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●インタビュー
JISA会長
November 2007
vol.
84
● 特集
浜口友一
通信が切り拓く映像配信
Live
Talk
インタビュー
真のリーディングインダストリーを目指して
無限の可能性を秘めた
ソフトウェア産業の明日
vol.84 November
2007
Contents
Live Talk
無限の可能性を秘めた
ソフトウェア産業の明日
情報サービス産業協会 浜口友一 ———————— 3
Topics
通信が切り拓く映像配信
コンテンツ配信の新時代が来た
山本文治 ———————— 6
“アクトビラ”の挑戦
大野誠一 × 保条英司 ———————— 9
映像配信を知る 最新キーワード集 ———————— 12
[連載]人と空気とインターネット
インターネットの三種の神器
浅羽登志也 ———————— 16
Photo Library
Close up JIMBOCHO 鬼海弘雄 ———————— 18
Technical Now
ネットワーク運用はプロに任せる時代へ
青山直継 ———————— 20
サーバリソースは必要なときに必要なだけ
立久井正和 ———————— 22
最先端研究を加速させる
次世代学術情報ネットワーク ———————— 24
Information & Group Company Notes ———————— 26
Short Essay ふぉん・のいまん
鈴木幸一 ———————— 27
写真/宮脇 進
【ゲスト】
社団法人情報サービス産業協会( JISA)会長
株式会社 NTT データ 取締役相談役
浜口友一
【インタビュア】
株式会社インターネットイニシアティブ 代表取締役社長
鈴木幸一
日本企業は、いかにして国際競争に打ち勝つのか、
そして国内市場でソフトウェア産業は、
どのようにしてその地位を築いていくべきなのか。
ここでは、社団法人情報サービス産業協会の
浜口友一会長をゲストに迎え、長年、情報通信産業に携わり、
今も第一線で活躍する浜口氏の豊富な知見をおうかがいした。
発行/株式会社インターネットイニシアティブ 広報室
お問い合わせ/株式会社インターネットイニシアティブ 広報室内「IIJ.news」編集部
〒 101-0051 東京都千代田区神田神保町 1-105 神保町三井ビルディング
TEL:03-5259-6310 E-mail:[email protected] 印刷/株式会社興陽社
編集/手島有希、増田倫子
編集協力/都市出版株式会社、新井晴代
表紙イラスト/小林マキ
デザイン/ B.C.
◎ IIJ.news のバックナンバーをご覧いただけます。URL:http://www.iij.ad.jp/iijnews/
インターネットは、
ソフトウェア
「インターネット事業はソフ
—
トウェアである」というのが私の
持論なのですが、なぜ日本のイン
ターネットには、技術的に新しい
ものが出てこないのか。情報サー
ビス産業協会(JISA)の会長
になられた浜口さんに、こんなこ
とを聞いては失礼かなと思いな
がら、あえておうかがいしてみる
次第ですが。
(笑)
日本がアメリカと違うの
浜口
は、インターネットを使ったビジ
ネスモデルが、なかなか出てこな
いことですね。
「楽天」
や
「ヤフー」
など、元々のビジネスモデルはア
メリカにあって、本国で少し広が
った段階で日本に輸入されてく
る。どうも日本人には、新しいも
のを発想する力が乏しいのでは
ないかとも思います。
電 電 公 社 時 代、 七 〇 年 代 か ら
八〇年代にかけて、DIPSとい
うコンピュータの開発をやって
いたことがあり、それを結局やめ
る こ と に な っ た 時、 研 究 所 の 人
たちと議論したことがあります。
これからの通信は、コンピュータ
技術を使ったものになるのでは
ないか、と。LSIはどんどん集
積度が上がっていくし、ネットワ
ーク技術者がコンピュータ技術
を使っていくようになる。
最低限、
通信を記録していくようにした
らどうか。つまり今のパケット交
ルに競争できるかどうか。実はあ
まりクリエイティビティがない
のかなとも思うんです。
(笑)
その理由として、やはり日本と
いう国の言語や文化が、創造性の
障害となっている部分もあるか
もしれません。仮にそうならば、
日本人のクリエイティビティを
もっと上げていくには、やはり多
民族の環境でないとだめかなと
思うことがあります。日本国内で
はない環境に行って、全く新しい
バックグラウンドで研究開発を
やってみるといったふうに。
ソフトウェア産業の
リテラシーを上げていく
ために
長年ソフトウェア業界には
—
人月、つまり「働いた時間に対す
る支払い」といった考え方が当然
のようにあります。本来、知的で
あるはずのソフトウェア産業と
は、対極の言葉ですが。
だからこそ、ソフトウェア
浜口
とかコンピュータに対する日本
人のリテラシーを上げていかな
ければならないと思うのです。そ
のためには、業界自身がそういう
努力を怠ってはならない。
ア メ リ カ の 経 済 界 に は、 シ
—
ステムの開発に携わっていた人
が多い。日本の経団連に行っても
システムの経験者は少ない。
会 社 の な か に き ち ん とC
浜口
IOを置いて、CIOがその役割
に相応しい地位と力を持つ。そし
て経営者はシステムに関して、し
っかりとした知見を備える。こう
いったことが必要です。
システムこそ企業の競争力
—
を決める、という認識ですね。
そうです。例えば、私ども
浜口
ソフトウェア業界では、大きなシ
ステムを構築する際には、いくつ
もの会社が多層的に関与し、大規
模なプロジェクト体制を組んで、
仕事を進めます。
そんな時には、技術者ひとり一
人の持っているスキルをきちん
と評価していくことが大切にな
換のようなことに持っていけば
よいのではないかと私は思って
いたのですが、議論がかみ合わな
い。
ネットワークをやっていた人
は、A点とB点をいかに迅速に結
び、大量のデータをやり取りする
かが通信であって、内容を記録す
るなどというのは通信の秘密に
触れる、といった考え方でした。
今も変わらない。
—
おっしゃられたように、イ
浜口
ンターネットは、本当にソフトウ
ェアだと思います。もっと言い換
えれば、今の通信自体がソフトウ
ェアでしょう。ビジネスモデルと
しては、ASPみたいなものもあ
りますからね。
日本のソフトウェア業界は、
—
ファクトリーとしてすばらしい、
しかし「知」がない、とも言われ
ていますね。
国際的な競争力に欠けて
浜口
いるのでしょう。トヨタ、松下、
ソニーなどの製造業にはすばら
しい国際競争力がある。
いっぽう、
ソフトウェア産業もそれらと同
じ仲間だと思われていますが、実
は違います。
国際競争力のある日本のメー
カは、マスプロダクションで、車
やテレビを数万台作るなかで、品
ィングインダストリーの一つで
すから、日本でも、誇りを持てる
産業として、優秀な人が来てくれ
るようにならないと。
こんなにおもしろい可能
浜口
性を秘めた産業は、他にないです
よ。インターネットは、世界を変
えましたからね。
NTTの山本という後輩が、ス
タンフォード大学で三〇人くら
い の チ ー ム を 組 ん で、 量 子 暗 号
の実用化研究をやっていたので
すが、その日に得た研究結果は、
即日全てインターネット上にア
ップするのだそうです。そして、
世界中がそれを見ていて、次のア
イデアを出してくる。
あ る 知 識 を 創 っ た ら、 み ん
—
なで共有して、
次を展開していく。
まさに、パブリックドメイン的な
考え方ですね。
そうです。しかもそれが、
浜口
グローバルかつフラットになっ
てきているわけです。インターネ
ットを使って、世界的な連鎖のな
かで研究や開発を行っていく時
代、日本にそういった活況が訪れ
るのかなとも思います。
J I S A 会 長 と し て、 ぜ ひ
—
お願いします。
とにかくオープンにやっ
浜口
ていくべきです。業界がどんどん
発 言 し て、 理 解 し て も ら え る よ
うにする。それに対する批判は、
批判としてきちんと受け止めて、
議論を深めていけばいい。世界は
ソフトウェアの力で、まだまだ変
わっていくでしょうからね。
質を改善しながらコストダウン
していきます。しかし、ソフトウ
ェアというのは一回しか作らな
い。映画や音楽作品も同じで、一
度作って、それをコピーし続けれ
ば生産コストはほとんどゼロで
す。ただ、
こういったプロセスは、
製造業的ではないですよね。
ソフトウェアにはすごいクリ
エイティビティが必要で、ある種
の芸術的な側面を持っているた
め、それとマスプロダクションを
一緒にしてもらっては困る、とい
う意見もあります。
でもそういう認識が広まった
としても、我々の産業がグローバ
IIJ
ってきます。お客さまにも、この
人はこういうスキル・資格を持っ
ているということを提示して、プ
ロジェクトを運営していかなけ
ればならないでしょう。それは私
どもベンダ側にも、良い効果をも
たらします。今後は、資格制度を
整備し、能力のある人にはもっと
賃金を払って、魅力ある職業にし
ていかなければならない。
3 K な ん て 言 わ れ て、 東 大
—
の情報学科には人が集まらない。
今は定員割れだそうです。
ある大学の工学部では、電
浜口
気科の倍率が最下位になったと
いいます。人気なのは、機械、ロ
ボット、自動車だそうで。
そういう状況をどう変えて
—
いきますか。
やはり、業界全体のリテラ
浜口
シーを上げていくことでしょう
ね。システムの作り方はこうある
べきだということを理解しても
らい、要求定義と、実装、開発を
分ける。ベンダ側も自社できちん
と社員を抱えて、その人たちのス
キルを磨くことで、信頼性や品質
を上げていくべきだと思います。
今でも教科書的な経営を正しい
と思って、
人件費は固定費だから、
損益分岐点を下げようとしてい
る経営者も多いようです。
しかし、
そこは考え方を変えて、やはり経
営者がリスクを背負わないと業
界は変わっていきませんよ。
そ ろ そ ろ、 そ う い う こ と を
—
やっていかないと、だめですね。
ア メ リ カ で はI T 産 業 は リ ー デ
業界に対するリテラシーを
もっと上げていく必要があります。
I
T
浜口友一 はまぐち・ともかず
1944年 徳 島 県 生 ま れ。67年日本電信電話公社(現
NTT)入社。88 年 NTT データ通信(現 NTT データ)分
社後、95 年取締役、常務取締役、副社長を経て 2003
年社長に就任、07 年 6 月より取締役相談役。07 年 5
月から情報サービス産業協会(JISA)の会長を務める。
Topics
インターネット上のメディアとして、常にその可能性が問われてきた「映像配信」
。
「通信と放送の融合」が話題となり、
今ではさまざまな取り組みを目の当たりにすることができる。
ここにきて、なぜ映像配信が注目されるのか、
そして、その将来はどうなっていくのか。
本特集では、技術的背景や最新事例を鑑みながら、
現在整備が進められている「情報通信法」
(仮称)の実態を考えることで、
映像配信の近未来を展望する。
80
こうしたサービスを実現する
際、コンテンツを視聴するユー
ザ側の回線キャパシティとサイ
トの動画配信能力のバランスを
取れるかどうかという「キャパ
シティプランニング」が重要に
な っ て き ま す。 仮 に 会 員 数 が
一〇〇万人のサイトがあったと
して、視聴率を一パーセントで
計算すると、同時アクセス数は
一万になります。ハイビジョン
コンテンツの圧縮にH・264
を用い、8Mbp s の帯域を持
つコンテンツをユーザに届ける
となると、サイト側は Gbp
s という大きな帯域を用意する
必要があるのです。
日本国内での総トラフィック
は二〇〇七年五月時点で平均
720Gbp s です(総務省調
べ)
。これはブロードバンド契約
者のトラフィック総量を試算し
た結果であり、極論すれば、ユ
ーザ側はすでにこれだけのトラ
フィックを受け入れる準備があ
るということです。
サイトのほうはどうでしょう
か。配信能力が必要となるサイ
トは、複数台のサーバによって
構成されますが、昨今のCPU
性能の上昇により、サーバ一台
あたりの配信能力は、ここ数年
で劇的に伸びました。1Gbp
s の配信を達成するために必要
となるハードウェア費用は、五
年前と比較して十分の一になる
という試算もあります。さらに
山本文治
八八〇万契約を数え、マスとし
ても無視できない数になってき
インフラとして認知された
ま し た。 こ の 能 力 を 活 か せ ば、
インターネット
インターネットを使ってハイビ
ジョン映像を家庭に届けること
映 像 配 信 メ デ ィ ア の 主 役 は、
もできます。この議論を可能に
電波を使った放送です。電波は、
映 像 も 含 め た デ ー タ の 同 報 性、
したのが、映像圧縮方式の高性
能化と、IPマルチキャストを
配布性にひじょうに優れていま
す。いっぽう放送は、その公共
代表とするインターネット送信
技術の向上です。
性ゆえに許認可制度が敷かれて
おり、誰しもが参入できる配信 具体的な数字を紹介しましょ
メディアではありません。そこ
う。地上デジタル放送はMPE
G2という映像圧縮方式を用い、
で、資本整備さえできれば誰で
Mbp s の帯域を使っていま
も参入可能なインターネットに
す。ところが、最近ポピュラー
注目が集まっているのです。
日本のブロードバンドサービ
になりつつあるH・264とい
う最新の圧縮方式は、効率がM
スは、普及の一途をたどってい
PEG2 の約二倍と言われてお
ます。特に光ファイバーを家庭
に 直 接 つ な げ るF T T H の 契 約
り、必要帯域は Mbp s を切
るのです。
数は、平成十八年度末の段階で
電波に替わる新しい映像配信手段として注目を集める
〝IPマルチキャスト放送〟
本稿では、この方式の詳細や事例などを見ながら、
来るべきデジタル放送のあり方を考える。
ネットワークサービス本部
I
I
J
コンテンツ配信の
新時代が来た
イラスト/牧野伊三夫
10
近年では、 Gbp s のイーサネ
配信ビジネスに参入し、成功を
きません。
ットも実用化され、配信キャパシ
収めました。これは、ハードウ 言うまでもなくテレビは、家
ティの向上に貢献しています。
ェアビジネスとソフトウェア(オ
庭内のコンテンツの大きな受け
これらの回線設計やサーバフ
ンライン)ビジネスが相補関係
口です。これまでは放送局がそ
ァームの整備、フィジビリティ
を形成する、一社供給によるエ
の受け口として君臨してきまし
スタディを経て、商用化にこぎ
コシステムです。
たが、テレビにネットがつなが
つけた事例がいくつかあります。 こうしたエコシステムの追随
ると、チャネルが複数化するの
「アクトビラビデオ(株式会社ア
者は日本にもいます。
「デジタル
で、特定のテレビ局に、ネット
クトビラ)
」
「オンデマンドテレ
テレビ情報化研究会」と「アク
上の提供事業者を加えた中から
ビ( 株 式 会 社 オ ン・ デ マ ン ド・
トビラ」です。
コンテンツを選べるようになる
テ ィ ー ビ ー)
」
「Gy a O( 株 式 このデジタルテレビ情報化研
わけです。
会 社U S E N )
」
「フォースメデ
究会は、シャープ、ソニー、東芝、
期待される
ィア(株式会社ぷららネットワ
日立、松下のテレビメーカ五社
IPマルチキャスト
ークス)
」などのサービスです。
によって設立された、デジタル
テレビの規格化団体です。アク
サービス提供者側の
トビラは、主にテレビのネット 「アクトビラ」のサービスはオ
ワーク対応について規格を発行
ンデマンドで、ユーザは好きな
意識の変化
し て お り、 現 在 で は「 We b 」
時に好きなコンテンツをネット
これまでインターネットを使
と「プリンタ対応」
、そして「ス
経由で取り出すことができるた
った映像配信ビジネスのサービ
トリーミング」に関する機能が
め、サービス提供者側からする
ス提供者は何度か代替わりして
標準化されています。
と、究極的にはレンタルビデオ
きましたが、現在は、メーカの アクトビラは、前記の五社に
のオンライン版の地位を狙って
動 き に 注 目 が 集 ま っ て い ま す。
ソネットエンタテインメントを
い る と 言 え る か も し れ ま せ ん。
メーカは、製品つまり「箱」を
加えた六社の資本参加によって
これに対し「放送」をターゲッ
設計し、ユーザに直接供給でき
設立されました。メーカ各社が
トとする技術が、IPマルチキ
るので、そのポジションを活か
販売しているネットワーク対応
ャストです。
して、インターネット上の映像
テレビやセットトップボックス 放送は、送信所から電波が届
配信ビジネスを握ることも可能
(STB)に対して、ポータルや
く範囲であればどこでも受信す
だからです。
動画などのサービスを実施して
ることができ、
「全ての地点に到
これを音楽配信産業に置き換
います。アクトビラがターゲッ
達する」この方式をブロードキ
えて考えてみましょう。すると、
トにするのは、あくまでこれら
ャ ス ト と 呼 び ま す。 い っ ぽ う、
アップルの戦略が際立って特徴
のテレビやSTBであって、パ
マルチキャストは「必要とする
的であることがわかります。彼
ソコンユーザは対象にしていま
地点全てに到達する」という特
らはまずi Po dというハード
せん。実際、情報化研究会仕様
性を持っています。必要としな
ウェアを用意しました。次にオ
をサポートしていないテレビや
い人には、範囲内であっても届
ンラインストア(i Tunes
パソコンからは、アクトビラの
くことがないのです。マルチキ
Store )を立ち上げ、音楽
ポータルサイトへはアクセスで
ャスト通信の一例として、メー
10
17
通信が切り拓く
映像配信
やまもと・ぶんじ
1969 年神奈川県生まれ。95 年に IIJ
グループの IIJ-MC に入社し、主にスト
リーミング業務に従事。同技術を議論
する Streams-JP Mailing List を主催す
るなど市場の発展に貢献。05 年より
IIJ 勤務。現在は、ネットワークサービ
ス本部技術推進室シニアエンジニア。
く映
切り拓
像配信
新たなコンテンツ流通を切り拓く
“アクトビラ”の挑戦
株式会社アクトビラ 代表取締役社長
大野誠一
IIJ 専務取締役 営業本部長
保条英司
アクトビラホームページ http://actvila.jp/
リ ン グ リ ス ト が 挙 げ ら れ ま す。
ャンネル切り替え時の遅延です。
ルに迫れるかは、今後、どこま
メーリングリストでは、加入し
受信側で受信を宣言し、ルータ
でユーザの日常シーンに食い込
ている人全員に対しサーバから
からトラフィックが流れてくる
んでいけるかにかかっているの
メールが送られますが、加入し
まで、どうしても時間がかかっ
です。その際、扱いやすく「買
ていない人にメールが届くこと
てしまうのです。アナログ放送
う気にさせる」デバイスや、ユ
はありません。こうした制御は
のように、チャンネルを替えれ
ーザインタフェースのデザイン
ルータが担い、受信すると宣言
ば瞬時に映像も切り替わるとい
などもキーポイントになるでし
した下流にのみトラフィックを
う 芸 当 は、 と て も で き ま せ ん。
ょう。
流します。このようにIPマル
総務省のガイドラインでは、I I P マ ル チ キ ャ ス ト 放 送 は、
チキャストは、不要なトラフィ
P マルチキャスト放送の遅延時
地上デジタル放送への移行がス
ックがネットワークに流れるこ
間を「地上デジタル放送のチャ
ムーズでないこともあって、今
とを抑制して、効率性を実現で
ンネル切り替え時間+2・5 秒」
後プッシュされてくる形勢です。
きる技術なのです。
まで許容しています。しかしこ
しかし重要なのは、アナログ放
この技術の有用性、すなわち
れは、デジタル処理に映像技術
送からデジタル放送への移行に
「IPマルチキャスト放送」への
を使う際の宿命とも言えるもの
ともない、電波を使うことなし
活用を考えているネットワーク
で、ネットワークだけで解決で
に放送が可能であると実証して
キャリアが増えつつあり、将来
きる問題ではなく、
「待たされて
みせることです。それにともな
的には、地上デジタル放送のI
いる感」を少なくするためのユ
って、IPマルチキャストのイ
P 同時送信も開始されることで
ーザインタフェースの開発が必
ンフラを用い、
「放送局」をネッ
しょう。ユーザは「ブロードキ
要と言えるでしょう。
ト上で立ち上げる事業者が増え
ャストか、マルチキャストか」
、
ると思われます。
つまり放送か通信かを気にする
最後にもう一点、今後、IPに
将来の生き残りをかけて
ことなしに、コンテンツを選べ
よるサービスの可能性を高め、よ
るようになるのです。
オンデマンドの「いつでもど
り高品質なものにしていくため
いっぽう、IPマルチキャス
れでも」コンテンツを選べる良
にも、技術革新の努力を常に怠っ
トには課題もあります。特に以
さは、通信ならではのものです。
てはならないということを指摘
前から問題となっているのがチ
これまでのビデオレンタルモデ
しておきたいと思います。
写真/宮脇 進
IIJ
ブロードバンド時代におけるデジタルメディアの可能性を究めるために、
家電メーカなど 6 社が共同設立した “アクトビラ”
トビラを開けると、そこには新たなネットワークの世界が広がっている
というコンセプトのもと、デジタルテレビ向けの映像配信サービスや
各種の生活情報などを提供している。
今回は、社長の大野誠一氏をお迎えし、IIJ 専務取締役の保条英司氏とともに、
これからのコンテンツ流通に関する展望をお話しいただいた。
【対談】
Topics
通信が
配信
大野誠一 おおの・せいいち
1958 年東京都生まれ。82 年日本リク
ルートセンター(現リクルート)入社。
「ガテン」など数誌の編集長を歴任。99
年にメディアファクトリーへ出向し、
2000 年に同社取締役。01 年にリクル
ート退職後、松下電器産業に転じ、03
年にTナビサービスグループ・グループ
マネジャー。06 年7月のテレビポータ
ルサービス(現アクトビラ)設立ととも
に現職。
まずは、アクトビラの設立
魅 力 は「 高 画 質 プ ラ ス 大 画 面 」
—
ということになるでしょう。
背景から教えてください。
大野 日本が本格的なブロード この九月から始まったトライ
アル期間中(十月までの二ヵ月
バンド時代を迎えたことで、テ
間)は、アクトビラが提供する
レビにインターネットを接続し
約五〇タイトルのコンテンツを
て、動画を鑑賞できる環境がよ
無 料 で 楽 し ん で い た だ け ま す。
うやく整いました。そこで、こ
その後、十一月から有料コンテ
の新しい「可能性=マーケット」
ンツの配信をはじめ、来春から
を切り拓くためには、家電メー
の本格展開を予定しています。
カ各社が足並みを揃えたほうが
アクトビラとIIJ の関係
いいということになり、シャー
—
プ、ソニー、東芝、日立製作所、
は、どのようなかたちで始まっ
松下電器産業にソネットエンタ
たのでしょうか。
テ イ ン メ ン ト を 加 え た 六 社 が、
保 条 ブ ロ ー ド バ ン ド の 利 用
昨年の七月七日、
「テレビポータ
者数が一千万世帯に近づいた
ルサービス株式会社」を設立し
二〇〇二年頃を境に、インター
ました。そして今年の九月一日
ネットの用途は、テキストや静
付けで、サービスブランド名と
止画を扱うことから、動画や音
同じ「株式会社アクトビラ」に
声といった大容量コンテンツを
社名を変更しました。
やり取りする方向へとシフトし
ていきました。
大野 でもその当時は、ハイビ
好きな時間に好きな
ジョンクラスの動画を配信する
コンテンツを選んで見る
なんて、誰も考えなかったでし
ハイビジョン映像を配信す
ょうね。
—
保条 当時の環境ではとうてい
るアクトビラビデオへの反響は、
無理ですよ。
(笑)
いかがですか。
大野 動画配信のポータルサー ただ、近年、国内のブロード
バンド普及率は世界的に見ても
ビスがようやく始まったばかり
ひじょうに高い水準に達し、そ
ですが、これまでSTBなどで
れと同時に、映像圧縮技術が大
映像を見ていた方からは、アク
きな進歩を遂げました。これら
トビラビデオの高画質と大迫力
の状況がタイミング的にうまく
に対して驚きの声が寄せられて
重なって、広帯域対応のインフ
います。やはり、画像のリアリ
ラをフルに活かせる映像配信事
ティが違いますからね。対応テ
業が現実味を帯びてきたのです。
レビが全て四〇インチ以上の大
IIJ としても「映像配信の時
型であることもあって、最大の
代を切り拓いていかなければな
らない」と感じていましたから、
いい時期に大野さんとお会いで
きたと思っています。
大野 実は、テレビにインター
ネットをつなげる試みは、過去
にもありました。インターネッ
トTVやWe b TVなどと呼ば
れていましたが、当時のテレビ
はまだアナログ方式で、提供さ
れ た コ ン テ ン ツ も 貧 弱 で し た。
しかも、伝送インフラもまだナ
ローバンドで、通信料金は従量
制でした。そんなふうに、機が
熟し切っていない段階でのトラ
イアルだったため、結果的にそ
れらは全て姿を消し、
「テレビと
インターネットはあまり相性が
よくない」という一種の誤解が、
家電メーカの間に広がってしま
いました。一九九〇年代の後半
のことです。
保条 今回、アクトビラの取り
組みが始まった背景には、大き
く分けて三つの要因があると思
います。一つ目は、テレビがデ
ジタル化され、基本性能が上が
ったこと。二つ目は、日本全国
に世界で最も安いブロードバン
ドインフラが急速に普及したこ
と。最後は、家電メーカが協力
して、テレビにマッチしたイン
ターネットサービスを育ててい
こうという発想が生まれたこと
です。
大 野 今、 ご 指 摘 い た だ い た
「機運」 —
テレビとインター
10
11
Topics
IIJにとっても、今回の試みは
「チャレンジ」だと感じています。
ネットを融合するための再チャ
に置かれたテレビにインターネ
今までのパッケージ流通からネ
レンジ —
を 後 押 し し た の が、
ットをつなげて、そこに広帯域・
ット流通へと、市場構造が大き
二〇〇三年に始まった「地上デ
大容量の動画コンテンツを供給
く転換すると予想されます。
ジタル放送」だったと言えるで
する。そしてもう一つは、テレ
大野 さらに、パソコンや携帯
しょう。
ビという、ITリテラシーの低
電話などパーソナルユースの「ミ
いユーザも多い「一般家電」に
ニ・ メ デ ィ ア 」 と は 異 な っ て、
対する「セキュリティ管理」を
リビング空間にインターネット
ライフスタイルを変える
徹底させることです。
がつながることで、
「家族で一緒
新しいコンテンツ流通
以上の課題を受けて、6 〜8
に見るためのコンテンツを選ぶ」
アクトビラでは、これまで
Mbp s のハイビジョンコンテ
という、微笑ましいシチュエー
—
ンツをH・264のエンコーダ
ションが生まれる契機にもつな
放送局が発信してきたコンテン
で 配 信 す る た め の エ ン ジ ン をI
がるのではないかと期待してい
ツとは、全く違った内容を楽し
IJが提供しています。
ます。
めるわけですね。
今後「テレビを見る行為」は、 そういった意味で今後は、エ
—
ン タ ー テ イ メ ン ト だ け で な く、
どのように変化していくのでし
教育番組や地域情報なども積極
ょうか。
的に取り入れて、コンテンツの
大野 これまでのテレビの楽し
幅を広げていきたいですね。
み方は、電波で送られてくる番
保条 やっぱり、大画面で美し
組を受信して、鑑賞する「受動
い映像に接したいという欲求は、
的な」スタイルでした。それに
本能的に誰にでもありますから
対してアクトビラのようなポー
ね。 パ ソ コ ン の 画 面 で は な く、
タルサービスがもっと普及すれ
ハイビジョン対応のテレビでク
ば、コンテンツに向けられる視
オリティの高い映像を見たいと
聴者の自発性が刺激され、今ま
いうニーズは高まってくるはず
では体験できなかった世界が拓
ですよ。
けてくると思います。
大野 我々の理想を言いますと、
保 条 少 し 視 点 を 変 え ま す と、
鑑賞中のコンテンツが、テレビ
これまで通信と情報を中心に発
放送なのかインターネット経由
展してきたインターネットとい
なのか、そんなことを意識する
うメディアが「流通」分野にも
ことなく楽しんでもらえるよう
進出できる兆しが見えてきたと
な環境を目指したいです。
も言えるのではないでしょうか。
保条 IIJ 的には、今回のプ
もし、アクトビラのようなス
ロジェクトでいただいた「大容
タイルが定着すれば、レンタル
量ファイルを高画質テレビに安
ビデオショップに行かなくても、
全に送り届ける」という課題に、
見たい映像を好きな時間にネッ
精一杯応えていきたいです。
ト 上 で 探 せ ま す。 そ う な る と、
大野 もちろんアクトビラ対応
テレビは、通常機能を備えてい
ますからテレビ放送も普通に楽
しめますが、今回はさらに一歩進
んでいて、
「視聴者が能動的=双
方向的にコンテンツを選べる」の
で、従来の放送とは大きく異なっ
た印象を持たれると思います。
ただ、ハイビジョンのような
大容量・高画質のデータを配信
するのは、技術的にもかなり大
変なことでしょう?
保条 その通りです。ハイビジ
ョンクラスの動画をネット配信
するなんて、インフラ的には相
当無茶なことですよ。
(笑)
今回、アクトビラのプロジェ
クトでIIJ は、二つのことに
「チャレンジ」したいと考えてい
ます。まず一つ目は、リビング
IIJ
切
通信が
映像
り拓く
テレビ放送とはまったく異なる
印象を持っていただけると思います。
保条英司 ほうじょう・ひでし
1957 年 三 重 県 生 ま れ。96 年 IIJ に
入社し、営業部長として企業向けイ
ンターネット環境の提供に従事する。
2000 年取締役、02 年常務取締役を経
て、06 年より現職。
Topics
配信
映像
り拓く
切
通信が
13
IP マルチキャスト
IP マルチキャストとは、IP ネットワ
ーク上で特定の複数の相手に同じデ
ータを同時送信する仕組みです。一
般に使われるユニキャストは、1 対
1 の通信であるため、通信先が多く
なればなるほど、送信元の回線帯域
を必要とします。IP マルチキャスト
では、送信元から送信された 1 本の
データが必要に応じて経路上のルー
タで複製されるため、送信元で大容
量の回線帯域を必要としません。IP
マルチキャストを使用するためには、
転送経路上にあるルータ全てが IP マ
ルチキャストに対応している必要が
あるため、これまでは閉域網で使わ
れる場合がほとんどでしたが、次世
代 IP プロトコルである IPv6 では、
IP マルチキャストが標準仕様に取り
込まれたため、今後の普及が期待さ
れています。
14
IP 放送
テレビ向けの放送を IP マルチキャス
トで配信する形態のサービスを IP 放
送と呼びます。2001 年に成立した電
気通信役務利用放送法で、IP ネット
ワークを利用した放送が可能になり
ましたが、著作権法上は放送と認め
られていなかったため、地上デジタ
ル放送や BS 放送の再送信ができない
という問題がありました。そのため、
CS 放送に代表される多チャンネル放
送の再送信のみが行われてきました
が、2006 年 12 月に成立した著作権
法で有線放送(CATV)と同様の扱い
となり、地上デジタル放送の再送信
が可能になりました。今後は、地上
デジタル放送難視聴地域への再送信
などのサービスが期待されています。
13
イラスト/牧野伊三夫
10
エンコーディング
エンコードは、一般的には符号化の
意味で使われますが、動画配信にお
いては、映像のデジタル化・圧縮な
どの一連の作業を指します。エンコ
ードは映像の品質を決定する重要な
作業であり、ビットレートやフレー
ムレートなどのパラメータを適切に
決める必要があります。一般的にビ
ットレートを高くすれば、映像品質
は改善されますが、ファイルサイズ
が大きくなり、配信コストは上がり
ます。動画圧縮の際に用いられるコ
ーデックとしては、MPEG、Windows
M e d i a、O n2 V P6、S o r e n s o n、
RealVideo などがあります。
11
ポッドキャスティング
Web 上に公開されたオーディオファ
イル・ビデオファイル・画像ファイ
ルなどを、RSS を通じて公開する仕
組み全般をポッドキャスティングと
呼びます。RSS で配信したコンテン
ツのメタデータに基づいて、ファイ
ルがクライアントにダウンロードさ
れます。米アップルコンピュータ社
が提供する iTunes がポッドキャステ
ィングに対応し、iPod で簡単に視聴
できるようになったことで普及しま
した。現在、ポッドキャスティング
では、MP3、MPEG-4 AAC、MPEG-4
などのファイルがよく利用されます。
7
GyaO
株式会社 USEN が 2005 年 4 月に開
始した無料動画配信サービスです。
2007 年 7 月現在、1500 万人が会員
登録しています。コンテンツも映画
やドラマ、音楽など充実しており、
国内最大規模の動画配信サービスで
す。コンテンツには CM が挿入され
ており、メールアドレスなどの情報
を登録すれば、誰でも無料でコンテ
ンツを視聴できます。2007 年 2 月
には、パソコンがなくても GyaO を
視聴できる専用端末ギャオプラスを
発売しました。
最新キーワード集
IIJ アプリケーションサービス部 アプリケーションサービス 2 課 友田 成則/石橋 豊史/岡 淳一/高山 将孝
5
CDN とは、通常、大規模なコンテン
ツを配信するために構築されたネッ
トワークを指しますが、配信システ
ム全体を表す場合もあります。一般
的には動画配信サイトや大手ポータ
ルサイト、大企業の Web サイトな
どで多く使われます。通常のホステ
ィングサービスや配信システムでは、
このような大規模アクセスやトラフ
ィックに対応するのは難しいため、
CDN がよく利用されます。CDN では
配信サーバがネットワーク上に分散
配置されており、サイトにアクセス
するユーザが最適な配信サーバへ誘
導されるため、安定した配信が可能
となります。
YouTube 同様に、Flash ビデオをダ
ウンロードで配信している株式会社
ニワンゴのサービスです。視聴者の
書いたコメントが、リアルタイムに
動画上に合成されて表示されるのが
特徴で、現在国内で急速に人気を拡
大しています。
「フォト蔵」など他社
の動画共有サービスに設置された動
画を配信することも可能ですが、現
在配信されているコンテンツの大半
は、同社の提供する動画投稿サービ
ス「SMILEVIDEO」に投稿されたもの
です。
CDN (Contents Delivery Network)
9
P2P 技術は、Winny などのファイ
ル交換ソフトで有名になりました
が、コンピュータネットワーク初期
の頃から存在するネットワーク形態
です。Skype に代表される音声通話
や動画のダウンロード、ストリーミ
ング配信などにも利用され始めてい
ます。サーバ/クライアントモデル
による従来の動画配信に比べ、コス
トを低減できるメリットがあるいっ
ぽうで、コンテンツ保護や配信品質
の確保などの問題が懸念されていま
す。P2P 動画配信システムとしては、
SkeedCast、Joost、BB ブロードキャ
ストなどがあります。
もともと動画像圧縮に関する規格の
策定を行う組織の名前でしたが、現
在は主に、そこで策定された動画像
圧縮コーデックの総称として用いら
れます。MPEG には圧縮率の違う数
種類の規格が存在しますが、インタ
ーネットの動画配信では、圧縮率の
高 い MPEG-4 ベ ー ス の コ ーデック
が 多 く 使 わ れ て い ま す。MPEG-4、
H.264(MPEG-4/AVC) は、ワンセグ放
送やポッドキャスティングで使用さ
れ、Flash での採用も予定されていま
す。
MPEG (Moving Picture Experts
Group)
1998 年に国内で初めて
IP マルチキャスト配信サービスを IIJ が開始して
約10 年。この間、デジタル化・IP 化などの
技術革新が急速に進展し、
IP による映像配信ビジネスも多く生まれた。
ここでは、映像配信にまつわる基本技術を中心に
最新のキーワードをまとめた。
3
1
米アドビ システムズ社のマルチメデ
ィア系コンテンツ作成ソフト、およ
びその技術の総称です。グラフィッ
クスやオーディオなどのデジタルメ
ディアを組み合せてコンテンツを作
成することができます。独自のビデ
オフォーマット (FLV) とプロトコル
(RTMP) を利用することにより、動画
コンテンツをストリーミング配信で
きます。Flash による動画配信はクロ
スプラットフォーム対応、プレイヤ
のインストール率の高さ、Web ペー
ジのデザインとの親和性の高さなど
から、急速にシェアを拡大していま
す。今後、Adobe Media Player のリ
リースや著作権保護技術である DRM
への対応、H.264 コーデックの採用
といった機能拡張が予定されていま
す。
主に動画や音声などのマルチメディ
アデータを配信する方式の一種です。
一般的にストリーミング方式では受
信したデータをリアルタイムに再生
していくため、データの完全性は保
証されませんが、早送りや頭出しな
どのトリックプレイがスムーズに行
えるというメリットがあります。ダ
ウンロード方式でも動画配信は可能
ですが、コンテンツをクライアント
パソコンに保存しながら再生するた
め、コンテンツがクライアントパソ
コンのキャッシュに残ります。スト
リーミング方式では一般的にキャッ
シュが残らないため、著作権保護の
観点からはストリーミング配信が好
まれます。
Flash
8
12
P2P
映像配信を知る
ニコニコ動画
6
Windows Media
米マイクロソフト社が提供するマ
ルチメディアコンテンツ再生プレイ
ヤ、エンコーダおよびその周辺アプ
リケーションといった技術の総称で
す。プレイヤが Windows にプレイン
ストールされているため、汎用性が
高く、DRM にも対応していることか
ら、国内のコンテンツ配信では No.1
のシェアをもっています。マイクロ
ソフト社が発表した Flash 対抗技術
Silverlight でも Windows Media の技
術が組み込まれています。
4
YouTube
登録したメンバがアップロードした
動画を、誰でも再生・共有ができる、
オンライン動画配信サービスです。
2005 年 12 月正式リリース後、イ
ンターネット上で急速に人気を獲得
し、世界最大の動画共有・配信サイ
トになりました。2006 年 11 月には
米 Google 社に買収され話題になりま
した。動画フォーマットとして Flash
ビデオが採用されており、ダウンロ
ード配信しています。YouTube のサ
ービスが始まったことで、日本では
Flash での動画配信の認知度が一気に
高まり、ニコニコ動画に代表される
ような Flash ビデオを利用したサー
ビスが多数登場してきました。
ストリーミング
2
RTSP (Real Time Streaming Protocol)
IP ネットワークを利用して、効率よ
くマルチメディアを配信することを
目的とした、サーバ/クライアント
型のマルチメディア転送制御プロト
コルです。RFC2326 で定義されて
おり、TCP の 554 ポートを使用しま
す。RTSP 自体は制御プロトコルで
あるため、実際のデータ転送には、
RTP などのプロトコルが使用され
ます。Windows Media、RealMedia、
QuickTime など多くのストリーミン
グ配信プラットフォームで利用され
ています。これらのプラットフォー
ムでは、Firewall を通過できるように
http トンネリングするための拡張を
行っています。
12
オールデジタル化、オールIP化時代をさきがける
「情報通信法」
とは何か?
Topics
拓く映
切り
通信が
制度(放送法、電波法、電気通
信役務利用放送法など)を、
「伝
送インフラ/プラットフォー
ム/コンテンツ」という「三階
層からなる横割り・レイヤ方式」
に再整備する案が示されていま
す。
まず、伝送インフラとされた
レイヤでは、これまで「放送な
ら放送用、通信なら通信用」と
いった具合に、各々の専用設備
として用意されていたインフラ
機能を、汎用性を持ったものに
変えていくことが目指されてお
り、
新しい構想は、
同レイヤを「伝
送設備」と「伝送サービス」に
分けています。
そのうち伝送設備については、
電気通信設備の規制が緩和され、
免許制度の見直しも含めた、よ
り柔軟な電波の利用が提言され
ています。また、伝送サービス
については、現在、細かく分割
されている「電気通信事業法/
放送法/有線テレビジョン放送
法」といった伝送サービス規律
が一元化され、従来の枠組みを
超 え た 事 業 展 開 が 加 速 さ れ る、
としています。
次に、プラットフォームのレ
イヤですが、ここは多様なコン
テンツ流通を実現するための機
能を担っています。
中間取りまとめでは、プラッ
トフォームを「物理的な電気通
信設備と連携して多様な事業者
間や事業者とユーザの間を仲介
コンテンツ
プラットフォーム
伝送インフラ
伝送サービス
伝送設備
IIJ
14
イラスト/牧野伊三夫
15
ストを低く抑えることができる」
点です。今までのように、放送
や通信といった業種ごとに個別
のインフラを用意するのではな
く、簡便で信頼性の高い共通イ
ンフラを用意し、社会全体がそ
れを利用することで、インフラ
整備に要するコストを大幅に減
らせます。
二つ目は「サービスの改善や
新規参入が容易になる」点です。
従来、放送や出版事業に参入し
ようとしたら、コンテンツ制作
に加えて、視聴者や読者に届け
るための販路=インフラも合わ
せて確保しなければなりません
でした。しかし、デジタルネッ
トワークを共通インフラとして
使えるようになれば、事業者の
オールデジタル化、オールI
負担は軽くなり、コンテンツサ
P化時代の到来を受けて、この
ービスに専念できるようになり
ところ、テレビ放送を含む「映
ます。
像配信」の話題をしばしば耳に
します。それと同時に、電波に
通信と放送の融合を
替わる第二の通信手段として「デ
視野に入れた新法構想
ジタルネットワーク」が注目を
集め始めています。そこでまず こうした流れを受けて、総務
は、公共性を有した社会インフ
省の「通信・放送の総合的な法
ラという観点から、デジタルネ
体系に関する研究会」は、現状
ットワークの有効性について考
では二分化されている「通信/
えてみたいと思います。
放送」に関する法制度を、新た
そもそも汎用性が高く、開か
に「情報通信法」
(仮称)として
れたシステムであるデジタルネ
一本化する見直しを進めていま
ットワークを情報の流通手段と
す。そして同会が、今年の六月
して積極的に活用するメリット
十九日に発表した「中間取りま
は、大きく分けて二つあります。
とめ」では、通信と放送を「縦
一つ目は「インフラにかかるコ
割り」にしている今の九つの法
なっている、ホームページやウ
す が、 そ れ を 防 ぐ 安 全 策 ま で、 近い将来、インターネットは、
ェブサイトなど、不特定多数に
自動車メーカに提供しろと言う
電 気 コ ン セ ン ト と 同 じ く ら い、
提供される通信コンテンツを指
のは無理な相談です。いっぽう
簡単で安心して使える存在にな
します。そしてここに関しては、
通信事業者が「コンテンツの中
ることが求められています。も
関係者が遵守すべき「共通ルー
身に対する責任をどこまで負う
しそれが実現して、デジタルネ
ル」を策定するほか、違法また
のか」という議論は、この自動
ットワークが真の社会インフラ
は有害と思われる情報(例えば、
車の話と同様の問題を提示して
となった日には、通信や放送と
児童ポルノなど)に対して「ゾ
いるのです。
はまったく別の新しいメディア
ーニング規制」を導入するか否
が、インターネット上を行き来
未来の情報化社会と
かといった議論がなされていま
するようになるはずです。
す。
その意味で、今回のテーマで
新しいメディアの登場
以上が、情報通信法の骨子で、
ある「映像配信」は、高度情報
三つのレイヤの役割や機能は明 インターネットが、今以上に
化社会に向けての「過渡的な段
確に区分されていますが、新規
一般化していく過程においては、
階」であって、その先には、今
参入や競争促進といった視点か
「デジタルネットワークは、社会
は想像さえできない「新たな通
ら、
「レイヤを超えた統合・連携
的な責任を担えるのか、人の生
信形態」が現れ、人々の生活を
は原則自由」とされていること
活を快適にサポートできるのか」
大きく変えるサービスが、ネッ
も付け加えておきます。
といった課題が、重要になって
トワークを通して提供されるよ
このように、通信と放送の融
くるでしょう。
うになるのではないでしょうか。
合を後押しするかのような情報
通信法ですが、通信事業者から
レイヤを超えた統合・連携は原則自由
見ると必ずしも歓迎できる面ば
かりではないように思われます。
それは「この法律が規制強化に
ならないか」という危惧からで
す。
ここで問題なのは、通信と放
送の垣根がなくなり、結果的に
双方の役割が「曖昧になる」こ
とで、これまでは「通信の秘密」
のもと、通信事業者が関与して
こなかった「コンテンツの内容」
に対して、ある一定の規制の網
をかけなくてはならなくなるの
では……という点です。
例えば「車を犯罪に使っては
いけません」と言うのは簡単で
特別メディアサービス(現在の地上TV放送など)
一般メディアサービス(CS放送など)
公然通信(ホームページなど)
文字・音声・映像などの情報を共通方式で処理できる「デジタル技術」の進歩、
オープンな特質から世界的な広がりを見せつつある
「デジタルネットワーク」の発展——この 2 つの「技術革新」を抜きに
「通信と放送の融合」を語ることはできない。
し、利便性の高い安全・安心な
コンテンツ配信・商取引利用や
公的サービス提供の実現を目的
とした、サービスポータル機能
や、ネットワーク及びそれと連
携する端末上のソフトウェア機
能」と定義しています。そのい
っぽうで、プラットフォーム機
能が「情報の自由な流通」を阻
害する恐れもあることを踏まえ
て、
「サービス提供における不当
差別禁止」など、一定の規律が
必要ではないかといった見解も
示されています。
最後に、コンテンツのレイヤ
は、今では通念となってしまっ
た「放送=規制」
「通信=表現の
自由」という両極端の対比を改
める意味で、コンテンツの社会
的 機 能 や 影 響 力 を 鑑 み な が ら、
その取り扱いを再編成する方針
が示されています。具体的に言
いますと、コンテンツを「特別
メディアサービス」
「一般メディ
アサービス」
「公然通信」という
ようにカテゴライズするかたち
です。
まず「特別メディアサービス」
は、現在の地上テレビ放送を念
頭に置いており、ここでは基本
的に、これまで同様の放送規制
が維持されます。
「一般メディア
サービス」には、CS やCAT
V などが含まれますが、新法で
は、従来以上に緩やかな規制の
適用が予定されています。
「公然
通信」は、事実上「無規制」と
「情報通信法」
(仮称)の仕組み
IIJ.news 編集部 像配信
インターネットの三種の神器
れ 物 」 は G I P S (Global IP うになるでしょう。しかも水道
てもすみます)
。
社の開発した音声符号
水とミネラルウォータの喩えの このように通信と放送の融合
Solutions)
化方式を用いて、音声をデータ
ように、今までになかった付加
は、技術的には可能なのですが、
に変換しています。
「蛇口」はさ
価値を新たに付けることも可能
それ以外のハードルが高いとい
まざまなヘッドセットが世に出
です。全く同じサービスを作る
うのが現状のようです。もちろ
回っていて、S kyp e 専用を
必 要 は な い の で す。 そ れ よ り、
ん古い技術に則って組み上げら
う た っ た 物 も 多 数 あ り ま す し、
新しい付加価値に着目し、そこ
れた古い価値体系やそれを支え
ス マ ー ト フ ォ ン 上 で 動 か せ ば、
を 伸 ば し て い く よ う な 発 想 が、
る種々の法規制をいきなり壊す
そのまま電話器が「蛇口」にな
今後より重要になってくると言
のがいいとは思えませんし、新
ります。
「手順」は、P2P方式
えるでしょう。
しい価値を加えることで、古い
を用いたプロトコルを使ってい
価値を壊してしまうこともあり
ます。そして最後に、これら全
ます。しかし、徐々にでも、新
台頭しつつある
体を動かすソフトウェアを作れ
しい技術を前提とした価値体系
新しいサービスと価値体系
ば、インターネットという汎用
に乗り換えていかなければ、結
の デ ー タ ネ ッ ト ワ ー ク 上 でS k T V 放 送 を イ ン タ ー ネ ッ ト に
局はイノベーションに乗り遅れ
y p e を動かすことができるの
乗せるのは、細かい方式や既存
て業界全体の将来が危うくなる
です。
の品質にこだわり過ぎなければ、
ように思います。
ここで注意していただきたい
技術的には難しい話ではありま 既存のプレイヤの利権を守り
のは、道路上と同じように、イ
せん。ちなみに、
付加価値として、
続けるのか、もしくは、イノベ
ンターネット上でも、パケット
インターネットが加えることが
ーションに乗じて新たなプレイ
に含まれるデータがどんなもの
できるのは、ディジタル化した
ヤの参入を受け入れ、自由な競
であるかといった点にはいっさ
コンテンツをユーザ間で共有し、
争を促進し、そこから国際的な
い 関 知 し な い と い う こ と で す。
それらを皆でインタラクティブ
競争力を備えた技術革新や新規
だからこそ、映像だろうが音声
に加工できるようにしたり、他
ビジネスを生み出す土壌を作っ
だろうが、インターネットとい
のコンテンツとの融合を図った
て、業界の活性化を目指すのか、
う共通のネットワークで流すこ
りすることです。さらに、同じ
今後の舵取りがひじょうに重要
とができるのです。要は、その
ようなことを地域や国の境界に
で難しい局面に差しかかってい
ためのデータフォーマット、ユ
関係なく、グローバルな範囲の
ます。
ーザインタフェース、流通のた
ユーザ間で実施することも可能 これからもインターネットが
めのプロトコルがあればいいの
でしょう。映像的な面で言うと、
さまざまな価値を生み出しなが
で す。 こ れ ら の 条 件 が 整 え ば、
ディジタル化された放送コンテ
ら進化していくと信じている身
放送網という専用ネットワーク
ンツをインターネットで同時に
としては、ここまできてわざわ
で流されているTV 映像も、電
流して、TV 放送をPCで見て
ざ古い時代のタガを無理矢理は
話網(通信網)という専用のネ
みたいと思っている人も少なか
め直して、将来の可能性の芽を
ットワークで流されていた音声
らずいるはずです(そうなれば、
摘んでしまうようなことだけは
も、インターネットという汎用
全世帯のテレビ受像機をディジ
止めてほしいと切に願うばかり
ネットワーク上で融合できるよ
タル対応のものに買い替えなく
です。
IIJ
16
イラスト/牧野伊三夫
17
たネットワークですから、全て
データフォーマット、ユーザインタフェース、プロトコル
の家庭に絶えることなく水を供
給 す る と い う 目 的 に 関 し て は、
効率的で確実性も高いでしょう。
しかしそうであるがゆえに、水
道水以外を受け入れないのです。
IIJ 取締役 副社長
浅羽登志也
それに対して、汎用ネットワー
クである道路は、
(車に乗せて運
〝オープンである〟ことを最大の特質としたインターネットは、
ぶことが合法でありさえすれば)
今や、人々にとって欠かせない「インフラ」として機能している。
運ぶ物の種類や性質に関しては
そんなネットワーク社会を舞台に、
「通信と放送の融合」など、
ひじょうに自由度が高く、オー
未来の情報産業のあり方を模索する動きが進行している。
プンであると言えます。道路で
ここでは、情報流通システムの現状や新旧価値体系のバランスについて考えてみた。
は、車が何を積んで走っている
のかなんてことは問題にならな
いですし、牛乳やオレンジジュ
ー ス を 届 け る こ と も 可 能 で す。
あとは、車に載せるための「容
あれは半年ほど前だったでし
のミネラルウォータは、トラッ
れ物」と、エンドユーザがそれ
ょうか、我が家に突然ペットボ
クで運ばれてきますので、道路
を飲む時に用いる「蛇口」をう
トルのオバケのようなものが出
という物流のための汎用のネッ
まく作り、注文から家庭に届け
現しました。海外ではオフィス
トワークを介しています。する
られるまでの「手順」を決めさ
などによく設置されているので
と、専用ネットワークでも汎用
えすればいいのです。
ご存知の方も多いと思いますが、
ネットワークでも、実現する方
中にはミネラルウォータが入っ
式は異なりますが、
「家庭に水を
オープンネットワークを
ています。このミネラルウォー
配る」サービスを提供している
使いこなす三種の神器
タ入りペットボトルは定期的に
という点では、同じであると考
ト ラ ッ ク で 宅 配 さ れ ま す か ら、
えられないでしょうか。しかも さて、ここまでの話の「道路」
次にトラックが来るまでに水が
汎用ネットワークのサービスに
をインターネットに置き換える
なくなってしまわない数のボト
は、ミネラルウォータという付
と、どうなるでしょう? 「容れ
ルを頼んでおけば、この蛇口か
加価値がついています。
物」はインターネット上で運べ
らはいつでもミネラルウォータ ところで、二つの方式の差は、
るようにするための「器」です
が出てくるようになっています。
どこから生まれてくるのでしょ
から、MPEG4やMP3 等の
通常、水は水道管で各家庭に
う か。 専 用 ネ ッ ト ワ ー ク で は、
データフォーマットに、
「蛇口」
供給されます。つまり水という
流すことのできるコンテンツの
はユーザインタフェースに、そ
物質は、水道管という水専用の
性質や品質をネットワーク側が
し て「 手 順 」 は プ ロ ト コ ル に、
ネットワークを介して流通して
限定してしまいます。水道管は、
それぞれ相当します。
いるのです。いっぽう、我が家
水を流すことに特化して作られ 例 え ば S ky p e で は、
「容
あさば・としや
1962 年愛知県生まれ。92 年、IIJ の設立
とともに入社し、バックボーンの構築およ
び経路制御、国内外 ISP との相互接続な
どに従事。現在は、取締役技術担当副社長。
【連載】人と空気とインターネット
Human
Air
Internet
むかし、祖父と林檎の苗を植えたことがある。
Close up
「雨を飲み、土をつかんだ木は、
JIMBOCHO
やがて枝を伸ばし、葉を繁らせ、花を咲かせて、実を結ぶ。
写真/鬼海弘雄
緑のいのちが四季を通じて萌える場所、人は自ずからそこに集う」
植樹の極意を、祖父は、まるで小説の登場人物のように語った。
そのとき植えた林檎は、むつ、つがる、ふじ、王林の四本。
秋が来た。今年もそろそろ、祖父の樹を見に行こうと思う。
19
18
● Technical Now
アプリケーション系
サービス
コンポーネント
IIJ バックボーン上に存在する
各種アプリケーションサービ
スを提供
● IIJ DNS サービス
● IIJ URL フィルタリングサービス
● IIJ Web スタンダードサービス
● IIJ ダウンロードサイトサービス
● WEB プロキシ
個別構築
既存環境からの移行計画の策
定や、実際の移行作業など、
お客さま独自のご要件に従っ
たインテグレーション、シス
テム構築
● インテグレーション
● システムアウトソース
真の
ワンストップソリューション
を目指して
ネットワークセキュリティ対策ひとつとっても、守るべきポイントや手
法は複数ある。今後は、自社の情報システム基盤に必要な対策を適切に
選択し、高度なセキュリティレベルを維持していくことが重要となる。
ょう。
日々、増え続ける大量の迷惑
メールによる電子メールシステ
ムのリソース圧迫、それにとも
なう運用負荷の増大、迷惑メー
ルの振り分けや削除に費やされ
る時間と労力、コンプライアン
ス対策に欠かせない電子メール
の長期保管など、数年前には自
社でできていたメールサーバの
安定運用に限界を感じている情
報システム担当者も少なくあり
ません。
「電子メールシステムの
危機管理をアウトソースする」
という発想の「IIJ セキュア
侵入防止システムや
検疫ネットワークの導入による
アノマリインシデントの防御
実際に複数のIIJ サービス
コンポーネントをご利用いただ
いているお客さまから、
「ワンス
トップをうたっているところは
たくさんあるけど、IIJ がい
ちばんきちんとしている」との
評価をいただいています。II
J では、複数のサービス間の連
携を重視したサポート体制を組
んでいますが、一歩進んだワン
ストップサポートの提供を目指
し、UMPの提供を始めていま
す。
(上図参照)
複雑化するネットワークを運
用する中で、いくつかのサービ
スの相関性を保ちつつ、包括的
に分析するのは、お客さまにと
ってひじょうに困難です。しか
し、IIJ のネットワークサー
ビスコンポーネントとUMPの
枠組みを採用することで、イン
タ ー ネ ッ ト、 W A N、 L A N、
メール、セキュリティ対策など
から、最適なネットワーク構成
を選択し、サービスカットでは
な い 統 合 的 なP D C A サ イ ク ル
のもと、真のワンストップサポ
ートを実現できます。
IIJ が提供する多様なサー
ビスは、経験豊富なエンジニア
が、お客さまに代わってネット
ワークを運用する〝 ネットワー
ク運用のアウトソーシングサー
ビス 〟
です。これからもIIJは、
運用経験とノウハウを体系化し、
お客さまのネットワーク運用を
支えてまいります。
20
21
お客様サイト
r
社内ネットワーク
DMZセグメント
IIJバックボーン
データセンター、セキュリティ
系、W AN 系、メール等のアプ
複雑化する
リケーション系など幅広いサー
企業内セキュリティ対策や
ビスを揃え、企業ネットワーク
電子メール運用
運用を統合的にアウトソースで
「こんなにいろいろなサービス
きるソリューションをご提供し
をIIJ は提供していたのです
て
おります。こうして、豊富な
ね」
。二〇〇七年七月から提供を
ネットワークサービスラインア
開始したUMPのご提案のため
ップを生かした、真の「ワンス
に訪問したお客さまからいただ
トップソリューション」の実現
いたご感想です。
に取り組んでいるのです。
IIJ は〝 インターネット接 では、企業のコミュニケーシ
続プロバイダの先駆 け 〟という
ョンツールとして欠くことので
イメージが強いのですが、実際
きない電子メールシステムを例
は、インターネット接続に加え、
に、具体的な事例を見てみまし
● IIJ マネージドファイアウォール
サービス
● IIJ DDoS 対策サービス
● IIJ マネージド IPS サービス
● IIJ セキュア MX サービス
侵入検知/検疫
ファイアウォールによる
セキュリティポリシーに
準拠したアクセス制御
IIJ バックボーン側で
迷惑メールの流入の防御
DDoS 対策
IIJ バックボーン側で
DDoS攻撃の検知・防御
Route
ファイアウォール
メール
セキュリティ対策
前述のメールシステムやセキ
ュリティ対策の例は、社内の情
報システム基盤のほんの一部に
過ぎません。実際には、インタ
ーネット接続からW AN、LA
N などの社内インフラの運用や
セキュリティ対策など、高度化・
複雑化する情報システム基盤全
ての維持を効率化することが求
められているのです。
IIJ
インターネット
掲出のサービスコンポーネントは、60 種類ほどある IIJ サービス
の一例。豊富なサービスコンポーネントから、最適なサービスを
組み合わせ、それらを UMP の枠組みで統合的に運用することで、
適切な PDCA(Plan Do Check Analyze)サイクルを実現し、ネ
ットワーク運用業務の効率化と運用コストの軽減が可能となる。
MXサービス」をご採用いただい
あります。社内のシステム管理
ている多くのお客さまのご意見
者が、二四時間三六五日体制で
からも、企業における電子メール
高度なセキュリティ対策を維持
システムの運用が難しくなって
することに困難を感じ、マネー
きていることが実感されます。
ジドサービスを検討するケース
セキュリティ対策についても、
も増えています。
情報システムやネットワークイ 七月に開催した 「IIJ セキ
ンフラが高度化・多様化してい
ュリティセミナー」にご来場い
くなか、攻撃者の目的や手法は
ただいたお客さまからも、II
変化し続けており、継続的なセ
J が提唱する〝 マルチポイント
キュリティ対策を講じる必要が
セキュリティ×マルチレイヤセ
キュリティ 〟に対して「クライ
アント周りから、W AN、イン
ターネット環境に至るまでトー
タルでコーディネートできるの
はすごい!」という声をいただ
きました。
IIJ では、ネットワーク上
のさまざまな場所で、段階的か
つ包括的な対策を実現するセキ
ュリティサービスを揃えていま
す。(右ページ図参照 )
セキュリティ系
サービス
コンポーネント
お客さまシステムおよびネッ
トワークへ高いセキュリティ
の確保、DDoS に代表される
サービス妨害などへの対応、
ウイルス対策など高いセキュ
リティを実現するための環境
を提供
ICT(Information and Communication Technology) という言葉に象徴されるように、
事業の発展を支える情報システム基盤は、日々多様化・高度化し、重要性が増しています。
そのいっぽうで、運用負荷の高まり、コンプライアンス対応、セキュリティ強化など、
さまざまな対策にかかる「運用コスト増」が大きな課題となっています。
そこで、IIJ では「IIJ 統合マネージメントプラットフォーム(以下、UMP = Unified
Management Platform)
」を提供することで、お客さまの課題を解決しながら、
柔軟性・信頼性・可用性を兼ね備えたネットワークの構築から維持・管理を実現し、
スムーズなネットワーク環境の拡張を支援しています。
● IIJ マネージド VPN PRO サービス
● IIJ セキュアリモートアクセス
● IIJ Internet-LAN サービス
● L2/L3 スイッチ・ルータ
● ルータ
● ロードバランサ
青山直継
ネットワーク系
サービス
コンポーネント
お客さまの支社・支店・店舗
などのネットワークおよび接
続性の確保やお客さまシステ
ムの可用性の確保、各種コン
ポーネント間のコネクティビ
ティの確保を提供
IIJ プロダクトマーケティング室
● IIJ インターネット接続サービス
● IIJ 広域ネットワークサービス
● IIJ データセンター接続サービス
豊富なサービスラインアップが実現する、
ネットワーク運用のアウトソース
接続系サービス
コンポーネント
インターネットへの接続性の
確保やデータセンター設備、
お客さまとのデータセンター
の接続性の確保を提供
ネットワーク運用は
プロに任せる時代へ
サービス例
コンポーネント
● Technical Now
サーバリソースは、
必要なときに必要なだけ
アイアイジェイテクノロジーから
「IBPS サーバマネジメントサービス」登場
IIJ - Tech 技術統轄本部 IBPS 本部長
立久井正和
アイアイジェイテクノロジーは、必要に応じてサーバリソースを提供する仕組みを開発し、
オンデマンドにシステムリソースを提供する「サーバマネジメントサービス」を開始しました。
これによってお客さまは、業務のピーク時に合わせたリソースを
常に用意しておく必要がなくなり、業務要件やシステム利用率の変動に応じて、
迅速かつ柔軟にリソースをご利用いただけます。
ようなシェアサービスでは、他
います)
。
ユーザのシステム利用による影 また、ハードウェアとソフト
昨今のIT事情と課題
響を受けてしまうため、安定し
ウェア、業務アプリケーション
ITシステム、ITビジネス
などは、システムライフサイク
たシステムを提供することは不
を維持するためには、二つの場
可能です。
ルの期間が違うため、
( End
面における課題が想定されます。 二つ目は、以下に挙げた「I
) 問 題 に 直 面 し、 ハ
Of Support
Tインフラの課題」です。
ードウェアやそのリソースのリ
まず一つ目は、
「ビジネス要件の
課題」です。ビジネス要件は日々 まず、システム設計を行う際、
プレイスを余儀なくされ、その
変化しているため、ITシステ
サーバやディスク容量、ネット
ための工数を確保したり、リプ
ムをマネージメントする管理者
ワークの帯域といったシステム
レイスのためのテストを行うな
は、迅速かつ柔軟に状況の変化
リソースは、業務のピークに合
どの追加作業が必要となります。
に対応していく必要があります。
わせて設定されます。そのため、
通常、ハードウェアやソフトウ
ェアの多くはレンタル契約を行
特に、新しいビジネスを開始す
ピーク時以外の平常時には、シ
る 際 に は、 不 確 定 要 素 が 多 く、
ステムリソースの稼働率が低下
っているため、契約更新に関す
システム設備のコストリストを
するという「非効率な」状態が
る管理作業を行わなければなら
ず、システムが大きくなればな
コミットメントすることはでき
現れます(ちなみに、弊社でお
ません。そんな時に、ホスティ
預かりしているお客さま固有の
るほど、システム構成、設定情
ングサービスでは、お客さま個
システムに対する運用管理の実
報などの運用管理も煩雑になる
別の要件を実現するのはむずか
のです。
態を見ると、稼働率は平常時で
しいですし、サーバを共用する
三〇〜五〇パーセントとなって これ以外にも、セキュリティ
IIJ
22
23
E
O
S
の脆弱性が露呈すると、何十台
響を受けずに、固有のニーズに
構築から運用までを提供してき
というサーバ一台一台に、パッ
合わせて安定したシステムを提
ました。今やIT は、企業にと
チを適用する作業が必要となっ
供することができます。さらに
ってはなくてはならない存在で
たり、緊急時や予想外のトラフ
は、緊急にサーバ増設が必要に
あり、ITで実装された企業固
ィック増加の場合に、すぐにリ
なった場合でも、プロビジョニ
有の理念やビジネスロジックを、
ソースが確保できないといった
ングツールによって管理してい
二四時間三六五日安全に安定し
業務ニーズにかかわる課題に直
るお客さまのシステム構成情報
てサービス提供することが求め
面することも多々ありました。
をコピーし、サーバを追加でき
られています。
るため、人の手を介して行うよ IBPS は、企業のIT イン
りも迅速かつ高品質なシステム
フラを月額サービスとして提供
必要なときに
リソースの変更作業が可能とな
し、オンデマンドでコンポーネ
必要なだけ提供する
り、作業期間も半分以下に短縮
ン ト 単 位 に 準 備 し て い る た め、
以上のような課題を抱えたま
することができるようになりま
ビジネスチャンスを逃さないシ
までは、情報システム部門担当
した。
ステム構築を実現できるように
者の悩みや負荷は軽減されない このように、
「サーバマネジメ
努めています。すでにIBPS
ばかりか、結果的に余分なコス
ントサービス」は、必要なとき
サービスとして提供しているネ
トがかかってしまいます。
に必要なだけサーバリソースを
ットワークマネジメントサービ
このような非効率なリソース
活用することができるため、キ
ス、データマネジメントサービ
マネージメントを解決するため
ャンペーンやイベントなどでサ
スや運用管理サービスに、今回
に、アイアイジェイテクノロジ
イトの稼働率が一時的に増える
ご紹介した「サーバマネジメン
ーは、
「必要なときに、必要な分
業務ニーズをお持ちのお客さま
トサービス」を加え、それぞれ
だけサーバリソースを提供する」
や、初期投資を抑えてシステム
を組み合わせて、最適なITイ
仕組みを開発し、オンデマンド
のリニューアルを検討している
ンフラをインテグレーションす
型でシステムリソースを提供す
お客さまに対して、最適なサー
るだけでなく、各企業固有のビ
るサービスを始めました。
ビスを提供できるのです。
ジネスロジックの実装をインテ
これによって、お客さまはハ
グレーションすることによって、
ビジネスを成功に導く
ードウェアを調達する必要がな
お客さまシステムの構築から運
くなり、事業スタート時や一時
用までをフルサポートいたしま
IT投資を支援する
的なシステム負荷の増減に対し
す。
て、迅速かつ柔軟に対応できる
IBPS( Integration Business オンデマンド型ITサービス
ようになります。また、プロビ
)は、二〇〇〇
であるIBPSが、効果的なI
Processing Service
ジョニングツールを利用し、お
年 三 月 に、 B P S( Internet T投資を支援するための解決策
客さまシステムの構成情報を管
)と
としてお客さまのビジネスを成
Business Processing Service
理し、
「平常時に必要なリソース」
し て サ ー ビ ス を 開 始 し、 以 来、
功に導くことを信じております。
と「ピーク時に必要なリソース」
IBPSサービスを通して、多
わたしたちは、常にお客さまの
を区別して提供することで、他
くのお客さまの企業システム、B
であり続
"IT Professional Partner"
のお客さまのリソース変動の影
to C、B to Bシステムの
けたいと願っております。
i
● Technical Now
最先端研究を加速させる
次世代学術情報ネットワーク
最先端技術を採用した
SINET3
国立情報学研究所では、S
——
INET3 の運用を開始してい
ますが、その意義からお聞かせ
ください。
山田 国立情報学研究所は、我
が国の学術研究・教育活動を促
進し、国際協力をいっそう強化
するため、最先端学術情報基盤
(CSI)の構築を推進していま
す。CSI は、コンピュータな
どの設備、基盤的ソフトウェア、
コンテンツおよびデータベース、
人材、研究グループを超高速ネ
ットワーク上で共有するための
基盤となります。
このCSIの中核を担うのが、
学術情報ネットワーク(SIN
ET3)です。学術ネットワー
クは、日本全国の大学・研究機
関の教育・研究および学術情報
の流通促進を図るための情報ネ
ットワークで、これまで、情報
ライフラインとして七百を超え
る全国の大学・研究機関を接続
する「SINET 」と、先端学
術研究機関を超高速ネットワー
クで接続する「スーパーSIN
ET 」の二つの情報ネットワー
SINET3 には、どんな
——
特徴があるのですか。
漆谷 CSIに要求されるさま
安全で利便性の高い
サービス
ク基盤を運用してきました。そ
して、今後のイノベーション基
盤に求められる高機能化と多機
能化の要請に応えるため、これ
ら二つの情報ネットワーク基盤
をシームレスに統合し、最先端
情 報 通 信 技 術 を 採 用 し たS I N
ET3 を構築し、二〇〇七年六
月から本格運用を始めています。
国立情報学研究所
4研究系(情報学プリンシプル、アーキテクチ
ャ科学、コンテンツ科学、情報社会相関)
、5
研究施設(学術ネットワーク研究開発センター、
リサーチグリッド研究開発センターなど)
、学
術情報ネットワーク運営・連携本部、学術コン
テンツ運営・連携本部および連携研究部門を設
置し、未来価値を創成する情報学研究、社会・
公共貢献、融合の情報処理、産学官民の連携、
国際的な研究・事業活動を指向した情報学研究
を推進している。http://www.nii.ac.jp/
多数のコンピュータを結ん
——
で膨大なデータを処理するグリ
ッドなど、先端学術研究分野で
は、超高速ネットワークのニー
ざまな特徴を備えています。第
全な通信が行えます。
ズが高まっています。
一の特徴が、安心・安全のネッ そして第二の特徴は、最先端
漆谷 その通りです。グリッド
国際ネットワークに貢献
トワークです。ネットワークを
技 術 を 採 用 し て い る こ と で す。
や遺伝子情報解析、宇宙・天文学、
光I P ハ イ ブ リ ッ ド 技 術 や 最 大
高エネルギー科学といった先端
学術情報ネットワークは国
東日本・ 中央・ 西日本の三つの
——
四〇ギガビット/秒の基幹回線
学術研究分野では、超高速の専
際間の接続にどう取り組んでい
ループで構成し、障害発生時の
の採用など、さまざまな最新技
用ネットワーク環境の整備が欠
るのですか。
高速迂回機能により、災害や障
術を組み合わせることで、高度
かせず、より進化したネットワ
山 田 国 立 情 報 学 研 究 所 で は、
害に強い、信頼性の高いネット
なネットワークサービスを実用
ークが求められています。
国際的な先端研究プロジェクト
ワークを実現しています。また、
化しています。例えば、指定さ SINET3 では、必要なと
に必要な研究情報の流通を円滑
ス ー パ ーS I N E T で 実 現 し て
れた拠点間でデータをいっせい
きに必要な帯域を共用回線から
に進められるよう、SINET
いたVPN(仮想プライベート
に配信するブロードキャストも
専用線として割り当てて提供
を米国や欧州の学術情報ネット
網)サービスが全拠点で利用で
その一つで、地震発生時に観測
し、 使 い 終 わ れ ば 共 用 回 線 に
ワークに接続するための北米回
きるようになり、共用ネットワ
データを複数の地震研究機関に
戻す「帯域オンデマンドサービ
線 を 提 供 し て き ま し た。 ま た、
ークから仮想的に分離された安
送ることで、各地で同時に解析
ス」を世界に先駆けて実用化し、
欧州の提唱により、欧州とアジ
が行えるようになります。
二〇〇八年に提供する予定です。
ア諸国の学術情報ネットワーク
第三の特徴は、利便性の高い
例えば、天文台では、遠く離れ
を 相 互 接 続 す るT E I N 2 ネ ッ
サービスの提供です。従来のS
た複数の電波望遠鏡で観測され
トワークにおいても、そのバッ
INETでは、全てのデータが
るデータを同期させて解析する
ク ボ ー ン 部 分 をS I N E T ア ジ
混在してやり取りされていたた
必要があります。このような時
ア回線と位置付けて、国立情報
め、回線が混雑してくるとデー
も、帯域オンデマンドサービス
学 研 究 所 が 提 供 し て き ま し た。
タの到着が遅れたり、映像が乱
を利用することで、天体の観測
もちろん、従来のSINETか
れ た り す る 恐 れ が あ り ま し た。
期間中に限って、使用する電波
らSINET3 に切り替わって
SINET3 では、通信内容に
望遠鏡を指定して、必要な帯域
も、これらの国際接続は維持さ
応じて優先度を決めて転送を行
分の高速専用線を設定するとい
れます。
う「マルチQo Sサービス」を
った、観測環境の高度化が可能 SINET3 の機能は、国際
提供します。これにより、テレ
になります。
共同研究を促進するものとして、
ビ会議や遠隔教育などが、ネッ こうした高機能なサービスの
APAN( Asia-Pacific Advanced
トワークの混雑に左右されるこ
提供とともに、経済性にも配慮
)というアジア太平洋地
Network
となく行えるようになります。
しなければなりません。SIN
域の学術ネットワークコミュニ
ET3 では全拠点にレイヤ1ス
ティや海外の研究・教育用ネット
イッチを配置し、レイヤ1 スイ
ワーク関係団体からも大いに注
オンデマンドで
ッ チ とI P ル ー タ を 適 切 に 組 み
目されています。今後とも、SI
帯域を割り当てる
合 わ せ た 光I P ハ イ ブ リ ッ ド 技
NET3 の機能拡張を図り、大
術を採用。高価なIPルータの
学・研究機関は先端分野の研究
台数を少なくすることで、費用
などで積極的に活用していただ
対効果を高め、高速・大容量化
き、すばらしい研究成果が生まれ
への対応を図っています。
ることを期待しています。
国立情報学研究所
アーキテクチャ科学研究系・教授
漆谷 重雄氏
国立情報学研究所
学術ネットワーク研究開発センター長
アーキテクチャ科学研究系・教授
山田 茂樹氏
IIJ
24
25
国立情報学研究所は、次世代学術情報ネットワーク「SINET 3」の
本格運用を 2007 年 6 月から開始した。
IIJ は、この SINET 3 のバックボーンを支える IP ルータの
導入・設計・構築・検証に参画している。
最先端学術情報基盤の中核を担うネットワークとして、
先進的な機能を実用化した SINET 3 は、
これまで実現できなかったネットワーク機能を新たに提供することにより、
多様なニーズに対応できると期待されている。
Information
ふぉん・のいまん
鈴木幸一
「まったく、歯が立ちませんでした」
「いくらなんでも、わかっていない
ことを日本語にしてもなあ」
呆れられながらも、茶封筒を手渡
され、黙って些かのお金をもらった
ことを忘れない。
今、二十年ぶりにハンガリーを訪
れている。ハンガリーは、人口比で
は、ノーベル賞の受賞者がもっとも
ルギーの大半をロシアに依存してい
る。経済規模は小さくとも、ハンガ
リーは、日々、国際政治の渦中にあ
るのだ。それにしても、EUがここ
まで実態となり始めているというの
は、当初、夢物語としか思えなかっ
ただけに、改めて、その息の長い営
為に驚かされる。
ソ連の管理下にあった二十年前の
ブダペストは、ブダの王宮の威容は
別として、軽自動車がよたよた走り、
多い国である。ハンガリーの千年の
歴史は、モンゴルの蹂躙、トルコの
一九五六年のハンガリー動乱の記憶
を思い起こさせるような暗い街だっ
た。今は、高速道路が整備され、疾
走する車と空気の明るさが、すぐに
感じられる都市になっている。海外
に出るたびに、経済だけが大国とな
った日本を、つくづく奇異な国だと
思い知らされるのは、なぜだろうか。
明日は、ハンガリーのIT関係者
との懇談である。ノイマン以来のコ
ンプレックスは、どうしても取れそ
うにない。恥ずかしながら、IT先
支配、ハプスブルク家の支配、ナチ、
ソ連の管理下と、苦渋に満ちている
としか言いようのない国である。し
かし、大きく開けた平原は、降水量
の 割 に 緑 が 多 く、 樹 木 に 囲 ま れ て
家々が点在している光景は、実に豊
かなものだ。蛇行するドナウに沿っ
て車を走らせると、様々な会派の教
会が目に付く。そんな初秋の爽やか
株式会社インターネットイニシアティブ 代表取締役社長
アルバイトで飲み代を稼ぐ事に
汲々としていた時代、私淑していた
科学評論家の方に、
「フォン・ノイ
マンの下訳をやってみない」と言わ
れて、下訳というある意味、責任の
ない仕事とあって、非常識にも挑戦
をしたことがある。
己の能力について、少しでも自覚
があれば、それがいかに無謀なこと
かは瞬時に悟るのだが、当時は、充分
に自分の能力の限界を知りながらも、
ついつい収入に眼がくらんだという
か、
どの道、
理解できないのは承知で、
できる範囲で日本語にして、酒代に
ありつこうという、さもしいとしか
言い様のない気持から、ついつい無
駄な試みをしてしまったのだ。
渡された書物は、確かに英語で書
かれていたのだが、訳しはじめると、
これが全く進まない。それでも、酒
な風とドナウの水の輝きに旅人の目
は奪われて、歴史の苦渋もどこかに
消え去ってしまう。
進国の話をしないといけない。全く、
恥ずかしい限りである。
イラスト/小林マキ
代に眼が眩んで、ともかく原稿を持
っていった。
「鈴木君、なにが書いてあった」
農業国ハンガリーは、EUに加盟
し、NATOと協力しながら、エネ
27
さっと、眼を通して、けらけら
笑う。
IIJ
I I J ビジネスフォーラム 開催のご案内
I I J Technical Days 2007 開催のご案内
このたび IIJ では、設立 15 周年の記念イベントとして「IIJ ビ
IIJ グループでは、11 月 15 日、16 日の 2 日間、ネットワーク
ジネスフォーラム」を開催する運びとなりました。
技術者の方々を対象に「IIJ Technical Days 2007」を開催いた
100 年に一度の技術革新と言われるインターネットは、今や社
します。
会基盤を支えるインフラとなり、さまざまなビジネスの仕組み
このところ注目を集めている IPv6 の現状と課題、IIJ が開発中
が IP をベースに改変されつつあります。
の最新テクノロジー、セキュリティ情報など、幅広いセッショ
本フォーラムでは、かつて経験したことのないスピードで発展
ンを予定しています。
し続けるインターネットの未来を展望するとともに、IIJ の 15
皆さまのご参加を心よりお待ちいたしております。
年の軌跡と今後の取り組みについてご紹介いたします。
お忙しい時期とは存じますが、万障お繰り合わせの上、ご参加
■開催概要
くださいますようお願い申し上げます。
日時:2007 年 11月15日(木)
、16日(金)
13 時 30 分〜 17 時 30 分(開場 13 時)
■開催概要
会場:IIJ グループ本社(神保町三井ビルディング)
日時:2007年11月2日(金)
17F 大会議室
13 時 〜 16 時 25分(開場12 時 30 分)
参加費:無料(完全予約制)
会場:東京国際フォーラム B 棟 7 階 ホール B7
定員:120 名(定員超過の場合は抽選とさせていただきます)
参加費:無料(完全予約制)
申込締切:10 月 31日(水)
定員:600 名(定員超過の場合は抽選とさせていただきます)
詳細・お申し込みはこちら
申込締切:10月 24日(水)
>> http://www.iij.ad.jp/techdays/
詳細・お申し込みはこちら
>>http://www.iij.ad.jp/forum/
SLA
(サービス品質保証制度)遅延時間の実績
■遅延時間 * の統計(2006 年 11月〜 2007 年 8月)
35ms
IIJ では、一部のサービスにおきまして、
「SLA」( = Service Level
Agreement、 品質保証制度 ) を導入しています。
30ms
IIJ の SLA は、
「可用性」
「遅延時間」
「障害通知」の3点からなる
評価項目を設け、各評価項目について保証値を提示し、インター
ネット接続サービスの品質を、客観的指標によって保証していま
す。
SLA の詳細 URL:http://www.iij.ad.jp/SLA/
Mean Value
Short Essay
SLA Latency Value
保証値(30ms)
25ms
20ms
15ms
11.47ms 11.46ms 11.53ms 11.35ms 11.64ms 11.93ms 12.16ms 12.12ms 12.02ms 11.73ms
10ms
2006/11 2006/12 2007/01 2007/02 2007/03 2007/04 2007/05 2007/06 2007/07 2007/08
*IIJ 国内バックボーン全体の往復遅延時間の月あたりの平均が
3 0 m s 以下であることを保証します。
SLA の詳細
URL:http://www.iij.ad.jp/SLA/
roup
G
company 情報コンプライアンスにおけるインフラビジネスの重要性
notes
ネットチャート株式会社 代表取締役社長 楠本和弘
ネットチャート株式会社(NCJ)は 2006 年 10 月
より IIJ グループに参画しました。
ネットワーク導入時の配線工事、機器の導入・設
定、アプリケーションのインストール・運用サポ
ートなど、LAN 関連を中心としたネットワーク構
築事業を行い、現在、約 600 社のお客さまの運用
及びサポートを支援しております。
企業内コンプライアンスや SOX 法が注目されて
いる昨今、ISO 関連においては物理的な配線系統
図やネットワーク機器・PC・Server 等の資産管理
が重要視されております。このような状況の中、
NCJ ではいち早くお客さまの情報を一元化し、運
用サポートに役立てております。また、情報系機
器の廃棄におけるマニフェスト作成など、一貫し
たサービスを本年 10 月より開始する予定です。
グループの「縁の下の力持ち」として、今後とも、
お客さまのお役に立てるよう、支援体制を構築し
ていく所存です。
26
株式会社インターネットイニシアティブ
本社
東京都千代田区神田神保町 1-105 神保町三井ビルディング 〒101-0051
TEL:03-5205-4466
関西支社
大阪府大阪市中央区北浜 4-7-28 住友ビルディング第ニ号館 5F 〒541-0041
TEL:06-4707-5400
名古屋支社 愛知県名古屋市中村区名駅南 1-24-30 名古屋三井ビルディング本館 3F 〒450-0003
TEL:052-589-5011
九州支社
福岡県福岡市中央区天神 1-1-1 アクロス福岡西 10F 〒810-0001
TEL:092-725-6533
札幌支店
北海道札幌市中央区北三条西 3-1-25 北三条ビルディング 7F 〒060-0003
TEL:011-218-3311
東北支店
宮城県仙台市青葉区花京院 1-1-20 花京院スクエアビル 15F 〒980-0013
TEL:022-216-5650
北陸支店
富山県富山市牛島新町 5-5 タワー 111 10F 〒930-0856
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中四国支店 広島県広島市南区稲荷町 2-16 広島稲荷町第一生命ビル 11F 〒732-0827
TEL:082-506-0700
横浜営業所 神奈川県横浜市港北区新横浜 2-15-10 YS 新横浜ビル 8F 〒222-0033
TEL:045-470-3461
豊田営業所 愛知県豊田市西町 4-25-13 フジカケ鐵鋼ビル 5F 〒471-0025
TEL:0565-36-4985
沖縄営業所 沖縄県那覇市久茂地 1-7-1 琉球リース総合ビル 8F 〒900-0015
TEL:098-941-0033
IIJグループ/連結子会社
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東京都千代田区神田神保町 1-105 神保町三井ビルディング 〒101-0051
TEL:03-5205-6700
株式会社アイアイジェイフィナンシャルシステムズ(IIJ-FS)
東京都中央区日本橋堀留町 2-2-1 住友不動産人形町ビル 〒103-0012 TEL:03-5623-8400
株式会社ネットケア(Net Care)
東京都新宿区西五軒町 13-1 住友不動産飯田橋ビル3号館 〒162-0812
TEL:03-5205-4000
ネットチャート株式会社(NCJ)
神奈川県横浜市港北区新横浜 2-15-10 YS 新横浜ビル 8F 〒222-0033
TEL:045-476-1411
株式会社ハイホー(hi-ho)
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TEL:0120-858140
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東京都千代田区神田神保町 1-105 神保町三井ビルディング 〒101-0051
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(2007年 10 月作成)
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