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FEATURE - ANAグループ企業情報

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FEATURE - ANAグループ企業情報
FEATURE
2 Our Engines
28
ANAホールディングス株式会社
私たちの成長エンジンとして、
ANAグループの国際線提携戦略をご紹介します。
特集:
「アライアンスが生み出す価値」
∼ANAグループの国際線提携戦略∼
アニュアルレポート
2013
29
「アライアンスが生み出す
特集
~ANAグループの国際線提携戦略~
国内線事業において確固たる事業基盤を有してきた ANA グループですが、国際線事業においては
1986年の初就航以来、後発企業としての脆弱な立場が長く続きました。そのため、自社ネットワーク
の構築に加えて、外国航空会社との提携を軸に、事業拡大と収益性向上を図ってきました。
ANA グループの国際線提携戦略は、世界最大のグローバルアライアンスである
「スターアライアンス
(Star Alliance)」への加盟を契機として進化を続けています。特集では、スターアライアンス本社
(Star Alliance GmbH)
への出向経験もある、ANA 国際提携部の山室へのインタビューを通じて、航空
業界の提携の歴史から、ANA グループの国際線提携戦略の軌跡、そして未来についてご紹介します。
航空業界における提携の歴史
Q
国際線のネットワークを語るうえで、パートナーキャリアとの提携は不可欠な要素です。まずは、
航空業界において、提携戦略がどのように変遷してきたか、大まかな流れをご説明ください。
1978年の米国規制緩和法の施行から自由化が始まった
バルアライアンスが形成されることとなります。ANA が加
航空業界ですが、現在のようなグローバルネットワークが
盟する
「スターアライアンス」
は、1997年、ルフトハンザ ド
構築される契機となったのは、1995年に公表されたオー
イツ航空とユナイテッド航空の提携を核として、5つの航空
プンスカイ協定 ※ 1ということができると思います。これに
会社によって発足しました。英国航空とアメリカン航空を軸
より、輸送力や運賃、参入地点に関する規制が緩和され、
とした
「ワンワールド
(oneworld)
」
は 1998年に設立。現
コードシェアなどの新たな運航形態が認められるようにな
在、エールフランス-KLM オランダ航空、デルタ航空など
りました。コードシェアとは、提携パートナーキャリア間で、
が所属する
「スカイチーム
(Sky Team)
」
は 2000年に発足
お互いの運航便に提携先の航空会社の便名表示を認め、
しています
(2002年には 1993年に結成された
「ウィングス
それぞれが自社便としてネットワークを広げ、マイレージ
(Wings)
」
と合併)
。
の付与などフリークエントフライヤープログラム(FFP:
そして近年は、グローバルアライアンスからさらに深化
Frequent Flyer Program)
の付加価値なども活用しなが
したジョイントベンチャー
(JV:Joint Venture)
と呼ばれる
ら、販売力を強化しようとするものです。
提携形態があり、現在グローバルレベルでいくつかの事例
こうしたコードシェアなどの提携が発展し、航空会社間
を見ることができます。
で多面的・戦略的に進めた提携として、現在 3つあるグロー
※ 1. 1992年に米国-オランダ間で先取りして 2国間協定を締結
航空業界の変遷とグローバルアライアンスの背景
1978年
アライアンス別 日本発着国際線座席キロシェア
米国規制緩和法施行⇒自由化
1980年代
ハブ&スポーク戦略とCRS※ 戦略の発達
FFPの登場
1992年
オープンスカイ協定の締結(米国−オランダ)
・
・
・スカイチームの原点
1996年
オープンスカイ協定の締結(米国−ドイツ)
・
・
・スターアライアンスの原点
※CRS: Computer Reservation System
1997年
スターアライアンスの誕生
1998年
ワンワールドの誕生
2000年
スカイチームの誕生
(%)
その他
13
ワンワールド
スター
アライアンス
37
25
スカイチーム
25
企業間の競争からアライアンス間の競争へ
(各アライアンスホームページなどを参考に作成)
30
ANAホールディングス株式会社
出典:OAG
(2013年 5月時点)
データを基に作成
価値」
ANA国際提携部 山室 美緒子・略歴
1987年 6月 成田客室部客室乗務員・国際線乗務
2000年12月 客室本部品質企画部
2004年 7月 営業推進本部顧客マーケティング部
(スターアライアンス担当、提携業務担当)
2008年 9月 Star Alliance GmbH出向
(在フランクフルト、Loyalty Manager)
2012年 7月 国際提携室(現:ANA国際提携部)
グローバルアライアンスの動向
Q
グローバルアライアンスでは、どのような取り組みを進めているのでしょうか? また、現在の
趨勢について教えてください。
グローバルアライアンスの基本的なメリットとしては、先
競争力向上に注力してきたわけですが、LCC の台頭などを
ほどお話ししたコードシェア運航の活用などを含めたネット
背景に、航空業界の勢力図は大きく変わりつつあります。
ワーク拡充に加え、①共通ターミナルの使用による利便性
グローバルアライアンス間の競争だけでなく、いずれの
向上、② FFP 提携による競争力向上、③空港ラウンジなど
グローバルアライアンスにも加盟しない LCC や中東キャリ
の共同施設確保、④機内サービス用品、航空燃料などの共
アとの競争にも対応していかなくてはなりません。また近
同購入によるコスト削減などが挙げられます。また、相互
年では、加盟アライアンスの移籍
(2009年 10月のコンチ
に安全監査を定期的に実施したり、事故などの緊急事態
ネンタル航空の
「スカイチーム」
から
「スターアライアンス」
発生を想定して、情報収集や言語サポートも含めた顧客対
への移籍など)
や、異なるグローバルアライアンスに加盟
応の初動体制を構築する訓練を重ねるなど、イレギュラー
する航空会社間の提携という事例もあります。ネットワーク
対応にも備えています。
が複雑に入り組み、さまざまな競争環境が生まれてくる中、
こうした取り組みを通じ、各グローバルアライアンスは
今後もこうした事象は発生してくるものと思います。
JVの動向
Q
より深化した提携の形態である JVとは、どういった内容なのか教えてください。
JVとは、運航ダイヤ改善などの利便性向上や、運賃低減
ではこうした内容の提携にまで踏み込むことが可能です。
も含めた選択肢の多様化といった、利用者にとってのさまざ
JV パートナーキャリア総体としての競争力を最大限発揮で
まなメリットを実現させることを前提条件として、例外的に
きるように、路線・便数、運航時間帯の調整、共同運賃を設
各国の独占禁止法適用除外
(ATI:Anti Trust Immunity)
定することができるようになります。
が認められ、より戦略的な提携に取り組むことができる
また、こうした取り組みによってJV 全体の収入を最大化す
スキームです
(P34の用語説明をご参照ください)
。
ることを目指すとともに、各社の収入をいったんプールして、
JV 提携開始以前のコードシェア運航では、ネットワーク
所定のルールによって各社に再配分するというしくみを導入
構築やマーケティングなどに関する会社間の個別協議は、
することも可能になってきますので、これは提携の域を超え
独占禁止法の観点から認められていなかったのですが、JV
た共同事業と言い換えることもできます。JVは、1992年に
アニュアルレポート
2013
31
ATI を承認された KLM オランダ航空とノースウェスト航空
大西洋マーケットにおいて実施した JV が最初のケースで
(いずれも当時)
の提携に始まり、
「スターアライアンス」
では
す。これ以降、旅客利便性の向上と競争力強化を同時に可
ユナイテッド航空、エア・カナダ、ルフトハンザ ドイツ航空が
能とする、より深化した戦略的な提携が進められています。
ANA の提携戦略の推移
Q
ここからは、ANA グループの戦略についてお伺いします。ANA グループの提携戦略も時代と
ともに変わってきたものと思いますが、その変遷について解説してください。
今日の ANA グループのグローバルネットワークの形成
航空業界はグローバルな政治経済情勢や社会現象に起
は、やはり1999年の
「スターアライアンス」
加盟が大きな
因するさまざまなイベントリスクに常にさらされており、と
契機だったと思います。1998年に締結された日米航空協
りわけ国際線事業ではその傾向が顕著です。2000年代に
定の暫定合意を受け、
「スターアライアンス」
9番目のメン
入ってからも、2001年の米国同時多発テロ、2003年のイ
バーとして加盟したわけですが、比較的初期のメンバーと
ラク戦争、鳥インフルエンザ
(SARS)
、2008年から 2009
して加盟した意義は大きいものでした。加盟当時の ANA
年にかけての世界同時不況と新型インフルエンザの流行な
の国際線事業の規模は現在よりも小さく、空港発着枠の制
ど、国際線マーケットの需要を大きく減退させるような出来
限もあり、自力で必要かつ十分なネットワークを構築するこ
事が断続的に発生したのですが、ANA グループは、こうし
とは困難な状況でした。
「スターアライアンス」
への加盟は、
た困難な事業環境を何とか乗り越えてきました。
ネットワークの拡充に向けた有効な手段だったとはいえ、こ
それを可能としたのは、国際線の事業規模を拡大する過
こまでグローバルアライアンスのプレゼンスが拡大するこ
程で、自社運航便のネットワークのみに頼らず、
「スターア
とも想定できなかった当時の状況の中、社内では加盟に反
ライアンス」
メンバーキャリアのネットワークを効果的に活
対する意見も少なくありませんでした。
用したことが大きいと思います。また、自社運航の直行便
しかし実際は、
「スターアライアンス」
加盟メンバーとコード
で 2地点間を行き来する旅客需要のみをターゲットとする
シェアを次々と設定する中で、ANA グループのネットワーク
のではなく、前後区間の接続便を含めた旅客流動を取り込
がグローバルに拡大し、2002年の成田空港の発着枠増加
んできました。こうして、パートナーキャリアとの提携に
と相まって、国際線収入は飛躍的に伸びていきました。
よって効率的にグローバルネットワークを構築し、需要の裾
ANA グループの国際線提携戦略推移
[航空業界関連イベント]
2010年
成田空港拡張(22万回)
羽田空港国際化(6万回)
(昼間時間帯3万回
深夜・早朝時間帯3万回)
2001年
米国同時多発テロ
2003年
イラク戦争、
鳥インフルエンザ(SARS)
1998年
日米航空協定暫定合意
1986・・・・・・1998
2000
2002
1999年
「スターアライアンス」加盟(9番目)
1986年
国際線定期 初就航
[ANAグループの展開]
32
ANAホールディングス株式会社
2004
2008∼9年
世界同時不況、
新型インフルエンザ流行
2006
2008
首都圏国際線発着枠
2013年 成田空港増枠(27万回)
2014年 羽田空港増枠予定(昼間時間帯6万回)
2015年 成田空港増枠予定(30万回)
2012年
成田空港増枠(25万回)
2011年
東日本大震災
2010
2012・・・・・・・・・・・・・・(年)
2011年
ユナイテッド航空およびコンチネンタル航空※2との
太平洋ネットワークに関する
「Transpacific JV」の開始
2012年
ルフトハンザ ドイツ航空との
日本−欧州間ネットワークにおける
「LH/NH JV」の開始
特集 :
「アライアンスが生み出す価値」
野を拡げるという戦略が、国際線事業の急速な拡大を支え
こうして、ANA グループの提携戦略としては、
「グローバ
てきた一方で、事業のボラティリティリスクも最小限に食い
ルアライアンス」
「JV」
、そして
「バイラテラル」
と呼ばれるア
止めることにも貢献したと考えています。
ライアンス加盟メンバー以外の航空会社との個別提携とい
そして、2011年、ANA グループの提携戦略は新たな
う枠組みが確立されました。この 3つの提携パターンをそ
ステップに踏み出しました。ATI 認可を受けて、同年 4月
れぞれ進化させながら的確に組み合わせて、ネットワーク
からはユナイテッド航空およびコンチネンタル航空
※2
との
太平洋ネットワークに関する
「Transpacific JV」
を開始し、
2012 年 4 月からはルフトハンザ ドイツ航空
※3
との日本
−欧州間ネットワークにおける
「LH/NH JV」
をスタートさせ
ました。
の拡充と収益性の強化を図っていくというのが基本的な考
え方です。
※ 2. ユナイテッド航空とコンチネンタル航空は、2011年 10月に合併し、2012年
3月に運航便名をユナイテッド航空に統一
※ 3. 2013年 4月より、ルフトハンザグループにスイス インターナショナルエアラ
インズとオーストリア航空が加盟
「スターアライアンス」における取り組み
Q
では、提携戦略の発展の契機となったグローバルアライアンスの活用についてお伺いします。
これまでに説明のありましたネットワーク構築などのほかに、
「スターアライアンス」
への参加を
通じてどのような取り組みを行っているのかお聞かせください。
グローバルアライアンスについては、従来どおり
「スター
「スターアライアンス」
アライアンス」
加盟メンバーとの提携を進めていきながら、
メンバ ー 間での 、乗り
そのブランド力を活用して収入拡大に取り組んでいきま
継 ぎ の 利 便 性を高め、
す。また、ANA グループとして
「スターアライアンス」
が目
シームレスな空の旅を
指す方向性に影響力を与えながら、競争力向上に寄与して
提 供することを目 指し
いくことが重要だととらえています。
て、使用ターミナルの
私自身、
「 スターアライアンス」の本社機能ともいえる
共通化にも取り組んで
Star Alliance GmbH に 4年間出向していたのですが、
います。
「Move Under
ANA グループが果たすべき機能・役割は非常に大きい
One Roof」プロジェク
と感じました。例えば、アライアンスマネジメントボード
トと呼ばれており、
「ス
の議長を ANA 取締役副社長の岡田が務めるほか、ANA
ターアライアンス」
最重要のプロダクトといえるかもしれま
からの出向者が継続的に配置されており、アライアンス
せん。2006年 6月の
「スターアライアンス」
メンバーによ
内での ANA グループのプレゼンスは極めて高いといえる
る成田空港第 1ターミナル南ウィングへの集結は、世界で
でしょう。
初めてグローバルアライアンスによるターミナルの共通
また
「スターアライアンス」
加盟に際して、各エアライン
使用が始まった事例でした。現在、
「スターアライアンス」
は 70項目近いルール、サービス基準、システム要件を満
が一番力を入れているのはロンドンのヒースロー空港で、
たすことが要求されています。ところが、現在 28 社と加
2012年 12月に申請が受理され、ターミナルの改修に合
盟メンバーが増加してきている中、サービス面で各社の足
わせて運用準備を進めています。
並みが揃わないケースも見られ、品質の標準化は重要な
こうした「スターアライアンス」の品質向上が ANA グ
課題となっています。アライアンス内ではここ数年、基本
ループの競争力につながることは間違いありませんので、
品質の向上に取り組んでいますが、きめ細やかなサービ
今後も、
「スターアライアンス」
のブランド価値向上に向け
スに定評があるANA グループに寄せられる期待は大きく、
て、積極的に取り組んでいく方針です。
「スターアライアンス」全体の品質向上を牽引する役割を
担っています。
アニュアルレポート
2013
33
ANA が参画している JV の成果
Q
JV については、大きな成果があがっているとお聞きしています。実際、従来のコードシェアに
よる提携と比べて、どのような面で効果が大きくなっているのでしょうか。
JV の活用は、想定
年 3月期にはユナイテッド航空による販売席数が、JV 開始
以上の成果をもたらし
前と比べて大幅に増加しており、高い座席利用率を生み出
ています。大きな旅客
す要因となっています。また、ANA の成田−マニラ線や成
流 動 の ある欧 米 長 距
田−ホーチミンシティ線の好調な輸送実績は、高い成長を
離路線で、パートナー
続けている北米−アジア間の接続旅客需要を取り込んでい
キャリアの路線ネット
る成果ということができます。JV ならではの路線・便数設
ワークや 販 売 体 制 を
定や接続ダイヤの調整、さらには魅力的な運賃設定を通じ
効率的に活用して、競
て、ネットワークをグローバルに拡大し、まさに私たちの狙
争 力 の ある供 給 体 制
いとする戦略が達成できたものととらえています。
を整えることができた
こうしたネットワークや生産調整、運賃政策はもちろん
ことが要因だと見ています。
のこと、営業面でも JV のメリットは小さくありません。コー
JV を開始するにあたり、日米間と米州域内、日欧間と
ドシェア提携においても、パートナーキャリア同士相互に
欧州域内をくまなく網羅するパートナーキャリアのネット
販売協力は行いますが、運賃収入は運航便キャリアに帰
ワークを
「ANA が運航する自社便ネットワーク」
と同等と見
属し、販売協力したキャリアは販売手数料を得るのみです
なし、自社運航便とパートナーキャリア運航便を自由に組
ので、おのずと自社運航便の販売に力を入れがちとなりま
み合わせてご利用いただけるJVとしての共通の運賃体系
す。ところが JV では、パートナーキャリアの収入は全体で
へと再構築しました。その結果、日本発エコノミークラス
プールをした後、パートナー間で再配分を行うため、自社
の割引運賃を例に取ると、北米向けの運賃設定都市数は
運航便とパートナーキャリア運航便のどちらを優先して販
2013年 6月現在で約 250都市
(JV 開始直前の 2011年 3
売すべきか、という考えは意味を持たなくなります。今で
月期末は約 120都市)
、欧州向けでは 2013年 6月現在で
は、JV 収入を最大化するという共通目標の下で、パート
約 190都市
(JV 開始直前の 2012年 3月期末は約 120都
ナー同士が一丸となって販売に取り組んでいます
(詳細に
市)
と、大幅に増加させることができています。また JV 開
ついては、P35の
「コラム:JV のレベニューマネジメントの
始前までは、米州・欧州の乗り継ぎ都市向けの運賃は、ゲー
しくみ」
をご参照ください)
。
トウェイ空港から乗り継ぎキャリアが運航する区間に対し
また、これまでは訴求が困難であった非日系のお客様に
て追加額を加算する設定をしていましたが、JV 開始後は
対し、米州・欧州それぞれをベースとするパートナーキャリ
米州・欧州域内都市を各ゾーン別に区分し、同一ゾーン内
アの販売網を利用してセールスすることで、ANA グルー
では直行・乗り継ぎの区別なく各都市向けの運賃を同一と
プにとっての新たな需要獲得の可能性は格段に高まりま
することにより、シンプルかつ競争力のある運賃体系へと
す。一般のお客様向けのジョイントセールスはまだまだ強
変更しました。こうしたことによって、JVトータルとしての
化する余地がありますが、企業契約はすでに JV の中で共
マーケット競争力を高め、旅客需要喚起とシェア獲得に成
通化されているため、非日系の法人顧客を大きく取り込む
功しています。
ことが可能になってきています。こうした効果もあり2013
一例を挙げると、ユナイテッド航空とコードシェアをして
年 3月期における外国籍のお客様の構成比は、国際線全体
いるANA の運航便
(北米・アジア路線)
で見た場合、2013
で約 34%と前期比で約 3ポイント上昇しています。
ジョイントベンチャー
(JV:Joint Venture)
国際航空業界において ATI 認可を得て実施される 2社以上の航空事
国際航空業界では、2国間航空協定や外資規制などの制限が残存し
トベンチャー、利益シェアジョイントベンチャーなどがある。同じグロー
ているため、他産業では一般的となっているグローバルな資本提携
バルアライアンスに所属する航空事業者同士がジョイントベンチャー
(合併、買収、合弁会社設立)
に代わるものとして ATI を前提としたジョ
で提携深化することにより、利用者に対しそれまで以上に多様な路便
銘柄や低廉な運賃商品を提供することが可能となり、他アライアンス
34
に対する競争力を強化することができる。
業者間の共同事業をジョイントベンチャーという。収入シェアジョイン
ANAホールディングス株式会社
イントベンチャーが活用されている。
特集 :
「アライアンスが生み出す価値」
今後の提携戦略の方向性
Q
最後に、これからの中長期的な成長に向けた提携戦略全般について、どのような取り組みを
行っていくのか、今後の課題やご自身の抱負とあわせてお聞かせください。
JV はまだ歴史も浅く、課題も少なくありません。現状
運送事業の根幹の目的に資する提携を行っていくことが基
は、ようやく枠組みができあがったところといってもいいか
本方針となります。グローバル経済の動向が目まぐるしく
もしれません。
変化し、お客様の流動が多様化し、航空業界の動向も刻一
例えば、先ほども触れたジョイントセールスでは、膨大か
刻と移り変わっていく中、JV をはじめとするさまざまな提
つ詳細なデータをパートナーキャリア同士で交換し、共有
携パターンからベストな選択肢を引き出していくことが重
するためのシステム構築と運用が不可欠であり、より精緻
要です。常に先を読み、スピーディーで革新的な提携戦略
なデータ分析を行っていく必要があります。こうした分析
を実践していくことが、今後の ANA グループの成長にとっ
を通じて、ANA グループ 1社だけでは提供できなかった利
て肝要です。
便性やサービス、さらには従来のコードシェア運航とは異
同時に、将来の成長を実現していくには、効果的な提携
なるJV ならではの付加価値を提供することで、アライアン
戦略を構築できる人材の育成が重要です。世界中のパート
ス同士の競争を勝ち抜き、これまで以上の価値をお客様に
ナーと提携に向けた交渉を的確に進められる、すなわち高
提供していくことを目指しています。
い専門性やスキルに裏づけられた真のグローバル人材を、
今後の ANA グループにおいて、国際線事業は成長の牽
ANA グループも数多く育成し、輩出していくことが大切で
引役です。そして、空港発着枠や機材といった経営資源に
す。これも、スターアライアンス本社への出向や提携業務へ
限りがある以上、国際線事業の発展に提携戦略は欠かせま
の従事を通じて、多くの経験を積む機会を与えていただい
せん。
た私にとっての今後の大きなミッションだととらえています。
グローバルな競争に勝ち抜くための提携戦略としては、
ANA グループはアジアを代表する航空会社の一つとな
「効率的な生産量拡大」
を通じて、
「 旅客利便性に優れた質
の高いサービスの提供」
「売上と収益の最大化」
という航空
りました。提携戦略においても、航空業界を牽引し、高い
価値を発揮し続けていくべく、挑戦を続けていきます。
コラム:JV のレベニューマネジメントのしくみ
「個社間競争」
から
「アライアンス間競争」
へと時代が移り変
一人ずつ社員を派遣し、ANA の本社にはそれぞれから一人
わる中、パートナーキャリアと一体化したメリットをお客様に
ずつ常駐社員を受け入れ、3 拠点に
「ジョイントプライシング
ご提供することが、他アライアンスに対する競争力確保の観
チーム」
を設置して、JVとしての収入最大化実現に向けて目を
点において最も大事なポイントとなります。
光らせています。
これを実現するために、シカゴのユナイテッド航空本社と
これによって、個社では実現し得なかったバラエティ豊かな
フランクフルトのルフトハンザ ドイツ航空本社に ANA から
運賃ラインアップを共同で設定・販売しており、またこれらの
「共通運賃」
の適用条件においてパートナーキャリアの運航便
も自社便と同等に扱うことにより、お客様にご利用いただける
ネットワーク・運賃バリエーションを飛躍的に拡大させています。
また、需要予測ほかマーケティング情報についても日々綿
密にやり取りすることによって、運航便キャリアそれぞれの強
みを活かす適切な商品
(運賃)
が適切なタイミングで販売され
ていることを確認しています。
「メタルニュートラル
(=どちらの
運航便であるかにかかわらず等しく販売する)
」
のコンセプトを
基に、JV のレベニューマネジメント効果を最大限に発揮する
ことを目指しています。
「LH/NH JV」
のルフトハンザ ドイツ航空とのレベニューマネジメント代表
者会議にて。左から 2番目が ANA の宮川。
ANA マーケティング室
ジョイントベンチャーチーム
宮川 弘之
アニュアルレポート
2013
35
Fly UP