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第5章 活用促進に関する検討

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第5章 活用促進に関する検討
第5章 活用促進に関する検討
5.1 現状分析
「宮崎県木質バイオマス活用ビジョン(平成 16 年度)
」の段階で、今後の木質バイオマスの活
用に向けて、県が推進する普及の方向性が示されている(下表参照)。これを礎にした上で、現在
の木質バイオマスや CO2 排出量取引を巡る新たな動きも踏まえて、宮崎県内における木質バイオ
マスの活用促進に向けて考えられるモデルを複数提示する。
5.1.1
宮崎県が推進する普及の方向性(平成 16 年度ビジョン)
以下で、平成 16 年度に宮崎県が取りまとめた「宮崎県木質バイオマス活用ビジョン」の中
に記載された、宮崎県が推進する普及の方向性について再掲する。
【第 6 章
活用の推進に関する方策
第2節
県による活用推進施策】
1 木質バイオマスの率先活用
(1) 木質バイオマスエネルギー設備の導入
県所管施設の新設、あるいは設備更新にあたって、木質焚ボイラー等の木質バイオ
マスを活用したエネルギー設備の導入を検討し、可能性に応じて導入を図る。
(2) 木質バイオマス製品の活用
公共工事や公共施設の整備・改修、備品購入等にあたって、木質バイオマス、特に
間伐材由来製品を積極的に活用する。
(3) 環境負荷低減製品の認定
県における環境への負荷の低減に資する製品等(環境物品等)の調達を推進するた
めに「(仮)環境物品等調達方針」を定めるとともに、県産間伐材や再生木材等を利用し
た製品(家具、内装材、建設資材等)
、木質バイオマスエネルギーを利用する設備等を
調達物品として選定する。
(4) 活用推進に向けた体制の構築
本ビジョンの推進を図るために必要な、県庁内各部局が連携した推進組織を設置する。
2 情報提供・普及啓発
広報紙、インターネットホームページ等の活用、講演会等の開催により、市町村、
事業者、県民に対する情報発信を行う。
116
3 導入の支援
(1) 財政的支援
木質バイオマスの活用に対して、率先した取組を行う事業者、市町村等に対して財政的
支援(補助、融資等)を検討する。
<支援対象例>
・バイオマスの高効率収集・輸送等に係る機器
(高性能林業機械、移動式チッパー等)の購入
・製材工場等における木質エネルギー活用施設の導入
・その他バイオマスエネルギー利用設備・機器の導入
・バイオマス利用技術の研究・開発
・県が保有する高性能林業機械等の低額貸出し
(2) 税制優遇
バイオマス利活用施設に対する税制優遇措置を検討する(例:固定資産税の特別償却、
法人事業税の減免等)
4 技術開発等の推進
(1) 研究体制の構築
県内の民間事業者、大学等研究機関と「木材利用技術センター」をはじめとする県の
試験研究機関が連携した木質バイオマスの活用に関する技術研究・開発体制を構築する。
(2) 県に適した利用技術の開発
上記研究開発体制によって、宮崎県の特性に見合った活用技術の開発を行う。
<研究開発例>
・資格不要の木質焚温水ボイラーを利用した木材乾燥機
・小型木質焚ボイラーを利用した冷暖房システム
・小型高効率のガス化コージェネレーション
・農業分野等の他産業と連携した木質バイオマスの総合的利活用システム
117
5.1.2 新たな木質バイオマスの活用促進、ビジネス展開手法の概要
平成 16 年度調査の時点では、宮崎県内の地域特性に合わせた技術開発や、公共施設でのモ
デル的率先導入といった、特殊用途や先導的用途としての木質バイオマスの活用を念頭にお
いたものであった。
実証・モデル施設
特殊用途
市場拡大
許容価格帯
コストダウン
公共施設等
先導的用途 市場拡大
コストダウン
一般給湯,冷暖房
民生一般用
地域熱供給
図表 5-1
森林バイオマスの段階的普及の流れ
資料:「地方自治体における森林バイオマスエネルギー活用推進政策の調査研究」平成 16 年
山口県
今後、新たに木質バイオマス普及のための手法を取り入れていく場合には、民間事業者へ
の展開を目指したビジネスモデルを提示していくことが重要であると考えられる。実際に国
内では、木質バイオマスの活用事例は公共施設だけでなく民間の温浴施設や工場へも普及の
兆しを見せており、県の施策としてもこの部分に注力していくことが地域の木質バイオマス
資源の利活用に際して求められることになる。
以下では、木質バイオマスの普及を図るにあたって有効と考えられる手法を取り入れた、
新たなビジネス展開について検討を行った。
(1) 木質バイオマス導入拡大に適応可能な手法
木質バイオマス利用を促すために有効であると考えられる手法として、熱エネルギーサー
ビス、排出量取引及びカーボン・オフセットを対象に、その概要と特徴をまとめた。
(各制度
の詳しい内容については、資料編の資料‐14(P55)を参照)。
また、国内排出量取引とカーボン・オフセットについては、様々な制度があるため、各制
度間の関連を図表 5-2 に示す。
① 熱エネルギーサービス(サービサイジング)
「サービサイジング(Servicizing)
」とは、「これまで製品として販売していたものをサー
ビス化して提供する」ことを意味する。木質バイオマスボイラー等の導入に当たっては、未
だ手続き等が煩雑であることが課題となっており、これまでそうした木質バイオマスに触れ
118
たことがない一般の事業体にとっては二の足を踏む要因になっている。その解決手法がこの
「サービサイジング」であり、包括的なサービスを提供することによって木質バイオマス利
用者側における機器導入時の障害を取り除き、木質バイオマスの普及を期待することができ
る。サービサイジングの事業形態としてはレンタル・リースや ESCO 等の形態があるが、利
用者の経済性や利便性を高めることが可能となり、またサービス提供者側にとっても従来型
のサービスとの差別化を図ることができるという利点を持っている。
② 国内排出量取引
排出量取引とは、各国、各企業に温室効果ガスの排出削減目標を定め、目標以上の温室効
果ガスの削減に成功した場合や、反対に目標数値に足りなかった場合に、目標の超過分と不
足分を国や企業間で取り引きできる仕組みである。取り引きが可能となることによって、費
用対効果の高い対策の実施を推進し、社会全体の対策コストを低減することが期待され、京
都メカニズムのひとつの手法としても導入されている。
日本国内においては、2008 年 10 月に政府が二酸化炭素の国内排出量取引を行う国内統合
市場の施行的実施を発表し、この市場で軸となる制度として「試行排出量取引スキーム」の
運用を開始した。また、これに合わせ経済産業省が主導する「国内クレジット制度」も創設
された。環境省においては、これらに先行して「自主参加型国内排出量取引制度(JVETS)」
を平成 17 年度から実施しており、平成 21 年度から本制度への参加者は「試行排出量取引ス
キーム」の参加者としても位置付けられている。
このように、国内における排出量取引制度は、現在様々な制度が並立して存在しており、
参加する場合にはその特徴等を理解したうえで、自らの取組みに適した制度での排出量取引
に参加することが必要と考えられる。
③ カーボン・オフセット
カーボン・オフセットとは、自らが排出する温室効果ガスのうち削減困難な部分の全部又
は一部を他の場所での排出削減・吸収量で埋め合わせる(オフセットする)ことをいう。京
都議定書の排出削減の目標達成の枠組みとは別に、企業や個人等が自らの排出を自主的に相
殺する自主的な取組であるため制度による活動の制限がないところがメリットである。
これまで、温室効果ガスの排出分の埋め合わせには、京都クレジットのほか、グリーン電
力証書やボランタリー・クレジット(国連や政府が承認したクレジットではなく第三者審査
期間等が認証したもの等)がその埋め合わせに使われていたが、カーボン・オフセットの信
頼性向上を図るため、環境省によりオフセット・クレジット制度が創設され運用が開始され
ている。
119
排出量取引
【 凡例 】
国内
クレジットの名称
国内統合市場(試行的実施)
京都メカニズム
市場・制度の名称
他制度でも取引可
能なクレジット
試行排出量取引スキーム
京都クレジット
排出枠(EXT)
国内クレジット制度
国内クレジット
自主参加型国内排出量取引
制度(JVETS)
※ jCER に変換
排出枠(JPA)
ボランタリー市場
カーボンオフセット
山村再生
支援センター
ボランタリー・クレジット(VER)
・計画作成、
・プロジェクト登
録申請、
・クレジット認証・
発行申請に係る支援
・審査料助成
国内
オフセット・クレジット制度
オフセット・クレジット(J-VER)
図表 5-2
グリーン電力証書
排出量取引及びカーボンオフセットに係る関連制度の位置づけ
120
5.1.3
ビジネス展開手法の具体案
(1) 新たな手法を取り入れる際のビジネスモデル
現状において木質バイオマスの導入時には、導入までの手順が化石燃料に比較して煩雑であ
ることや、初期投資が化石燃料に比べて高額となるといった障害が存在する。そこで、これら
を取り除くような新たな手法を活用しビジネスとして展開していくことにより、県内での木質
バイオマスの普及促進に資する様々な業種での新規事業の立ち上げが考えられる。そこで、
5.1.2 で取り上げた手法を活用した場合に考えられる、参入可能性の期待できる業種とそのビジ
ネスモデルについて、検討を行った。
① リースを活用したビジネスモデル
リース会社が新たに木質バイオマスボイラー等の取扱いを行うか、または設備メーカー(木
質バイオマスボイラーメーカー及び取扱代理店)やプラント建設業がリース事業を開始する
ことが考えられる。現状において木質バイオマスボイラーは化石燃料焚きボイラーよりも高
額であるが、長期的に見て投資回収年数が化石燃料焚きボイラーよりも有利となる場合には、
リース事業によって、ユーザーにとっての障害となっている初期投資の負担が軽減される。
設備メーカー(代理店含む)
リース会社
 機器の設置
木質バイオマス
プラント建設業
設備メンテナンス業者
木質バイオマス製造業
図表 5-3
 メンテナンス
木質バイオマス
販売
リース事業に係る業種とビジネスモデル
② ESCO を活用したビジネスモデル
ESCO 事業者が設備メーカー(代理店含む)、プラント建設業、設備工事・メンテナンス業
者及び木質バイオマス製造事業者と連携・協議しながら、木質バイオマス利用者の省エネ診
断、省エネ計画の作成、省エネの検証を行う。なお、設備メーカー等が新規事業として自ら
ESCO 事業者となり、ESCO 事業を行うことも考えられる。
木質バイオマスボイラーは、現状では化石燃料焚きボイラー等に比べ導入までの手続きが
煩雑であり、ユーザー側での情報不足や手間等のために検討対象から外れてしまうことがあ
る。そのため、ESCO 事業により包括的なサービスを提供することで、ユーザーにとっての
利便性を高め普及を促すことが期待できる。
ただし、ESCO の場合は ESCO 事業者がエネルギー削減額から報酬を得るしくみであり、
この報酬はエネルギー価格に影響を受けるため、その影響を十分考慮して省エネ計画を立案
することが重要である。
121
 計画の作成
 省エネの検証
ESCO 事業者
木質バイオマス
 連携
設備メーカー(代理店含む)
 機器の設置
プラント建設業
設備工事・メンテナンス業者
これら事業者が
ESCO 事業者と
なることも有
木質バイオマス製造業
図表 5-4
 メンテナンス
木質バイオマス
販売
ESCO 事業に係る業種とビジネスモデル
【実施事例:有限会社古谷工務店】
(a) 事業関係者とその役割
有限会社古谷工務店(岡山県)が ESCO 事業者となり、県内の宿泊施設(ゆのごう美春
閣)において木質ペレットボイラー導入による ESCO 事業を行っている。この概要につい
て以下で説明する。
図表 5-5
岡山県内におけるペレットボイラーESCO 事業:事業関係者とその役割
(b) 事業スキーム
この事業スキームは、ESCO 事業者である古谷工務店が設備導入施設であるゆのごう美
春閣(下電ホテル)に対し包括的な省エネルギーサービスを提供し、顧客メリットとなっ
た燃料費削減分から報酬を得る仕組みである。ペレットボイラーは古谷工務店が購入し、
その減価償却費とペレット代金をゆのごう美春閣からの報酬で賄う形である。
122
燃
料
◆顧客のメリット
◆省エネルギーに
関する包括的な
サービスの提供
◆金利支払い
などに振り分け。
従
来
の
燃
料
費
用
ペ
レ
ッ
ト
購
入
費
用
費
(
省エネルギー
サービス提供
下
電
ホ
テ
ル
図表 5-6
従
来
の
燃
料
費
省エネ
コスト削減
下
電
ホ
テ
ル
)
古
谷
工
務
店
事業スキーム
(c) サービス料金の決定フロー
サービス料金の決定フローは、図表 5-7 のとおりである。
H19年度のエネルギー消費
(電力・A重油)
計画時点のエネルギー価格
計画時点の運転管理費
ベースライン
ベースライン等の調整
実削減額
削減保証額
削減予定額
実削減額>
削減予定額
エネルギー消費実績
実削減額<
削減保証額
判定
判定
実削減額≧
削減保証額
サービス料金の支払いと
ペナルティの徴収
実削減額≦
削減予定額
サービス料金の支払い
図表 5-7 サービス料金の決定フロー
123
サービス料金と
ボーナスの支払い
(d) 木質バイオマスボイラー導入施設の概要
ゆのごう美春閣では、従来は冷暖房及び給湯・加温用に A 重油焚きボイラーを使用して
いたが、冷暖房用に従来設備を残した状態で、給湯・加温用として木質バイオマスボイラ
ー1 台を新たに導入した。
図表 5-8
従来システム及び新たに導入した木質バイオマスボイラーシステム
図表 5-9
導入設備の概要
項 目
内
容
導入機器
木質バイオマスボイラー(50 万 kcal/h×1 台)
(給湯・加温用)
A重油ボイラー(80 万 kcal/h×1 台、50 万 kcal/h×1 台)
イニシャルコスト
36,982,050 円(申請時提示額) ※木質バイオマスボイラー分
A重油使用量
470,000L/年(給湯・加温、冷暖房、平成 19 年度実績)
利用した助成制度
平成 20 年度 省エネルギー対策導入促進事業費補助金
(事業場等省エネルギー支援サービス導入事業)
(e) 木質バイオマスによるESCO事業の成立要因
木質バイオマス利用による ESCO 事業を成立させるためには、以下の点をクリアし、実
施事業者と ESCO 事業者が相互にメリットのある条件を成立させることが必要である。
 木質バイオマス燃料の安定供給
 従来システムと比較して低価格での燃料調達・利用
 化石燃料の価格に事業収支は大きく影響を受けるため、化石燃料価格に連動したエネル
ギー供給サービスの構築及び価格変動に対応できる ESCO 契約を締結する必要がある
(f) 事業実施時の確認・検討事項安定的な燃料の確保と運搬コストの低減

事業収支の詳細な検討(ボイラー導入規模の選定など)と助成制度の活用

対象施設の立地や施設の設備等

実施事業者とエネルギー供給者間でのメンテナンス範囲に係る十分な検討
124
③ 国内排出量取引を活用したビジネスモデル
木質バイオマス利用者は、自らが削減した二酸化炭素排出量の認証を受けクレジットを取
得することで、クレジットの売却収入を得ることができる。クレジットの取引価格にもよる
が、木質バイオマス利用の経済性を向上させることに寄与する。
また、国内排出量取引制度に参加するにあたっては、排出削減計画を検討し申請書の作成
やモニタリング、検証等の手続きを行っていく必要があるが、これらの手続きの知識を持っ
たコンサルタントが、手続き等を支援することが考えられる。
各国内排出量取引制度では、審査機関による審査が求められるものが多くなっている。そ
こで、各制度において定められた審査機関となる一定の手続きを経ることで、この審査業務
を引き受ける審査機関としてビジネスを行うことも考えられる。
さらに、発行されたクレジットの取引にあたっては、買い手を探しマッチングさせたり取
引代行や流通を行ったりといった業務も近年増えている。これは、金融商品と同様にクレジ
ットを取り扱うような金融機関や証券会社及びプロバイダが担っていることが多く、これら
を地域で展開するビジネスも考えられる。
木質バイオマス製造事
 木質バイオマスの販売
 原材料の提供
製材業
コンサルタント
 申請手続、モ
ニタリング、
検証等支援
 素材生産
森林組合・素材生産業
審査機関
 審査
木質バイオマス利用
者
・工場
・業務施設
・農業用ハウス
等
 クレジットの売却
金融機関・プロバイダ
 クレジットの買い手とのマッチング
 クレジットの取引・流通
図表 5-10
国内排出量取引に係る業種とビジネスモデル
④ カーボン・オフセットを活用したビジネスモデル
主な流れは国内排出量取引制度を活用した場合と同じである。ただし、カーボン・オフセ
ットは基本的に自主的な(ボランタリーな)取り組みであるため、活動が制限されずにさら
に拡大したビジネス展開が考えられる。例えば、CO2 を排出している企業や、製品の製造・
利用過程において CO2 を排出する製品を取り扱う企業では、排出している CO2 の埋め合わ
せや CO2 のクレジットを購入することによる企業姿勢のアピールだけでなく、カーボン・オ
フセット商品等の企画・販売を通じ商品の差別化を図る取り組みも考えられる。
また、木質バイオマスボイラー機器の導入によるものだけでなく、木質バイオマスの原材
料を供給する森林の管理が進めば森林管理プロジェクトもクレジット発行の対象となるため、
森林組合や素材生産業者及び森づくり体験等を行う団体等でもクレジットの取得及び売却が
可能となり、ビジネスに係る事業者がさらに拡大されることが考えられる。
125
また、旅行会社や宿泊施設等の旅行関連業にとっては、森づくりや木質バイオマスボイラ
ーの実際の導入場所を体験するようなツアー等のビジネスの可能性も考えられる。なお、こ
のときの参加者の移動等に係る CO2 の排出分についても、金融機関等が販売するクレジット
を購入することで埋め合わせを行うことも期待できる。
 木質バイオマスの販売
木質バイオマス製造事
 原材料の提供
 申請手続、モ
ニタリング、
検証等支援
製材業
コンサルタント
 申請手続、モ
ニタリング、
検証等支援
 素材生産
 審査
森林組合・素材生産業
 審査
審査機関
木質バイオマス利
用者
・工場
・業務施設
・農業用ハウス
等
 クレジットの売却
 森林整備
 森づくり体験、見学、
ツアー等
 クレジットの買い手とのマッチング
金融機関・プロバイダ
旅行会社
宿泊施設
参 加 者 が
排出する
CO2 の 埋
め合わせ
 クレジットの取引・流通
CO2 排出企業等
 自社の排出する CO2
の埋め合わせ
図表 5-11
メーカー・小売業
 カーボンオフセット
商品の企画・販売
CO2 排出量取引及びカーボンオフセットに係る産業とビジネスモデル
宮崎県の地域特性を生かした、CO2 排出量取引及びカーボンオフセットに係る取組の考慮例
としては県内の農業用ハウスにおける事例を想定した。これについては後述 (5.3.3(3)(P170))
する。
国内における CO2 排出量取引及びカーボンオフセットについての事例を以下に 2 例示す。
【実施事例①:高知県木質資源エネルギー活用プロジェクト】
先述したように環境省では、2008 年 11 月から、国内向けオフセット・クレジット(J-VER)
制度を創設し、気候変動対策認証センターが認証手続きを実施しています。その申請受付第
1 号が「高知県木質資源エネルギー活用プロジェクト」である。
このプロジェクトでは、ボイラー燃料を化石燃料から未利用の林地残材に代替することで
排出削減を達成しクレジットとして認証を受けている。
126
【資料:環境省「オフセット・クレジット(J-VER)」パンフレット
(http://www.env.go.jp/earth/ondanka/mechanism/carbon_offset.html)】
図表 5-12
オフセット・クレジット制度
申請受付第 1 号プロジェクト
(高知県木質資源エネルギー活用プロジェクト)
【実施事例②:新潟県カーボン・オフセット制度】
(a) 概要
新潟県では、地球温暖化防止行動を促進する仕組みとして、自治体としては国内初の新
潟県カーボン・オフセット制度の構築に取り組むこととし、2008 年度、佐渡市と連携して
モデル事業を実施している。(国内の自治体としては初めての取り組み)
このモデル事業は、商品の販売等を通じて得られた資金をトキの森などの森林吸収源対
策に投資することにより、商品の利用等に伴う CO2 をオフセット(相殺)するものである。
127
【資料:新潟県ホームページ、新潟県カーボン・オフセットモデル事業の仕組みと実施状況より】
図表 5-13
佐渡市における「県版カーボン・オフセット」モデル事業の概要
これまでに、以下の企業等から以下のようなモデル事業への参加の意向が示されており、
新潟県では、平成20年6月からこれら企業等の参加申し込みを受けて、その取組内容や森林
のCO2吸収量等の認証を行っている。
今後、新潟県としては、モデル事業の取組を検証し、さらに多くの企業等の参加を呼び
かけ、制度構築とともに、本格的な取組に向けた検討を進めていくこととしている。
(参加意向の企業、団体:9)
●レジ袋の製造・廃棄に伴う CO2 オフセット(有料レジ袋)
・(株)パワーズフジミ(佐渡市内の店舗)
・アークランドサカモト(株)(ホームセンタームサシ)(佐渡市内の店舗)
・(株)コメリ(佐渡市内の店舗)
・(株)ひらせいホームセンター(佐渡市内の店舗)
・JAエーコープ佐渡
●自動車の運行に伴う CO2 オフセット
・新潟交通佐渡(株)(貸切タクシープラン、定期観光バス(1コース))
・(社)佐渡観光協会(貸切タクシープラン)
●印刷物の製造に伴う C02オフセット
・(株)第一印刷所
●イベント会場の電力使用に伴う C02オフセット
・アース・セレブレーション実行委員会
128
5.2 まとめ
宮崎県内では、既に木質バイオマス製造及び施設での木質バイオマス利用が展開されており、
これらの取り組みにおける課題を解決しつつ、この取り組みを軸に県内での木質バイオマス普
及を促すビジネス展開が考えられる。木質バイオマス関連ビジネスへの関わりが期待できる業
種と展開のイメージについて、図表 5-14 に示す。
現状
木質バイオマス運送業
需要量・
販売エリ
アの拡大
リース・ESCO
国内排出量
取引
カーボン・
オフセット
図表 5-14
他地域で
の取り組
みへ波及
製材業・木材チップ業
需要
拡大時
新たな導入拡大
手法の活用
木質バイオマス製造業
木質バイオマス
設備メーカー・代理店
小売業
プラント建設業
流通業
設備メンテナンス業
建築業
リース会社
森林組合・
素材生産業
旅行会社・
宿泊施設
木質バイオマス
造
製材業・木材チップ業
ESCO 事業者
コンサルタント
審査機関
金融機関・プロバイダ
メーカー・小売業
CO2 排出企業等
木質バイオマス利用者 ・工場
・業務施設
・農業用ハウス
等
木質バイオマス関連ビジネスへの関わりが期待できる業種と展開のイメージ
現状では、木質バイオマス製造事業においては需要量の拡大を図りながら製造原価を低減し、
需要量拡大に対応できる木質バイオマス原材料の確保と安定的な生産・配送ができる体制を整
えていくことが必要となっている。また、様々な原料を利用することになる場合には品質の確
保を図ることが必要となっている。
なお、原料の収集から木質バイオマスの製造、販売については、運搬距離がコストに影響を
与えるため、可能な限り近隣地域内で展開することが有利である。従って、地域での展開から
遠距離となる地域での需要がある程度見込まれる場合には、原料収集から木質バイオマス製
造・販売(配送)の取り組みを新たに立ち上げる可能性も考えられる。
これらの課題に対応しながら、需要量や販売エリアが拡大してきた時点においては、配送を
専門に行う運送業や、商社的な役割を担う流通業、販売部門を担う小売業、設備関連業や建築
業などとの連携と分業により効率的な事業運営を行っていくことが考えられる。これらの業務
には、これまでこのような事業を行っていた業種が新たに木質バイオマスを取り扱うことで展
開ができる。
129
5.3 モデル施設への導入試算例
「木質バイオマスの需要動向の現状アンケート結果をもとにした需給動向に関するシミュレー
ション」で抽出した、木質バイオマスボイラーの導入が有望と想定される施設について、導入規
模を最適化した上で経済性の試算を行った。
シミュレーションを行うにあたり、事前にヒアリングを行い、既存ボイラーの運転状況など、
熱需要パターンを調べたのち、ボイラーの特性を考慮し、最適なボイラー規模を決定した。その
後、ボイラー導入のための初期設備投資費等をふまえ、投資回収年数などの採算性を試算した。
図表 5-15
木質バイオマスボイラーの最適導入規模の選定
概念図
経済性の評価基準としては、単なる集積性の評価にとどまらず、施設が小規模であったり、
木質バイオマス燃料の調達コストが高価であったりといった理由で赤字収支が見込まれる場合
の最適規模の選定基準としては、
「CO2 削減コスト」という考え方を用いた。このコストは CO2
排出削減という観点から CO2 を 1t 排出削減するのに要するコストとして以下の式によって求
められるものである。
木質バイオマス利用システムを導入することで新たに増加する費用
CO2 排出削減コスト
=
木質バイオマス利用システムに変更することで削減できる CO2 排出量
130
【木質バイオマス利用システム導入最適規模の選定シミュレーションフロー】
2 燃料価格
・単価(円/kg)
1 基本システムの規模
・価格
・維持管理費
・ユーティリティ
3 施設の利用パターン
4 基本システムの規模
設備導入規模を変動させた場合の年間収支シミュレーシ
ョン及び CO2 排出削減量の算出
排出
CO2 CO2
排出
年間
削減コスト
削減コスト
収支
(円/kW)
(円/kW)
(円/CO2-t)
木質バイオマス利用システム導入規模別のコストシミュレーション例
kW
h/y
導入機器対既設規模割合
%
導入想定出力
設備費増分
稼動時平均負荷率
年間木質燃料消費量
kW
千円
%
930
4,095
5
10
20
50
80
93
186
465
744
930
3,443
4,436
5,955
6,675
6,869
100.0
89.0
50.4
23.7
16.2
46
81
92
109
118
123
千円
158
207
266
357
400
412
固定資産税増分
千円
35
45
58
78
88
90
燃料費増分
千円
483
860
974
1,149
1,250
1,301
維持管理費増分
千円
200
200
200
133
333
267
CO 2 削減費合計
千円
876
1,312
1,499
1,717
2,072
2,070
化石燃料削減量
L/y
21,513
38,295
43,371
51,130
55,633
57,908
年間 CO 2 削減量
CO 2 排出削減コスト
kg-CO 2 /L
木質燃料入手コストの低
減化によりシフト
13.5
t/y
減価償却費増分
CO 2 排出係数(化石燃料)
2.71
t-CO 2/y
58
104
118
139
151
157
円/t-CO 2
15,026
12,645
12,754
12,395
13,741
13,193
最適規模
導入規模(kW)
森林エネルギー
導入規模(kW)
累積
収支
(円)
15,500
15,000
CO2 排出削減コストから見て、
465kW が最適規模と判断
14,500
14,000
13,500
13,000
年度
12,500
12,000
47
図表 5-16
6 選定した規模のシステムに
おいて、原料入手コストによる
感度分析を実施
100
47
2,634
CO2排出削減コスト(円/t-CO2)
既存設備規模
年間稼動時間
5 最適な導入設備規模(トータル
コストの最小点)を選定
93
186
465
ペレットボイラー規模(kW)
744
930
本調査における木質バイオマスボイラーの経済性試算の流れ
試算対象として、熱需要が一定規模以上ある温泉施設、食品加工工場、農業用ハウスの 3 パタ
ーンを選定した。
131
5.3.1 県内温泉施設
シミュレーション結果
調査対象とした温泉施設は都城市に位置している。年間約 29 万人の方が訪れており、温泉の
加温・給湯のための温水ボイラーを利用し、A 重油を消費している。
チップボイラー・ペレットボイラーそれぞれの導入を想定し、試算した。ボイラー導入にあ
たり、まず最適な規模の検討に必要な現状の施設概要および既存熱源概要を整理した。
対象施設の概要、熱源概要について以下に示す。
図表 5-17
項
施設概要
目
内
容
①
施設分類
温泉施設
②
所在地
③
敷地面積
9,986.80m2
④
建屋面積
2,754.69m2
⑤
延床面積
3,996.31m2
⑥
建屋の構造
宮崎県都城市
鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造、
地下 1 階地上 3 階建て
(建物構造、階数、特徴など)
⑦
使用用途
⑧
施設外観
公衆浴場、旅館、老人福祉センター
図表 5-18
項
既存熱源概要
目
内
容
重油ボイラー 3 台
ボイラーの種類と台数
設置年
平成 15 年
総出力
1,259,040kcal/h(488kW×3 台)
35L/h
定格燃料消費量
ボイラー用途
給湯・加温
A 重油
使用燃料
27,000 L/年
年間燃料消費量
約 349 日
年間ボイラー稼動日数
18.5(3 時半~21 時)
設備稼働時間(時間/日)
132
(1) 熱需要特性の把握
現状の熱需要特性を把握するため、既存ボイラーの運転状況についてヒアリング調査を行っ
た。現在の熱需要に係る各事項について以下に示す。
図表 5-19
項
ボイラー用途
ボイラー規模
ボイラー効率
ボイラー
稼働時間
暖房
循環
給湯
暖房
循環
給湯
暖房
目
熱需要に係る運用状況
値
加温・給湯
-
419,680
単位
データの利用方法
- 利用用途別の最大負
荷の確認
kcal/h
-
85.0*
-
夏季(5~11 月)
18.5 時間
冬季(12~4 月) (3 時 30 分~21 時)
ボイラー年間稼動時間
6,456.5 時間
温浴施設運転方式
半循環方式(加水有)
貯湯槽容量
80.0
貯湯槽温度
38.0
内湯(主浴·歩行·高温)
①49.8 ②46.3
浴槽容量
露天
①5.9 ②3.4
足湯
-
夏季
42
浴槽温度
冬季
42
時間当浴槽加水量
-
源泉温度
38.0
平均
20
上水(井水)温度 夏季
14
冬季
8
夏季
浴槽の湯
毎日
張替頻度
冬季
内湯
3 時 30 分~5 時
浴槽張替時間
露天
3 時 30 分~5 時 30 分
OFF
40 (21:00)
夏季
ボイラー
ON
38 (03:30)
内湯
停止-翌稼動前
OFF
41 (21:00)
浴槽温度
冬季
ON
38 (03:30)
OFF:
OFF
40 (21:00)
夏季
ボイラー OFF 時
ON
38 (03:30)
露天
ON:
OFF
41 (21:00)
翌朝の浴槽温度
冬季
ON
38 (03:30)
循環
給湯
133
%
*:導入直後は 90%程度の
想定とするが、設置して
7年が経過しているた
め、経年変化を考慮し
85%の想定とした。
-
ボイラー熱需要パタ
ーン想定のための基
h/年 本運転条件設定
―
m3 熱 負 荷 変 動 の 算 出 根
℃ 拠
-
m3
℃
L/h
℃
℃
回/週
―
℃
熱需要量の算出根拠:
(利用温度-給水温
度)×使用水量
季節別熱需要量の算
出根拠
(浴槽温度-源泉温度)
×使用水量
浴槽張替必要エネル
ギー量と負荷変動
翌朝の浴槽昇温必要
エネルギー量の算出
根拠
また、施設における燃料(A 重油)消費量、利用者数を把握した。これらの結果をもとに、
エネルギー投入量、エネルギー需要量を計算し、源泉や井水を現在利用している温度まで加温
する、もしくは利用温度を保温するために必要な熱量を算出した。燃料消費量やエネルギー投
入量等を整理した表を図表 5-20 に、月別の燃料消費量、利用者数のグラフを図表 5-21 に示す。
図表 5-20
項目
4月
燃料(A重油)消費量 [L]
6月
26,000
7月
18,000
8月
18,000
9月
16,000
16,000
10月
11月
20,000
12月
22,000
1月
30,000
32,000
2月
24,000
3月
26,000
合計
270,000
※1
[kcal]
195,228,000 230,724,000 159,732,000 159,732,000 141,984,000 141,984,000 177,480,000 195,228,000 266,220,000 283,968,000 212,976,000 230,724,000 2,395,980,000
※2
[kcal]
165,943,800 196,115,400 135,772,200 135,772,200 120,686,400 120,686,400 150,858,000 165,943,800 226,287,000 241,372,800 181,029,600 196,115,400 2,036,583,000
エネルギー投入量
エネルギー需要量
利用者数 [人]
時間変動
5月
22,000
温泉施設における月別の A 重油消費量(平成 20 年)
22,897
22,720
21,266
20,251
27,558
20,578
22,379
25,431
施設のエネルギー需要特性により季節別(夏季・冬季)の別により、複数の代表的な時間変動を把握しました。
24,491
32,593
23,048
※1 化石燃料消費量より算出 ※2 エネルギー需要量=エネルギー投入量×ボイラー効率
燃料(A重油)消費量 [L]
35,000
35,000
30,000
30,000
25,000
25,000
20,000
20,000
15,000
15,000
10,000
10,000
5,000
5,000
0
0
4月
図表 5-21
5月
6月
7月
8月
9月 10月 11月 12月 1月
2月
3月
温泉施設における月別の A 重油消費量と利用者数(平成 20 年)
134
利用者数 [人]
A重油消費量 [L]
利用者数 [人]
26,201
289,413
以上の条件や、実際の温浴施設の時間別入湯者数(図表 5-22)等の利用状況を考慮し、
施設における熱需要パターン(1時間ごとの使用熱量)を算出した。図表 5-23 に示す。
図表 5-22 より、浴槽で利用する温水については、夏季(5~11 月)と冬季(12~4 月)
いずれも源泉温度 38℃から浴槽温度 42℃への加温と温度差はないが、上水(井水)温度は
夏季が 22℃、冬季が 17℃と5℃も差があり、この上水をカランで利用する際、加温して利
用する。したがって、上水利用における使用燃料量は冬季の方が夏季よりも量が多くなるた
め、夏季と冬季では熱需要パターンは異なると想定し、それぞれのパターンをグラフ化した。
図表 5-22
時間帯
時間帯
6:00~
7:00~
8:00~
1日あたりの時間別入湯状況
9:00~
10:00~
11:00~
12:00~
13:00~
0.1%
5.3%
3.9%
5.2%
8.6%
7.2%
6.6%
8.5%
14:00~
15:00~
16:00~
17:00~
18:00~
19:00~
20:00~
21:00~
10.3%
9.4%
9.8%
9.1%
7.9%
5.9%
2.2%
-%
合計
100.0%
3,500
夏季(5-11月)
冬季(12-4月)
3,000
[MJ/h]
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
0時~ 2時~ 4時~ 6時~ 8時~ 10時~12時~14時~16時~18時~20時~22時~
図表 5-23
温泉施設における 24 時間の熱需要パターン
135
(2) 木質バイオマスボイラー導入シミュレーション
木質バイオマスボイラーは、従来の化石燃料利用機器と比較して依然として高価であること
から、当該施設で最も採算性の高いボイラー規模を選定する必要がある。
前述の熱需要量と熱需要パターンを基に、既存設備に対して最適規模のチップボイラー導入
規模を算出すると共に、経済性の検討のための年間収支シミュレーションを行った。
木質バイオマスボイラーの導入試算にあたり、下記のように前提条件を想定した。
図表 5-24
50 %
補助率
発熱量
導入試算検討を行うにあたっての前提条件
導入に対する国や自治体による
補助制度を利用
ペレット
4,200 kcal/kg
低位発熱量(想定)
チップ
1,670 kcal/kg
含水率 50%wb、低位発熱量(想定)
A 重油
8,874 kcal/L
低位発熱量
減価償却年数
維持管理費
ばい煙測定費
A 重油価格
A 重油の CO2 排出係数
13 年
法定耐用年数より。残存価額 1 円
ボイラ本体価格の 2%
100,000 円/年
66.15 円/L
2.71 kg/L
136
大気汚染防止法に基づく測定
平成 21 年 11 月現在価格
(2)-1 チップボイラー導入シミュレーション
既存ボイラー設備に対して、10%刻みの割合で導入するチップボイラーの規模を想定し、シミュレーションを行った。
A 重油の代替燃料となるチップの採算分岐価格、すなわち「採算が取れる赤字にならないチップ価格」を見ると、既存設備の 30%規模のボイラ
ー導入時の値が 7.2 円/t、すなわち 7.2 円/kg と最も高い。この際、導入機器の規模は 439kW、初期設備投資費用(イニシャルコスト)は約 6,500
万円となった。
図表 5-25
既存設備規模
既存ボイラーに対する割合
チップボイラー導入想定規模
チップボイラーによるエネルギー供給量
イニシャルコスト
チップ消費量
チップ採算分岐価格
≪費用≫
資本費(補助率50%) 減価償却費
固定資産税(13年平均)
ランニングコスト
バイオマス調達費
人件費
維持管理費
ばい煙測定費
費用合計①
≪収入≫
化石燃料削減量
化石燃料削減費
収入合計:②
チップボイラーによる化石燃料代替率
年間収支(②-①)
CO2排出削減量
A重油価格採算分岐点
バイオマス調達費採算分岐点
温泉施設における導入チップボイラー最適規模算出結果
1,259,040
488kWが3台
1,464
50
60
70
629,520
755,424
881,328
732
878
1,025
1,855,707,646 1,864,990,323 1,864,990,323
2,157,800
2,168,593
2,168,593
73,748
77,087
79,910
1389
1396
1396
7.0
6.8
6.7
kcal/h
kW
%
kcal/h
kW
kcal/年
kWh/年
千円
t/年
千円/t
10
125,904
146
773,364,227
899,261
44,273
579
5.7
20
251,808
293
1,418,516,597
1,649,438
56,967
1062
7.0
30
377,712
439
1,767,908,048
2,055,707
64,393
1323
7.2
40
503,616
586
1,830,362,306
2,128,328
69,661
1370
7.1
千円/年
千円/年
千円/年
千円/年
千円/年
千円/年
千円/年
1,703
0
3,317
0
645
100
5,765
2,191
0
7,384
0
899
100
10,574
2,477
0
9,554
0
1,048
100
13,179
2,679
0
9,712
0
1,153
100
13,644
2,836
0
9,662
0
1,235
100
13,833
2,965
0
9,535
0
1,302
100
13,902
L/年
千円/年
千円/年
%
千円/年
t-CO2
87,149
5,765
5,765
38
0
236
159,851
10,574
10,574
70
0
433
199,223
13,179
13,179
87
0
540
206,261
13,644
13,644
90
0
559
209,117
13,833
13,833
91
0
567
66
6
66
7
66
7
66
7
66
7
円/L
円/kg
80
1,007,232
1,171
1,864,990,323
2,168,593
82,356
1396
6.6
90
1,133,136
1,318
1,864,990,323
2,168,593
84,513
1396
6.5
100
1,259,040
1,464
1,864,990,323
2,168,593
86,442
1396
6.4
3,073
0
9,371
0
1,358
100
13,902
3,168
0
9,227
0
1,407
100
13,902
3,250
0
9,102
0
1,450
100
13,902
3,325
0
8,988
0
1,489
100
13,902
210,163
13,902
13,902
92
0
570
210,163
13,902
13,902
92
0
570
210,163
13,902
13,902
92
0
570
210,163
13,902
13,902
92
0
570
210,163
13,902
13,902
92
0
570
66
7
66
7
66
7
66
7
66
6
上記結果より、チップボイラーは既存設備の 30%に最も近い出力を持つ規模 450kW(ボイラーメーカーA 社製)の導入を標準条件として設定
し、以降の詳細シミュレーションを行った。チップ価格は林地残材調達コストを考慮して 1kg あたり 10 円と想定、A 重油価格はヒアリング値よ
り 1L あたり 66.15 円とした場合のシミュレーション結果を次頁に示す。
137
図表 5-26
想定チップボイラーによるシミュレーション結果
(A 重油 66.15 円/L、チップ 10 円/kg の場合)
kcal/h
導入想定規模
エネルギー供給量
KW
チップによる熱供給量
Mcal/年
定格運転に対するチップボイラー年間平均稼働率
初期設備投資費用(ア)
387,000
450
1,777,458
71%
千円
32,419
木質バイオマス消費量(チップ):(イ)
t/年
1,330
チップ価格:(ウ)
円/kg
10.0
資本費
減価償却費:(エ)
千円/年
2,494
(補助率50%とする)
固定資産税:(オ)
千円/年
0
ランニングコスト
木質バイオマス燃料(チップ)調達費:(カ)
千円/年
13,304
人件費:(キ)
千円/年
0
電力容量※1
kW
8
※50%補助を差引
〈費用〉
※市所有の施設であるため、なし
電力消費量※2
kWh/年
21,024
電気代:(ク)
千円/年
434
維持管理費+消耗品費:(ケ)
千円/年
1,497
ばい煙測定費:(コ)
千円/年
100
千円/年
17,829
A重油削減量
L/年
200,299
A重油削減費
千円/年
13,250
千円/年
13,250
費用合計①:(エ)+(オ)+(カ)+(キ)+(ク)+(ケ)+(コ)
収入合計:②
チップボイラーによるA重油代替率
(現在のA重油消費量 270,000L/年に対する割合)
年間収支メリット:③(②-①)
※-は赤字を表す
年間収支(資本費を除く):④(②-(①-資本費))
CO2削減量:⑤
CO2排出削減コスト(③*(-1)/⑤)
※-はコストがかからないことを表す
※1:A 社提供の規模ごとの電力容量を試算に用いた
(y=0.015x+3.761, x:規模 y:チップボイラーシステムの電力容量)
※2:A 社提供の規模ごとの電力消費量を試算に用いた
(y=8.787x+2166, x:規模 y:チップボイラーシステムの電力消費量(kWh/月))
138
74.18%
千円/年
-4,579
千円/年
-2,086
t-CO2
536
千円/t-CO2
8.55
シミュレーション結果をもとに、既存 A 重油ボイラーの支出とチップボイラー導入時の支出を
比較し、各々の採算性を検証した。
図表 5-27 は初期設備投資費用を初年度に計上し、その後は毎年の経費(ランニングコスト)
を累計する場合である。チップボイラーを導入する場合、初年度に多額の費用が発生しており、
またその後の経費は A 重油ボイラーのそれとほぼ変わらず、いずれのグラフにおいても傾斜はほ
ぼ同じであり、何年経過しても A 重油ボイラーのみで稼動している方が低コストであり、採算性
が高いという結果となった。
図表 5-28 は初期設備投資費用を減価償却 13 年とし、ランニングコストに計上する場合である。
初年度に多額の費用はかからず、減価償却設定年数(今回の温浴施設は 13 年)まで毎年の経費の
中に分散しているため、初年度からチップボイラーの経費が少ないことが分かる。しかしながら、
図表 5-27 同様、何年経過しても A 重油ボイラーのみで稼動している方が低コストであり、採算
性が高いという結果となった。
(千円)
500,000
450,000
400,000
チップボイラー(450kW)+バックアップA重油
支出累計
350,000
A重油ボイラー支出累計
300,000
250,000
200,000
150,000
100,000
50,000
0
0
1
2
3
4
図表 5-27
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
年
初期設備投資を初年度に計上する場合
(千円)
500,000
450,000
400,000
350,000
300,000
250,000
200,000
150,000
100,000
50,000
0
チップボイラー(450kW)+バックアップA重油
累積経費
A重油ボイラー累積経費
0
図表 5-28
1
2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
減価償却を 13 年と設定し、初期設備投資を経費に計上する場合
139
年
以上、「チップ価格 10 円/kg では、新たに木質バイオマスボイラーを導入しても採算性が合わ
ない」という結果を受け、チップ価格の見直しを行い、採算性を再検討した。
チップは、林地残材チップの利用を想定していたが、価格再検討にあたり、林地残材チップ(10
円/kg)と支障木系チップ(5 円/kg)を 1 対 4 の割合でブレンドして利用することとした(両
者の含水率・熱量は同様と想定)。図表 5-29 より、チップ価格は 1kg あたり 6 円、A重油価格
は前回同様 66.15 円/L とし、再度シミュレーションを行った。次頁に結果を示す。
図表 5-29
林地残材チップと支障木系チップの割合
140
図表 5-30
想定チップボイラーによるシミュレーション結果
(A 重油 66.15 円/L、チップ 6 円/kg の場合)
kcal/h
導入想定規模
エネルギー供給量
KW
チップによる熱供給量
Mcal/年
定格運転に対するチップボイラー年間平均稼働率
初期設備投資費用(ア)
387,000
450
1,777,458
71%
千円
32,419
木質バイオマス消費量(チップ):(イ)
t/年
1,330
チップ価格:(ウ)
円/kg
6.0
資本費
減価償却費:(エ)
千円/年
2,494
(補助率50%とする)
固定資産税:(オ)
千円/年
0
ランニングコスト
木質バイオマス(チップ)調達費:(カ)
千円/年
7,983
人件費:(キ)
千円/年
0
電力容量※1
kW
8
※50%補助を差引
〈費用〉
※市所有の施設であるため、なし
電力消費量※2
kWh/年
21,024
電気代:(ク)
千円/年
434
維持管理費+消耗品費:(ケ)
千円/年
1,497
ばい煙測定費:(コ)
千円/年
100
千円/年
12,507
化石燃料削減量
L/年
200,299
化石燃料削減費
千円/年
13,250
千円/年
13,250
費用合計①:(エ)+(オ)+(カ)+(キ)+(ク)+(ケ)+(コ)
収入合計:②
チップボイラーによる重油代替率
(現在のA重油消費量 270,000L/年に対する割合)
74.18%
年間収支メリット:③(②-①) ※-は赤字を表す、四捨五入による数値のズレあり
千円/年
742
年間収支(資本費を除く):④(②-(①-資本費))
千円/年
3,236
CO2削減量:⑤
CO2排出削減コスト(③*(-1)/⑤)
t-CO2
※-はコストがかからないことを表す
千円/t-CO2
536
-1.39
※1:A 社提供の規模ごとの電力容量を試算に用いた
(y=0.015x+3.761, x:規模 y:チップボイラーシステムの電力容量)
※2:A 社提供の規模ごとの電力消費量を試算に用いた
(y=8.787x+2166, x:規模 y:チップボイラーシステムの電力消費量(kWh/月))
シミュレーションの結果、チップ価格 6 円/kg の場合、調達費を年間約 800 万円と 10 円/kg 時
よりも抑えることが出来、全体の年間収支においても約 70 万円の黒字と採算性がとれ、さらには
年間 536t の CO2 排出削減が可能となった。
141
投資回収年数について検証した結果は以下の通りである。
図表 5-31 は初期設備投資費用を初年度に計上し、その後は毎年の経費(ランニングコスト)
を累計する場合である。チップボイラーを導入する場合、初年度に多額の費用が発生しているが、
その後の経費はチップボイラーのほうが少ない。そのため、グラフにおいてチップボイラーを導
入する方が傾斜が緩やかとなる。そして、導入後約 7 年でチップボイラーは A 重油ボイラーより
も採算性が良くなるという結果となった。
チップ価格6円/kg時
(千円)
500,000
450,000
400,000
チップボイラー(450kW)+バックアップA重油
支出累計
350,000
A重油ボイラー支出累計
300,000
250,000
200,000
150,000
100,000
50,000
採算分岐点 約 7 年
0
0
図表 5-31
1 2 3
4 5
6 7 8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
初期設備投資を初年度に計上する場合(チップ価格 6 円/kg 時)
142
年
参考値として、チップ価格を 10 円/kg、6 円/kg だけでなく、1 円刻みで 5 円/kg~15 円/kg ま
で変動させた際の年間収支の変動について検証したものを図表 5-32 に示す。チップ価格が上昇
するほど採算性が悪化していくことが分かる他、チップボイラーへの助成率が 50%の場合には約
6.5 円/kg が年間収支の採算分岐点となり、チップボイラーへの助成率が 100%の場合には約 8.5
円/kg が採算分岐点となることが分かる。
図表 5-32
チップ価格の変動による助成率 50%時・100%時の年間収支の変動
143
チップ価格だけでなく、A 重油価格の変動も採算性に影響する。したがって、チップ価格を
当初想定の 10 円/kg に再度固定した上で、現在 66.15 円/L の A 重油価格が 90 円/L まで上がる
場合を想定し、シミュレーションを行った。
投資回収年数について検証した結果は以下の通りである。
図表 5-33 は初期設備投資費用を初年度に計上し、その後は毎年の経費(ランニングコスト)
を累計する場合である。チップボイラーを導入する場合、初年度に多額の費用が発生している
が、その後の経費はチップボイラーのほうが少ない。そのため、グラフにおいてチップボイラ
ーを導入する方が傾斜が緩やかとなる。そして、導入後約 7 年でチップボイラーは A 重油ボイ
ラーよりも採算性が良くなるという結果となった。
(千円)
A重油価格90円/L時
500,000
450,000
400,000
チップボイラー(450kW)+バックアップA重油
支出累計
350,000
A重油ボイラー支出累計
300,000
250,000
200,000
150,000
100,000
採算分岐点 約 7 年
50,000
0
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
図表 5-33 初期設備投資を初年度に計上する場合
(A 重油価格 90 円/L、チップ価格 10 円/kg 時)
144
年
次に、チップ価格を 1 円刻みで 5 円/kg~15 円/kg まで変動させた例と同じく、A 重油価格の
変動による年間収支の変動について検証した。この検証結果を図表 5-34 に示す。A 重油価格
を 5 円/L 刻みで 50 円/L~100 円/L まで変動させると、A 重油価格が上昇するほど採算性が悪
化していくことが分かる。また、チップボイラーへの助成率が 50%の場合(青色グラフ)には、
林地残材チップ価格が 10 円/kg という現状においては約 89 円/L が年間収支の採算分岐点とな
り、チップボイラーへの助成率が 100%の場合には約 76 円/L が採算分岐点となることが分か
る。
図表 5-34
A 重油価格の変動による助成率 50%時・100%時の年間収支の変動
145
(2)-2
ペレットボイラー導入シミュレーション
既存ボイラー設備に対して、10%刻みの割合で導入するペレットボイラーの規模を想定し、シミュレーションを行った。
A 重油の代替燃料となるペレットの採算分岐価格、すなわち「採算が取れる赤字にならないペレット価格」を見ると、既存設備の 30%規模のボイ
ラー導入時の値が 21.1 円/t、すなわち 22.1 円/kg と最も高い。この場合における導入機器の規模は 439kW、初期設備投資費用(イニシャルコスト)
は約 3,500 万円となった。
図表 5-35
kcal/h
kW
既存ボイラーに対する割合
%
kcal/h
ペレットボイラー導入想定規模
kW
kcal/年
ペレットボイラーによるエネルギー供給量
kWh/年
イニシャルコスト(補助考慮前)
千円
ペレット消費量
t/年
ペレット採算分岐価格
千円/t
≪費用≫
千円/年
資本費(補助率50%減価償却費
固定資産税(13年平均) 千円/年
ランニングコスト バイオマス調達費
千円/年
人件費
千円/年
維持管理費
千円/年
ばい煙測定費
千円/年
費用合計①
千円/年
≪収入≫
化石燃料削減量
L/年
化石燃料削減費
千円/年
収入合計:②
千円/年
ペレットボイラーによる化石燃料代替率
%
年間収支(②-①)
千円/年
CO2排出削減量
t-CO2
温泉施設における導入ペレットボイラー最適規模算出結果
既存設備規模
10
20
30
40
125,904
251,808
377,712
503,616
146
293
439
586
773,364,227 1,418,516,597 1,767,908,048 1,830,362,306
899,261
1,649,438
2,055,707
2,128,328
26,809
32,255
35,441
37,702
230
422
526
545
18.3
20.6
21.1
21.0
1,259,040
488kWが3台入っている
1,464
50
60
70
80
90
100
629,520
755,424
881,328
1,007,232
1,133,136
1,259,040
732
878
1,025
1,171
1,318
1,464
1,855,707,646 1,864,990,323 1,864,990,323 1,864,990,323 1,864,990,323 1,864,990,323
2,157,800
2,168,593
2,168,593
2,168,593
2,168,593
2,168,593
39,455
40,888
42,099
43,148
44,074
44,901
552
555
555
555
555
555
20.9
20.8
20.6
20.5
20.4
20.4
1,031
0
4,218
0
416
100
5,765
1,241
0
8,708
0
525
100
10,574
1,363
0
11,127
0
589
100
13,179
1,450
0
11,460
0
634
100
13,644
1,517
0
11,547
0
669
100
13,833
1,573
0
11,531
0
698
100
13,902
1,619
0
11,461
0
722
100
13,902
1,660
0
11,399
0
743
100
13,902
1,695
0
11,346
0
761
100
13,902
1,727
0
11,297
0
778
100
13,902
87,149
5,765
5,765
38
0
236
159,851
10,574
10,574
70
0
433
199,223
13,179
13,179
87
0
540
206,261
13,644
13,644
90
0
559
209,117
13,833
13,833
91
0
567
210,163
13,902
13,902
92
0
570
210,163
13,902
13,902
92
0
570
210,163
13,902
13,902
92
0
570
210,163
13,902
13,902
92
0
570
210,163
13,902
13,902
92
0
570
上記結果より、ペレットボイラーは既存設備の 30%に最も近い出力を持つ規模 450kW(ボイラーメーカーA 社製)の導入を標準条件として設
定し、以降の詳細シミュレーションを行った。ペレット価格は図表 3-63 (P 98)より 1kg あたり 35 円と想定、A 重油価格はヒアリング値より 66.15
円/L とした場合のシミュレーション結果を次頁に示す。
146
図表 5-36
想定ペレットボイラーによるシミュレーション結果
(A 重油 66.15 円/L、ペレット 35 円/kg の場合)
kcal/h
導入想定規模
エネルギー供給量
KW
ペレットによる熱供給量
Mcal/年
定格運転に対するチップボイラー年間平均稼働率
初期設備投資費用(ア)
387,000
450
1,777,458
71%
千円
17,816
t/年
529
ペレット価格:(ウ)
千円/t
35.0
資本費
減価償却費:(エ)
千円/年
1,343
(補助率50%とする)
固定資産税:(オ)
千円/年
0
ランニングコスト
木質バイオマス(ペレット)調達費:(カ)
千円/年
18,515
人件費:(キ)
千円/年
0
電力容量※1
kW
8
※50%補助を差引
木質バイオマス消費量(ペレット):(イ)
〈費用〉
※市所有の施設であるため、なし
電力消費量※2
kWh/年
21,024
電気代:(ク)
千円/年
434
維持管理費+消耗品費:(ケ)
千円/年
913
ばい煙測定費:(コ)
千円/年
100
千円/年
18,619
化石燃料削減量
L/年
200,299
化石燃料削減費
千円/年
13,250
千円/年
13,250
費用合計①:(エ)+(オ)+(カ)+(キ)+(ク)+(ケ)+(コ)
収入合計:②
ペレットボイラーによる重油代替率
(現在のA重油消費量 270,000L/年に対する割合)
年間収支メリット:③(②-①)
※-は赤字を表す
年間収支(資本費を除く):④(②-(①-資本費))
CO2削減量:⑤
CO2排出削減コスト(③*(-1)/⑤)
74.18%
千円/年
-5,369
千円/年
-6,712
t-CO2
※-はコストがかからないことを表す
千円/t-CO2
536
10.02
※1:A 社提供の規模ごとの電力容量を試算に用いた
(y=0.015x+3.761, x:規模 y:チップボイラーシステムの電力容量)
※2:A 社提供の規模ごとの電力消費量を試算に用いた
(y=8.787x+2166, x:規模 y:チップボイラーシステムの電力消費量(kWh/月))
シミュレーション結果をもとに、既存 A 重油ボイラーの支出とチップボイラー導入時の支出を
147
比較し、各々の採算性を検証した。
図表 5-37 は初期設備投資費用を初年度に計上し、その後は毎年の経費(ランニングコスト)
を累計する場合である。ペレットボイラーを導入する場合、初年度に多額の費用(初期設備投資
費用)が発生し、さらにその後の経費は A 重油ボイラーのそれよりも高い。ペレットボイラーの
グラフの傾斜は急となり、ペレットボイラーの場合と A 重油ボイラーのみの場合とのコストの差
は大きくなるばかりで、
何年経過しても A 重油ボイラーのみで稼動している方が低コストであり、
採算性が高いという結果となった。
図表 5-38 は初期設備投資費用を減価償却 13 年とし、ランニングコストに計上する場合である。
初年度に多額の費用はかからず、減価償却設定年数(今回の温浴施設は 13 年)まで毎年の経費の
中に分散しているため、初年度からチップボイラーの経費が少ないことが分かる。しかしながら、
図表 5-37 同様、何年経過しても A 重油ボイラーのみで稼動している方が低コストであり、採算
性が高いという結果となった。
(千円)
500,000
450,000
400,000
ペレットボイラー(450kW)+バックアップ灯油
支出累計
350,000
A重油ボイラー支出累計
300,000
250,000
200,000
150,000
100,000
50,000
0
0
図表 5-37
1
2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
年
初期設備投資を初年度に計上する場合(ペレット価格 35 円/kg 時)
(千円)
500,000
450,000
400,000
ペレットボイラー(450kW)+
バックアップA重油 累積経費
350,000
A重油ボイラー累積経費
300,000
250,000
200,000
150,000
100,000
50,000
0
0
1
図表 5-38
2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
年
減価償却を 13 年と設定し、初期設備投資を経費に計上する場合
以上、「ペレット価格 35 円/kg では、新たに木質バイオマスボイラーを導入しても採算性が合
わない」という結果となった。
148
続いて、ペレット価格を同様に 35 円/kg とした上で、A 重油価格が 110 円/L と高騰した場合
(2008 年夏の原油価格高騰時に相当)を想定し再度シミュレーションを行った。以下に結果を示す。
図表 5-39 想定ペレットボイラーによるシミュレーション結果
(A 重油 110 円/L、ペレット 35 円/kg の場合)
kcal/h
導入想定規模
エネルギー供給量
KW
ペレットによる熱供給量
Mcal/年
定格運転に対するペレットボイラー年間平均稼働率
初期投資設備費用(ア)
387,000
450
1,777,458
71%
千円
17,816
t/年
529
ペレット価格:(ウ)
千円/t
35.0
資本費
減価償却費:(エ)
千円/年
1,343
(補助率50%とする)
固定資産税:(オ)
千円/年
0
ランニングコスト
木質バイオマス(ペレット)調達費:(カ)
千円/年
18,515
人件費:(キ)
千円/年
0
電力容量※1
kW
8
※50%補助を差引
木質バイオマス消費量(ペレット):(イ)
〈費用〉
※市所有の施設であるため、なし
電力消費量※2
kWh/年
21,024
電気代:(ク)
千円/年
434
維持管理費+消耗品費:(ケ)
千円/年
913
ばい煙測定費:(コ)
千円/年
100
千円/年
18,619
化石燃料削減量
L/年
200,299
化石燃料削減費
千円/年
22,033
千円/年
22,033
費用合計①:(エ)+(オ)+(カ)+(キ)+(ク)+(ケ)+(コ)
収入合計:②
ペレットボイラーによる重油代替率
(現在の灯油消費量 270,000L/年に対する割合)
年間収支メリット:③(②-①)
74.18%
※-は赤字を表す
年間収支(資本費を除く):④(②-(①-資本費))
CO2削減量:⑤
千円/年
3,414
千円/年
2,071
t-CO2
CO2排出削減コスト(③*(-1)/⑤)
※-はコストがかからないことを表す
千円/t-CO2
※1:A 社提供の規模ごとの電力容量を試算に用いた
(y=0.015x+3.761, x:規模 y:チップボイラーシステムの電力容量)
※2:A 社提供の規模ごとの電力消費量を試算に用いた
(y=8.787x+2166, x:規模 y:チップボイラーシステムの電力消費量(kWh/月))
図表 5-40
初期設備投資を初年度に計上する場合(ペレット価格 35 円/kg 時)
149
536
-6.37
投資回収年数について検証した結果は以下の通りである。
図表 5-41 は初年度に初期設備投資費用を計上する場合である。ペレットボイラー導入の場合、
初年度に多額の費用(初期設備投資費用)が発生しているが、2 年目以降のランニングコストを
見るとペレットボイラーのほうが少ない。すなわち、グラフの傾斜が緩やかである。そのため、
グラフにおいてペレットボイラーを導入する方が傾斜が緩やかとなる。また、採算性に関しては、
導入後約 7 年でペレットボイラーは A 重油ボイラーよりも採算性が良くなるという結果となった。
図表 5-42 は初期投資設備費用を経費に計上する場合である。初年度よりペレットボイラーの
方が A 重油ボイラーよりも採算性が良いという結果がでており、A 重油が 2008 年夏の高騰時並
みに高騰した場合には、ペレットボイラーの導入も採算性が合うことが分かった。
(千円)
500,000
450,000
400,000
ペレットボイラー(450kW)+バックアップ灯油
支出累計
350,000
A重油ボイラー支出累計
300,000
250,000
200,000
150,000
採算分岐点 約 7 年
100,000
50,000
0
0
図表 5-41
1
2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
年
初期設備投資を初年度に計上する場合(A 重油 110 円/L、ペレット 35 円/kg 時)
(千円)
500,000
450,000
400,000
ペレットボイラー(450kW)+
バックアップA重油 累積経費
350,000
A重油ボイラー累積経費
300,000
250,000
200,000
150,000
100,000
50,000
0
0
1
2
3
図表 5-42
4
5
6
7
8
9
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
初期設備投資費用を経費に計上する場合
150
年
(3) シミュレーション結果のまとめ
以上シミュレーション結果より、既存温水ボイラーと比較して年間約 200kℓの A 重油削減
が可能となることが分かった。現状では採算性は厳しいものの、チップボイラー導入の場合
には、チップ価格が 6 円/生 kg まで低減できた場合には約 6 年で初期設備投資費用が回収で
きることが分かった。ペレットボイラー導入の場合には、A 重油価格が 110 円/L まで高騰し
た際には、35 円/kg のペレット価格の場合に約 6 年で初期設備投資費用が回収できることが
分かった。
また、ペレットボイラー・チップボイラーの場合ともに、CO2 削減効果は約 536t-CO2/年
と試算された。
図表 5-43
項 目
ボイラー
種類
主要ボイラー
バックアップ
ボイラー
燃料種類
設備投資(推計)
燃料単価
燃料消費量
A重油削減量
CO2削減量
投資回収年数
温泉施設へのチップボイラー・ペレットボイラー導入の経済性試算
チップボイラー導入の場合
単位等
既存温水ボイラー
-
(既存温水ボイラー)
(既存ボイラー30%代替)
488kW × 3台
450kW × 1台
-
-
-
-
万円
円/kg
kℓ/年
t/年
kℓ/年
t-CO2/年
A重油
-
66.15
270
-
-
-
-
チップ
約6,500
6
-
約1,300
約200
約536
約6
年
まとめ
ペレットボイラー導入の場合
-
(既存ボイラー30%代替)
(既存温水ボイラー)
-
488kW × 3台
A重油
-
66.15
約70
-
-
-
-
-
450kW × 1台
ペレット
約3,500
35
-
約530
約200
約536
約6
(既存温水ボイラー)
488kW × 3台
A重油
-
1110
約70
-
-
-
-
(4) 温泉施設でのバイオマスボイラー導入に向けて
年間を通して比較的安定した熱需要を有する温泉施設は、木質バイオマスボイラーの導入
に適した特性を持っている。また、多くの利用者に木質バイオマスの意義を知ってもらうと
いう普及啓発も効果的に行うことができる。このような背景から、国内各地でチップボイラ
ーやペレットボイラー導入の動きが進んでいる。
国内の温泉施設における導入事例を、チップボイラー(資-P38~39)、ペレットボイラー(資
-P41)に示した。
151
5.3.2 県内食品加工工場
シミュレーション結果
調査対象とした食品加工工場は宮崎市に位置する。食品製造上の抽出・殺菌工程において、
2t/h の蒸気ボイラーを 3 台使用、燃料として A 重油を消費している。A 重油の年間消費量は
約 520kℓ である(約 2,600 万円相当)。
チップボイラー(自動投入)・木くず焚きボイラー(人力投入、主燃料は樹皮)の導入を想定し、
試算した。
対象施設の概要について以下に示す。
図表 5-44
項
対象施設の概要
目
内
容
①
施設分類
食品加工工場
②
所在地
宮崎県宮崎市
③
建屋の構造
④
使用用途
⑤
施設外観
鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造
抽出・殺菌工程
152
(1) 熱需要特性の把握
現状の熱需要特性を把握するため、既存ボイラーの運転状況についてヒアリング調査を行った。
既存熱源概要や、現在の熱需要に係る事項について以下に示す。
図表 5-45
項
目
既存熱源概要
内
ボイラーの種類と台数
蒸気ボイラー
容
ボイラ外観
2t/h×3 台
ST-2000VR
(三浦工業、小型乾留蒸気ボイラ)
型式
設置年
平成 17~18 年頃入替
総出力
3,225,000kcal/h(1,250kW×3 台)
129.4L/h
定格燃料消費量
A 重油
使用燃料
520,100L/年、約 2kL/day
年間燃料消費量
293 日
年間ボイラー稼動日数
【その他、現在の熱需要に係る運用状況に関するヒアリング結果】
・ボイラは 6:00-18:00 稼動、隔週 2 日休、半分程度は土曜休(⇒293 日/年稼動)
06:00-10:00 フルに 3 台稼動
10:00~
1 台のみ(50%で 2 台を稼動させる場合もあり)
・設備稼働時間は 12 時間/日、朝 6 時~夕方 18 時まで稼動
対象施設は食品加工工場であるため、抽出・殺菌工程において毎日決まった作業が行われてい
る。したがって、温浴施設のような夏季冬季の熱需要パターンを分ける必要がない。完全に1つ
のパターンで試算するものとした。また、年間燃料消費量は、前述の理由により月均等割りと想
定し、試算を行い、熱需要パターンをグラフ化した。図表 5-46 に示す。
[MJ/h]
12,000
10,000
8,000
6,000
4,000
2,000
0
0時~ 2時~ 4時~ 6時~ 8時~10時~12時~14時~16時~18時~20時~22時~
図表 5-46
食品加工工場における1日の熱需要パターン
153
(2) チップボイラー導入検討
既存ボイラの設備規模に対する木質バイオマスボイラの代替率を 10%刻みと想定し、シミ
ュレーションを行った。チップ価格は 10 円/kg と仮定した。その際の前提条件を図表 5-47
に示す。
図表 5-47
チップ価格
チップ発熱量
導入チップボイラ効率
A重油価格
A重油発熱量
試算を行うにあたっての前提条件
10円/kg
1,670kcal/kg
含水率50%wb、低位発熱量(想定)
80%
50円/L
ヒアリング値による
8,874kcal/L
低位発熱量(想定)
A重油ボイラ効率
94%
蒸気ボイラー仕様より算出
減価償却年数
10年
法定耐用年数より。
初期設備投資費補助率
1/3
固定資産税
1.4%
保守管理費
約370万円
ボイラ本体の2%と想定
消耗品費
20万円
想定値
ばい煙測定費
10万円
〃
A重油CO2排出係数
2.71kg-CO2/L
154
試算の結果、80%代替の場合に採算の取れるチップ価格が 1kg あたり 2.1 円と最も高くなった(図表 5-48)。しかし、林地残材からチップを製
造した場合(10 円/kg)とはかけ離れた、採算性の低い価格となった。
図表 5-48
既存設備規模
既存ボイラーに対する割合
チップボイラー導入想定規模
チップボイラーによるエネルギー供給量
イニシャルコスト(補助考慮前)
チップ消費量
チップ採算分岐価格
≪費用≫
資本費(補助率33%) 減価償却費
固定資産税(10年平均)
ランニングコスト
バイオマス調達費
人件費
維持管理費
ばい煙測定費
費用合計①
≪収入≫
化石燃料削減量
化石燃料削減費
収入合計:②
チップボイラーによる化石燃料代替率
年間収支(②-①)
CO2排出削減量
A重油価格
バイオマス調達費採算分岐点
食品加工工場における導入チップボイラー最適規模算出結果
13,500
1,250kWが3台
3,750
50
60
70
6,750
8,100
9,450
1,875
2,250
2,625
3.0
3.6
4.2
14,239,800 15,713,654 16,900,304
3,955,500
4,364,904
4,694,529
152,976
165,111
176,119
2543
2806
3018
1.8728
2.0001
2.0482
MJ/h
kW
%
MJ/h
kW
t/h
MJ/年
kWh/年
千円
t/年
千円/t
10
1,350
375
0.6
4,746,600
1,318,500
77,976
848
-1.1879
20
2,700
750
1.2
9,493,200
2,637,000
104,233
1695
1.7286
30
4,050
1,125
1.8
11,075,400
3,076,500
123,519
1978
1.6465
40
5,400
1,500
2.4
12,657,600
3,516,000
139,330
2260
1.7288
千円/年
千円/年
千円/年
千円/年
千円/年
千円/年
千円/年
5,198
546
-1,007
0
1,560
100
6,397
6,949
730
2,930
0
2,085
100
12,794
8,235
865
3,256
0
2,470
100
14,926
9,289
975
3,908
0
2,787
100
17,059
10,198
1,071
4,762
0
3,060
100
19,191
11,007
1,156
5,612
0
3,302
100
21,177
L/年
千円/年
千円/年
%
千円/年
t-CO2
127,941
6,397
6,397
26
0
347
255,881
12,794
12,794
53
0
693
298,528
14,926
14,926
61
0
809
341,175
17,059
17,059
70
0
925
383,822
19,191
19,191
79
0
1,040
50
-1
50
2
50
2
50
2
50
2
円/L
円/kg
155
80
10,800
3,000
4.8
18,086,954
5,024,154
186,246
3230
2.1151
90
12,150
3,375
5.4
18,086,954
5,024,154
195,661
3230
1.8420
100
13,500
3,750
6.0
18,086,954
5,024,154
204,486
3230
1.5860
11,741
1,233
6,181
0
3,522
100
22,777
12,416
1,304
6,831
0
3,725
100
24,376
13,044
1,370
5,949
0
3,913
100
24,376
13,632
1,431
5,123
0
4,090
100
24,376
423,549
21,177
21,177
87
0
1,148
455,534
22,777
22,777
94
0
1,234
487,519
24,376
24,376
100
0
1,321
487,519
24,376
24,376
100
0
1,321
487,519
24,376
24,376
100
0
1,321
50
2
50
2
50
2
50
2
50
2
続いて、既存ボイラ規模の 80%代替のチップボイラーを導入すると仮定し、投資回収年数等
を見るための試算を行った。シミュレーション結果を以下にしめす(図表 5-49)。
図表 5-49
想定チップボイラーによるシミュレーション結果
(A 重油 50 円/L、チップ 10 円/kg の場合)
kcal/h
導入想定規模
エネルギー供給量
KW
チップによる熱供給量
Mcal/年
定格運転に対するペレットボイラー年間平均稼働率
イニシャルコスト(ア)
2,580,000
3,000
4,320,820
48%
千円
124,164
t/年
3,234
チップ価格:(ウ)
千円/t
10.0
資本費
減価償却費:(エ)
千円/年
8,278
(補助率33%とする)
固定資産税:(オ)
千円/年
869
ランニングコスト
バイオマス調達費:(カ)
千円/年
32,341
人件費:(キ)
千円/年
0
電力容量※1
kW
8
※3分の1補助を差引
バイオマス消費量(チップ):(イ)
〈費用〉
電力消費量※2
kWh/年
21,024
電気代:(ク)
千円/年
434
維持管理費+消耗品費:(ケ)
千円/年
3,925
ばい煙測定費:(コ)
千円/年
100
千円/年
45,948
化石燃料削減量
L/年
486,908
化石燃料削減費
千円/年
24,345
千円/年
24,345
費用合計①:(エ)+(オ)+(カ)+(キ)+(ク)+(ケ)+(コ)
収入合計:②
チップボイラーによる重油代替率
(現在の灯油消費量 250,100L/年に対する割合)
年間収支メリット:③(②-①)
117.02%
※-は赤字を表す
年間収支(資本費を除く):④(②-(①-資本費))
CO2削減量:⑤
CO2排出削減コスト(③*(-1)/⑤)
※-はコストがかからないことを表す
※1:A 社提供の規模ごとの電力容量を試算に用いた
(y=0.015x+3.761, x:規模 y:チップボイラーシステムの電力容量)
※2:A 社提供の規模ごとの電力消費量を試算に用いた
(y=8.787x+2166, x:規模 y:チップボイラーシステムの電力消費量(kWh/月))
156
千円/年
-21,602
千円/年
-12,455
t-CO2
1,312
千円/t-CO2
1,312
図表 5-50 に初期設備投資費用を初年度に計上した場合、図表 5-51 に初期投資設備費用を経
費に計上した場合の結果を示す。いずれの場合も思わしい結果が出ず、チップボイラー(規模
450kW)を導入すると従来の化石燃料によるボイラー利用よりも常にコストが高いことがわかっ
た。
(千円)
500,000
450,000
400,000
350,000
300,000
250,000
200,000
チップボイラー(3000kW)+バックアップA重油
支出累計
150,000
100,000
A重油ボイラー支出累計
50,000
0
0
1
2
図表 5-50
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
年
初期設備投資を初年度に計上する場合(チップ価格 10 円/kg 時)
(千円)
500,000
450,000
400,000
350,000
300,000
250,000
200,000
150,000
100,000
50,000
0
チップボイラー(3000kW)+バックアップA重油
累積経費
A重油ボイラー累積経費
0
1
2
図表 5-51
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
年
初期設備投資を経費に計上する場合(チップ価格 10 円/kg 時)
そこで、チップボイラーではなく、価格が安くて利用可能量が多い樹皮(バーク)の取り扱
いが可能な木くず焚きボイラー導入の検討を行うこととした。
157
(3) 木くず焚きボイラー導入検討
樹皮は現在県内では無償ないし逆有償で取引されている事例が多くみられることから、燃料
用に利用する際には、ほぼ輸送費のみで購入が可能と考えられる。また、樹皮をボイラーに手
動投入する木くず焚きボイラーの場合、燃料費の大幅な削減が見込まれる。そこで、チップボ
イラー同様、既存ボイラーの設備規模に対する木くず焚きボイラーの代替率を 10%刻みと想定
し、シミュレーションを行った。木くず(樹皮;バーク)の価格は、現在無償ないし逆有償で
取引されている状況を踏まえ、輸送費 1.0 円/kg と仮定した。その他の前提条件と合わせて以
下に示す。
なお、木くず焚きボイラーの場合、燃料の自動投入システムがなく、木くずを人力で投入す
る必要がある。すなわち、年間を通して 1 名雇用する必要がある。その費用は 300 万円と想定
している。
図表 5-52
木くず(樹皮)価格
試算を行うにあたっての前提条件
1.0円/kg
木くず(樹皮)発熱量
1,670kcal/kg
導入木くずボイラ効率
70%
A重油価格
A重油発熱量
A重油ボイラ効率
人件費
含水率50%(WB)
50円/ℓ
8,874kcal/kg
94%
300万円
減価償却年数
10年
初期事業費補助率
3割
固定資産税
1.4%
保守管理費
約109万円
仕様より算出
年間を通して1名雇用
法定耐用年数
ボイラ本体の2%と想定
消耗品費
20万円
想定値
ばい煙測定費
10万円
〃
A重油CO2排出係数
2.71kg-CO2/ℓ
158
シミュレーションの結果、20%代替の場合に木くず価格最高値(2.36 円/kg)が見込まれることが分かった。
図表 5-53
既存設備規模
既存ボイラーに対する割合
木くず焚きボイラー導入想定規模
チップボイラーによるエネルギー供給量
MJ/h
kW
%
MJ/h
kW
t/h
MJ/年
kWh/年
千円
t/年
千円/t
イニシャルコスト(補助考慮前)
木くず(樹皮)消費量
チップ採算分岐価格
≪費用≫
資本費(補助率33%) 減価償却費
千円/年
固定資産税(10年平均) 千円/年
ランニングコスト
バイオマス調達費
千円/年
人件費
千円/年
維持管理費
千円/年
ばい煙測定費
千円/年
費用合計①
千円/年
≪収入≫
化石燃料削減量
L/年
化石燃料削減費
千円/年
収入合計:②
千円/年
チップボイラーによる化石燃料代替率
%
年間収支(②-①)
千円/年
CO2排出削減量
t-CO2
A重油価格
バイオマス調達費採算分岐点
円/L
円/kg
食品加工工場における導入木くず焚きボイラー最適規模算出結果
13,500
1,250kWが3台
3,750
50
60
70
6,750
8,100
9,450
1,875
2,250
2,625
3.0
3.6
4.2
14,239,800
15,713,654
16,900,304
3,955,500
4,364,904
4,694,529
103,572
119,862
136,152
2906
3207
3449
2.20
2.14
2.01
10
1,350
375
0.6
4,746,600
1,318,500
38,412
969
-0.31
20
2,700
750
1.2
9,493,200
2,637,000
54,702
1937
2.36
30
4,050
1,125
1.8
11,075,400
3,076,500
70,992
2260
2.29
40
5,400
1,500
2.4
12,657,600
3,516,000
87,282
2583
2.24
80
10,800
3,000
4.8
18,086,954
5,024,154
152,442
3691
1.90
90
12,150
3,375
5.4
18,086,954
5,024,154
168,732
3691
1.48
100
13,500
3,750
6.0
18,086,954
5,024,154
185,022
3691
1.07
2,561
269
-301
3,000
768
100
6,397
3,647
383
4,570
3,000
1,094
100
12,794
4,733
497
5,176
3,000
1,420
100
14,926
5,819
611
5,783
3,000
1,746
100
17,059
6,905
725
6,390
3,000
2,071
100
19,191
7,991
839
6,850
3,000
2,397
100
21,177
9,077
953
6,924
3,000
2,723
100
22,777
10,163
1,067
6,997
3,000
3,049
100
24,376
11,249
1,181
5,471
3,000
3,375
100
24,376
12,335
1,295
3,946
3,000
3,700
100
24,376
127,941
6,397
6,397
26
0
347
255,881
12,794
12,794
53
0
693
298,528
14,926
14,926
61
0
809
341,175
17,059
17,059
70
0
925
383,822
19,191
19,191
79
0
1,040
423,549
21,177
21,177
87
0
1,148
455,534
22,777
22,777
94
0
1,234
487,519
24,376
24,376
100
0
1,321
487,519
24,376
24,376
100
0
1,321
487,519
24,376
24,376
100
0
1,321
50
-0
50
2
50
2
50
2
50
2
50
2
50
2
50
2
50
1
50
1
上記結果より、既存ボイラ規模の 20%代替の木くず炊きボイラーの導入を標準条件として設定し、詳細シミュレーションを行った。燃料とな
る木くず自体は無償で得られるため、輸送費を考慮して前提条件と同様価格は 1kg あたり 1 円と想定、A 重油価格はヒアリング値より 1L あた
り 50 円とした場合のシミュレーション結果を次頁に示す。
159
図表 5-54
想定木くず焚きボイラーによるシミュレーション結果
(A 重油 50 円/L、木くず 1 円/kg の場合)
kcal/h
導入想定規模
エネルギー供給量
KW
チップによる熱供給量
Mcal/年
定格運転に対するペレットボイラー年間平均稼働率
イニシャルコスト(ア)
※3分の1補助を差引
バイオマス消費量(チップ):(イ)
645,000
750
2,267,845
100%
千円
36,468
t/年
1,940
チップ価格:(ウ)
千円/t
1.0
資本費
減価償却費:(エ)
千円/年
2,431
(補助率33%とする)
固定資産税:(オ)
千円/年
255
ランニングコスト
バイオマス調達費:(カ)
千円/年
1,940
人件費:(キ)
千円/年
3,000
電力容量※1
kW
〈費用〉
8
電力消費量※2
kWh/年
21,024
電気代:(ク)
千円/年
434
維持管理費+消耗品費:(ケ)
千円/年
1,294
ばい煙測定費:(コ)
千円/年
100
千円/年
9,455
費用合計①:(エ)+(オ)+(カ)+(キ)+(ク)+(ケ)+(コ)
化石燃料削減量
L/年
255,561
化石燃料削減費
千円/年
12,778
千円/年
12,778
収入合計:②
チップボイラーによる重油代替率
(現在の灯油消費量 250,100L/年に対する割合)
年間収支メリット:③(②-①)
102%
※-は赤字を表す
年間収支(資本費を除く):④(②-(①-資本費))
CO2削減量:⑤
CO2排出削減コスト(③*(-1)/⑤)
千円/年
3,323
千円/年
6,010
t-CO2
※-はコストがかからないことを表す
※1:A 社提供の規模ごとの電力容量を試算に用いた
(y=0.015x+3.761, x:規模 y:チップボイラーシステムの電力容量)
※2:A 社提供の規模ごとの電力消費量を試算に用いた
(y=8.787x+2166, x:規模 y:チップボイラーシステムの電力消費量(kWh/月))
160
千円/t-CO2
685
-4.85
投資回収年数について検証した結果は以下の通りである。
図表 5-55 は初年度に初期設備投資費用を計上する場合である。木くず焚きボイラー導入の場
合、初年度に多額の費用(初期設備投資費用)が発生しているが、2 年目以降のランニングコス
トを見ると木くず焚きボイラーのほうが少ない。すなわち、グラフの傾斜が緩やかである。その
ため、グラフにおいて木くず焚きボイラーを導入する方が傾斜が緩やかとなる。また、採算性に
関しては、導入後約 4 年で木くず焚きボイラーは A 重油ボイラーよりも採算性が良くなるという
結果となった。
図表 5-56 は初期投資設備費用を経費に計上する場合である。初年度より木くず焚きボイラー
の方が A 重油ボイラーよりも採算性が良いという結果となった。
(千円)
500,000
450,000
400,000
木くず焚きボイラー(750kW)+バックアップ
A重油 支出累計
350,000
A重油ボイラー支出累計
300,000
250,000
200,000
150,000
100,000
採算分岐点 約 4 年
50,000
0
0
1
図表 5-55
2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
年
初期設備投資を初年度に計上する場合(バーク価格 10 円/kg 時)
(千円)
500,000
450,000
400,000
350,000
300,000
250,000
200,000
150,000
100,000
50,000
0
木くず焚きボイラー(750kW)+バックアップA重
油 累積経費
A重油ボイラー累積経費
0
1
2
図表 5-56
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
初期設備投資を経費に計上する場合(バーク価格 10 円/kg 時)
161
年
(4) シミュレーション結果
まとめ
既存蒸気ボイラーと比較して年間約 260kℓの A 重油削減が可能となることが分かった。現
状では採算性は厳しいものの、木くず焚きボイラー導入の場合には、燃料となるバークの価
格が 1 円/生 kg と安価になるため、約 4 年で初期設備投資費用が回収できることが分かった。
また、CO2 削減効果は約 685t-CO2/年と試算された。
図表 5-57
食品工場への木くず焚きボイラー導入の経済性試算
項 目
ボイラー
種類
木くず焚きボイラー導入の場合
単位等
既存蒸気ボイラー
主要ボイラー
-
2t/h × 3台
(既存ボイラー20%代替)
バックアップボイラー
-
-
-
-
万円/年
万円
円/kg
kℓ/年
t/年
kℓ/年
t-CO2/年
A重油
-
-
50
約520
-
-
-
-
樹皮(バーク)
300
約3,600
1
-
約1,940
約260
約685
約4
燃料種類
人件費
初期設備投資(推計)
燃料単価
燃料消費量
A重油削減量
CO2削減量
投資回収年数
年
162
まとめ
750kW × 1台
-
(既存蒸気ボイラー)
2t/h × 3台
A重油
-
-
50
約260
-
-
-
-
(5) 各種工場へのバイオマスボイラー導入に向けて
国内では、ミネラルウォーターの加熱殺菌工程の熱源としてチップボイラーを導入し、チ
ップ原料として林地残材を用いている例がある。天然水(富士山麓の地下水)を殺菌・煮沸す
る工程において蒸気を使用するが、この熱源としてチップボイラーが導入されている。1 日
のチップ消費量は 15~20 生 t 程度である。チップの供給元は飲料製造工場に隣接する製紙
用チップ工場であり、枝葉・小径木等の林地残材や樹皮等をチップ化して燃料チップとして
供給している。この取り組みは天然水ペットボトルのラベルにも記されており、商品製造時
の CO2 を削減した商品ということで差別化を図っている。
この事業によって地域の林地残材の有効活用を促進するとともに、CO2 を削減した環境負
荷の低い商品ということで、新規顧客の獲得にも成功している。
製材
バーク
燃料用
製紙用
図表 5-58
建材用
燃料用チップのチップボイラーへの供給・飲料製造工場への熱供給フロー図
資料:(有)古屋製材所提供資料
その他、国内の食品工場における導入事例を、木くず焚きボイラー(資-P45)、ペレットボ
イラー(資-P44)に示した。
163
5.3.3
農業用ハウス
農業経営指針を用いたシミュレーション結果
「農業経営管理指針(平成 17 年 宮崎県農政水産部)」を用いて、現在の経済状況にバイ
オマスボイラーを導入した場合の試算を行った。
(1) 前提条件およびペレットボイラー導入シミュレーション結果
県内の農業ハウスではピーマンが数多く栽培されている。年間作物収量は 10a あたり 15.5t、
単価は 321 円/kg とした。ハウス加温のため、温風ボイラーを 1 台使用、燃料として A 重油
を消費している。A 重油の年間消費量は 10a あたり 15kℓ である(約 105 万円相当)。
個人農業従事者にとってペレットボイラー導入は初期設備投資が高額となるため、設備導
入補助を考慮して、補助率 0~50%の場合について試算を行った。また、ペレットボイラー
導入時の 10a あたりの経済性分析に加えて、これを「ピーマン収量 1kg あたり」に換算した
経済性分析も行った。
① 前提条件
作型
促成栽培
作物
ピーマン
経営規模
3,528m2
保有労働力
2 名(内、事業主人数 1 名)
他作物との組合せ
経営の主幹作物、ハウス長期1作。早期水稲と組み合わせて
労働力の活用を図る。
施設・機械の利用と
県標準 AP 改良ハウス2号型、灌漑施設、自動開閉装置、暖
考え方
房機を装備する。近紫外線除去フィルムを使用する。育苗は
育苗ハウスで行う。
1,000m2 あたり収量 15.5t、A 品質 85%
技術指針
② 作付体系
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
収穫期間
■■■■
■■■■
■■■■■■■
■ ■ ■■ ■ ■ ■
164
8月
促成: ○
播種
9月
10月
11月
12月
◎
定植
■■■
■■■■
■■■■
収穫期間
③ 労働状況
労働力について図表 5-59 に、月別労働時間について図表 5-60 に示す。
図表 5-59
労働状況(当該作目 10a あたり)
人数
家族労働時間
1
1,327
雇用労働時間
1
112
合
-
1,439
計
図表 5-60
1月
139
2月
3月
139
4月
168
労働時間
5月
165
月別全体労働時間(単位:時間)
6月
157
7月
102
-
8月
9月
33
10 月
11 月
12 月
87
136
141
172
④ 建物及び施設
「農業経営管理指針(平成 17 年 宮崎県農政水産部)」を元に、建物及び施設の減価償却費を
図表 5-61 に示す。
図表 5-61
建物・構造物の減価償却費試算(ピーマン)
耐用
年数
負担率(%)
5,400,000
22
87
43,580
AP ハウス 2 号改良型
10,270,008
10
100
209,592
灌漑施設 チューブ式
963,144
8
100
24,570
1,464,120
8
100
37,350
電気設備
400,000
8
100
10,204
灌漑用ポンプ 2.2kw
393,000
8
100
10,026
井戸設備
330,000
8
100
8,418
育苗ハウス(単棟改良型)
546,600
8
50
6,972
種
類
調達価格
倉庫(鉄骨)
建物および施設
自動開閉装置
合
計
19,766,872
96.3
年償却額
350,712
⑤ 農業機械及び車両等
「農業経営管理指針(平成 17 年 宮崎県農政水産部)」を元に、暖房機以外の農業機械等の減
価償却費を図表 5-62 に示す。現在の状況では、これに化石燃料ボイラーの費用が加わるが、化
石燃料ボイラーの代替としてペレットボイラーを導入した場合の減価償却費の試算を行う。この
とき、ペレットボイラー導入への補助率を 0%、33%、50%、100%と 4 通りの想定を行うもの
とする。また、導入するペレットボイラーは県内への導入実績より N 社のものを想定した。なお、
すべて当該作目 10a あたりの費用に換算して試算を行った。
165
計
1,439
図表 5-62
暖房機以外の農機具費用(ピーマン)
耐用
年数
負担率(%)
130,000
5
100
4,643
台
1,069,660
5
70
26,741
1
台
1,920,000
5
67
28,714
管理機·10PS,バランスウェイト
1
台
425,000
5
100
15,179
動力噴霧機可搬式·6PS
1
台
151,000
5
80
4,314
86.7
79,591
種
類
農業機械及び車両等
数量
単位
4 段サーモ·モヤトリコントローラ
2
台
軽トラック
1
乗用トラクター 4 駆 25PS
合
3,695,660
計
図表 5-63
種
類
調達価格
規
模
年償却額
ボイラー価格と減価償却費
取得価額
耐用
年数
10a あたり
減価償却費
従来の場合
(化石燃料ボイラー)
100,000kcal/h
×2 台
2,648,000
5
94,571
ペレットボイラー
100,000kcal/h
×1 台
4,000,000
7
439,560
補足
農業経営指針より
(経営規模 3,528m2)
既往導入事例より
(13a に左記の規模の
ボイラーを導入と想定)
以下に、暖房機を含めた年間農機具費用を従来の場合(補助なし)とペレットボイラーを導入
した場合(33%、50%、100%補助)について減価償却費をまとめた(図表 5-64)。まとめる際、
④で示した建物及び施設の減価償却費も入れ込んだ。すべて、当該作目 10a あたりの費用とする。
また、ペレットボイラー導入の際には、緊急時のバックアップとして化石燃料ボイラーも併設す
ることを前提とする。
図表 5-64
暖房機を含めた農機具費用(ピーマン)
(単位:円/年)
(化石燃料ボイラー)
ペレットボイラー
①
ペレットボイラー
②
ペレットボイラー
③
ペレットボイラー
④
ペレットボイラー導入時の補助率
-
0%
33%
50%
100%
建物及び施設
350,712
350,712
350,712
350,712
350,712
94,571
439,560
294,505
219,780
0
-
94,571
94,571
94,571
94,571
79,591
79,591
79,591
79,591
79,591
524,874
964,435
819,380
744,655
524,874
費
目
農業機械及
車両等
導入ボイラー減価償却費
バックアップボイラー減価償却費
暖房機以外の農機具費用
減価償却費合計
従来の場合
※四捨五入の関係で下一桁の合計は一致しないことがある。
166
⑥ 経営収支
(a)粗利益
作物名
単位収集量
単価
321.0 円
15,500kg
促成ピーマン
金額
合
4,971,100 円
4,971,100 円
計
(b)経営費
「農業経営管理指針(平成 17 年 宮崎県農政水産部)」を元に、各ボイラーを導入した場合の
経営費を図表 5-65 にまとめる。なお、従来の化石燃料ボイラーについては、A 重油価格 50 円/L、
70 円/L、90 円/L の場合を想定し、ペレットボイラーについてはペレット価格 35 円/kg を用いた。
図表 5-65
No
費
各ボイラーを導入した場合の経営費(ピーマン)
(単位:円/年)
高騰時
従来
従来
目
(化石燃料) (化石燃料) (化石燃料)
ペレットボイラー
導入時の補助率
-
A重油価格(円/L)
ペレット価格(円/kg)
50
70
0%補助
90
-
-
-
1 種苗代
5,200
5,200
2 肥料費
110,100
3 農薬費
ペレット
①
-
ペレット
②
ペレット
③
ペレット
④
33%補助 50%補助 100%補助
-
-
-
35
35
35
35
5,200
5,200
5,200
5,200
5,200
110,100
110,100
110,100
110,100
110,100
110,100
144,324
144,324
144,324
144,324
144,324
144,324
144,324
4 諸材料費
396,236
396,236
396,236
396,236
396,236
396,236
396,236
5 小農具費
4,478
4,478
4,478
4,478
4,478
4,478
4,478
6 動力費
5,135
5,135
5,135
5,135
5,135
5,135
5,135
750,000
1,050,000
1,350,000
1,107,750
1,107,750
1,107,750
1,107,750
87,923
87,923
87,923
87,923
87,923
87,923
87,923
8,000
8,000
8,000
8,000
8,000
8,000
8,000
10 修繕費
28,868
28,868
28,868
28,868
28,868
28,868
28,868
11 保険・共済費
63,989
63,989
63,989
63,989
63,989
63,989
63,989
4,257
4,257
4,257
4,257
4,257
4,257
4,257
13 減価償却費
524,874
524,874
524,874
964,435
819,380
744,655
524,874
14 雑費(専従者給与)
860,557
860,557
860,557
860,557
860,557
860,557
860,557
2,993,941
3,293,941
3,593,941
3,791,252
3,646,197
3,571,472
3,351,691
▲497,310
▲352,255
▲277,530
▲57,750
7 ハウス等燃料費(※)
8 雇用人費
9 作業衣料費
12 土地改良水利費
合計
A重油価格70円/Lとの経営費の価格差
※:A 重油費用のみを想定。
ピーマン 10a あたりの燃料使用量は、JA 宮崎へのヒアリングより 15,000L/年と想定。
A 重油 1L はペレット 2.11kg 相当と熱量換算。すなわち、年間で 31,650kg のペレットを消費する。
167
以上より、ペレットボイラーを導入する場合は、100%補助が入る場合であっても(すなわち
初期設備投資費が0円であっても)
、既存の化石燃料ボイラーを継続利用する場合に比べると経営
費は赤字となり、採算性が低いことが明らかとなった。ただし、現在使用している化石燃料をペ
レットに代替することで、二酸化炭素(CO2)の削減に貢献することができる。作物 10a あたり
の CO2 排出削減量及び CO2 削減にかかる費用を図表 5-66 に示す。
図表 5-66
作
目
ピーマンの排出削減費用
CO2 排出削減費用
A 重油削減量
(L/10a)
CO2 排出削減量
(kg-CO2/年)
0%補助で導入
50%補助で導入
15,000
40,650
32.1 円/kg(10.0%)
17.9 円/kg(5.6%)
ピーマン
※ボイラー着火の際の灯油使用による CO2 発生分は考慮に入れていない。
(c)経営成果指針~収量 1kg あたりに換算した場合の経済性について
以上の試算より、経営成果指針は図表 5-67 のとおりとなる。1 時間あたりの所得は、従来の
化石燃料ボイラーを用いて A 重油価格 50 円/L の場合が 1,125 円と最も高くなった。
図表 5-67
No
費目
各ボイラーを導入した場合の経営費(ピーマン)
(単位:円/年)
従来
従来
高騰時
(化石燃料) (化石燃料) (化石燃料)
ペレットボイラー
導入時の補助率
A重油価格(円/L)
-
-
-
ペレット
①
0%補助
ペレット
②
ペレット
③
ペレット
④
33%補助 50%補助 100%補助
50
70
90
70
70
70
70
1 粗収益
4,971,100
4,971,100
4,971,100
5,468,410
5,323,355
5,248,630
5,028,850
2 経営費
2,993,941
3,293,941
3,593,941
3,791,252
3,646,197
3,571,472
3,351,691
3 農業所得
1,977,159
1,677,159
1,377,159
1,677,159
1,677,159
1,677,159
1,677,159
39.8
33.7
27.7
30.7
31.5
32.0
33.4
5 総労働時間
1,758
1,758
1,758
1,758
1,758
1,758
1,758
6 家族労働時間
1,758
1,758
1,758
1,758
1,758
1,758
1,758
7 1時間当たり所得
1,125
954
784
954
954
954
954
5,630,491
5,930,491
6,230,491
6,427,802
6,282,747
6,208,022
5,988,241
256
270
283
292
286
282
272
4 所得率
8 生産費用
9 1kg当たり生産費用
168
(2) シミュレーション結果
まとめ
初期設備投資費に対して補助率 50%、ペレット価格 35 円/kg、A 重油価格が 90 円/ℓ と高
騰した場合を想定したところ、採算が合う結果となった。既存の A 重油焚き温風ボイラーと
比較して、10a あたり年間約 15kℓ の A 重油削減が可能となった。これにより、約 40t-CO2/
年の CO2 削減が可能となると推計された。
ペレットボイラーを導入することによって CO2 を削減したハウス作物は「カーボンオフセ
ット商品」として付加価値をつけて販売可能である。すなわち、
「環境に配慮した作物」とい
うことで、通常販売されている農作物の価格に上乗せをできる可能性があるということであ
る。今回の試算では、ピーマンを通常の価格よりも約 18 円(5.6%)高く売ることができれば、
A 重油価格 70 円/ℓ、補助率 33%という現状に近い想定の場合においても、収支が均衡する
という結果になった(この約 7%分が付加価値の部分となる)
。例えば、県庁や市町村の食堂、
地元企業の社員食堂等で使用する食材として「ペレットボイラーを使って栽培した農作物を
10%高く買い取る」というような自主的な取り組みが始まれば、農業用ハウスへのペレット
ボイラー導入が進んでいくものと期待される。
図表 5-68
ペレットボイラーを導入した農業用ハウス(ピーマン)の経済性
169
まとめ
(3) 農業用ハウスへのペレットボイラーの導入に向けて
農業用イチゴハウスへペレットボイラーを導入し、カーボンオフセット商品として販売
を行っている岡山県真庭市のイチゴ農家の例を資料編(資-P43)に示す。
また、国内クレジット制度(資料編
資-47 以降参照)を用いて、削減した CO2 を大規模
CO2 排出源を有する大企業に購入してもらうという手法がある。静岡のメロン農家にペレ
ットボイラーを導入し、年間約 1,392t の CO2 を削減してそれをクレジット(CO2 排出量取
引の権利)としてソニー㈱へ販売した事例を以下に示す。
図表 5-69
ペレットボイラーを導入した農業用ハウス(メロン)
170
静岡の事例
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