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恋愛非リア充の恋愛リア充を意識した 変身消費者心理プロセスの解明

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恋愛非リア充の恋愛リア充を意識した 変身消費者心理プロセスの解明
恋愛非リア充の恋愛リア充を意識した
変身消費者心理プロセスの解明
① ―――はじめに
(6)心理プロセスの解明結果の考察(研
究 1-2)
② ―――序論
1.本研究で行う消費者の定義づけ
(7)要因間の影響度合いの比較結果(研
2.研究目的
究 2)
3.対象設定
(8)要因間の影響度合いの比較に関する
4.現状分析
考察(研究 2)
6.本研究で得られた知見
(1)恋愛への関心
(2)恋人が欲しくなる要因
④
―――新規提案
(3)恋愛においての外見
1. アプリの現状
(4)恋愛非リア充の特徴
2.「implove アプリ」の認知機会
5.問題意識
3.「implove アプリ」のコンテンツ
③ ―――本論
(1)
「implove アプリ」の概要
1.既存研究レビュー
(2)
「恋愛リア充」の場合
(1)準拠集団概念
(3)
好きな人がいない「恋愛非リ
(2)準拠集団の影響力
ア充」の場合
(3)熱望集団に関する研究
(4)
好きな人がいる「恋愛非リア
(4)理想自己と現実自己の概念
充」の場合
(5)理想自己と現実自己の差
(5)
来店時における LOVE ポイン
(6)変身の消費者心理
ト
2.新モデルの提唱
⑤
―――結論
3.仮説提唱
⑥
―――今後の展望
⑦
―――おわりに
4.仮説検証
(1)調査方法と調査内容
(2)検証方法と手段
参考文献
5.分析結果及び考察
補録
(1)潜在変数の設定
(2)共分散構造分析
(3)心理プロセスの解明結果(研究 1-1)
川久智美 村田啓輔
(4)心理プロセスの解明結果の考察
(5)心理プロセスの解明結果(研究 1-2)
神村百香 野本啓剛
1
① ―― はじめに
恋愛の話題において、交際相手がいる人を「リ
人々は、自身の外見を向上させるために数々の
ア充」
、交際相手がいない人を「非リア充」と表現
努力や外見に対しての消費を行っていると考えら
することが多い。リア充という言葉は、2006 年頃
れる。外見を向上させる消費の具体例として、洋
からインターネットの大手掲示板「2 ちゃんねる」
服に気を遣いおしゃれになる事、ジムに通いダイ
により使われ始めたインターネット造語である。
エットをする事、美容室に通い髪型や髪色を変え
リア充の一般的な意味は、
「実際の生活(リアルな生
る事、化粧品を変える事が挙げられる。人々が外
活)が充実している人のこと」である。具体的には、
見を向上させる動機として、周囲や意中の異性に
恋人に恵まれている人や張り合いのある職業につ
良く見られたい等、多様な欲求が挙げられる。特
いている人が挙げられる。しかしながら、前述し
に外見を向上させる際、異性からの印象を気にす
た通り交際相手の有無によって使い分けられてい
る人は多いと考えたため、本研究では「恋愛」に
ることが多い。したがって、本研究では交際相手
焦点を当てた。また、交際相手がいない人は交際
がいる人を「恋愛リア充」
、交際相手がいない人を
相手がいる人以上に異性からの印象を気にかけ、
「恋愛非リア充」と定義する。尚、交際相手がお
外見を向上させる消費を多く行っていると考えた。
らず、特定の好きな異性がいる人や片思いの人も
したがって、交際相手がいない消費者の自己投資
「恋愛非リア充」とする。
を研究主題とする。
2. 研究目的
交際相手が欲しいと思うきっかけとして、周囲
の環境が挙げられる。例として、カップルで過ご
す意味合いが強いクリスマスイブに交際相手が欲
本研究の研究目的は、恋愛非リア充の恋愛リア
しい感情が普段より一層高まり、一人で過ごすこ
充を意識した消費プロセスを解明し、消費を促進
とに対して寂しい、つらい等の感情が生じること
させる提案を行うことである。研究をするにあた
が考えられる。上記より、恋人がいない人は周囲
り、恋愛・異性を意識して何を消費するのかを調
の環境の中でも、特に恋人がいる人から大きく影
査するためにプレアンケートを実施した。その中
響を受けると推測した。本研究では、交際相手の
でも「ファッション」
、
「化粧品」、
「フィットネス」
いない人が交際相手のいる人に影響され発生する
という回答が多く占めた(図表 1)。2012 年の株式会
心理プロセスを解明し、外見を向上させる消費を
社矢野経済研究所の調査によると、上記の3つの
促進する提案を行う。
市場規模は頭打ち状態にある(図表 2)。しかしなが
ら、後述する 2004 年の電通総研消費者トレンドボ
ックスの調査によると、20 代の半数以上が異性の
② ―――序論
ために多くの金額を費やしていることが判明した。
つまり、恋愛・異性を意識することで外見への自
1. 本研究で扱う消費者の定義づけ
己投資は増えている。以上より本研究では、恋愛
2
非リア充の恋愛リア充を意識した消費プロセスを
解明することで、頭打ち状態にあるファッション
市場、化粧品市場、フィットネス市場の打破に有
効な一手になるのではないかと考える。
■図表―――1
恋愛非リア充が恋愛・異性して、何を購買するか
1位
洋服
2位
化粧品
3位
フィットネス用品
4位
香水
5位
アクセサリー
(出典:株式会社矢野経済研究所)
3. 対象設定
2012 年のリクルートブライダル総研の大学生の
(筆者作成)
恋人の有無の調査によると、男性 76.7%、女性
■図表―――2
65.8%と大学生の大部分は恋愛非リア充であるこ
ファッション、フィットネス、化粧品の市場規模
とが判明した(図表 3)。大学生の大部分が恋愛非リ
ア充に該当するうえ、大学生は社会人や高校生に
比べ、外見に関する規則が比較的緩やかであり、
自由に髪型や服装を選択できることが多いと考え
られる。以上より、外見を変える消費が多いと推
測し、本研究では対象を大学生とする。
■図表―――3
交際相手の有無
(筆者作成)
(出典:ブライダル総研第一回恋愛調査)
4. 現状分析
(1) 恋愛への関心
3
2011 年の goo!ランキング/NTT ドコモ「みんな
■図表―――5
の声による女子会で盛り上がる話題ランキング」
異性・新しい出会いのための消費
によると、恋愛・結婚ネタが 1 位となり、2 位であ
る職場ネタの 5 倍の票を集めた。上記より、人々
は恋愛に関して非常に高い関心を持っていること
が分かる。また、2013 年の株式会社電通総研「好
きなものまるわかり調査のハマっていることラン
キング」の消費金額をみると、恋愛が第 2 位であ
った。人々は恋愛に対しての消費が多いため、恋
愛に対して訴求することは非常に有意義であると
考えられる。恋愛の消費金額が 2 位となった理由
(出典:電通総研消費者情報トレンドボックス)
として交際相手がいる、もしくは特定の好きな人
(2) 恋人が欲しくなる要因
がいる消費者はプレゼント、デート代等に費やし
ている事が挙げられる。一方で、恋愛非リア充は
前述した通り、恋愛非リア充の中で恋人が欲し
恋愛に関して何を消費しているのか、疑問を抱い
い人は半数以上存在した。2013 年に行われた株式
た。2012 年のリクルートブライダル総研第一回恋
会社プレスボックス及び 2012 年に行われたみん
愛研究所によると、交際相手がいない人の中で恋
なのウエディングによると、恋人が欲しくなる要
人が欲しい人の割合は、男性 56.5%、女性が 56.7%
因として、交際相手の有無が大きく影響するクリ
と半数以上存在する(図表 4)。また、2004 年の電通
スマスやバレンタイン等のイベント時、街中のカ
総研消費者トレンドボックスの調査によると、半
ップルを見た時、友達に恋人ができた時が挙げら
数以上の人が新しい出会いのために金額を費やし
れていた。したがって、恋愛非リア充が恋愛リア
ていることが明らかとなった。以上より、交際相
充になりたいと感じる際、周囲の恋愛リア充が大
手がいない人は恋愛、異性を意識すると消費を行
きく関係している。
うと言える(図表 5)。
(3) 恋愛においての外見
2012 年の化粧品メーカーカバーマークによる
■図表―――4
恋愛非リア充の願望
「交際相手を選択する際に最初に外見と内面、ど
ちらを意識するか」という調査によると、「外見」
と答えた割合が約 60%であった(図表 6)。また、
2014 年のマイナビスチューデントによる「モテる
ために何に対して努力をするか」という調査より、
男性は「ダイエット」や「ファッション」
、女性は
「化粧」など、外見を良くすることが大半であっ
た。つまり、多くの人がモテるために外見が重要
(筆者作成)
(出典:ブライダル総研第一回恋愛調査)
だと認識していることが考えられる。
4
■図表―――6
■図表―――7
交際相手を選択する際の意識
草食系の割合
(筆者作成)
(筆者作成)
(出典:株式会社カバーマーク)
(出典:株式会社リンクバル)
5.問題意識
(4) 恋愛非リア充の特徴
2014 年の街コンジャパンが 20 代を対象に行っ
た「あなたは恋愛に対して能動的ですか・受動的
恋愛と消費者行動を組み合わせた研究は少なく、
ですか」という調査によると、男性 63.5%、女性
研究の余地があると考えた。現状分析より、恋愛
73.5%が「受動的である」と回答した(図表 7)。恋愛
非リア充は恋人が欲しくなる際、周囲の環境に大
に対して受動的な若者が多いことを象徴するよう
きく影響され、態度が形成されることが分かった。
に、2006 年 10 月にコラムニスト・編集者の深澤
また、恋愛非リア充の多くはコンプレックスが存
真紀氏が日経ビジネスオンライン版で「草食系」
在し、コンプレックスを感じる理由として理想像
という言葉を使い始め、世間に定着した。深澤氏
の存在を挙げた。
上記より 2 点の疑問点が生じた。
による草食系の定義は、
「恋愛に縁が無い訳ではな
1 点目は、外部的環境が恋愛非リア充の態度形成に
いが受動的で、性欲に淡々とした人の事」である。
影響するのではないかという点である。2 点目は、
よって、20 代の大半は恋愛に対して受動的な草食
現実自己と理想像の差を埋めるために恋愛非リア
系だと言える。また、2014 年の株式会社@DIME
充は外見に関する自己投資をするのではないかと
が行った「恋愛に能動的になれない理由」の調査
いう点である。
では、
「現在の自身に対してのルックス・学歴のコ
以上の 2 点の疑問点を踏まえ、本研究では恋愛
ンプレックス」が 40%であった。現在の自身に対
非リア充の恋愛リア充を意識した外見に関する自
してコンプレックスを抱く理由として、人々は自
己投資の消費プロセスの解明を行う。尚、恋愛非
身の中で理想像を描いており、理想と現実の自己
リア充の中で好きな人の有無によって、外見に関
に差が生じることが挙げられる。以上より、大学
する自己投資のプロセスが異なると考え、恋愛非
生の多くが恋愛非リア充である理由として、自身
リア充を 2 つに分類し、本研究を進める。
にコンプレックスを抱くため、恋人が欲しいとい
う感情が生じても恋愛に能動的になれないことが
③ ―――本論
考えられる。したがって、本研究ではコンプレッ
クスを引き起こす要因は理想像の存在であると考
1. 既存研究レビュー
え、現実と理想の差に注目する。
5
及び推奨の採用を促す集団の「価値表現的な準拠
(1) 準拠集団概念
集団の影響力」(以下、価値表現的影響力)である。
現状分析で述べた通り、恋愛非リア充が恋愛リ
本研究では、恋愛リア充の影響力が恋愛非リア充
ア充になりたいという願望は周囲の環境に大きく
の態度形成へ影響すると推測し、上記で述べた準
影響を受ける。仁平[2008]では、準拠集団を「通
拠集団の影響力を用いる。
常、社会の中に存在するもの、あるいは消費者が
過去に所属していた集団や将来、所属したいと憧
(3) 熱望集団に関する研究
れる個人や集団」と定義している。また、準拠集
Assael[1984]は、準拠集団概念である「非所
団概念を「消費者行動のための判断基準の準拠枠
属集団」の中でも、所属したいと熱望する集団を
として参照となる集団」と定義している。(濱嶋・
特に「熱望集団」と定義し、メンバーとして受け
竹内・石川[1997])によると、準拠集団概念は、
入れられたいと望む積極的準拠集団が消極的準拠
人が自身自身を関連づけることにより、自己の態
集団よりも重要であると述べている。例として、
度や判断の形成と変容に影響を受ける集団である。
広告コミュニケーション戦略において、広告主は
人が過去に所属したことがある集団、将来所属し
準拠集団を避ける、あるいは否認する消極的準拠
たい集団も準拠集団概念に当てはまると述べられ
集団への訴求よりも、準拠集団への参加や関係を
ている。恋愛非リア充にとって、恋愛リア充は所
望む積極的準拠集団を訴求することが挙げられる。
属したい集団と考えられるため、本研究では準拠
Stafford[1996]では、
「熱望集団は実際には所
集団概念を用いる。
属していないが自己を関連付け所属や構成員との
同一化を希望する集団」と定義付けている。そこ
(2) 準拠集団の影響力
で本研究では、恋愛非リア充集団にとって実際に
前述したように仁平[2008]によると、準拠集
所属はしていないが、憧れ、所属したいと願う対
団の機能で最も重要な視点は、消費者の価値判断
象の集団、つまり恋愛リア充集団を熱望集団とす
や行動選択に対して与える影響力の程度であると
る。恋愛非リア充は恋愛リア充に所属したいと望
している。Park&Lessig[1997]は、準拠集団の
むため、恋愛非リア充は積極的準拠集団と考えら
機能として 3 つ挙げている。1 つ目は、所属する集
れる。
団の意思決定に大きな影響を及ぼすオピニオンリ
ーダーや専門的な知識を持つ集団からの情報探索
(4) 理想自己と現実自己の概念
や重要な他者の行動探索の推論を促す「情報的な
前述したように、人々は自身の外見にコンプレ
準拠集団の影響力」
(以下、情報的影響力)である。2
ックスを抱いており、現実自己と理想自己に差を
つ目は、大多数の社会的影響が特定の所属集団に
感じている。本研究で述べる理想自己とは、Rogers
付随して生じる暗示的な「報酬」と「罰」を引き
[1959]によって定義されている「個人がそうで
出し、規範を明確にする「功利的な準拠集団の影
ありたいと強く望んでおり、それに最も高い価値
響力」
(以下、功利的影響力)である。本研究での「報
を置いている自己概念」とする。現状分析で述べ
酬」は「恋愛リア充に見られること」
、
「罰」は「恋
たように、コンプレックスがあるということは、
愛非リア充に見られること」とする。3 つ目は、個
現実の自分自身には満足していない。したがって、
人の自我を表現、強化するための準拠集団の利用
現実自己と理想自己の差が埋められていないと考
6
える。本研究では、恋愛非リア充は異性と交際し
減少する。
たいと羨望しているため、恋愛非リア充の理想は
本研究では恋愛非リア充は、恋愛を意識すると
恋愛リア充に相当すると考えた。
自己投資が増え、理想の自己に向かって外見を向
上させようとしていることから「理想追求型」の
(5) 理想自己と現実自己の差
プロセスモデルを研究の参考にする。また理想自
本研究において、恋愛非リア充は理想としてい
己が形成される際、3 種類全てのプロセスモデルで
る恋愛リア充と現実自己の差を埋めるために外見
「苦痛な状況」、「劣等感」が要因となっている。
に関する自己投資をしているのではないかと推測
実際に「理想追求型」でも「苦痛な状況」、「劣等
する。山口[2006]では、個人が理想自己と現実
感」の割合は 84.7%を占めている。また、
「理想と
自己の差を減少または修整し、適応的な状態へと
現実の差」は「他者からの受容・承認」、「積極的
向かっていくプロセスを明らかにした。その際、
アプローチ」
、
「理想を実現しやすい環境」の 3 つ
差を個人がどのように捉えているかが重要であり、
の要因を促進させる。さらに上記の 3 つの要因は、
「ある理想を抱いているが為に負担となったり、
「理想自己への接近」や「理想自己の出現」を想
苦しくなったりしている状態」に着目し、
「個人に
起させ、
「苦痛の低減」
、
「達成感、接近感」、
「自己
とって負担となる理想自己」を対象として明らか
成長感」を喚起させる。本研究では、前述した通
にした。検証の結果、3 種類の心理プロセスモデル
り熱望集団を恋愛リア充集団とするため、理想自
の存在が明らかになった。1 つ目は、理想を追求し
己を恋愛リア充とし、現実自己との差を埋めるた
達成する「理想追求型」である。
「理想追及型」プ
めに外見への自己投資が行われると考える(図表 8)。
ロセスでは、理想自己と現実自己との差があるが、
理想自己へ接近するために現実に努力したり、そ
■図表―――8
の手段を模索したりする。2 つ目は、理想の状態に
本来の「理想追求型」モデル
なることを求めたが、ギャップに苦しみ、理想を
現実自己に近づけ、また手放してしまう「現実受
容型」である。
「現実受容型」のプロセスでは、本
人は理想の状態になることを求めるが、現実自己
と理想自己との差に苦しみ、理想の状態にどうし
ても近づけないことを認識する。そこで、理想自
己を現実自己に近づけ、個人にとって適当な理想
(筆者作成)
の状態を調整し、現実の自身の状態で満足するこ
とで負担が減少する。3 つ目は、理想の状態を維持
(6) 変身の消費者心理
していたが、維持することが負担で手放してしま
神山[2009]では、
「変身(transformation of self)」
う「理想回避型」である。
「理想回避型」のプロセ
を「人びとがより魅力的で、ポジティブな印象を
スでは、本人は理想自己の状態を維持できている
他者へ与えるような外見を心掛け、日常的に装い
が、無理に理想の状態を維持しているため、本人
を工夫し、自身の外見的、内面的な姿を修復し、
にとって負担となる。結果、理想の状態から離れ
あるいは変えること」と定義している。近年では
るアプローチをとり、理想を手放すことで負担が
女性だけでなく男性も外見を意識して好意度を高
7
めることを心掛けている。そのため、化粧、衣服、
■図表―――9
整髪料など外見に関する消費領域に男女とも多く
神山[2009]の変身消費者心理モデル
支出が行われている。そこで、大学生および大学
院生の男女を対象に「変身行動と消費」の実態を
把握するため、変身行動を外見だけでなく内面の
変容も含め一層広くした。予備調査では「身体的、
精神的、社会的な今の自分自身(顔立ち、体つき、
健康状態から性格、人間関係、社会的地位に至るまで)
について不満や不足を感じたと仮定した場合、不
満や不足を解消して満足のいく自身に変身するた
めにどのようなことにお金を使うのか、あるいは
(筆者作成)
使ったことがあるか」という質問に対し自由記述
(出典:神山[2009])
させた。回答結果には、多様な消費項目が指摘さ
2. 新モデルの提唱
れたが、洋服を買う、美容院へ行く、ダイエット
をする、ファッション誌を買うなどの自身の外見
を向上させるための消費項目が多く挙げられた。
本研究では、恋愛非リア充が恋愛リア充から影
自身の現状に満足していない人は、満足していな
響を受け、変身消費者行動へ至る心理プロセスの
いことをきっかけに変身するための消費行動を行
解明を目的とする。本章では恋愛非リア充に着目
うという実態を明らかにした。本研究では、恋愛
し、恋愛非リア充独自の変身消費者心理プロセス
非リア充は、恋愛リア充よりも現実の自身の外見
の新モデルを構築する。
を変えるための消費行動を行うと推測し、神山
恋愛非リア充が恋愛リア充になりたいという願
[2009]の変身消費者心理モデルを参考にする。
望は前述したように、周囲の恋愛リア充から影響
変身消費者行動は、ありのままを受け入れる状態
を受けている。したがって、恋愛リア充から恋愛
の「自己受容」
、現状での自己、理想的な自己の「現
非リア充への影響を見るため、準拠集団概念を基
実自己・理想自己の差」
、自己の能力や価値につい
に新モデルを提唱する。恋愛非リア充の態度形成
ての評価的な感情や感覚の「自尊感情」から規定
へ影響する要因であると考えた準拠集団概念の 3
されている(図表 9)。
つの機能は、恋愛非リア充の態度に影響を与える
と推測し、
「情報的影響力」
、
「功利的影響力」
、
「価
値表現的影響力」を採用する。
次に、恋愛非リア充が恋愛リア充から影響を受
けた後の消費者心理プロセスとして山口[2006]
を採用する。山口[2006]では「理想追求型」
、
「現
実受容型」
、
「理想回避型」の 3 つの消費者の心理
プロセスが挙げられている。現実自己と理想自己
の差を埋めるため、現実に努力し、理想自己へ近
づくための手段を模索している点から本研究では
8
「理想追求型」を基にする。山口[2006]の本来
次に、上記の改正した「理想追求型」モデルに
の「理想追求型」のプロセスモデルでは、
「理想自
変身消費者行動を組み込み、本研究に沿って発展
己の出現」から「理想と現実の差」が生じている。
させる。神山[2009]では、変身消費者行動の意
しかしながら本研究では、
「理想と現実の差」に「理
味を幅広く捉えているが、本研究では購買までと
想自己」が含まれていると考える。先述したよう
捉えているため、変身消費者行動を「変身購買意
に本研究では、
「理想自己」を「恋愛リア充」とし
図」と設定する。また、本研究では自尊感情と自
た。そのため、上記の「理想自己の出現」と「理
己受容はプロセスモデルに要因として組み込まな
想と現実の差」の 2 つの概念を、
「恋愛リア充と現
い。モデルに組み込まない理由を以下に述べる。
実自己の差」と 1 つの因子にする。仁平[2008]
上田ら [2001]では、自尊感情を「自尊、自己受
では、準拠集団の影響力が消費者の態度形成へ影
容などを含め、人が自分自身についてどのように
響力を与えると述べていることから、恋愛非リア
感じているのか、その感じ方のことであり、自己
充の「劣等感」の態度へも影響力を与えると推測
の価値と能力に関する感覚および感情」と定義し
する。尚、
「苦痛な状況」は態度ではないので除外
ている。定義の中に「自尊と自己受容を含め」と
する。また、本来の「理想追求型」のモデルには、
述べられていることから、ありのままを受け入れ
「他者からの受容・承認」、「理想を実現しやすい
る状態である自己受容と自尊感情は同一とする。
環境」、「積極的アプローチ」とあるが、本研究で
「自己の価値と能力に関する感覚および感情」と
は「外見に関する自己投資」に着目しており、
「積
述べられていることから、本研究では自尊感情、
極的アプローチ」は外見を変えるための行動に当
現実自己と恋愛リア充の差も同一とする(図表 11)。
てはまるが、
「他者からの受容・承認」
、
「理想を実
以上を踏まえ新モデルを提示する(図表 12)。
現しやすい環境」は該当しないため、除外する。
さらに、恋愛非リア充の外見に関する自己投資ま
■図表―――11
でのプロセスを解明する本研究では、
「理想自己の
変身消費者心理モデル、改
出現」と「理想自己への接近」以降は除外する。
以上を踏まえ、仮説モデルを構築する(図表 10)。
■図表―――10
(筆者作成)
「理想追求型」プロセスモデル、改
■図表―――12
上記を踏まえた新しいモデル
(筆者作成)
(筆者作成)
9
2 点目は、恋愛非リア充の態度形成へ与える影響
恋愛非リア充独自の変身消費者モデルを構築し、
生じた疑問点を 2 点述べる。
力は Park&Lessig[1997]の 3 要因以外にもある
のではないかという点である。そこで、どのよう
1 点目は、恋愛非リア充の態度は「劣等感」以外
な状況で恋愛リア充へ「憧れ」、「劣等感」、「ポジ
にもあるのではないかという点である。上記の疑
ティブ感情」を抱くのかを調査した。調査方法は
問点を解消するために、恋愛・異性を意識して自
紙媒体で、期間は 9 月 25 日~9 月 29 日で実施し
己投資をする際、どのような態度を形成している
た(図表 14)。
のかを調査した。調査方法はインターネット上の
アンケートで、期間は 9 月 16、17 日で実施した。
■図表―――14
「恋愛・異性を意識して商品を購入する際、どの
憧れ・劣等感・ポジティブ感情を抱く状況
ような感情を抱いているか」について自由記述で
1
クリスマスや誕生日などのイベントのとき
回答してもらった(図表 13)。
2
恋愛に関する本・漫画・ドラマを見たり読
んだりしたとき
■図表―――13
3
街中でデートしているカップルを見たとき
恋愛・異性を意識して購買する際の感情
4
一人を意識したとき
1
綺麗に・格好良くなりたい
2
お洒落になりたい
3
自身の印象を変えたい
4
わくわく・ドキドキ
非リア充が恋愛リア充を見て、上記の状況を自分
5
期待にあふれる
自身に当てはめて想像するため「妄想」と考える。
6
自身のことを少しでも気になってほしい
(筆者作成)
回答結果の 1、2、3 に共通する点として、恋愛
広辞苑第六版より「妄想」は、経験などからは影
響を受けていない、根拠のない主観的な想像であ
(筆者作成)
ると定義されている。したがって、態度形成に影
響を与える要因に「妄想」が存在するといえる。
調査の結果、回答数が多かった上位 6 項目に注
以上のプレアンケート調査結果を踏まえ、本研究
目する。そのうち上位 3 項目は、現実の自己と理
の新モデルを構築する(図表 15)。
想としている恋愛リア充に差が存在するため生じ
る感情であると考えられる。そのため、現実自己
と恋愛リア充の差は、プロセスモデルにおいて「劣
等感」と並列であると推測する。この感情を「憧
れ」
、
「劣等感」とまとめる。下位 3 項目からは、
自分自身の外見を変えることに前向きに捉えてい
ることから、この感情を「ポジティブ感情」とす
る。以上より、消費者は恋愛・異性を意識して購
買する際、「憧れ」、「劣等感」、「ポジティブ感情」
などの自己向上心や高揚感が生じることが確認で
きた。
10
■―――図表 15
身消費者心理プロセスに沿った仮説 1、2 を提唱す
本研究の新モデル
る。尚、仮説 1、2 は消費者のセグメントごとに検
証する。
仮説 1-1:情報的影響力は、劣等感へ正の影響力を
与える。
仮説 1-2:情報的影響力は、憧れへ正の影響力を与
える。
仮説 1-3:情報的影響力は、ポジティブ感情に正の
(筆者作成)
影響力を与える。
仮説 1-4:功利的影響力は、劣等感へ正の影響力を
3. 仮説提唱
与える。
仮説 1-5:功利的影響力は、憧れへ正の影響力を与
仮説の提唱にあたって現状分析及び研究内容か
える。
ら本研究を 2 つの研究に大分する。
仮説 1-6:功利的影響力は、ポジティブ感情へ正の
影響力を与える。
研究 1:恋愛非リア充の変身消費者心理プロセスの
仮説 1-7:価値表現的影響力は、劣等感へ正の影響
解明
力を与える。
研究 2:好きな人の有無による恋愛非リア充の変身
仮説 1-8:価値表現的影響力は、憧れへ正の影響力
消費者心理プロセスにおける要因間の影響
を与える。
仮説 1-9:価値表現的影響力は、ポジティブ感情へ
度合いの比較
正の影響力を与える。
仮説 1-10:妄想影響力は、劣等感へ正の影響力を与
研究 1 では、恋愛非リア充の変身消費者心理プ
える。
ロセスを解明する。研究 1 を通して、恋愛リア充
から恋愛非リア充への影響力の有効性を究明する。
仮説 1-11:妄想影響力は、憧れへ正の影響力を与え
る。
また、研究 1-1 では好きな人がいない恋愛非リア
仮説 1-12:妄想影響力は、ポジティブ感情へ正の影
充、研究 1-2 では好きな人がいる恋愛非リア充と
響力を与える。
する。研究 2 では、恋愛非リア充を好きな人の有
無の視点から要因間の影響度合いの比較を行う。
現状分析から、恋愛非リア充の中でも好きな人の
仮説 2-1:劣等感は、変身購買意図へ正の影響力を
有無によって消費が異なることが推測されるため
与える。
である。研究 2 を通し、好きな人の有無によって
仮説 2-2:憧れは、変身購買意図へ正の影響力を与
恋愛非リア充を分別することにより、恋愛非リア
える。
充に対し、具体的な新規提案を行う。
仮説 2-3:ポジティブ感情は、変身購買意図へ正の
本研究では新モデル及び消費者のセグメントを
影響力を与える。
踏まえ 4 つの仮説を提唱する。恋愛非リア充の変
11
また、恋愛非リア充は好きな人の有無によって
仮説 4-2:好きな人の有無によって憧れから変身購
熱望集団である恋愛リア充に対して所属したいと
買意図への影響力に差がある。
いう願望の程度が異なると考えられる。したがっ
仮説 4-3:好きな人の有無によってポジティブ感情
て要因間の影響度合いが異なると推測し仮説 3、4
から変身購買意図 への影響力に差があ
を提唱する。
る。
4. 仮説検証
仮説 3-1:好きな人の有無によって情報的影響力か
ら劣等感への影響力に差がある。
仮説 3-2:好きな人の有無によって情報的影響力か
(1)調査方法と調査内容
ら憧れへの影響力に差がある。
仮説を検証する上で、関東圏に通う大学生を調
仮説 3-3:好きな人の有無によって情報的影響力か
査対象とし、紙媒体でのアンケート調査を行った。
らポジティブ感情への影響力に差があ
調査期間は 2014 年 10 月 2 日から 10 月 8 日の 1
る。
週間であり、回答数は 364、有効回答数は 348 そ
仮説 3-4:好きな人の有無によって功利的影響力か
のうち好きな人がいる恋愛非リア充は 123、好きな
人がいない恋愛非リア充は 225 であった。
ら劣等感への影響力に差がある。
仮説 3-5:好きな人の有無によって功利的影響力か
アンケート質問項目の作成方法として、準拠集
ら憧れへの影響力に差がある。
団の影響力に関しては Park&Lessig[1977]、仁
仮説 3-6:好きな人の有無によって功利的影響力か
平[2008]、劣等感に関する質問項目として、(小
らポジティブ感情への影響力に差があ
池・土田[2007]
)を基にした。そして対象者の年
る。
齢、性別、恋人の有無と対象者の心理的側面と消
仮説 3-7:好きな人の有無によって価値表現的影響
費行動についての 31 項目、5 点尺度を用いた調査
力から劣等感への影響力に差がある。
を行った。使用したアンケートを補録に添付する。
仮説 3-8:好きな人の有無によって価値表現的影響
本研究では現在交際相手がいる人にも調査を行
力から憧れへの影響力に差がある。
っているが、今の相手と交際する前の状態を思い
仮説 3-9:好きな人の有無によって価値表現的影響
出して回答を求めた。本研究では上記の消費者は
力からポジティブ感情への影響力に差が
当時相手に片思いをしていると仮定して研究を進
ある。
める。
仮説 3-10:好きな人の有無によって妄想影響力から
(2)
劣等感への影響力に差がある。
検証方法と手段
仮説 3-11:好きな人の有無によって妄想影響力から
i.項目分析、因子分析、信頼性分析
憧れへの影響力に差がある。
仮説 3-12:好きな人の有無によって妄想影響力から
アンケートの質問項目に対して項目分析を行っ
ポジティブ感情への影響力に差がある。
た。天井効果とフロア効果が認識されなかった項
目を用いて因子分析を行う。因子抽出の方法は主
仮説 4-1: 好きな人の有無によって劣等感から変身
因子法、回転は因子間に相関があると仮定し、プ
購買意図への影響力に差がある。
ロマックス回転を使用する。さらに因子分析から
12
抽出された因子の内的整合性を検討するために尺
ことを夢見る」の 2 つを除外した 27 項目による因
度の信頼性分析を行う。方法として信頼性統計量
子分析の結果、8 因子構造が顕著となった(図表 16)。
の標準化された項目に基づいた Cronbach のα係
第1因子を構成する項目、「広告の登場人物の
数を使用する。
ような憧れの恋愛リア充になりたいと思う」、「本
を読んで恋愛リア充になることを夢見る」、「漫画
ii.共分散構造分析
を読んで恋愛リア充になることを夢見る」、「ドラ
小塩[2011]によると共分散構造分析とは、直接
マを見て恋愛リア充になることを夢見る」、「イベ
的に観測されない心理的な潜在変数間の因果関係
ントが近づくと恋愛リア充になることを夢見る」、
を吟味するために用いる分析手法のことである。
のうちイベントに関する質問項目が除外されたた
本研究では潜在変数間で因果関係があることを総
め、
「妄想影響力」を架空の恋愛リア充から影響を
定しているため、要因間の影響度合いを確認する。
受けるという「フィクション影響力」と定義した。
そのほかの項目は予測した通りの因子となった。
iii.多母集団同時分析
因子分析により抽出された諸因子に対して、
小塩[2011]によると、多母集団同時分析とは、共
個々に信頼性分析を行った。結果として、
「フィク
分散構造分析において複数のグループが存在して
ション因子」がα=0.828、
「憧れ」がα=0.800、
「価
いる場合、グループ間における影響度合の差異を
値表現影響力」がα=0.793、
「変身購買意図」がα
吟味するために用いる分析手法のことである。本
=0.849、
「ポジティブ感情」がα=0.913、
「劣等感」
研究における複数のグループとは、好きな人がい
がα=0.864、「功利的」がα=0.793、「情報的影響
ない恋愛非リア充、好きな人がいる恋愛非リア充
力」α=765 と十分な数値が得られたため、内的整
である。また、好きな人の有無で各因子間の影響
合性が高いと判断する(図表 17)。したがって、本研
度合に差異が出ると想定しているため、多母集団
究は 8 因子構造で分析を行う。
同時分析を用いて検証する。
5.分析結果及び考察
(1)潜在変数の設定
初めにアンケートの質問項目について項目分析
を行った。その結果「外見を変えるためにフィッ
トネスに行く」、「外見を変えるためにエステに行
く」にフロア効果が見られたため、この二つを項
目から除外する。残った 29 項目で行った因子分析
の結果、明確な分類ができた。さらにパターン行
列の因子負荷量を確認し、0.35 以下であった「恋
愛リア充になるために努力することは良いことだ
と思う」、「イベントが近づくと恋愛リア充になる
13
■図表―――16
パターン行列
(筆者作成)
■図表―――17
信頼性分析の結果
(筆者作成)
14
(2)共分散構造分析
母集団ごとの分析を行う前に、仮説モデル自体
の妥当性を検証するため、全サンプルを用いて共
分散構造分析を行った。その際、因子分析におい
て、因子間に相関関係がみられた 8 つの構成因子
の全てに共分散を仮定した。分析には最尤法を用
い、反復回数 8 回で分析が正常に終了した。分析
結果とモデルに使用した潜在変数および観測変数
を図表 18 に示す。χ2 値は 990.660 で有意確率は
0.00 であった。また、モデルの適合度を示す指標
である GFI=0.823、AGFI=0.792 であり、AGFI
が少々低いが研究に利用できる数値である。
RMSEA も 0.077 であるため、仮説モデルとデー
タは適合していた。したがって、本研究で新しく
構築した仮設モデルを採用し分析を進め、提唱し
た仮説を検証していく。尚、共分散構造分析で用
いるモデルを改めて図表 19 に示す。
■図表―――18
検証モデルの観測変数と潜在変数
潜在変数
観測変数
価値3
妄想2
フィクション影響力
妄想3
妄想4
価値1
価値2
価値表現的影響力
価値4
価値5
功利1
功利的影響力
功利3
功利4
情報1
情報的影響力
情報2
情報3
憧れ1
憧れ2
憧れ
憧れ3
憧れ4
劣等1
劣等感
劣等2
劣等3
ポジ1
ポジティブ感情
ポジ2
ポジ3
購買1
変身購買意図
購買2
購買3
問
問10
問13
問14
問15
問8
問9
問11
問12
問4
問6
問7
問1
問2
問3
問17
問18
問19
問20
問21
問22
問23
問24
問25
問26
問27
問28
問29
設問
広告の登場人物のような憧れの恋愛リア充になりたいと思う。
本を読んで恋愛リア充になることを夢見る。
漫画を読んで恋愛リア充になることを夢見る。
ドラマを見て恋愛リア充になることを夢見る。
恋愛リア充が外見を変えるために消費している物の購入・使用が、印象を高めると思う。
恋愛リア充が外見を変えるために消費している物の購入・使用によって、他人があなたに抱く印象を高めると思う。
恋愛リア充が外見を変えるために消費している物の購入・使用が、他人から褒められるか尊敬されると思う。
恋愛リア充が外見を変えるために消費している物の購入・使用は、リア充になりたいという願望を促すと思う。
恋愛リア充のように振る舞うことは自分にとっていいことだと思う。
他人から恋愛非リア充に見られることはよくないことだと思う。
恋愛非リア充と思われることは周囲からの自分の評価を下げると思う。
恋愛リア充からの恋愛知識に関心がある。
恋愛リア充からの恋愛経験に関心がある。
恋愛リア充のSNSに関心がある。
恋愛リア充を尊敬する。
恋愛リア充に憧れの気持ちを持つ。
恋愛リア充を素晴らしいと思う。
恋愛リア充を自分の手本にしようと思う。
恋愛リア充を見て落ち込む。
恋愛リア充を見ていらいらする。
恋愛リア充をみて悔しさを感じる。
自分が恋愛リア充になることを想像してわくわくする。
自分が恋愛リア充になることを想像して楽しい
自分が恋愛リア充になることを想像して期待感を抱く。
外見を変えるために化粧品を購入しようと思う。
外見を変えるために洋服を購入しようと思う。
外見を変えるために美容院へ行こうと思う。
(筆者作成)
15
■図表―――19
共分散構造分析の検証結果モデル
続いて、仮説 2 の「憧れ」
、
「劣等感」
、
「ポジテ
(筆者作成)
ィブ感情」が「変身購買意図」へ与える影響力の
(3)心理プロセスの解明結果(研究 1-1)
検証結果を示す。恋愛非リア充の購買行動プロセ
好きな人がいない恋愛非リア充の変身消費心理
スにおいて、3 本のパスのうち全て有意であり、仮
プロセスモデルを解明するために共分散構造分析
説 2-2、2-3 は支持された(図表 21)。一方、仮説
を行った(図表 20)。モデルの全体的評価を行うと
2-1 の「劣等感→変身購買意図」は負の影響を与え
χ²値は 750.599 で、有意確率は 0.00 であった。
ることが分かった。仮説 2-1 で正の影響を想定し
適 合 度 指 標 は 、 GFI=0.806 、 AGFI = 0.769 、
たが、実際には「劣等感」は、
「変身購買意図」へ
RMSEA=0.078、RMR=0.129 であり、このモデル
負の影響力を与えることが明らかになったため、
は研究に利用出来る概ね妥当であるといえる。パ
仮説 2-1 は棄却された。
スの検証として、まず仮説 1 の準拠集団の 4 つの
つまり、好きな人がいない恋愛非リア充が「変
影響力が「憧れ」、「劣等感」、「ポジティブ感情」
身購買意図」を引き起こすためには、
「フィクショ
へ与える影響度合いを確認する。12 本のパスのう
ン影響力」、「価値表現影響力」、「情報的影響力」
ち、6 本のパスは有意であり、それぞれ正の影響力
が有効であると言える。中でも「価値表現的影響
を与えることが明らかになった。よって、仮説 1-2、
力」と「フィクション影響力」が「変身購買意図
1-8、1-9、1-10、1-11、1-12 は支持された(図表
を喚起しやすいといえる。しかしながら、
「フィク
21)。
ション影響力」が劣等感に作用する場合、
「変身購
16
買意図」が低くなることが留意点として挙げられ
る。
■図表―――20
好きな人がいない恋愛非リア充プロセスモデル
(筆者作成)
17
■図表―――21
好きな人がいない恋愛非リア充分析結果
情報
情報
情報
功利
功利
功利
価値表現
価値表現
価値表現
フィクション
フィクション
フィクション
憧れ
劣等感
ポジティブ
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
憧れ
劣等感
ポジティブ
憧れ
劣等感
ポジティブ
憧れ
劣等感
ポジティブ
憧れ
劣等感
ポジティブ
変身購買意図
変身購買意図
変身購買意図
推定値
0.232
0.026
0.142
-0.062
0.22
0.046
0.442
0.188
0.304
0.272
0.285
0.283
0.258
-0.184
0.36
仮説
仮説1-1
仮説1-2
仮説1-3
仮説1-4
仮説1-5
仮説1-6
仮説1-7
仮説1-8
仮説1-9
仮説1-10
仮説1-11
仮説1-12
仮説2-1
仮説2-2
仮説2-3
確率
5%水準で有意
棄却
棄却
棄却
棄却
棄却
0.1%水準で有意
棄却
5%水準で有意
1%水準で有意
1%水準で有意
1%水準で有意
1%水準で有意
5%水準で有意
0.1%水準で有意
う」、「他人から恋愛非リア充に見られることは良
(筆者作成)
くないことだと思う」等の 4 つの項目から構成さ
(4)心理プロセスの解明結果の考察(研究 1-1)
れた。本研究では「功利的影響力」の「報酬」は
i.準拠集団の影響力による態度形成に関する考察
恋愛リア充、
「罰」は恋愛非リア充に見られること
(研究 1-1)
である。まず、恋愛非リア充は「報酬」によって
4 つの準拠集団の影響力から、好きな人がいない
マイナスの態度である「劣等感」、「罰」によって
恋愛非リア充の態度形成への影響について考察す
プラスの態度である「憧れ」、「ポジティブ感情」
る。
「情報的影響力」は「憧れ」のみに正の影響を
を喚起することは考え難い。また、恋愛リア充に
与えた。恋愛リア充に関する情報には恋人同士で
見られることによって恋愛リア充に近づけたと錯
しか行けないデートスポットや、イベントの情報
覚し、恋愛リア充になることへの「憧れ」
、恋愛リ
も発信される場合もある。よって、
「情報的影響力」
ア充になることを想像して起きる「ポジティブ感
は「憧れ」を喚起すると考察する。一方で、好き
情」が喚起されなかったと推測する。さらに、恋
な人がいない恋愛非リア充は、異性交際の段階に
愛非リア充に見られることを「罰」と捉えていた
おいて好きな人がいる恋愛非リア充と比べ、恋愛
としても、恋愛非リア充である現状の原因は自身
リア充に遠い存在であるといえる。そのため、イ
にあり、恋愛リア充に原因があると考えていない。
ライラするといった「劣等感」
、わくわくするとい
そのため、恋愛リア充を見て生まれる「劣等感」
った「ポジティブ感情」を感じないと推測する。
は喚起されないと推測する。したがって「功利的
したがって「情報的影響力」から「ポジティブ感
影響力」から態度が喚起されなかったと考察する。
情」
、
「劣等感」は喚起されないと考察する。
「価値表現的影響力」は「憧れ」、「ポジティブ
「功利的影響力」はどの態度形成にも影響を与
感情」に正の影響を与えた。「価値表現的影響力」
えなかった。
「功利的影響力」は「恋愛リア充のよ
の構成項目より、好きな人がいない恋愛非リア充
うに振る舞うことは自身にとって良いことだと思
の消費者は恋愛リア充が外見のために購入・使用
18
しているものは自身の印象を上げるという認識か
うという意識が芽生えると推測できる。したがっ
ら「憧れ」、「ポジティブ感情」が喚起されると考
て、
「憧れ」は「変身購買意図」を喚起したと考察
えられる。自分自身の印象を高めるものに対して
する。
否定的な感情を持つことは考え難い。したがって、
「ポジティブ感情」は「変身購買意図」へ正の
否定的な感情である「劣等感」は喚起されなかっ
影響を与えた。
「ポジティブ感情」の構成項目から
たと考察する。
好きな人がいない恋愛非リア充は、恋愛リア充に
「フィクション影響力」は全ての態度形成に正
なることを想像することによってポジティブな感
の影響を与えた。
「フィクション影響力」の構成項
情を抱くことが言える。自身が恋愛リア充になる
目である、本や広告の架空の恋愛リア充は、
「憧れ」、
ことを想像し、前向きな態度を形成するため、恋
「劣等感」、「ポジティブ感情」の全ての感情を喚
愛リア充になるために変身行動することに対して
起させる。架空の恋愛リア充は実際には存在して
も積極的になることが考えられる。したがって、
おらず、想像によって作り上げられ事実に基づい
「ポジティブ感情」は「変身購買意図」を喚起し
ていない場合が多い。したがって、好きな人がい
たと考察する。
ない恋愛非リア充の消費者は、架空の恋愛リア充
(5)心理プロセスの解明結果(研究 2)
に対して、各々で異なる自由な想像をすることが
でき、
「フィクション影響力」が 3 つの態度を形成
好きな人がいる恋愛非リア充の変身消費心理プ
する要因となったと考察する。
ロセスモデルを解明するために共分散構造分析を
行った(図表 22)。モデルの全体的評価を行うとχ²
ii.態度形成による変身購買意図に関する考察(研究
値は 588.242 で、有意確率は 0.00 であった。適合
1-1)
度 指 標 は 、 GFI=0.747 、 AGFI = 0.697 、
「劣等感」は「変身購買意図」へ負の影響を与
RMSEA=0.084、であり、GFI、AGFI 共に比較的
えた。
「劣等感」の構成項目から好きな人がいない
数値が小さい理由としては、サンプル数が少ない
恋愛非リア充は恋愛リア充を見ることで自身が劣
ことが考えられる。全サンプルを用いて共分散構
っている、苛立ちを感じることが言える。つまり、
造分析を行った結果においてモデル適合は妥当で
現実自己を変えることに限界を感じ、理想自己で
あったため、モデルは概ね妥当であるといえる。
ある恋愛リア充の追及を諦めてしまうのである。
パスの検証として、まず仮説 1 準拠集団の 4 つの
したがって、
「劣等感」を感じるほど「変身購買意
機能が 3 つの態度形成へ与える影響力を確認する。
図」が低減したと考察する。
12 本のパスのうち、6 本のパスは有意であり、仮
「憧れ」は「変身購買意図」へ正の影響を与え
説 1-4、1-5、1-10、1-11、1-12 は支持された(図
た。
「憧れ」の構成項目から好きな人がいない恋愛
表 23)。一方、仮説 1-7 の「価値表現的影響力→劣
非リア充は、恋愛リア充に対して羨望しているこ
等感」は負の影響を与えることが分かった。仮説
とが言える。前述したように Stafford[1996]で
1-7 で正の影響を想定したが、実際には「価値表現
は、熱望集団とは実際に所属はしていないが、自
的影響力」は「劣等感」へ負の影響力を与えるこ
己を関連付け所属や構成員との同一化を希望する
とが明らかになったため、
仮説 1-7 は棄却された。
存在である。好きな人がいない恋愛非リア充は羨
続いて、仮説 2 の 3 つの態度形成が変身購買意
望する熱望集団への所属を目指すため、変身しよ
図へ与える影響力の検証結果を示す。恋愛非リア
19
充の購買行動プロセスにおいて、
「ポジティブ感情
→変身購買意図」は正の影響を与えることが分か
った。よって、仮説 2-3 は支持された。
「劣等感」
、
「憧れ」は「変身購買意図」へパスが伸びなかっ
たため「変身購買意図」とは関連がないことが明
らかになった。したがって、仮説 2-1、2-2 は棄却
された。
つまり、好きな人がいる恋愛非リア充が変身購
買意図を引き起こすためには、
「フィクション影響
力」、「功利的影響力」が有効であるといえる。さ
らに「ポジティブ感情」が「変身購買意図」に影
響を与えた。そのため「ポジティブ感情」を形成
する「フィクション影響力」が有効であるといえ
る。
■図表―――22
好きな人がいる恋愛非リア充プロセスモデル
(筆者作成)
20
■図表―――23
好きな人がいる恋愛非リア充分析結果
情報
情報
情報
功利
功利
功利
価値表現
価値表現
価値表現
フィクション
フィクション
フィクション
憧れ
劣等感
ポジティブ
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
憧れ
劣等感
ポジティブ
憧れ
劣等感
ポジティブ
憧れ
劣等感
ポジティブ
憧れ
劣等感
ポジティブ
変身購買意図
変身購買意図
変身購買意図
推定値
0.019
-0.215
-0.036
0.359
0.487
-0.333
0.105
-0.49
0.096
0.427
0.824
0.847
-0.032
0.071
0.494
仮説
仮説1-1
仮説1-2
仮説1-3
仮説1-4
仮説1-5
仮説1-6
仮説1-7
仮説1-8
仮説1-9
仮説1-10
仮説1-11
仮説1-12
仮説2-1
仮説2-2
仮説2-3
確率
棄却
棄却
棄却
1%水準で有意
1%水準で有意
棄却
棄却
5%水準で有意
棄却
5%水準で有意
0.1%水準で有意
0.1%水準で有意
棄却
棄却
0.1%水準で有意
て「憧れ」が喚起されると推測する。また、「罰」
(筆者作成)
である恋愛非リア充に見られることによって、好
(6)心理プロセスの解明結果の考察(研究 1-2)
きな人と交際できている恋愛リア充に対して妬み
i.準拠集団の影響力による態度形成に関する考察
感情が含まれた「劣等感」が喚起されると推測す
(研究 1-2)
る。好きな人がいる恋愛非リア充は好きな人がい
「情報的影響力」はどの態度形成にも影響を及
ない恋愛非リア充よりも恋愛リア充に近いが好き
ぼさなかった。
「劣等感」
、
「ポジティブ感情」は前
な人と交際していないことから、
「報酬」の恋愛リ
述した好きな人がいない恋愛非リア充の考察と同
ア充に見られると、恋愛リア充になることを想像
様であると考える。一方で好きな人がいる場合、
するのではなく、好きな人と交際したいという願
恋愛リア充のように好きな人と行った場所やイベ
望の方が強くなると考えられる。したがって「功
ント等の情報を発信する機会があると推測する。
利的影響力」は「ポジティブ感情」に影響を及ぼ
そのため、恋愛リア充に対し「憧れ」が喚起され
さないと考察する。
ないと考察する。
「価値表現的影響力」は「劣等感」に負の影響
「功利的影響力」は「憧れ」、「劣等感」に正の
を与えた。
「価値表現的影響力」によって「劣等感」
影響を及ぼし、
「ポジティブ感情」に影響を及ぼさ
は低減される。好きな人がいる恋愛非リア充の場
なかった。先述した通り、好きな人がいる恋愛非
合は恋愛リア充が実際に購入、使用しているもの
リア充は恋愛リア充に近い存在であると言える。
を使うことによって外見を向上できると認識して
そのため、
「報酬」である恋愛リア充に見られる機
いることが考えられる。好きな人がいる恋愛非リ
会が好きな人がいない恋愛非リア充よりも多いと
ア充は、現在恋愛リア充が外見のために使用して
考えられる。しかしながら、好きな人とは交際で
いるものを使ったからこそ、恋愛リア充に交際相
きていない現状が存在するため恋愛リア充に対し
手ができたと認識していると考えられる。そのた
21
め恋愛リア充に対しての「劣等感」が低減される
iii.好きな人の有無によって異なる心理プロセスの
と推測する。したがって、
「価値表現的影響力」は
考察
「劣等感」へ負の影響を与えると考察する。
好きな人の有無の視点から恋愛非リア充を二分
「フィクション影響力」が全ての態度形成に正
し、それぞれの変身消費者心理プロセスを解明し
の影響を与えた。前述した好きな人がいない恋愛
た。二つのプロセスモデルを比較し判明した相違
非リア充の考察と同様に、好きな人がいる恋愛非
点として、好きな人がいない恋愛非リア充の態度
リア充も架空の恋愛リア充によって各々で異なる
形成には「情報的影響力」
、好きな人がいる恋愛非
自由な想像をすることができるため 3 つの態度を
リア充の態度形成には「功利的影響力」を及ぼし
形成する要因になったと推測する。
た。好きな人がいる恋愛非リア充は、好きな人の
情報にのみ関心が高いことが考えられる。一方で、
ii.態度形成による変身購買意図に関する考察 (研究
好きな人がいない恋愛非リア充は好きな人がいな
1-2)
いため、恋愛リア充が発信する恋愛の情報に関心
「劣等感」は「変身購買意図」へ影響を及ぼさ
が高いことが考えられる。したがって、好きな人
なかった。前述したように好きな人がいる恋愛非
がいない恋愛リア充の場合のみ「情報的影響力」
リア充は好きな人がいない恋愛非リア充よりも恋
から態度形成が促されると考察する。好きな人が
愛リア充に近い存在である。そのため、恋愛リア
いる恋愛非リア充は前述したように、好きな人が
充に対し「劣等感」を抱いたとしても外見の消費
いない恋愛非リア充よりも、恋愛リア充に見られ
によって自身を恋愛リア充に近づけようと思わな
る機会が多いことが考えられる。したがって、好
いと推測する。そのため「劣等感」から「変身購
きな人がいる恋愛非リア充の場合のみ「功利的影
買意図」へ影響を及ぼさなかった。
響力」から態度形成が促されると考察する。
「憧れ」は「変身購買意図」に影響を及ぼさな
(7)要因間の影響度合いの比較結果(研究 2)
かった。好きな人がいる場合、恋愛リア充に対し
て「憧れ」を抱くが、
「憧れ」を抱いた恋愛リア充
恋愛非リア充を好きな人の有無によって分別し、
になりたいのではなく、好きな人と交際して恋愛
2 つの心理プロセスにおける要因間の影響度合い
リア充になりたいと考えており、
「憧れ」を抱いた
を比較するため、共分散構造分析の多母集団同時
恋愛リア充になるために自身を変えようとは思わ
分析を行った。次に、等値制約を置かなかったモ
ないと推測する。そのため、
「憧れ」から「変身購
デル 1 と モデル 2~5 のχ²値(CMIN)と自由度
買意図」へ影響を及ぼさなかったと考察する。
(DF)の差を基に、 モデル 1 の「制約なし」とい
「ポジティブ感情」は「変身購買意図」へ正の
う条件が正しいという仮定 の下で、有意差検定を
影響を与えた。好きな人がいる恋愛非リア充の場
実施した。結果として、モデル 2~5 は全て 0.1%
合、好きな人と自身が交際している場面を想像す
水準で有意となり、等値とはいえないことが明ら
ることによって相手に見合う外見になろうとする
かになった(図表 24)。したがって、モデル 1 を 採
意識が生まれることが考えられる。したがって「ポ
択し、要因間の影響度合いを比較する。 多母集団
ジティブ感情」は「変身購買意図」に正の影響を
同時分析の結果、5 つのパスに有意な差が見られた
与えた。
(図表 25)。したがって、仮説 3、4 は一部支持され
た。
22
■図表―――24
モデル 1 との検定結果
自由度
モデル2
モデル3
モデル4
モデル5
15
25
29
56
CMIN
確率
33.761
0.004
51.387
0.001
52.65
0.005
109.723
0
(筆者作成)
■図表―――25
推定値の比較
情報
情報
情報
功利
功利
功利
価値表現
価値表現
価値表現
フィクション
フィクション
フィクション
憧れ
劣等感
ポジティブ
<--<--<--<--<--<--<--<--<--<--<--<--<--<--<---
好きな人いない
好きな人いる
非標準化推定値 標準誤差 標準化推定値 非標準化推定値 標準誤差 標準化推定値 検定統計量
憧れ
0.29
0.083
0.318
0.081
0.087
0.092
1.744
劣等感
0.132
0.101
0.124
-0.101
0.106
-0.1
1.587
ポジティブ
0.288
0.104
0.244
0.069
0.106
0.067
1.477
憧れ
-0.068
0.086
-0.069
0.25
0.102
0.247
-2.376
劣等感
0.2
0.104
0.176
0.41
0.126
0.355
-1.283
ポジティブ
-0.05
0.107
-0.04
-0.298
0.127
-0.254
1.495
憧れ
0.543
0.104
0.48
0.291
0.15
0.238
1.381
劣等感
0.32
0.125
0.243
-0.304
0.187
-0.217
1.921
ポジティブ
0.556
0.129
0.381
0.326
0.183
0.23
1.026
憧れ
0.143
0.071
0.175
0.339
0.113
0.355
-1.474
劣等感
0.22
0.086
0.231
0.676
0.142
0.618
-2.741
ポジティブ
0.205
0.088
0.195
0.646
0.141
0.582
-2.652
変身購買意図
0.335
0.117
0.257
-0.048
0.141
-0.038
2.092
変身購買意図
-0.207
0.092
-0.184
0.095
0.115
0.086
-2.055
変身購買意図
0.366
0.082
0.361
0.535
0.11
0.489
-1.232
(筆者作成)
ィクション影響力→劣等感」は 5%水準で有意な差
(8)要因間の影響度合いの比較に関する考察(研究
があった。好きな人がいる恋愛非リア充の方がよ
2)
り強く正の影響を及ぼした。架空の恋愛リア充を
「功利的影響力→憧れ」は 5%水準で有意な差が
見て恋愛リア充を夢見る際、好きな人がいない恋
あった。好きな人がいる恋愛非リア充の方が強く
愛非リア充の場合は架空の交際相手と自身を照ら
正の影響を及ぼした。先述した考察と同様、好き
し合わせて想像することができる。一方で、好き
な人がいる恋愛非リア充は意中の相手がいても交
な人がいる恋愛非リア充の場合は好きな人と自身
際できていない現状にある。また、理想である恋
を架空の恋愛リア充に照らし合わせて想像するこ
愛リア充に対し、現実との差を感じている。その
とができる。そのため、
「フィクション影響力→ポ
ため、
「報酬」である恋愛リア充に見られることに
ジティブ感情」は好きな人がいる恋愛非リア充の
よって、より差を感じ交際相手がいる恋愛リア充
に対して尊敬の意を込めた「憧れ」を抱くことが
ほうが強く正の影響を及ぼしたと考察する。また、
考えられる。したがって、好きな人がいる恋愛非
照らし合わせができる一方で好きな人がいる恋愛
リア充の方がより強く正の影響を与えたと考察す
リア充の場合は想像する対象が好きな人であり、
る。
好きな人と付き合えてない現状と理想の差に恋愛
「フィクション影響力→ポジティブ感情」、「フ
非リア充よりも「劣等感」を強く感じると推測す
23
る。したがって、「フィクション影響力→劣等感」
た。実在する恋愛リア充よりも、架空の恋愛リア
は好きな人がいる恋愛非リア充の方がより強く正
充の方が恋愛非リア充の態度形成に影響を及ぼす
の影響を及ぼしたと考察する。
ことが分かった。そのため、企業は架空の恋愛リ
「劣等感→変身購買意図」は 5%水準で有意な差
ア充を創造し恋愛非リア充に対し訴求すべきであ
があった。好きな人がいる恋愛非リア充の方が強
ると考察する。また、「フィクション影響力」は、
く正の影響を及ぼした。好きな人がいる恋愛非リ
本研究における定性調査を基に作成された影響力
ア充は意中の相手と交際できておらず、恋愛リア
である。従来述べられていた準拠集団の 3 つの影
充に対し、交際相手がいるという点で「劣等感」
響力は、準拠集団という大きな概念において述べ
を感じやすいと推測する。そのため、好きな人が
られていた。しかしながら、本研究は準拠集団の
いる恋愛非リア充の方がより強く正の影響を及ぼ
一種である熱望集団に焦点を当てており、熱望集
したと考察する。
団の新しい影響力を解明した。前述したように恋
「憧れ→変身購買意図」は 5%水準で有意な差が
愛非リア充のような積極的集団への訴求は非常に
あった。好きな人がいない恋愛非リア充の方がよ
重要なものである。そのため、
「フィクション影響
り強く正の影響を与えた。先述した考察と同様、
力」は本研究で解明した熱望集団の新しい影響力
好きな人がいない恋愛非リア充は所属したいと羨
として学術的に有意義であるといえる。
望する熱望集団に対し自身を変えようと購買する。
第二に、好きな人がいない恋愛リア充、好きな
しかしながら、好きな人がいる恋愛非リア充は「憧
人がいる恋愛非リア充共に「ポジティブ感情」が
れ」を抱いた恋愛リア充になりたいのではなく、
「変身購買意図」を促すことが解明された。
「ポジ
好きな人と交際することによって恋愛リア充にな
ティブ感情」は本研究で新たに仮説設定した態度
りたいと考えていると推測する。したがって、好
である。前述した山口[2006]では劣等感や苦痛な状
きな人がいない恋愛非リア充の方がより強く正の
況といったマイナスな要因のみ積極的アプローチ
影響を及ぼしたと考察する。
を促進すると述べられていた。しかしながら、分
析結果から好きな人がいない恋愛リア充、好きな
6.
本研究で得られた知見
人がいる恋愛非リア充の場合でも「変身購買意図」
への影響力が 3 つの態度、感情の中で最も大きい
上記で述べられた分析結果より、得られた知見
ことを解明した。そのため、
「ポジティブ感情」は
を述べる。研究 1 では恋愛非リア充が恋愛リア充
「変身購買意図」を促進させるために非常に有効
からの影響により態度、感情が喚起され変身購買
的なである。また、本研究で「フィクション影響
意図が促進されるプロセスを解明した。研究 2 で
力→ポジティブ感情→変身購買意図」といった新
は、好きな人がいる恋愛非リア充の心理プロセス
たな変身消費プロセスが好きな人がいる恋愛非リ
及び比較を行った。多母集団同時分析において影
ア充の場合最も影響度合いが高かった。したがっ
響度合いに差があるパスが 5 本見られた。得られ
て、本研究で新しく仮説設定した要素を組み合わ
た知見のうち、
特筆すべき 4 つについて言及する。
せた変身消費プロセスは好きな人がいる恋愛非リ
第一に、好きな人がいない恋愛リア充、好きな
ア充の変身購買を促進させるうえで非常に重要で
人がいる恋愛非リア充共に「フィクション影響力」
あることが解明された。
が全ての態度、感情を喚起させることが解明され
第三に、好きな人がいない恋愛非リア充の場合
24
「劣等感」を感じるほど「変身購買意図」が低減
効率的な訴求ができることを解明した。また、影
していくことが明らかになった。分析結果から「劣
響度合いから好きな人がいる恋愛非リア充は「フ
等感」は「フィクション影響力」のみから形成さ
ィクション影響力」
、好きな人がいない恋愛非リア
れることが明らかになった。そのため、少女漫画
充は「価値表現的影響力」を訴求すべきことが分
の主人公のような、現実から過度にかけ離れた架
かった。
空の恋愛リア充の存在は、変身行動という現実世
④ ―――新規提案
界での努力ではたどり着けないと恋愛非リア充に
思わせてしまうのである。フィクションの訴求の
1.アプリの現状
際に、現実からかけ離れた表現さけるべきである。
つまり、1 つ目の知見で「フィクション影響力」は
有効であると述べたが、その際の注意点が明らか
本研究では新規提案としてアプリを採用する。
になったといえる。また、影響度合いの比較から
2013 年 6 月にメディア環境研究所が行った「メデ
好きな人がいる恋愛非リア充の方が「フィクショ
ィア定点調査 2013」によると、スマートフォン(以
ン影響力→劣等感→変身購買意図」のプロセスが
下スマホ)の所有率は全体の 45%となり、2012 年
好きな人がいない恋愛非リア充よりも強く正の影
から 10%増加し、おおよそ 2 人に 1 人がスマホを
響を与えたプロセスであることが解明された。し
持っていることがわかる。さらに、若者の利用機
たがって、好きな人がいない恋愛非リア充よりも
能は通話より、アプリや SNS などの数値が高いと
現在交際相手がいる恋愛リア充は架空の恋愛リア
示された。また、矢野経済研究所が 2012 年 3 月
充から劣等感を喚起され、変身購買をする一連の
27 日にまとめた『スマホアプリ市場に関する調査
プロセスを踏んでいることを解明した。
結果 2012』によれば、国内スマホアプリ市場は
第四に、好きな人がいる恋愛非リア充と好きな
139.9 億円(前年比 170%)と、今後もさらに成長
人がいない恋愛非リア充の変身消費プロセスの違
が続くことが予測されている。このようなスマホ
いを解明した。好きな人がいる恋愛非リア充のプ
市場の拡大や、それを用いたアプリ市場が成長す
ロセスでは「功利的影響力」
、好きな人がいない恋
る現状を踏まえ、新規提案のフィールドもアプリ
愛非リア充のプロセスでは「情報的影響力」が見
を利用することとする。
られた。そのため、変身購買を訴求するうえで、
2.「implove
企業は好きな人がいる恋愛非リア充に対し「功利
アプリ」の認知機会
的影響力」を訴求すると「劣等感」を生み出して
しまう恐れがある。企業は「罰」である恋愛非リ
本アプリの認知機会を電車内の交通広告が最も
ア充に見られることを好きな人がいる恋愛非リア
効果的ではないかと考えた。電車は一人でいる場
充に感じさせない提案をしなければならない。ま
合が多く、広告が目に入りやすいためである。広
た好きな人がいない恋愛非リア充の訴求では「情
告のコンテンツとして、2 種類用意した。1つ目は、
報的影響力」を訴求すべきである。しかしながら、
恋愛リア充が交際相手とのデートに行くまでの外
「情報的影響力」は影響度合いが他のパスと比較
見の変化の過程を掲載する。理由として、恋愛リ
すると小さいため、補助的な役割として使うこと
ア充が外見に気を遣っている様子を恋愛非リア充
によって好きな人がいない恋愛非リア充に対し、
に気付かせるためである。2 つ目は、恋愛非リア充
25
が恋愛リア充になった際の外見の変化を掲載する。
■図表―――26
理由として、恋愛非リア充が恋愛リア充に近づけ
QR コード、商品掲載画面
ることができる可能性を示すためである。そして、
本アプリのダウンロードを促す。
3.「implove アプリ」のコンテンツ
(1)「implove アプリ」の概要
我々が提案する新アプリ、
「implove アプリ」の
コンテンツについて説明する。“implove”とは、
本研究の目的である恋愛非リア充の外見を向上す
(筆者作成)
るという意味である“improve”と恋愛の”love”を
恋愛リア充が商品を載せた時、本アプリ内の後
組み合わせた。本アプリは、恋愛リア充の外見に
述する LOVE ポイントを与える。この時恋愛リア
関する財の購買情報を恋愛非リア充に提供し、恋
充はその商品についてコメントをすれば、LOVE
愛非リア充が恋愛リア充によって、外見を向上さ
ポイントを追加で付与する。恋愛リア充が購買し
せるために購買行動を起こす、このような流れを
た財だけを載せることで、匿名性になり、恋愛リ
想定したアプリである。後述するポイント制を導
ア充はより掲載しやすくなるのではないかと考え
入することで、恋愛非リア充だけでなく、恋愛リ
た。もちろん、他の恋愛リア充が掲載した財も恋
ア充にも本アプリを使用するメリットを与えるこ
愛リア充は見ることができる。LOVE ポイントと
とができる。
は、本アプリに掲載されている財を取り扱う店舗
に実際、来店した時、購買した時に貯まり、店舗
(2)「恋愛リア充」の場合
で代金の代わりに使用できるようにする。
本アプリをダウンロードした後、ダウンロード
さらに、恋愛リア充には交際相手とのデートス
した本人に交際相手の有無を聞く。この時、交際
ポットやギフト情報等を載せることで、外見を向
相手がいる、つまり恋愛リア充と答えた人につい
上しようとする機会を促進できるのではないかと
て本節で述べる。恋愛リア充が購買した後、レシ
考えた(図表 27)
。
ートに恋愛リア充が購買した商品を本アプリに読
み込むために、店舗や商品についての情報が記載
された QR コードを載せる。QR コードを読み込む
とアプリ上にその情報と写真が自動的に掲載され
る(図表 26)
。
26
■図表―――27
■図表―――28
恋愛リア充の場合
Twitter
(筆者作成)
(筆者作成)
(3) 好きな人がいない「恋愛非リア充」の場合
デートスポット等の恋愛リア充の恋愛情報を見
最初に、恋愛非リア充と答えた人の中で好きな
て、好きな人がいない恋愛非リア充は交際相手と
人がいるかどうかを聞き、好きな人がいないと答
デートスポットに行ける事等に対して憧れの気持
えた人について、本節で述べる。恋愛リア充が投
ちが生じ、
「憧れ」の態度形成を満たすことができ
稿した財を見て、前述したように、LOVE ポイン
る。
トを貯めることができる。好きな人がいない恋愛
また、自身のアカウントを作成し、恋愛リア充
非リア充は恋愛リア充が購買した財を見ることで
が投稿した財を本アプリ内で着せ替えをすること
本研究における「価値表現的影響力」を満たすこ
ができる。さらに、自身のアカウントの相手をマ
とができる。また、恋愛リア充が使用した財を見
ンガ、ドラマ等に登場する架空の恋愛リア充、あ
て、自身の参考にしようと思い、
「憧れ」の態度形
るいは広告の登場人物のような容姿端麗なモデル
成を満たせる。好きな人がいない恋愛非リア充は
を選択することができる(図表 29)
。
恋愛リア充が使用した財を見て、想像の中でより
具体的に恋愛リア充になることを想像しやすくな
り、
「ポジティブ感情」が発生する。また、本アプ
リ は Twitter と リ ン ク さ せ る 。 恋 愛 リ ア 充 が
Twitter に投稿した記事を恋愛非リア充は本アプ
リ上で見る事ができ、
「情報的影響力」を満たす(図
表 28)
。
27
■図表―――29
■図表―――30
好きな人がいない場合のアカウント
好きな人がいない「恋愛非リア充」の場合
(筆者作成)
(4)好きな人がいる「恋愛非リア充」の場合
その後、好きな人がいない恋愛非リア充が、着
最初に、恋愛非リア充と答えた人の中で好きな
せ替えた自身のモデルと架空の恋愛リア充を見る
人がいるかどうかを聞き、好きな人がいると答え
ことで、本研究における「フィクション影響力」
た人について本節で述べる。恋愛リア充が投稿し
を満たせる。好きな人がいない恋愛非リア充は、
た財を見て、前述したように、来店したり、購買
選択した架空の恋愛リア充または容姿端麗なモデ
したりすると LOVE ポイントを貯めることができ
ルが使いこなしている財を見て、手本にしようと
る。「フィクション影響力」は、前述したように、
思い「憧れ」の態度形成を満たすことができる。
モデルに着せ替えることで満たすことができる。
また、好きな人がいない恋愛非リア充は本アプリ
また、好きな人がいる場合は自身のアカウントの
内のモデルを自身の交際相手と想像し、自身があ
相手を意中の相手に類似したアカウントを作成す
たかも恋愛リア充になったと思いこみ、楽しくな
ることができる。自身のアカウントと作成した好
り「ポジティブ感情」を満たすことができる。
きな人に類似したアカウントをカップルのように
好きな人がいない恋愛非リア充の本アプリ上に
並べることで架空の恋愛リア充を創造できる(図表
31)
は異性との出会いのために現在しばしば行われて
いる「街コン」情報等の載せることで恋愛非リア
充は恋愛を身近に感じ、外見を向上させる意識を
促すことができるのではないかと考えた(図表 30)。
28
■図表―――31
しながら 2013 年の DIAMOND online の調査では、
好きな人がいる場合のアカウント
ネットショッピングにおける最終購買の端末は、
PC が 92%、スマホは 8%と圧倒的な差が存在する
ことが明らかにされている。そのため、恋愛非リ
ア充が本アプリで、恋愛リア充が購買した財を見
ても、実際に購買する可能性が低い。しかしなが
ら、来店ポイントを付ければ、恋愛非リア充が来
店し、購買する可能性が高くなるのではないかと
考えたため、来店ポイントの制度を採用する。
⑤ ―――結論
上記で述べたようにカップルのように並べること
外見を向上させる消費を恋愛の視点から捉え、
で「憧れ」の態度形成を満たすことができる。さ
消費者を恋愛リア充、恋愛非リア充と大分し、恋
らに、好きな人がいる恋愛非リア充には、好きな
愛非リア充は恋愛リア充が持つ準拠集団の影響力
人に対してのデートの誘い方やギフト情報、恋愛
から態度が形成され、変身購買を促される心理プ
コラム等の恋愛情報を掲載し、外見を高める機会
ロセスを解明した。研究 1 から、好きな人がいな
を促せると考えた(図表 32)
。
い恋愛非リア充は「フィクション影響力」、「価値
表現的影響力」から「憧れ」、「ポジティブ感情」
■図表―――32
が形成され「変身購買意図」が促され、また、
「劣
好きな人がいる「恋愛リア充」
等感」を感じるほど「変身購買意図」が低減され
ることが分かった。好きな人がいない恋愛非リア
充に訴求する際は「フィクション影響力」、「価値
表現的影響力」を訴求すべきだが、
「フィクション
影響力」から「劣等感」が形成されてしまうため、
「フィクション影響力」を訴求する際の注意すべ
き点も言及することができた。好きな人がいる恋
愛非リア充は「フィクション影響力」から「ポジ
ティブ感情」が形成され「変身購買意図」が促さ
れることを解明した。また、好きな人がいる恋愛
非リア充、好きな人がいない恋愛非リア充の心理
(5)来店時における LOVE ポイント
プロセスを解明したことから、好きな人がいない
本アプリはスマホでダウンロードする可能性が
恋愛非リア充は「情報的影響力」
、好きな人がいる
高い。電車や街中など“いつでもどこでもネットに
恋愛非リア充は「功利的影響力」がそれぞれ独自
アクセスできる”ことがスマホの特徴である。しか
の影響力として働き、好きな人の有無によって訴
29
求方法が異なることが分かった。
抱き、その人のようになりたいと感じる場合であ
る。向上心を持つ人には本研究における消費者心
理プロセスが当てはまり、様々な製品市場の拡大
⑥ ―――今後の展望
が見込まれる。
本研究にて得られた結果により、恋愛非リア充
⑦ ―――おわりに
の消費者心理プロセスを解明することができた。
本研究では対象を大学生とし、大学生の多くは恋
愛非リア充であった。しかしながら、大学生では
以上、本研究について述べてきた。検討すべき
なく 10 代前半や 30 代などを対象とした消費者心
課題が多く存在したが、今日、話題になっている
理の研究をした場合は、本研究でたどるプロセス
若者の関心が高い恋愛と消費を絡めた本研究はマ
や構成因子が異なる可能性もある。実証のために
ーケティング実務の発展の一つ指標になっただろ
は幅広い層での調査が不可欠となる。そのため、
う。
恋愛非リア充の消費者心理プロセスを用いたマー
本研究は、今年度の大会のテーマである「明日
ケティング戦略を行えば、売り上げが頭打ちの市
話したくなるマーケティング」を念頭に、大学生
場であっても市場規模を拡大させることができる
の大部分に当てはまる交際相手がいない人、つま
と考えられる。
り、本研究における恋愛非リア充と大学生が自由
また、本論文に載せていない恋愛非リア充の購
に表現できる外見に注目し、
「恋愛非リア充の変身
買意図における男女の比較であるが、比較した場
消費行動」を解明した。本研究では大学生にのみ
合それぞれのパスの影響度合いの強さ、方向性に
スポットを当てたが、恋愛と外見は、全世代にも
違いがみられる可能性がある。その理由として男
当てはまり、応用できると考える。そうすること
性と女性で興味の対象が異なり、購買する財の種
で、マーケティングの一つの枠組みを超え、恋愛
類が異なる場合が多いからである。特に女性は男
に対しての人々の価値観を少しでも多様化できる
性と比べ、化粧品やコスメ等にかける金額が大き
のではないか。
い。購買対象の違いがパスや購買プロセスに変化
をもたらすことは十分考えられる。しかしながら、
今回多母集団同時分析を行った結果、モデル適合
参考文献
度が低く研究に使えなかったため除外した。今後
上田琢哉[1996]
「自己受容概念の再検討
自己評
その原因を検証し、対策を立てることで研究に使
価の低い人の“上手なあきらめ”として」
心理
える分析結果を出す必要がある。
学研究,67(4)
,327-332.
さらに、本研究におけるプロセスは準拠集団の
神山進[2009]
「変身消費者心理」彦根論叢..
影響力や憧れ因子、劣等感など普遍的なものを構
小池芙美代、土田昭二[2007]
「妬み経験が自己向
成因子としているため、恋愛非リア充だけでなく
上の動機付けに及ぼす影響」鈴木正仁教授退職記
様々な状況に適応できる。理想を思い描く状況は
念論文集(第 377 号).
恋愛だけではない。たとえば会社の上司、一流の
小塩真司[2011]
『SPSS と Amos に心理・調査デ
スポーツ選手、身近にいる優秀な友人等に憧れを
ータの解析』東京図書.
30
仁平京子[2008]
「広告効果に対する熱望集団と理
交際できない理由」
想自己の影響~定年退職経験者へのカリスマのラ
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=2014082
イフスタイルの創造~」吉田秀雄記念事業財団.
8-00010005-dime-soci.
仁平京子[2008〕
「準拠集団理論と広告コミュニケ
株式会社電通総研[2013]
「第一回好きなものまる
ーション戦略~熱望集団の創造に向けて~」明大
わかり調査」
商学論文第 90 巻第2号.
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/20
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ラ
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ハ
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32
補録―――アンケート調査表
―アンケートご協力のお願い―
この度、恋愛非リア充、恋愛リア充の消費者心理プロセスについての研究を
行っております。お忙しいところ誠に恐縮ですが、皆様にアンケートのご協力
をお願い致します。このデータは本研究のみに使用するものであり、他の目的
に使用することは一切ございません。尚、記入漏れがあるとデータが無効にな
ってしまいますので、記入漏れのないようにお願い致します。
※
恋愛リア充⇒恋人がいる人
恋愛非リア充⇒恋人がいない人 と定義いたします。
問 1、あなたの年齢と性別を教えてください。
性別 (
男
年齢 (
・
女
)
歳 )
問 2、あなたには現在恋人がいますか?
(
はい
・
いいえ
)
問 3-1、恋愛リア充・恋愛非リア充に対してどう思いますか?以下の質問にお答えくださ
い。
※現在恋人がいる方は恋人ができる前の片思いの時を思い出してお答えください。
あ
て
は
ま
ら
な
い
や
や
あ
て
は
ま
ら
な
い
ど
ち
ら
と
も
い
え
な
い
や
や
あ
て
は
ま
る
あ
て
は
ま
る
1, 恋愛リア充からの恋愛知識に関心がある。
1
2
3
4
5
2, 恋愛リア充からの恋愛経験に関心がある。
1
2
3
4
5
3, 恋愛リア充の SNS に関心がある。
1
2
3
4
5
33
4, 恋愛リア充のように振る舞うことは自分にとっていいことだと
1
2
3
4
5
5, 恋愛リア充になるために努力することは良いことだと思う。
1
2
3
4
5
6, 他人から恋愛非リア充に見られることはよくないことだと思う。
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
13, 本を読んで恋愛リア充になることを夢見る。
1
2
3
4
5
14, 漫画を読んで恋愛リア充になることを夢見る。
1
2
3
4
5
15, ドラマを見て恋愛リア充になることを夢見る。
1
2
3
4
5
16, イベントが近づくと恋愛リア充になることを夢見る。
1
2
3
4
5
思う。
7, 恋愛非リア充と思われることは周囲からの自分の評価を下げる
と思う。
8, 恋愛リア充が外見を変えるために消費している物の購入・使用
が、印象を高めると思う。
9, 恋愛リア充が外見を変えるために消費している物の購入・使用に
よって、他人があなたに抱く印象を高めると思う。
10, 広告の登場人物のような憧れの恋愛リア充になりたいと思う。
11, 恋愛リア充が外見を変えるために消費している物の購入・使用
が、他人から褒められるか尊敬されると思う。
12, 恋愛リア充が外見を変えるために消費している物の購入・使用
は、リア充になりたいという願望を促すと思う。
問 3-2、以下の質問にお答えください。
※現在恋人がいる方は恋人ができる前の片思いの時を思い出してお答えください。
17, 恋愛リア充を尊敬する。
1
2
3
4
5
18, 恋愛リア充に憧れの気持ちを持つ。
1
2
3
4
5
19, 恋愛リア充を素晴らしいと思う。
1
2
3
4
5
20, 恋愛リア充を自分の手本にしようと思う。
1
2
3
4
5
21, 恋愛リア充を見て落ち込む。
1
2
3
4
5
22, 恋愛リア充を見ていらいらする。
1
2
3
4
5
23, 恋愛リア充をみて悔しさを感じる。
1
2
3
4
5
24, 自分が恋愛リア充になることを想像してわくわくする。
1
2
3
4
5
25, 自分が恋愛リア充になることを想像して楽しい。
1
2
3
4
5
26, 自分が恋愛リア充になることを想像して期待感を抱く。
1
2
3
4
5
34
問 3-3、
以下の質問にお答えください。
※現在恋人がいる方は恋人ができる前の片思いの時を思い出してお答えください。
27, 外見を変えるために化粧品を購入しようと思う。
1
2
3
4
5
28, 外見を変えるために洋服を購入しようと思う。
1
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3
4
5
29, 外見を変えるために美容院へ行こうと思う。
1
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3
4
5
30, 外見を変えるためにフィットネスに行こうと思う。
1
2
3
4
5
31, 外見を変えるためにエステに行こうと思う。
1
2
3
4
5
ご協力ありがとうございました。
ご記入漏れがないか再度ご確認宜しくお願い致します。
神村百香
川久智美 野本啓剛
35
村田啓輔
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