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スーダン概況 - 中東協力センター

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スーダン概況 - 中東協力センター
スーダン概況
平成24年8月
外務省アフリカ第一課
【基礎データ】
(1)面積
(2)人口
(3)言語
(4)人種
(5)宗教
(6)政体
(7)元首
(8)議会
(9)政府
186万k㎡(日本の約5倍)
3,089万人 (2008年)
アラビア語(公用語)
,英語(公用語)
アラブ系,アフリカ系,その他
イスラム教が殆どを占める。その他,キリスト教,アニミズム
共和制
オマル・ハサン・アフマド・アル・バシール大統領
国民議会(二院制:上院 30議席,下院 354議席)
大統領:オマル・ハサン・アフマド・アル・バシール
外 相 :アリー・アフマド・ケルティ
(10)GDP
751億米ドル(2011年推定値)
(11)成長率
-2.4%(2011年推定値)
(12)貿易総額
輸出:77億ドル 輸入:84億ドル(2011年推定値)
1.いわゆる「アラブの春」関係
1.スーダンでは,南スーダン独立後,石油収入の減尐により,インフレの昂進及び通貨
の下落等,経済的に困難な状況にある。このような中,2012年6月に,スーダン政
府が緊縮財政の一環として,補助金の削減を決定したことにより,首都ハルツームを始
めとして,各地で抗議活動(デモが)散発的に発生している。
2.他方,スーダン政府が,報道統制を行うなどして,周到にデモの拡大を防ぐ手立てを
取っていること,また,デモは学生・若者を中心に行われていること,さらに,規模も
小規模であること等から,一連の抗議活動が現政権の転覆に繋がる可能性は低いとみら
れている。
-1-
2.内政
1.1955年,アラブ系人口の多い北部と,北部による政治・経済・文化的支配が拡大
することを恐れたアフリカ系の多い南部との間で,内戦勃発。
2.1972年,南部の自治権を認める「アディスアベバ協定」により一旦停戦したもの
の,1983年に当時のニメイリ大統領が右協定を反古にしたことから,ジョン・ギ
ャラン率いる南部のSPLAとの間で内戦が再燃。
3.1986年4月の総選挙の結果,5月ウンマ党党首マハディが首相就任,文民内閣が
発足。
4.1989年6月,軍部の無血クーデターによりバシール政権発足。
5.2000年12月,大統領選挙にて,現職のバシール大統領が86%以上の得票を得
て選出(但し主要野党勢は本選挙をボイコット)
。
6.2005年1月,南北間の包括和平合意(CPA)が成立。
7.2005年3月,国連スーダン・ミッション(UNMIS)設立。
8.2005年7月,CPAに基づく統一政権成立。9月内閣発表。
9.2006年5月,ダルフール和平合意(DPA)署名。
10.2006年10月,東部スーダン和平合意(ESPA)署名。
11.2007年7月,ダルフール国連AU合同ミッション(UNAMID)設立。
12.2009年3月,ICCがバシール大統領に対する逮捕状を発付。
13.2009年7月,常設仲裁裁判所(PCA)がアビエ境界線問題の判決を発表,南
北双方が受け入れ。
14.2009年12月,南部住民投票法案やアビエ住民投票法案等が成立。
15.2010年2月,スーダン政府とJEMとの間で即時停戦を含む「ダルフール問題
解決
のための枠組み合意」に署名。
16.2010年4月,総選挙を実施。バシール大統領,サルヴァ・キール南部大統領が
当選。
17.2011年1月,南部スーダン住民投票を実施。2月,98.83%が分離独立を
支持し,将来の南スーダン独立が決定。
18.2011年7月,南スーダン共和国が独立。CPAは失効。
3.経済
1.スーダンは,アフリカ最大の国土を有し,原油,鉄,銅,金等の鉱物資源,水資源,
更には肥沃な耕地に恵まれており,その経済的潜在力は高い。しかし,20年以上に亘
る内戦,西側諸国からの経済援助停止,累積債務(2011年末現在389億ドル)等
が原因で,スーダン経済は長年疲弊してきた。1990年代前半は年率150%に及ぶ
インフレが進み,生活物資や電力の不足が恒常化していたが,1996年からIMFの
経済修復プログラムを受け入れ経済再建に努めている。
2.国内総生産(GDP)は,2000年代後半には,都市部での建設需要の増大に加え,
石油収入の増加を主因として高成長を記録していたが,南スーダンの独立により,石油
-2-
収入の75%を喪失し,2012年1月には残りの石油生産も停止したため,通貨の下
落(年率50%以上)及びインフレの昂進(年率22%)等,経済的に困難な状況にあ
る。
3.地方では,水,食糧,電気,保健医療,通信,交通等の基礎インフラが未整備状態で
あり,国際人道支援活動なしには自活できない地域が大半を占めている。特に,ダルフ
ールでは引き続き国際社会の支援を必要としている。
4.外交
1.概要
7か国と国境を接するスーダンにとって,隣国との外交関係は極めて重要な意味合いを
持つ。スーダンは,アラブ・アフリカ諸国との友好的外交関係の維持を外交政策の基調と
している。アラブ連盟,アフリカ連合(AU)
,イスラム諸国首脳会議(OIC)の活発な
メンバーであり,非同盟運動にも参加している。また,1990年代以降,政治的にも経
済的にも中国との関係を深めている。
2.南スーダンとの関係
半世紀以上にわたる南北スーダン内戦の末,2005年に南北包括和平合意(CPA)
が締結され,2011年7月に南スーダンが独立した。他方,石油,国境線画定,治安,
アビエ地域の帰属等,南北間において未合意の課題が残っており,南スーダン独立(20
11年7月)前から,AUの仲介により,南北間の交渉が行われている。2012年4月
中旬,南スーダン国軍(SPLA)によるヘグリグ侵攻により,両国間の軍事的緊張が高
まり,南北交渉は一時中断されたが,国際社会の働きかけ(AU平和・安全保障理事会の
声明及び国連安保理決議の採択等)により,5月末から交渉が再開された。
3.その他の隣国との関係
チャドとの間では,長年,不安定な関係が続いてきた。2008年1月にチャドのデビ
ー大統領に不満を持つ反政府勢力3派(2000人規模)がスーダン国境沿いで武装蜂起
し,一時首都ンジャメナにまで攻め込んだ(チャド政府軍が撃退)際,チャド政府は,こ
の武装蜂起はスーダン政府の支援によるものであるとして非難し,国交断絶を表明した。
一方,同年5月には首都ハルツームに隣接するオムドルマンでスーダン政府軍と主要なダ
ルフール反政府勢力である「正義と平等運動(JEM)
」が激しい戦闘を繰り広げた(スー
ダン政府軍が鎮圧)際は,バシール大統領が,チャド政府が反政府勢力を支援したとして,
国交断絶を宣言した。同年11月,リビアによる仲介を経て両国は国交回復を実現したも
のの,両国間の緊張状態は続いたが,2009年末にバシール大統領がチャドを訪問し,
デビー大統領と会談し,その後両政府が国境管理について合意に達するなど両国関係は改
善している。
一方,2010年5月,ナイル川上流域国のウガンダ,エチオピア,タンザニア,ルワ
ンダの4か国が,下流2か国(エジプト,スーダン)が1950年代以前に取り決めたナ
イル水利の量の割当量に上流国が拘束されない旨の合意に署名し,エジプトの激しい反発
-3-
を呼ぶなど,ナイル水利の量の割当は,将来的な不安定要因の一つとなる可能性がある。
4.主要国との関係
(1)CPA履行支援
2005年1月のCPAに至る過程や,その成立以降の履行プロセスにおいて,西側
諸国を含む国際社会は,資金協力や和平プロセスの仲介など,積極的な支援を実施して
きている。2010年4月に行われた約20年ぶりの複数政党制による総選挙プロセス
においても,欧米諸国を中心に資金協力や選挙監視団の派遣などが行われたほか,20
11年1月の南部独立の是非を問う住民投票においても積極的な役割を果たしている。
また,南北スーダン交渉においては,仲介を行うAUを始め,国連や主要国等国際社会
が,両国間の交渉の進展を促すため,積極的に働きかけを行っている。
(2)ICC逮捕状問題
2008年7月にオカンポ国際刑事裁判所(ICC)首席検察官がダルフール問題に関
するバシール大統領の責任を追及するため同大統領に対して逮捕状を請求したことにつき,
スーダン政府は強く反発しアラブ連盟,アフリカ連合等はスーダンの立場に同調したが,
2009年3月に国際刑事裁判所
(ICC)
予審裁判部は同大統領に対して逮捕状を発付。
スーダン政府は,ICCの締約国ではないこと等を理由にこれを拒否し,同月,ダルフー
ルで活動する国際NGO13団体の国外追放と国内NGO3団体の解散を命ずるなど,国
際社会との緊張が一気に高まった。ICCは2010年7月,バシール大統領に対してジ
ェノサイド罪の嫌疑に関しても,逮捕状を発付した。
5.我が国との関係
1.1956年に1月6日に外交関係を樹立。日・スーダン両国は友好的な関係を維持し
ている。スーダン側からは2008年5月のバシール大統領の来日(TICAD Ⅳ)
や2010年12月のシッディーク人道問題担当国務大臣,我が方からは,2010年
7月に西村政務官,2011年7月に菊田政務官,及び2011年10月に山根副大臣
がスーダンを訪問するなど両国間の要人の往来が行われている。
2.二国間協力の枠組
二国間対話の枠組の一つとして,2001年1月より日・スーダン政策対話を実施して
きている。
また,1988年11月に青年海外協力隊派遣取極を締結。1993年1月に一時中断
するも,2009年3月に派遣を再開した。
3.経済協力
1980年代後半から1990年初頭にかけて生じたスーダン国内における人権の侵
害状況にかんがみ,1992年,他の主要援助国と並んで,我が国はODAを人道・緊急
的援助に限定した。一方,人道支援においては,1999年度の草の根・人間の安全保障
無償資金協力導入後,保健医療,難民支援等の活動を行う国際機関,NGOを通じて毎年
-4-
1千万ドル規模の人道支援を実施。2005年1月9日の南北包括和平合意(CPA)の
成立を受け,国際機関経由の支援に加え,ODAを機動的に活用してスーダンにおける和
平の定着を支援してきている。
2005年4月に開催されたスーダン支援国会合には従来の水衛生,食糧,保健医療と
いった緊急・人道支援に加え,元兵士の武装・動員解除,地雷除去などの分野を念頭に置
きつつ,南北双方が裨益する形で当面1億ドルの支援を行うと表明し,2008年2月ま
でに,支援実施表明額を超える約2億3千万ドルの支援を実施した。さらに2008年5
月の第3回スーダン・コンソーシアム会合において,2億ドルの追加支援を表明。200
9年には南北18万人の元兵士に対するDDR(武装解除,動員解除,社会復帰)支援と
して1600万ドル(約15.75億円)の支援を決定したほか,2010年4月の総選
挙支援として1000万ドル(約10.3億円)や,2011年1月の南部スーダン住民
投票支援として816万ドル(約7.68億円)を拠出する等,CPAの履行を積極的に
支援してきている。
上記の南北和平プロセスに加え,国連安保理等において取り上げられているダルフール
情勢を巡るスーダン政府の対応や国際社会の動向に十分留意しつつ支援を実施しており,
現在,ダルフール向けの人道支援のほか,カッサラ州における給水施設の改修・拡張に係
る二国間支援を実施している。
<参 考:我が国の対スーダン年度別・援助形態別実績>
(単位:億円)
年 度
円借款
無償資金協力
技術協力
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
累計
-
-
-
-
-
-
-
-
105.0
5.22
26.78
60.19
69.46
54.07
82.77
102.92
85.88
1,263.72
1.26 (0.52)
0.78 (0.05)
1.66
8.07
6.86
12.10
19.09
22.97
122.61
注)1.年度の区分は,円借款及び無償資金協力は原則として交換公文ベース,技術協力は予算年度による。
2.
「金額」は,円借款及び無償資金協力は交換公文ベース,技術協力はJICA経費実績及び各府省庁・各都道府県等
の技術協力経費実績ベースによる。
3.円借款の累計は債務繰延・債務免除を除く。
4.2005年度までの技術協力においては,日本政府全体の技術協力事業の実績であり,
( )内はJICAが実施し
ている技術協力事業の実績。
<参 考:近年の主な要人往来(肩書きはすべて当時)>
-5-
(1)往(肩書きはいずれも当時のもの)
年月
要人名
2005年5月
岡田民主党代表一行
2005年11月
日AU友好議員連盟北部代表団(団長 尾身衆議院議員)
2006年2月
塩崎外務副大臣
2007年1月
田中財務副大臣
2008年1月
矢野参議院議員(総理特使)
2008年5月
小野寺外務副大臣,中山外務大臣政務官
2008年7月
参議院重要事項調査議員団(団長 矢野参議院議員)
2008年8月
三原自由民主党国際局長一行中東・アフリカ諸国訪問団
2010年7月
西村外務大臣政務官
2011年7月
菊田外務大臣政務官
2011年10月
山根外務副大臣(官民合同ミッション)
(2)来
年月
要人名
2005年3月
国民統一移行チーム(JNTT)
2005年12月
フィデイル国際協力大臣
2006年8月
ターハ科学技術大臣(科学技術フォーラム)
-6-
(2)来
年月
要人名
2006年11月
アコル外務大臣(高級実務者招聘)
2006年12月
アガル投資大臣(JETRO投資セミナー)
2007年10月
ショーカイ保健大臣(民間招聘)
2008年3月
ターハ内務大臣(科学技術フォーラム)
ナーフィア大統領補佐官(外務省賓客招聘)
ベンジャミン南部スーダン政府地域協力大臣(オピニオンリーダー招
2008年5月
待)
バシール大統領(TICADIV)
2008年10月
ターハ農林大臣,オマル科学技術大臣(STSフォーラム)
2009年1月
ケルティ外務担当国務大臣(オピニオンリーダー招待)
2009年3月
ルカ・ビオン南部スーダン政府大統領府担当国務大臣(TICADⅣ
フォローアップ・シンポジウム)
2009年3月
アル・ジャーズ・スーダン大統領特使(財務・国家経済担当大臣)
2009年10月
シッディーク外務次官(日・スーダン政策対話)
2009年10月
パガン・アマムSPLM幹事長(21世紀パートナーシップ促進招聘)
2009年11月
アブダッラー国家選挙委員会(NEC)副委員長(オピニオンリーダ
ー招聘)
2009年12月
ティジャーニ国際協力大臣 (日本・アラブ経済フォーラム)
アドック高等教育・科学研究大臣(同)
ベンジャミン南部スーダン政府商業・貿易・供給大臣(同)
2010年12月
シッディーク人道問題担当国務大臣
2011年10月
サラーフッディーン大統領顧問(閣僚級招へい)
(了)
-7-
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