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中学校入学に伴う抑うつ、身体攻撃 - 東北大学教育学研究科・教育学部

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中学校入学に伴う抑うつ、身体攻撃 - 東北大学教育学研究科・教育学部
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 60 集・第 1 号(2011 年)
中学校入学に伴う抑うつ、身体攻撃、関係性攻撃の変化と
コミュニケーション基礎スキルとの関連
安 達 知 郎
本研究では、
中学校入学に伴って変化した抑うつ、身体攻撃、関係性攻撃に対し、どのようなコミュ
ニケーション基礎スキルが関与しているのかを検討した。92 名に対して、小学校 6 年生 3 月と中学
校 1 年生 11 月に調査を実施し、以下の 3 つの結果が得られた。⑴中学校入学前後では、抑うつ、身体
攻撃、関係性攻撃に有意な変化が見られなかった、⑵中学校入学に伴う抑うつの増加は、小学校段
階での動揺対処スキルの高さと関連があった、⑶中学校入学に伴う関係性攻撃の増加は、小学校段
階での動揺対処スキルの低さと関連があった。最後に、サンプル数、サンプリングという観点から、
本研究の限界について考察した。
キーワード:中学校入学、コミュニケーション基礎スキル、抑うつ、身体攻撃、関係性攻撃
Ⅰ.問題と目的
近年、中学校入学に伴う生徒の問題の増加に注目が集まっている。たとえば、文部科学省(2009)
によれば、不登校は、小学校 6 年生で 7,727 名であったのに対して、中学校 1 年生では 23,149 名となっ
ており、約 3 倍に増加している。このような中学校入学に伴う生徒の問題の増加は「中 1 ギャップ」
と呼ばれ(児島・佐野,2006;富家・宮前,2009)
、学校現場で大きな問題となっている。
中学校入学という環境移行(“ 古い環境を離れ、新しい環境に入る事態 ”(小泉,1997))が生徒に
与える影響は、これまでもさまざまな角度から研究されてきた。そもそも、中学校入学に伴い、生
徒の問題が増加するかどうかという点に関しては、小泉(1995)が、小学校 6 年生 11 月と中学校 1 年
生 12 月の 2 回調査を行い、中学校入学に伴い、学校への関心、学習への意欲が低下することを明ら
かにした。また、小野寺(2009)が、小学校 6 年生 12 月、中学校 1 年生 5 月、中学校 1 年生 12 月の 3 回
調査を行い、自尊感情、不機嫌・怒りが入学直後に上昇すること、学校嫌い感情が 1 学期から 2 学期
にかけて上昇すること、不安・抑うつ、無気力が 1 年かけて徐々に上昇すること、また、身体的反応
は 3 回の調査を通じて変化が見られないことを明らかにした。以上のことから、中学校入学に伴い、
変化が見られる指標と見られない指標があり、さらに変化する時期も指標ごとで異なると考えられ
る。
教育学研究科 博士課程後期
― ―
387
中学校入学に伴う抑うつ、身体攻撃、関係性攻撃の変化とコミュニケーション基礎スキルとの関連
先行研究では、環境移行に影響を与える要因についても研究がされてきた(小泉,1992)
。主なも
のとしては、性差(浅川・尾崎・古川,2003)
、出身小学校の規模(浅川ら,2003;富家・宮前,2009)、
兄弟の有無(小泉,1995)
、小学校段階における生徒の中学校に対する期待・不安(小泉,1995;草野・
上地,2002;南・浅川・秋光・西村,2011;澤田・古川,1996)、学業(富家・宮前,2009)、学校生活ス
キル(五十嵐,2011)
などが挙げられる。たとえば、五十嵐(2011)は、小学校 6 年生のときと中学校 1
年生のとき、不登校傾向と学校生活スキルを測定した。そして、小学校段階から中学校段階への移
行に伴う不登校傾向得点の変化パターンにもとづき、生徒を一貫高群、上昇高群、下降低群、一貫低
群の 4 群に分けた。そして、その 4 群で、小学校段階と中学校段階の学校生活スキルを比較した。結
果、不登校傾向全般について、中学校入学後、不登校傾向が下降する生徒は、中学校段階の自己学習
スキル、健康維持スキルが高いこと、精神・身体症状を伴う不登校傾向が下降する生徒は、中学校段
階での同輩とのコミュニケーションスキルが高いことなどを明らかにした。
以上のように先行研究を概観すると、生徒のどのような側面(学校適応感、抑うつ、身体的反応な
ど)をとりあげるのか、また、どのような要因(性差、期待・不安、学校生活スキルなど)をとりあげ
るのかによって、中学校入学という環境移行が生徒にどのような影響を与えるかは異なると言える
だろう。
近年、生徒の問題に関して、学校適応感、学業などといった学校場面に関連した問題だけでなく、
抑うつ、攻撃行動といった、学校場面にとどまらず生活全般に関連した問題に注目が集まっている
(倉掛・山崎,2006;石川・濱口,2007;石津・安保,2007;村上・福光,2005;佐藤・今城・戸ヶ崎・石川・
佐藤・佐藤,2009)
。学校場面に限定されない子どもの問題は、内在化問題と外在化問題に大別され
る(Achenbach & Edelbrock,1978)
。内在化問題とは、過度の不安や恐怖、抑うつ、自尊心の低下
など、自分の中に問題が生じるものである。そして、外在化問題とは、攻撃行動、反社会的行動など、
他者との間で問題が生じるものである。そこで本研究では、中学校入学という環境移行が、生徒の
生活全般にどのような影響を与えるのかを検討するため、内在化問題と外在化問題をとりあげるこ
ととする。ただし、本研究では、石川・濱口(2007)を参考に、内在化問題の指標として抑うつを、外
在化問題の指標として身体攻撃、関係性攻撃をとりあげる。
また、本研究では、中学校入学という環境移行に影響を与えるであろう要因として、コミュニケー
ションスキルをとりあげる。ここで、
「コミュニケーションスキル」という用語について説明する。
対人関係に関するスキルは、一般的に「ソーシャルスキル」と呼ばれることが多い。しかし、その定
義は研究者によってさまざまである(庄司・小林・鈴木,1989)。研究領域では対人関係に関する技
能を指すことが多いが、実践領域では対人関係に関する技能だけでなく、生活一般に関する技能を
指すこともある。たとえば、障害者を対象とした領域では、ソーシャルスキルに生活技能や自立の
ための社会生活技能が含まれる(庄司,1994)
。そこで本研究では、対人関係に関する技能に限定し
て、それを「コミュニケーションスキル」と呼ぶこととする。本研究ではこのように「コミュニケー
ションスキル」を定義するため、先行研究で「ソーシャルスキル」と呼ばれてきたスキルのほとんど
を、
「コミュニケーションスキル」
として取り扱う。本研究でコミュニケーションスキルをとりあげ
― ―
388
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 60 集・第 1 号(2011 年)
る理由は、集団ソーシャルスキルズトレーニングの学校現場への広がり(金山・佐藤・前田,2004;
大対・松見,2010)に伴い、生徒の問題とコミュニケーションスキルとの関連に注目が集まっている
からである。たとえば、本研究でとりあげる抑うつ、身体攻撃、関係性攻撃に関しては、今津(2005)
が女子中学生を対象として、社会的スキルの欠如がその時点での抑うつ、および、その後の抑うつ
に関連していることを明らかにした。そして、安達(2009)が、コミュニケーション基礎スキルの内、
意思伝達スキル、動揺対処スキル、自己他者モニタリングスキル、他者理解スキルが、抑うつ、身体
攻撃、関係性攻撃、いずれに対しても、負の影響を及ぼすことを明らかにした。
以上のように、近年、生徒の問題として内在化問題、外在化問題に、そして、生徒の問題の要因と
してコミュニケーションスキルに注目が集まっている。中学校入学校に伴う生徒の変化を扱った研
究に関しては、抑うつ(小野寺,2009)
、コミュニケーションスキル(五十嵐,2011)、それぞれを扱っ
た研究は見られるが、両者を組み合わせた研究は見られない。そこで、本研究では、中学校入学に
伴う抑うつ、身体攻撃、関係性攻撃の変化とコミュニケーションスキルとの関連を明らかにするこ
とを目的とする。
Ⅱ.方法
1.調査対象者
東北地方の公立 A 小学校に在籍し、かつ、公立 B 中学校に進学した小学校 6 年生 92 名(男子 47 名、
女子 45 名)を調査対象者とした。A 小学校の 6 年生は、私立中学校などに進学する生徒を除き、そ
のほとんどが B 中学校に入学する。また、B 中学校には、A 小学校を含む 4 校の小学校から、生徒
が入学する。新入生に占める A 小学校出身者の割合は、約 1/3 である。
2.調査時期
調査は A 小学校卒業前の 2009 年 3 月、B 中学校入学後の 2009 年 11 月の 2 回、実施した。
3.手続き
授業時間、ホームルームを利用して、教員の指示のもと、一斉に質問紙に回答してもらった。小
学校段階と中学校段階のデータの照合には、質問紙に記入してもらった出席番号を用いた。具体的
には、中学校入学後の 2010 年 11 月に質問紙に回答してもらったとき、生徒に小学校 6 年生時点での
出席番号を記入してもらった。その際、記入の目的、および、出席番号の記入は任意であることを、
生徒に書面で伝えた。そして、その出席番号をもとに、筆者が小学校段階と中学校段階のデータ照
合を行った。これらの手続きについては、A 小学校、B 中学校、それぞれの校長から了承を得た。
4.倫理的配慮
質問紙配布に先立ち、質問項目を教員にチェックしてもらい、配布する質問紙が生徒に大きな影
響を与えないことを確認した。また、質問紙配布時、生徒に対して、回答が任意であること、回答へ
の参加・不参加は成績とは関係ないこと、個人の回答結果は教員に知らせないことを口頭で伝えた。
さらに、
小学校 6 年生段階での調査では、
回答時の生徒への負担を考慮し、質問項目を少なくした(以
下、5.質問紙構成参照)
。
― ―
389
中学校入学に伴う抑うつ、身体攻撃、関係性攻撃の変化とコミュニケーション基礎スキルとの関連
5.質問紙構成
調査協力者には、各時期で、以下の⑴~⑷の質問紙に回答してもらった。ただし、小学校 6 年生段
階では、生徒への負担を考慮し、以下の 2 種類の冊子を作製した。ひとつ目の冊子(以下、冊子 A)は、
コミュニケーションスキル、
抑うつを測定する質問紙から構成した。ふたつ目の冊子(以下、冊子 B)
は、コミュニケーションスキル、身体攻撃、関係性攻撃を測定する質問紙から構成した。そして、質
問紙回答の際、冊子 A、B を無作為に配布し、生徒にはいずれかの冊子に回答してもらった。中学
校入学後の調査では、全ての生徒に、⑴~⑷の質問紙に回答してもらった。
⑴コミュニケーションスキル 児童用コミュニケーション基礎スキル尺度(安達・佐藤・東海林・
三船・川村・佐伯,2009)を用いた。この尺度は、どのような場面にも共通する、より基礎的なスキ
ルを測定する尺度である。5 因子(意思伝達スキル、動揺対処スキル、意図的隠匿スキル、自己他者
モニタリングスキル、他者理解スキル)からなり、全 29 項目(3 件法、1-3 点)である(質問項目、各尺
度の説明は表 1 参照)
。尺度得点が高いほど、スキルが高いことを意味する。この尺度の妥当性は、
既存のコミュニケーションスキル尺度との相関によって確認されている(安達ら,2009)。ただし、
意図的隠匿スキルについては、
得点が高い生徒ほど、友達からのソーシャルサポートが低く、抑うつ、
表 1 児童用コミュニケーション基礎スキル尺度(安達ら,2009)
の質問項目
スキル(因子)
質問項目
私は、相手に自分の気持ちをきちんと伝えるのが得意です
私は、気持ちをすなおに人に伝えます
私は、感じていることをわかりやすく伝えます
意思伝達スキル
私は、感じていることを正直に人に伝えます
自らの意思を他者に適切に伝え 私は、気持ちをことばで表現するのが得意です
るスキル
私は、相手に伝わるように思っていることを伝えます
私は、相手にきちんと伝わるように、自分の感じていることを話します
私は、思っていることを表情で表現するのが得意です
私は、気持ちが乱れているときにいつもどおり行動するのが苦手です*
私は、一度、気持ちが落ち着かなくなると、再び集中するのが苦手です*
動揺対処スキル
私は、興奮すると、どうしたらいいかわからなくなってしまいます*
*
自らの気持ちの動揺を抑えるス 私は、気持ちが乱れているとき、じっとしているのが苦手です
私は、気持ちが落ち着かないときに冷静に行動するのが苦手です*
キル
私は、思っていることが顔にあらわれやすいです*
私は、気持ちをコントロールするのが得意です
私は、幸せなふりや悲しいふりをするのが得意です
私は、気持ちを隠すのが得意です
自らの気持ちを意図的に隠すス 私は、つまらなくても楽しいふりをするのが得意です
私は、怒っていても怒っていないふりをするのが得意です
キル
私は、思っていることを外に出さないのが得意です
意図的隠匿スキル
自己他者モニタリングスキル
自分、あるいは他人の気持ちを
その場で把握するスキル
他者理解スキル
他人の態度からそのひとの気持
ちを推測するスキル
私は、そのとき、そのとき、自分が何を考えているのかに注意します
私は、そのときどきで、自分が何を感じているのかを気にします
私は、その場その場で、自分がどんなことをしようとしているのかに気をつけます
私は、その場、その場で、自分がどうしたいのかを考えます
私は、相手の立場に立って、考えます
私は、相手のさりげない行動から相手の伝えたいことがわかります
私は、相手が何を考えているか、わかります
私は、ことばがなくても相手の伝えたいことがわかります
私は、表情から相手の気持ちを想像するのが得意です
*逆転項目
― ―
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東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 60 集・第 1 号(2011 年)
身体攻撃、関係性攻撃が高いことが確認されている(安達,2009)。そこで、スキルの実行によって
本人に利益がもたらされることがコミュニケーションスキルの構成要件とされていること(佐藤・
佐藤,2006)
を踏まえ、本研究では、意図的隠匿スキルは分析から除外した。
⑵抑うつ 子ども用抑うつ自己評価尺度(DSRS)
(村田・清水・森・大島,1996)を用いた。この尺
度は 1 因子、18 項目(3 件法、0-2 点)である。ただし、DSRS については、倫理的配慮から 2 項目(「い
じめられても自分で「やめて」と言える」
「生きていても仕方がないと思う」)を除き、16 項目版を用
いている先行研究も見られる(佐藤・新井,
2002)
。そこで、本研究でも16項目版を用いることとした。
尺度得点が高いほど、抑うつ感が強いことを意味する。
⑶身体攻撃 敵意的攻撃インベントリー(秦,1990)の身体攻撃尺度を用いた。この下位尺度は
10 項目(5 件法、1-5 点)
である。尺度得点が高いほど、身体攻撃をより多く行うことを意味する。
⑷関係性攻撃 小学生用 P-R 攻撃性質問紙(坂井・山崎,2004)の関係性攻撃を用いた。この下位
尺度は 7 項目(4 件法、1-4 点)である。尺度得点が高いほど、関係性攻撃をより多く行うことを意味
する。この尺度の対象は小学生である。内容を中学校教員と検討したところ、中学生にも十分、適
用可能であると判断されたため、本研究では採用した。
Ⅲ.結果
1.分析対象者
調査対象者 92 名のうち、2 回の調査すべてに参加し、かつ、それら 2 回のデータ照合が可能であっ
た生徒を分析対象者とした。最終的に、62 名(男子 31 名、女子 31 名)を分析対象者とした。うち、冊
子 A に回答した生徒は 30 名(男子 16 名、女子 14 名)
、冊子 B に回答した生徒は 32 名(男子 15 名、女
子 17 名)
であった。ただし、各指標の分析にあたって、回答に不備があった生徒は除外した。
2.基本統計量
基礎スキル、および、抑うつ、身体攻撃、関係性攻撃について、基本統計量、相関係数を表 2、表 3
に示す。
3.時期比較
抑うつ、身体攻撃、関係性攻撃が、時期によってどのように変化するのかを検討するため、それぞ
れの値を従属変数、時期を独立変数(被験者内要因)として、1 要因分散分析を行った。
結果、抑うつ、身体攻撃、関係性攻撃、いずれについても、時期による効果は見られなかった(表 4)。
4.抑うつ、身体攻撃、関係性攻撃の変化と基礎スキルとの関連
つぎに、中学校入学に伴い、抑うつ、身体攻撃、関係性攻撃が上昇した者と上昇しなかった者で、
基礎スキルがどのように異なるかを検討した。そこでまず、2009 年 3 月から 2009 年 11 月にかけて、
抑うつ、身体攻撃、関係性攻撃の得点が、各生徒で上昇したか、上昇しなかった(下降した、あるい
は変化がなかった)かを調べた。そして、各生徒を上昇群、非上昇群の 2 群に分けた。しかし、その
結果は小学校段階(2009 年 3 月)
での、抑うつ、身体攻撃、関係性攻撃の得点が高かったか、低かった
かによって影響を受けると考えられる。そこで、小学校段階での抑うつ、身体攻撃、関係性攻撃の
― ―
391
中学校入学に伴う抑うつ、身体攻撃、関係性攻撃の変化とコミュニケーション基礎スキルとの関連
表 2 基礎スキルの記述統計量、相関係数
記述統計量
相関係数
(ア)
最小 最大 平均 標準
値
値
値 偏差
N
(イ)
(N)
(ウ)
(N)
(エ)
(N)
(オ)
(N)
(カ)
(N)
(キ)
(N)
(N)
< 2009/3(t1)>
(ア)t1_ 意思伝達スキル
61
8
24 16.03 4.01
(イ)t1_ 動揺対処スキル
64
7
21 14.22 3.84
.28 *
(60)
t1_ 自己他者モニタ
リングスキル
64
5
15 11.09 2.59
.41 **
(60)
(エ)t1_ 他者理解スキル
65
4
12 7.51 2.32
.49 *** (60) .18
(ウ)
.43 *** (62)
(63)
.37 **
(63)
< 2009/11(t2)>
(オ)t2_ 意思伝達スキル
60
8
24 16.98 4.35
.55 *** (55) .26 † (58) .29 *
(59)
.11
(60)
(カ)t2_ 動揺対処スキル
64
7
21 13.58 3.59
.20
(59)
.74 *** (62) .29 *
(63)
.26 *
(64)
.18
(60)
t2_ 自己他者モニタ
(キ)
リングスキル
62
5
15 11.05 2.77
.15
(57)
(62)
.41 **
(59)
-.02
(62)
(ク)t2_ 他者理解スキル
66
4
12 8.67 2.39
(65)
.39 **
(60)
.20
(64)
.12
(60)
.42 **
(61)
.29 * (61) .19
(64)
.33 **
(64)
-.01
.40 **
.25 † (62)
† p < .10, * p < .05, ** p < .01, *** p < .001
表 3 抑うつ、身体攻撃、関係性攻撃の記述統計量、相関係数
記述統計量
最小
値
N
最大
値
相関係数
平均
値
標準
偏差
(ア)
(イ)
(N)
(ウ)
(N)
(エ)
(N)
(オ)
(N)
(N)
< 2009/3(t1 )>
(ア)
t1_ 抑うつ
31
0
8.52
5.05
(イ)
t1_ 身体攻撃
34
10
44 21.79
7.55
(0)
34
7
19 11.00
3.72
(0)
.73 ***
(34)
(ウ) t1_ 関係性攻撃
19
< 2009/11(t2)>
(エ)
t2_ 抑うつ
65
1
9.85
4.96
.23
(30)
.37 *
(34)
.33 †
(34)
(オ)
t2_ 身体攻撃
60
10
41 23.40
8.14
.27
(28)
.69 ***
(31)
.70 ***
(31)
.23 †
(59)
62
7
21 11.48
3.67
.17
(29)
.27
(32)
.60 ***
(32)
.04
(61)
(カ) t2_ 関係性攻撃
25
.52
***
(59)
† p < .10, * p < .05, ** p < .01, *** p < .001
表 4 抑うつ、身体攻撃、関係性攻撃の時期比較
< 2009/3(t1)>
平均値
標準偏差
N
< 2009/11(t2)>
平均値
標準偏差
F値
多重比較
抑うつ
30
8.73
4.99
8.60
3.99
.02
身体攻撃
31
22.16
7.81
22.32
8.38
.02
関係性攻撃
32
11.06
3.83
10.84
3.57
.14
得点の高低(平均点を基準)も組み合わせて検討することとした。具体的には抑うつ、身体攻撃、関
係性攻撃、
それぞれについて、
①小学校段階で低群であり、かつ、中学校入学後、上昇しなかった者(低
-非上昇群)、②小学校段階で低群であり、かつ、中学校入学後、上昇した者(低-上昇群)
、③小学
校段階で高群であり、かつ、中学校入学後、上昇しなかった者(高-非上昇群)
、④小学校段階で高
群であり、かつ、中学校入学後、上昇した者(高-上昇群)の 4 群を設定した。しかし、④高-上昇群
に属する生徒は、抑うつ、身体攻撃、関係性攻撃で、それぞれ 3 人、4 人、4 人であった。そこで、④
― ―
392
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 60 集・第 1 号(2011 年)
高-上昇群については、
サンプル数が小さく統計的分析は難しいと判断し、分析から除外した。よっ
て、最終的に、①低-非上昇群、②低-上昇群、③高-非上昇群の 3 群を独立変数、小学校段階、中
学校段階の基礎スキルの下位尺度を従属変数として、Kruskal-Wallis 検定を行った(Kruskal-Wallis
検定を行ったのは、サンプル数が少なく、各群の正規性を確認できないと判断したためである)。ま
た、多重比較には、Mann-Whitney の U 検定(Bonferroni 法)を用いた。ただし、本研究では、各群
のサンプル数が小さいことを考慮し、Kruskal-Wallis 検定で有意な結果が得られた分析については、
その後の多重比較(Mann-Whitney の U 検定、Bonferroni 法)の効果量、および、検出力を求めた。
結果、抑うつの小学校から中学校への変化パターンの違いによる効果は、小学校段階の意思伝達
スキル(χ 2=6.73、p =.035)
、動揺対処スキル(χ 2=10.12、p =.006)に見られた。多重比較を行った
ところ、意思伝達スキルでは群間に有意な差は見られなかった。動揺対処スキルでは低-上昇群が
高-非上昇群よりもスキルが高かった(U =9、p =.001、効果量 1.88、検定力 .93)
(表 5)。
表 5 抑うつの小学校から中学校への変化と基礎スキルとの関連
①低-非上昇群
(N=6)
平均値 標準偏差 平均ランク
②低-上昇群
(N=10)
平均値 標準偏差 平均ランク
③高-非上昇群
(N=11)
平均値 標準偏差 平均ランク
χ2値
多重
比較
< 2009/3(t1)>
t1_ 意思伝達スキル
13.67
3.83
7.83
19.22
3.35
17.56
16.00
3.16
12.00
6.73 *
t1_ 動揺対処スキル
13.50
3.62
12.58
16.90
3.03
19.15
11.70
2.45
8.40
10.12 **
t1_ 自己他者モニタ
リングスキル
9.67
2.25
12.00
12.11
2.62
18.06
9.36
2.66
10.59
5.12 †
t1_ 他者理解スキル
7.67
1.63
16.50
7.50
2.64
15.20
6.36
1.96
11.55
1.92
t2_ 意思伝達スキル
14.83
5.23
8.33
19.11
3.14
14.50
19.00
3.40
14.45
3.23
②>③
<2009/11(t2)>
t2_ 動揺対処スキル
13.00
3.74
15.33
14.10
3.78
16.80
11.27
3.00
10.73
3.32
t2_ 自己他者モニタ
リングスキル
8.50
3.39
8.92
11.30
2.31
17.20
10.36
3.01
13.86
4.16
t2_ 他者理解スキル
10.00
1.67
16.58
8.90
1.73
12.60
8.91
2.98
13.86
.97
† p < .10, * p < .05, ** p < .01
また、身体攻撃の小学校から中学校への変化パターンの違いによる効果は、小学校段階、中学校
段階、いずれのスキルでも見られなかった(表 6)
。
関係性攻撃の小学校から中学校への変化パターンの違いによる効果は、小学校段階の動揺対処ス
キル(χ 2=11.25、
p =.004)に見られた。多重比較を行ったところ、低-非上昇群が低-上昇群(U =3.5、
p =.002、効果量 2.40、検定力 .96)、高非上昇群(U =7、p =.002、効果量 2.02、検定力 .92)よりもスキル
が高かった(表 7)
。
― ―
393
中学校入学に伴う抑うつ、身体攻撃、関係性攻撃の変化とコミュニケーション基礎スキルとの関連
表 6 身体攻撃の小学校から中学校への変化と基礎スキルとの関連
①低-非上昇群
(N=8)
平均値 標準偏差 平均ランク
②低-上昇群
(N=11)
平均値 標準偏差 平均ランク
③高-非上昇群
(N=8)
平均値 標準偏差 平均ランク
χ2値
多重
比較
< 2009/3(t1)>
t1_ 意思伝達スキル
15.50
5.17
13.33
15.45
4.01
12.95
14.88
3.72
12.81
.02
t1_ 動揺対処スキル
16.29
5.38
17.14
14.36
3.32
13.82
12.50
3.07
9.88
3.44
t1_ 自己他者モニタ
リングスキル
12.50
2.39
15.81
12.09
2.12
13.86
11.29
2.14
10.29
2.04
t1_ 他者理解スキル
7.50
3.25
13.06
7.18
2.32
12.59
8.14
2.41
15.43
.64
t2_ 意思伝達スキル
16.13
3.98
12.00
17.64
4.25
15.05
15.50
5.32
10.583
1.65
<2009/11(t2)>
t2_ 動揺対処スキル
14.25
4.17
13.25
15.09
3.70
15.45
11.50
2.88
8.17
3.86
t2_ 自己他者モニタ
リングスキル
13.25
2.43
16.38
11.64
1.75
10.59
12.33
1.63
12.92
2.95
t2_ 他者理解スキル
8.13
3.00
13.38
8.36
2.11
13.95
8.38
2.88
14.69
.11
表 7 関係性攻撃の小学校から中学校への変化と基礎スキルとの関連
①低-非上昇群
(N=7)
平均値 標準偏差 平均ランク
②低-上昇群
(N=9)
平均値 標準偏差 平均ランク
③高-非上昇群
(N=12)
平均値 標準偏差 平均ランク
χ2値
多重
比較
< 2009/3(t1)>
t1_ 意思伝達スキル
7.80
6.83
17.10
13.22
1.86
10.83
15.00
4.13
14.00
2.27
t1_ 動揺対処スキル
18.71
1.89
22.50
13.38
2.50
12.00
12.42
3.63
10.38
11.25 **
t1_ 自己他者モニタ
リングスキル
13.00
2.52
19.29
10.75
2.25
11.56
11.17
2.21
12.54
4.36
t1_ 他者理解スキル
8.29
3.40
16.14
7.67
1.87
14.67
6.82
2.52
12.09
1.23
①>②、③
<2009/11(t2)>
t2_ 意思伝達スキル
17.43
4.89
15.43
16.25
3.45
14.25
15.09
4.83
11.727
t2_ 動揺対処スキル
16.14
3.08
18.07
14.88
2.30
14.06
12.73
3.32
10.18
4.68 †
1.12
t2_ 自己他者モニタ
リングスキル
13.14
2.34
17.71
11.63
2.45
13.19
10.91
2.74
11.05
3.33
t2_ 他者理解スキル
9.00
3.16
17.14
7.33
2.35
12.17
8.17
2.29
14.71
1.48
† p < .10, ** p < .01
Ⅳ.考察
本研究の結果、中学校入学前後では、抑うつ、身体攻撃、関係性攻撃に有意な変化は見られなかっ
た。また、中学校入学に伴う抑うつの変化は、小学校段階での動揺対処スキルと、中学校入学に伴
う関係性攻撃の変化は、小学校段階での動揺対処スキルと有意な関連が見られた。以下、中学入学
前後での生徒の問題の変化、動揺対処スキルの効果、サンプル数・サンプリングという 3 点について
考察する。
1.中学入学前後での生徒の問題の変化
本研究の結果、中学校入学前後では、抑うつ、身体攻撃、関係性攻撃に有意な変化が見られなかっ
た。
中学校入学前後でのストレス反応の変化を調べた小野寺(2009)は、不安・抑うつは1年かけて徐々
に上昇したこと、そして、不機嫌・怒りは中学校入学前後で上昇したことを報告している。抑うつ
― ―
394
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 60 集・第 1 号(2011 年)
については、本研究の結果と小野寺(2009)の結果では異なる。以下、この点について考察する。本
研究の調査期間は小学校 6 年生の 3 月から中学校 1 年生の 11 月までであり、その期間は約 8 カ月であ
る。一方、小野寺(2009)の調査期間は、小学校 6 年生の 12 月から中学校 1 年生の 12 月までであり、
その期間は約 1 年間である。小野寺(2009)によれば、生徒の抑うつは徐々に上昇する。よって、調
査期間が 4 ヶ月少ないということは大きく影響したと考えられる。特に、卒業間近の 2・3 月、小学
校 6 年生は中学校進学に対して期待よりも不安を強く覚える(都筑,2000;2001)。つまり、徐々に
上昇する抑うつではあるが、卒業間近は比較的急に抑うつが上昇すると考えられる。本研究ではそ
のような時期に、小学校段階の調査を行ったため、小学校段階と中学校段階で有意な差が見られな
かったと考えられる。一方、身体攻撃、関係性攻撃については、本研究の結果と小野寺(2009)の結
果をあわせて考えると、生徒は中学校入学に伴い、不機嫌・怒りの感情を抱くが、それを攻撃行動と
して表現することはないと考えられる。中学校入学に伴い、生徒は友人関係にストレスを感じ、不
機嫌・怒りを覚える(金城・前原,1997)
。一方で、小学校 6 年生は、中学校における対人関係に多く
の不安(いじめ、先輩、友だち、先生)
と期待(友だち、部活)を抱き(都筑,2001)、対人関係に強い意
識を持っている。そのような対人関係に対する意識が、攻撃行動を抑止すると考えられる。つまり、
生徒は中学校入学に伴い、友人関係の中で不機嫌・怒りの感情を抱くも、対人関係を円滑にすすめ
たいと考え、攻撃行動を行わないようにすると考えられる。
今後は、以上の考察を実証的に明らかにしていくこと、つまり、抑うつについては、調査時期をよ
り細かく設定し、
生徒の抑うつの変化をこまめに研究していくことが、そして、攻撃行動については、
不機嫌・怒り、対人関係に対する意識、攻撃行動を測定する尺度を同時配布し、これら 3 者の関連を
明らかにしていくことが必要であると考えられる。
2.動揺対処スキルの効果
本研究の結果、小学校段階で抑うつが低く、中学校入学後、抑うつが上昇した生徒は、小学校段階
での動揺対処スキルが高かった。また、小学校段階で関係性攻撃が低く、中学校入学後、関係性攻
撃が上昇しなかった生徒は、小学校段階での動揺対処スキルが高かった。つまり、動揺対処スキル
の効果は、抑うつの変化に対してと、関係性攻撃の変化に対してとでは逆方向であった。
動揺対処スキルは自らの気持ちをコントロールするスキルである。そして、動揺対処スキルは、
抑うつ、関係性攻撃に負の影響を及ぼす(安達,2009)
。つまり、動揺対処スキルの高い生徒は、抑
うつ、関係性攻撃が低い。関係性攻撃についての結果は、このような動揺対処スキルの特徴から、
以下のように説明できる。低-非上昇群の生徒は、小学校段階での動揺対処スキルが高かったため、
小学校段階での関係性攻撃が低かった。そして、動揺対処スキルが関係性攻撃に負の影響を及ぼす
ということが中学校入学も持続したため、その後も関係性攻撃が上昇しなかった。以上のように、
関係性攻撃についての結果は、先行研究の結果から比較的、容易に導くことができる。
一方、
抑うつについての結果は、
さまざまな要因を含めて考える必要がある。低-上昇群の生徒は、
動揺対処スキルが高かったため、小学校段階での抑うつが低かった。ここまでの説明は、関係性攻
撃についての説明と同じである。しかし、抑うつの場合、関係性攻撃の場合とは異なり、小学校段
― ―
395
中学校入学に伴う抑うつ、身体攻撃、関係性攻撃の変化とコミュニケーション基礎スキルとの関連
階での動揺対処スキルの高さが、
中学入学後の抑うつの上昇と関連していると考えられる。つまり、
動揺対処スキルが抑うつに与える影響は、中学校入学を境に、それまでの負の影響から、正の影響
へと変わったと考えられる。中学生の抑うつにもっとも影響を与える学校ストレッサーは、友人関
係である(岡安・嶋田・丹羽,1992)
。中学校入学前後で、生徒は対人関係にさまざまな期待と不安
を同時に抱く(都筑,2001)
。また、中学校ではいくつかの小学校から生徒が入学するため、それま
での友人関係が一変する。B 中学校においても、新入生に占める、A 小学校出身者の割合は、約
1/3 であり、生徒の友人関係は一変する。つまり、生徒は中学校入学に際して、小学校時代には体験
したことのないような気持ちの動揺を友人関係の中で体験する。小学校までに身につけた動揺対処
スキルでは、友人関係の中で体験するそのような気持ちの動揺に対処することができないのではな
いかと考えられる。低-上昇群の生徒は、小学校段階での動揺対処スキルが高かった分だけ、その
スキルが有効に働かないことで生じるストレス、つまり、中学校入学で体験する友人関係のストレ
スに大きく影響を受け、抑うつが上昇したと考えられる。
今後は、上記した考察の中で提示した仮説、つまり、「生徒の友人関係ストレッサーは中学校入学
前後で質的に変化する」
「そのような質的変化に伴い、小学校時代に身につけた動揺対処スキルは一
時的に機能しなくなる」という仮説を検証していくことが必要である。具体的には、前者の仮説に
ついては、生徒へのインタビュー調査を通じて、中学校入学前後で友人関係に対して感じるストレ
スの質的変化を明らかにすることが必要である。後者の仮説については、中学校入学前後で、友人
関係ストレッサー、動揺対処スキルを何度か測定し、動揺対処スキルが友人関係ストレッサーに対
してもつであろうストレス低減効果が、時間とともにどのように変化するのかを明らかにすること
が必要である。
3.サンプル数、サンプリング
サンプル数について、まず、検出力という観点から考察する。本研究で有意な結果が得られた分
析(多重比較)
の検出力はいずれも .90 以上であった。検出力に関して、Cohen(1992)は、.80 が「慣
習」
(convention)であると述べた。よって、この基準に照らせば、本研究の分析、およびサンプル数
は問題ないと考えられる。しかし、そもそも、本研究ではサンプル数が少なかったために、④高-
上昇群を分析から除外した。つまり、本研究では分析に至る以前の群分けの段階で、サンプル数の
少なさが問題となっていた。今後は、サンプル数を増やし、④高-上昇群も分析対象とすること、
さらには、五十嵐(2011)のように、中学校段階での生徒の問題の指標も群分けに用い、さらに細か
な群分けを行うことが必要である。
また、サンプル数の少なさとも関連するが、サンプリングという観点から見ても、本研究には問
題があったと考えられる。本研究の調査協力者は、A 小学校から B 中学校に入学した者のみである。
このようなサンプリングでは、本研究の調査協力者は、小学校から中学校に入学した生徒全般はも
ちろんのこと、B 中学校の生徒も代表することはできないと考えられる。以上のことから、本研究
は A 小学校の事例検討の意味合いが強く、中学入学に伴う生徒の問題の変化とコミュニケーショ
ンスキルの関連について、新たな視点を提示したという意味では有意義であったと考えられるが、
― ―
396
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 60 集・第 1 号(2011 年)
本研究の結果をそのまま一般化することは難しいと考えられる。
小学校時点と中学校時点にまたがって縦断研究を行う場合、関係する小中学校の了承をとる、小
中学校でのデータを照合するといった研究上の困難がある(都筑,2001)
。今後、このような現実的
制約を最小限にするべく、小中学校との間に密な関係を作り、ランダムサンプリングを幅広く行う
とともに、サンプル数を確保していくことが重要であると考えられる。
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中学校入学に伴う抑うつ、身体攻撃、関係性攻撃の変化とコミュニケーション基礎スキルとの関連
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― ―
398
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第 60 集・第 1 号(2011 年)
【謝辞】
本研究をすすめるにあたり、A 小学校、B 中学校の生徒、学校関係者のみなさまに多大なるご支
援をいただきました。こころより感謝申し上げます。
― ―
399
中学校入学に伴う抑うつ、身体攻撃、関係性攻撃の変化とコミュニケーション基礎スキルとの関連
Children’s depression, physical aggression,
relational aggression and their basic communication skills
: transition from elementary school to junior high school.
Tomoo ADACHI
(Graduate Student, Graduate School of Education, Tohoku University)
The present study focused on relations between depression, physical aggression, relational
aggression and basic communication skills of children who were in the process of transition from
elementary school to junior high school. Participants(N=92)completed questionnaires when they
were in the sixth grade(elementary school)and again when in the seventh grade(junior high
school). The main results were as follows : ⑴ the changes of depression, physical aggression,
relational aggression in the process of transition from elementary school to junior high school
were not significant. ⑵ the increase of depression was related to emotion control skills in
elementary school. ⑶ the increase of relational aggression was related to emotion control skills in
elementary school. At last, the problem of the present study was discussed from the viewpoint of
sample size and sampling.
Key words : transition from elementary school to junior high school, basic communication skills,
depression, physical aggression, relational aggression
― ―
400
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