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Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅
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タイ国税制と税務行政
清永, 敬次
東南アジア研究 (1967), 5(3): 484-499
1967-12
http://hdl.handle.net/2433/55417
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
タ イ 国 税 制 と 税 務 行 政
清
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次
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YONAGA
序
965年 3月 か ら同年 4月 にか けて 1カ月 あ ま りの間 タイ国 において筆者 が行 な っ
この論稿 は 1
た調 査 に基 づ いて書 かれ た もので ある。 そ の後 今 日まで タイ国税 制 に関 して な され た変 化 につ
い て の情報 を若干 得 てい るが,まだ不 十分 な もので あるので,この小論 は 当時 の法 的状 態 を基 礎
とす る もので あ る。筆者 の行 な った調 査 は ご く短 期 間 の もので あ った ので 情報収集 は必ず しも
十分 な もので ある といい えない ことはい うまで もないが,今後機 会 をみ て補充訂正 を なす こと
を期 す る もので ある。タイ国で の調査 中,タイの大蔵 省 の役 人 の方 々や京 大東南 ア ジア研究 セ ン
ターの関係 の方 々をは じめい ろい ろな人 々に ど協 力 をい ただいた。 また,京大法学 部 の福 島徳
寿 郎教授 および大 阪外 国語 大学 の矢 野暢氏 には調 査期 間 中 ほ とん ど行動 を共 に して いただい て
種 々ど協 力 を い ただいた。 これ らの方 々の ご援 助が な くては もち ろん この小 論 は あ りえない も
ので ある。記 して深 い謝意 を表 したい と思 う。
Ⅰ タイ国税制 と税務 行政 の概要
1. 世 界銀行 の報告書
よ く知 られ てい るよ うに,世 界銀行 は タイ国政府 の要 請 を受 けて 9名 か らな る調査 団 を タイ
957年 7月 か ら1
958年 6月 まで の間広汎 な調査活動 を な した後 ,
国 に派遣 した。 この調査 団 は 1
1
9
61年 か らス ター トした タイ国 の経済 開発 計画 の基 礎 とな った公共 開発計画 に関す る報 告書 を
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, A Publ
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作成 した (
Devel
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959)。 この報 告書 におい て, タイ国 の今後 の開発計 画
に要 す る財源 を考慮 して の一 連 の税制 および税務行 政改善 につ いて の勧告 が な され ていた。 そ
の要点 は次 の ごと くで あ る。
4
8
4
-5
0-
清 永 :タイ国税 制 と税 務行政
「タイ国 の税負 担 は 同 じ発展段 階 の他 の多 くの国 に比 べ て低 い ものが あ る。最 近 の国家税 収
4
% に相 当 し この数 字 は他 の極 東 諸 国 の多 くの国 の それ よ りも少 ない ので あ
は総 国民生 産 の約 1
る
。
それ に加 えて個人 および法 人 税 とい う蔽接 税 の賦 課 徴収 におい て も他 の諸 国 に遅 れ てい る
b
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を 占め る にす ぎない。 この結果 必 要 以 上 に 租
ので あ るo これ らの租 税 は全税 収 の わず か 70
税 制度 を累 過 的 な もの と して い るので あ る
。
この ことは一 部に は 直接 税 の税率 構造 および法 律
上 の諸 控 除 の性 質 によ るので あ るが ,大 部 分は税 務 行政 と執 行 の 聞題で ある。所得 税 の脱 税 が
広 くみ られ るが, この ことは主 と して税 務 行政 の非 効 率 と貧 弱 な職 員 に基 づ くもので あ る。 申
告 書 の十分 な調 査 が行 なわれ て い ない。 このた め に規 則 的 かつ徹 底 した調 査 計 画 が必 要 で あ り,
職 員 の訓練 も必 要 で あ る。 この よ うな税 務 行 政 の改 善に加 えて所 得 税 の税率 も変 更 を要 し, ま
た と くに事業所得 の控 除 が著 し く高 す ぎる。一 般 的 な地 租 が存在 す るが それ は名 目的 な もの に
と どま り税率 も査 定額 も低 い もので あ る。 また 自己所 有 住 宅 そ の他 不 動産 の改 良 に対 す る租 税
が存 在 しない。 また相 続 税 も し くは贈 与 税 も存在 しない。一 般 売上 税 は諜 され てい るが そ の執
」(
前掲 報
行 は不十 分 で あ る。 多 くのぜ い た く品 に対 す る課 税 は も っと引 き上 げ るべ きで あ る。
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4
7
)
告 書 pp.2
多 くの場 合 , この よ うな税 制全 体 にわ た る改 革 や税 務 行政 の強 化改善 は種 々の事情 によ って
簡単 には実現 しえ ない もので あ る ことはい うまで もない。 しか しわ が国 の よ うにか な りの変 革
を伴 う税 制 の改 正 を毎年 経 験 して い る者 に と って タイ国 の 事情 はや は り若 干 の驚 きを与 え る も
ので あ った。 世界 銀 行 の勧告 が な され て以 来 まだ基 本 的 な 制 度 の改 正 は なん ら行 なわれ て お ら
ず ,新 しい租 税 の創 設 につ い て もまた既 存 の税 柾 につ い て もなん らのみ るべ き改 革 の跡 を発見
す る ことがで きな か った か らで あ る。大蔵 省 の各 部 の局 長 や タイ銀 行 の総裁 を 含む税 制改正 の
た め の委 員会 が設 け られ て改正 の審 議 が行 なわれ てい た が, その 内容 につ い て は まだ一 般 に公
表 され てい なか った。 しか しなが らと くに新 しい税 種 の創設 が な され なか った ことは タイ困政
府 に と って賢 明 な政 策 で あ った か も しれ ない O い うまで もな く新 しい税種 を設 け る ことは それ
に伴 う税 務行 政 の整 備 を必要 とす るが , この ことが簡単 に行 なわれ えた とは思 われ な い か らで
あ る 。 新 しい租 税 は名 目的 な もの に と どま ってい た か も しれ ない。 それ よ りも既 存 の税 につ い
て と くに所 得 税 の執 行 を よ り完 全 な もの に近づ け る努 力 の ほ うが重要 で あ った と思 われ る。 も
っと も この よ うな努 力 が どの程度 な され て きて い た か は また別 の 問題 で あ る。
2. 税 制 と税 務 行政
所得 税 , 関税 および 関税 を含 む間接 税 の それ ぞれ税 収 全 体 の 中 に 占め る地 位 を他 の東 南 ア ジ
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anTaxat
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n1
964 によ る)。 フ ィ
ア諸 国 の それ と比 べ てみ よ う (計算 の基 礎 は いず れ も As
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3年) と イ ン ドネ シア (1
9
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3年) につ い て は それ ぞれ三 つ の比率 が フ ィ リピ ン1
9
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6
リピ ン (1
% ,2
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4
% ,7
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6,
% お よび イ ン ドネ シア6
3
.
5
%,1
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% ,6
1
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1
% とな ってい る. また所得 税 と関
税 を 含む間接 税 につ い て は, シ ンガポール に おい て (
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年 )2
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%,5
5
%, マ レー シア におい
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東南 ア ジア研 究
国
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税
第 5巻 第 3号
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n1964 (
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96
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)
*会計年度 1
0月 1日か ら 9月 3
0日まで
て は (1964年) 26.3% ,62.1% , ラオ ス に おい て ほ (1964年) 16.6% ,64.1% , カ ンボ ジア に
つ い て は (1964年 ) 関税 を含 む 間接 税 が 74.8% とい う数 字 に な って い る。 この よ うな タ イ国以
外 の東 南 ア ジア諸 国 との比 較 か ら明 らか な よ うに, タ イ国 の場 合 , まず 第 1に関税 を含 む 間接
税 の比 率 にお い て 1962年 は 90.
8% ,1963年 は 88.8% ,1964年 は 87.
2% とい うよ うに そ の率 を毎
年 低 下 させ て きて い る もの の , そ の比 率 が 一 番 高 い ことを知 る こ とがで きるで あ ろ うo 第 2に
関税 だ けを と ってみ る と この場 合 も フ ィ リピ ン, イ ン ドネ シア お よ び カ ンボ ジア の諸 国 に比 べ
て そ の税 収 中 に 占め る地 位 が一 番 高 い ことが わ か るので あ るO最 後 に,以 上 の こと とむ ろん 関
連 す るので あ るが ,所 得 税 の地 位 が カ ンボ ジアを除 く他 の諸 国 に比 べ て一 番 低 い所 に あ る こ と
が知 られ るので あ る。他 の諸 国 は いず れ も1
0
% を は る か に こ して い るの に対 して タ イ国 の場 合
1
0
% に もみ た ない ので あ る。事 情 を よ り明 らか にす るた め に, 日本 と米 国 の場 合 の所 得 税 , 関
税 , 関税 を含 む 間接 税 の三 つ の構 成 比 を示 して お くと, 日本 は (1964年) 61.
4% ,
%,米 国 は
7% ,37.2
(1963年 ) 69.1% , 1
.
3
% , 13.9% とな って い るので あ る。以 上 の ことか らタ イ国
税 制 全体 の特 徴 は 明 らかで あ ろ う。
す なわ ち, タ イ国税 制 は 著 しい 間接 税 中心 主 義 に よ って 支 配 され て お り, かつ 間接 税 の な
4
8
6
- 5
2-
清 永 :タイ国税 制 と税 務 行政
かで も関税 の 占め る比 重 の大 き さに よ って特 徴 づ け られ て い るので あ る。各 税 種 の税 収 の而 か
らの重要 性 は表 によ って それ ぞれ 知 る ことがで き るで あ ろ う。税 収 の第 1位は 関税 によ って 占
め られ て い る (
38.9%)。 関税 は タ イ国 の場 合 他 の 開発 途上 国 に もみ られ る ことで あ るが輸 入 関
.
悦 の み な ら ず 輸 出 関 税 を も 含 むゝ
O この うち前 者 が 全 体 の
87%
を
占
め て い る (こ の 上ヒ率 は
Asi
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Taxat
i
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n1966, p.155 の数 字 に よ り 計算 した もの)C タイ国 の 場 合 さ らに ri
cepr
emi
um
とい うい わゆ る隠 され た 関税 が存 す る。米 の輸 出税 で あ る。
1 トン当 り 550バ ー ツまた は 800
バ ー ツの pr
emi
um が課 され これ が 困 o
j歳入 と され るので あ る。1
964年 で この r
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は ほぼ 8億 バ ー ツに達 す るといわれ るo通 産省 (
Mi
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yofEcono
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)が所 管 す る こ
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cepr
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の収 入 を加 え る と関税 の 占め る比率 は さ らに大 きな もの とな るので あ る。 この r
は これ まで の伝統 に よ って支持 され て い るばか りで な く, これ を廃 止 す る ことは け っ して農 民
の利益 に な る もので は な く華 南 の利益 に帰 す る ことに な るとい う理 由で支持 され てい る とい わ
れ てい る。 関税 は そ の税 収 中 に 占め る重要 性 か ら も うかが え るよ うに, も っぱ ら歳 入 本位 に 構
成 され , い わ ゆ る保護 関税 と して の性 格 は薄 め られ て い る。
税 収 の第 2位を 占め る事 業税 (
bus
i
nes
st
ax) は,その名称 か ら想 像 され る と ころ と違 って,
い わ ゆ る売上 税 (
取 引税 ) た る性 質 を有 す る もので あ る。 用役 の提 供 を除 く財 貨 の製造 販 売 の
場 合 につ い て も,貴 金属 類 が各 取 引段 階 のす べ て におい て課 税 され るのを除 い て ,原則 と して
輸 入 も し くは製 造 の段 階 に おい て一度 だ け課税 され るに と どま る。
962年 か ら1
964年 にか けて , それ ぞれ の構 成比
な お,年 度 間 の変 化 につ い て述 べ て お くと,1
率 は所得 税 に おいて ほ ぼ 3% ほ ど大 き くな って い るが ,関 税 も約 2,
% , 車業税 は約 7% ほ ど人
き くな って きてい る。
税 収 第 3位 の所得 税 はすで にみ た よ うに全 体 の税収 の わず か 9.
9% に と どま る。所得 税 は個
人 所得 税 と法 人 所得 税 を舎 む が 1
964年 度で 個人 所 得 税 は 4億 9千 万 バ ー ツ,法 人 所得 税 は 3億
4千 万 バ ー ツに達 す る(この金 額 は As
i
an Taxat
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n 1966 によ る).
国税 の税 務行 政 は 原則 と して 大蔵 省 (
Mi
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nance) によ って 拒 当 され る。大蔵 省
はわ が 国 と違 って予算 編 成 な どの事 務 を行 なわず もっぱ ら租 税 の賦 課徴 収 を その任 務 とす る。
Revenue
大蔵 省 には 租 税 の 徴 収 に関す る部 門 と して 三 つ の 部 門 が存 在 し, それ ぞれ歳 入 局 (
Exci
s
eDepar
t
ment
) お よび 関税局 (
Cus
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msDepar
t
ment
) と呼
Depar
t
ment
),消費 税局 (
ばれ る。歳 入局 は 歳 入法 典 (
RevenueCo
de) に定 め られ てい る租 税 ,す なわ ち所得 税 ,印紙 税
(
s
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amp dut
y),娯楽 税 (
ent
er
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ai
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sdut
y),事 業税 ,地 方 開発 税 (
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ocaldevel
opmentt
ax)
および看 板 税 (
s
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gnboar
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ax)を所 轄 す る。 消費 税局 は個 別立 法 によ る各種 の消費税 を執 行す
る。消費 税 局 の管 轄 に属 す る租 税 と しては,酒 税 , ビール税 ,清 涼 飲 料 税 , タバ コ税 , マ ッチ
撹 (ライ ター税 も含 む), セ メン ト税 , か ぎ タバ コ税 , カー ド税 ,石 油 税 が あ る(かつ て利 用者
um dut
y が あ った が 今 日で は廃止 され てい る). 関税局 は 関税 法 およ び関税
に課 せ られ る Opi
- 53-
487
第 5巻 第 3号
東 南 ア ジア研 究
定率 令 に基づ く関税 の執 行 に当た る。 自動 車税 (
mo
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orvehi
cl
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ax)および土 地移転税 (
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ans
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sdut
y) は大蔵省 で は な くて 内務省 の所轄 に属 し,それ ぞれ 関係部局 (
Pol
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ceDepar
ト
meれt
,LandDepar
t
ment
) によ って執 行 され る。
歳 入局 の所轄 す る租 税 の 賦課 徴収 に つ い て は (消費 税局 の場合 も同 じ), まず全 国を 9地 区
(
phaak)に区分 し-
た とえ ばバ ンコクを 中心 に第 1地 区,チ ェンマ イを 中心 に第 5地 区,さら
に ソ ンク ラーを 中心 に第 9地 区 とい うよ うに-
それ ぞれ の地 区を統 轄 す る税務担 当官 が おか
0の
れ てい る。これ らの職 員 はそれ ぞれ の地 区全体 の税務行政 を監督 す る。
各 地 区 には 6ない し1
changwat
) が存在 し,各 県 の税務担 当官 はそれ ぞれ の 県 内の税務行政 を 統 轄す る とと も
県 (
as
s
es
s
ment
) を行 な う。 税 務行政 の一番 下 の レベル は各 郡 (
amphoe)
に主 と して租 税 の査定 (
の担 当官 によ って行 なわれ ,主 と して租 税 の収納徴収 の事務 を行 な う。 た とえば,第 5地 区 に
おいては地 区担 当官 は 1
0名。 うち 1名 の長 , 1名 の補佐 官 , 2名 の会 計官 および 6名 の事務職
員 か らな ってい る。各県 には 1名 の長 , 2名 の補佐官 , 2名 の会計官 および 6名 ない し 8名 の
事 務職 員が存在 す る。 また各 郡 には会計官 1名 ,補佐 1名 ,事務職 員 2名 が配 置 され てい る。
この よ うに して第 5地 区全体 と してほ税務 職 員 は 362名 に達す る。
3. 各
1) 所
租
税
得
税
1
.個 人 所 得 税
課 税年 度 は暦 年 によ る。次 の ごとき所得 が課税所得 と され る。俸 給 ,賃 銀 ,賞与 ,年 金 な ど
の給与所得 ,手 数料 な どの所得 ,のれん ,著作権 その他 の権 利 につい て受 領す る価額 ,利子所
得 ,配 当所得 ,資産 の賃貸料 所得 , 自由業 所得 ,工 事請 負所得 , その他 の事業所得 で あ る。多
t
algai
n に対 す る課 税 が 行 なわれ てい ない こ
くの国 の所得 課 税 において一 般 にみ られ る capi
とが特 徴 的で あ る (ただ し株 式 も し くは 出資 の譲渡 によ る場合 は課税 所得 の なか に含 まれ てい
api
t
algai
n が一般 に課 税 され ない ことは,課 税所得 の定 義 の なか にその よ うな所得 が
る)0 c
含 まれ てい ない ことによ って も知 ることがで きるが, 同時 に,非 課税 所得 と して 「遺 贈 によ り
取得 した財産 または事業 も し くは利益 の た めに取得 した もので ない財 産 の売 却 によ る収入」 が
かか げ られ て い る ことか ら明 らかで あ る。 この点 は タイ国 の所得 税制 の欠 陥の一 つ と して指摘
され てい る と ころで あ る.非 課 税所得 と して も う一 つ注意 すべ き点 は 「自己 も し くは その家族
によ って耕 作 され た米 の売却 によ って農 民 の受 け る所得 」 が一般 的 に非 課税 と され てい る こと
で あ る.一 部 はおそ ら くこの非課 税 の故 にまた この非 課 税措 置が な くと も一部 は所 得 が最低課
税 限変額 に達 しないが故 に,農民 の多 くは所得 税 と無 関係で あ る といわ れて い る。所得税 の納
税義務者 は約 70万 人で あ るといわれ るが, その うち約 30万人 が政府職 員 によ って 占め られ てい
る。
それぞれ の所得 について は必要経 費 が控 除 され るが ,給与所得 および手数料等 所得 につ いて
488
- 5
4-
清 永 :タイ国税制 と税 務行政
は一 定 の定 額 控 除 が設 け られ ,最 高 限 を 2万 バ ー ツ とす る,収入 の 2
0% の控 除 が 認 め られ る。賃
貸 料 所得 , 自由業所得 ,工 事 請 負所得 お よび その他 の事 業所得 につ いて控 除 さるべ き必 要 経費
につ い て も,選 択 的で は あ るが,定 額 控 除 (よ り正 確 には定率 控 除) の方 式 が設 け られ て い る
ことは興 味深 い ものが あ る (この必 要 経費 の定額 控 除 は 法 人税 には ない)。 この 定 額 控 除 の率
は いず れ も勅 令 によ って定 め られ てい るが ,賃 貸料 所得 につ い て は その資産 の種 類 に応 じて 1
0
% ,1
5% ,20% ,30
% とい う控 除率 が , 自由業所得 につ い て は一 本 の3
0
% とい う控 除率 が,工
事言
責負所得 につ い て は8
0
% とい う控 除率 が , そ して そ の他 の事 業 所得 につ い ては事 業 の種 類 に
応 じて7
5% ,80
% ,8
5
% ,9
0
% とい う控 除率 が法定 され て い るので あ る。 この定額 控 除 は選択
的 な もので あ るか ら, いず れ の所得 の場 合 におい て も, も し納 税 義務 者 が実 際 に生 じた必要 経
費 の額 を証 明 しそ の額 が この定 額 控 除 を こえ る と きには,実 際 に生 じた必要 経 費 の額 が控 除 を
認 め られ る ことにな る。 この定 額 控除 の比 率 は世 界 銀 行 の報 告 書 によ って高 す ぎ る もので あ る
と指 摘 され てい るので あ るが, あ る歳 入 局 の役 人 は決 して高す ぎ る こ とは ない と報 告書 の指 摘
に否 定 的で あ った。
0
0
0バ ー ツ,納 税 義 務者 の 配偶者 につ い て 20
00バ ー ツ,お よ
人 的控 除 は 納 税 義務者 につ い て 4
び その他 の扶 養 家 族 1名 ごとに 1
0
0
0バ ー ツが認 め られ る。税率 は 1万 バ ー ツL
r Fの 純 所得 に対
0
%か ら40
万 バ ー ツを こえ る純 所得 に対 す る5
0
% まで ,超 過 累 進 税率 が採 用 され て い るC
す る1
源 泉 徴 収 は,給 与 所得 ,手 数 料 等 所得 , のれ ん著 作権等 につ い ての所 得 ,利 子所得 (ただ し
受 取 人 が属 住 人で あ る場 合 を除 く), およ び 配 当所得 に対 して行 なわれ るが, さ らに 次 の場 合
に源 泉 徴 収 が行 なわれ る。 この点 も必 要 経 費 の定 額 控 除 な どと と もに タ イ国所得 課 税 の特 徴 の
一
つ を なす もの とい うことがで き るで あ ろ う。す なわ ち,賃貸 料 所得 , 自由業 所得 ,工 事 請 負
所得 およ び その他 の事 業 所得 G
L
)場 合で あ って , その支 払 い が政府 , 政府組 織 , muni
ci
pal
i
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sani
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on di
s
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ct その他 地方 行 政 庁 によ って行 なわれ かつ そ の支 払 金額 が 1万 バ ー ツ以 上 の
0
00分 の 3の率 を もって源泉 徴 収 を なす こと とな って い るの
場 合 に は, これ ら公 的 な支 払 者 は1
で あ るC ほか の諸 国で はみ られ ない よ うな この種 の源 泉 徴 収 が設 け られ た の は,政府 の金 が政
府 外 に流 出す る ことをで き るだ け防止 す るた め と,納 税 義務者 によ って は納 税 期 の頃 にな る と
事 業 を 閉 じて その所 在 が わか らな くな る ことが あ るた めその対抗 措 置を設 け るた めで あ る, と
いわ れ て い る。源 泉 徴 収 を なすべ き者 は源泉 徴収 の対 象 とな る支 払 い を な した 日か ら 7日以 内
に郡 オ フ ィスに徴 収 税 額 を納付 しな けれ ば な らない。 7日以 内に とい うの はわ が国 の翌 月 の 1
0
日まで とい うの に比 べ て もか な り短 い期 限 が定 め られ て い る ことにな ろ う。 これ ら源 泉 徴 収 を
なすべ き者 はその源 泉 徴 収 して納 付すべ き税額 につ い て は納 税 義務者 と連帯 して納付 義務 を負
う。
配 偶 者 を有 せ ず かつ課 税 所得 が4
0
0
0バ ー ツを こえ る者 ,配 偶者 を有 せ ず か つ課税 所得 が もっ
ぱ ら給 与 所得 か らな り しか もその額 が 5
0
00バ ー ツを こえ る者 , 配 偶者 を有 Lかつ 課税 所得 が
-5
5-
4
8
9
東南 ア ジア研 究
第 5巻 第 3号
6000バ ー ツを こえ る者 ,配偶者 を有 Lかつ課税所得 が もっぱ ら給与所得 か らな りしか もその額
が7500バ ー ツを こえ る者 は,毎年 2月末 日まで に申告書 を提 出 しなけれ ば な らない。 このよ う
に提 出 され た 申告書 にかか る税額 で納付 すべ き額 が存す るときは, その申告 の際 に郡 オ フィス
に納付 しなけれ ばな らない。 いわゆ る申告納税方式 が採 用 され てい るわけで あ る。 なお,源泉
徴 収 に服 しない課 税所得 が 1万 バ ー ツ以上 に達す る者 は,予定 申告納付 を求 め られ ることが あ
る.納税 が適正 に行 なわれ るた め には納税義務者-
と くに事 業所得者 の場合-
において正
確 な帳簿 が準備 され て い る ことが不 可欠で あ る。そ して これ はいずれ の国 において も多 かれ少
なかれ問題 とな る ことで あ るが, タイ国 において もそのよ うな記帳 は必ず しも十分 な され てい
ないよ うで あ る。 また 申告 を しない ことな どによ るか な りの脱税 の存在 が多 くの関係者 によ っ
て認 め られ て お り, と くに華 南 の場合 が一番 問題 とな るといわれ てい るo筆者 の一般 的印象 は
脱税 を防止 す るための特別 の努 力 が払 われ てい るよ うにはみ え なか った ことで あ る。 と くに税
務職 員 の研修 に関す る一般 的 な計画 は存 しない とい うことで あった。
タイ国の所得課税 を,いや税 制全体 につ いて もそ うい って差 し支 えない と思 われ るが, それ
を貫 い てい る一種 の形 式主 義 (ここで はおお まか に,徴税 の便宜 の考慮 と結 びついた,担税力
に実質 的 にそ くした課税 の仕方 か ら離 れ る課 税 の仕方 をい う) は次の点 に も現 われてい ると思
われ る。す なわ ち, あ る者 が権源 に関す る文書 にかか げ られ た財産 の所有者 で あ りかつ その財
産 が課税所得 の源泉 を なす場合 , また はそのよ うな文書 によ って課 税所得 を取得 す る場合 , そ
の ことを示す権源 に関す る文書 に表 示 され た者 は当該所得 に対 す る所得税 を課 され る もの と さ
れ てい るので ある。つ ま り,権源 に関す る文書 に名前 の表示 されてい る者 が課税 され るとい う
名 義主義 が ここで採 用 され てい るわ けで あ って,通 常多 くの場合 は名義人 と実質 的な所得 の享
受者 とが一致 す るので あ るか らそのよ うな場合 は と くに問題 はないが,課 税 を免 れ るた めに財
産 の名義を分 散す るよ うな場合 は実体 にそ くした課税 は行 なわれ ない ことにな るので あ る。課
税 の不公平 は免 れ ないで あ ろ う。
i
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.法
人
税
2カ月で あ る。課 税所得 はい うまで も
課 税年度 は法人 の会 計年度 によ る。期 間 は原則 と して 1
ne
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丘t
)で あ る。 純益 を算定す るた めに 減価償 却費 の控
な く法人の事業 か ら生 ず る純益 (
除 が な され る場合 は勅令で定 め る減価償却率 によ って算定 されな けれ ばな らない。任意償 却 は
de
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i
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n)は認 め られ ない。正 当な理 由な く対 価を伴 わ ない
許 され ない。いわゆ る減耗控 除 (
で , も し くは市 場価格 よ り低 い対 価 によ って資産 の譲渡 がな され る場 合 は,市場価格 に基 づ い
た価額 が決定 され るO貸 倒損失 の控除 は認 め られ る。 しか し貸 倒 引当金 をは じめ 引当金 また は
準備 金 の設 定 は原 則 と して認 め られ ない。公 けの慈善 事 業 に対す る場合 を除 いて寄付 金 の控 除
交 際費 は合理 的な額 に限 って認 め られ る。
株主 も し くは組
は純益 の 1% まで しか認 め られ ない 。
合 員 に対 して支払 われ る給与 の控除 も合理 的 な額 の範 囲 内で認 め られ る。
一般 的 に,事 業遂行上
490
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6-
清 永 :タイ 国税 制 と税 務 行政
必要 な経 費 しか控 除 は認 め られ ない 。また,経 費 の支 出は一 般 にその受 領者 が明 らか に され ない
限 り控除 を認 め られ ない 。
以上 ,引当金 の控除否 認 といい,また減耗控 除 を認 めな い ことといい,
全体 と して必 要経 費 の控除 はわが国 な どに比べ て その認 め られ る範 囲 は狭 い とい って よいで あ
ろ う。 な お,個人所得 税 の場合 に認 め られ る必要経 費 の定額控除 の制度 は法 人税 には存 しない 。
法 人税 の税率 は比例税率 で はな くて緩 やかな超過 累進税率 と して定 め られてい る。
す なわ ち,
50
万 バ ー ツ以 下 の純益 につ いて は1
5
%,5
0
万 バ ー ツ超 1
0
0
万 バ ー ツ以 下 の純益 につ いて は2
0
%,
1
0
0
万 バ ー ツを こえ る純益 について は2
5% とい う具合で あ る
.
会 計年度 の終 了後 1
50日以 内に法人税 の納税義務者 は 申告書 を提 出 し, かつ 同時 に租 税 を納
付 しな けれ ばな らない。 納付先 は郡 オ フィス で あ る。 法人税 の納税 義務者数 は全体 と して約
1万 30
0
0, その うち9
00
0がバ ンコクおよび その周辺 部 に存在す るといわれてい るが , その納 税
情況 が必ず しもよ くない ことは 個人所得税 の場 合 と 同様 のよ うで あ る。 タイ国で は 一 般 に 所
得税 (
法人税 も含 む) の歳 入 中に 占め る地 位 を 引 き上 げ る ことが望 ま しい と考 え られ てい るよ
うにみ うけ られ るが, その た めにはおそ ら く税 法 白休 の改正 よ りもむ しろまず税務 行政 を強化
す るとと もに納税 義務者 の協 力をいか に して得 ることがで きるかを考 え る必要 が あ ると思 われ
る。 な お,納税 義務者 が 申告書 を提 出せず , また は必要 な会計記録 を な さず も し くは会計記録
を提 出 しない場 合において ,総 収入金額 のみ が判 t
j
J
]す るときは, その総 収入金額 の 2%の率 で
税額 を決定 す る ことがで きる, と されてい る。 これ も徴収 の便宜 の た めの一種 の形 式主 義 には
かな らないで あろ う。
ci
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ct また
個人所得 税 の場合 と同 じよ うに,政府 ,政府二
組織 , muni
はその他 の地方 行政庁 が法人 税 の納税 義務者 に対 して課 税 所得 を構成す べ き金額 を支 払 うとき
は, これ らの公 的な組織 は支払 いの際 に
1% の率 を も って源泉徴収 を行 な う。
0
% を こえ る場合
あ る個人 およびその家族 が有 す る株式 も し くは出資 の金額 が全資本金額 の 5
には,その会社 も し くは組 合 (同族 法人) は法人税で はな くて個人所得 税 を課 せ られ る。 この
よ うな法人 は その性質 上個人事 業 と異 な る もので はない との考慮 に基 づ くもので あ る。
なお,法 人が純益 も し くは純益 の積立金 につ いて タイ国外 において これ を処分す るときは,こ
れ に関す る申告書 を その処分 の ときか ら 7日以 内に提 出す るとと もに, その処分 にか か る金額
5%の税率 を適 用 した税額 を納 付 しなけれ ばな らない。 この よ うな特別 の課税 は タイ
について 1
園 内で獲得 した事 業 利益 が外 国 に送金 され るのを抑 え る ことを 目的 とす る もので あ るが, この
よ うな特 別 の課税 は タイ国 内で 法人 利益 の処 分 が な され る場合 は株主 につ いて個人所得 税 が諜
Pr
oceedi
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せ られ ること とのバ ランスを とるため に 支持 され る もので あ るといわれ て い る (
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964,p.
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東南 ア ジア研 究
2) 事
業
第 5巻 第 3号
税
事業税 の納税義務者 は歳入法典 中の事業税率表 にかかげ られ た各種 の取 引に従事す る者で あ
るが,貴金属 の販売 の場合 を除 いて,通常,取 引の一段 階 においてのみ課せ られ る。課税 標準
は各月 中の総収入金額 で ある。課税物 品および納 税義務者 な らびに税率 は大要 次の どと くで あ
る(か っこ内の百分比 は税率)。
冷蔵庫 , クー ラー,換気装 置,送風機 , 乾燥機 , 洗濯機 , 電気掃除機 , トースターその他
電気製 品,石 油 も し くはガス燃料 によ る製品,時計,テ レビ, ラジオ, レコ- ドプ レーヤー,
テープ レコーダー,楽器 ,映画用 カメ ラ,通 常の カメ ラ,映写機等 について は輸入業者 または
製造業者 (
1
2
%).電灯 ,電気扇風機 ,電 気 アイ ロン,原動機 つ き 自転車 , そのモーターについ
て は輸入業者 また は製造 業者 (
1
0
%)
。乗用車,定 員 1
0
名以下 のバ スについては輸入業者 または
2
0
%)
。 ウイスキー, ブ ランデ イ, ブ ドウ酒 その他 の アル コール飲料 について は輸入
製造業者 (
2
5
%,ただ しビール は 5%)
。国 内で作製 され る書籍 ,文書,印刷物 につ
業者 または製造業者 (
いて は第 1次段 階の販売業者 (
2.
5%)。金 ,プ ラチナ,銀 , ダイヤモ ン ド,サ フ ァイアその他
の貴 金属 および貴金属製 品 につ いてはすべ ての取 引段 階におけ る販売者 (3%)。 ゴム,鉱物 に
ついて は輸 出業者
(4%,ただ し これ らによ る製 品 について は 5%)
。工 場法 に定 め る工場 に
引 き渡 され る半製 品 または材料 と して用い られ る製 品で命令 にかかげ られ るもの につ いて は輸
出業者 または製造 業者 (
1
.
5
%)
。半製 品 また は材料 と して用い られ る製品で工場法 に定 め る工
場以外 に引き渡 され るもの について は輸 出業者 または製造業者 (5%)。半製 品 または材料 と し
て用 うべ き製 品で工場経営者 によ って他 に譲渡 され または材料 と して用 い られない もの につい
て は当該工場経営者 (5%)。 その他 の物品 については輸入業者 または製造業者 (5%)。精米 お
よび製材 について それ らの事業 の経 営者
(
3
.
5
%および 4%)
。電気 また は水 の供給 について そ
.
5
%)
。印刷 ,製本,写真 の撮影 ,現像 ,焼付 ,建築 ,広告 ,理髪美容等 の役
れ らの事業者 (1
務 の提供 について それぞれの事業者 (2%)。動産 の賃貸 について賃貸人 (
2.
5%)。倉 庫業 につ
いてその事業者
(
2
.
5
%)
。 ナイ トクラブおよびキ ャバ レー (
1
0
%)
,ホテ ル(
7
.
5
%), レス ト ラ
ン(5%),国産 の食事 ,衣 , コー ヒー等 を主 と して提供す る レス トラン (2%) の事業 につい
て その経営者 .運送業 について その事業者
(
0
.
5
%)
。質屋業 について その経営者 (
2
.
5
%)
。仲
買人 ,代理 人等 と しての役務 の提供 についてそれ らの者
(
5
.
5
%)
。不動産業 についてその事業
者 (
3.
5
%)
。政府機関を除 く金融機関の行 な う事業 につ いて その事業者 (
利子,割 引等 につい
.
5
%,通貨交換 ,流通証 券 の売買,海外送金 につ いて は1
0
.
5
%)。各種 の保険事業 につい
ては2
.
5
%,その他 の場合
て は保険業者 (
生命保険の場合 2
3%)
0
このよ うな事 業税 の課税 について 目につ くことは, ゴム ・鉱物 の事 業税 は納税義務者 が輸 出
業者 とされて い ることか らその性質 は輸 出関税で あ り, また各種 の物 品 につ き製造 業者 とな ら
んで輸入業者 が納税義務者 とされてい るが これ らの場合輸入業者 が納 税義務者 とな る事業税 は
4
9
2
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清永 :タイ国税制 と税務行政
輸入関税 と して の性質 を有 す る ことにな ろ う。 また,間接 税 は
一
般 に,生 活必需 品の課 税 を も
た らす よ うな課 税 ほ どの国で もで きるだ け行 なわないのが原則で あ るが,事業税 は このよ うな
原則 にかかわ らず精 米事業 ,電 気 ・水 の供 給 について も税率 は低 いが諜せ られ る ことにな って
い る ことで あろ う。
5日まで に申告 し, その 申告 の ときに納税
納 税義務者 は,毎 月 の課税 標準額 ,税額 を翌月 の 1
しなけれ ばな らない. 申告納税方 式 によ るわ けで あ る.収 入 のない場 合 で も申告 は必要 とされ
て い る。
3) 看
板
税
課 税年度 は暦年 によ る。看板 にかか げ られ た名前 ,商標 の帰 属者 が納税 義務 を負 う。興行 用
の看板 , チ ラシ広告 ,時 お り開かれ る市 場 の看板 等 は非課 税で あ る。納税 義務者 は毎年 3月末
5日以 内に納税 しなけれ ばな らない。
まで に郡 オフ ィスに申告書 を提 出 し,査定通知書 受領後 1
税率 は, タイ語 のみ の看板 につ いて は 500平方 セ ンチ メー トル また はその端数面 積 ごとに 1バ
0バ
ー ツ, タイ語 と外 国語 によ る看板 につ いて は 5バ ー ツ, タイ語 を含 まない看板 については 1
ー ツと定 め られてい る。ただ し広 告用看板 は これ らの 4分 の 1の税率 によ る。
4) 印
紙
税
納税 義務者 ,課税 物件,税率 は歳入法典 中 の印紙税額表 にかか げ られ てい る。土 地建物等 の
賃貸借 ,株 式社債等 の譲渡 ,資産 の買取選択つ き使用契約 ,請 負契約 ,金銭賃 借 ,保 険証券 ,
代理権委任 ,会社総 会 におけ る投 票権 の委任 ,為替手形 ,約束手形 ,船荷証券 ,株式社債等 の
利子
発行,小切手 ,銀行預 金 (
付 )
領 収書 ,信 用状 ,旅行者用小切手 ,運 送領収書 ,保証 ,担
煤 ,倉 庫証券 ,荷 役指 図書 ,代理 ,仲 裁裁定 ,会社設 立 ,組 合契約 ,受 領書,不 服 申立書 な ど
に関す る文書 につ いて 印紙税 が課せ られ る。税率 は 1通 につ きそれぞれ の金額 な どに応 じて種
種 に定 め られ てい る。た とえば受 領書 はその金額 20バ ー ツごとに10サ タ ン,土地建 物 の賃貸借
00バ - ツ ごとに1
0サ タ ン, とい ったよ うな具 合で あ る。 課 税物件 につ いてわが国
の場合賃料 1
の印紙税 と比べ て と くに 目につ くことは不動産の譲渡 に関す る文書 が全 く含 まれ ていない とい
うことで あ ろ う。
5) 娯
楽
税
各種 の入場料 金 を課税 標準 と して,入場券 に印紙 を貼付 す るか, ス タ ンプ付 の入場券 を使用
す るか また は現 金 の支払 い を も って ,納付 され る。娯楽施設 の所有者 が納付義務 を負 う。税 率
0% ,その他 20% ,これ らの各種 か
は次の ごと くで あ る。映画 50% ,文部省 が組織 す るスポーツ1
らな る場合,高 い ほ うの税率 。無料入場 の場合 に もその座席 の等級 に応 じて課 税 され る。収入
が公 けの 目的 にあて られ る場 合,歳 入局 長の承認 を得 て寺院 内で毎年 行 なわれ る催 し物 ,入場
料 が50サ タ ンを こえな い 場合,教 育施設 のた め文部省 が組織 す るスポー ツな どは課 税 され ない O
- 5
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4
9
3
東 南 ア ジア研 究
第 5巻 第 3号
6) 地 方 開 発 税
地方 開発 税 は,その徴 収費 を除 いて全 額 ,その徴収 され る県 の地方 開発 ,た とえば,教 育施設 ,
保健 セ ンター,道路,港鶴 ,公共 用 井戸 な どの建設 修理 のた めに充 て られ るべ き 目的税で あ る。
土 地 を所 有 しまた は個人 の所有 にかか らない土地 を 占有 す る者 は毎年 この税 を納付 しな けれ
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ばな らないO ただ し,居住 , 家 畜飼育 , 耕 作 のた めの土地 につ いて は, た とえば mun
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a以外 の土地 は 5ライ ,t
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a また は s
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t 内の土地 は
1ライが課 税 を免除 され る。 また,公 けの所有 にかか る土地 ,公 けの 目的 のた めの土地 ,宗教
にかか る土 地等 は非 課税 と され る。
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rが任 命す る委 員会 (若干 の民 間人 も含 む)が土 地 の me
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県の g
決定 し,この価額 が課 税標 準 とな る。税率 につ いて は 1ライ200バ ー ツ以下 の価額 の土地 に対 す
万 バ ー ツ以 下 の価額 の土 地 に対 す る 400バ ー ツまで42の
る50サ タ ンか ら 1ライ40万 バ ー ツ超 50
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tが定 め られ ,さ らに 1ライ50万 バ ー ツを こえ る土地 につ い て は価額 1万 バ ー ツ ごとに
1
00バ ー ツの税率 が定 め られ て い る。 ただ し, 季節 的作物 を栽 培す る農地 につ いては 普通 の税
率 の半分 の税率 を適 用 し, また遊 閑地 につ いて は普 通 の税率 の 2倍 の税率 を通 用 す る こと と し
てい る。
7) 各 種 消 費 税
清 涼飲料税 は清涼飲料 の製造 業者 または輸入業者 に対 して諜 せ られ,税率 は 440立方 セ ンチ
メー トル ごとに1
0サ タ ン,翌 月 の 1
5日まで に各 月 の税額 を納付 す る。
酒 税 は酒 類 の製造 業者 または輸入業者 に対 して課 せ られ ,税率 は純 アル コール飲 料 1 リッタ
ー につ き1
0バ ー ツ,蒸留酒 で ない もの につ いて は 1リッターにつ き 5バ ー ツ,翌 月 の 1
5日まで
に毎月 の税額 を納付 す る。
タバ コ税 は タバ コ販 売業者 およ び 製造 業者 に対 して課 せ られ , 税率 は製 造 業者 に 関 して は
C
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e l箱 10グ ラム以下 の もの につ いて は 2サ タ ン,10グ ラムを こえ るもの につ いて は 5
グ ラム ごとに 1サ タ ン, その他 の タバ コにつ いて は 1
0グ ラム ごとに 1サ タ ンと され てい る。 こ
れ らは証 紙 によ って納付 され るO この ほか一種 の免許税 が課 せ られ るo た とえば 1
00箱以上 の
タバ コを所有 す るタバ コ取扱 業者 は年 5バ ー ツ,C
i
gar
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t
eの製造 業者 は年 200バ ー ツを納付 し
な けれ ばな らない。 タバ コ税 は課 税 通知書 を受 領後 90日以 内に納付 す る。
か ぎタバ コ税 はか ぎタバ コの製造 業者 に対 して課 され , 1グ ラム ごとに50サ タ ンの税率 によ
り,課税 通知書 受 領後 30日以 内に納付 され る。
セ メ ン ト税 はセ メ ン ト製造 業者 に対 して課 され る。税率 は 1キ ログ ラム 当 り 5サ タ ン。課税
通 知書受 領後 1カ月以 内に納付 しな けれ ば な らない。
石 池税 は各種 製 品の製造業者 に対 して課 せ られ る.税率 はベ ンジ ン 1リッター ごとに 0.
8バ
ー ツ,灯 油 1リッター ごとに0.
33バ ー ツ,ジ ェ ッ ト航 空機燃 料 油 1リッター ごとに0.
33バ ー ツ.
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9
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清 永 :タイ 国税 制 と税 務 行政
デ ィーゼル 機 関燃 料 油 17
J ツタ- ごとに0
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1
2バ ー ツ,濃縮 潤滑 油 1キ ログ ラム ごとに 1バ ー ツ,
.
66バ - ツ,重 油 1 トン当 り 440バ ー ツ, ア ス フ ァル ト 1 トン当
液体 潤滑 油 1リッター ごとに 0
り1
0バ ー ツ。課 税 通 知書 受 領後 1
0日以 内に納 税 しな けれ ば な らな い。
00箱 につ
マ ッチ税 の納 税 義務 者 は マ ッチ製造 業者 。税率 は平 均 1箱 60本以 下 の場 合 マ ッチ 1
33バ ー ツ, 1箱 60本 を こえ る場合 は30本 ご とに 1
00箱 につ き 0.1
95バ ー ツを 加 え る。箱 に
き 0.
は い って い ない マ ッチ につ い て は 1キ ログ ラム 当 り 0.5バ ー ツ。課 税通 知書受 領後 1カ月 以 内
に納 税 しな けれ ば な らない。
カ ー ド税 は カー ド (
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d)販 売 業者 に 諜 せ られ る。税率 は 100枚 につ き10バ ー ツ。
0日まで に納 付 す る。他 に一 種 の免 許税 と して小 売業 者 は年 3バ - ツ,卸 売 業者 は年 30
翌 月 の1
バ ー ツを納付 す る。
8) 関
税
輸 入 関税 の課 税 物 品 は各 方 面 にわ た り多種 多様 で あ って そ の一 つ一 つ につ い て挙 げ る ことは
で きな い が, 関税 定率 令 に従 った大 まか な分 類 を示 す ことによ って あ る程 度 課 税 物 品 の 内容 を
知 る ことがで きるで あ ろ う。 関税定率 令 は輸 入 関税 品 目につ い て 21の分 類 を行 な って い る。 す
なわ ち,生 存 して い る動物 お よび動 物 製 品 ,植 物 製 品 ,動 植物 油 お よび その製 品 ,食 料 品 ,宿
涼飲 料 , アル コール飲 料 ,酢 およ び タバ コ,鉱 物 製 品 ,化学 製 品 ,樹 脂 プ ラス チ ック等 原料 お
よび その製 品 ,皮 お よ び その製 品 ,木 材 等 お よび その製 品 ,紙 原料 および その製 品,織 物 ,靴 ・
帽 子 そ の他 装身 具 類 ,石 ・しっ くい ・セ メ ン ト等 によ る製 品 ,貴 金 属類 ,重要 金属 およ び その
製 品 ,機 械 装 置,乗物 ,航 空機 お よ び船 舶 等 ,光 学 機械 ,医療 機 具 ,時 計 お よび楽 器 等 , 武器
弾薬 , その他 の製 品 ,美術 品で あ る。税 率 は従 価税率 の場 合につ いて い えば 5% か ら8
0
% の範
0% 台 ,20% 台 ,30% 台 の税率 で あ る。
囲 にわ た って い るが , もっ と も多 い税率 は 1
輸 出闇税 は, 栄 ,鉄 また は鋼 の ス ク ラ ップ, 皮革 , ゴム, チー クその他 の木 材 につ い て のみ
課 せ られ る.税率 は一 般 に低 く従 価 税率 の最 高 (ゴム板 の場 合) で 20% に と どま る。
4. 産 業 奨 励 措 置
税 制 を その国 の経 済発 展 の た めの イ ンセ ンテ ィブ と して利 用 しよ うとす る傾 向 はいず れ の国
にお いて もみ られ,しか も近年 ます ます 強 め られ る傾 向 にあ る とい って よいで あ ろ う。タ イ国 の
場 合 その よ うな措 置は通 常 の税 法 の 巾 に も若干 み られ る と ころで あ る (た とえば農 業所得 の所
得 税 免 除 ) が , と くに工 業 の 開発 に租 税 上 の刺 激 を与 えよ うとす る もの と して 1
962年 の産 業投
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)が あ る。 この法律 は 1954年 にで きた産
資奨 励 法 (
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)の特 別 措 置を拡充 発 展 させ た もので あ る.
この法 律によ る と,奨 励 す べ き産 業 活 動 を三 つの グル ープ に分 けて い る o
Aグル ープ に属 す
る産 業 活動 は国 の経 済 に と って必要 かつ不 可欠 の産 業 活 動 を いい , B グル ープ に属 す る産 業 活
動 は A グル ープ に属 す る もo
jよ り国 の経 済 に と って必要 かつ不 可 欠 の程度 が弱 い もの を い い ,
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東南 ア ジア研 究
第 5巻 第 3号
さ らに C グル ープ に属 す る産 業活 動 は A, B グル ープ以外 の もの をい う。いず れ の産 業 が どの
グル ープ に属 す るか は具体 的 に省 令 によ って指定 され て お り, この省 令 の定 め によ って タ イ国
政府 が どの よ うな産 業 の開発 を重要 と考 えてい るか を知 る ことがで きるで あろ う。省 令 は各 グ
ル ープ ごとに業種 , その必要 な規模 , 特典適 用条 件 な どを定 めて い る.
Aグル ープ に属 す る
業種 のみ をか か げて お くと次 の どと くで ある。製鉄 ,製 鋼 , スズ精 鋭 ,鉛精錬 ,亜 鉛精錬 ,鍋
精錬 , ア ンチモニ ー精錬 , タ ングステ ン精 錬 , マ ンガ ン精錬 , トラクター製造組 立 て, 自動車
スペ アパ ー ツ, 自転車 また は三 輪 オー トバ イ, 内燃 また は電 気原 動機 ,農 業用機械 ,揚水 ポ ン
プ,機械工 具 ,鋳鉄 管 ,鋼 管 , アズベ ス トス ・セ メ ン ト管 , プ ラスチ ック管 , 自動車 タイヤ チ
ュー ブ,二 酸 化炭素 ,苛性 ソーダ,炭酸 ソーダ または ソーダ灰 , ア ンモニ ア,硝 酸 ,塩 酸 ,演
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ex,化学肥料 ,プ ラスチ ック粉末 , 合成繊維 , ラ ック製 品 ,家庭電 気器 具 ,殺 虫剤 , ラ
ジオ部 品, テ レビ部 品, ラジオ ・テ レビ以外 の電 気製 品, フ イル ム, ミル ク製 品 ,植 物油 ,袷
凍 で あ る。
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この法律 によ る特別措 置の 通 用 を受 けよ うとす る者 は 投 資 委員会 (
総 理府 所管 の委 員会) に申請 書 を提 出 して, 被奨 励者 (
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定 して も らわね ばな らない。認定 され ると きはその 旨の証 明書 が交付 され る。
被 奨 励者 と な った者 (法人 も含 む) は, その行 な う 事 業 と競 争 関係 に立 つ 事業 を政府 が新
し く始 め る ことはな い こと, およ びその事 業 を国有 化 す る ことはな い ことの保証 を与 え られ る
とと もに,他 の法律 によ り許 され た範 囲を こえて事業 に必要 な土 地 の所有 を認 め られ る ことが
あ り, また原則 と して外貨 によ る海外 送金 が保証 され , さ らに被奨励 事業 の外 国人従 業員 (
熟
練 労 働者 また は専 門家) の タイ国 内滞在 につ いて特 別 の考慮 が与 え られ る。 この よ うな租 税以
外 の特典 とな らんで ,租 税上 の優遇措 置 と して は次 の ごと き ものが設 け られ て い る。
まず第 1に,産 業活動 に必 要 な機械 ,部 品 およ び付属 品, な らび に投 資委員会 が承 認 した組
立 式 の工 場建設 資材 その他工 場建設 に必要 な材料 および道 具 に関す る輸入 関税 が全 額免除 され
る。第 2に全 く同一 の これ らの もの につ いての事業税 が全額 免除 され る。第 3に,被 奨 励者 が
法 人 の場合 につ いて は, その法 人 が は じめて製 品の販 売 を行 な うか, も し くはは じめて所得 を
得 た年度 か ら 5課 税年 度 につ いて 当該産 業活 動 か ら生 ず る所得 に関す る税 (
法人所得 税)を免 除
され る。第 4に, ここで は じめて A, Bお よび Cの各 グル ープ- の分類 が意 味を もって くるの
で あ るが, A グル ープ に属 す る被奨 励者 につ いて は,投資 委員会 の定 め る 5年 間 内に生産 の た
めに用 い られ も し くは用 い られ るとみ られ る量 において, 当該産業活動 の用 に供 せ られ るため
に輸入 され た原 料 も し くは必要 な材料 に対 す る輸入 関税 およ び事業税 が全額免除 され る。 B グ
ル ープ に属 す る被奨 励者 につ いて は これ らの関税 およ び事 業税 の 2分 の 1が免除 され る。 さ ら
に, Cグル ープ に属 す る被奨 励者 につ いて は, この場合 は内閣 の承 認 を得 て投 資委 員会 の決定
す ると ころに従 い, これ らの 関税 および事 業税 の最高 3分 の 1まで の免除 が行 なわれ る。第 5
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2-
清 永 :タイ国税 制 と税務 行政
に,投 套委 員会 の決定 す ると ころに従 い,被奨 励者 の/
i 産 した生 産 物を輸 出す る場合 において,
それ に課 せ られ るべ き輸 出関税 また は事業税 の全部 また は一部 の免除 が行 なわれ る。最後 に,
投 資委員会 の決定 す ると ころに従 い,被奨 励者 の生 産 した生産 物 と同種 の生産 物 (
被奨 励者以
外 の者 の生産 した もの) につ いての輸入 関税 を増徴 す る ことが認 め られ る。
以上 のよ うに, タイ国で と くに認 め られ て い る産 業奨 励のための税 制上 の イ ンセ ンテ ィブは
すべ て免税 とい う方 式 が採 用 され て い るので あ る。周知 の よ うに産 業 に対 す るイ ンセ ンテ ィフ
と して採 用 され うる方 法 には別 の種 類 の もの も存在 しうる し, また他 国の例 に もこれ をみ る こ
とがで きるので あ る。す なわ ち,免税 とい う方 式 の ほか に,た とえば租 税 の繰 延べ を意味 す る
ところの各種 の利益 留保 的 な準備金 の設 定 の容 認 および通 常 の償 却額以上 の償却を認 め る特 別
償 却 の方 式 が存 す るので あ る。 この種 の もの は特定 の支 出を税 法上保護 し (た とえば試 験研究
の ための準備金) または特定 の機械設 備 の償 却 を早 め る ことによ って よ り新 しい機械設 備 の更
新 を促進 す る ことに役立 つ もので あ り,たんな る一般 的な租 税 の免 除 よ り場合 によ って はきめ
の細 か い特別措 置 と して働 き うる もので あ るが,同時 に税務行政 の観点 か らいえぱたん な る免
税 よ りい っそ う複雑 な問題 を提供 す ることにな ろ う。 タイ国の税務行政 の現状 か らい って よ り
単純 な免税方式 のみ の採 用 は あ るいは賢 明 なや り方 で あ るか も しれ な い。現在 の範 囲の奨 励措
置につ いて も, た とえば A, B, Cの三 つ の グル ープを 区分す る基 準 が必 ず しも明確 で はない
とか, この法律 を適 用 す るために必要 な各 企業 の実休の調査 が不 十分 で あ るために この法 律の
適 用 に当た って納税義務者 との問の紛 争 が 絶 えない とか, あ るいはまた関係職 員の数 が不十分
で あ るとかの批判 も聞 かれ て い る ことを考 え ると, よ り洗練 され た イ ンセ ンテ ィブを設 け る こ
とはむ しろ将来 の課題 とい って よ い よ うで あ る。な お ,1963年末 まで に被奨 励企業 の証 明書 を
7に及 びその資 本 合計 は 1
8倍バ ー ツに達 し,輸入 闇税免除朗 が 9千万
えた企業 は21
バ
ー ツに 運
す るといわれて い る。
Ⅲ
タイ国税制 の若干 の特 徴
以上 述べ て きた所 ですで に指摘 した ことも含 めて, タイ国税 制の若干 の特 徴 をなす点 を述べ
て お くことに しよ う。
税 制全体 を直接税 と間接税 と い う二 分論 に立 ってみ るな らば, タイ国 の税 制が著 し く間接税
7.
2% を 占め るとい うその数字
に傾 いて い る ことは明 らかで あ る。間接税 が全体 の国税収入 の 8
が この ことを物語 って い る。 このよ うな傾向は他の東南 ア ジア諸 国の税 制 と比べ て もタイ回の
場 合が もっと も著 しいので あ る。 しか も, この間接税 の なかで も閑税収 入が その半 分 に近 い税
収 を生 み だ して い るので あ って, このよ うな関税 重視 の傾 向 もまた他 の東南 ア ジア諸国の 場合
に比べ て もっと もきわだ って い るので あ る。多 くの場合 関税 と くに輸入 関税 は国 内産業 の 保護
の見 地 によ って支 配 され る ことが多 いので あ るが, タイ国の場 合はむ しろそれ によ ってで きる
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3-
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東南 ア ジア研 究
第 5巻 第 3号
だ け多 くの税 収 を挙 げ るとい う目的が もっと も重視 されて きて い るので あ る。 この よ うな関税
を 中心 と した間接税 に傾 いた税 制 はその間接税 とい う税 制 の性質 か ら して 当然担税 力 との観点
か らは逆進 的 に作用 す るもので あ って, その意 味で は担税 力 によ り適 合 した課 税 とい う近 代的
な税 制 の 目指 す価 値 を重視 しな い ことを意 味す る。 また間接 税 は一般 に指 摘 され て い るよ うに
直接 税 と くに所得課 税 ほ ど複雑 な行政 を必要 とせず また国民 の負担感 を直 接 に刺激 す る ことが
少 な いため に, この よ うな間接税 に偏 重 した タイ国税 制 はむ しろ税収 の確 保 の価値 を重視 す る
ことを意 味す る もので あろ う。
税 収 の確保 とい う見 地 に支 配 され る税 制 は もっと長期 的観 点 に立 つ な らば税 制 の種 々の経済
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cy を織 り込 んだ税 制 を 必 ず しも排斥
的影 響 を考慮 しそれ らを積極 的 に取 り入 れ た f
す る もので ない と思 われ るが, タイ国 の税 制 にはそのよ うな考慮 はほ とん ど払 われ て いない と
い って よいよ うで あ る。 む しろ,簡易 な徴税 の手 続 とい う観 点 が支 配 的で あ るよ うに思 われ る。
税 制全体 が間接税 によ って構成 され て い るとい う事 実 自体 ま さ し くこの簡易 な徴 収 の手 続 を意
味す るもので あろ うし, この よ うな観 点 は本来 複雑 な制度 で あ るべ き所得課 税 のなか に もい ろ
い ろな形 で あ らわれ て きて い るので あ る。政府‥
その他公 的な機 関が取 引の相手方 と して あ らわ
れ て くる場合 も含 む源泉徴収制度 の大 幅 な利用 ,必要経 費 に対 す る定額控除 制度 の採 用 ,一 定
の場合 の外形 標準 (
収入金額 ) によ る課税方式 の採 用 ,名義 人 によ る課 税 の承 認 な ど簡易 な徴
収手続 を示 す もので あろ う。 これ らの うち源泉 徴収制度 を除 く他 の諸方 式 の採 用 は担税 力 によ
り合致 した課 税 とい う所得 課税 のす ぐれ た特 徴 を弱 め る もの で あろ う0
新 しい税種 を創設 しあ るいは直接税 の比 重 を増 大せ しめ るため にはな によ りもその前提 と し
て税務 行政 の質 を改善 しな けれ ば な らな いで あ ろ う。 タイ国 の税務行政 あ るい は納 税者 の現情
か らい うな らば現在 の税 制 はむ しろそれ にふ さわ しい もので あ るか も しれ な い。 タイ国の租 税
制度 に とって必要 な ことは新 たな税 を採 用 す る ことで はな くて現在 の税 に関 して その 内容 に若
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nsの課 税 は是非 必 要 と思 われ る)もむ しろその行政
干 変更 を加 えなが ら(た とえば c
を いか に充 実 させ るか とい うことで あろ う。 その ためにはまず職 員 の訓練 に関す る一般 的 な計
画 が たて られ る ことが必要 で あろ う。 それ と ともに担 当官 によ り税 法 の解釈 が異 な る ことによ
って納 税者 との問 に無用 の紛 争 の生 ず るのを避 け るために も統 一 的 な行政 の執務基 準国の通 達 の ごとき もの-
わが
を設 け る ことが必 要 で はないか と思 われ るので あ る。 さ らに もっと
も重要 な ことは納税 につ いての国民 の協 力 を いか に して確保 す る ことがで きるか とい う問題 が
あ る。 この点 の解 決 はむ しろ税 制 とか税務行 政以外 の領域 の諸 事情 に多 く依 存 す る問題 で あ る
といわね ばな らな いで あろ う。
この小 論 で はなお論 ずべ き多 くの事柄 が取 り上 げ られ な い ままに残 されて い る。 その一 つ は
地方税 制で あ る.地方 税 につ いて はよ るべ き情報 が不足 して い るため に取 り上 げなか ったので
あ るが ,税制全体 の なかで果 た して い る地方 税 の役割 は非 常 に限 られ た もので あ るとい って よ
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清 永 :タ イ 国税 制 と税 務 行 良
いで あ ろ う。 ま た国民 全 休 ま た は国 民 の各 階層 (これ は い ろい ろ な)
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度 か ら区分 す る こ とがで
きるが) の租 税 負 担 の税 度 の 問 題 も論ず べ き事柄 で あ ろ う
。
しか しこの点 は筒 甲 に は論 じ られ
え な い問題 の一 つ で あ る。 なぜ な らばそc
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j場 合か な り広 く行 なわれ て い る と思 わ れ か-)
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に 圧潰 りの 困難 だ地方 住民 o
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j提 供 を 考慮 す る とい うI
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J題 が存す るか らで あ る
参
考
文
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アジア経済研究所 『アジア諸国の租税制度 Ⅲ- タイ ・香港 -』東京 ,1
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