
出願人
米国籍
出願人
欧州国籍
出願人
中国籍
出願人
韓国籍
出願人
216
998
601
20
16
215
713
280
22
27
147
201
303
12
16
173
31
52
4
8
14
87
29
0
0
27
143
144
4
8
0
7
31
1
1
8
76
93
3
0
0
15
11
0
0
33
133
120
14
1
6
0
0
0
0
1
0
3
0
0
28
30
36
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
868
2,434
1,703
80
78
20.9%
14.1%
16.6%
11.0%
19.1%
「企」:企業、「大」:大学、「研」:研究機関、「個」:個人
日米欧中韓いずれの出願人国籍においても、企業が出願の中心となっているが、日米
欧州国籍出願人では企業の出願が約 70%、大学及び研究機関の出願が 10%未満であるのに
対して、中国及び韓国籍出願人は企業の出願が 50%未満で、大学及び研究機関からの出
第
2
部
願件数比率が高くなっている。共同出願の比率は、いずれの国籍でも約 10%~20%である
が、日本国籍出願人の共同出願比率は、欧米国籍出願人よりも高くなっている。共同出
願では、
「企業-企業」、
「企業-大学」が中心であるが、欧州国籍出願人では「企業-研
究機関」の比率が比較的高い。また欧米国籍出願人では、「大学-研究機関」の比率が、
日本国籍出願人より高くなっている。表では、共同出願中の比率が 10%を超える部分に
第
3
部
色づけした。
第
4
部
第
5
部
第
6
部
資
料
編
- 30 -
目
次
出願人が自国のみならず他国・地域にも出願している出願は、海外での権利確保を目
指したものであり、出願人にとって重要性の高いものと考えられる。抗体医薬に関する
出願のうち、日本、米国、欧州のいずれにも出願された特許出願を「三極コア出願」と
し、その件数を「パテントファミリー 1」単位で出願人国籍別に集計し、日米欧中韓への
出願総数(パテントファミリー単位)に対する三極コア出願件数の比率(三極コア比率)
要
約
を年代別に示した(表 13)。
表 13
出願人国籍別三極コア(日米欧)出願件数と比率の推移(パテントファミリー単位、出願
年(優先権主張年):1971~2012 年)
出願人国籍
日本国籍
米国籍
欧州国籍
中国籍
韓国籍
その他
合計
三極コア出願件数/パテントファミリー件数(三極コア比
率)
1971-1980
1981-1990
1991-2000
2001-2010
0/5
13/188
112/350
392/654
0.0%
6.9%
32.0%
59.9%
0/19
125/428
368/827
1,163/2,093
0.0%
29.2%
44.5%
55.6%
0/10
50/224
192/418
791/1,119
0.0%
22.3%
45.9%
70.7%
0/0
0/2
0/28
19/380
-
0.0%
0.0%
5.0%
0/0
0/0
5/10
25/88
-
-
50.0%
28.4%
0/1
4/31
39/102
131/315
0.0%
12.9%
38.2%
41.6%
0/35
192/873
716/1,735
2,521/4,649
0.0%
22.0%
41.3%
54.2%
合計(1971~
2012)
527/1,262
41.8%
1,705/3,656
46.6%
1,083/1,966
55.1%
21/608
3.5%
32/170
18.8%
177/489
36.2%
3,545/8,151
43.5%
注:2011 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で、全データを反映していない
可能性がある。
三極コア出願の行われている 3,545 件(パテントファミリー単位)のうち件数では、
米国籍出願人が 1,705 件(48.1%)で最も多く、欧州国籍出願人が 1,083 件(30.6%)、日
本国籍出願人が 527 件(14.9%)でそれに次いでいる。一方、韓国籍出願人は 32 件、中
本
編
第
1
部
第
2
部
第
3
部
国籍出願人は 21 件であり、まだ海外での権利確保に向けた動きが活発ではない。三極コ
ア出願件数の推移を見ると、米国籍出願人は 2002 年~2010 年で 100~150 件で、最も三
極コア出願件数が多く、日本国籍出願人は約 40 件であり横ばいで推移している、欧州国
籍出願人は、三極コア出願件数が増加傾向にある。
第
4
部
三極コア比率で見ると、日本国籍出願人は 1980 年代の約 7%から 2000 年代の約 60%へ
大きく伸びており、欧米国籍出願人とほぼ同レベルになっている。欧州国籍出願人は
2000 年代では約 70%と、日米欧中韓国籍出願人の中では最も三極コア比率が高い。中国
及び韓国籍出願人は、三極コア出願件数、比率ともまだ低いレベルにある。
第
5
部
第
6
部
1
「パテントファミリー」とは、同一の出願を基礎とする優先権又はその優先権の組合せを持つ特許出願の
グループを指し、一つの発明が日米欧の三極全てに出願された場合、それを合わせて三極コア出願 1 件と
カウントしている。
- 31 -
資
料
編
目
次
第2節
技術区分別動向調査
日米欧中韓への出願の技術区分別出願件数推移を図 10 に示す。
「 新規な抗体分子」、
「抗
体最適化技術」、
「抗体医薬製品」は 1980 年代半ばより、
「製剤技術」、
「製造技術」は 2000
要
約
年代に入って出願件数が増えている。
「 新規な抗体分子」、
「 抗体最適化技術」、
「 製剤技術」
については、それらに特徴のある個別の抗体医薬も含まれていることに注意が必要であ
る。応用面に重きを置き、抗体を医薬として製品化するのに必要な様々な技術の中でも
製品に近い技術、及びそのような技術が活用された抗体医薬製品に関わる出願を調査対
象としている。したがって、
「要素技術」については、今回の検索式では完全には抽出し
本
編
きれていないことに留意が必要である。
図 10
技術区分
第
1
部
第
5
部
第
6
部
資
料
編
2
抗体最適化技術
4
3
6
1
1
1
6
4
製造技術
2
2
2
6
1
4
製剤技術
39
32
19 21
10
43
2
応
用
産
業
150 195 175 142 130
14
1
1
4
10
92
110
2
2
4
19
11
14
155 275
6
6
15
17
16
1
1
3
抗体医薬製品
93
17
7
その他の要素技術
第
3
部
第
4
部
1
新規な抗体分子
要
素
技
術
第
2
部
技術区分別出願件推移(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):1971~2012 年)
1
34
16
14
14
56
104
57
90
305 298 392 235 239
その他の応用産業
1971 1972 1973 1974 1975 1976 1977 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991
技術区分
要
素
技
術
新規な抗体分子
123
94
94
抗体最適化技術
129
88
154 107 109 181 129 153 213 293 475 558 397 432 489 534 384 472 412 262
製剤技術
製造技術
その他の要素技術
応
用
産
業
抗体医薬製品
112 105 157 172 110 160 228 336 348 306 338 234 255 173 313 278 213
7
4
10
19
25
15
12
11
3
10
33
7
3
42
10
33
2
52
45
12
25
64
11
61
51
8
66
58
5
94
71
74
72
86
90
30
32
63
89
13
1
1
5
73
65
37
85
43
42
27
28 10
5
30
48
18
1,138
1,225
1,428
1,139
974
1,460
408 288 384 482 485 582 605 1,045
1,112
1,266
1,445
1,328
1,169
その他の応用産業
69
1
729 167
1
1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
出願年(優先権主張年)
注:本調査においては、応用面に重きを置き、抗体を医薬として製品化するのに必要な様々な技術の中で
も製品に近い技術、及びそのような技術が活用された抗体製品に関わる出願を調査対象としている。し
たがって、「要素技術」については、今回の検索式では完全には抽出しきれていないことに留意が必要
である。
- 32 -
目
次
技術区分別-出願人国籍別の出願件数を図 11 に示す。日米欧州国籍出願人の傾向は類
似しているが、日本国籍出願人は「新規な抗体分子」に関する出願の比率が欧米国籍出
願人に比べると半分以下となっている。中国及び韓国籍出願人は「抗体医薬製品」の占
める比率が、日米欧州国籍出願人よりも低くなっている。
図 11
要
約
技術区分別-出願人国籍別出願件数及び比率(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張
年):1971~2012 年)
技術区分
新規な抗体分子
290
(7.0%) 2,740
(15.9%)
888
(21.4%)
3,341
(19.4%)
抗体最適化技術
要
素
技
術
製剤技術
製造技術
その他の要素技術
抗体医薬製品
応
用
産
業
116
(2.8%)
1,731
(16.8%)
2,010
(19.5%)
482
(2.8%)
246
(2.4%)
165
(4.0%)
368
(2.1%)
17
(0.4%)
61
(0.4%)
2,681
(64.5%)
285
(2.8%)
10,211
(59.4%)
日本
米国
73
(17.9%)
215
(11.0%)
214
(29.3%)
105
(25.7%)
242
(12.4%)
39
(5.3%)
2
(0.5%)
34
(1.7%)
55
(7.5%)
7
(1.7%)
37
(1.9%)
121
(1.2%)
281
(38.5%)
5,889
(57.2%)
1
(0.2%)
6
(0.3%)
220
(53.9%)
1,419
(72.7%)
欧州
本
編
第
1
部
第
2
部
第
3
部
7
(0.1%)
1
(0.01%)
その他の応用産業
141
(19.3%)
中国
韓国
その他
出願人国籍
注:各出願人国籍ごとに合計 100%となる。各要素技術の出願には、その技術に特徴のある抗体医薬の出願
も含む。
第
4
部
第
5
部
第
6
部
- 33 -
資
料
編
目
次
抗体医薬製品の適応疾患別出願件数の推移を表 14 に示す。
表 14
要
約
抗体医薬製品の適応疾患別出願件数の推移(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張
年):1971~2010 年)
1971 年~1980 年
自己免 疫疾 患、臓器 移植
時の拒絶
がん
感染症
本
編
消化管疾患
心臓血管疾患
眼疾患
筋骨格系疾患
神経疾患
第
1
部
呼吸器疾患
皮膚疾患
その他の疾患
特定できず
出願総数
第
2
部
第
3
部
件数
比率
12
31.6%
9
23.7%
8
21.1%
2
5.3%
0
0.0%
0
0.0%
0
0.0%
0
0.0%
0
0.0%
0
0.0%
0
0.0%
13
34.2%
38
1981 年~1990 年
感染症
がん
その他の疾患
自 己 免 疫 疾 患 、臓 器 移 植
時の拒絶
心臓血管疾患
皮膚疾患
呼吸器疾患
消化管疾患
神経疾患
眼疾患
筋骨格系疾患
特定できず
出願総数
件数
比率
554
35.4%
433
27.7%
242
15.5%
132
8.4%
14
0.9%
10
0.6%
2
0.1%
1
0.1%
1
0.1%
0
0.0%
0
0.0%
243
15.5%
1,565
1991 年~2000 年
がん
自 己 免 疫 疾 患 、臓 器 移 植
時の拒絶
感染症
その他の疾患
神経疾患
皮膚疾患
心臓血管疾患
呼吸器疾患
消化管疾患
筋骨格系疾患
眼疾患
特定できず
出願総数
件数
比率
2,289
40.5%
957
16.9%
953
16.8%
864
15.3%
354
6.3%
201
3.6%
194
3.4%
136
2.4%
107
1.9%
101
1.8%
66
1.2%
459
8.1%
5,657
2001 年~2010 年
がん
感染症
自 己 免 疫 疾 患 、臓 器 移 植
時の拒絶
その他の疾患
神経疾患
筋骨格系疾患
皮膚疾患
消化管疾患
心臓血管疾患
呼吸器疾患
眼疾患
特定できず
出願総数
件数
比率
5,867
46.8%
1,768
14.1%
1,633
13.0%
1,227
9.8%
954
7.6%
521
4.2%
428
3.4%
384
3.1%
377
3.0%
365
2.9%
196
1.6%
1,962
15.6%
12,545
注:「その他の疾患」は、「がん」、「自己免疫疾患、臓器移植時の拒絶」、「心臓血管疾患」、「消化管疾患」、
「眼疾患」、
「感染症」、
「筋骨格系疾患」、
「神経疾患」、
「呼吸器疾患」、
「皮膚疾患」以外の血液疾患、糖
尿病等の疾患、「特定できず」は、上記の疾患分野の多数にまたがる広範な疾患が記載されている、あ
るいは適応疾患が特定できない場合を指す。一つの出願に対して、複数の適応疾患を付与している場合
があるので、各疾患の合計数は出願総数と一致せず、パーセンテージの合計も 100 とはならない。
いずれの年代でも、
「がん」、
「自己免疫疾患、臓器移植時の拒絶」及び「感染症」が主
要な適応となっているが、1970 年代~1980 年代にはほぼ出願の見られなかったそれ以外
の疾患に関しても、出願がなされるようになってきている。特に「神経疾患」は 1990
年代以降、「筋骨格系疾患」は 2000 年代以降、出願件数を大きく伸ばしている。
第
4
部
「第2章
抗体医薬の市場環境
第3節
抗体医薬の開発状況」において、日米欧の
いずれかにおいて承認された抗体医薬を示したが、現時点ではまだ、「がん」、関節リウ
マチ等の「自己免疫疾患、臓器移植時の拒絶」を対象とするものが大半で、「神経疾患」
等、それ以外の疾患分野は 1~3 品目にとどまっている(表 3)。しかしながら、現在開
発中の抗体医薬に目を転じると、「がん」及び「自己免疫疾患、臓器移植時の拒絶」は、
第
5
部
現在も活発に研究開発の行われている抗体医薬の中心的な適応疾患分野であるが、それ
以外の疾患に関しても、約 15~35 件の開発が行われており、まだ承認された製品のない
「神経疾患」に関しても活発に開発が行われていることが示されている(表 4)。
第
6
部
資
料
編
- 34 -
目
次
第3節
出願人別動向
日米欧中韓への出願件数が 100 件以上の出願人のランキングを表 15 に示す。今回の調
査対象期間(1971~2012 年)では、多くの製薬企業が買収・合併を行っている。そこで、
ランキングについては買収・合併した企業あるいは傘下入りしたグループ企業の出願件
数の総計(表 15 a 製薬企業グループ別)、買収したが解体せずに子会社として存続して
要
約
いる企業は独立して集計(表 15 b 独立子会社を分離)の二つを示す。いずれのランキ
ングにおいても上位は日米欧の出願人が占めているが、大半が大手の製薬企業あるいは
バイオテクノロジー企業であり、大学及び研究機関の占める比率は低い。
「アメリカ合衆
国」の出願は、Department of Health and Human Services 傘下の National Institutes
of Health、軍関係の研究機関等の成果に基づくものである。
表 15
出願人別出願件数上位ランキング(日米欧中韓への出願:全体
1971~2012 年)
a. 製薬企業グループ別
出願
件数
順位
本
編
出願年(優先権主張年):
出願人名称
出願
件数
順位
出願人名称
1
ホフマン・ラ・ロシュグループ(スイス)
4,598
26
ベーリンガー・インゲルハイム(ドイツ)
206
2
ファイザー(米国)
1,063
27
Board of Regents of University of Texas System(米国)
192
3
ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(米国)
1,051
27
リジェネロン・ファーマスーティカルズ(米国)
192
4
アムジェン(米国)
1,008
29
Pierre Fabre(フランス)
191
5
バイオジェン・アイデック(米国)
904
30
Genmab(デンマーク)
190
6
ノバルティスグループ(スイス)
829
31
イムノジェン(米国)
179
7
協和発酵キリン
696
32
オレグイリイチ・エプシテイン(ロシア)
171
8
ジョンソン・エンド・ジョンソングループ(米国)
642
33
CNRS(フランス)
161
9
アストラゼネカグループ(イギリス)
632
34
第一三共グループ
157
10
アボット・ラボラトリーズ(米国)
622
34
Scripps Research Institute(米国)
157
11
グラクソ・スミスクライン(イギリス)
596
36
Alexion Pharmaceuticals(米国)
151
12
イーライ・リリー(米国)
573
37
Novo Nordisk(デンマーク)
148
13
イムノメディックス(米国)
465
38
PDLバイオファーマ(米国)
142
14
ユーシービーファーマ(ベルギー)
446
39
シアトル・ジェネティックス(米国)
137
15
メルク・アンド・カンパニー(米国)
424
40
Ludwig Institute for Cancer Research(米国)
132
16
アメリカ合衆国(米国)
410
41
Centro de Immunologia Molecular(キューバ)
130
17
Regents of the University of California(米国)
375
42
Dana-Farber Cancer Institute(米国)
128
18
サノフィグループ(フランス)
334
43
LFB Biotechnologies(フランス)
125
19
武田薬品工業グループ
328
44
エーザイグループ
113
20
INSERM(フランス)
307
45
Xencor(米国)
109
21
バイエル・ヘルスケア(ドイツ)
294
46
Oncogen(米国)
108
22
メルクセローノ(ドイツ)
283
47
マクロジェニックス(米国)
104
23
アステラス製薬グループ
263
48
Duke University(米国)
100
24
Ganymed Pharmaceuticals(ドイツ)
236
48
Innate Pharma(フランス)
100
25
XOMA(米国)
207
48
MorphoSys(ドイツ)
100
第
1
部
第
2
部
第
3
部
第
4
部
第
5
部
第
6
部
- 35 -
資
料
編
目
次
b. 独立子会社を分離
順位
要
約
本
編
第
1
部
第
2
部
出願人名称
出願
件数
出願人名称
順位
出願
件数
1
ジェネンテック(ホフマン・ラ・ロシュ子会社)(米国)
2,458
27
武田薬品工業
197
2
ホフマン・ラ・ロシュ(スイス)
1,180
27
Board of Regents of University of Texas System(米国)
192
3
ファイザー(米国)
1,063
29
リジェネロン・ファーマスーティカルズ(米国)
192
4
ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(米国)
1,051
30
Pierre Fabre(フランス)
191
5
中外製薬(ホフマン・ラ・ロシュグループ)
1,021
31
Genmab(デンマーク)
190
6
アムジェン(米国)
1,008
32
Agensys(アステラス製薬子会社)(米国)
183
7
バイオジェン・アイデック(米国)
904
33
イムノジェン(米国)
179
8
ノバルティス(スイス)
773
34
オレグイリイチ・エプシテイン(ロシア)
171
9
協和発酵キリン
696
35
CNRS(フランス)
161
10
ジョンソン・エンド・ジョンソングループ(米国)
642
36
Scripps Research Institute(米国)
157
11
アボット・ラボラトリーズ(米国)
622
37
Alexion Pharmaceuticals(米国)
151
12
グラクソ・スミスクライン(イギリス)
596
38
Novo Nordisk(デンマーク)
148
13
イーライ・リリー(米国)
573
39
PDLバイオファーマ(米国)
142
14
メドイミュン(アストラゼネカ子会社 )(米国)
557
40
シアトル・ジェネティックス(米国)
137
15
イムノメディックス(米国)
465
41
第一三共
136
16
ユーシービーファーマ(ベルギー)
446
42
Ludwig Institute for Cancer Research(米国)
132
17
メルク・アンド・カンパニー(米国)
424
43
ミレニアム・ファーマスーティカルズ(武田薬品工業子会社)
131
18
アメリカ合衆国(米国)
410
44
Centro de Immunologia Molecular(キューバ)
130
19
Regents of the University of California(米国)
375
45
Dana-Farber Cancer Institute(米国)
128
20
INSERM(フランス)
307
46
LFB Biotechnologies(フランス)
125
21
バイエル・ヘルスケア(ドイツ)
294
47
Xencor(米国)
109
22
メルクセローノ(ドイツ)
283
48
Oncogen(米国)
108
23
サノフィ(フランス)
274
49
マクロジェニックス(米国)
104
24
Ganymed Pharmaceuticals(ドイツ)
236
50
Duke University(米国)
100
25
XOMA(米国)
207
50
Innate Pharma(フランス)
100
26
ベーリンガー・インゲルハイム(ドイツ)
206
50
MorphoSys(ドイツ)
100
上位はいずれも欧米の大手製薬企業であり、企業グループ別では、ホフマン・ラ・ロ
第
3
部
シュグループが 2 位のファイザーの 4 倍以上の出願件数を有し、ロシュ本体のほか、子
会社のジェネンテック、グループ企業の中外製薬も多数の出願を行っている。日本企業
では、中外製薬のほかは、協和発酵キリン、武田薬品工業、第一三共が上位にある。ア
ステラス製薬及びエーザイは、買収した子会社の寄与が大きいと考えられる。
第
4
部
第
5
部
第
6
部
資
料
編
- 36 -
目
次
「要素技術」、「応用産業」の主要な技術について、技術区分別の出願人別出願件数上
位ランキング(独立子会社を分離したランキング)を表 16 に示す。
表 16
技術区分別-出願人別出願件数上位ランキング(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主
張年):1971~2012 年、要素技術、応用産業)
要素技術-新規な抗体分子
順位
出願人名称
要素技術-抗体最適化技術
出願
件数
順位
出願人名称
出願
件数
1
ジェネンテック (ホフマン・ラ・ロシュ子会社)(米国)
377
1
ジェネンテック(ホフマン・ラ・ロシュ子会社)(米国)
434
2
イムノメディックス(米国)
216
2
中外製薬(ホフマン・ラ・ロシュグループ)
290
3
アムジェン(米国)
205
3
協和発酵キリン
258
4
ホフマン・ラ・ロシュ(スイス)
197
4
ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(米国)
251
5
ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(米国)
194
5
メドイミュン (アストラゼネカ子会社 )(米国)
231
6
グラクソ・スミスクライン(イギリス)
149
6
ユーシービーファーマ(ベルギー)
229
7
ファイザー(米国)
148
7
ホフマン・ラ・ロシュ(スイス)
226
8
アメリカ合衆国(米国)
101
8
ジョンソン・エンド・ジョンソングループ(米国)
225
9
Regents of the University of California(米国)
90
9
アムジェン(米国)
206
ユーシービーファーマ(ベルギー)
85
10
イーライ・リリー(米国)
202
10
要素技術-製剤技術
順位
出願人名称
要素技術-製造技術
出願
件数
順位
出願人名称
出願
件数
1
ジェネンテック(ホフマン・ラ・ロシュ子会社)(米国)
96
1
ジェネンテック(ホフマン・ラ・ロシュ子会社)(米国)
78
2
ホフマン・ラ・ロシュ(スイス)
89
2
アボット・ラボラトリーズ(米国)
67
3
メドイミュン (アストラゼネカ子会社 )(米国)
62
3
中外製薬(ホフマン・ラ・ロシュグループ)
66
4
中外製薬(ホフマン・ラ・ロシュグループ)
59
4
アムジェン(米国)
36
5
ファイザー(米国)
46
5
Wellcome Foundation(イギリス)
19
6
ノバルティス(スイス)
41
6
ファイザー(米国)
18
7
アムジェン(米国)
38
7
Symphogen(デンマーク)
17
7
ジョンソン・エンド・ジョンソングループ(米国)
38
8
CSL Behring(スイス)
16
9
メルクセローノ(ドイツ)
34
9
America Biogenetic Sciences(米国)
14
グラクソ・スミスクライン(イギリス)
21
9
バイオジェン・アイデック(米国)
14
10
応用産業-抗体医薬製品
順位
出願人名称
出願
件数
1
ジェネンテック(ホフマン・ラ・ロシュ子会社)(米国)
2
ファイザー(米国)
717
3
バイオジェン・アイデック(米国)
682
4
ホフマン・ラ・ロシュ(スイス)
601
5
ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(米国)
595
6
中外製薬(ホフマン・ラ・ロシュグループ)
544
7
ノバルティス(スイス)
533
8
アムジェン(米国)
523
9
協和発酵キリン
387
グラクソ・スミスクライン(イギリス)
373
10
要
約
1450
本
編
第
1
部
第
2
部
第
3
部
第
4
部
注:独立子会社を分離したランキングにて表示
「要素技術」、「応用産業」のいずれを見ても、ジェネンテックが首位にあるほか、ロ
シュ本体及び中外製薬も上位にあり、ホフマン・ラ・ロシュグループは技術ごとに総合
的に出願件数が多い。
「抗体最適化技術」では日本の中外製薬と協和発酵キリンが上位に
第
5
部
ある。
第
6
部
- 37 -
資
料
編
目
次
出願先国別の出願人別出願件数上位ランキングを表 17 に示す。いずれの国・地域にお
いてもジェネンテックが出願件数の首位にあり、それ以外でも日米欧州国籍出願人が上
位を占めている。中国及び韓国への出願で、中国あるいは韓国籍出願人は上位にランク
要
約
入りせず、多数の出願を行う有力な出願人が存在しないことがうかがわれる。
表 17
出願先国別出願人別出願件数上位ランキング( 出願年(優先権主張年):1971~2012 年)
日本への出願(6,478 件)
順
位
本
編
出願
件数
順
位
1
ジェネンテック(ホフマン・ラ・ロシュ子会社 )
(米国)
427
1
2
中外製薬(ホフマン・ラ・ロシュグループ)
257
2 ホフマン・ラ・ロシュ(スイス)
215
3
200
4
3
4
5
第
1
部
6
7
8
9
第
3
部
アムジェン(米国)
ホフマン・ラ・ロシュ(スイス)
ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(米国)
協和発酵キリン
ファイザー(米国)
ノバルティス(スイス)
出願
件数
順
位
ジェ ネ ン テ ッ ク(ホフマン・ラ・ロシ
ュ子会社)(米国)
865
1
ジェネンテック(ホフマン・ラ・ロ
シュ子会社)(米国)
661
328
2
ファイザー(米国)
353
327
3
ブ リ ス ト ル ・ マイ ヤ ー ズ ・ スク イ
ブ(米国)
348
322
4
ファイザー(米国)
ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(米
国)
アムジェン(米国)
5
267
6
アムジェン(米国)
5
179
6 バイオジェン・アイデック(米国)
171
ジョンソン・エンド・ジョンソングル
7
ープ(米国)
169
中外 製 薬(ホフマン・ラ・ロシュ グ ル
8
ープ)
223
9 協和発酵キリン
222
9
213
10
224
165
128
10
出願人
出願
件数
順
位
1
ジェネンテック(ホフマン・ラ・ロシュ子会社 )
(米国)
244
1
2
ホフマン・ラ・ロシュ(スイス)
183
2 ホフマン・ラ・ロシュ(スイス)
135
3
中外製薬(ホフマン・ラ・ロシュグループ)
106
3 中外製薬(ホフマン・ラ・ロシュグループ)
109
4
ファイザー(米国)
103
3 ファイザー(米国)
109
5
バイオジェン・アイデック(米国)
102
5 ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(米国)
94
6
ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(米国)
98
6 アムジェン(米国)
85
7
アボット・ラボラトリーズ(米国)
85
7 アボット・ラボラトリーズ(米国)
75
8
アムジェン(米国)
81
8 バイオジェン・アイデック(米国)
64
9
ノバルティス(スイス)
59
9 ノバルティス(スイス)
63
ジョンソン・エンド・ジ ョンソングループ(米
国)
57
中国への出願(3,442 件)
順
位
韓国への出願(2,520 件)
10
出願人
出願
件数
ジ ェ ネ ン テッ ク (ホ フ マン ・ ラ・ ロシ ュ 子 会
社)(米国)
261
グラクソ・スミスクライン(イギリス)
注:独立子会社を分離したランキングにて表示
第
4
部
第
5
部
第
6
部
- 38 -
ホフマン・ラ・ロシュ(スイス)
313
189
イムノメディックス(米国)
出願人
中外製薬(ホフマン・ラ・ロシュグ
ループ)
ジョンソン・エンド・ジ ョンソングループ(米
国)
10
資
料
編
欧州への出願(11,546 件)
出願人
バイオジェン・アイデック(米国)
10
第
2
部
米国への出願(10,755 件)
出願人
54
7
7
バイオジェン・アイデック(米国)
ノバルティス(スイス)
ユーシービーファーマ(ベルギー)
イーライ・リリー (米国)
出願
件数
334
326
314
306
306
221
210
目
次
第5章
抗体医薬の研究開発動向
1971 年~2013 年(発行年ベース)に世界で発表された抗体医薬に関する論文のうち、主
要雑誌に限定して抽出された 23,035 件の抄録を読み込み、調査対象とした技術範囲に含ま
れない文献を除去した結果、3,383 件が解析の対象となった。23,035 件の中には、疾患の
要
約
メカニズムとして抗体が関与する疾患、抗体を用いた診断、抗体医薬の臨床試験に関する
論文が多数含まれており、これらがノイズとして除去された。
この 3,383 件の論文の研究者(筆頭著者)所属機関国籍別の論文発表件数をまとめると
表 18 のようになった。米国籍が 1,516 件で 2 位の日本国籍(296 件)、3 位のドイツ国籍(259
本
編
件)、4 位のイギリス国籍(203 件)を大きく引き離している。5 位の中国以下は 200 件未
満であった。日米欧中韓以外の国ではカナダ、オーストラリア国籍が 50 件以上で上位に入
第
1
部
っている。
表 18
研究者(筆頭著者)所属機関国籍別論文発表件数(発行年:1971~2013 年)
研究者所属機関国籍
米国
日本
ドイツ
イギリス
中国
オランダ
フランス
カナダ
イタリア
スイス
オーストラリア
国・地域
米国
日本
欧州
欧州
中国
欧州
欧州
その他
欧州
欧州
その他
発表件数
1,516
296
259
203
126
110
90
89
79
76
67
研究者所属機関国籍
韓国
スウェーデン
イスラエル
オーストリア
ベルギー
スペイン
台湾
デンマーク
インド
中略
合計
国・地域
韓国
欧州
その他
欧州
欧州
欧州
その他
欧州
その他
発表件数
52
48
47
31
30
21
20
18
16
第
2
部
3,383
第
3
部
第
4
部
第
5
部
第
6
部
- 39 -
資
料
編
目
次
次に、論文発表件数推移及び比率を研究者所属機関の国籍別で見ると図 12 のようにな
る。1980 年代に入り論文数が増え始め、1990 年代は 100 件前後を維持している。2000
要
約
年代半ばより、再び論文が増え、最近は 200 件を超えている。通算では、米国籍研究機
関が約 45%、欧州国籍が約 30%、日本国籍が約 10%を占めている。
図 12
研究者(筆頭著者)所属機関国籍別論文発表件数推移と論文発表件数比率(発行年:1971
~2013 年)
250
本
編
200
論文発表年
1971-1991年
150
第
1
部
発
表
件
数
101
93
100
62
71
59
44
50
3
1
3
2
1
15
10
8
3
2
23
22
31
1971 1972 1973 1974 1975 1976 1977 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991
論文発表年
研究者所属機関国籍
日本
第
2
部
欧州
中国
韓国
その他
合計
250
200
第
3
部
米国
136
132
114
113
112
100
188
174
150
発
表
件
数
239
論文発表年
1992-2013年
94
101
101
104
106
88
99
103
111
120
143
174
155
122
50
第
4
部
第
5
部
第
6
部
資
料
編
1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
論文発表年
研究者所属機関国籍
日本
米国
欧州
韓国籍
52件
1.5%
その他
349件
10.3%
中国籍
126件
3.7%
中国
韓国
日本国籍
296件
8.7%
米国籍
1,516件
44.8%
欧州国籍
1,044件
30.9%
合計
3,383 件
- 40 -
その他
合計
目
次
第6章
総合分析
第1章に示した本調査の概要を基に、日本の技術競争力、産業競争力について分析を加
えるとともに、本調査を進めるに当たって設けられた委員会の助言、有識者へのヒアリン
グを踏まえた抗体医薬に関する提言を、以下の【提言1】、【提言2】、【提言3】にまとめ
要
約
た。
【分析】
・市場
抗体医薬は 2000 年代半ばより、売り上げを増している。2013 年の世界の医薬品売上ラ
本
編
ンキングでは上位 10 品目の内 6 品目が抗体医薬であり、上位 4 位までを抗体医薬が占める
など、医薬の世界で重要度が増している。
これまでに日米欧のいずれかで承認されている抗体医薬約 50 品目のうち、約 8 割は米国
企業により開発され、欧州企業が開発したのは 10 品目(米国企業との連携で開発した 2
第
1
部
品目を含む)、日本企業が開発したのは 3 品目であり、欧米の大手製薬企業に後れをとって
いる。現状では「がん」と「自己免疫疾患」が主要な適応疾患であるが、先進国ではこれ
らの疾患に罹患する患者数が増えると予測され、抗体医薬市場は今後も成長することが予
想される。
第
2
部
現在開発中の抗体医薬も、
「がん」と「自己免疫疾患」を適応疾患とするものが多く、こ
の 2 領域はこれからも開発の中心であるが、現在承認された抗体医薬の無い「神経疾患」
等、様々な領域への適応を目指して、研究開発が行われている。また、
「抗体医薬複合体」、
「二重特異性抗体」など新しいタイプの抗体医薬の開発も進みつつある。
第
3
部
海外の大手製薬企業は、従来の低分子化合物医薬を主力とするところが多いが、
Genentech を傘下に抱える Roche や、AstraZeneca、Bristol-Myers Squibb、バイオベンチ
ャーに発する Amgen では抗体医薬の比重が高い。日本企業では、中外製薬(Roche グルー
プ)及び協和発酵キリンは抗体医薬の比率が高いが、その他の企業では 10 品目未満である。
第
4
部
欧米の大手製薬企業も必ずしも自前で抗体医薬の開発を行ったわけではなく、その多く
が 2000 年代の半ばに抗体関連のベンチャー企業を買収している。日本の製薬企業も追随す
るように、それから数年遅れて同様の動きを見せている。
第
5
部
また、主要企業の抗体医薬に関連する提携・ライセンス等の動きを見ると、大手製薬企
業同士で、お互いの抗体医薬あるいは低分子医薬を持ち寄り、組み合わせ剤としての適性
を臨床試験で評価する動きが見られる。また、ヒト抗体、抗体-医薬複合体など、高機能
化技術を保有するベンチャー企業との提携も見られる。
- 41 -
第
6
部
資
料
編
目
次
・特許出願
抗体医薬に関する出願(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):1971 年~2012
要
約
年)は 34,741 件であった。米国籍出願人が約 50%のシェアを有し、欧州国籍が約 30%、日
本国籍が約 10%で、その他の国のシェアは低い。日本国籍出願人は米国籍出願人に次ぐ出
願を行っている。他国・地域への出願傾向も、日本国籍出願人と欧米国籍出願人で大きな
変化はない。米国籍出願人は積極的に外国出願を行い、いずれの国・地域においても最大
のシェアを占め、欧州及び日本国籍出願人がそれに次いでいる。中国及び韓国籍出願人は、
本
編
日米欧州国籍出願人に比べると、他国・地域への出願件数が少ない。また、日本国籍出願
人による三極コア出願に関しても、1980 年代は欧米国籍出願人と比べて低かったが、近年
はほぼ同レベルとなっている。また、出願人の属性で見ても、欧米国籍と大きな差は見ら
れなかったが、共同出願比率については、欧米国籍出願人よりも高かった。
第
1
部
技術区分別でみると、日本国籍出願人は「新規な抗体分子」に関する出願の比率が低く、
「二重特異性抗体」、「抗体医薬複合体」などに対する取り組みが後れている。
出願人別では、上位はいずれも欧米の大手製薬企業であり、企業グループ別では、F.
Hoffman-La Roche グループが 2 位のファイザーの4倍以上の出願件数を有し、Roche 本体
第
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の他、子会社のジェネンテック、グループ企業の中外製薬も多数の出願を行っている。日
本企業では、中外製薬の他は、協和発酵キリン、武田薬品工業、第一三共が上位にある。
・研究開発動向
第
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部
論文発表件数においても、日本は米国に次いで 2 位にあるが、米国との差は大きい。ま
た研究機関別論文発表件数においても、上位は米国の研究機関・企業が占め、日本の研究
機関・企業はトップ 10 にも入っていない。
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【提言1】
抗体医薬分野で欧米に先行された現状を踏まえ、欧米の流れと調和を取りながら独創的
な技術研究開発を行い、欧米先行の現状が今以上に進むことを阻止する努力が必要であ
る。その際には、我が国の強みである「ものづくり」を生かして、良質な製品を効率的
要
約
に製造するための要素技術の開発を行うとともに、それらをインテグレーション(統合)
することにより、日本ならではのきめの細かい生産システムを構築し、これを適切に運
用すべきである(ジャパンクオリティ)。さらに、少量多品種、個別化医療の流れを先
取りできるように研究開発を進めるほか、ユーザビリティーの改善を目指したデバイス
等の開発も進めるべきである。そして、これらを達成するためには、IT、機械工学、分
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析等の異分野の技術を保有する他業種と協業することが必要である。
現在、日米欧のいずれかにおいて承認されている抗体医薬約 50 品目のうち、約 8 割は
米国企業により開発され、欧州企業が開発した抗体医薬は 10 品目(米国企業との連携で
開発した 2 品目を含む)、日本発の抗体医薬はわずか 3 品目しかなく、欧米の製薬企業に
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部
後れをとっている。
日本企業も、抗体医薬を含むバイオ医薬の分野については、早々に遺伝子組換えを利
用した研究開発に参入したが、欧米のベンチャー企業より特許侵害の訴えを受けたこと
(例えば、Genentech 社による東洋紡医薬に対しての特許権侵害予防請求事件:平成 3
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年(ネ)第 2485 号)、低分子化合物医薬の開発に資源を集中したこともあり、1980 年代
のバイオ医薬勃興期には先端のポジションにあったとされる日本企業のバイオ医薬に対
する取り組みは後退した。一方、Genentech、Amgen、Biogen など欧米のベンチャー企業
はその後、ゲノム(1990 年代)~ポストゲノム(2000 年代)の流れの中で、多くのバイ
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部
オ医薬を上市し、開発の過程で知財を取得し、また動物細胞によるバイオ医薬製造のノ
ウハウを蓄積し、大きな発展を遂げていった。そして、欧米の大手製薬企業は、これら
のベンチャー企業との提携、企業買収(例えば Roche による Genentech の子会社化等)
を行うことにより、知財・ノウハウを取り込むことができた。日本企業が海外のベンチ
ャー企業の買収を行うようになったのは、バイオ医薬の市場拡大が明白になった 2000
第
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年代後半のことである。
また特許出願動向や研究開発動向をみると、米国が特許出願、論文発表とも突出して
おり、日本は米国に続く 2 位となっているが、その差は大きい。欧州の製薬企業も、
Genentech を買収した Roche の他、大手製薬企業が特許出願や市場において存在感を示
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している。
このように、現在、抗体医薬分野の研究開発面、市場面で欧米が強さを発揮している
という現状を踏まえ、先行する欧米の流れと調和の取れた技術開発を行うことが必要で
ある。今後の少量多品種、個別化医療の流れを先取りできるよう、既存抗体医薬の高機
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能化、適応疾患の拡大や、新規標的の探索に関する研究開発を進め、欧米との差がこれ
以上広がらないように努めるとともに、現在の抗体医薬の有する課題を解決できるよう
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な技術開発、そして、我が国の強みである「ものづくり」を生かして、良質な製品を効
率的に製造するための要素技術の開発を行うとともに、それらをインテグレーション(統
要
約
合)することにより、日本ならではのきめの細かい、我が国の特性をうまく利用した生
産システムを構築し、これを適切に運用すべきである(ジャパンクオリティ)。
さらに、今後の抗体医薬を含むバイオ医薬分野において見込まれる少量多品種、個別
化医療を実現するためには、IT、機械工学、分析技術、プロセス工学、生物工学といっ
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た少量の多品種を個別に効率よくかつ高度に生産するのに欠かせない様々な技術の集積
が必要であり、製薬企業 1 社でこれら全ての技術に対応することは事実上不可能である。
そこで、これら異分野の技術を保有する他業種との協業、すなわちオープン・イノベー
ションが重要となってくる点に留意しつつ技術開発を行う必要がある。
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(1)既存抗体医薬の高機能化・適応疾患の拡大や、新規標的の探索に関する研究開発
現在、抗体医薬の対象疾患は、主に癌や自己免疫疾患が多くを占めているが、抗体
医薬の開発が期待されている疾患は、未だ数多く存在する。そして、ターゲット枯渇
論が囁かれる中でも、未知の有用なターゲットが存在している可能性は大いにあり、
新たなターゲットを探索する必要がある。また、既存の抗体医薬について、今まで効
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果を有することが知られていなかった疾患に対しても著効を示すケース、さらに、同
じ疾患であっても特定の患者群に対しては、絶大な効力を有するケースが報告されつ
つある。さらに同じ標的であっても、高機能化を図ることにより、他社との差別化を
実現できる可能性もある。
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そこで、そのような研究の流れを受け、今後の抗体医薬の分野において見込まれる、
少量多品種、個別化医療の流れを先取りできるよう、新規の標的分子の探索を行いつ
つ、既存の抗体医薬については、高機能化、抗体医薬が浸透していない対象疾患への
適応の拡大、また、著効を示す患者群の特定等を積極的に実施していく必要がある。
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(2)既存の抗体医薬が対応できない課題に関する技術開発と患者の視点(ユーザビリ
ティー)にも配慮したデバイス等の開発
抗体医薬の基盤技術として、経口剤化、細胞内の標的への適用、特定の組織・細胞
へのデリバリー等が望まれている。
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また、調剤時の汚染や投与量過誤の防止といった安全上の観点、在宅での患者自身
による投与など患者の Quality of Life(QOL)の観点から、抗体医薬そのものだけで
なく、プレフィルドシリンジ、オートインジェクターといったそれぞれの医薬に応じ
た適用デバイス等の開発等、患者の視点(ユーザビリティー)も重要となる。
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これらの課題に対処するには、製剤に関する研究だけでなく、相互に関連する適用
デバイス等に関する研究も必須である。
そこで、抗体医薬の開発だけでなく、適用デバイスの開発等、他業種との協業も視
野に入れつつ、既存の抗体医薬の課題に対応した独創的な抗体医薬の基盤技術開発を
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進めていくとともに、開発された技術を統合して活用できるシステムを構築していく
必要がある。
一方で、現状は欧米に先行されている状況であること、また、医薬品の規制は、日
米欧の国際的なハーモナイゼーションの下、行われていることから、技術開発を行う
要
約
際には、「日本の独自性・独創性」を追求するあまり、現状の枠組みから大きく外れ、
国際的に採用されなくなるという「ガラパゴス化」に陥ることのないよう、欧米の動
向を踏まえた十分な配慮が必要である。
(3)日本ならではのきめの細かい生産システムの構築とその運用
本
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現在、我が国では、抗体医薬の製造において、生産株、培養、精製、品質評価とい
う重要なプロセスにおいて、個々の技術開発は行われており、特許出願動向をみても、
製造技術に関する出願の割合は欧米と同等であるものの、これらの技術開発が全体と
して生かされているとは言いがたい。欧米には、臨床開発の初期~後期~商業生産の
様々なフェーズに対応したサイズの製造能力を提供する多数の受託製造企業(CMO)が
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部
存在し、また各種のクロマト担体を取り揃え、顧客に最適なトータルな精製プロセス
を提案できる企業も存在する。
個々の技術開発に関し、日本ではバイオ医薬の製造分野に関連する研究(目的基礎
研究や応用研究)を行っている大学が少ないとの意見もあり、同分野の研究者層の厚
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みを増すような、大学の研究環境の基盤整備も求められている。
抗体医薬分野においては、今後はバイオシミラーといった後発医薬の登場が見込ま
れる一方で、また抗体医薬複合体、二重特異性抗体、新規な抗体様スカフォールドな
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ど次世代の革新的な技術の開発が進みつつある。
今後、日本が競争力を高めるためには、生産株、培養、精製、品質評価の各製造プ
ロセス分野においても、次世代抗体医薬に対応し得る技術開発を行うとともに、これ
らの製造プロセスをインテグレートし、パッケージ化を図っていく仕組みも必要とな
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る。
抗体医薬をはじめとするバイオ医薬分野は、日本ならではのきめの細かいものづく
り(ジャパンクオリティ)が活かされる分野でもあり、抗体医薬だけでなく次世代の
革新的なバイオ医薬の生産システムの構築とその適切な運用においても、その強みを
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活かすことができる仕組み作りが必要である。
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【提言2】
要
約
抗体医薬が今後広がりを見せるであろう市場を的確に分析・把握し、隙がなく無駄の無
い特許戦略を図るとともに、技術流出による不測の損害を避けるために、ノウハウとし
て保持すべき技術の選別、慎重な管理によって、世界において十分に通用する知的財産
戦略を展開すべきである。
本
編
抗体医薬の分野において、確実に利益を生み出すためには、市場の見込まれる国・地域
において適切に特許による技術の保護を図るとともに、公開を前提とする特許の馴染まな
い技術については、ノウハウの管理を適切に行うことにより、技術流出のリスクについて
も備える必要がある。また、抗体医薬の今後の潮流である少量多品種、個別化医療を実現
するためには、異分野の技術を保有する他業種との協業、すなわちオープン・イノベーシ
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ョンが必要であることから、特許自体の活用方法にも気を配りつつ、以下のような知的財
産戦略を展開すべきである。
(1)国際的な市場動向を見据えた隙がなく無駄のない特許戦略
現在は、抗体医薬をはじめとするバイオ医薬の主な市場は未だ欧米を中心とした先
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部
進国である。今後は、途上国の経済的地位の上昇や、バイオシミラーの登場、技術開
発による抗体医薬の価格の低下により、抗体医薬の市場は世界的に広がりを見せる可
能性もある反面、途上国等における市場展開のリスクは未知数であり、現在の段階に
おいて途上国を含めた全ての国に知財活動を積極的に展開すべきか否かはコストの観
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点から検討を要する。
そこで、抗体医薬の技術については、コストを回収し利益を生み出せる市場や各国
の制度・規制について慎重な分析を継続し、コスト回収を含め利益を見いだせる地域
において無駄のない特許戦略を進めていく必要がある。その際、どの技術をどこで特
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許化するかを考慮しなければならない。
(2)ノウハウとして保持すべき技術の適切な管理
抗体医薬をはじめとするバイオ医薬については、細胞の培養、精製等といった培養
者の感覚による所が大きい技術や、培地についての独自のレシピ等、特許で取得する
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よりも、ノウハウにより管理する方が、知財戦略的に有利である技術が存在する。
そして、近年、多くの技術分野において、ノウハウ等の技術流出が問題となってい
るところ、技術を世界的に展開する上で、技術開発の段階において、特許で保護する
ことが適切か、ノウハウとして秘匿することが適切であるかを見極め、ノウハウとし
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部
て秘匿するものについては、管理体制を厳重に整備し、意図しない技術流出により損
害を被らないよう対策を講じるべきである。
また、このように適切な管理を行い、ノウハウを秘匿しても、当該のノウハウにつ
いて他社が特許出願を行い、その実施に支障をきたすというリスクは存在する。常に
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業界の動向をウオッチし、ノウハウの扱いを見直すとともに、場合によっては一部を
意図的に公開して他社による特許化を防止するなど、リスクを最小限にするよう不断
の努力が必要である。
ノウハウの管理はこれまで、企業のみの課題として捉えられがちであったが、今後、
要
約
大学・研究機関と企業との共同研究の機会も増えていくことが考えられ、また、研究
開発の過程で、企業だけでなく大学・研究機関においてもノウハウの蓄積がさらに進
んでいく。企業に比べて大学・研究機関の人材(教員、学生)の流動性が高いことを
考慮すると、引き続き、これらの機関においてもノウハウに関する意識を高め、その
継承と管理を行っていく必要がある。
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【提言3】
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日本が国際的競争力を獲得するために、国内外の企業、研究機関、大学との連携の強化
や国内外からの技術導入を可能にする「目利き」人材を育成するとともに、公的機関が
リーダーシップを取りつつ基礎技術から産業応用に至る一気通貫の基盤整備を行うこ
とにより、我が国の企業、研究機関、大学における研究開発の活性化を図るべきである。
本
編
抗体医薬等のバイオ医薬で欧米に対して差を付けられている日本が、巻き返しを図るた
めには、研究開発の効率化と、さらなるイノベーションを促進することが必要であり、こ
れを支える人材の育成と基盤の整備を進めていく必要がある。
(1)大企業、ベンチャー、大学との連携強化、国内外の技術導入まで視野にいれた知
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財活動を支える「目利き」人材等の育成
抗体医薬分野において、我が国が、欧米に対して劣位に立たされた原因の一つとし
て、産業構造的にみて、我が国ではバイオベンチャーや大学に散在する創薬シーズを
大手製薬会社が開発の段階から取り込むという流れを構築できなかったことが挙げら
れる。我が国において、抗体医薬の活発な技術開発を促進させるために、企業と大学・
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研究機関との連携を進めていく必要がある。
特許出願動向をみると、日本における企業と大学・研究機関との共同出願の割合は、
欧米よりも多く、産学連携が進んでいないわけではない。しかし、基礎研究に対する
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幅広い支援、製造・臨床に近い研究に対する戦略的な支援といった活動によって生ま
れるであろう大学・研究機関発の知財をさらに活用するためには、知財を使う側のニ
ーズと知財を有する側の権利とのバランスを取りつつ、研究開発成果の事業化に向け
た戦略に基づいた方向性を示せるような仕組み作りも必要となろう。
第
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国内外の大学・研究機関と企業との連携について、大学・研究機関によっては、国
内外いずれにおいても、企業からみて共同研究等の連携がしやすいところと連携しに
くいところがあるとの意見もある。我が国の大学・研究機関での研究開発成果が事業
化されやすいような知的財産の管理等の仕組みも構築していく必要がある。
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技術分野によって、国内以外からも技術導入を図った方が、我が国の企業にとって、
開発コスト等の観点から有利になる場合には、技術導入を検討することも必要となる。
一方で、技術導入においては、契約の際は技術シーズを提供する側が有利となりがち
であるという意見もある。
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今後、国内外の有望な技術シーズを積極的に導入していくためには、海外の企業に
後れを取らないように国内外の研究開発動向の情報収集体制を構築するとともに、有
望な技術シーズをコストの安価なうちに取得できる目利き人材の育成、国際的な知財
活動を可能にする専門人材、契約を有利に進めるための専門人材等の育成が必要であ
る。
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また、そのような「目利き」人材等を育成するためには、幅広い技術的知識・経験
と知財やビジネスに関する知識・経験を併せ持つ人材を育成することが重要である。
これまで、人材育成は企業の中で OJT(on the job training)の形で行われてきたが、
技術の細分化・専門化が進む中で、必ずしも対応できなくなってきており、人材育成
の基盤整備は、企業にとっても大学にとっても共通する課題となってきている。
要
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そこで、人材育成について産学が連携して一体となって取り組み、日本のバイオ医
薬産業が発展していくよう対応していく必要がある。さらに、提言2で述べたノウハ
ウの管理なども、経験のある産業界から大学・研究機関への講師の派遣、大学側の実
務者の企業への派遣等により、ノウハウ管理のスキルを移転していくことも一案であ
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ろう。また、人材育成を担う大学等において、幅広い技術的知識と知財やビジネスに
関する知識を併せ持つ人材を育成するための教育組織、プログラムの整備がなされる
べきである。
(2)基礎・開発・製造・臨床の一気通貫の基盤整備
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抗体医薬が上市に至るまでには、基礎研究、製品開発、製造プロセス、そして、臨
床応用といったステージが存在するが、現在、我が国では、個々のステージにおいて
優れた技術が存在するものの、これらの強みを最終的な抗体医薬の生産に対して、十
分に活用できているとは言いがたい。また、一度承認を受けた製造法の製法変更を行
うのは容易ではないという医薬品ならではの事情から、革新的な技術ほど実用化に時
第
2
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間がかかるという現状も考慮しつつ、製造技術の開発においては、開発期間を短くす
る努力が不可欠である。そこで、基礎・開発・製造・臨床の一気通貫の基盤の整備を
進めることによって、我が国の技術的な強みを十分に生かし、かつ開発期間やコスト
等も削減された効率の良い抗体医薬開発が行える仕組み作りを目指すべきである。
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また、今後の流れと予想される少量多品種、個別化医療の流れを見据えた研究開発
のためには、新規標的分子の探索等の基礎研究を幅広く行う一方で、具体的な抗体医
薬製品やその適用のための機器の開発等の応用研究をバランスよく行うことが必要で
あり、資金の適切な配分を行い、次世代のバイオ医薬の波に後れない研究基盤整備を
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欠かすことができない。
このような状況の中、2015 年 4 月には、「健康・医療戦略推進本部」の下、我が国
の医療分野の研究開発及びその環境整備の実施・助成について中核的な役割を担う国
立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が設立される。AMED には、基礎・探索
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~臨床~製造の研究開発の成果が、スムーズに実用化につながるよう、人材に限らず、
情報、資金及び制度等、連携強化のためのあらゆる基盤作りが期待される。
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