...

資料3-1-1 - 安全保障貿易情報センター

by user

on
Category: Documents
131

views

Report

Comments

Transcript

資料3-1-1 - 安全保障貿易情報センター
資料3-1-1
「CISTEC2008年
欧州政府・産業界との対話」
報告書
国際関係専門委員会・国際交流分科会
1
目次
Ⅰ.
はじめに
Ⅱ.
総括報告
1. EU 統一規則の全面改訂
2. EU 統一規則における規制品目リストの見直し・改訂
3. EU による国際アウトリーチ活動
4. 各国輸出管理体制と法制度の動き(英国、ドイツ、イタリア)
5. 政府当局による産業界に対するアウトリーチ活動
6. キャッチオール規制の運用状況と今後の動き
7. ITT(Intangible Transfer of Technology:無形媒体を通じた技術の移転管理)
8. 特定国(イラン、中国、ロシア)に対する規制状況
9. 武器に対する輸出規制動向
10. 米国輸出管理規則の域外適用に対する産業界の対応
11. ワッセナー・アレンジメント事務局訪問
12. より良い輸出管理のための日欧産業界共同提言
Ⅲ.
訪問先別議事録
1. ワッセナー・アレンジメント事務局(Wassenaar Arrangement)
2. イタリア経済開発省(Ministry of Economic Development of Italy)
3. イタリア産業連盟(CONFINDUSTRIA)
4. EU 委員会
5. 欧州経営者連盟(BUSINESSEUROPE)
6. ドイツ連邦経済技術省(BMWi、BAFA)
7. 英国宇宙防衛輸出産業団体(EGAD:Export Group for Aerospace & Defence)
8. 英国ビジネス・企業・規制改革省
(BERR:Department for Business Enterprise and Regulatory Reform)
添付資料:
別紙1
別紙2
別紙3
別紙4
別紙5
別紙6
別紙7
別紙8
別紙9
別紙10
別紙11
別紙12
Activities of CISTEC
Export Control in Japan
Current Topics in Export Control in Japan
Practice of Export Control in Japanese Industry
Proposal on EU-JAPAN Industries Cooperation for Better Export Control
Overview of Japan’s Export Control
WA 紹介パンフレット
Basic Documents (February 2008)
WA Outreach Presentation to CISTEC
Questions and Answers for Hisashi Riko
Dual Use Goods and Technology Export Control Regulation in Italy
The state of discussions of the 2006 European Commission’s proposals to
reform the EU regime of export control of dual-use items
別紙13 Trade Controls
別紙14 Export Control Organization Meeting with CISTEC 28 November 2008
2
I. はじめに
国際交流分科会の主要活動テーマである「欧州政府・産業団体との対話」を本年度も無事実施
することができた。参加各委員の精力的な活動の成果としてここに報告書を提出できることは、
無上の慶びである。
毎年この CISTEC ミッションの認知度が向上していることは間違いがないが、今回特に印象
に残ったのは、BUSINESSEUROPE(欧州経営者連盟)による次の一言である:「EU では輸
出管理制度を決めるのは EU 委員会だが、それを執行するのは各国政府である。それ故官民の
連携を取るのが非常に難しい場合があり、CISTEC のような組織がある日本が大変うらやまし
い。また日本のみならず、EU 委員会をはじめ、CISTEC は EU 各国政府や米国政府とも定期
的に面談を行っている。我々もこのミッションに参加したいぐらいだ。」
認知度が上がることにより、政府・各団体から歓迎を受け、それにより交流が一層深まるとい
う好循環を強く感じた。これも今ほど歓迎を受けなかった第 1 回の訪問時から苦労を重ねてき
た諸委員の努力の結晶であることは論を待たない。
今回、国際交流分科会ミッションは英国、ドイツ、ベルギー、オーストリアに加え、初めてイ
タリアを訪問した。輸出管理法令の体系として、EU 統一規則は当然大きな一括りであるが、管
理レベル・運用レベルを見たときに、EU 内でも加盟国間でかなりのばらつきがあることを実感
できたことは良い経験であった。EU 統一規則(1334/2000)の抜本見直し案(recasting)が
2006 年末に出された後、議論百出し延々と討議中の様子であるが、我々が訪欧した時点でほぼ
まとまりつつあり、その方向性について貴重な情報を入手することができた。
より密接な相互のコンサルテーション及び一層の情報共有化を実現することにより、EU 全体
として管理の効率化を図るとしているものの、規則そのものについて一言で言えば、相当意欲的
な見直し原案に対し、やや下方修正というところである。EU 内のばらつきを見ると、さもあり
なんというところか。特定の規制項目に関して意見の集約ができない場合には、各国の裁量で採
用が決定できる“national options”を設けることで切り抜けようとしている。
現在日本では技術移転関連の規則改正が熱く議論されているが、ボーダー規制を補完するもの
として大いに参考となる「技術支援の提供」( Provision of technical assistance )が見直し案の
如く EU 統一規則には盛り込まれず、現状通り JOINT-ACTION に留まる見通しとのことであ
る(総括報告第 1-6 項参照)。日本の企業が国際的に見て過度の負担を負わない配慮を改めて経
済産業省にお願いしたいところである。
本報告書はこの EU 統一規則の見直し動向を含め、種々のテーマ別総括報告と、訪問先別の
議事録との 2 段構成としている。
改めて、訪欧団メンバー、訪欧団には参加できなかったが事前にご協力頂いた各委員、アポイ
ントメント設定・スケジュール調整等で大変な苦労をおかけした CISTEC 事務局に対して深い
謝意を表明したい。
2008 年 12 月 19 日
訪欧団・団長
3
高野
順一
今回デリゲーションの訪問先、期間及び参加者を以下に記す。
[訪問先]
● ワッセナー・アレンジメント事務局 (Wassenaar Arrangement)(ウィーン)
● イタリア経済開発省( Ministry of Economic Development of Italy)(ローマ)
● イタリア産業連盟(CONFINDUSTRIA)(ローマ)
● EU 委員会 (The European Commission, DG-Trade)(ブラッセル)
● 欧州経営者連盟(BUSINESSEUROPE)(ブラッセル)
● ドイツ連邦経済技術省(BMWi :Export Control Div., Bundesministerium fur Wirtschaft
und Technologie )(ボン)
● 英国宇宙防衛輸出産業団体 (EGAD:Export Group for Aerospace & Defence)(ロンドン)
● 英国ビジネス・企業・規制改革省 (BERR:Export Control Organization, Dept. for Business,
Enterprise and Regulatory Reform)(ロンドン)
[期間]
2008 年 11 月 20 日(木)~
28 日(金)計 9 日間
[参加者]
国際関係専門委員会副委員長・国際交流分科会主査・デリゲーション団長
高野 順一
(三井物産㈱ ロジスティクスマネジメント部次長)
国際関係専門委員会副委員長・海外法制度分科会主査
青井 保
(三菱電機㈱ 輸出管理部専任)
国際交流分科会副主査
川野辺 幸夫
(東レ㈱ 安全保障貿易管理部長)
国際交流分科会委員
福井 誠司
(日本電気㈱ 輸出管理本部マネージャー)
国際交流分科会委員
高澤 信子
(日本ムーグ㈱ エアロスペースコントラクトアドミニストレーター)
国際交流分科会委員
藤本 修
(富士通㈱ 安全保障輸出管理本部業務監査室長)
国際交流分科会委員
小林 雄治
(丸紅㈱ 安全保障貿易管理室長)
国際交流分科会委員
椿野 和男
(三井物産㈱ 輸出管理室長)
国際交流分科会委員
利光 尚
(三菱商事㈱ 安全保障貿易管理室長)
海外法制度分科会委員
斎藤 登
(㈱東芝 輸出管理部次長)
CISTEC
押田 努
(CISTEC 専務理事)
CISTEC
桜沢 清高
(CISTEC 事務局)
4
II. 総括報告
1. EU 統一規則の全面改訂
1-1. 改訂協議の現状と今後のスケジュール
EU 統一規則の全面改訂が EU 委員会で提案されたのは 2006 年 12 月である。以来 2 年が経
過するもいまだ最終合意に至っていない。改定案が相当意欲的(ambitious)であるがために調
整に時間がかかっているとの説明。我々が EU 委員会(ブラッセル)で本プロジェクトの推進
責任者(Ms. Francoise Herbouiller、DG-Trade、フランス人)と面会した 11 月 25 日現在、当
初あった 27(ヶ国)の異なった意見が 10 程度にまで集約された段階とのことであった。その時
点 で 意 見 の 集 約 に 困 難 を 要 し て い る 主 な 懸 案 事 項 は (1)Brokering Service 、
(2)Transit/Transshipment、及び(3)その他 CGEA、Denials、ITT、Catch-All 等である。
規制要件(Scope of controls)につき各国の意見が異なりまとまらない場合には、各国裁量で
独自の規制を設けることができるとする方式で切り抜けている。 現行規則においてキャッチオ
ール規制の条項で使用されている方式。
)またその他懸案事項で特に重要な項目はアクション・
プラン(1-12 項参照)の中で今後更に討議するとしている。
我々が面会した翌日(11 月 26 日)に、全加盟国代表者(各国 1~3 名)が参加して本件に関
する会議が同場所で開催された。参加したドイツ政府の担当官に 11 月 27 日に面会し、状況を
聞いたところ、一定の進展があった模様。特に、Brokering Service の定義(後述)については
概ね(more or less)合意に達したとのこと。彼の感触では今後 6 ヶ月以内には最終合意に達す
るだろうとのことであった。
プロジェクト推進事務局としては、少なくとも 2009 年 1Q 内には最終合意を得たい意向。今
後合意事項は全て EU Official Journal に公開される。また、2009 年 2 月 19 日に本件に関する
EU レベルの国際会議(セミナー)の開催が予定されており、本会議には産業界も、ネットを通
じて事前登録のうえ参加が可能とのことである。
1-2. 全面改訂の目的
1-2-1. 現行統一規則の問題点
現行統一規則(Council Regulation (EC) No. 1334/2000、以下 EU 統一規則と称する)の最
大の問題点は、我々が 2 年前に訪問した際に英国 DTI の Spencer Chilvers 氏が指摘した如く、
「現行統一規則の大半は“加盟国がいかに輸出管理を運用すべきか”を記述するもので、実際の
規則そのものの記述があまりにも不十分である」ことにある。(加盟国数が 15 の時にここまで
しか合意に至らなかったものが、加盟 27 カ国に拡大した現在、その全面改訂に全員一致で合意
に至ることがいかに至難なことであるかが何となく理解できる。
)
従ってその不足分を加盟各国が統一規則とは別に自国法令(national legislations)を制定の
うえ補完しているのが現状。しかしながらキャッチオール規制、技術移転規制、CGEA 等で各
国毎に解釈や運用が異なるという大きな問題が露呈している。
別の表現をすると、本来、Council Regulation はそれ自体加盟国に対し、国内法の手当てを
5
経ずして、直接拘束力を有するものであるにも拘わらず、例えば自国法令に EU 統一規則その
ものをそのままコピーしているという国(イタリア)や、自国法令の中に部分的に統一規則を取
り込んでいる国がある。結果、どの部分が EU 統一規則でどの部分が自国法令なのか区別がつ
かなかったり、しかも間違った解釈で記述しているという実態がある。
1-2-2. 全面改訂の目的
従い、全面改訂の目的は、第一にそれらの問題を解決すること、及び国連安保理決議 UNSCR.
1540 の遵守項目を追加することにある。前者については 2004 年に行われた Peer Review の結
果に基づく勧告が発端となっている。EU 統一規則全面改訂の目的に関して今回具体的に説明が
あった内容は以下の 4 点であった。
(1)
(2)
(3)
(4)
国連安保理決議 UNSCR. 1540 の遵守項目を設けること。
2004 年の Peer Review による勧告内容を取り入れること。
全加盟国が平等な基準(level-playing field)で輸出管理を運用できるようにすること。
追加規制(brokering 等)と貿易促進(trade facilitation)に健全なバランスを持たせるこ
と。
1-3. Brokering Service
本項目は、原案では“Intermediation Service”と表現されていた。しかしながら、英国やド
イツが既に Brokering という用語を使用しており、
“Brokering Service”という表現に変更され
た。
1-3-1. Brokering Service の定義
ほぼ合意に達したとされる Brokering Service の定義はおよそ以下のとおり。要するに現在英
国が軍事品目に関して規定する“Brokering and trafficking“の行為に類似する内容となってい
る。
Brokering service shall mean the negotiation or arrangement of transaction for the purchase,
sales, or supply of dual-use items listed in ANNEX I from a third country to any other third
country; and the selling/buying of dual-use items listed in ANNEX I that are located in a
third country for the transfer to another third country.
1-3-2. 規制要件(Scope of controls)
(1) リスト品目が WMD End-use に使用される恐れがあるとして当局から“Inform”された場
合には許可申請が必要。またそれを知った場合には当局へ通知することが必要。
(2) Broker は EU に所在する人・企業であること(a resident in the EU)。
(3) 以下の補助的なサービス(ancillary services)は対象外とする。
① Transportation
② Financial Services
③ Insurance and re-insurance
④ General advertisement and promotion
1-3-3. National options
6
例えば以下のような National option を設けることも可能とする。
(1) non-listed item を規制の対象とする
(2)“has a grounds for suspecting”の場合も規制の対象とする
1-4. Transit/Transshipment
Transit については EU 関税法に基づき定義するつもりであったが、税関の Enforcement が
絡むことになり、複雑化するとのことで取りやめになった経緯がある。
1-4-1. Transit の定義
今回の訪問で説明があった Transit の定義はおよそ以下のとおりである。
Transit shall mean a transport of non-community dual-use items entering and passing
through the customs territory of the EU to a destination outside the EU.
1-4-2. 規制要件
Transit の対象品目に、第三国における WMD end-use diversion risk があると判断した場合、
各国当局はその transit を禁止する(prohibit)ことができる。
1-4-3. National options
(1) 事前許可申請の制度を設けること。
これは、英国の提案。但し、英国が発行した許可は英国のみ有効。従い、non-community
dual-use items が英国を通過して EU 内の他の国へ移転した場合には別途その国の規制を受
けることになるとの説明であった。
(2) non-listed items も規制の対象とすること。
(3) EU を通過した先の最終仕向国が、国連や EU が規定する禁輸国である場合を規制の対象と
すること。
1-5. ITT(Intangible Transfer of Technology)
1-5-1. ITT の定義変更
ITT に関して注目すべき最大のポイントは ITT の定義(即ち“輸出”の定義)が一部変更さ
れようとしていることである。それに関する説明はおよそ以下のとおりである。
Whenever a company makes available technologies through, for example, Internet, and a
third person in a third country can access the technologies for his/her research and
development, etc., then it can be considered a “transfer.”
即ち、何らかの技術を例えばインターネット上で公開し、それを第三国の第三者がダウンロー
ドして何らかの目的に使用する場合を規制の対象としようとするもの。本件についてはドイツ政
府からも説明があったが、現時点ではまだ合意に至っていないとのことであった。
7
1-5-2. ITT のスコープ
EU 規則においては“電子的手段”による移転のみを規制の対象とする。人の移動(EU 域内、
あるいは EU から域外への)に伴うインタンジブルな技術移転(technical assistance を想定)
については EU 規則では規定せず、自国法令にて規定することとしている。
なお、関連してドイツ当局は「技術移転に関するボーダー規制は極めて難しい(quite a
problem)。なぜなら、ドイツ人がドイツ国境を越えて国を離れることは基本的権利であり、阻
止(interdict)することはできないから」と語っていた。
1-5-3. ITT Best Practices
ドイツが ITT Best Practices を NSG 等の国際レジームへ提出済。この内容が EU 加盟国によ
り同意されたとのことである。その要点として説明があった内容は概略以下のとおり。
(1) 技術を下記 2 つに分けて考える
① 物理的媒体に入った技術
② 人間の頭脳に入った技術
(2) 管理を次の 3 つのフェースで考える
① 許可発行前
② 許可発行時
③ 許可発行後
(3) 下記要素にも留意すること
① Awareness の向上
② 許可発行手順(Licensing process)
③ 法の執行(Enforcement)
1-5-4. VISA 規制
技術移転規制に関して海外留学生や外国人従業員等、外国籍を有する人物の VISA 規制を EU
レベルで制度化しようとする動きがある。但しこれは輸出管理とは別の法令の手当てを必要とす
る。
1-6. 技術支援規制(Technical Assistance)
技術支援規制については、現在 “COUNCIL JOINT ACTION 2000/401/CFSP of 22 June
2000”が規定されており、EU 規則とは別建てとなっている。EU 域外にて WMD やその他軍事
エンド・ユースに係わる技術支援を提供することを規制するものであり、ドイツや英国は既に自
国法令に盛り込んで運用している。
関連して、現在の EU 規則は“輸出”の定義の一つとして「技術やソフトウェアの電子メデ
ィア等による EU 域外へのインタンジブルな移転」を規定している(Article 2 (b) (iii))
。一方、
今回の全面改訂原案では、“transmission of software or technology, or the provision of
technical assistance, by electronic media…….” として下線部分の追加が提案された。要するに、
インタンジブルな技術移転に係わるものとして“インタンジブルな技術支援”をも輸出とみなす
ことを明文化することが提案されたのである。
8
しかしながら、結論として上記の追加項目は削除され、かつ技術支援に関する規制は JOINT
ACTION 2000/401/CFSP のまま留まる見通しとのことである。
なお、参考までにドイツ当局による説明によれば、
“技術支援”は常に何らかの“輸出行為”
に密接に関連しており、純粋に技術支援規制のみに関連して摘発する違反事例は過去にもない。
技術支援に絡んで摘発するケースの全てはそれが仕向国の WMD 開発プログラム推進に貢献す
る場合であり、その場合単なる輸出管理法令ではなく、武器管理法(KWKG:War Weapons
Control Act)違反で問われることになるとのこと。
1-7. キャッチオール
1-7-1. 規制実態
加盟国間で運用の実態が一番大きく異なるのがキャッチオール規制であるとの説明。例えば、
ドイツでは政府が “inform”をかけた場合、即輸出不可を意味し、取引を速やかに停止させる
(denial)措置をとることに対し、英国では“inform”をかけても輸出者から申請を出させ、そ
れに基づき当局が時間をかけて判断するということである。
1-7-2. 懸念情報の共有化
キャッチオール規制におけるこの問題は、EU に共通する Early Warning 制度が存在しない
ことが一つの原因であり、その解決策として提案されている内容として、懸念情報を加盟国で共
有する制度を設けることがある。すなわち、denial 情報のデータベースを構築し、より深いレ
ベルで懸念情報を共有しようとするもの。これはあくまで政府レベルでの話であり、一般に公開
することはないとのこと。但し、加盟国が独自の判断で懸念情報を一般に公開することは問題と
しないとのことであった。
1-8. CGEA
1-8-1. 現行 CGEA の問題点
CGEA は EU 統一規則が唯一規定する包括許可である。現行 CGEA の問題点は、その運用が
国によって異なり、輸出者に不公平感が生じている点にある。本来 CGEA を適用する輸出者は
当局へ事前登録し、適用の記録を残すという運用を行うことが当初の意図であった。しかしなが
ら、事前に申請書を出させ、紙ベースで許可証を発行するなどまったく違う運用をする国があっ
たり、登録のタイミングや報告義務等の運用が加盟国によって大きく差が出てしまったという実
態がある。今回の全面改訂ではこの問題を解消すべく、CGEA の運用方式が明確化される予定。
1-8-2. 新たな CGEA の設定
加えて、現在下記の新たな CGEA を設けるべく協議が進んでいる。それぞれにつき適用可能
な品目及び仕向国が限定される。
(1)
(2)
(3)
(4)
Low value shipment
Export after repair and replacement
Export for exhibition and fair
Export of computers
9
(5) Export of chemicals
(6) Export of telecommunication and security
これらについては、各国が既に設けている類似の License Exemptions をモデルに協議が進め
られている模様。これらの CGEA を新たに設けようとする背景には、上記 2-2 (3)項に記した貿
易促進(trade facilitation)という発想がある。要するに、都度許可申請を要するのでなく、一
定条件のもと事前に包括的な許可を与えるという、所謂 Ex-ante の思想に基づくもの。ちなみ
にこの Ex-ante の思想に基づくもう一つの策に Global Authorization(輸出者に対して複数品
目の複数のエンドユーザーや複数の仕向国への輸出を包括的に認めるもの)の適用拡大があると
の説明もあった。(注:Ex-ante とは、これから起こるであろうことを予測して事前に対応する
ことを意味する。反対語は Ex-post)
1-9. 罰則
EU 統一規則の全面改訂の中で、罰則規定を何らかの形で統一化しようとする動きがあった。
しかしながら、この動きは失敗に終わったとのことである。全面改訂の推進事務局として最も残
念な結果であるとの説明であった。
結局のところ、軍事品目に対する輸出管理と同様、罰則についても各国の主権が優先するとし
て強い反対があり、実現しなかったというもの。なお、最近になって司法裁判所の判例が変わり、
EU 委員会は罰則の標準化を求めることはできるものの、罰則内容そのものを具体的に規定する
ことはできないとされたこともこの背景にあるようである。
特に、ITT に関して Global Authorization の適用を認めるかわりに違反が発覚した場合の
Criminal Penalty を EU 規則の中で規定しようとしたが実現せず、まことに遺憾であるとのこ
とである。
1-10. ICP (Internal Control Program)
先に述べた Ex-ante の思想に絡んで輸出者に ICP を規定させることを EU 規則として加盟国
に義務付ける動きをしたが、これも運用しづらい(too cumbersome)として各国の反発にあい、
結局断念したとのことである。但し、ICP については既に多くの国々で実質的に運用されてい
ることもあり、事務当局としては特段遺憾なことではないとのことであった。
1-11. EU 輸出管理法制度の二重性について
最後に、EU 統一規則を完璧なものにすれば、加盟各国が追加で自国法令を設ける必要性はな
くなるのでは、と水を向けてみた。これについては、現在の統一規則を作る時点でそのつもりで
あったがああいう形になってしまったとの釈明。
但し、今回全面改訂が成立した後には、自国法令に統一規則の一部でも入っている場合、ある
いは自国法令の内容が統一規則と食い違う部分についてはそれらを全て削除(repeal)するよう
各国に要請するとのことである。
また、英国 BERR の担当官にこの点を質問したところ、EU 統一規則とは言ってもそれとは
別に各国独自規制が現実にあり、近い将来統一規則に一本化することはないだろうとの回答であ
った。
10
考えてみれば、前述の如く、今回の全面改訂においてさえ、意見の相違を、national options
を設けることによって切り抜ける動きをしており、即ちそれらの options は自国法令の中で規定
せざるを得ないわけで、EU 輸出管理法制度の二重性は今後も消えることがないと考えられる。
また、各国がどんな national options を選択し自国法令に規定したかについては全て各国語に
翻訳された後 EU Official Journal に掲載され、EU 全域に周知される。言い換えれば、EU の
輸出者は自国の法令に加えて加盟各国がどんな national options を採用しているかを常に理解
し、対処する必要があるわけで、構造的にはより複雑になる。
1-12. WMD 不拡散強化のためのアクション・プラン
なお、EU 統一規則の全面改訂とは別に、より高度な政治レベルの動きとして、WMD 不拡散
強化のためのアクション・プラン(A renewed Action Plan against proliferation)が最近 Council
(閣僚理事会)にて採択されたとのことである。本プランには、例えば以下に示す項目に関する
行動計画が盛り込まれ、EU 加盟各国間の輸出管理運用の統一化に資するものとして期待される
との説明であった。
(1) promote awareness to industry
(2) code of conduct for professionals
(3) training for authorities and industry
(4) sharing intelligence
(5) risk analysis
(6) setting up criminal sanctions against most serious violations
2. EU 統一規則における規制品目リストの見直し・改訂
EU 統一規則には規制品目リスト(ANNEX I)が付属する。このリストはワッセナー・アレ
ンジメント等、国際レジームのリスト改訂に基づきほぼ一年から一年半に一度の頻度で見直し・
改訂が実施されている。各レジームのリスト改訂を反映した改訂リストのまとめを英国が担当し
ている。それを EU 委員会(Commission)の案として正式化の後、閣僚理事会(Council)に
かけて承認を得たうえで Council Regulation として正式化するという手続きをとる。加えて、
各国の言語に翻訳するという難作業があるため、時間がかかるとのことである。
ANNEX I を改訂する統一規則の最新版が近々施行される。それには 2007 年 9 月から 2008
年 10 月までの期間に行われたレジームによるリスト改正が反映される。(Council Regulation
(EC) No. 1167/2008 of 24 October 2008 として制定された。施行日は 12 月 3 日から 30 日後)
3. EU による国際アウトリーチ活動
EU 委員会における会議の冒頭、EU によるアウトリーチ活動に関する説明があった。それに
よれば、EU は欧州に限らず、ロシアをはじめ、東南アジアまで幅広くアウトリーチ活動を行っ
ており、ここに紹介しておきたい。EU アウトリーチ活動の領域は以下のとおりである。
(1)
近隣諸国:マルタ共和国、エジプト、バルカン諸国等
11
(2)
(3)
(4)
EU 加盟候補国:トルコ、クロアチア等
ロシア:2002 年から活動、本年 12 月に締めくくりの会議を開催予定
東南アジア:新たなアウトリーチ対象地域として今後東南アジア地域に力を入れる予定。
特にタイについては現地を訪問のうえ EU のシステムを熱心に教えている。またタイも英
国やドイツの税関当局を訪問のうえ、ボーダーコントロール等について学んでいる。英国は
同国に対して Goods Checker や OGEL Checker の説明を行っているようである。
なお、ドイツ当局は UAE、マレーシア、中国等にもアウトリーチ活動を実施しているとのこ
と。実際、EU はこの 9 月に中国でもアウトリーチ活動を実施した実績がある。
4. 各国輸出管理体制と法制度の動き(英国、ドイツ、イタリア)
4-1. 英国
4-1-1. 輸出管理体制
ビジネス・企業・規制改革省(BERR:The Department for Business, Enterprise and
Regulatory Reform)の中の ECO(Export Control Organization)が輸出管理を担当。デュア
ル・ユース品目及び軍事品目すべてに関する輸出許可発行責任部門。90 名強の組織であり、年
間 4 百万ポンドの予算で運営。年間約 12,000 件の許可申請を処理。審査は外務省や国防省等他
省庁との協議にかけられる。省庁間協議機関はアドバイスを行い、許可発行の最終決定は BERR
が実施。EGAD(後述)曰く 12,000 件の内、7 割弱が軍事品目の輸出に係わるものである。
4-1-2. 法制度の動き
4-1-2-1. 3 年後の見直し
2004 年 5 月以降、英国では輸出管理法体系が大幅に改革されたが、最近になってその 3 年後
の見直しが実施された。結果、新たな政令として、“The Trade in Goods (Categories of
Controlled Goods) Order 2008”が 2008 年 10 月 1 日付で施行された。本政令は下記 2 本の既
存政令を改訂するものであり、軍事品目の外国間の取引(trafficking and brokering)に関する
ものである。
(1) The Trade in Goods (Control) Order 2003
(2) The Trade in Goods (Embargoed Destinations) Order 2004
改定のポイントは以下の 2 点
(1) 規制対象品目を Category ‘A’ goods、Category ‘B’ goods、及び Category ‘C’ goods に再整
理(2) OGTCL(Open General Trade Control License)に関する変更。新たに下記 2 種類
の OGTCL が設定された
① OGTCL (Small Arms)
② OGTCL (Category “C” goods)
なお、この“The Trade in Goods (Categories of Controlled Goods) Order 2008”は 2009 年
4 月に再改定される予定である。
12
4-1-2-2. 今後:政令の一本化
将来の方向性として、Secondary Legislations、すなわち法律の下にある幾つかの政令、を一
本にまとめることが打ち出されている。そうなれば、一つの法律に一つの規則がぶら下がるとい
う単純な法体系となる。
“規制改革省”の“規制改革省”たる意味がこういう形で発揮されよう
としている。
4-2. ドイツ
4-2-1. 輸出管理体制
連邦経済技術省(BMWi)の中の経済・輸出管理局(BAFA)の一部が輸出管理を担当。BAFA
は 400 名の組織であり、その半分が輸出管理を担当。デュアル・ユース品目に関して年間 8,000
件の許可申請件数を処理。
4-2-2. 法制度の動き
ドイツについては法制度に関する特段の動きは今のところない。即ち、現法体系は以下のとお
り。
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
EU 統一規則
外国貿易管理法(AWG)
外国貿易管理令(AWV)
武器管理法(KWKG)
原子力法
4-3. イタリア
4-3-1. 輸出管理体制
経済開発省(The Ministry of Economic Development)の中の、輸出管理ユニット(Export
Control Unit)がデュアル・ユース品目に対する輸出管理を担当。15 名(民間に言わせると 12
名)のコンパクトな体制で、年間 400 件の許可申請を処理。審査にあたっては省庁間機関であ
る Advisory Committee の協議にかけられる。同 Committee の議長は外務省が務める。なお、
軍事品目に対する輸出管理は外務省の責任である。民間産業団体の言葉を借りると、イタリアに
おける輸出管理制度の最大の問題点は、許可申請から実際に許可が下りるまでに 3~4 ヶ月の長
期を要することにある。
4-3-2. 法制度の動き
2004 年 11 月に CISTEC 海外法制度分科会・EU-W/G がイタリア政府を訪問した時の状況と
変わっていない。即ち概略以下のとおり。
(1) デュアル・ユース品目
① EU 統一規則
② Decree No. 96 of April 2003
(2) 軍事品目
13
Law No. 185/1990
4-4. その他共通事項
上記 3 カ国の輸出管理体制に共通することは、当局にあって重要な立場を占める担当官に、
いずれも 10 年から 15 年間継続して輸出管理を担当する人物が存在するということ。
(参考まで
に、米国 BIS には 20 年間勤務する人物がいる。
)日本の当局にはないことである。
5. 政府当局による産業界に対するアウトリーチ活動
5-1. 英国
2007 年の活動実績は次のとおり。
(1) 34 回のワークショップ及びセミナーを開催。400 を越す企業から計 893 名が参加。
(2) 15 の企業を訪問のうえ、オン・サイトトレーニングを実施。2008 年は件数が倍増。
(3) 各種産業連盟等にて 18 回のプレゼンテーションを実施。
(4) Website のアップデートを実施。
(5) You Tube を通じて輸出管理を紹介する Video clip を掲載。
また、オープンライセンス(各種 OGEL)を適用する企業について、年間 600 社程度を実地
に訪問し、コンプライアンス状況を確認している。
5-2. ドイツ
ドイツ政府としては下記の活動を実施中。
(1) Website の充実。
(2) 産業界との Council。
(3) 映像情報(film)の作成。
(4) 輸出管理をこれから始めようとするスタートアップ企業に対する教育イベントの実施。
5-3. イタリア
(1)
(2)
外国系企業を含めて国内企業にアウトリーチを実施している。
コンプライアンス・プログラム(CP)の採用を働きかけており、既に CP を有する企業か
らの輸出許可申請は前向きに審査する。
6. キャッチオール規制の運用状況と今後の動き
6-1. WMD キャッチオール運用実態
6-1-1. 英国・ドイツ
EU 統一規則全面改訂の推進責任者であるフランス人女性によれば、1-7-1 項に記載のとおり、
両国間には運営方針に明確な差がある。
14
6-1-2. イタリア
規制当局(ECU)は、キャッチオール規制対象案件を①輸出者からの通知によって、または
②外務省、内務省、国防省、情報局等他省庁の情報を通じて知る。その場合、当局は輸出者に
“Inform”をかける。この情報は同時に税関にももたらされる。その後、輸出者は自身で判断
のうえ許可申請書を提出することになる。手続きは個別許可申請と同一である。なお、キャッチ
オール規制に係わる“Inform”件数は 2007 年実績で 32 件、2008 年に入って 50 件とのことで
ある。
6-2. 通常兵器キャッチオール強化の動き
通常兵器キャッチオール規制に関する新たな情報として、英国がこの規制の強化を EU 内で
提案し、現在討議されつつあるということがある。本件は EU 統一規則の全面改訂とは別枠で
動いている。英国が本提案に至った背景には、各種 NGO から、規制対象品目、規制対象国に関
し、現在の規制内容では不十分であるとの提言があったことによる。但し、本件を説明した英国
BERR の担当官自身、実現するまで何年かかかるだろうと語っていた。
なお、今回の訪欧で言及された NGO として Saferworld という組織がある。欧州、アフリカ
及びアジアを主な活動拠点とする団体であり、活動の一つとして武器移転等、安全保障に関して
政策提言を行うことにより各国政府に対して影響を与えている。
6-3. End-use Certificate 様式の統一化
EU として End-use Certificate 様式を統一化する動きがある模様。
6-4. ワッセナー・アレンジメントにおける Statement of Understanding
2007 年のワッセナー・アレンジメント総会において“Statement of Understanding on
Implementation of End-Use Controls for Dual-Use Items”が採択されている。これはドイツ
の提案に基づくもの。
7. ITT(Intangible Transfer of Technology:無形媒体を通じた技術の移転管理)
7-1. ITT に関する最近の動き
ITT に関しては既に記した如く、①ITT に関する新たな定義導入の動き、及び②ドイツが作成
した ITT に関する Best Practices 制定の動きがある。また、2006 年のワッセナー・アレンジメ
ント総会では、
“BEST PRACTICES FOR IMPLEMENTING INTANGIBLE TRANSFER OF
TECHNOLOGY CONTROLS”が採択されている。
7-2. ITT 運用の実態
本件については、逆に“日本ではどのような運用を実施しているのか”とよく問われたごとく、
各国ともに Best Practices を追求しているというのが実態であろう。英国では現在の 4 つの移
転形態(IN→OUT、OUT→OUT、IN→IN→OUT、OUT→IN→OUT)を規制の対象とする全
く新たな規則を導入した時に産業界や学会等から猛烈な反発を受けたと、今でも関係者が語るほ
15
どである。またイタリアにおいては ITT に関連して許可申請を受ける例はほとんどないとの説
明であった。
7-3. ITT 運用の Best Practices
ITT 運用の Best Practices に関するドイツや英国政府の説明を総合すると、およそ以下の如
くとなろう。言ってみればあたりまえの内容ではある。
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
(7)
許可申請前の輸出者によるスクリーニングを確実に実行させること、
許可申請に対して当局によるチェックを確実に行うこと、
輸出者による移転の実施にあたっては記録を確実に保管させること、
許可発行後の検査を効果的に行うこと。加えて、
企業に対して ICP に基づく自主管理制度を定着させること、
Industry Awareness の向上を不断に行うこと、及び
違反に対しては厳罰で臨むこと。
8. 特定国(イラン、中国、ロシア)に対する規制状況
8-1. イラン
8-1-1. EU 規則による規制
対イラン国連制裁決議(UNSCR 1737)に基づく EU 統一規則として、Council Regulation
(EC) No. 423/2007 of 19 April 2007 が施行されている。本規則については国連が新たな制裁を
決議する都度その改訂版が発行されており、つい最近では Council Regulation (EC) No.
1110/2008 of 10 November 2008 が施行されている。
なお、EU が統一規則の下に運用する対イラン制裁は以下の点で国連制裁より厳しい内容とな
っている。
(1)
(2)
Full arms embargo であること。
EU 独自の規制品目リストを制定し、厳しい輸出規制を課していること。なお EU 規則が
制定する対イラン規制品目リストは以下の 3 本である。
① NSG/MTCR 規制品目リスト(ANNEX I)・・・輸出禁止
② EU 独自規制品目リスト(ANNEX IA)・・・輸出禁止
③ EU 独自規制品目リスト(ANNEX II)・・・輸出にあたって許可が必要
(3) 技術サービス、金融サービス、投資等についても規制していること。
8-1-2. 英国外務省による説明
イランには多くの懸念事項があり、規制の運用が難しい国であるとの認識。イラン向には石油
化学産業に関連する個別輸出許可申請が多い。Utility(その品目の機能)に注意している。英
国は上記 EU 規則に加え、特に核・ミサイル関連品目について独自規制を運用している。民生
用航空機やその部品・コンポーネント、及び船舶等についても独自規制している。
イランに関して輸出者から最も多い質問は“イランの特定エンドユーザーに対して輸出が可能
16
か?”というもの。BERR はその Website 上で唯一イランに関する Entity List をガイダンスと
して掲載している。掲載 Entity の選択基準は二つあり、第一が国連や EU が定めた制裁に基づ
くもの、第二が過去に輸出許可申請を不許可とした Entity である。それらのエンドユーザー向
には基本的に Non-listed items であっても許可申請をするよう指導している。申請に対してす
べて不許可とするのではなく、ケース・バイ・ケースで対処している。
イランに関する EU 統一規則 No. 423/2007 が規定する ANNEX II はシールやガスケット等、
Low utility(ローテク)品目を幅広く規定しており、現在はそれらをイランへ輸出するにあた
って許可が必要。日常ベースで許可申請がある。審査にあたっては、下記要素を十分チェックし
たうえで判断を下している。
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
その品目の Utility(機能)
エンドユーザーの素性
発注数量の妥当性
インテリジェンス情報の有無
調達の必要性
エンドユースの妥当性
8-1-3. ドイツ BAFA による説明
イランはドイツにとっても EU レベルでも規制が難しい国との認識。イランはドイツにとっ
てもともと重要な貿易相手国である。現在は EU 規則に基づき厳格な運用を実施している。
なお、BAFA は最近になって、イラン向け輸出に関するかなり詳細なガイダンス(解説書)を
Web 上に掲載している。それによれば、イラン向に許可を要する品目をドイツから EU 内、例
えばオランダ、へ移転する場合、それが最終的にオランダからイランへ輸出されることを知って
いる場合にドイツの輸出者はオランダへの移転に際して BAFA から許可を取得する必要がある
としている。無論、オランダから更にイランへ輸出するにあたってはオランダ政府の許可を要す
る。
8-1-4. イタリア当局による説明
イタリア当局の説明によれば、イラン向け輸出許可申請の場合、不正転用リスクの観点から不
許可とするケースが多くあるとのことであった。
8-2. 中国
8-2-1. 英国外務省による説明
デ ュ ア ル ・ ユ ー ス 品 目 に つ い て は 、 加 工 産 業 ( processing industry ) や 通 信 産 業
(communication industry)向けを主体に、その多くを英国から中国へ輸出している。
武器品目の輸出については EU による対中国武器禁輸を考慮しなければならない。但し、同
国に対する EU 武器禁輸は加盟各国によって解釈・運用の相違があることが問題。英国として
は武器禁輸と共に、EU 行動規範を基に制定された英国行動規範 (Consolidated EU and
National Arms Export Licensing Criteria)に規定の基準に従い、厳格に運用している。特に、
殺傷性が高い武器、銃砲、軍用飛行機、戦闘車両等については輸出を禁じており、また人権問題
17
で規制される品目等についても十分な注意を払っている。必要な場合には外務省の Sanctions
Team に相談する。
行動規範のうち、Criterion I (英国の国際コミットメントを尊重すること)に関して不許可
とするケースは稀であるが、サーベイランス機器(火災探知用を除くサーマルイメージング製品
群)については輸出を禁じている。また Criterion II (仕向国における人権および基本的自由
の尊重)に基づき不許可とするケースもある。全体としてはケース・バイ・ケースで判断してお
り、申請書の殆どにつき許可証を発行し、不許可とするケースは少ない。
また、中国企業が英国のハイテク企業を買収するという懸念はないか質問したところ、そのよ
うなケースは今のところ全くない。但し、仮にあったとしても現行の法令(Section 5 and 6 of
Industry Act of 1976)で対処(禁止)可能との回答であった。
8-2-2. ドイツ BAFA による説明
ドイツにおいても対中国武器禁輸に関する言及があった。デュアル・ユース品目の対中国輸出
で特に留意している点は、軍関連企業(民生事業を営む企業ではあるが軍にも関連する企業)で
ある。迂回輸出のリスクについては、当たり前のことではあるが、常に最終仕向地、最終ユーザ
ー/ユースの確実な事前チェックが必要。規制品目の輸出にあたっては中国政府が発行する輸入
証明(Import Certificate、End-use Certificate)の入手を義務付けている。但しそれだけでは
不十分であり、インテリジェンス情報や他国の denial 情報等も十分チェックしている。特に、
核関連品目の中国への輸出についてドイツは非常に厳格な政策運用を行っている。
最近中国企業がドイツの工作機メーカーを買収する動きがあるようだが、と質問したところ、
驚いた様子で“現在政府内部で対応を協議中である”との回答が返ってきた。関連法令の改正が
必要な様子であった。
8-2-3. イタリア当局による説明
中国に関してイタリア政府としての特段の政策はないとの話であった。若干古いデータである
が、2003 年の許可を要した輸出実績のうち、中国向けが最大の 23%を占めており、今回の訪問
でその点を質問したところ、今は状況が異なるとの回答であった。
8-3. ロシア
8-3-1. 英国外務省による説明
ロシアに対する制裁は特にない。ロシアとグルジア間で紛争が生じた時には両国に対する許可
証の発行を一時的に停止した。しかしながら現在は両国とも通常通り許可証を発行している。も
ともとロシアには軍事大国として独自軍事技術の大きなベースがあり、従って軍事転用の恐れは
あまりない。但し、行動規範の Criterion IV(地域の平和及び安定の維持)に抵触し、紛争に使
用される恐れがある品目は輸出を禁じている。
ロシア向けには多くのローテク製品が輸出されている。許可申請件数もかなり多い(何件ある
かは年次報告書によって知ることができる)が、その殆どは民生品目に関するものであり、懸念
はない。
18
ロシア/グルジア紛争について英国は国連や NGO 等の情報を重視すると共に、在ロシア拠点
(Post:大使館等)を通じて常に監視している。
8-3-2. ドイツ BAFA による説明
ロシアに対する武器禁輸政策はない。従い同国へは武器の輸出もある。デュアル・ユース品目
の輸出については、中国同様軍関連企業(旧軍事企業、あるいは軍事企業で最近民生事業をも手
がけるになった企業)に注意を払っている。また、ロシア向け許可要否の判断は、インテリジェ
ンス機関を含む他省庁との十分な協議を経たうえで慎重に行っている。
ロシアが、エアバスに資本参加したり、材料やコンポーネントを供給したり、機体そのものを
購入したりして影響を及ぼしているようだが、それらを通じて機微な技術がロシアへ流れる懸念
はないかとの質問については、BAFA としては特段関知していない(Not sure)との回答であっ
た。
8-3-3. イタリア当局による説明
ロシアに関してイタリア政府としての特段の政策はないとの話であった。
9. 武器に対する輸出規制動向
9-1. EU Code of Conduct on Arms Exports
武器輸出に関する行動規範(EU Code of Conduct)が制定されて以降、この 6 月で 10 年の
節目を迎えた。前回 2 年前の訪問では、これに法的拘束力を持たせる(legally binding)方向と
の説明であったが、今回の訪問では具体的に“Common Position”に格上げすべく調整が続けられ
ているとの説明があった。(注:Common Position は通常“共通の立場”と訳される。特定の
問題に対する EU の政策的立場を定めるもので、閣僚理事会で決定される。加盟国はそれを支
持し、遵守することが要求される。
)
英国では、前述の英国行動規範に定められた基準を極めて厳格に運用のうえ、許可・不許可の
判断を実施しているとの説明があった。同基準を超えて政治的、経済的判断を行うことは許され
ないとのことである。
9-2. 対中国武器禁輸
いずれの訪問国においても近い将来 EU による対中国武器禁輸政策が解除されることはない
と関係者が断言していた。米国の強い力が作用している模様。
但し、対中国武器禁輸の解釈・運用は国によって温度差がある。所謂“武器”のカテゴリーに
入る品目の輸出を全て禁じているわけではなく、例えば英国は自国の規範が定める基準に応じて
国としての判断を行っている。
9-3. ICT(Intra Community Transfer of Defense Related Products)
武器の移転に関連した新たな EU 統一政策として ICT(Intra Community Transfer of
19
Defense Related Products)の採用が討議されている。本件は EU の DG-Trade でなく、
DG-Industry より提議されたもの。2007 年 12 月 5 日に EU 委員会(Commission)によって
正式に提案された。現在、武器品目に対する規制は、各国の主権事項として EU 域内移転であ
っても各国の個別許可が必要である。それら加盟国間の移転を規制する許可制度を EU として
統一、簡素化することによって EU 兵器産業の競争力を全体として底上げすることを目的とす
るもの。新たな許可制度の一つとして、コンプライアンスに優れた企業を優遇する許可制度の導
入が考慮されている。
なお、本件の決定は“Directive”(Transfer Directive)としてなされる予定。
(注:Regulation
がそれ自体加盟国に対して直接拘束力を有することに対し、Directive については、加盟各国が、
ある程度国内法の手当てをもって対応する。
)
10. 米国輸出管理規則の域外適用に対する産業界の対応
10-1. 産業界との対話
今回の訪欧では政府当局に加え、下記産業団体との対話を行った。
(1)
(2)
(3)
イタリア:イタリア産業連盟(CONFINDUSTRIA、下記 BUSINESSEUROPE にも加盟)
ベルギー:BUSINESSEUROPE(欧州経営者連盟)の輸出管理部会
英国:英国宇宙防衛輸出産業団体(EGAD:The Export Group for Aerospace & Defence)
10-2. 結果
10-2-1. 総括
今回、上記三団体や政府当局との対話を通じて明らかになったことは、国、あるいは産業によ
って対応に差があるということ。特に印象に残ったことは、大企業(Philips)や防衛産業(EGAD)
にとって米国輸出管理規則の域外適用に対する対応は国内輸出管理規則への対応を超えてコン
プライアンスに関する企業活動の大きな部分を占めるということである。また極端な例えではあ
るが、英国防衛産業界曰く、彼らは常に「悪魔の選択」をせまられている。
10-2-2. イタリア産業連盟
米国再輸出規制にどのように対応しているのかとの質問に対するイタリア産業界の回答は
“We don’t know how to control.”というそっけないものであった。イタリアの場合、全てにお
いて現実的(pragmatic)に対応するというのが彼らの説明。参考までに、イタリア政府の説明
によれば、米国大使館からなにか情報が入った場合にのみ対応するというもの。言い換えれば、
普段はなにも関知しないということのようである。
10-2-3. BUSINESSEUROPE
“U.S. re-export control is a big concern.”との一貫した説明。特に、輸出管理部会の会長と
して我々との面談の正面に立った Mr. Lamoureux は仏 THALES 社のコンプライアンス責任者
であり、米国再輸出規制のみならず、EU の輸出管理法制度に対する不満(自らの積年の要求が
思うように実現しないことからくる)をまくし立てたという感じであった。彼の言葉によれば、
20
欧州は、米国に対して政治的に弱腰であるとのこと。
一方、会議に同席した Philips 社の輸出管理責任者(前回の訪問でも面会)によれば、彼の仕
事の 80%は国内法令でなく米国再輸出規制への対応であるとのこと。つまり、同社は米国 BIS
から許可を取得するケースがかなりある。
(これは、国内法対応はなにもしていないという意味
ではなく、既に完璧に近いシステムが出来上がっていて、それを通じた対応がきちんとできてい
るということ。
)また、同社は米国原産品目の ECCN 番号をできるだけ米国メーカーに問い合わ
せるものの、最終的には全て自らの責任において該非判定を実施しているとのことであった。
なお、BUSINESSEUROPE ホームページの Headlines のコーナーに今回の会議結果が下記
の如く掲載されたので紹介する。
BUSINESSEUROPE
ORGANIZATION
SHARES
VIEWS
WITH
JAPANESE
EXPORT
CONTROLS
At a meeting in Brussels on 25 November, BUSINESSEUROPE’s Export Controls Chairman
Dominique Lamoureux met a delegation from CISTEC. The Center for Information on
Security Trade Controls is the only organization in Japan working exclusively on export
controls of dual-use products, including on the impact on companies of export control
regulations. The discussion focused on current issues in export controls in Japan and the
European Union, including the current recast of the EU’s primary export control regulation.
Both sides also shared their concerns about the extraterritorial application of US re-export
regulations which place a dual burden on European and Japanese industry given that they
are already covered by their respective domestic systems.
10-2-4. EGAD
10-2-4-1. 英国に占める防衛産業の位置付け
EGAD で我々に対する説明の前面に立ったのは、輸出管理部会の会長を務め、かつ輸出管理
全般のコンサルタントを行う David Hayes という人物。彼も同様に自分の仕事の 80%は米国輸
出管理規則の域外適用への対応であると明確に語っていた。
彼の説明の中で特に注目すべき内容は、
“英国において防衛産業の生産高は英国 GDP の 2%に
すぎないが、輸出許可申請件数においては英国全体の 66%を占める”というもの。これの意味
するところは、英国においては防衛産業一社あたりの許可申請件数が極めて大きく、逆にデュア
ル・ユース産業においては中小企業の裾野が広く、一社あたりにすると許可申請件数ははるかに
小さいということ。関連して「一つの考え方として、中小企業の多いデュアル・ユース産業にお
いては、輸出管理なぞ無視する方が経済的である」と極端なコメントを言い放っていた。
10-2-4-2. 英国法令と米国法令の対立
EGAD による説明の中で出てきたもう一つの重要事項は、輸出管理に関し、英国法令と米国
法令には相容れない対立(irreconcilable conflicts)があるということ。これを端的に現わす標
語として“Do you break US law, or British and European law? The choice is yours.”という
ものがある。要するに“どちらを採りますか”という問いかけであり、どちらを採っても違反が
起こるという世界。今回の会議に参加した BAE 社の人物は「極端な話し、英国法を破って米国
21
法を遵守せざるを得ない状況がある」と語っていた。要するに、彼らは「悪魔の選択」を迫られ
ている。
具体的に、みなし輸出規制に代表される米国法に対立するものとして挙げられた英国法や欧州
法は以下のとおり。
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
British Race Relations Act (1976)
EU Treaty of Rome (1957)
European Convention on Human Rights
British Human Rights Act (1998)
Employment Rights
Others
= 悪魔の選択 =
米国法に違反しますか、それとも英国・欧州法に違反しますか?
それはあなた自身の選択です
英国・欧州寄りの判断
米国寄りの判断
米国みなし輸出規制
英国・欧州法
10-2-4-3. 英米二国間条約
英米二国間には、武器貿易に関する条約として、
“US-UK Defence Trade Cooperation Treaty”
が締結されている。これに関して彼らが言いたかったことは、本条約には米国武器技術を扱うに
関してかなり厳しい条件が課せられており、それらを遵守せざるを得ないが・・・・というもの
であった。
(注:CISTEC Journal 2008.11 No.117 号 31 ページの説明によれば、本条約の米議
会承認が今もってなされておらず、しかも更に遅れるようである。
)
22
10-2-4-4. 英国における資格認証プログラム
CISTEC の STC 資格認証制度に類似するプログラムが英国防衛産業界でも導入されようとし
ている。概要を以下に記す。
(1) プログラムの名称:Defence Academy Training Course(これが正式かは未確認)
(2) 運営主体:EGAD と Cranfield University との共同運営(BERR が協力)
(3) コース:下記 4 コースが設けられている。
① Basics(内容が完成した段階)
② Roles of 1st Contact(2009 年 1Q より開始)
③ Compliance Manager(未完成)
④ A Module of Master of Science(開設済)
(4) 方式:オンライン方式
10-2-4-5. 米国産業連盟との対話
EGAD は TABD(The TransAtlantic Business Dialogue)の場を通じて米国産業界と積極的
に対話を推進し、協調を深めている。
11. ワッセナー・アレンジメント事務局訪問
11-1. ワッセナー・アレンジメント創設の経緯と目的
ワッセナー・アレンジメント(Wassenaar Arrangement)は、1994 年の COCOM 解消を受
け、その後の“The New Forum”を経て 1996 年に創設された。当初は 33 カ国でスタート。現
在は 40 の加盟国数まで拡大している。
他の国際レジームが大量破壊兵器(WMD)の不拡散を目的として創設されたのに対し、ワッ
セナー・アレンジメントは通常兵器及びそれらに転用可能なデュアル・ユース品目の移転規制を
目的としている。具体的にワッセナー・アレンジメントのホームページにはその目的を以下の如
く記載している。
The WA has been established in order to contribute to regional and international security
and stability, by promoting transparency and greater responsibility in transfer of
conventional arms and dual-use goods and technologies, thus preventing destabilizing
accumulations.
11-2. ワッセナー・アレンジメント事務局
今回は、ウィーンに所在のワッセナー・アレンジメント事務局を訪問し、ダニエルソン事務局
長(スウェーデン人)に面会して話を聞いた。ワッセナー・アレンジメント事務局はパートタイ
ムを含めて 13 名の組織、各国との調整機能を有するが、事務局が政策決定のイニシャチブをと
ることは一切ない。以下に事務局長が話した内容の要点を記す。
11-3. 意思決定のメカニズム
23
ワッセナー・アレンジメントは、加盟各国の相互活動(Inter-action)によって成り立つ組織
である。即ち、リスト改訂を含めて全ての意思決定は加盟国の動議に基づき行われ、全会一致
(consensus)の原則により決定がなされる。決定に至るまでの審議内容は一切公表されない。
最終決定は年一回開催される総会の場でなされるが、実質的な決定はその下にある General
Working Group、Expert Group 等各種分科会や特別委員会等のレベルで行われる。
11-4. 加盟国による政策運用
ワッセナー・アレンジメントに基づく加盟各国の輸出管理運用は、基本的にワッセナー・アレ
ンジメントが決定する規制品目リストがベースとなる。しかしながら、実際の政策運用は加盟国
の自由裁量に委ねられている。具体的に、特定の規制品目に対して輸出を許可する、しないは加
盟国が自国の法令に基づき決定する。
11-5. 最近の政策決定
ワッセナー・アレンジメントは時に応じて色々な政策決定を行う。但し、それをどう国内で運
用するかは上記どおり加盟国の自由裁量に委ねられている。従い、ワッセナー・アレンジメント
には加盟国の政策運用を監視する機能は一切存在しない。最近採択された政策決定の一部を下記
に紹介する。
(1) Statement of Understanding on Arms Brokerage (2002)
(2) Statement of Understanding on Control of Non-Listed Dual-Use Items (2003)
(3) Statement of Understanding on Implementation of End-Use Controls for Dual-Use
Items (2007)
なお、これらに加えて Best Practice Guidelines 等が各種制定されている。また、承知の如く
上記(2)項に対する日本の対応は 2008 年になって実施。
11-6. 規制品目リスト
11-6-1. 規制品目の選択基準
規制品目リストには① Munitions List 及び② Dual-Use List の二つがある。内、Dual-Use
List に掲載する規制品目の選択基準は下記のとおり。
(1)
(2)
(3)
(4)
Major or key elements for conventional military capabilities
Foreign availability
Controllability
Non-duplication of other export control regimes.
11-6-2. SL 品目と VSL 品目
SL 品目と VSL 品目の相違は以下のとおり。
(1) SL 品目:Key elements directly related to advanced conventional military capabilities
(2) VSL 品目:Elements essential to the most advanced conventional military capabilities
24
11-6-3. 最近ワッセナー・アレンジメントが注目する機微品目
最近ワッセナー・アレンジメントが注目する機微品目は以下のとおり。
(1) Night Vision for Civilian Use
(2) MANPAD (MAN-Portable Air Defence System)
(3) IED (Improvised Explosive Device)
(4) Aircraft Missile Protection System
(5) Charged Multiplication System
(6) Camera
なお、IED に絡んで最近米国が Entity List を大幅拡大したことは承知のとおりである。本リ
ストには一部ドイツや英国の人物も掲載されている。
11-6-4. EU リストとの関係
ワッセナー・アレンジメント事務局の説明では、ワッセナー・アレンジメントが規定する規制
品目リストはそのまま EU の規制品目リスト(ANNEX I)として採用されているとのことであ
る。
11-7. 加盟にあたっての条件
ワッセナー・アレンジメントへの加盟申請は自由であるが、以下の 4 条件が設定されている。
(1) Whether it is a producer/exporter of arms or industrial equipment respectively
(2) Whether it has taken the WA Control Lists as a reference in its national export controls
(3) Its non-proliferation policies and appropriate national policies
(4) Its adherence to fully effective export controls
なお、中国が過去に加盟申請した実績はないとのことであった。
11-8. 協議の内幕
ワッセナー・アレンジメントの全ての意思決定は上記どおり全会一致の原則をとる。従い、事
務局長が述べていたように、決定までには国益がぶつかりあう激しい議論があっても不思議では
ない。審議の経緯は一切公表されないものの、今回わずかではあるがその内幕を知ることができ
たので紹介したい。
EGAD との会議で、MOD を経た後 BERR(当時 DTI)の役人として英国を代表してワッセ
ナー・アレンジメントの会議へ何度か参加したことがあるという人物(現在は DMA(Defence
Manufacturers’ Association)に勤務)の話しを聞くことができた。曰く、“どんなに合理的で
新しい提案を行っても、常に特定の 1 カ国がそれをつぶしてしまう”というもの。彼にとって
は既に何年か前の過去のことであろうが、よほど腹に据えかねていると思われ、それを激しい怒
りをもってまくしたてていた。
(参考までに、関係者の話しによれば、英国とその国の代表者は
会議テーブルの両端に対峙し、常に激しい応酬を交わすそうである。
)
ついでながら、彼の説明によると、日本はレジームが制定するリストの翻訳を他国と比べてか
なり厳格に行っているとのことであった。
25
12. より良い輸出管理のための日欧産業界共同提言
12-1. 提言の内容
今回の訪欧では 10-1 項に記した如く 3 つの産業団体との対話が実現した。海外の産業団体と
の友好関係・協力体制の構築は、国際交流分科会の基本活動方針である。
「総論的な協力関係」
はすでに構築できていると考えるが、これをさらに強化することを念頭に、我々は“より良い輸
出管理のための提言”を行った。お互いの問題認識を共有し、より良い輸出管理の実現に向けて
今後とも協同しようという提案である。提言の内容は概略以下のとおり。
12-1-1. 規制品目数の削減
リスト規制は輸出管理の基本であり重要なものであるが、そのための該非判定は企業の大きな
負担であることは間違いない。現在のリストは過去からずっと継続しているが、その本来の規制
意図・規制理由は現行の状況にあっているのだろうか? 曖昧になってしまったものはないのだ
ろうか? また、キャッチオール規制が導入されたことから、リスト規制品目は実はもっと少な
くても大丈夫ではないだろうか?という問題意識である。
その手始めとして、ワッセナー・アレンジメントへの提言を想定。Foreign availability の観
点からリスト規制品目数の削減を目指そうとするもの。
12-1-2. コンプライアンスの優れた企業に対する優遇措置の実現
AEO や C-TPAT などに見られるように、コンプライアンスに優れた企業には認定を与え、当
局はより疑義がありそうなケースの管理・取締りにそのリソースを集中するというのが現在の管
理体制と言える。輸出管理でももっと積極的にそのような考え方を取り入れるべきではという問
題意識である。
各国政府への提言を想定。コンプライアンスの優れた企業に対し、例えば以下のような優遇措
置の実現を目指そうとするもの。
(1)
(2)
(3)
(4)
包括許可適用の条件緩和
Intra-Company Transfer に相当する許可例外の実現
個別許可発給の迅速化(Fast Track)
コンプライアンスに優れていると認定された企業間の輸出の許可例外の実現
12-1-3. 米国輸出管理規則の域外適用に対する対応
米国政府への提言を想定。米国輸出管理規則の域外適用は非米国企業に対して二重の負担を強
いるものであり、既に優れた輸出管理制度が確立した日欧についてその適用除外を目指そうとす
るもの。これについては、昨年本ミッションが米国 BIS(商務省・産業安全保障局)を訪問した
際に提出した CISTEC 押田専務理事署名の要望書のコピーを相手に手渡しのうえ、共同歩調を
とるよう呼びかけた。
12-2. 結果
26
各団体ともにそれぞれの事情があり、上記提言に対して今すぐなにか協同作業を立上げようと
いう反応には至らなかったものの、総じて好感をもって受け止められた。今後とも訪欧ミッショ
ンを継続する中で更なる呼びかけを図り、議論を深めて行きたい。
27
III. 訪問先個別議事録
1.
ワッセナー・アレンジメント事務局
1-1. 面談日時等
面談日時:
面談場所:
面談者:
同席者:
1-2.
11 月 21 日 10:00~12:00
ワッセナー・アレンジメント事務局会議室
Ambassador Sune Danielson (Head of Secretariat)
Mr. James F. Freund (Senior Officer)
Mr. Takabatake Masaaki (Counselor, Permanent Mission of Japan to the
International Organizations in Vienna:ウィーン国際機関日本政府代表部)
Presentation ・配付・入手資料等
(1) CISTEC よりの presentation・配付資料
① Activities of CISTEC(別紙 1)
② Current Topics in Export Control in Japan(別紙 3)
(2) 先方からの presentation・入手資料等
① WA 紹介パンフレット(別紙 7)
② “Basic Documents”(February 2008)(別紙 8)
③ WA Outreach Presentation to CISTEC(別紙 9)
1-3. 面談内容
「Ⅱ.総括報告 11.ワッセナー・アレンジメント事務局訪問」に記述したので、ここでは、簡
潔に特記事項を述べるにとどめる(一部重複あり)。
1-3-1. ワッセナー・アレンジメントの性格と特徴
ワッセナー・アレンジメント自体は拘束力を持たないレジームだが、ワッセナー・アレンジメ
ントの武器リスト(Munitions List)はEUでは武器輸出の行動規範に伴う共通の武器リストに
取り込まれており、また、EU統一規則の規制リストの一部としてEU加盟国にとっては法的拘束力
を持つリストの役割を果たしている。
また、MANPADS規制のように、ワッセナー・アレンジメントの動きに呼応して規制の国際
合意が形成されつつあるような例もある。
1-3-2.ワッセナー・アレンジメント参加国と中国
武器の製造・輸出に関わる主要国の多くがワッセナー・アレンジメントに参加しているが、こ
の範疇でありながらメンバーではない国の例として、中国、イスラエル、ブラジルを挙げていた。
中国をメンバーに加えようとの動きは当面ない。メンバーとなるには、ワッセナー・アレンジ
28
メントの規制リストに基づく輸出管理を実施して、不拡散に協力し、輸出管理制度を運用してい
ることなどの条件を満たす必要がある(現時点で中国がこのような条件を満たしているとは到底
考えられないとのニュアンス)。
1-3-3. ワッセナー・アレンジメント事務局の役割
ワッセナー・アレンジメント事務局はワッセナー・アレンジメントの政策や方向性を決めるも
のではなく、参加国間の合意を調整する役割を持つに過ぎない。参加国によるワッセナー・アレ
ンジメント合意の実施状況についてもモニターする仕組みはない。
個々の製品のECCNについて産業界から質問を受けることが良くあるが、各国の所轄官庁に問い
合わせるように指導している。
規制内容の見直し検討についても、事務局から提案するのではなく、参加国政府からの提案に
よる。
日本の産業界からワッセナー・アレンジメントに反映してもらいたいような点があるなら、日
本政府と良く連携をとって日本政府からワッセナー・アレンジメントに提案するようにインプッ
トすることを勧める。
メンバーがワッセナー・アレンジメントで合意を得ることや具体的なアクションを目指すなら、
そのためのリソースも提供しなければならない。
1-3-4. 補記
この後、12月2-3日に総会が開催され、改正リストなどがワッセナー・アレンジメントのホー
ムページで公開された(12月8日付)。
総会後の公式発表において、リスト改正の中でも、特に、次の2点に注意を促している。
・Low-light level and infrared camera:暗視装置/カメラ等
・Charges and devices containing certain explosives:IED
(路肩爆弾/即席爆発装置)関連、等
また、この公式発表の中で、2008年の個別アウトリーチの実績として、中国、イスラエル、
ベラルーシを挙げている。
(2008年11月21日
ワッセナー・アレンジメント事務局における記念撮影)
29
2. イタリア経済開発省(Ministry of Economic Development of Italy )
2-1.
面談日時等
面談日時:
面談場所:
面談者:
2-2.
11 月 24 日 11:00-13:30
Ministry of Economic Development of Italy 会議室
Mr.Salvatore Pistorio ( Head of the Export Control Unit )
Mr.Giovanni Ramella Zampa ( Deputy Head of the Export Control Unit,
Licensing Policy )
Ms.Myriam Rammela ( Outreach Activities )
Mr.Bruno Colantonio ( Export Licensing and Control Activities )
Mr.Raffaele Sarno ( Export Licensing and Control Activities )
Ms.Laura Durano ( Export Licensing and Control Activities )
Ms.Rosella Pizziconi ( Export Licensing and Control Activities )
Ms. Pina Anniballi ( Export Licensing and Control Activities )
Mr.Pierluigi Zampana ( Community and National General Authorization
Licensing )
Presentation・入手・配付資料等
(1) CISTEC よりの Presentation・配付資料
① Activities of CISTEC(別紙 1)
② Export Control in Japan(別紙 2)
③ Overview of Japan’s Export Control(別紙 6)
(2) 先方よりの入手資料
① Questions and Answers for Hisashi Riko(別紙 10)
② Dual Use Goods and Technology Export Control Regulation in Italy(別紙 11)
2-3.
①
-
-
-
②
面談内容
日本からの Presentation に対しての反応
日本の ICP について興味がある。イタリアの企業が同じような ICP を導入すればよいと思
っている。輸出許可申請時に、ICP の有無を聞くなどして推奨はしているが、なかなか進
まない。
「日本では ICP がないと包括許可が取れない旨説明し、なにか見返りがないと難しいので
は?」という指摘に対して、なにかインセンティブを出せたらよいとは考えているとのコメ
ント。(具体案はなさそう)
国内での指導、モロッコや中東でのイタリア企業に対しての outreach は行っている。
事前に利光委員よりの e-mail での質問に対しての回答を入手資料(別紙 10)に沿って説明
があった。要旨は下記の通り。
(質問-1の要旨)
とりうるテロ対策は?マネーロンダリングする銀行への経済制裁を行ったことがあるか?
30
(回答)
イタリアは厳密に EU Regulation No 423/2007 および No 116/2008 (イランへの制裁)
を行っており、その中で指定された個人・企業・銀行への資産凍結を含む制裁をしている。
また EU Regulation No 1334/2000 (Dual Use 品目の輸出管理法)を厳密に実施している
が、この中には制裁等のリストはない。マネーロンダリングする銀行についての対策は(The
Ministry of Economic and Finance) の管轄となる。
(質問―2の要旨)
イタリア政府としてはどのように最終用途を把握しているのか?またどのように輸出者が適
切に最終用途確認できるように指導しているのか?
(回答)
Dual Use 品目の輸出管理の管轄省庁として、産業団体と一緒にセミナーや会議を開催して
いる。その中で、最終用途の確認の方法を明確にしている ICP の必要性を強く説明している。
当然企業自身のためのものでもあるし、ICP 導入により当局としても EL 申請時に内容が把
握しやすくなる。また、当局の HP でいろいろな支援をしている。
(質問―3の要旨)
米国の再輸出規制は基本的に域外規制である。EU としても米国の域外規制を否定している。
EU の輸出者は米国からの制裁を考え、従わざるを得ないというのが実情であろうが、イタ
リア政府としての米国再輸出規制に対しての方針を聞かせてほしい。
(回答)
イタリアとして米国の再輸出規制を認める合意を米国とは行っていない。米国・イタリア間
の関係は非常によく、米国大使館から疑義のある品目や客先にアドバイスをもらい、慎重に
管理を行う場合とかもある。
(質問-4)の要旨
最近 ITT(無形技術移転)の問題が議論されている。難しい問題ではあるが、イタリア政府
としてはどうやって無形技術移転の管理を行おうとしているのか?また特に大学や研究所に
おける無形技術移転に対してはどうしていこうとしているのか?
(回答)
ITT は輸出の一形態と定義されており、管理の対象であり、企業も大学・研究所も EL を申
請しなくてはならない。われわれは有形の貨物と同様に審査をする。
我々はすべてのイタリアの大学や研究所に ITT が規制の対象であることに注意を促す通知を
出している。
③
その他
(ロシア・中国・イランに対して)
ロシア・中国に対して特別な規制はない。また、EU としての BLACK LIST のようなもの
はないが、国連制裁の関連からイランに対しては BLACK LIST がある。イラン向けの許可
申請は結構ある。REJECT したものもたくさんある。
(許可のプロセスについて)
1) まず事前の SCREENING を Export Control Unit の 15 名のスタッフが行う。
2) 最終的な許可権限は Ministry of Economic Development が有するが、その前に The
Advisory Committee(外務省を Chairman とする)の意見を聞くことになる。
(実質的にはこ
この決定となる)
31
3)
4)
この Committee のメンバーは Ministry of Economic Development によって決められてい
るが、その他の官庁や専門家も投票権はないが参加可能である。
問題は、Committee は月 1 回しか開催されないこと。
(つまり許可がなかなか下りない)
年間の許可件数は 400 件程度とのこと。(DUAL USE のみ、武器は含まず。
)
(200年11月24日
イタリア経済開発省における記念撮影)
32
3. イタリア産業連盟 (CONFINDUSTRIA)
3-1. 面談日時等
面談日時:11 月 24 日 15:00-17:30
面談場所:イタリア産業連盟本部会議室
面談者: Mr. Glauco Camerini (Coordinator of Customs Working Group of
CONFINDUSTRIA)
Mr.Euginio Pizzichelli(President of Customs Working Group of
CONFINDUSTRIA)
Mr.G.Battista Nellano(Vice President of Customs Working Group of
CONFINDUSTRIA)
Mr. Donato Di Gaetano (International Affairs Department of CONFINDUSTRIA)
Mr. Giovanni Dioguardi (International Affairs Department of CONFINDUSTRIA)
3-2.
Presentation・配付・入手資料等
(1) CISTEC よりの presentation・配付資料
① Activities of CISTEC(別紙 1)
② Export Control in Japan(別紙 2)
③ Proposal on EU-JAPAN Industries Cooperation for Better Export Control(別紙 5)
(2) 先方からの presentation・入手資料
特になし
3-3. 面談内容
イタリア経済開発省との午前中の面談のあと、午後からローマ(EUR 地区)にある同連盟本部
において国際交流分科会として CONFINDUSTRIA 幹部と初めて面談を行った。イタリアでは
珍しいことだが約束の開始時間より早く到着した当方に合わせ 30 分早く開始し、約束の終了時
間より 30 分遅く終わるということとなった。
先方出席者は同連盟国際化委員会の下部組織で約 50 社が属するという税関ワーキンググルー
プのリーダーでトリノから出張して参加した Pizzichelli 氏と副リーダーNellano 氏、本部で同
WG のコーディネーターを務める弁護士 Camerini 氏、国際部所属で今回通訳を努めた Gaetano
氏、Dioguardi 氏の計5名。
(1)
まず、先方から口頭で CONFINDUSTRIA の概要説明があった。
1910 年に設立されたイタリア産業連盟 CONFINDUSTRIA は製造、建設、エネルギー、交
通、 情報、観光とサービス産業をカバーし、中小企業を含め現在 127000 社の会員企業を
擁するイタリアを代表する産業団体である。起業家育成とともにイタリア企業の国際競争力
強化に大きな役割を果たしている。
同連盟はイタリア議会、政府、組合、他産業団体との頻繁なコンタクトによりコーディネー
ション機能を発揮するとともに、イタリア産業界の利益代表として EU の関連組織とも密
接なコンタクトがある。又、翌日面談した BUSINESSEUROPE のイタリア代表メンバー
として活動している。
(2)
安全保障貿易管理に関し産業界として関心があるのはやはり懸念品目を如何に合理的に
33
マネージするかであると。イタリアでは武器は外務省管轄、デュアルユースは経済開発省管
轄と分かれており多少厄介である。
EU 統一規則の改訂が遅れているが来年 1 月には纏めたいとの EU 側意向もあり、どういう
ことになるのか同連盟としても関心を持ってみている。
パレスチナ問題を抱えるイスラエルを含めイラン、スーダン等懸念国向け取引には注意を払
っているが、シロともクロともいえないグレイ国向け取引に関しては経験や勘を活かしリス
クマネジメント的なアプローチも取りながらケースバイケースで、プラグマティックな判断
をすることが多い。米国、カナダ、日本など全く心配の無い諸国は別として、懸念国は、状
況により変わりうると考えている。
最近特に重荷に感じているのはキャッチオール規制のスクリーニングで、日本ではどのよう
に対応しているのか関心があると。これに対し当方からは、経済産業省が作成したチェック
リストを多くの企業が利用していることを説明した。
(3)
押田専務のアドレスの後、
桜沢事務局から CISTEC の概要をパワーポイント資料で説明。
印象的だったのは先方の反応で、イタリアには CISTEC のような組織は無いということと、
CISTEC の行っているような機能は自分達連盟や政府経済開発省や地域における商工会議
所などが担っているので何故日本において CISTEC のような専門的な組織が存在するのか
について非常に素朴な疑問を見せたこと。この点、ドイツや英国を始めとして比較的すんな
りとその存在意義を理解した諸国とは明らかな相違。
武器輸出が無くデュアルユース管理が中心のわが国と異なり、武器を輸出するイタリアの関
心は先ずは武器輸出管理を如何に効果的に行うかであり、その分デュアルユース品の管理は
わが国に比べはるかに、またドイツ、英国と比較してもおおらかとの印象を得た。
(4)
小林委員が「日本の輸出管理」(Export Control in Japan)のプレゼンテーションを行い
これに沿って以下質疑応答。
先方からは化学品の管理はどのように行っているかとの質問。これに対し、化学品は輸出管
理のみならず、種々の業法があるのでこれら全ての法令に準じて管理を行っていると回答。
(質問の真意はやや不明)
第三国経由の迂回輸出についてはどう考えているかとの質問あり。これに対しては、日本企
業は最終需要者の特定を求められており、可能な範囲で最終需要者を仕向け先として管理を
行っていると回答。
当方から企業の内部規定の整備状況について質問したところ、大企業では大分普及してきた
が、中小企業においてはまだまだとの回答。
AIDA という税関関連電子システムついて質問したところ、何故そんなことまで知っている
のかという反応であったが、先方説明によれば関税の計算等税関業務に的を絞っているよう
で、AIDA があれば STC もカバーできるとは言えない模様。又、AEO に関してもデュアル
ユースの管理には直接機能するものではないとのコメント。
(5)
管轄官庁である経済開発省が約 20 名のスタッフで安全保障貿易管理を行っていることに
関しては英国・ドイツに比べ組織が脆弱であることから同連盟としても問題と認識しており
増員を当局に求めているとのことであった。また、政府への不満が特に大きいのはライセン
ス発行が往々にして 3-4 ヶ月かかっていることで、同連盟としてはイタリア企業が国際競争
力の面で不利にならぬようしっかり見守る必要があると感じていると。
研修に関しては企業向けに CONFINDUSTRIA が地方組織も活用し全国レベルで積極的に
行っているとのこと。
今回イタリアの産業界とは始めての面談であったが、ドイツや英国における対話に比べ、率
34
直に言ってコミュニケーションが取りづらかったことは否めない。最大の理由は、今回が初めて
の面談でありお互いのことを知らなかったこと、当方が相手に何を期待しているかが十分伝わっ
ていなかったことにあろう。また、CONFINDUSTRIA 側とは事務局の英語通訳を介しての対
話となったことによりスピード面、真意や細かいニュアンスの伝達という面で他国での面談と全
く異なっていた点である。
しかしながら、EU 諸国でドイツ・英国・仏に次ぐ経済力を有するイタリアの輸出管理の実態
を面談を通じて垣間見ることが出来たことは極めて有意義であった。英国やドイツはある意味で
EU 内の優等生であり EU ルール以上に厳しい独自規制をかけているが、イタリアはベースとし
ての EU 規制以上の規制は持たず、その運用もおおらかな印象である。わが国はどちらかとい
うと英国・ドイツに近い思想で政府も企業も輸出管理に取り組んでいるが、EU においてもイタ
リアのようなおおらかな運用もあること、またそれでも世界標準からすれば、イタリアは輸出管
理先進国であることは忘れてはならないと感じた。
(2008年11月24日
イタリア産業連盟における記念撮影)
35
4. EU 委員会
4-1. 面談日時等
面談日時:
面談場所:
面談者:
4-2.
11 月 25 日 11:00-12:30
EU 委員会会議室(ブラッセル)
Mr.Dangis Verseckas ( International Relations Officer )
Ms.Françoise Herbouiller ( DG Trade)
Presentation・配付・入手資料等
(1) CISTEC よりの presentation・配付資料
① Activities of CISTEC(別紙 1)
② Current Topics in Export Control in Japan(別紙 3)
(2) 先方からの presentation・入手資料等
① The state of discussions of the 2006 European Commission’s proposals to reform the
EU regime of export control of dual-use items(別紙 12)
4-3. 面談内容
先方より RECASTING の状況についての説明および質疑応答。
総括報告書参照のこと
36
(2008年 EU 委員会事務局における記念撮影)
37
5. 欧州経営者連盟(BUSINESSEUROPE)
5-1. 面談日時等
面談日時:
面談場所:
面談者:
5-2.
11 月 26 日 10:00-12:00
BUSINESSEUROPE 会議室 (ブラッセル)
Mr. Dominique P. Lamoureux (Vice President, Ethics and Corporate
Responsibility)( THALES)
Mr. Wolter Boerman (Vice President, Corporate Export Controls & Supply
Chain Security) (PHILIPS)
Mr. Eoin O’Malley (Senior Adviser, International Relations Department)
(BUSINESSEUROPE)
Presentation・配付・入手資料等
(1) CISTEC よりの presentation・配付資料
① Activities of CISTEC(別紙 1)
② Current Topics in Export Control in Japan(別紙 3)
③ Proposal on EU-JAPAN Industries Cooperation for Better Export Control(別紙 5)
(2)
先方からの presentation・入手資料等
特になし
5-3. 面談内容
(1)
BUSINESSEUROPE の職員である、Mr. O’Malley は今回初めてであるので、
「CISTEC
概 要 」 (Activities of CISTEC) の プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン か ら 紹 介 を し た が 、
BUSINESSEUROPE 輸出管理部会の長を務める、THALES 社の Mr. Lamoureux、及び、
同じ部会の PHILIPS 社 Mr. Boerman
(2 年前 CISTEC が訪問した際の対応者)
は、CISTEC
のことも既によく承知しており、お互いによくわかった専門家同士ということで、グチも入
りながら、なごやかで活発な議論となった。
(2)
お互いの挨拶と「CISTEC 概要」(Activities of CISTEC)のプレゼンテーションが済んだ
冒頭から、Mr. Lamoureux は、「過去の CISTEC からの使節団は印象に残っており、欧州
で同じような組織を作れないかと夢想している」という好意的コメントをし、CISTEC の
教育資格制度について興味を持って質問した。CISTEC の資格を持つことによって特に対
政府という面で何らかの特典・効力がないのか、という点に興味があったようである。「今
は制度的にはないが、世間の認知向上が進みつつある。給料にはなかなか反映されない
が・・・」といった応答があり、笑いに包まれた。
「日本の輸出管理の最近状況」(Current Topics in Export Control in Japan)についてプレ
ゼンテーションを実施した。
主な質疑応答は以下。
Q:「産業構造審議会」とは何か?昔からあったのか?
A:あった。現在 CISTEC の押田がメンバーになっている。
Q:計画中の新しい技術移転の考え方は、米国のみなし輸出と似ている?日本の産業界は反
対している?
A:似ていない。むしろ欧州に近い。産業界の最大の心配は、持ち出し規制だったが、出張
38
等が除外される見込みであり、だいぶ心配は少なくなっている。
Q:日本の海外子会社に日本法に従うように指導している?
A:まず、現地法。しかし、それに加えて、国によっては輸出管理が十分でない国もあるの
で、日本の方針について実施してもらうのが、多くの日本企業のポリシーだろう。
(3) 自由討議
CISTEC で用意したプレゼンが終了した後は、自由討議となった。部外の理解者を得た
せいか、かなりの時間は BUSINESSEUROPE 側の現状に対する説明と不満表明に費やさ
れた感がある。
① EU 決定プロセス
事 前 の 話 題 に 上 げ て い た が 、 BUSINESSEUROPE 側 で 情 報 が 少 な い と い う の で 、
EC1334/2000 の改訂状況について、昨日、EU 委員会で聞いた、来年1Q には決まるだろ
う等、の話をしたところ、
「実は心配している。今までだって」と言い出し、EU のなかな
か先に進まない、複雑な決定プロセスに不満を述べた。
27 ケ 国 も 主 権 を 持 っ た 国 が あ る と 共 通 の 政 策 を 持 つ こ と は 難 し い し 、
Comission/Council/Parliament 等、意思決定のレベルも階層化されており、下のレベルで
ようやく合意した内容が政治的意思決定によってひっくり返されたりと、ゆっくりしたステ
ップでしか進まないようである。いろいろ努力しているが、少ししか進まず、「私は怒って
いる」という表現も飛び出した。今回の改訂についてもブラッセルで 2 月 19 日に大きなま
とめの会議(セミナー、と言っていた)があるが、Council レベルの決定でどうなるか、と
危惧している様子。また、冗談めかしていたが、「正直に話しているけど、帰国後のレポー
トには気を使ってほしい」等のコメントもあった。
② ICT(Intra Community Transfer of Defense Related Products)
事前に CISTEC が準備した話題ではなかったが、大きな進展がありそうなものとして、
BUSINESSEUROPE 側より説明があった。これは、軍事品の移転に関する、ライセンス
の統一・簡素化に関する取り組みである。共通のルールは、Regulation ではなく Directive
として決定される予定、とのこと。
従来、軍事品は EU の中でも各国の主権の及ぶものとして、これまで、ばらばらの許可制
度であってその都度各国の許可が必要であったが、現在の素案の中では、始めて Certified
Company の考え方が取り入れられ、Certified Company については、一つの国の許可を取
れば、他の EU の国の許可を取ることなく、域内での輸出が可能になることや、また域外
への輸出についても、限定された優良顧客(Designated certifeid Company 等と言ってい
た)への統一的許可を可能にする等の内容が盛り込まれている模様である。ライセンスにも
グローバルライセンス、ジェネラルライセンスの二つの種類が検討されていて、対象となる
品目や運用に違いがある、とのこと。
「米国の VEU はうまく機能していないようだが、日本では真剣に検討している。誰が
Certified Company を決めるのか、EU か?各国か?」等、質問したが、いろいろなことが
決まっておらず、「わからない」との返事であった。
Mr. Lamoureux は 10 年前から、この Certified Company コンセプトの推進者であるが、
「なかなか難しい考え方のようだ。各企業がその管理責任を増やす事等と引き換えに簡素化
を狙ったものであり、同じ輸出管理仲間でもドイツには反対されたし・・・」とのグチも出
た。しかし、軍事品は、EU27 ケ国が絡む訳ではなく、6-7 ケ国であり、産業界は乗り気
なので、合意は、比較すれば容易で、あと2週間程度で決着するのではないか、とのこと。
③ SAFER WORLD
CISTEC からの EU 輸出許可基準の質問に一般的に答えた中で、2 つの機微な事項として、
39
人権と支払能力をあげた。これに関連して、英国系 NGO の SAFER WORLD が最近出し
たレポートでいいものがある、との紹介があった。
④ 米国再輸出規制
US コンテンツ品に対しては EU として統一ルール等は存在せず、それぞれ対応しているの
が実情であり、Philips 社の輸出管理責任者(前回の訪問でも面会)によれば、彼の仕事の
80%は国内法令でなく米国再輸出規制への対応、とのこと。ECCN についてもサプライヤ
に必ず聞いてはいるが、最後は自分でやっており、BIS に申請し許可をもらうこともある由。
OFAC については、「話なんかできる相手ではない」とのコメントがあったので、「実は
CISTEC は 2 回も会ったよ」とコメントすると、日本語で「こわい」等、驚きの声が上が
った。
CISTEC が昨年 BIS に対し、Design Out の事例を説明し働きかけをしたところ、多少の効
果が出て来た事を説明し、その時渡したレターの写しを渡しところ、感謝された。
また、UK と米国では、二国間の条約を結んで一定の品目についての簡素化を図る等の取り
決めがあるそうで、Mr. Lamoureux によれば、この 2 国間では諜報活動情報が共有化され
ているからだろう、とのコメントもあり、対米対応ということで必ずしも EU はまとまっ
ていない、という印象を持った。
(4)
CISTEC からの協力提案
時間もなくなってきたので、最後に「よりよい輸出管理の為の欧州-日本産業界協力提案」
(Proposal on EU-JAPAN Industries Cooperation for Better Export Control:別紙 5)に基
づき、プレゼンを実施し、理解を得た。
(2008年11月26日
BUSINESSEUROPE における記念撮影)
40
6.
ドイツ連邦経済技術省(BMWi、BAFA)
6-1. 面談日時等
面談日時:
面談場所:
面談者:
6-2.
11 月 27 日 10:00~13:00
BMWi(ドイツ連邦経済技術省)会議室
Dr. Alexander von Portatius( Head of Division, Export Controls, Federal
Ministry of Economics and Technology)
Mr. Bengt Beyer( Deputy Head of Division, Division VB4, Foreign Trade Policy,
Export Controls, Federal Ministry of Economics and Technology)
Ms. Andrea Virginia Richter(Deputy Head of Division, Division VB4, Foreign
Trade Policy, Export Controls, Federal Ministry of Economics and Technology)
Mr. Otfried Stibits,(Dipom-Ingenieur Division of Export Controls, Federal
Ministry of Economics and Technology)
Mr. Kai Kristian Kiessler(Deputy Head of Division, Export Control: Basic
Principles/Procedures, Federal Office of Economics and Export Control) (BAFA)
Mr. Volker Anders(Deputy Head of Division, Press and Public Relations,
Cooperation with National and International Authorities, Industry Outreach,
Federal Office of Economics and Export Control) (BAFA)
Dr. Ursina Krumpholz(Head of Division, Foreign Trade Legislation, Federal
Ministry of Economics and Technology)(ベルリンからTV会議で参加)
Dr. Walter Werner(Head of Division, Export Controls regarding Armaments,
Federal Ministry of Economics and Technology)(ベルリンからTV会議で参加)
Presentation ・配付・入手資料等
(1) CISTEC よりの presentation・配付資料
① Activities of CISTEC(別紙 1)
② Current Topics in Export Control in Japan(別紙 3)
(2)
先方からの presentation・入手資料等
特になし
6-3. 面談内容
6-3-1.ドイツの輸出管理当局
ドイツの輸出管理当局は、連邦経済技術省(BMWi)とその傘下の経済・輸出管理局(BAFA)
である。BMWi の Export Controls Division が政策を決定し、BAFA が(武器品目を除いて)
許可申請窓口となる。
BMWi /BAFA 側出席者 6 名の内、前回お会いしたのは Dr. Portatius(BMWi)のみである。
他の 5 名は最近輸出管理部門に配属された人ばかり。加えて、ベルリンからも BMWi の 2 名が
テレビ電話での参加となった。
Dr. Portatius のウェルカムスピーチの後、各自自己紹介。押田専務理事の挨拶に続いて、互い
のプレゼンテーションと質疑応答・意見交換を行った。面談時間は予定の 2 時間を大幅に超過
して、結局、約 3 時間に亘った。今回の訪問先の中では、英国での対話と並んで、最も活発な
質疑応答と意見交換が交わされた場であり、国際交流の意義が特に深かったように感じられた。
41
また、Dr. Portatius から「CISTEC のような組織はドイツにもないし、このような役割を果た
す組織は他の国にもないと思う。日本政府とも密接で良好な関係を保っていることは非常に良い
ことだと思う。
」とのコメントもあった。
6-3-2.「CISTEC 概要」(Activities of CISTEC)紹介関連の質疑応答・意見交換
① CISTEC によるセミナー
[ドイツ側質問]
CISTEC は日本企業に対するセミナー、コンサルテーションを行っているが、対象は
CISTEC のメンバーに限定しているのか。
[CISTEC 側回答]
メンバーに限定せず誰にでもオープンにしている。メンバーには割引料金を適用している。
[ドイツ側質問]
セミナーの講師は、CISTEC やそのメンバーが務めるのか、経済産業省が担当するのか。
[CISTEC 側回答]
内容によって CISTEC やメンバー企業が行うケースと、政府側から説明するケースがある。
大幅な法令改正に関する説明は経済産業省が行っている。
② 国際アウトリーチ
[ドイツ側質問]
国際アウトリーチ活動は外交政策によるものか、CISTEC 単独によるものか。
[CISTEC 側回答]
日本政府(経済産業省)の対外政策活動である。
③ 所轄官庁
[ドイツ側質問]
ドイツでは輸出管理に多くの政府機関が関与しているが、日本で輸出管理を担当している官
庁・機関はどことどこか。
[CISTEC 側回答]
日本では、輸出管理の管轄は経済産業省に一元化されている。
④ 懸念顧客情報や違反事例の公開
[ドイツ側質問]
CISTEC が提供しているエンドユーザー情報の対象はどのようなものか。大量破壊兵器に
関連するユーザーか、その疑いがあるユーザーも含まれるのか。日本の法令違反事例も含め
て、そのような情報の公開は日本の法令上、問題はないか。
[CISTEC 側回答]
CISTEC は米国の調査機関からデータベースを購入している。公表すること自体は、日本
の法律上は可能だが、情報提供者との契約条件から、情報は CISTEC のメンバーに限定し
て提供している。CISTEC が提供しているデータベースには、大量破壊兵器への関与が懸
念されるユーザーとして、経済産業省が公表している外国ユーザーリスト以外にも、
ENTITY LIST 等も含まれ、恐らくドイツ政府の Early Warning List も含まれていると思
う。
[ドイツ側コメント]
BAFA は Early Warning List を公表せずに、産業団体等への提供に限定している。
[CISTEC 側質問]
42
ドイツでは、輸出者が自分の顧客についてチェックしたい場合には、政府に問い合わせるこ
とが出来るか。
[ドイツ側回答]
BAFA に問い合わせてもらえれば、BAFA が調べて回答する。産業団体等を通して Early
Warning List を参照することもできる。Early Warning List を公開していないのは、掲載
されている企業がそれを知って他の名称を使うなどの方法で対処することを避けるためで
ある。
*ドイツを含めて欧州では(英国を除いて)
、所管官庁から違反事例を公表することは殆どない。
米国や日本のように違反(や違反に対する制裁・警告)を公表することの抑止効果と、違反
事例公表に対する国内法による制限との兼ね合いがあるように思われる。
⑤ CISTEC のコンサルティング機能
[ドイツ側質問]
CISTEC は産業界に対するコンサルティング機能を持つが、CISTEC 内におけるメンバー
企業の役割は何か。
[CISTEC 側回答]
CISTEC のコンサルティングサービスは、一般的な項番判定や法律的なサービス範囲にと
どまっており、個別の項番や許可要否の判断については、CISTEC に権限はなく、経済産
業省の権限範囲となる。
6-3-3.「最近の輸出管理上のトピックス」関連の質疑応答・意見交換
一昨年訪問した際には、日本の管理制度についてさほど興味がある様には思えなかったが、今
回は細かなことまで知りたがっていた。仲介貿易や技術移転の規制など、欧州でも議論の対象と
なっている点に特に質問が集中した。新たに担当することになった人が多いこともあるが、Dr.
Portatius が率先して質問していたことが印象的であった。
①
仲介貿易
[ドイツ側コメント]
ドイツでも、軍事品目については仲介貿易を規制している。また、デュアルユース品につ
いては、EU 統一規則の Annex Ⅳに限定して仲介貿易を規制している。
[ドイツ側質問]
汎用品の仲介貿易について、日本はホワイト 26 カ国を仲介貿易取引規制の対象外としてい
るが、EU だけでも 27 カ国になる。EU は 27 カ国を纏めて一つの国として数えているのか。
[CISTEC 側回答]
EU 加盟国はそれぞれを一つ一つの国として数えている。仲介貿易管理の対象から外れる
26 カ国の中には、多くの EU 加盟国が含まれる。但し、4 つのレジームに加盟し、キャッ
チオール規制を導入している国というのが基準であり、レジームに加盟していない EU 加
盟国はホワイト 26 カ国には入っていない。
*EU をまとめて 1 カ国」というのは半分冗談だが、EU 加盟国は EU 統一規則(4 つのレ
ジームの規制リストを取り込んだリストによるリスト規制とキャッチオール規制に対応)を
遵守しているのだから全てホワイト国として扱ってもらいたいと考えている様子が窺えた。
[ドイツ側説明]
EU 統一規則における仲介貿易(Brokering)の規制については、2006 年末の見直し案の
43
提示から既に 2 年も議論を重ねてきており、今後 6 カ月程度で合意に達することができる
のではないかと考えている。(EU では、なにごとも議論が出尽くして疲れきって(pure
fatigue)から結論が出るのが常である。)
②
通過と積替え規制
[ドイツ側質問]
積替え規制に関し、日本では通過と積替えとをどのように区別しているか。
[CISTEC 側回答]
日本では積替えだけ規制対象としており、通過に対する規制はない。
③
軍事品目の通過規制
[ドイツ側質問]
日本では軍事品目の通過に対する規制はあるか。
[CISTEC 側回答]
積替えと仲介貿易取引と CA 規制だけであり、通過に関しては、定義もルールも定めていな
い。
④
少額特例
[ドイツ側コメント]
少額特例はドイツにはない。リビア向けには最大 100 万円まで少額特例が使えるようにな
ったのは興味深い。
⑤
STC Certificate システム
[ドイツ側質問]
Certificate は個人に与えられるものか、それとも(所属する)企業に与えられるものか。
[CISTEC 側回答]
Certificate は輸出管理に関する知識を備えた個人に与えられるものであって、企業に対す
るものではない。又、CISTEC 独自の Certificate システムであり、政府の認定試験ではな
い。
⑥
通常兵器関連補完規制(軍事用途キャッチオール規制)
[ドイツ側・コメント質問]
Military End Use 規制について、何故 32 品目の規制リストを追加で設けることが必要な
のか。
[CISTEC 側回答]
これらの品目は、軍事用途への転用の可能性が高いという理由で経済産業省が選んだもので
あって、品目を限定しているという点において、EU が採用しているような「キャッチオー
ル規制」と呼ぶのは適切ではないかもしれない。
[ドイツ側質問]
規制対象となる 32 品目はどのような品目か。
[CISTEC 側回答]
持参した資料(Overview of Japan’s Export Control:別紙 6)に記載してある 32 品目に示
されている。
[ドイツ側質問]
経済産業省によるインフォームがなされる場合、経済産業省はどの様にして情報をつかんで
いるのか。
44
[CISTEC 側回答]
我々は経済産業省ではないのでそのような情報はつかんでいない。
*実質的に Military End Use 規制として導入したものについて、なぜ特定の品目を指定し
たリストが必要なのか、リストで品目を限定することの意味は何か、ドイツ側は納得しな
かった。本来、ドイツや EU が採用しているような、非リスト規制品の軍事用途キャッチ
オール規制という趣旨であれば、
「非リスト規制品」をリストで規制するという方法は趣旨
に合致しないという主張はもっともである。
日本の法制度において、規制対象国を武器禁輸国に限定せずに非ホワイト国に拡大した
代わりに規制品目を限定するような仕組みになった事情については、今回、あえてドイツ
側に詳述しなかった。
⑦
技術移転の規制
[ドイツ側コメント・質問]
ドイツでも技術移転のあり方は多くの議論を呼んでいる。日本では、居住性を基準にした
規制からボーダー規制への移行にあたって、日本を出国しようとする日本人が必要な許可
申請を行わないときに、出国をどのようにして阻止することができるのか。ドイツでは基
本的人権との関係からそのような場合に出国を阻止することは法的に難しい
[CISTEC 側回答]
日本からの出張者等が、日本への持ち帰りを前提として技術を海外に持ち出す場合は規制
の対象外とすることになっている。これは産業界からの要望を配慮したものであり、この
規制除外は、産業界がボーダー規制への移行に同意した理由の一つである。
[ドイツ側質問・コメント]
規制対象技術で個人の頭の中にあるものを他人に移すということは含まれないのか。
海外にいる日本人が規制対象となったり、日本にいる外国人が許可不要になるというのは、
驚きである。
[CISTEC 側回答]
これは、日本人に対しては、世界中どこにいてもコントロールしようとする考え。常に米
国の規制を考慮している。
技術移転は、日―日、日―外、外―外 3 つのタイプで起こるが、日―日、外―外の場合に
は、技術を提供する人が、この技術が WMD 開発等に最終的に使用されることを知った場
合には、許可を必要とする。
[ドイツ側質問]
日本に外国人が入ってくる際に、VISA によってスクリーニングすることはあるのか。
[CISTEC 側回答]
そのようなことは経済産業省ではなく外務省の範疇であるが、VISA によるコントロール
はしていない。
⑧ イラン、北朝鮮等に対する経済制裁
[ドイツ側コメント・質問]
国連安保理決議による制裁に対しては、EU 規則で実行している。イランへの制裁は
Council Regulation (EC) No 423/2007 of 19 April 2007 から始まっており、最新のイラン
への追加制裁は 11 月に改訂されている(Council Regulation (EC) No. 1110/2008 of 10
November 2008)。
EU では、国連安保理決議による制裁に加えて、全面的な武器禁輸やデュアルユース品の
追加規制があり、更に、技術サービス、金融サービス、投資等を厳格に規制している。EU
規則では、Bank Melli と Bank SEPA に対しても経済制裁措置を講じている。
45
[ドイツ側質問]
日本も EU と同様に追加の経済制裁を行っているか。
[CISTEC 側回答]
日本の銀行も国連安保理制裁措置に基づいて対応している。なお、日本の規制は国連安保
理決議に基づくものであって、米国の規制に従うものではない。
[ドイツ側質問]
ドイツでは北朝鮮との取引は殆どないが、EU では北朝鮮に対しても国連安保理決議に基
づいて贅沢品を規制しており、
「贅沢品」の範囲は EU でも決めている。運用については
多くの問い合わせがある。内部ガイダンスとして 5,000 ユーロを超えるものは贅沢品とみ
なしている。日本では贅沢品としての規制品目をどのように決めているのか。
[CISTEC 側回答]
日本では、北朝鮮からの輸入や北朝鮮籍船舶の寄港も禁止している。国連安保理決議によ
る北朝鮮への贅沢品の輸出規制については日本が主導した。贅沢品については、金正日書
記の個人的な好みを良く知っている元側近から知らされた情報に基づいている。
6-3-4.ドイツの規制動向関連の質疑応答・意見交換
①
アウトリーチ活動
[ドイツ側説明]
過去2年間の特記事項としては、Home Page を改善し、重要と思われる産業界向けに毎
年輸出管理のイベントを開催している。又、英国同様に、輸出に潜む危険と安全保障貿易
管理の ICP にどう対応するかを指導するフィルムを作成した。今年度は、初めて、政府の
活動の一部として輸出管理にこれから取り組む企業のための教育説明会を実施した。輸出
入条件に関するサービスを申し込んでいる 300 社ほどに案内を出し、その内、約 50 社が
参加したもので、輸出管理の基礎をフランクフルトでの1日コースで説明した。
[CISTEC 側質問]
ロシア等に対する国際的なアウトリーチ活動を行っているのか。
[ドイツ側回答]
BAFA は EU との間でアウトリーチ活動に関する契約を結んでおり、最近では、ロシア
に加えて、旧ユーゴスラビア諸国、ウクライナ、UAE、中国、マレーシア、ベトナムでも
行っている。
[CISTEC 側質問]
アウトリーチ活動は、GG(政府間)ベースか、その国の産業界も対象に含むのか。
[ドイツ側回答]
国によって異なる。中国については、中国政府に対してのアウトリーチと同時に、中国の 産
業界に対しても意識向上の手助けをしている。一方、EU への加盟に向けて動いているウ
クライナに対しては、加盟の条件を満たすような輸出管理政策や体制の確立に向けて支援
している。
②
仲介貿易
[ドイツ側説明]
EU 統一規則の中の仲介貿易取引の用語として、Intermediary Service から Brokering
Service に統一することにした。又、統一規則における Brokering Service の定義は下記の
ようなものである。
Brokering Service shall mean the negotiation or arrangement of transaction for the
purchases, sales, or supply of dual-use items listed in ANNEX I from a third country to
46
any other third country; and the selling, buying of dual-use items listed in ANNEX I
that are located in third countries for their transfer to another third country.
ANNEX1は、全て Brokering Control の対象品目。これが WMD や軍事を目的として使
用される背景がある場合には許可の対象となる。
③
外資規制強化
[ドイツ側説明]
ドイツは、外資によるドイツ企業の株式取得規制を強化する対外経済法(Foreign Trade
Act)改正法案を閣議決定した(8 月 20 日)
。
現行法では、外資によるドイツ企業の買収が規制されるのは防衛関連産業や暗号システム
及びハイテクの場合などに限定されている。改正法案は、対象業種を指定せずに全産業に
ついて、外資がドイツ企業の議決権 25%以上を取得しようとする場合に、
「公共の秩序及
び安全」を理由に、ドイツ政府による審査を義務付けることができるようにする。
外国投資の規制強化ではあるが、議決権 25%という基準と、
「公共の秩序及び安全」の判
断に厳格な基準を要求する EC 条約やドイツでの裁判等による制約から、審査の対象とな
る案件やその審査結果としての投資拒否に至るケースはかなり限定されるものと BMWi
では捉えている。
ドイツは、軍事関係も含めて外国からの投資に対してかなりオープンであり、過去 4 年
間で 10~15 件程度が審査の対象となったが、これまで投資を中止させたことはない。産
業界と協力して落とし所を探ってきている。
*日本でも話題になったJパワー等をめぐる外国投資規制(改正外為法)や米国の外資規制
(CFIUS/エクソン・フロリオ条項)と似たような動きであり、外資導入にブレーキをか
けるものとして産業界から批判もある。報道によれば、中国、ロシア、中東諸国等の政府
系ファンドによる基幹産業買収に対する防衛がきっかけとのことである。なお、法案成立
には、今後、連邦議会と連邦参議院での承認が必要であり、ドイツ政府は 2009 年前半の
成立を目指している様子である。
④
無形技術移転に関する Best Practice
[CISTEC 側質問]
EU 委員会を訪問した際に、ドイツは無形技術移転に関する Best Practice を提言して
いると聞いたがそれはどのようなものか
[ドイツ側回答]
この initiative はレジームが関与しているので良く知られており、技術の無形移転
に関する様々な側面を扱っている。媒体に入っている技術と頭の中にある技術とに分けて、
それぞれに対して、3つの段階(許可発行前、許可発行時、許可発行後)を明確にして、
awareness 向上のためになすべきこと、許可申請の審査においてなすべきこと、そして、
法の執行をどのようになすべきか、を検討している。
Home page などでは未公開だが、日本では経済産業省がこの Best Practice を持っている。
⑤ EU 統一規則の見直し(審査期間)
[ドイツ側説明]
仲介貿易(Brokering)規制の導入などに加えて、透明性の向上などを目的に、参加国
の許可審査期間の上限(例えば 20 日間)を規則で義務付けるとの提案もあるが、ドイツ
としてはこれに反対しており、合意には至っていない。ドイツではデュアルユース案件だ
けでも年間に約 8,000 件の許可申請を扱っており、申請件数の少ない国と一律に審査期限
を定めることは適切ではないと考えている。
47
⑥
EU 統一規則の見直し(ICP)
[ドイツ側説明]
Global License を認める条件として輸出企業に ICP 制定を義務付ける案は EU 内で議
論されたが、認められていない。
⑦
EU 統一規則の見直し(輸出の定義)
[ドイツ側説明]
「輸出」の定義として、技術を誰でもダウンロードできるように(例えばインターネット
上に公開)することが含まれるという点が検討されている。
これは、ドイツにとっては、別に新しい規制でもなく、現行規制の明確化に過ぎない。
⑧
イラン
[ドイツ側説明]
イランは重要な貿易相手国であるが、ドイツは国連及び EU による制裁を厳格に実行し
ている。
⑨
中国
[ドイツ側説明]
中国も重要な市場であるが、ドイツでは EU の武器禁輸を厳格に実施している。
軍の傘下から民生事業に進出した企業(“mixed user“)の扱いには特に留意している。
現在でも軍事に関与している可能性もある。
輸入証明書については中国政府との特別な合意があり、商務部は積極的に証明を発行
してくれる。
エンドユースについては十分なチェックが必要であり、外国政府の持っている懸念情
報等も含めて、全ての情報を考慮しなければならない。
⑩
ロシア
[ドイツ側説明]
ロシアは武器禁輸の対象ではないが、中国と同様に、軍関連企業には注意している。
⑪
違反事例
[ドイツ側説明]
リビア関連では、ドイツの技術者が武器管理法(War Weapons Control Act)違反で 2 年
半の判決を受けた例がある。これは、リビアの核開発用の遠心分離機に用いられる管の
製造について南アフリカや他国の技術者を支援したことによる。
2008 年(6 月末)には、油圧シリンダをインドのミサイル開発計画用に輸出した 2 名(ウ
ンナの会社、輸出は 1990 年代末)に、それぞれ 3 年 10 カ月と 2 年 4 カ月の判決が下さ
れた。油圧シリンダは橋の建設車両用に輸出したとの主張は認められなかった。
48
(2008年11月27日
ドイツ連邦経済技術省における記念撮影)
49
7. 英国宇宙防衛輸出産業団体 (EGAD:Export Group for Aerospace & Defence)
7-1. 面談日時等
面談日時:11 月 28 日 10:00-12:00
面談場所:DMA 会議室
面談者: Mr. David Hayes (Chairman, Export Controls for Aerospace & Defence)
Mr. Michael Bell(EGAD Committee member, BAE Systems)
Mr. Barry Fletcher(EGAD Committee member, Fletcher International Export
Consultancy)
Mr. Brinley Salzmann(Secretary of EGAD, Exports Director of DMA)
7-2.
Presentation・配付・入手資料等
(1)
CISTEC よりの presentation・配付資料
① Activities of CISTEC(別紙 1)
② Export Control in Japan(別紙 2)
③ Proposal on EU-JAPAN Industries Cooperation for Better Export Control(別紙 5)
(2) 先方からの presentation・入手資料
① Trade Controls(別紙 13)
7-3. 面談内容
11 月 28 日英国ロンドンで EGAD 幹部と面談を行った。
先方は元ロールスロイスの輸出管理責任者であった Hayes 会長以下、BAE システムの Bell 氏、
元 DTI でワッセナー・アレンジメントの英国政府代表を務めた Flecther 氏、
事務局の Salzmann
氏。
(1)
EGAD は非営利の企業団体で、貿易管理を中心に、APPSS(警察、公共安全供給者協会)、
SBAC(英国海事装備品協会)、DMA(防衛品製造者協会)
、SBAC(英国宇宙会社協会)
、SMI
(海事産業協会)などとも連携した活動を行っている。本年 9 月にはパリで各国関係者を集
め、EXPORT & SECURITY CONTROLS IN THE GLOBALISED ENVIRONMENT OF
(これには、元三井物産安全保障貿易管
THE 21ST CENTURY CONFERENCE を開催した。
理室長で元国際交流分科会委員の渡邊氏(現 MK TECHNOLOGY ASSOCIATE)も参加さ
れた)
(2)
押田専務のアドレスに続き桜沢事務局から CISTEC 概要(Activities of CISTEC)を説明、
これに対し以下質問が出た。今回の面談の中では EGAD が CISTEC の活動に最も関心を示
した。
・ 次回アジアセミナーはいつ開催されるのか。
・ CISTEC の委員会、分科会、WG の会合が年間 300 回開催されていることに対し、本当にこ
れだけの活動をしているのかと驚いた様子であった。
・ CISTEC 認証制度に関心を示し、Expert が 17%の合格率であることにつき難しすぎるので
はというコメントがあった。会長からは EGAD もクランフィールド大学(Cranfield
50
University)と共同で 4 つのレベルに分けた研修を行っており、終了者には修了証を授与し
ているとの説明。但し CISTEC 認定同様に政府 BERR のお墨付きのついたものとはなって
いない由。
・ CISTEC の研修は有償かとの質問あり、YES と回答したが、EGAD の研修は基本的には無
償とのこと。
(3)
小林委員からわが国の輸出管理制度をパワーポイントで説明。これに関し以下質問があり、
その後活発な意見交換があった。
・ 日本では技術移転に関し見直しが行われているようだがどのようなものか?米国の Deemed
Export のようなものなのか?
・ これに対し最近状況のパワーポイントで、現在産構審安全保障貿易管理小委員会で検討され
ている内容を説明した。頭の中に入っている規制情報を規制しない仕組みについては、「管
理できない状況については実際には極めて管理が難しいが、不可能としてしまうことで良い
のかという普遍的な問題意識がある」とのコメントがあった。
・ 一方、輸出規制に関しては軍事産業が英国の GDP の 2%を占めているのに対し、輸出許可
申請においては 66%を占めているとのこと。
・ わが国において規制リストはどの程度の頻度で改訂されるのか質問があった。これに対し基
本的には国際レジームに完全に準拠していると回答したところ、レジーム決定からどのくら
い遅れて法制化されるのかとの追加質問有り。ケースバイケースだが約1年から 1.5 年かか
っていると回答したところ、武器に関しては英国ではこれよりずっと早い対応となっている
とのこと。
・ わが国で規制リストの国際標準化を検討していることに関し、欧州、米国のどちらに近いの
かとの質問有り。基本的には欧州、米国の規制コードは似通っていると了解しており現段階
でどちらに近いものとなるかは言えないが、欧州に近い形になるのではないかと回答。
・ 技術移転規制に関しては、英国産業界としても極めて重要かつ懸念の大きい事柄と認識して
いると。特に、Record Keeping が義務付けられているのでこれに関するコストが馬鹿に成
らないと。また、いかなる技術移転が規制されるべきなのかについても曖昧であり、これも
頭痛の種。当方から、前回の面談の際、航空機関連で国際共同開発等においては一種のイン
トラネットによる情報共有が不可欠で新たな技術移転規制がかかると多大な影響があると
の問題認識が示されたがこれに変化はあるかと質問したところ、引き続き大きな問題である、
但し日本のような国との間ではさして問題にならないがインドなどとの共同開発において
は面倒なことになっているとの回答。
・ 個人的な規制技術へのアクセスについては、現行の Open License が使い勝手が良いとの意
見。
・ EU コミッティーとの関係については、英国はドイツと並んでイニシアチブを取る立場とな
っているようだが、EU 全体の統一規則を目指すコミッティーの方向性は理解するものの現
実に 27 カ国の状況に大きな格差があるだけに、EGAD としても現状は Unhappy に感じて
いる。
・ 米国再輸出規制については、極めて問題が大きいとの認識。特に Deemed Reexport に関し
ては人権関連法令、人種による差別禁止法令など欧州、英国の法令に抵触することになり、
大きな問題となっている。EGAD としては欧州・英国法と米国再輸出規制のどちらを遵守す
るかは企業判断に任せているとしているが、実態としては人権問題が大きな問題となる可能
性より、米国のブラックリストに掲載されるリスクの方がはるかに影響が大きいことから、
米国再輸出規制を守っている企業が多いだろうと。
(4)
高野団長から CISTEC と EGAD の協力提案(Proposal on EU-JAPAN Industries
51
Cooperation for Better Export Control:別紙 5)を行った。
最後に日欧の産業界で規制緩和、管理優良企業に対するインセンティブ強化を働きかけようと
いうプロポーザルに対し、EGAD 側は大賛成であるとの反応。英国においても輸出管理をきち
んと行っている企業は大企業に限られており、また、許可申請を行う分野も武器関連等が圧倒的
に多いこともあり、中小企業の関心は薄い。ただ、それ自体は深刻な問題とは捉えておらず、む
しろ現行制度より最終用途チェックをベースとした管理の方が良いのではないかと感じている
と。
ワッセナー・アレンジメントに関しては、英国は常に規制緩和の方向でプロポーザルを出して
きたが、規制強化を望む米国に常に阻まれてきており、この点米国の横暴さには不満があるとの
こと。
英国においては武器輸出規制が関心の中心である為か、過去の面談においては都度彼我の認識
や関心のずれを感じてきたが、今回も EGAD という宇宙防衛関係の団体だけにややもすると武
器輸出の観点からの関心や質疑応答になりがちではあったものの、以前に比べればはるかに実質
的で、ポイントはきちんと噛み合った議論となった。
特に先方は日本の輸出規制動向に相当な関心を持ち、彼ら自身で仕入れた技術移転規制変更案な
ど最新情報を基に質問してくるなど双方向での意見交換となったことが印象的であった。EGAD
会長が元ロールスロイスの輸出管理責任者であり、BAE システムの BELL 氏も同様に軍事関連
のプロだが、両名ともこれまで常に CISTEC 調査団とは面談してきた仁。これまで毎回継続的
に色々な切口から意見交換を重ねてきたことで CISTEC が価値ある対話相手として認知され始
めたものと感じた。
(2008年11月28日
英国宇宙防衛輸出産業団体における記念撮影)
52
8. 英国ビジネス・企業・規制改革省(BERR:Department for Business Enterprise and
Regulatory Reform)
8-1. 面談日時等
面談日時:11 月 28 日 13:00-16:00
面談場所:Baker& McKenzie 事務所、London
面談者: Mr. Chris Parker(BSc, CEng, MIET, Head of Business Development & Awareness
Unit, Export Control Organisation)
Mr. Christopher Chew(BSc, CEng, MIET, Business Development & Awareness
Unit, Export Control Organization)
Mr. David Graham (Foreign & Commonwealth Office)
8-2.
Presentation・配付・入手資料等
(1) CISTEC よりの presentation・配付資料
① Activities of CISTEC(別紙 1)
② Current Topics in Export Control in Japan(別紙 3)
(2) 先方からの presentation・入手資料等
① Export Control Organization Meeting with CISTEC 28 November 2008(別紙 14)
8-3. 面談内容
8-3-1.
英国輸出管理組織と活動
英国は 2007 年 5 月より DTI から変更され輸出管理を引き継いだ BERR の中の組織である
ECO(Export Control Organization)が輸出管理を担当し、デュアル・ユース及び軍事品目の全
てに関する輸出許可発行の責を担っている。約 90 名の人員から成り、年間運営予算は 4 百万ポ
ンド。年間処理件数は 12,000 件。
英国全体の輸出管理組織は、以下の省庁が BERR と連携しながら、戦略的な輸出管理を通して
世界の安全保障を推進することを目指している。
この目標は具体的には、膨大な量のライセンス申請を効率よく素早く処理すること、および国際
的な方針にそぐわない輸出は許可しない事である。
・
・
・
・
外務省 FCO(Foreign & Commonwealth Office)
国防省 MoD(Ministry of Defence)
国際開発省 DFID(Department for International Development)
歳入税関庁 HMRC(Her Majesty’s Revenue & Customs)
輸出審査には EU の Code of Conduct を尊重した上での下記の 8 項目の英国の基準(クライテ
リア)が重視されている。
1. UK’s International Commitments
2. Internal Repression
3. Internal Situation of recipient county
4. Regional Stability
5. National Security of UK and allies
53
6. Behaviour of recipient country
7. Diversion
8. Economic Sustainability
http://www.berr.gov.uk/files/file46537.doc
8-3-2.外務省 FCO(Foreign & Commonwealth Office)
外務省は文字通り外交政策を担当しており、英国の国際的な政策およびヨーロッパの方針との
調整を行い主導する役割を担う。EU など国際的組織内では英国の立場での交渉を行い、条約や
協定、輸出管理枠組みなどを具体化する。FCO はその国際交渉において MoD, BERR, Customs
等の支援を受け、テクニカルワーキンググループにおいてもそれら部門からの専門家に責任を委
譲したりしながら協力体制をとっている。
CPD(Counter Proliferation Department)は BERR の輸出管理当局 ECO に対し、部内に回
された全ての輸出ライセンス申請についてのアドバイスを行う。CPD は輸出管理において外務
省を主導する部門であり、WMD やその搬送にかかわる技術(弾道ミサイルなど)拡散を防止し、
可能な場所においては元の状態に戻す役割を担う。CPD は輸出管理方針の中で、軍事、デュア
ルユース品等の許認可において FOC が果すべき役割についての責任を負う。
http://collections.europarchive.org/tna/20080205132101/www.fco.gov.uk/servlet/Front%3Fpa
gename=OpenMarket/Xcelerate/ShowPage&c=Page&cid=1030522523536
CPD の Export Licensing Team は輸出ライセンス申請について確認し、外務省内の他部門から
のアドバイスを求めたりする。それら他部門には、International Organizations Department、
Human Right Democracy and Good Governance, Country desks and missions in country と
いったものがある。また、CPD の Export Licensing Team はそれら他部門のアドバイスが、英
国の輸出方針の統合基準と矛盾しないか、的を射ているかを確認、稀少なケースは大臣への報告
を行ったりする。年次報告書作成においても重要な役割を果している。
8-3-3.MoD(Ministry of Defence)国防省
MoD は国防、安全保障政策を担当し輸出業務方針の管理を行う。
輸出において MoD はライセンス方針の実施に重点を置き、輸出ライセンスのプロセスに焦点を
当てる。 MoD は同様に MoD 内部他部門のアドバイスを求める。他部門とは、Defence
Intelligence Staff, Defence Security (Science and Technology) 、 Equipment Capability
Protection, Counter Proliferation Arms Control Secretariat, DSTL Porton Down for CBW
expertise といったものがある。MoD はそれらの提言を作成するとともに、それが英国の統合基
準や方針に矛盾しないかを確認する。
8-3-4.DFID(Department for International Development)国際開発省
国際開発省の総合的な目的は世界の貧困をなくすことであり、具体的なミレニアム開発目標
(MDG)の達成を通じて持続可能な開発を推進する事である。MDG は 2000 年の国連のミレニ
アムサミットで合意され、2008 年現在約 190 ヶ国でサインされている。貧困救済、教育など 8
つの目標からなる。http://www.dfid.gov.uk/mdg/
DFID はライセンス申請について、IDA(International Development Agency)のローンが実行可
能である国かの確認をする。また、受け取る国の技術、経済面から武器輸出の整合性について意
見する(基準8との照合) 基準価格を超えるライセンスについては DFID へ回される(基準は国
に拠って異なり一定ではない)。
54
8-3-5.BERR(Department for Business)ECO
ECO(Export Control Organisation)は BERR の輸出管理を担う組織である。政策部門は国
際舞台における輸出管理政策の策定について FCO(および MoD)をサポートする。
ECO は EC 法制度の責を担うブラッセル(EU)のデュアルユース品作業部会を英国の立場でリ
ードしている。輸出管理関係法令の法案の多くについて実施責任部門。産業界その他の関係者へ
新規法案や修正案等立法時に説明を行うとともに、適用範囲や規制の変更において産業界の意見
を求めたり規制の影響分析を行う。
ECO は英国での戦略的な輸出管理権限を持つ機関であり、すべての軍事、核、デュアルユー
スについてのライセンスを取扱い、BERR(ビジネス・企業・規制改革省)大臣の名で輸出許可を
発行する。また、年次報告書の殆どのデータ作成を担当する。BERR の隔週の情報共有ミーテ
ィングにおいて ECO ディレクターは議長を務め、執行局(Enforcement unit)は ECO での事
務局の役割を担っている。ECO はコンプライアンスおよび産業界への啓蒙についての責を担い、
Web サイト、電話や e-Mail での教育や援助を行っている。また、様々なセミナーや研究会を主
催し、ウェブでの検索ツール開発など、コンプライアンス普及に努めている。
普及活動と教育プログラム
ECO 内に少人数の専門普及チームがあり、2007 年には 400 を超える会社から 893 人が 34 の
ワークショップとセミナーに参加した。入門者向け、中級者向けのセミナーや、SPIRE という
2007 年 9 月から始めた電子申請システムのデモンストレーション、デュアルユース品、コンプ
ライアンス、政府機関の役割などについても情報普及活動を行っている。2007 年では 15 の会
社がオンサイトトレーニングに参加、Trade Associations などその他の催しなどでも 18 回のプ
レゼンテーションを行った。またウェブサイトの更新や、You Tube 用ビデオクリップの製作な
ども行っている。教育にはかなり力を入れており、イラン向け制裁措置などについても周知させ
るようセミナーで呼びかけている。
アウトリーチ活動
BERR のメインアウトリーチおよび二国間協議活動としては、パキスタンから関係筋をロン
ドンに迎えてのワークショップを開催や、香港との二国間協議活動等がある。その他にも、タイ、
ヨルダンへのアウトリーチ派遣、ヨルダンで開催のパキスタンについての米国ワークショップの
サポート、中国での EU 産業界アウトリーチの会議活動などがある。
FCO 主導でのマレーシアやイスラエルへの訪問アウトリーチ活動もある。
業務改善状況
2003 年
実務スタッフ
155 名
ライセンス処理数(1 人) 66 件
1 件のライセンスコスト
£525
20 日以内処理(*)
76%
実務スタッフのみ(*)処理目標は 70%
2006 年
102 名
81 件
£396
81%
2007 年
90 名
115 件
£326
79%
情報サービスと相談
以下現在行われている情報サービスおよび内容相談についての連絡先である。
ECO Website: http://www.berr.gov.uk/exportcontrol
SPIRE: https://www.spire.berr.gov.up
55
General queries:020 7215 4594
E-mailed Notices to Exporters and Awareness Bulletin
Awareness Seminars
Rating enquiry service
Goods Checker and OGEL Checker Tools: http://www.ecoChecker.co.uk
ECO の年間£4 百万の予算と 90 名のスタッフでは、財政的に苦しい状態がある。
国によってはライセンス取得や関連サービスに料金を課しているところもあり、これは検討課題
のひとつである。 米国では ITAR の輸出許可申請の際には業者登録料も設けられており、米国
政府 DDTC は最近その登録料の値上げをした。
(段階を設けて年間登録料$2,250、$2,750 で、
さらに登録者の処理件数が年 10 件を超えると1件あたり追加で課金されるといったような制
度)比べて英国では、セミナーやワークショップなどに£75、£150 程度、インハウストレー
ニングでは半日£350、1日でも£550 の料金で実施している。英国でもライセンス取得や関連
サービスの有料化の検討がされているが、法改正と具体的な徴集金の振り当てについて財務省の
合意も必要である。
罰則について:民事罰
民事罰については、国境においては税関庁が執行部門で、法制度化が必要であり、導入までに
1~2 年は見込まれる。監査で発見された違反についての民事罰は BERR(ECO)が課すことにな
り、罰金やオープンライセンスの剥奪などの制裁措置等について、Committee での決定が必要
である。上告について等法廷も準備の必要もでてくる。
EU 統一規則 1334/2000 の改定(RECAST)について
EU 統一規則の改定については加盟国 27 カ国の調和と統一化の為、各国内部での変更や文書
表現の明確化など、協議機構の整備を要する。
デュアルユース品の Brokering Control については、軍事品目が第 3 国から他の第 3 国へ貨
物が輸出される場合の仲介において、貨物が WMD に使用されるかもしれない可能性があると
インフォームを受けた場合は当局の許可を要するが、規制品目についてはリスト品以外に適用す
る等、国ごとのオプションもある。これらを EC Reg. Annex 1(EU デュアルユースリスト)へ適
用しようとの提言が協議されているが 27 カ国の合意にはまだ時間が必要である。第 3 国のデー
タは入手しにくく、Rating(Classification)が最重要課題でその評価には大変な努力を要する。
積替え貿易については英国はすでに規制を行っている。
英国の輸出規制について
輸出管理基本法である Export Control Act 2002 のもと、2004 年に法令の枠組みが一新され
た。
これには 3 年ごとの見直しが行われることとなっており、2007 年 6 月に見直しが行われた。
5000 件を超える意見がよせられたうちの 23 件が実質的なもので、残りは Oxfam という貧困の
克服を目的とする NGO からのものであった。軍事品目およびその他の機微品目の取引、
(Trafficking and brokering)についての規制については、新たに 3 段階のリスク基準による修
正が行われた。ヨーロッパ内での軍事エンドユーズについておよび人権を侵害する用途について
の規制を強化することを目的としている。再整理された3段階のカテゴリーの詳細は以下のとお
りである。
カテゴリーC の品目については懸念レベルは高くないので、規制強化はしない。これらは、カ
テゴリーA,B に属さない軍事および爆薬関連品:暴動を制圧するための物、および、それらの携
帯用の普及品についてなどについてである。英国内のみでの行動規制であり、移動(Transport)、
資金提供(Finance)、保険(Insurance)、またプロモーションのための一般的な公告など単一
56
の関わりのみの場合は例外とする。
カテゴリーB の品目は懸念が高いものであるが、法に照らし合わせて取り扱う。
小銃火器、MANPADS(携帯式地対空ミサイルなど)とその生産、試験、トレーニングやシミ
ュレーションなどの関連機器について。また、カテゴリーC と同様の規制に追加して英国人の海
外でこれら関わる行動について同様に規制。
カテゴリーA の品目は輸出自体が本来のぞましくないが、300kmを超えて運搬可能な長距離ミ
サイル、および無人機、クラスター爆弾、ある種のパラミリタリー/人権に関わる品目など。
これらはについて規制はカテゴリーB と同様であるが、単一例外の適用を除外する。
貿易統制へ向けての更なる変更
3 段階の規制対象品目については、2009 年には追加変更がされる予定である。内容としては、
軽量の武器(light weapons)をカテゴリーB へ加え、長距離ミサイルはカテゴリーA からカテ
ゴリーB へと変更。移動手段の提供はカテゴリーB の品目関連として規制される。すべてのカテ
ゴリーA の品目は、それが英国経由で Transit, Transshipped される場合はライセンス申請を必
要とする。また、カテゴリーB の品目の懸念リスト掲載国宛についてもライセンス申請が必要と
なる。
ライセンス処理目標
SIEL(Standard Individual Export License)申請についての処理目標値の達成状況は 70%
を 20 日以内(20-Working day)の処理目標に対して 2007 年では 79%達成。また、95%を 60
日以内の処理目標に対して、2007 年では 98%達成している。その他にも一人当たりの処理の効
率化をはかるプロジェクト(JEWEL)が進められている。新たに導入された電子申請システム、
SPIRE はこの目標にあたり、大変効果的であった。
SPIRE(電子申請システム)
全てのライセンス申請や問い合わせについてシングルオンラインポータル対応し、輸出管理に
かかわる全省庁の関連部門にリンクされている。デジタル署名のライセンスが発行され、税関の
コンピューターシステムともリンクされており、オートマチックライセンスチェック機能を有す
る。2007 年 9 月から実施され、およそ 3000 の企業が登録している。毎日 1000 件のログオンを
数える。2008 年はすでに 11000 件の申請が受理された。(2007 年は 9700 件の総申請数)
https://www.spire.berr.gov.uk
SPIRE で申請された案件は ECO により、Entity Check, Denial Notification Check, Rating,
Annual Report Summary Creation の処理が行われる。Licensing Unit をパスしたものはそれ
ぞれ担当官が振り当てられ(assigned)、単純なケースについては許可、不許可の即断がなされ
る。その他のケースは他省庁へ評価基準を確定する為に回され、すべての部署で問題ないと判断
された件は End-user の最終確認の後、ライセンスが許可、発行される。また、問題有りと判断
された件は司法審査に送られる。
2007 年の不許可になった件数は、SIEL 総数約 1 万件のうち 145 件で、その 70%は中国、イン
ド、イラン、イスラエル、シリアの 5 カ国で占められている。
ライセンスに関するデータベース
ECO は法律によって年次報告書の出版が義務付けられているが、四半期ごとの報告も行って
いる。報告書は、方針や決定事項、施行について掲載しており、紙面での発行と CD-ROM とが
ある。データについて様々なフォーマットで数多くの依頼が寄せられるが、時間がかかる上、大
変なコストもかかる。 データは3ヶ月ごとに更新され、ユーザーはライセンスの許可、非許可、
国別、品目別、また期間を区切って等コンパイルする事ができる
57
OGL(Open General License)の取り消し
OGL は ECO によって発行されるが、輸出者は登録するだけで利用する事ができる。
2008 年 5 月まで ECO が輸出者登録を取り消すことはできなかったが、新規手続きで変更が加
えられた。軽微なものについては ECO は改善内容を明記した勧告状を送り、3 ヶ月以内に改善
内容について確認監査を実行する。改善が見られない場合には OGL の使用差し止めを行う。さ
らに深刻な違反の場合は HMRC にその処遇措置についての確認依頼を送る。
(これは以前と同
様)
法の執行
輸出管理における法の執行は税関庁の権限による。2007 年には 44 件の没収と、90 件の HMRC
による警告状が、戦略上重要な輸出管理品目の不法輸出について実行された。2007 年 11 月に
は、Trafficking & Brokering 違反で 4 年の服役を申し渡された例や、2008 年 3 月に 18 ヶ月の
服役と£432,000 の没収例がある。さらに 2 件の輸出と 4 件の取引についての違反が向こう 6
ヶ月の間に法廷で審議される予定である。
(2008年11月28日
英国ビジネス・企業・規制改革省との記念撮影)
以上
58
Fly UP