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和文 - 日本記者クラブ

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和文 - 日本記者クラブ
日本記者クラブ記者会見
日豪:グローバル・パートナーシップ
アレグザンダー・ダウナー豪州外務大臣
2006 年 8 月 1 日
社団法人
日本記者クラブ
はじめに
この機会に日豪両国が共有する国益について、またすでにお互いに多大なる利
益をもたらしてきた関係をより前進させる可能性についてお話することができ、
大変嬉しく思います。
私は 6 ヶ月少し前の昨年 12 月に、イラク南部のムサンナ県にいるオーストラリ
ア軍兵士を訪問していました。
宿営地キャンプ・スミッティにて、我々は側面に日の丸が描かれた自衛隊のジ
ープによる長い車列のそばを通りました。
私は豪英軍司令官の他に、自衛隊部隊長とも会いました。
ここではオーストラリア軍兵士が、連日日本の自衛隊員と共に協力して活動し
ていました。我々の兵士は実際、日本側の活動に安全な環境を提供するという
任務を実行していました。
ここで申し上げたいのは、両国の関係はわずか 20∼30 年程でここまで進んだと
いうことです。
このイラクにおける協力は、両国の戦略的関係の発展、より広くは二国間関係
の深まりを明らかに示しています。
しかしより重要なのは、両国を真に強く結びつけているものは何かということ
が、ここに示されているという点です。
この点を理解するにあたっては、こう問いかけてみると良いでしょう。なぜ日
豪はそこにいたのか?と。
それは両国が自由を重んじるからです。
両国は自由主義、市場中心の経済を持つ民主主義国家であり、自由について知
っていると共に、それが広めるべき価値観であると信じています。サダム・フ
セインはイラク国民への自由を否定してきました。
我々は安定した国際秩序を重んじ、サダム・フセイン時代のイラクはそうした
秩序を否定してきました。
フセインが去った環境において、果敢にも民主主義を支持したイラク国民を支
援する義務があると我々は考えました。
無論、我々がイラクにいたのは、両国が共に米国と強固な同盟関係にあるから
でもあります。
我々は、自らの価値観と安定した国際秩序を守るという全ての負担を、米国に
のみ押しつけるべきでないと考えています。
真の同盟国というのは、負担を分け合うものだと思います。
同時多発テロ事件以降の世界において、これは日豪関係における現実です。
両国は先進自由主義民主国家であり、アジア太平洋地域における米国の同盟国
です。
これは両国が同じ価値観の多くや、同じ機会、責任の多くを共有するというこ
とです。
日豪は地球規模の安全保障上の課題に直面しており、これらに対処するのを恐
れていてはいけません。
中東における戦闘はこの瞬間も続いていますが、これも我々にとり重要な問題
です。
ヒズボラの行動は我々の価値観への侮辱であり、最終的には国際秩序への挑戦
であります。
こうした破壊主義に傾倒した敵による、消滅という脅威の下で暮らす中で、イ
スラエルが自国民の死傷者をだまって見ていられるとは到底思えません。
我々はまたテロリストの脅威を支援するイランとシリアの役割も無視する訳に
はいきません。
地域のためにも、また戦闘に巻き込まれた両方の恐怖におびえる民間人のため
にも、我々は皆この戦闘の終結を望みます。
国際社会はしかし、持続する解決策を支持する必要があります。イスラエルに
安全を与え、レバノン政府に統治権を回復させ、この国家内の国家とも呼ぶべ
き存在、ヒズボラを立ち退かせるのが、解決策であるべきです。
より近い地域では、日豪は北朝鮮をめぐる安全保障上の問題に取り組むにあた
って力を合わせています。
北朝鮮は先月、国際社会からの警告を無視し、無責任にもミサイル実験を行い
ました。これに対し日豪は共に行動しました。
日本が国連安全保障理事会による強力な決議の採択を目指したのを、我々は支
持しました。
我々はまた国際社会と共に、北朝鮮のミサイル実験凍結と 6 ヶ国協議への迅速
かつ無条件の復帰を要求しています。
北朝鮮は、拉致問題にも適切に対処しなければなりません。
両国のテロ対策担当大使間の定期会合が示すように、日豪は世界規模のテロと
の戦いでも歩調を合わせています。
またこの点で、東南アジア諸国への支援プログラムにおいても調整を行ってい
ます。
両国は大量破壊兵器の拡散防止においても、深く関与しています。
日豪は拡散に対する安全保障構想(PSI)の確立において主導力を発揮すると共
に、他国の参加を促し、また幾つかの関連する演習・訓練を主催してきました。
両国にとり多国間の貿易システムは基本的に重要であり、したがって WTO 交渉
の中断には失望しました。
我々は合意に向けた交渉再開への日本の力強いコミットメントを歓迎し、これ
を共有します。
また気候変動の分野においても、日豪は共にクリーン開発と気候に関するアジ
ア太平洋パートナーシップを先導し、共に第 1 回会合参加国となりました。
この画期的なアプローチは、先進国、途上国を合わせた 6 ヶ国が、気候変動に
取り組む民間部門の実際的かつ技術面を中心とする努力を、経済発展を支援し
つつ促進していくものです。
両国はまた地域問題においても同様に、活発な取り組みを行っています。
我々は東アジアの地域の枠組みが、開かれた透明かつ包括的な形で進化してい
くよう望んでいます。
両国はこうした枠組みを、APEC や東アジアサミット、その他の地域フォーラ
ムを通じてアジア太平洋地域で形成していくことに合意しました。
そして我々は、この地域に繁栄と安定をもたらす上で今後も米国が主たる役割
を負うべきであると思います。
日豪は、地域における災害や安全保障上の危機に対処するにあたって絶えずパ
ートナーとして活動しています。
インド洋津波による被害がその良い例であり、両国は国際援助を主導する役目
を果たしました。
また東ティモールでも行動を共にし、両国による平和維持活動が独立への移行
期に重要な役割を果たしました。
両国は、カンボジアにおける恒久平和の構築にも一役買いました。
さらにかなり前の東アジア金融危機において、日豪は3つの国際通貨基金
(IMF)支援プログラム全てに拠出した唯一の国です。
両国は、戦略面での関与や見事な成果を収めている経済関係をさらに拡大し、
すでに十分成功している両国関係を次のレベルに進めていく大きな機会を得て
いると思います。
二国間アジェンダ
小泉首相や他の政府トップの方々との本日、明日における会談を通じ、我々は
二国間の野心的なアジェンダに現実的効果をもたらすよう取り組んでいきます。
これまで取り上げた両国の協力活動は、いかに日豪が安全保障や防衛の分野で
関係を強化してきたかを語るものですが、しかしもっと多くのことが達成でき
ると思います。
無論、日本で憲法をめぐる重要な議論が引き続き活発になされているのは、承
知しています。
我々はしかし、例えばアチェやイラクのような場所で共に人道活動を行う際に、
国民がそれに対し適切に備えられるよう、また彼らの安全が保証されるよう共
同訓練・演習を十分行っているのか自問する必要があります。
さらに戦略面での関係の現状とその方向性が、防衛交流における現在の覚書に
適切に反映されているか考える必要があるかもしれません。
オーストラリアは、日本が心地よいペースで両国間の戦略パートナーシップを
発展させる心構えがあります。
日豪は、両国のパートナーである米国とより緊密に行動しています。日豪米の
三ヶ国は閣僚会合の開催に合意しており、この 3 月に初回会合をライス国務長
官、麻生大臣とシドニーで開催できたことは大きな喜びでした。
この会合では、テロ対策や核拡散防止、災害援助などの分野で実際的な協力の
範囲を検討していく点で合意しました。
日豪が共に米国を同盟国としていることにより実際、将来の戦略面での関係を
発展させる大きな可能性が生まれています。
経済関係−さらなる強化
次に経済関係について見ていきたいと思います。
1957 年に当時のマッキュエン貿易大臣と岸首相は、日豪通商協定に調印しまし
た。
本協定は、その後歴史上で最も成功した調和的な貿易・経済関係の始まりとな
りました。
本協定は両国の現代における経済発展に、実に大きな影響を与えました。
1960 年代以降、日本はオーストラリアの物品の最大輸出目的地です。
日本の企業は、我々の生産能力の増強に著しい投資を行ってきました。
この関係は両国に大きな利益をもたらすものでした。オーストラリアのとりわ
けエネルギー、鉱山資源、農産品の質と供給信頼性は、過去 50 年間にわたり日
本経済のめざましい成果において大きな役割を果たしてきました。
しかしこのような状況を、当たり前のものと考えてはいけないと思います。
我々の世代は、将来の戦略・貿易分野での関係に対し貢献を行うべきです。
そのためには、日豪通商協定を 1957 年に調印した方々が示したのと同じビジョ
ンを示す必要があります。
私自身は、そのための最良の方法が FTA ではないかと思います。これは両国の
長期的かつ戦略的な関係において重要な要素であると我々は考えます。
これはふたつの民主的な先進国経済をより緊密にするものです。
この点から、2005 年 4 月に日豪首脳が立ち上げた共同研究グループが、今年の
終わりまでに研究を完了させるべく作業を進めているのを嬉しく思います。
初期のフィージビリティ−研究では、すでに FTA は両国にとり大きな利益をも
たらすという結果を出しています。
両国政府による計量経済学モデル分析では、日豪 FTA は両国が他国と交渉して
いるいかなる FTA よりも効果が大きいと結論しています。
東アジアにおける経済統合が言われる中、両国がこの点で合意すれば、東アジ
ア共同体というより広いビジョンに向けた前向きのステップとなります。
FTA は両国間で深まる経済交流をより強固にし、さらに重要なことに、日本が
将来主要な資源やエネルギーの安定供給を確保し、食料の安全保障を実現する
のを助けます。
我々は無論、センシティブな分野があるために FTA の実現には難しい部分があ
ること、かなりの面で柔軟な対応が必要であること、経済、政治の両面から納
得いくものとする必要があることを理解しています。
日本は我々にとり重要な国であり、我々はこの重要な関係にマイナスとなるこ
とは決してしたくありません。
日豪通商協定や次に触れる日豪友好協力基本条約の時と同様、FTA の交渉は困
難さ、複雑さを伴うかもしれませんが、最終的には大きな利益を両国にもたら
すものです。
終わりに
ご列席の皆様。
日豪が歴史的な日豪友好協力基本条約に調印して以来、ちょうど 30 年になりま
す。
ハワード、小泉両首相はこの節目を、2006 年日豪交流年という形で祝うことに
合意しました。この交流年は、両国で一連の文化イベントや、両国関係の将来
についての会議、またその歴史についての展示会を通じて両国民間のつながり
を深めるものです。
しかし今回の訪日では、私は両国間の将来に焦点の大半を当てています。
この将来は、自由民主主義の価値観へのコミットメントや経済・貿易関係拡大
による利益、地域・地球規模での安全保障問題への関心等の共有により支えら
れています。
両国は今や真にグローバルなパートナーシップにおいて、戦略的関与やすでに
成功を収めている経済的なつながりを拡大する大きな機会を得ています。
つまり我々はこの素晴らしい関係における一体化をさらに推し進め、あらゆる
分野で次のステップに進んでいくべきです。
私の出身である南オーストラリアでのある出来事が、両国の新しい関係を象徴
しています。
これは今年 5 月にアデレードの近くで行われた、海上自衛隊 P3-C 哨戒機による
エジンバラ空軍基地への初の親善訪問でした。
日本側は何名かのオーストラリア軍兵士が日本語が流暢であることに驚きまし
たが、移動中のバスでオーストラリアの空軍兵士がマイクを取った時にもっと
驚きました。
というのは、彼が即興のカラオケ大会を開くと宣言し、ついには「すきやきソ
ング・上をむいて歩こう」など日本の伝統的な歌が歌われ始めたからでした。
そして日本側ももちろんこのバス内のカラオケに加わりました。
このような協力の形は大変素晴らしいものです。もっともこのカラオケのよう
な状況が閣僚レベルまで上がってこなければの話ですが。
ご清聴どうも有り難うございました。
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