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“千葉県発”ハラハラ・ワクワクの『地域活性化プラットフォーム事業』
プラットフォーム型事業の普及のための体験集
はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
この体験集をご活用いただくにあたって・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
Ⅰ.『地域活性化プラットフォーム事業』の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
1.事業の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
(1)事業設計の経緯
(2)事業の仕組み
(3)事業のねらい
(4)事業の成果
2.これまでの各地域での事業の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
3.変化・進化し続けるユニークな事業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30
4.立ち上げの経緯と背景 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36
(1)地域資源活用マップ作成事業のねらいと背景
(2)自治・分権化と市民活動・協働の広がり
(3)協働事業の体系化―豊中市
(4)地域資源の活用と協働―アサザ基金
(5)地域再生への包括的補助金制度―英・包括的都市再生予算
5.社会背景を見据えた事業の組み立て ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41
(1)欧米の事業の導入にあたって留意すべき点
(2)グラウンドワークの試み
(3)1980 から 90 年代のGWTのプロジェクト
(4)地域政策・都市計画関連の法制度の改正
(5)NPO(チャリティ団体)の動向
(6)企業の社会貢献
まとめ
Ⅱ.ハラハラ・ワクワクの『地域活性化プラットフォーム事業』 ・・・・・・・・・・49
1.地域活性化プラットフォーム事業の始まりと継続 ・・・・・・・・・・・・・・・49
(1)生みの苦しみ(制度設計)
(2)手探り状況での船出(まずは実践あるのみ)
(3)変化しながらの継続・育ての楽しみ(事業見直しのプロセス)
2.そもそも地域活性化プラットフォーム事業の目的は何なのか ・・・・・・・・・・63
(1)現場の戸惑い(学びながらの実践)
(2)市町村によって異なる事情(都市部・郊外・農村部)
(3)実践の中でようやく見えてきたこの事業の目的
3.地域課題の解決に向けたテーマ決め ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・70
(1)地域課題を掘り下げる(誰がどのように活動テーマを決めるのか)
(2)テーマを共有する(いろいろな分野のNPOを巻き込むテーマ決めのコツ)
(3)地域課題の達成のコツ(目に見える成果をあげやすく、継続性のあるテーマ)
4.地域の課題解決に向けたNPOの連携 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・82
(1)連携を促すPT会議
(2)連携は少しずつ進化する(まずは相互に知り合うところから始める)
(3)連携を進めるためのコツ
5.プラットフォームを形成するための体制 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・95
(1)地域活性化推進委員会の役割
(2)コーディネーターの役割
(3)県の役割
(4)市町村の役割
(5)行政内部の連携
6.今後のプラットフォームづくり支援に向けた展開 ・・・・・・・・・・・・・・115
7.事業の効果 ~アンケート調査結果から~・・・・・・・・・・・・・・・・・・118
千葉県発『地域活性化プラットフォーム事業』の経験則 ・・・・・・・・・・・・・123
(参考) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・126
1
これまでの実施形態
2
地域活性化プラットフォーム事業に係る協働推進専門委員会ワーキンググループにつ
いて
3 地域活性化プラットフォーム事業普及のための体験集作成までの軌跡
執筆分担・協力者一覧
は
じ
め
に
地域活性化プラットフォーム事業は平成15年度に始まり、事業の名称は各期により
変化(進化)しておりますが、これまで過去6年間・4期・8地域での実践を重ね、農
山漁村地域・都市近郊の住宅地、首都圏の一角をなす都市部といった千葉県特有の多様
な地域構成の中で、地域課題の検討・連携の仕組み・活動団体への支援方策などについ
て、多くの貴重な経験を重ねてまいりました。
この事業は、全国の都道府県・市町村で市民協働による事業が拡大してきているなか
で先駆けとなった事業です。この事業の進捗管理を所掌している千葉県NPO活動推進
委員会協働推進専門委員会は、地域課題に取り組んでおられる各団体のユニークで活発
な活動計画や報告をいただくたびにワクワクするのですが、現場の舞台裏ではハラハ
ラ・イライラ・ドキドキといった非常にご苦労されている場面も少なからず発生してい
ます。この事業の報告は各年度・各期でまとめられ公表されていますが、専門委員会で
は、市民協働やプラットフォーム型の事業の先駆けとして、こうした試行錯誤しながら
も前に進んできた舞台裏までをきちんと県内および全国に向けてお伝えする必要がある
のではないかという思いに至りました。
平成20年度に専門委員会内にワーキンググループを設置し、千葉工業大学建築都市
環境学科の協力を得て、関係者へのインタビューや座談会・活動団体へのアンケート調
査などを重ね、その当時の舞台裏や事業終了後の活動団体の成長についても詳しく情報
収集しています。
この普及のための体験集は、全国の都道府県あるいは市町村において市民協働やプラ
ットフォーム型の事業を企画する場合や、それらの事業を実際に推進していく上での現
場の様々な場面でご活用いただけると思います。
プラットフォーム事業における千葉県発の経験則が、より多くの皆様にご活用いただ
けることを願っております。
平成21年3月 ワーキンググループ一同
(この体験集は、平成21年10月に、協働推進専門委員会から「地域でのプラットフォ
ームづくりの支援」事業を引き継いだ連携促進部会において、現在実施中の香取市、山
武郡市の実施状況を加え、平成20年度版の一部内容を再構成し再発行いたしまし
た。
)
1
この体験集をご活用いただくにあたって
こいただくにあたって
この体験集は、過去6年間・4期・8地域で千葉県の地域活性化プラットフォーム事
業に直接関わった方々からの寄稿文、県や市町村の担当者、コーディネーターなど関係
者へのインタビュー、関係者による公開座談会、地域課題の解決のために現場で取り組
んでいただいた活動団体へのアンケート結果等をつなぎ合わせて、そこから経験則を導
き出すような内容になっています。
もちろん年度により事業名称や内容が異なり、それぞれの方々のこの事業の認識や思
いが異なりますから、統一した見解にはなっていません。また、あえてそれを調整する
ような編集も行っていません。その理由は、そうした認識や思いのズレをありのままに
読み取っていただくことやそれを調整しようともがいたプロセス自体がプラットフォー
ムやパートナーシップを構築するのに役立つと考えたからです。
また、この体験集では事業の資金については、あまり詳しく触れていません。こうし
た事業に投下できる資金の規模や継続は、市町村の方針や財政状況等で異なってきます。
事業の組み立てのためにお金の問題は重要ですが、あくまでも一つの手段であると考え
ました。この体験集では、それぞれの市町村で財政状況が異なっても、こうした事業に
取り組もうとする時に、資金計画を担当する方々の思いも含めて、それに関わる方々の
思いをどのように組み立てるかといった面で参考していただける内容になっています。
この体験集は以下のような構成になっています。
第Ⅰ編ではこの事業の概要と特徴について書いています。また、立ち上げ期の国内外
の状況や当時の千葉県での経緯についてもまとめています。
第Ⅱ編が本編になります。ここでは6つのトピックスに分類し、この事業に関わった
方の生の声をお伝えし、そこから
Point を導いています。また、活動団体から得られ
たアンケート結果について解説を付して紹介しています。
第Ⅱ編の後にある「千葉県発『地域活性化プラットフォーム事業』の経験則」では、
この体験集のまとめとしての経験則を大まかに整理し紹介しています。このまとめは、
体系化された結論というより、多くの複合的な視点からなるものをある程度強引に「ノ
ウハウ的に」まとめたものとして扱っていただければよいかと思います。
2
この体験集は、主に次の3つの部門の皆様にご活用いただきたいと考えています。
① 市民協働による事業やプラットフォームづくりを企画される都道府県や市町村の「行
政」の皆様、特に「NPO担当の部署」だけではなく、「個別の各種事業を担当され
る部署」の皆様
② 市民協働やプラットフォーム型事業をコーディネートする「中間支援団体(NPOを
支援するNPO)」や「コンサルタント」の皆様
③ 実際に現場で市民協働やプラットフォーム型事業に取り組もうとお考えの「NPO」
の皆様
「行政」の皆様には第Ⅰ編と第Ⅱ編の1・2・3章が特に参考になると思います。同
様に「中間支援団体」
「コンサルタント」の皆様には第Ⅱ編4・5章と「千葉県発『地域
活性化プラットフォーム事業』の経験則」
、現場で取り組む「NPO」の皆様には第Ⅰ編
の2章と第Ⅱ編7章がお役に立つと思います。まずは、第Ⅰ編で事業全体を概観してく
ださい。また、第Ⅱ編ではこれまでこの事業で得られた経験則を枠で囲んで
Point
Point
と
して示していますので、最初に Point をお読みいただき、その後ご興味のあるところに
ついて詳しくお読みいただいてもよいかと思います。
●NPOとは
市民の自発性に基づき、地域や社会の課題解決のために自立的・継続的に社会
貢献活動を行う営利を目的としない団体をいい、市民活動団体とも呼ばれていま
す。
このマニュアルでは、ボランティア団体、特定非営利活動法人(以下「NPO
法人」という)など、法人格の有無に関わらずこうした特徴をもつ団体をNPO
と表記しています。
●地域活性化プラットフォーム事業という名称について
これまで千葉県で実施してきたプラットフォーム型事業(地域資源活用マップ
作成事業、NPO主体の新たなまちづくり事業、県・市町村・NPOがともに築
く地域社会事業、地域活性化プラットフォーム事業)を総称して、地域活性化プ
ラットフォーム事業と表記しています。
3
Ⅰ.『地域活性化プラットフォーム事業』の概要
1.事業の概要
(1)事業設計の経緯
この事業の発端は、千葉県でNPO活動を推進していくための初めての基本計画であ
る「千葉県NPO活動推進指針」
(平成14年11月策定)です。
当時、県が設置したNPO活動推進懇談会において、この指針の策定作業を進めてい
ました。NPOの委員から「県と市町村のNPO施策がばらばらに行われている」「市
町村との関係を深めたいが、なかなか突破口が見つからない」「NPOが地域のさまざ
まな資源を活用できていない」といった意見が出て、指針に「地域資源活用マップの作
成」という行動計画が盛り込まれました。
それを受けて、米国のコミュニティ開発包括補助金(CDBG)や英国の包括的都市
再生予算(SRB)などを参考に、15年度に「地域資源活用マップ作成事業」という
名称で事業化したものです。
その後、何度かの事業名称の変更を経て、19年度から「地域活性化プラットフォー
ム事業」になりましたが、事業の基本的なスキームは変わっていません。
なお、事業設計の段階では次の点を考慮しました。
・ NPOの支援に当たっては、NPOの自立性や継続性を損ねないようにすること。
・ 事業を通じてNPOが力をつけるとともに、NPOと自治体との関係性をつくるき
っかけとなるようにすること。
・ 県が一方的に事業を実施する地域を選ぶのではなく、市町村が自ら事業参画の意思
を示す方式を採用するなどの配慮をすること。
4
(2)事業の仕組み
事業の概要
地域には、福祉、環境、安心・安全などの多くの課題がありますが、これらの課題を
解決するためには、様々な主体が役割分担し、相互に連携・協働することが重要です。
そこで、まず、市民・NPOをはじめとして、企業、学校、各種団体など地域の様々
な主体が協力して、また、県や市町村の関係各課が横断的に連携して、地域において取
り組むべき課題を検討します。
そして、NPOが中心となって、市民や様々な主体と連携し、また協力を得て、地域
資源の活用や地域の核となる人材の掘り起こしを行いながら、その課題解決に結びつく
活動を実施します。
これらを通じて、様々な主体によるネットワークづくりを図りながら、NPO同士や
地域の様々な主体が連携して、地域課題の把握、解決手法の検討から具体的な活動に取
り組む「プラットフォーム」
(地域課題の解決に向けた仕組み)を構築しようとするもの
です。
(※プラットフォームには出会いの場、活動の基盤、舞台の意味があります。
)
実施体制
「地域活性化推進委員会」と「地域活性化プロジェクトチーム(PT)
」の2つの組織
を設置し、実践と課題の共有・検討を循環的に積み重ねていく仕組みにより、事業を
推進していきます。
「地域活性化推進委員会」は、取り組むべき課題の洗い出し、活動を実施するNPO
(以下活動団体という)が取り組む活動が円滑に進むようサポートすること、地域活性
化プロジェクトチーム会議(PT会議)の運営支援、この事業のPRなどが主な役割で
す。構成メンバーは、地域のNPO関係者、住民の代表者、NPOに関する有識者、市
町村、県などです。そのほかに、課題に関係する機関(社会福祉協議会、企業、商店街、
町内会・自治会など)など、事業実施の過程で適宜必要な人材(機関)を構成メンバー
に加えることもあります。
「地域活性化プロジェクトチーム(PT)
」は、活動団体が地域課題や事業実施に必要
な情報を共有し、課題解決のための対処法について検討する組織です。構成メンバーは、
活動団体、地域活性化推進委員会代表者、市町村、県などです。
なお、コーディネーターが、この事業を地域活性化推進委員会主体で運営させるため
の事務局的な役割を担い、地域活性化推進委員会が行う各種事業の準備・運営・開催・
とりまとめ等を行うほか、PT会議の運営や活動団体の活動をサポートしたり、PT
会議で出た課題等を地域活性化推進委員会へつなぐ役割も持っています。
5
図1
地域活性化プラットフォーム事業イメージ
● 事業フロー
地域課題の
把握・検討
共通の
テーマを設定
複数のNPOが
テーマに沿って活動
● 実施体制図
地域活性化推進委員会
(解決手法を検討)
NPO関係者
関係団体
地域活性化プロジェクトチーム
(情報共有と実践)
支援
活動NPO
活動NPO
地域活性化
地域活性化
月1回開催
推進委員
推進委員
随時開催
市NPO課
市事業課
市担当
県NPO課
県事業課
活動NPO
現状・課題等
●事業全体の進行管理
●PT会議の支援
●事業の周知
活動NPO
県担当
●NPOによる活動状況報告
●団体間の交流
●事業の周知
地
域
の
課
題
解
決
力
の
強
化
コーディネーター
事業のコーディネート
事業の特徴
この事業は、県とNPO、あるいは市町村とNPOという2者の協働という形では
なく、県、市町村、NPOの3者がNPOの具体的な活動を通して、地域課題の解決に
向けて取り組む全国初の新しい協働のモデルです。
市町村、県、関係団体、NPOで構成する「地域活性化推進委員会」と活動団体が
集まる「地域活性化プロジェクトチーム」が実践と課題の共有・検討を循環的に積み
重ねていくサイクルがこの事業の骨格です。
また、行政が把握している地域課題の解決にNPOが協力するのではなく、地域活性
化推進委員会が地域課題のテーマを決定するところが特徴です。
さらに、地域課題の解決方策をNPOから提案を受ける方法を採っています。
6
事業の流れ
事業の実施地域は、市町村やNPOの公募により、決定されます。
事業の実施地域決定後は、まず「地域活性化推進委員会」を設置し、取り組む地域課
題について、協議し、重点テーマを設定し、地域活性化推進計画を策定します。
事業をコーディネーターに委託する場合は、この時点で、中間支援団体や民間企業
(コンサルタント)などからコーディネーターを募集し、選考します。
次に「地域活性化推進委員会」が中心となり、設定した重点テーマの発表と地域課題
の解決に向けたNPOからの提案事業募集を兼ねたキックオフフォーラムを開催します。
また、地域活性化推進委員会は、事業実施期間中、定期的にニュースレターを発行して
この事業を広く市民に広報していきます。
なお、NPOから提案された事業は、別途設置する審査会で審査され、課題解決に
取り組むNPOが選考されます。
その後、NPOは提案に沿った事業(活動)を約1年かけて実施していくことになり
ます。
また、提案が採択されたNPOは、
「地域活性化プロジェクトチーム」の構成員となり、
月1回程度の会議(PT会議)に参加するとともに、地域活性化推進委員会が主催する
中間報告会、成果報告会で事業(活動)の成果を発表することが義務づけられています。
成果報告会終了後、「地域活性化推進委員会」は、この事業で得られた成果を地域に
還元するために報告書を作成します。
7
図2
現在の地域活性化プラットフォーム事業の流れ
準備期間
県庁各課に、
「市町村やNPO等と一緒に取組みたい課題」を募集し、その後
事業を実施する市町村を募集・決定
モデル地域の決定
地域活性化推進委員会の設置
活動テーマの決定
コーディネーター(事業の調整役)を募集・決定
事業周知のためのキックオフフォーラムの開催
テーマに沿って活動するNPOの公募
2年目N P O 公募事 業 実施期間
1年目NPO公募事業実施期間
公開プレゼンテーション・審査会の開催
様々な分野の団体
が一つのテーマ
(地域課題)に沿
って活動
地域活性化プロジェクト 参加
チーム会議(PT会議)
の設置〔毎月開催〕
・採択された全団体が参加
・NPO間の関係作りの場
前年度の成果・課題を
踏まえた更なる取組を
実施
活動団体の決定
支援
NPOの活動
中間報告会の開催
成果報告会の開催
継続的な地域活性化プラットフォームの構築へ
8
地域活性化推進委員会
〔随時開催〕
連携促進策の検討、
情報共有・意見交換、
課題の解決策の検討、
ニュースレター等に
よる事業周知
(3)事業のねらい
この事業のねらいは、次の点にあります。
① 市民・NPOを主役とした、地域課題解決のための新たな仕組みの構築
②
様々な主体と連携することによる、課題解決のための広がりを持ったネット
ワークの形成
③
地域課題の解決のために、県、市町村、NPO、その他の地域の様々な主体の
役割分担の再構築
④ 地域における市民・NPO主導による課題解決に向けた取組の促進
⑤ 地域課題の解決のために活用できる地域資源の洗い出し及びその活性化
⑥ 中間報告会、成果報告会の開催やニュースレターなどによる情報提供等を通じた、
市民のNPOに対する理解の促進
(4)事業の成果
この事業を実施した結果、次のような成果が生まれています。
① 協働の基盤づくりの推進
地域活性化推進委員会やPT会議で、NPO、市町・県職員が一体となって議論
した結果、地域における協働の基盤(プラットフォーム)づくりが推進されました。
②
ネットワークの構築
PT会議の定期的開催により、団体同士の相互理解と新たな連携が進み、事業
終了後の自主的なネットワークが立ち上がり、活動が展開されています。
③
新たな地域課題・地域ニーズの気づき
活動を通じて、参加者のニーズを発掘でき、新たな地域課題に気づき、新たな
サービスの提供(次への活動展開)へつながっています。
④ 様々な地域資源の掘り起こし・活性化
事業を通し、地域で活動する人や、未活用であった豊かな自然、施設など、地域
資源の発掘と再発見がありました。
⑤
多くの市民への活動の周知
キックオフフォーラムや報告会の開催、ニュースレターの発行などにより、市民
や行政職員にNPO活動の理解と「市民参加のまちづくり」という機運が向上しま
した。
9
10
2.これまでの各地域での事業の概要
●第3期
●第1期
平成17 ~18 年度
ともに築く地域社会事業
【 栄町・西印旛沼流域】
平成15 ~16 年度
地域資源活用マップ作成事業
【 我孫子市・四街道市】
●第2期
●第4期
平成16 ~17 年度
ともに築く地域社会事業
【 浦安市・市原市】
平成19 ~20 年度
地域活性化プラットフォーム事業
【 南房総市・柏市】
●第5期
平成21 ~22 年度(予定)
地域活性化プラットフォーム事業
【 香取市・山武郡市】
実施年度
実施地域
四街道市
第1期
15~16
第2期
16~17
我孫子市
浦安市
市原市
栄町
第3期
17~18
西 印旛 沼流
域 (船 橋、
佐 倉、 八千
代、白井)
柏市
テーマ
子どもが伸びやかに育つ環境
づくり
商店街の活性化、地域スポー
ツの振興
安心・安全のまちづくり
いきいき市原ふるさとづくり
子どもがかけまわれるまち・
Sakae よみがえれ野良坊
印旛沼とその流域河川の水質
浄化に対する意識啓発と実践
活動
活動団体数
コーディネーター
(1 年目、2 年目)
11 団体、7 団体 ㈱計画技術研究所、
四街道市
10 団体、5 団体 ㈱計画技術研究所、
我孫子市
7 団体、6 団体
㈱地域計画連合
8 団体、10 団体 ㈱地域計画連合
12 団体
NPO法人
1 年目はテーマ ちば市民活動・市民事
検討
業サポートクラブ
11 団体
NPO法人
1 年目はテーマ とんぼエコオフィス
検討
アート(芸術文化)がつなぐま
ちづくり
8 団体、11 団体
地域が連携して取り組むグリ
ーン・ブルーツーリズム
多様な主体の連携・協働によ
る観光まちづくり~みんなで
つくる香取 ときめき・ふれ
あいの旅~
100年後のふるさとへの贈
り物~水と緑ときれいな空気
と心地よい空間を目指して~
10 団体、8 団体
第4期
19~20
南房総市
香取市
第5期
21~
山武郡市
11
10 団体
12 団体
㈱ワコールアートセ
ンター、
柏駅周辺イメージ推
進協議会(ストリー
ト・ブレーカーズ)
NPO法人千葉自然
学校
㈲浅尾計画事務所
NPO法人
コミュニティサービ
ス地球座
●四街道市(平成15~16年度)
テーマ:
「子どもが伸びやかに育つ環境づくり」
(1)事業内容
子どもたちの取り巻く環境が変化(テレビゲームの普及による家庭内での遊びの
増加、多人数での遊びの減少、市街化に伴う空間の減少など)している状況を踏ま
え、子どもたちが豊かな自然環境に触れる機会を提供するとともに、年齢や性別に
捉われない様々な人たちとの交流を促進することで、子どもたちが健全な成長を遂
げることができる地域づくりを目指し、
「子どもが伸びやかに育つ環境づくり」とい
うテーマで実施しました。1年目に地域課題の検討と課題解決のためにNPOが活
動を実施し、その反省と成果を踏まえ2年目にも活動を実施した2年間の事業です。
(2)事業の成果
事業終了後に、参加団体を中心とし、「ともに築く楽しいまち委員会」が結成され、
継続的に住みよいまちをつくるために議論し、活動の成果を発表しています。
また、
「ともに築く未来の会」では、当時四街道市に市民活動センターを立ち上げ
るということで、センター立ち上げに向けた勉強会や、市民活動を知ってもらう市
民活動フェスタを開催するなど、地域活性化に向けて動いていることが 1 つの成果
としてあげられます。
また、事業に参加した複数のNPOが中心になって、行政や学校と連携して、こ
どもの居場所「まじゃりんこ」を運営しています。このネットワークでは、県内で
唯一、文部科学省の事業である「放課後こども教室事業」をNPOとして受けてい
ます。
また、この活動団体の1つの「四街道にプレーパークをつくる会」が行った事業
が、千葉県の「まっ白い広場事業」などに展開されました。
プレーパーク(冒険遊び場)で遊ぶ
12
(3)活動団体と活動内容
年
度
団体名
15
A-の会
15
風
15
提案事業の名称
障害児者のライフステージを支えるネットワー
クの構築
障害児者の地域支援活性化と人材育成のための
資源活用
ポコ・ア・ポコ(ゆっくり行
こう若者たち)の会
15
ハートフルネットワーク
15
四街道
15
旭ヶ丘睦会
食と緑の会
すべての子どもに開かれた地域を
~自分を見
いだそうと努めながらも適応に悩む青少年に再
び自信と希望を~
心病む人たちとともに暮らせる地域社会をめざ
して
稲つくり・心も一緒に育てよう
まちを元気にする「旭ヶ丘ひと・まちマップづ
くり」
地元で生産された新鮮でおいしく安全な農産物
15
地元農産物を大切にする農家 を供給するシステムをつくる「子どもたちにお
いしい野菜を」
と市民の会
16
子どもたち・市民の農業体験
15
栗山鳥ノ下ビオトープ公園づくり
16
15
四街道メダカの会
間を創り、活用する事業
四街道にプレーパークをつく 子どもが育ちまちが育つ冒険遊び場を四街道に
る会
つくろう
四街道プレーパーク どんぐ
16
りの森
(16 年度
15
子どもたちが自然に親しむことができる水辺空
団体名称を変更)
“わくわく子どもエコプロジェクトみんなで森
をつくろう!”
子どもが育つ地域社会づくりは「三世代交流事
四街道こどもネットワーク
業」から
16
子どもフェスティバル「ハローワーク大作戦」
15
中学生も市民!
16
たすけあいの会ふきのとう
いっしょにいいまちつくろ
子どもたちも市民
「ほしいね、こんなとこ
ろ!」
16
たのしもう会
あつまって~しよう
16
四街道をきれいにする会
四街道から放置ゴミ、産廃の一掃をめざす活動
13
●我孫子市(平成15~16年度)
テーマ:
「商店街の活性化」、
「地域スポーツの振興」
(1)事業内容
地域における大きな課題であった「商店街の活性化」、「地域スポーツの振興」と
いう2つのテーマで、事業を実施しました。参加団体は、テーマに基づき新たな課
題やそれを解決する取組を通して、その成果を事業終了以降の計画づくりに活かし
ていく活動を目指し実施しました。1年目に地域課題の検討と課題解決のためにN
POが活動を実施し、その反省と成果を踏まえ2年目にも活動を実施した2年間の
事業です。
(2)事業の成果
当時県とのやり取りはいろいろ(激しい意見交換など)ありましたが、結果的に
地域課題解決力の強化という意味では、当初の制度設計に近いものではないかとの
意見もありました。実際に、団体が自立し継続的な活動を行うようになり、現在の
「白樺派カレー普及会」
(旧
我孫子に文学カレーをつくる会)が立ち上がり、まち
のPRに貢献しています。
当時の事業提案の中でも、白樺派カレーを作ったら盛り上がるのではないかとい
うことはありましたが、当時は、団体からの呼びかけで、
「白樺派カレーとまちづく
りを組み合わせて一緒にやりますか」と言ったときに、どうなるのか分からない段
階では、関係課も関われない状況でした。
しかし今は、白樺派カレーというレトルトもできて、市がもっている白樺派文学
館なども絡ませながら、観光事業をやっています。市の成果がわかると、県の方も
ガイドツアーができるかどうかなどの取材をしたり、いろいろなメディアに載せて
いこうという動きになっています。
14
(3)活動団体と活動内容
年
度
15
15
15
15
団体名
提案事業の名称
スマイルクラブ
我孫子・スポーツ振興プラン
我孫子市体育指導委員連絡協 「総合型地域スポーツクラブ育成」に向け
議会
ての調査研究とマニュアル作成
我孫子市体育協会
総合型地域スポーツクラブの設立
天王台バスケットボールクラ シンセサイザー(SYNTHESIZER)計画(~多
ブ
種多様なスポーツの総合と調和)
15
NPO法人あびこ子ども劇場 子どもがイキイキ育つまち
15
我孫子市消費者の会
ガレージセールをすすめる会
15・16 我孫子・男の井戸端サロン
街の活性化を図る
地域住民とで創る商店街の活性化(我孫子
15・16 我孫子おかみさん会
おかみさん会の店)
15・16 NPO法人テラスあびこ
15・16 我孫子の景観を育てる会
16
我孫子の特産品を創出し、地産地消で商店
スピードボールを楽しむ会
白樺派文学とその時代イメージを活かした
特色ある商店街づくり
我孫子の隠れた景観資産を「臨時開放」に
より活用してゆく活動
スピードボールを楽しむ会
景観資産の実態調査
15
●浦安市(平成16~17年度)
テーマ:
「安心・安全のまちづくり」
(1)事業内容
当時、市に防犯課を新設し、犯罪のないまちづくりを推進しており、
「犯罪の少な
いまちづくり」、「水辺の安心」、「消費者の安心」などを含めた「安心・安全のまち
づくり」というテーマで事業を実施しました。防犯に特化するものではなく、地域
コミュニティを強化していくことが、防犯につながるという視点からテーマ設定し
たものです。1年目に地域課題の検討と課題解決のためにNPOが活動を実施し、
その反省と成果を踏まえ2年目にも活動を実施した2年間の事業です。
(2)事業の成果
各活動団体がスキルや知識を身につけることができ、団体と団体が悩みを共有で
きる関係となったり、連携してイベントを行うまでになりました。
また、自転車盗難防止啓蒙パトロールの実施や防犯サミットの開催などの活動を
展開した結果、自転車盗難発生件数が減少するなど、軽犯罪の発生件数が大きく減
少しました。
事業終了後は、
「防犯サミット」や「新浦安文化村」など、活動に参加した全NP
Oが連携して、イベントを開催しています。
また、活動したNPOが、放置自転車対策で行政と連携して活動をしたり、本事
業の成果報告会に参加した教育委員会の要望で防犯紙芝居を学校で実施するなど、
NPOと市の連携が促進されています。
消費者サポーター養成講座
子育てガイドの制作
16
(3)活動団体と活動内容
年
度
16
16
団体名
浦安子育てネットワークMY浦
安
提案事業の名称
浦安の初心者ママを応援するイベント等
水辺の安心・安全を市民が自発的 安心・安全で、人々が親しめる水辺・ま
に担う会
ちづくり
16
チャータースクール設立準備会
新しい学校の研究
16
NPO法人チャイルド広場
キッズアイ体操を通じた子どもの防犯
16
安心・安全たすけ隊
暮らしのサポーター養成講座
16
高齢者問題研究会ユーユー
高齢者の安心・安全な生活の提案
16
17
子どもたちが「安全・安心」に通学でき
浦安防犯ネット(UBN)
る環境づくり
浦安防犯ネット浦安市内の企業及び市民
団体によるパトロールの強化
17
17
17
17
17
NPO法人タオ
子どもたちを犯罪から守る為の市民意識
調査アンケートと発表講演会
CPIセキュリティーアライア 自転車盗難の防止による「浦安版ブロー
ンス
クウィンドウ理論」の確立
高齢者問題研究会ユーユー
高齢者の安心・安全な生活の提案
Bayside防犯Commu 臨海地区の防犯活動の調査と防犯イベン
nity企画隊
浦安おはなしの会
トの企画実行
防犯をテーマとした紙芝居制作を通して
の安心・安全なまちづくり
17
●市原市(平成16~17年度)
テーマ:
「いきいき市原ふるさとづくり」
(1)事業内容
誰もが参加できて、かつ市内全体の市民活動を活性化していくことを目的に「い
きいき市原ふるさとづくり」というテーマで、いきいきと楽しく暮らせるまちづく
りを目指し、実施しました。市民・NPOなどの市民活動団体が主体となって、地
域資源を明らかにし、活用することに視点を置き、他のNPOや地域の様々な団体
と連携し、事業を実施しました。1年目に地域課題の検討と課題解決のためにNP
Oが活動を実施し、その反省と成果を踏まえ2年目にも活動を実施した2年間の事
業です。
(2)事業の成果
事業の実施を通じて参加者からのニーズを発掘することにより、新たな地域ニー
ズを発掘することができました。また、地域で活動できる人や、活用されてこなか
った豊かな自然などを活動に生かしていくことができました。
事業終了後は、事業を実施したNPOが中心になって、周辺のNPOも巻き込ん
で、
「加茂里山会議」が設置され、里山整備、不法投棄から地域を守るための意見交
換会や情報誌の発行など、情報発信における協力が進んできています。
個々のNPO間でも、イベントの協力、出展等の連携が進んできています。
市が、本事業の成果を踏まえて、市原市市民活動支援補助事業の実施、「市民活動
支援サイト
いちはらわいわい広場」においてNPO情報やイベントの発信を行っ
ています。
小学校に花時計を設置
滝の探索・清掃活動
18
(3)活動団体と活動内容
年
度
団体名
提案事業の名称
16 加茂里づくりの会
里山の見直し、保全、魅力アピール
空地や公園の清掃を通じたコミュニティ
16 さわやかな町つくり隊
16 制作舎
ーづくり
翔
演劇を通じた地域文化の再発見
16 辰巳地区・生活支援推進委員会
地域の困りごとと人材のマッチィング
16 NPO法人青葉台さわやかネッ 空家を活用したふれあいハウスの運営
17 トワーク
子どもから高齢者の居場所づくり
16 NPO法人もったねえよ・いちは
17
16
17
16
ら
遊休農地を活用したそばづくりから、農
家と消費者の交流を通じて食を考える
市原の歴史と文化がご馳走
滝の美化とマップ作りによる外部発信
市原ルネッサンス
南市原人と自然の復活・共生
都市青少年との交流を通じた地域の再発
われらプロジェクト in 小草畑
見
17
「農」といえる日本・藁・土・竹大作戦
17 NPO法人市原ネイチャークラ 里山の整備と炭窯・竹炭・工芸品づくり
ブ
17 南市原花いっぱい運動実行委員 南市原花いっぱい運動実行委員会
会
17 NPO法人ふるさといきがいづ ちはら台里山づくり
くり
17 NPO法人こころの相談室・いち メンタルヘルスケアの相談と心の病に関
はら
心と理解を深めてもらうための活動
17 市原米沢の森を考える会
市原米沢の森林・谷津田・巨木の保全と
整備
17 南市原応援団
南いちはら花いっぱい大作戦
19
●栄町(平成17~18年度)
テーマ:「子供がかけまわれるまち・Sakae
よみがえれ野良坊」
(1)事業内容
「子供がかけまわれるまち・Sakae
よみがえれ野良坊」というテーマで、子ども
たちが、のびのびと安心して遊び、走り回れるまちづくりを目指しました。
「野良坊」
とは、野山で駆け回って遊ぶ元気な子どもをさしています。1 年目に県・町・NP
Oなどが連携し、地域のミニ集会や視察研修などを行い、地域課題の洗い出しや地
域の核となる人材を掘り起こし、2年目にその課題解決のためにNPOが活動を実
施した2年間の事業です。
(2)事業の成果
栄町では、NPO活動推進については、ゼロからのスタートに近かったので、こ
の事業をやることにより、少しでもNPOが元気になる、NPOの活動をみんなに
知ってもらうことなどのレベルではじめました。1年間で地域活性化推進委員会を
12回開催することを意識し、課題を見つけるというよりも、このような事業を栄
町ではじめることをみんなに知らせることから始めました。行政とNPOだけでは
このような事業展開はできないし、コーディネーターとして中間支援型のNPOの
方が入ってくれたことでできたものです。この事業は、これからNPO施策を進め
ていこうという地域で行なった方が効果があるのではないかと思います。栄町のよ
うな小さな町では、この事業をとおして大きく成長しました。
成果としては、地域資源の発掘ができたことや活動団体と住民活動センターの運
営委員などが参加して、相互に事業協力やイベント参加、情報交換を行う緩やかな
ネットワークである「緑道で遊ぼうかい」という組織が立ち上がり、「ひと・もの・
おもいをつなげて元気なまちを創ろう!」という考えのもと、地産地消として、地域
で取れたものを緑道で販売するのら市(野良坊市)を毎月1回開催するなど地域を
活性化するために今も活動が続いています。
また、この事業を通して、コーディネーターの重要性を知った地域の活動団体の
1つが「まちづくりサポートひと・まち倶楽部」という名称でNPO法人化し、中
間支援NPOとして栄町をはじめ、北総地域において活躍し成長し続けています。
20
(3)活動団体と活動内容
年
度
18
団体名
安全・安心を考えてみんなで遊
び隊
こんにちは
提案事業の名称
公園紹介パンフレット作成事業
18
GUIDE
子ども国際交流
18
ちゃちゃの会
18
酒直小地区防犯住民の会
18
ちゃりんこ仲間・ドラム探検隊
地域を探ろう栄町一周自転車探検隊
18
栄カヌークラブ
カヌーに挑戦・カヌーっ子クラブ
運動が苦手な子どものためのからだ遊び塾
地域の安全パトロール活動~子ども達の安
心・安全を願って~
町道 19015 号線・通称大芝土手を復活し、
18
栄町さくらの会
子どもたち(野良坊)を自然とのふれあい
のなかで元気にする事業
18
未来探し隊
よみがえれ
18
花・花H2O
中学生がつくる“あい・あいアート広場”
18
18
18
まちづくりサポート ひと・まち
倶楽部
ゆめ街道
人材発掘のためのプレ調査事業
特定非営利活動法人 栄町観光 ドラムティックキャンプ「ドラムの里でド
協会
ラマティックな夏の思い出を」
たすけあいネットワーク フレ
ンズ
多世代交流事業
からだ遊び塾
地元中学生と共同で壁画制作
21
●西印旛沼流域(船橋市、佐倉市、八千代市、白井市)(平成17~18年度)
テーマ:
「印旛沼とその流域河川の水質浄化に対する意識啓発と実践活動」
(1)事業内容
印旛沼の浄化目標達成に向けて、汚濁発生源、流入河川の各地点で市民やNPO
などが実践可能な負荷削減対策を展開することを目的に「印旛沼とその流域河川の
水質浄化に対する意識啓発と実践活動」というテーマで実施した事業です。初の4
市(船橋市、佐倉市、八千代市、白井市)という広域エリアでの実施で、市民・行政
協働型の印旛沼流域4市での浄化モデル事業の実施を通じて、印旛沼流域の課題整
理、ネットワークの拡充、市民の理解促進を図ることを目指し、1年目に地域課題
を検討し、2年目にその課題解決のための活動をNPOが実施した2年間の事業で
す。
(2)事業の成果
初の広域での取組ということで、流域4市(船橋市、白井市、八千代市、佐倉市)
の市行政との関わり方が難しかったという現状がありました。また、事業に関わっ
た4市においてもそれぞれ受け止め方に差があり、市・NPO・県が事業の趣旨を
共有する時点でのすり合わせ不足が原因なのか、3者においても温度差が感じられ
ました。3者それぞれが具体的な目標を掲げてから、役割分担を話し合う機会を設
けることや、次への展開については多くの課題が残りました。
一方で、この事業をとおして、企業を巻き込んだ仕組みづくりに展開され、活動
団体と地域活性化推進委員会、事業のコーディネーターなどが、企業や行政と協働
しながら、印旛沼、手賀沼流域の浄化に取り組む「印旛・手賀沼環境あっぷ協議会」
という、事業終了後も活動を継続していくための中間支援組織が立ち上がり、環境
の向上と地域社会の活性化を推進することを目的に現在も活動に取り組んでいるこ
とは成果の1つです。
川での生物調査、ごみ拾い
いかだを使った「空芯菜」の水耕栽培
22
(3)活動団体と活動内容
年
度
団体名
18
千葉県自然観察協議会白井地区
18
NPO法人八千代オイコス
18
NPO法人印旛野菜いかだの会
提案事業の名称
夏枯れする源流小水路のビオトープ型浄
化
花輪川に生き物を取り戻そう
―印旛沼再生は身近な河川の浄化から―
水路におけるビオトープ型浄化活動と環
境学習
幼児・児童
18
NPO法人アフタースクール
夏休み親子自由研究
「小魚放流&野菜作りで印旛沼あっ
ぷ!」
18
18
18
18
18
18
18
NPO法人千葉県障害者就労事 汚泥および外来水草の除去、堆肥化と障
業振興センター
害者就労の融合
印旛沼をきれいにする活動
環境パートナーシップちば
NPO法人せっけんの街
―― 印旛沼流域子ども会議 ――
佐倉 「かいわれだいこんの発芽実験キット」
運営委員会
で環境授業を提供
まちネット・ふなばし
船橋水辺探検と散策マップづくり
NPO法人印旛沼広域環境研究 ―集落の水土里(農地・水・環境)保全事
会
業―
NPO法人ナレッジネットワー
ク
印旛沼環境団体連合会
~コメ農家・食育促進について~
印旛沼エコネット放送局
印旛沼流域の環境情報発信の仕組みづく
り
23
●柏市(平成19~20年度)
テーマ:
「アート(芸術文化)がつなぐまちづくり」
(1)事業内容
「アート(芸術文化)がつなぐまちづくり」をテーマに、市民(団体)が主体的
に芸術文化活動に参加することを通じて、各団体の活動の促進をはかるとともに、
市民が芸術文化に触れられる機会を創出し、さらに、市民や団体間など様々なネッ
トワークを形成することで、まち自体の魅力を向上し活性化させることを目指した
事業です。事業実施の前年度に地域課題を検討し、1年目に課題解決のための活動
をNPOが実施し、2年目にもその反省と成果を踏まえ活動を実施した2年間の事
業です。
(2)事業の成果
各活動団体の広報力のボトムアップや各団体間の交流・連携が順調に進展しまし
た。また、活動目的の他に手段としてのアートといった複数の要素を持つことが重
要であることに各団体が気づくことができました。
事業終了後には、事業に参加したNPOの連携意識の高まりを受けて、柏市では、
その意識を少しでも実現しやすくするため、複数の市民団体が共同目的で行う場合
の助成金である「かるがもコース」が新設されました。この助成金には、活動団体
同士や活動団体と商店街の連携による事業が申請されるなど、連携の機運が向上し
ました。
また、JOBANアートラインというイベントや柏の葉でのイベントに、活動団
体が参加するなど、穏やかな連携が進んでいます。
グラフィティペインティング(落書き)
のシンポジウム
木の実を使ったおもちゃ作り
24
(3)活動団体と活動内容
年
度
19
19
団体名
サーカスツアー実行委員
会
柏駅周辺イメージアップ
推進協議会
19 東葛映画祭実行委員会
提案事業の名称
アートフェスタ『ひみつきち』
音街かしわ2007
東葛映画祭
19 “Lime”
〈
“ライム”〉 “Lime-Chair”
(“ライムチェア”
)
19 JOBANアートライン アートラインかしわ2007
20
プロジェクト柏実行委員 JOBANアートラインプロジェクト柏200
会
8
19 URBAN BACK- URBAN WORKS 2007
SIDE LABORA
20 TORY〈都市裏実験所〉 URBAN WORKS 2008
柏市民劇場CoTiK第一回公演『ロミオとジュ
19
柏市民劇場
CoTiK
20
リエット』
柏市民劇場CoTiK第二回公演『源氏物語』
19 NPO法人
エコ平板・ 市民が創るモザイク・フラワーポット
20 防塵マスク支援協会
障がい者と創るフラワーポット
20 NPO法人 牧場跡地の 『空をキャンパスに牧場(まきば)を描こう-空
緑と環境を考える会
飛ぶ牛』
(地域ぐるみの大凧あげ会)
20 音楽通心ネットワーク
音楽通心ネットワーク
20 カラフルチルドレン
カラフルチルドレン in 柏
20 NPO法人 NPOこど キッズアートシャワー@柏
もすぺーす柏
20 イトウセイホーGrou 柏のファッションリサイクルプロジェクト
p!
20 柏子どもの文化連絡会
第12回ウルトラキッズ大会
増尾のもりでい
っしょにあそぼう!
20 グループSEC(セック) Stop the Aids Campaign with Youth in Kashiwa
地域で“性共育”をつく ジモト柏・若者の街から世界エイズデー キャン
る会
ペーン
25
●南房総市(平成19~20年度)
テーマ:
「地域が連携して取り組むグリーン・ブルーツーリズム」
(1)事業内容
NPO(市民活動団体)を主体に、農林漁業体験施設や交流拠点施設、観光産業、
関連する地域産業などのさまざまな主体が連携・協力することにより、都市住民が
何度でも訪れたくなる魅力ある地域を目指し、
「地域が連携して取り組むグリーン・
ブルーツーリズム」をテーマに実施した事業です。事業実施の前年度に地域課題を
検討し、1年目に課題解決のための活動をNPOが実施し、2年目にもその反省と
成果を踏まえ活動を実施した2年間の事業です。
(2)事業の成果
ニュースレターの発行により、市内外で各団体の理解が深まりました。また、ニ
ュースレター作成の議論の過程で各団体ともチラシ作成のポイントを学ぶことがで
き、情報発信に対する関心が高まりました。
活動団体の実施した収穫祭に、南房総市観光協会が同日にイベントを開催し、両
イベント会場と駐車場を周遊するバスを運行するなど、活動団体と観光協会、JA、
道の駅、宿泊業者との連携が生まれました。
事業終了後は、コーディネーターを中心とした全市的なネットワーク形成が、で
きあがりつつあります。
地域活性化プラットフォーム事業のノウハウ(PT会議や中間報告会など)を南
房総市にマッチした形で市民提案型まちづくりチャレンジ事業に取り入れるよう検
討がなされ、中間報告を取り入れる予定となっています。
クルージングガイド養成研修
秋の収穫祭での案山子コンテスト
26
(3)活動団体と活動内容
年
度
団体名
特産品加工開発と異業種交流を通じての宣伝
19
くこの実会
19
いちご倶楽部
19
布野環境整備組合
19
安房拓心高校土木部
19
20
19
20
19・20
農産物に関する会員制の導入事業
富浦エコ
ミューゼ研究会
小向ダム周辺ハイキング・サイクリング道路整
備事業
南房総市ハイキングコースの提案
いなか発見伝inたのくろ
いなか体験塾inたのくろ
富浦総合ガイド養成事業
緑の探検(樹木ラリー)と紙芝居を活用した大
房岬ガイド養成ステップアップ事業
和田町農産物加工組合 地域活性化わくわく事業
NPO法人
19・20
普及事業
たのくろ里の村
NPO法人
提案事業の名称
ネイチャ
ースクールわくわくW アピールMINAMIBOSO
ADA
19
20
竹の子会
19
グリーンクラブ
20
和田浦くじら食文化研
究会
20
20
おかみさんの会
上三原さわやか会
グリーンクラブ・
城山登山道を生かす会
あったか交流!ハートで活性化
山河と銀河のディスタンス
活性化施設「花の情報館」を有効利用した地域
活性化事業
くじら料理と鯨文化の継承事業
小向ダム周辺を整備し都市住民等との交流を
深め地域活性化を図る事業
白浜の魅力発見事業
27
●香取市(平成21年度~)
テーマ:「多様な主体の連携・協働による観光まちづくり~みんなでつくる香取
ときめき・ふれあいの旅~」
(1)事業内容
自然環境、農業、食、町並み、建物、歴史、人材などの地域資源を再発見し、そ
れらを活用した地域づくりに取り組むことや、都市と農村の交流による新たな観光
資源の創出や地域資源の活用によるコミュニティビジネスの起業などによる地域振
興を目指し、
「多様な主体の連携・協働による
観光まちづくり~みんなでつくる香取
ときめき・ふれあいの旅~」をテーマに実
施している事業です。事業実施の前年度に
地域課題を検討し、平成21年度は地域課
題を解決するためにNPOが活動していま
す。
都市住民との交流による整備作業
(2)活動団体と活動内容
年
度
21
21
団体名
提案事業の名称
NPOかとり宮中機微の会
香取の杜活性化プロジェクト
NPO婆沙羅
きもので楽しむ佐原の町並みプロジェク
ト
21
栗源特産品開発源流会
地域ブランド拡張商品開発事業
21
座・音遊
まちぐるみ文化振興事業
21
里山古道保存会
里山応援隊の古道復活プロジェクト
特定非営利活動法人
美味しく食べる推進事業(イチジク栽培
香取市与田浦を考える会
等)
ボランティア栗源
自然をまとう草木染めプロジェクト
ボランティア集団山人
豊かな生態系、豊かな自然、豊かな人の
(やまと)
心の育み事業
まちおこし佐原の大祭
佐原お祭りマエストロ事業
21
21
21
21
21
振興協会
やまだ元気隊
真夏のミニサンタ IN 大クス
28
●山武郡市(山武市、東金市、芝山町、横芝光町、大網白里町、九十九里
(平成21年度~)
町)
テーマ:
「100年後のふるさとへの贈り物~水と緑ときれいな空気と心地よい空間
を目指して~」
(1)事業内容
近年荒廃が目立っている森林の活用・再生や、環境に負荷をかけない生活をする
など家庭や暮らしの中でできる省エネ活動の普及・啓発を行うことにより、
“サンブ
スギ”などの自然や産業、文化・歴史などの豊かな地域資源を活用して、地球温暖
化防止の輪を広げることを目指し、
「100年後のふるさとへの贈り物~水と緑とき
れいな空気と心地よい空間を目指して~」をテーマ
に実施している事業です。事業実施の前年度に地域
課題を検討し、平成21年度は地域課題を解決するた
めにNPOが活動しています。
(2)活動団体と活動内容
ジュニアエコキャンプ
年
度
21
21
21
21
21
21
21
21
21
21
21
21
団体名
提案事業の名称
大網白里子育て支援ネットワ エコパーク大網白里「こども村」(仮称)
ーク協議会
建設・運営
地域の木を使おうかい
木をできるだけ使おう!木のすばらしさ
を知ろう!
特定非営利活動法人ユース・サ 地域が育てる大人と子どもの遊び空間づ
ポート・センター・友懇塾
くり
NPO法人さんむ環連協
さんむの自然テーマパーク
クリーンビーチの会
赤ちゃんがハイハイできる九十九里浜を
つくるプロジェクト!!!
竹炭サークルかぐや姫
里山環境保全事業
あっとほっと編集室
大網エコウォーキングキャンペーン「あっ
とほっとまっぷプロジェクト」
早船里山の会
早船里山の整備及び保全活動事業
さんむフォレスト
資源循環型のすまいづくり・くらし方講座
さんむ杉のこ会
ゴミでアート in 日向
山武「健康とふくしの会」
成東病院エコ・コミュニティ事業 成東病
院「健康と安心の駅」化計画
大網白里まちづくりサポート おおあみしらさとの自転車利用推進
センター環境部
29
2.変化・進化し続けるユニークな事業
3.変化・進化し続けるユニークな事業
●発展経緯
~平成
14 年~
平成14年
○千葉県NPO活動推進指針の行動計画に位置づけ
・ 白紙の段階から市民・NPO主導で「千葉県NPO活動推進指針」を策定(平成14年11月)
・ 「NPO立県千葉」の実現、すなわちNPOが日本で最も活動しやすい千葉県を実現することに
より、市民の視点に立ったより良い地域社会をつくるための指針
・ 「NPOによる地域やコミュニティの社会的課題解決の力を強化する」という指針の目的を達成
するための具体的な行動計画の1つとして「地域資源活用マップの作成」を盛込む
・ 地域でNPOが課題解決に取り組もうとするとき「地域にある様々な資源がうまく活用できない」、
「県と市町村のNPO施策がばらばら」、「市町村と連携したいがうまくいかない」といった
NPOの思いから地域資源活用マップ作成事業が誕生
~平成
15 年~
平成15年
○ 地域資源活用マップ作成事業スタート(第1期事業)
○ 実施地域は市町村から募集
○ 民間コンサルタントが事業をコーディネート
・ 事業を行うモデル地域を募集し、6市町村の提案の中から我孫子市と四街道市を選考(平成15
年3月)
・ 2つのモデル地域(我孫子市、四街道市)で「地域資源活用マップ作成事業」を開始
※ 「地域資源活用マップ」は、地図の作成を目的としたものではなく、モデル地域の
課題の把握とその解決手法に係る作成物の名称として使用しています。
・ 地域活性化プロジェクトチーム世話人会(現在の地域活性化推進委員会)を設置し、取り組む
べき地域課題について協議し、重点テーマを設定
・ 四街道市では「子どもが伸びやかに育つ環境づくり」をテーマに11団体が、我孫子市では
「商店街の活性化」
、「地域スポーツの振興」をテーマに10団体が活動を展開
・ 県が事業に参加しながら、市町村とNPOの関係、NPOや地域のニーズ、市町村のニーズなど
を把握し、NPOが参加しやすい枠組みやノウハウを市町村に提供する方式を採用
・ 事業実施に際し、コンサルタントがコーディネートを担う(県がコンサルタントに委託)
30
平成16年
~平成
16 年~
○ 地域課題解決から連携促進への動きに
○ 第1期事業を「NPO主体の新たなまちづくり事業」に、第2期事業を「県・市町村・
NPOがともに築く地域社会事業」に名称変更
第1期 2年目事業 NPO主体の新たなまちづくり事業
・ 「地域資源活用マップ作成事業」の2年目事業は、1年目事業の成果を活かし、明確化された
地域課題を市民・NPO主導で解決していく仕組みづくりを推進する「NPO主体の新たなまち
づくり事業」として実施
・ 地域活性化プロジェクトチーム会議を傍聴できる旨を広く市民に広報するとともに、前年度参加
のNPOとの連携を促進するなど、さらに地域全体を巻き込んだ事業展開へ
・ 四街道市では「子どもが伸びやかに育つ環境づくり」をテーマに7団体が、我孫子市にて「商店
街の活性化」
、
「地域スポーツの振興」をテーマに5団体が2年目事業として活動を展開
・ 事業実施に際し、市(四街道市)又は地域活性化推進委員会(我孫子市)がコーディネートを担
った。(県が市に委託。我孫子市:市が推進委員会と協定)
第2期 1年目事業 県・市町村・NPOがともに築く地域社会事業として実施
※ 事業名については、1年目の15年度は「地域資源活用マップ作成事業」でしたが、
NPOがさまざまな機関・組織と連携することが課題解決力を強化することにつながる
という点が名称からはわかりにくいとの指摘が多かったことから、この点を明確化する
ために「県・市町村・NPOがともに築く地域社会事業」に変更。
・ 「県・市町村・NPOがともに築く地域社会事業」として、新たなモデル地域を募集
・ 市原市、浦安市が選考され、市原市では「いきいき市原ふるさとづくり」をテーマに8団体が、
浦安市では「安心・安全のまちづくり」をテーマに7団体が活動を展開
・ NPOが行政や各種団体などと連携し、重点テーマの実現に向けて、取組を推進
・ 事業実施に際し、コンサルタントがコーディネートを担う(県がコンサルタントに委託)
31
~平成
17 年~
平成17年
○ 第3期事業は1年かけて地域課題を検討
○ 実施地域は市町村に加え、NPOからも募集
○ NPOが事業をコーディネート
○ 広域(複数の市町村)で事業実施
第2期 2年目事業 NPO主体の新たなまちづくり事業
・ 2年目事業として、平成16年度の事業結果による課題を踏まえて、更なる活動展開するために、
市原市の10団体が、浦安市の6団体が、前年と同じテーマで事業を実施
・ 事業実施に際し、コンサルタントがコーディネートを担う(県が市に委託。市がコンサルタント
に委託)
第3期 1年目事業 県・市町村・NPOがともに築く地域社会事業
・ 「県・市町村・NPOがともに築く地域社会事業」のコーディネートをするNPOと事業を実施
する地域として市町村を募集
・ 栄町及び船橋市、佐倉市、八千代市、白井市を含む西印旛流域の2地域を選考
・ 栄町では地域活性化推進委員会を設置し地域ミニ集会や視察研修などを行い、西印旛流域では
印旛沼あっぷ準備会を設置し、1年目事業として地域課題を洗い出し
・ 事業実施に際し、NPOがコーディネートを担う(県がNPOに委託)
32
~平成
18 年~
平成18年
○ 第4期事業は新たな展開へ
○ 実施地域は市町村から募集(県テーマの中から地域課題を選択)
○ 事業実施前年度(2か月)に地域課題の洗い出し、掘り下げを実施
第3期 2年目事業 NPO主体の新たなまちづくり事業
・ 栄町では「子どもがかけまわれるまち・Sakae-よみがえれ野良坊」をテーマに12団体が、船橋
市、佐倉市、八千代市、白井市を含む西印旛流域にて「印旛沼とその流域河川の水質浄化に
対する意識啓発と実践活動」をテーマに11団体が活動を展開
・ 事業実施に際し、NPOがコーディネートを担う(県がNPOに委託)
第4期
地域活性プラットフォーム事業の準備
・ 「地域活性化プラットフォーム事業」の募集
※ 県の主要政策や広域的課題に合わせた事業実施への転換として、創り出された事業。
県の重要課題等の中から、NPO、市民、行政(県・市町村)等が連携して、地域に
おいて取り組むべきテーマ(課題)を検討し、その課題解決に結び付く、市民やNPO
等が主体となった複数の事業を実施。
・ 県の重要課題からテーマを検討し、実施地域を市町村から募集し、柏市、南房総市を選考
・ 柏市においては、県環境生活部文化振興課が掲げた「公共施設等を利用した文化拠点づくり」と
いう課題を地域活性化推進委員会で掘り下げ議論した結果、「アート(芸術文化)がつなぐまち
づくり」をテーマに決定
・ 南房総市においては、地域活性化推進委員会で、県農林水産部安全農業推進課(現在は農林水産
部農村振興課)が掲げた「地域が連携して取り組むグリーン・ブルーツーリズム」をテーマに
課題を掘り下げた
~平成
19 年~
平成19年
○ 地域活性化プラットフォーム事業として第4期事業を実施
○ 民間コンサルタントとNPOが1地域ずつ事業をコーディネート
第4期 1年目事業 地域活性化プラットフォーム事業
・ 「地域活性化プラットフォーム事業」として、柏市にて、
「アート(芸術文化)がつなぐまちづく
り」をテーマに8団体が、南房総市にて、
「地域が連携して取り組むグリーン・ブルーツーリズム」
をテーマに11団体が、事業を実施
・ 事業実施に際し、コンサルタントとNPOがコーディネートを担う
(柏市:県がコンサルタントに委託。南房総市:県が市に委託し、市がNPOに委託)
33
~平成
20 年~
平成20年
○ 第5期事業の地域課題は、県テーマからの選択に加え、市町村又はNPOが自ら設定
○ 実施地域は市町村に加え、NPOからも募集
第4期
2年目事業 地域活性プラットフォーム事業
・ 2年目事業として、平成19年度の事業結果による課題を踏まえて、更なる活動展開するために、
柏市の11団体が、南房総市の8団体が、前年と同じテーマで事業を実施
・ 事業実施に際し、NPOがコーディネートを担う
(柏市:県がNPOに委託、南房総市:県が市に委託し、市がNPOに委託)
第5期
地域活性プラットフォーム事業の準備
・ 県の重要課題からのテーマに加え、市町村又はNPOが自らテーマを設定できることとした。
テーマ及び実施地域を市町村やNPOから募集し、市が提案した香取市と、NPOが提案した
山武郡市を選考
・ 香取市においては、県商工労働部観光課が掲げた「多様な主体の連携・協働による観光まちづくり」
をテーマに地域活性化推進委員会で課題を掘り下げ議論した結果、サブタイトルとして「~
みんなでつくる香取
ときめき・ふれあいの旅~」を付した事業テーマとなった。
・ 山武郡市においては、県環境生活部環境政策課が掲げた「温暖化防止に向けた地域づくり」を
テーマに地域活性化推進委員会で課題を掘り下げ議論した結果、「100年後のふるさとへの
贈り物~水と緑ときれいな空気と心地よい空間を目指して~」が事業テーマとなった。
平成21年
○ 第5期事業を実施
○ 民間コンサルタントとNPOが1地域ずつ事業をコーディネート
第5期
1年目事業 地域活性プラットフォーム事業
・ 香取市にて、「多様な主体の連携・協働による観光まちづくり~みんなでつくる香取
ときめき・
ふれあいの旅~」をテーマに10団体が、山武郡市にて、
「100年後のふるさとへの 贈り物~
水と緑ときれいな空気と心地よい空間を目指して~」をテーマに12団体が、事業を実施
・ 事業実施に際し、コンサルタントとNPOがコーディネートを担う
(香取市:県がコンサルタントに委託。山武郡市:県がNPOに委託)
34
2.変化・進化し続けるユニークな事業
図3
地域活性化プラットフォーム事業の沿革
平成14年度
○千葉県NPO活動推進指針の行動計画に位置づけ
・ 白紙の段 階から市民・NPO主導で「千葉県NPO活動 推進指針」を策定(平成14年11月)
・「NPOによる地 域やコミュニティの社会 的課題解決の 力を強 化する」という指針の 目的を達成するための具体
的な行動計 画の1つとして「地域 資源活用マップの作成」を盛込 む
平成15年度
○ 地域資源活用マッ プ作成事業スタート(第1期事業)
○ 実施地域は市町村から募集
○ 民間コンサルタントが事業をコーディネート
・ 世話人会(第1期:現在の 地域活 性化推 進委員会 )を設置し、取り組む地域課題について、協議し、重点テー
マを設定
平成16年度
○ 地域課題解決から連携促進への動きに
○ 第1期事業を「NPO主体の新たなまちづくり事業」に、第2期事業を「県・市町村・NPO
がともに築く地域社会事業」に名称変更
・ 「地域資 源活用マップ作成事業」の2年目事業 は、1年目事業の 成果を活かし、明 確化された地域 課題を市
民・NPO主導 で解決していく仕組みづくりを推進する「NPO主 体の新たなまちづくり事業」として実施
・NPOが様々 な機関・組織 と連 携することが課題 解決力を強化することにつながるという点を明 確化するため、
「県・市町 村・NPOがともに築く地 域社会 事業」に変 更
平成17年度
○ 第3期事業は1年かけて地域課題を検討
○ 実施地域は市町村に加え、NPOからも募集
○ NPOが事業をコーディネート
○ 広域(複数の市町村)で事業実施
平成18年度
○ 第4期事業は新たな展開へ
○ 実施地域は市町村から募集(県テーマの中から地域課題を選択)
○ 事業実施前年度(2か月)に地域課題の洗い出し、掘り下げを実施
・県の 主要政 策や広域 的課題 に合 わせた事業実施への 転換、「県 ・市町 村・NPOがともに築 く地域社 会事 業」
が「地域 活性化 プラットフォーム事業 」へ進 化
平成19年度
○ 地域活性化プラ ットフォ ーム事業として第4期事業を実施
平成20年度
○ 第5期事業の地域課題は、県テーマから の選択に加え、市町村又はNPO が自ら設定
○ 実施地域は市町村に加え、NPOからも募集
○ 事業実施前年度(3か月)に地域課題の洗い出し、掘り下げを実施
平成21年度
○ 第5期事業を実施
35
4.立ち上げの経緯と背景3.立ち上げの経緯と背景
(1)地域資源活用マップ作成事業のねらいと背景
2003 年、千葉県は「千葉県NPO活動推進指針」の「行動計画」に基づき、我孫子市
及び四街道市で、
「地域資源活用マップ作成事業」
(2004 年度からは「県・市・NPOが
ともに築く地域社会事業」
)をスタートさせた。これは、推進指針に掲げた「地域課題を
解決するNPOの力をつける」ことを目指して、NPOが活動しやすい環境の整備を県・
市町村・NPOの3者の協働によって推進しようというモデル事業である。県が主導す
るかたちで、県・市町村・NPOの3者の協働のあり方を探る視点からの協働に関する
施策は、全国でも例がない先駆的な取組であった。
モデル事業の目的は、NPOが主体となって地域課題を解決するには、どのような問
題や障害があるのかを明らかにして、どのように対処していけば前進するのか、その道
筋を見いだすことである。具体的には仮説として事業スキームを設定し、それを実行す
る中で現われてくる問題点に対処していくことで、事業スキームを検証し、地域課題の
解決の手法としての県・市町村・NPOの3者の協働のあり方を明らかにしていくこと
になる。
モデル事業の内容については他のページに譲り、ここでは、こうしたモデル事業の背
景となり、参考になった当時のNPOと協働、地方分権などの制度や動き、NPOの地
域課題の解決力の源泉となる地域資源の活用と連携の事例、それらに関連した海外の事
例、制度などについて、以下に紹介する。
(2)自治・分権化と市民活動・協働の広がり
1990 年代に入って、福祉、まちづくり、環境、国際協力などの分野でNPO、NGO
などによる市民活動や市民による事業が広がるとともに、地方分権改革の制度化への動
きが強くなり、1998 年にNPO法、1999 年に介護保険法が制定され、2000 年4月には、
機関委任事務の廃止、自治事務・条例制定権の拡大など自治体の団体自治を確立した地
方分権一括法が施行された。
分権・自治を基調とするこれまでの自治体のあり方を大きく変える制度改革、まちづ
くりへの市民参加の高まりなどを踏まえて、2000 年以降、自治基本条例、市民参加条例、
まちづくり条例が各地で制定され、協働についても市民活動・NPO支援から行政と市
民および市民団体との協働事業が、行政と市民とのパートナーシップのもとに推進され、
市民活動推進と合わせた協働の条例などによる制度化を図る自治体が登場してくる。
協働条例は、1999 年3月に「仙台市市民公益活動の促進に関する条例」が制定されたの
を嚆矢として、2002 年の大和市「新しい公共を創造する市民活動推進条例」、2003 年の
36
3.立ち上げの経緯と背景
豊中市「市民公益活動推進条例」など、市民活動推進条例、市民公益活動推進条例、市
民協働推進条例などの名称で条例化が進んでいった。また、まちづくり条例に協働を謳
うところも多く、「協働のまちづくり条例」「みんなでまちづくり条例」などが西日本を
中心に制定される。2003 年3月に制定された狛江市の「市民参加と市民協働の推進基本
条例」は、市民参加と協働の複合型として制定され注目された。
2003 年段階では、こうした条例にまで至らないが要綱などで市民活動支援と協働を規
定する自治体が増え、NPO法人も 2003 年2月末で1万を超えるなど予想を超えて増え
ていき、多くの自治体がNPOとの協働を重点施策として打ち出し、パートナーシップ
推進室あるいは市民協働推進課といった組織がつくられていった。こうした協働と市民
活動支援の施策として事業化されたのは、市民活動支援センターの設置、公募による市
民活動助成、協働では公募による協働提案事業である。市民活動支援と協働の施策を体
系化し制度化した事例として豊中市を挙げる。
(3)協働事業の体系化―豊中市
豊中市は 2003 年に市民公益活動推進条例を制定し、市民公益活動団体への支援と協働
の仕組みを体系化した。この制度の構想は、1992 年制定のまちづくり条例にある有志市
民の研究会、協議会による行政計画への提案制度の運用実態の検討を基に、大和市の「新
しい公共を創造する市民活動推進条例」の協働推進会議など他の自治体の事例も参考に
して作られている。制度のねらいは、NPOの調査・提案する力を強化することに加えて、
こうした連携・協働を通して公共運営の仕組みを改革していくことにある。
それまでのまちづくり条例の提案制度では、有志市民、NPOなどから提案を受けて
行政が計画や事業に反映していくときに、提案者と地域の一般市民の間に提案について
の温度差があり、その調整と成案化などはやはり行政の責任として行うという公共運営
の仕組みは変わらないということと、その仕組みの中で協働事業を行っても、地域社会
は変わらないという限界があり、それを克服することが課題とされた。
制度は、①公募制補助金制度、②提案公募型委託事業、③協働事業提案制度で構成さ
れている。公募制補助金制度は、団体の事業経費の一部を助成するもので、NPO支援
の定番メニューである。2つめの提案公募型委託事業は、市の各部課が提示した課題(テ
ーマ)に沿って、市民公益団体が提案を考え応募し、公開審査を経て委託団体を決定す
るというものだ。委託先と仕様内容を協議して構築し、委託契約を結ぶ。こうした手続
きをふまえたNPOとの委託事業は、これまでに個別の案件ではあったが、これを制度
的に位置づけたことになる。
3つめの協働事業提案制度は、協働事業を自治体の予算編成プロセスに取り込んだと
いう点でかなり先駆的な試みである。協働事業のテーマは市が提示するのではなく、市
37
民公益活動団体が自由に選んで提案できる。提案は庁内の課長などで構成する市民公益
活動推進連絡会議と学識経験者、市民、NPOなどの団体代表で構成される市民公益活
動推進委員会で検討され、協働が可能とされた提案について、改めて公開プレゼンテー
ションを行う。市民公益活動推進委員会、市民公益活動推進連絡会議などが協議して採
用された提案は、提案団体と市民公益活動推進連絡会議の部会などと協働して成案化し、
市の政策会議に提出して、決定されたら予算化される仕組みである。
豊中市の制度は、NPOなど市民公益団体の力をレベルアップしていくプロセスを①
から③へ3段階に分けて体系化したといえる。NPOなどが行政へ提案という形で市民
参加を図るこれまでの提案制度の限界に、NPOが提案するときに、地域の市民、団体、
企業などに提案活動への参加を働きかけ、広げるという市民参加、そして提案を行政と
協働で成案化するところでの市民参加という、2つの異なる参加―協働を組み込むこと
で、対応したといえる。さらに、協働事業提案制度では、提案の内容が条例改正を必要
とするものでも、改正案を含めて成案化し、議会にかけていくことにしている。政策決
定のプロセスに踏み込んで、参加―協働を位置付けたところに豊中市の提案制度の特徴
がある。
(4)地域資源の活用と協働―アサザ基金
NPOの地域課題の解決力は、地域資源の活用と連携を組織化することにあるとして、
参考にしたのは霞ヶ浦の環境再生を目指す「アサザプロジェクト」である。アサザプロ
ジェクトは、コンクリート護岸工事や開発、汚水の流入などによって失われたかつての
豊かな自然・生態系ときれいな水を取り戻すことを目的に、NPO法人のアサザ基金と
周辺の小学校、大学、近隣自治体、国土交通省、農協・漁協などの組合、企業などが緩
やかなネットワークを結んで連携して取り組んでいる。
始めは、浮葉植物アサザをはじめとした在来水草を小学生や市民が育て、破壊された
湖岸に植え戻すことからスタートした。自生しているアサザを付近の小学校で栽培する
ためにビオトープをつくり、環境教育としてそこに集まる生物を観察しながら栽培する
学校も多い。子どもたちはさらに、環境学習の一環として地域のお年寄りからかつての
霞ヶ浦の豊かな自然や漁業、そこでの生活、伝統文化などを聞くことで、先人の知恵や
経験を学ぶとともに、高齢者に地域との交流・活動の機会を与えることにもなっている。
さらに、アサザを植えるとコンクリート護岸に打ち寄せる波の影響で流されてしまう
ことを防ぐために雑木の枝を束ねた粗朶を使うことになり、粗朶の供給を事業とする有
限会社「粗朶組合」が作られている。粗朶の供給は荒れていた里山を手入れすることに
つながり、霞ヶ浦の上流の森の復活・保全、里山の再生が図られるとともに、雇用を生
み出している。これは国の公共事業として採用され、アサザ基金が流域の林業関係者と
38
3.立ち上げの経緯と背景
国の調整役になることで、荒廃が進んでいる森林の管理と湖での自然再生とが同時に実
施する仕組みができたことになる。ビオトープは小学校だけでなく、休耕田にも作られ
市民型公共事業として取り組まれている。ここから地域が主体となった「水郷トンボ池
公園」が誕生した。これら霞ヶ浦周辺の植生・生態系のモニタリング調査などは大学の
研究室が協力して行われている。
アサザプロジェクトを動かしているのは、参加する各主体が緩やかなネットワークで
結んでいる「協働の場」である。各主体はそれぞれの事業や活動のなかにアサザプロジ
ェクトの目的を取り入れ、一部の事業を担うことで、自らの事業を活性化し本来の目的
を達成するというかたちで協働を組んでいる。霞ヶ浦の再生という地域課題の解決に向
けた「協働の場」
「マーケティングの場」のコーディネーターを行うのがNPO法人アサ
ザ基金の役割となっている。
(5)地域再生への包括的補助金制度―英・包括的都市再生予算
アメリカ、イギリスでは、地域課題としての地域再生事業に、行政の縦割りを超えた
包括的な補助金を市民事業に交付する制度として、コミュニティ開発包括補助金(米・
CDBG)
、包括的都市再生予算(英・SRB)がある。地域資源活用マップ作成事業の
設計にあたって、このCDBG、SRBを参考にしている。ここでは、イギリスのSR
Bについて紹介する。
イギリスでは、1980 年代のサッチャー政権の市場重視・民間主導による大規模な都市
開発の一方で、地域間格差が拡大し、コミュニティの荒廃が加速したことに対して、
1990 年代に入り地域課題としてのコミュニティ再生を住民・自治体・企業のパートナー
シップで取り組む方向へと政策転換した。1994 年にブレア政権によって創設されたSR
B(Single Regeneration Budget)は、「社会的に排除されている人々をなくし、平等な社
会を築くこと」を目的に、貧困地域やマイノリティグループとそれ以外の地域・集団間
のギャップを埋めることで、地域住民が求める生活の質を向上させる事業に包括的に補
助する仕組みである。
SRBは自治体、コミュニティグループ、民間企業で構成するパートナーシップによ
る申請を原則とし、地域のコミュニティグループやボランタリーグループ(日米のNP
Oにあたる)との協働を義務づけている。日本の補助金制度では、たとえば街区の制度
は国土交通省、雇用の創出・確保は厚生労働省、市街地活性は経済産業省の所管となっ
て、それぞれの目的に応じた省庁縦割り補助金が交付されるが、SRBはアメリカのC
DBGを参考にして、種々の異なるタイプの事業を包括した補助金となっている。その
対象の範囲は、雇用、職業教育・生涯教育などの促進、社会的差別・参加機会の改善、
住宅・環境・生活基盤の整備、地域経済の活性化、犯罪・薬物汚染の防止、コミュニテ
39
ィの安全など広範囲に及ぶ。
また、日本の補助金制度はあらかじめきめ細かく事業内容が決められているが、SR
Bは当該地域の自治体計画や地域戦略に適合していれば、申請側が事業内容を企画し提
案できるため、地域の個性やニーズに合わせた事業が展開できる。事業スキームとして、
コミュニティの参加と協働を義務付けたことから、コミュニティベースで地域再生に取
り組む非営利団体であるディベロップメント・トラスト(DT)がイングランドを中心
に各地で活動を広げている。
SRBの申請者は、自治体が行うことが多いが、DTによる申請も少なくない。いず
れにしても申請書類に事業を協働で取り組むパートナーを明記するために、事前にパー
トナーを見つけ、事業について綿密な協議をすることが必要となる。SRBの補助金は
通常は総経費の50%までのため、残りの50%を申請者が調達することになる。パー
トナーとしての企業には資金の拠出が期待されていることが多いようだ。
SRBプロジェクトの事業例として、ドーバー海峡に面した人口8万5000人のヘ
イスティング市で活動するDT、ヘイスティング・トラストでは、次のような事業をS
RBから補助金を受けて行っている。
①緑の歩道づくり;市のタウンセンター周辺の公園やオープンスペースを結んで歩道
と自転車道、安全な通学路を建設した事業で、補助金は6年間で46万ポンド。
②リソースセンター;コミュニティ施設の創設と能力開発を支援し、情報・助言・支
援・訓練を提供するタウンセンターのスタッフ養成事業で、補助金3年間で25万
ポンド。
③自動車整備訓練;若者の犯罪防止対策として、非行少年や若い犯罪者を対象とした
自動車整備の訓練と仕事場を提供する事業で、補助金は6年間で39万3000ポ
ンド。
④コミュニティ再生ユニット;市の最も荒廃した4つの地区を対象に、コミュニティ
の資源開発・経済開発、コミュニティビジネスと研究開発への再投資信託などの事
業で、補助金は5年間で70万ポンド。
※
SRBは 1994 年度に始まり、Round6 の 2000 年度で終了した。
40
4.社会背景を見据えた事業の組み立て
5.社会背景を見据えた事業の組み立て
(1)欧米の事業の導入にあたって留意すべき点
当初の制度設計の段階で、この事業が米国のコミュニティ開発包括補助金(CDBG)
、
英国の包括的都市再生予算(SRB)を参考にしたということであるが、この事業に限
らず、わが国においては様々な局面で欧米を模倣した制度や政策が導入されてきた。そ
の中には円滑にわが国に定着したものもあるが、導入から制度設計及び実施に至るまで
の段階で大きな混乱を招き、わが国特有の文化に馴染むまで多くの労力・資金・時間が
費やされたものも少なくない。それらに共通するのは、多くの場合、制度や政策そのも
のあるいはごく限られた範囲での紹介だけに止まり、その国のその制度や政策に至る多
面的な背景までが咀嚼された上でわが国に導入されたものではないということである。
「NPO立県千葉」のひとつの目玉としてこのプラットフォーム事業が高い志をもっ
て検討され制度設計に至ったことは大いに評価されてよいことであるが、その一方では、
今、振り返ってみれば欧米型の事業が限られた理解で導入されたことによる混乱があっ
たことも残念ながら否めない。しかし、このプラットフォーム事業の最大の成果は、
「実
行しながら考え、不具合があれば改善していく。」という取組の姿勢そのものであろう。
こうした柔軟な姿勢があったからこそ、千葉県という首都圏を形成する中核都市や政令
指定都市、ベッドタウンや地方都市、さらには限界集落を含むような農村・漁村部に至
る多様な地域性の中で、ごく短期間の中でこの事業が取り組まれ、多くの戸惑い・苦難
を乗り越えながらも経験則が蓄積されてきたのであろう。この間のプロセス自体が「欧
米の模倣的事業」から「千葉県の事業」になった生みの苦しみになったのであろう。さ
らにこの経験則は、多様な地域性をもつ千葉県の経験則であるからこそ、全国各地で役
立つものと考える。
(2)グラウンドワークの試み
ここではプラットフォーム事業の制度設計において参考としたSRBが導入される前
後(1980~1990 年代)の地域課題改善に関する取組と英国社会の動向や変化について紹
介する。
新たな事業や制度は、単独ではその成否は問えるものではない。その時の社会状況を
しっかり踏まえた上で制度を評価する必要がある。逆に言えば、新たな事業を生かして
いくためにはどのように、社会的なニーズや他の取組と関連付けてその事業を組み立て
ていくかというしたたかな戦略が重要である。そういった意味でも英国の地域課題改善
の取組と社会背景との関連性に注目することは参考になると思われる。
英国ではブレア政権が成立する前のサッチャー政権の段階でも既に地域間格差とコミ
41
ュニティ崩壊に対する何らかの手立て必要とされていた。そこで登場したのがグラウン
ドワーク(以下GWと表記する)である。GWは 1982 年に St Helens において設立され
た。当初は田園環境委員会(Country Side Commision)の実験的モデル事業として成功
をおさめたが、1980 年代初頭の英国内の地域社会の衰退を背景に、環境省によってあら
ためて設立された組織である。
「住民・企業・行政がパートナーシップを組み、地域環境
の改善を通して経済および社会の再生を図り、持続可能な地域社会を構築すること」を
目的としている。
この目的をもとに、各地域に実働団体(グラウンドワーク・トラスト、以下、ここで
はGWTと表記する)が設立され、プロジェクトマネージャー、コミュニティプランナ
ー、ランドスケープデザイナー及び会計士等の専門家からなるスタッフが中心になって、
地域の再生と活性化に向けパートナーシップ型のプロジェクトを展開している。GWT
が行うパートナーシップ型の地域再生とは、地域の活性化を目指し、地域の多様な人々
が関わって、持続的で自立した取組を確立することである。GWTは英国内の都市近郊
地域や農村部の衰退地域を中心に現在50か所程度が設立されている。
GWTは、中間支援団体として、その地域におけるそれぞれの地域課題に適した様々
なNPO・企業・行政・社会的企業等とのパートナーシップを形成し、それらの役割と
力をうまく引き出し、地域の具体的な課題解決に取り組むことと同時に、社会的弱者、
マイノリティ、失業者、地域の住民などをプロジェクトに参加させ、地域全体の力(地
域力)を向上させ、自立した地域社会を形成できるような取組を行なっている。GWT
は政府や自治体、母体であるグラウンドワーク財団から人件費・事務経費程度のコアフ
ァンドを得て活動をしているが、プロジェクトの活動資金としては、企業の協賛金や宝
くじ基金、EUや政府系の様々な補助金、競争入札等、多様な方面からの競争的資金を
獲得し、それらを巧みにマッチングさせてプロジェクトを運営している。協賛企業や自
治体とすればファンドをマッチングさせることでより大きな効果をあげることが期待で
きる。
GWTは中間支援組織であるが、日本の中間支援組織と大きく様相が異なる。基本的
にGWTは半官半民的な位置づけの組織(行政・市民セクター・企業から対等性を保つ
組織)である。企画力・問題発見力および解決力・コーディネート力・提案力に長けた
有給の専門家集団であり、地域課題の解決のための全国スケールから地域スケールにい
たる多くの情報・資金を誘導する力を備えている。これらのスタッフが常にその地域特
有の地域課題を探り、それに適したパートナーを探し、資金を獲得しプロジェクトを推
進する。様々なプロジェクトが展開されているが、基本的にはGWTのスタッフがコー
ディネーターとなりプロジェクトを推進する。また、GWT全体のプロジェクトを推進
42
4.社会背景を見据えた事業の組み立て
するためのボードが常設されており、議会関係者、地域の企業、地域コミュニティのリ
ーダー・GWTの所長等が構成員となり、各プロジェクトを支援・推進するための活発
な議論や情報交換が行なわれ、常に新しい戦略と方向性が示される。
グラウンドワークが取り組む事業分野は幅広く、最近は「物的な環境改善」
「教育及び
コミュニティの参加」
「経済と環境の統合」をキーテーマとして掲げ、身近な環境改善活
動を基本に据えながら、教育、福祉、失業問題、青少年問題、企業の社会貢献など、地
域社会を取り巻く課題に総合的に取り組むことを特色としている。現在では、その事業
分野を「コミュニティ」
「土地資源」
「雇用」
「教育」
「企業」
「若者」の6つに分類し、多
様な事業を行っている。
(3)1980 から 90 年代のGWTのプロジェクト
GWTの数は現時点では50か所程度であるが、2000年時点ではスコットランドを除
いた英国内各地に42か所であった。その分布の状況をみると、各地に均一に分布する
というよりは、特定の地域(大都市周辺部)に集中的に設立されるケースと農村部に分
散的に設立されるケースに分けられる。集中している地域では、同一county(県)内に複
数設立されている。設立年次別にみると、第1号が設立されたのは1982年のセントへレ
ンズであるが、ほぼ90%が様々な支援制度が整ってくる1994年から1997年の3年間に
集中的に設立されたものである。
この時期のGWTの立地別の活動状況をみると、都市部や郊外では荒廃地再生、農村
部ではコミュニティ関連のプロジェクトが多い。荒廃地再生関連のプロジェクトでは緑
化、水辺再生、景観整備、スペースの有効利用、駐車場整備、街路改善、居住環境改善
など、コミュニティ関連のプロジェクトでは若者関連の活動支援、学校関連の活動支援、
リサイクル、自然保護活動、自然環境調査などである。いずれもGWの企業協賛プログ
ラムに対応したものが多い。更に文化や自然資源の活用に関する取組も多く行われてお
り、都市部や郊外では、伝統的建造物保全、運河整備、遊歩道整備など、農村部におい
ては、自然景観整備、自然遊歩道整備、ツーリズムのアレンジなどが行われている。
都市部においては、産業衰退に伴う高失業率・過密化に伴うスラム化・コミュニティ
ーの崩壊等の問題がGW活動の背景となっており、農村部においては行政の資金不足に
よるインフラ未整備、交通事情の悪さに伴う地域住民の孤立化(Isolation)等が背景と
なっている。同じ衰退地域でも都市と農村では抱える問題の内容は異なる。都市部では
個々の問題に対して対応するのに対し、農村部では地域の問題として村単位で総合的・
構造的に扱っている点に特徴がある。現在もそうであるが当時から地域特有の課題や特
性を生かしたプログラムが実施されていた。
43
以下の各節では、GWとGWが各地で根を張り出した 1980~90 年代の当時の英国社会
の動向との関係を紹介する。今後、わが国で地域課題解決に向けた事業を様々な方面で
展開していく上でのヒントにしていただきたい。
(4)地域政策・都市計画関連の法制度の改正
1980年代から1990年代にかけて、英国では行政における市場原理の導入や行政組織の
条件整備団体(enabling authority)としての位置付け等、サッチャー政権時の大胆な
行財政改革に端を発して、多方面にわたる法制度の改正が行われてきた。特に地域政策・
都市計画・都市再生等の分野においては、GWの活動の背景となっているものが少なく
ない。地方自治に関しては、県(county)の位置付けが弱まり、計画プロセスの簡略化
が計られた。特にフォーマライズされていた住民参加を、インフォーマライズされた住
民参加に置き換えようとする動きがみられるようになり、多くのNPOやGWが住民参
加をコーディネートする機会を促したと言えよう。さらに1985年の簡易計画ゾーンの設
定、1987年の土地利用区分変更の緩和など、地方当局の計画規制権限の行使が大幅に削
減され、計画行政における規制緩和が進んだ。1988年には行政サービスの民間委託が促
進されたが、ゴミ収集や学校給食に加え、建物清掃や土地管理においても民間委託が可
能となり、これらの方面におけるNPOが参画する機会も拡大した。地域行政組織にお
いては、別々のセクションのスタッフからなる地方事務所が設置されるなど、縦割り排
除が促進された。特に行政の専門職であるタウンプランナーは、他の専門との共同作業
やコミュニティとの共同のビジョン策定の機会が増えた。
1991年の都市農村計画法の改正では、開発主導型からプラン主導型へと方向転換が行
われた。開発業者、土地所有者、NPOなどのプラン策定への参加機会が増し、プラン
助言団体(planning aid)が活躍するようになった。プラン策定に先立って、自治体が開
発業者に求める要求項目(planning
advantage)を明記することとなったが、集会所、
福祉施設などのハコ物だけではなく、歩道、自転車道、公園、駐車場などのオープンス
ペースの整備、自然環境保全や歴史環境保全なども要求項目とされるようになった。こ
のような状況の変化は、開発業者と自治体のコーディネートにおいて、GWが活躍する
背景になっていると言えよう。また、採掘ローカルプランや廃棄物ローカルプランの策
定が義務付けられるようになったことや1990年代に入ってサステナブルディベロプメン
ト(Sustainable Development:持続可能な開発)が意識されるようになったことにより、
ディベロプメントプランが土地利用としての環境基本計画的な意味をもつようになって
きた。GWは採炭跡地やゴミ埋め立て地の再生プログラム得意をとするが、GWはこの
ような機会を巧みにつかまえている。市街地においてもデザインコントロールの重視や
44
4.社会背景を見据えた事業の組み立て
歴史環境保全、自然環境育成などが意識されるようになっていったが、GWTが郊外に
加え市街地にプロジェクトを展開することとも関連するであろう。
都市再生についてもいくつかの注目すべき法制度の改正が行われた。1980年には都市
開発公社の制度化とエンタープライズゾーンの指定が行われ、都市再生に関して、地方
政府をバイパスした中央政府の直轄機関ができた。公社は基盤整備のみを行い開発は民
間によるものである。こうした状況においては、中央と地方を調整する仕掛け、公共と
民間を調整する仕掛け、指定地域とその周辺地域を調整する仕掛け等が重要になってく
る。GWに限らず英国におけるパートナーシップの重要性は、こうした状況の変化が背
景となって高まっていったものである。都市開発公社の組織についても民間人を多用し、
その運営について民間的な発想が重視されるようになった。1991年にはシティチャレン
ジという公募型の助成が始まった。また、1993年には都市再生庁(English Partnarships)
の設立が決まり、大型のハード事業だけではなく、小規模な事業や活動に対しても補助
が可能になった。アイデアを競争して公的助成を獲得するようになり、各地で民間資本
を取り合うという地域間競争が激化したが、GWはそのような状況において、市民‐行
政‐企業のパートナーシップの中で独自のノウハウを蓄積し、各地で活動を有利に展開
していった。さらに1994年には5省20の予算を合体させて地域再生を行うSRB
(single regeneration budget)が始まり、補助のジャンルを気にしない総合メニュー
が可能となった。
教育や福祉や住宅関連についても注目すべき法制度の改正が行われた。1988年の教育
改革法の改正により、各学校の自主運営を促進する規定が設けられた。その結果、学校
は一律的な予算は削減されたものの、それぞれの学校のポリシーを前面に出し、民間の
直接的な支援は受けやすくなった。GWは早速、学校と地域住民と企業のパートナーシ
ップによるプログラムを用意し、企業がスポンサーとなって小学校の環境改善活動を立
ち上げた。福祉面では1990年の法改正で、福祉サービス供給の多元化が図られ、民間施
設やNPOが最大限に活用されるようになった。特にNPOは地方自治体に代わって安
価にサービスを提供できるとの判断から、中央政府からNPOに対する支援は急増し、
福祉に関連して都市再生やインナーシティ対策でも中央政府が直接NPOに財源を供給
するようなルートができた。住宅政策においては、1980年の住居法の改正により、公営
住宅の売却政策がとられ、住宅を購入できないマイノリティ、非熟練労働者、失業者、
母子家庭などの社会的弱者は都市周辺の公共住宅に集中した。GWはこのような社会的
弱者をパートナーにした都市近郊部の環境改善を積極的に進めてきた。1988年には住宅
事業信託(Housing Action Trust)が設立され、公共住宅に環境改善を加えて民間に売
却するようなケースも増えてきた。GWは各地で住宅事業信託とも提携したプロジェク
45
トを行っている。1994年には、集合住宅を管理する権利として住宅管理組合の結成とそ
れを支援する措置が講じられ、集合住宅の環境改善に関するいくつかのハード事業、ソ
フト事業が用意された。GWでもこれらの事業を活用した集合住宅の環境改善プログラ
ムを行っている。
以上、GWに直接的・間接的に関連する法制度について概観したが、GWはこれらの
改正に伴って、ある時は法制度を補完し、ある時はそれらを巧みに取り込んだ活動を展
開していることがわかる。一連の法制度の改正において、官から民、中央から地方へと
いった流れが読み取れるが、それらを背景としてパートナーシップを前提とするいくつ
かの政府系機関(半官半民のエージェント)が設立された。GWはEnglish Partnerships
(都市再生庁)やTEC(雇用促進団体)などの政府系機関やEU等の公的機関と比較
的安定的なパートナーシップを形成していく。それらの指定区域内で行われる横断的組
織による環境再生プログラムに参加し、各組織から活動資金を得ており、それがGWT
の中心的かつ安定的な資金源となっている。
(5)NPO(チャリティ団体)の動向
GWの活動にNPOの存在は欠かせない。日本では1998年に特定非営利活動促進法(N
PO法)がスタートしたが、英国におけるNPO(英国ではチャリティ団体と称する)
の歴史は長い。英国におけるチャリティ団体の正確な数を知ることは難しいが、登録し
ているものだけをみても1995年時点で18万団体を上回る。注目すべきは、新規登録数
に対して登録抹消数もけして小さくはない点である。これは役割を終えた団体や登録の
メリットを必要としなくなった団体は、きちんと登録を抹消していることを示している。
単に団体の数が多いだけではなく、有名無実の団体を廃し新陳代謝が活発である。これ
はチャリティが「社会的な実験の場」と捉えられている証である。また、英国ではボラ
ンティア、無給の職員、理事(ほとんどが無給)と有給の職員の区別がしっかりついて
いるところに特徴がある。特に有給の職員が団体の規模にかかわらず一定の人数を占め
ており、チャリティがそれぞれの使命をもった慈善団体でありながら、責任のあるビジ
ネスの場や雇用の創出としても役立っていることを示している。
イギリスのボランタリー団体の活動分野は多彩である。全国ボランタリー協会が出版
している”The Voluntary Agencies Directory 1997”に収録されている団体の活動分野
は、実に600種類に及ぶ。分野としては、医療、宗教、家族問題、民族など多岐にわ
たっている。ジャンルとしては医療関係が圧倒的に多いが、環境改善、建築等の分野に
おいてもその種類は多く、例えば、建築物管理、都市農場、農村問題、村のホール、地
域社会開発、景観破壊、地方行政、学校外のケア、地域及び国土計画・環境教育等、分
46
野として括られているものだけをみても、活動の領域が極めて専門化しているものがみ
られる。
地域課題の改善に関わることが可能なジャンルだけみても多種多様である。多くの団
体が「国際的ネットワークの中での地域的活動」
「活動メンバーを限定」「活動地域を限
定」
「活動ジャンルを限定」等、それぞれの団体の切り口を明確にしている。これはチャ
リティ団体がジェネラルな活動を目標としているのではなく、比較的限定された範囲で
の活動を行い、それぞれの団体の独自性を出しNPO同士での差別化を図っていること
がうかがわれる。よい意味での競争原理がチャリティ団体にも働いていると言えよう。
また、このような状況こそがNPOをして社会的実験を行う場(装置)としてとらえら
れることの理由である。
GWがNPOとパートナーシップと組む場合、それぞれの専門(得意とする分野)が
明確な団体の方が、その専門での信頼性が期待できる。また、より多く(多種類)のN
POが参加しやすいといった点からも有利になる。
(6)企業の社会貢献
英国では企業の社会貢献(チャリティ団体、地域コミュニティ等に対する支援など)
に対する意識が高い。これは日本と異なり、企業が税制上の優遇措置を受けやすいこと
も大きな理由であろうが、企業が社会貢献をすることについて市民の期待度が高いこと、
換言すれば、社会貢献を積極的に行う企業を市民がきちんと評価することが主要な理由
であろう。また、文化的・宗教的な理由もあろうが、一般市民の社会貢献に対する意識
は高い。
大企業と行政がパートナーシップを組んで各種の支援を行うことも一般的になってい
る。企業サイドにとっては行政と組むことによって社会的な信用が高まるし、行政サイ
ドにとっては厳しい財政状況での行政サービスが可能となる。GWでも大企業が積極的
にパートナーとして参加している。特に金融分野・エネルギー分野・流通分野の大企業
の参画がみられる。これらの企業にとっては、行政とパートナーシップを組んで、GW
に対して「テーマ性のある支援」をすることで、各地の具体的な環境改善の中で「企業
の顔」を市民に直接アピールできる。また、地球環境問題を背景とした企業の「環境モ
ラル」や行政の「行動計画」を具体化する上でも役立っている。
47
まとめ
本項では、英国GWの紹介とGWが進展した英国の 1980 年代から 90 年代の社会情勢
を概観した。英国のこの時期は、わが国では分権・自治が急激に進展した 2000 年代以降
の時期に該当する。英国ではGWや英国各地での地域再生を目指したパートナーシップ
の実践と経験則が、わが国が倣ったSRBへと発展していく。今後、中間支援組織の新
たな形態としてGWのような地域課題解決センターのような専門性が高い組織の設置が
期待される。また、今後も各地で自治や協働に関するわが国独自の政策や、千葉県のプ
ラットフォーム事業のような外国由来の事業が展開していくであろうが、激しい社会情
勢の進化を確実に利用して、これらのプログラムを根付かせていくことが重要である。
48
Ⅱ.ハラハラ・ワクワクの『地域活性化プラットフォーム事業』
1.地域活性化プラットフォーム事業の始まりと継続
1前例がない中での地域活性化プラットフォーム事業の始まりと継続
チャレンジしたNPOも市町村も、事業の目的を正しくつかめていたとは言えません
でしたが、未知の世界に踏み込むような魅力に不安とワクワクする気持ちでスタート。
様々な場面で困難に直面し、なかなか目論見どおりの結果にはならず、事業ごとに結果
とプロセスを振り返って検討し、県は悩みながら改善を重ねました。
(1)生みの苦しみ(制度設計)
この事業の目的に沿う結果を導くという点で事業の組み立て方に無理があったこと、
目的や仕組みが当事者間で共有されていなかったこと、仕組みのわかりにくさなどから、
当初は様々な混乱がありました。
県における事業の制度設計
平成14年夏。県の重点施策「NPO立県千葉」をいかに実現するか。その骨格と
なる千葉県NPO活動推進指針の内容に関して、真剣な議論を交わしたテーマの一つ
は、
「いま千葉県内のNPOが抱えている具体的な課題は何か。
」でした。
当時、指針の検討に参加したNPOの委員が指摘した課題は、
「協働、協働といって
も、地域の課題を解決するパートナーであるべき県と市町村は、いつもバラバラで、
現場で混乱している」、「NPOの課題解決力はまだまだ不足していて、個々の思いだ
けが先走りしている」
、
「NPOが地域の様々な資源を活用できていない」でした。
「地域資源活用マップ作成事業」は、このような課題認識から、千葉県NPO活動
推進指針の中核事業に位置づけられ、NPOの課題解決力に焦点を当てた全国初の
県・市町村・NPO3者協働によるモデル事業としてスタートしました。
このモデル事業の原型となったのは、米国のCDBG(コミュニティ開発包括補助
金:Community Development Block Grant)や英国のSRB(包括的都市再生予算:Single
Regeneration Budget)です。特定非営利活動法人シーズ・市民活動を支える制度をつ
くる会常務理事・事務局長の松原明氏(当時の千葉県NPO活動推進懇談会座長)が
取りまとめた報告書「米国の包括補助金制度から考えるNPOと自治体の協働の仕組
み」によれば、日本の補助金制度と比較したCDBGの特徴について、以下の3点を
あげています。
49
① 地域ニーズへの対応に焦点をあてた制度設計
・ 地域ニーズに基づいた目標設定
・ 市民参加によるチェック
・ 地域サービスの優先順位が誰にでも理解できるような仕組み
など
② NPOの自立を発展させる制度設計
・ 個別事業補助金ではなく、NPOの発意が生きるような包括的な補助金
・ 誰でも応募できる公募の仕組みと決定過程の透明化の確保
・ NPOの運営費にも資金があてられる仕組み など
③ 適切な事業プロセスによる管理
・ 中長期の視点にたって地域の課題を解決していく仕組み
・ 目標、事業基準に基づいた事業遂行の管理報告 など
注)著者が報告書から一部抜粋
この3点がモデル事業の骨格となっています。加えて、新たに工夫を加えた最大のポ
イントは、
「地域活性化プロジェクトチーム会議」(PT会議)という仕掛けです。
事業経験者からの声
声
■
CDBG を踏まえた事業の制度設計
・ アメリカのCDBG(Community Development Block Grant)の仕組みが制度設計の骨
格。CDBGは、地域の事業に包括的にお金を出していき、それを地域課題解決
に使っていくシステム。市や県など行政は縦割りでお金を出しているが、地域で
は、縦割りは関係ないため、そうしたものに対応したシステム。その一つとして
NPOを道具として育てたらどうかという発想。地域課題をどのように見つける
か、その課題をどのように解決していくかというモデル。
・ CDBGは、国家的課題が決まっており、その課題解決の手段を公募するという
オーソドックスな流れ。
・ 制度設計するときに困っていたのは、課題を一義的に見つけられるのかというこ
とと、単純に公募して目的が達成できるのかということ。
・ NPOの成熟度が違う中で、それを考慮せずアメリカから仕組みだけを導入した
点がその後の混乱を生んだのではないか。
・ PT会議と地域活性化推進委員会の2重構造のそれぞれの役割については、連邦
から審査委員が来てプロジェクトをまとめるなどの話しは聞いたことがあるが、
州にはいろいろな形があり、アメリカのパターンをそのまま千葉県に当てはめた
とは思わない。
・ アメリカではNPOは地域課題解決のための道具であり、その役割として、NP
Oは地域資源を巻き込みながら活動していく。地域資源にはどのようなものがあ
るのかというところが、マップ作りのもと。
50
・ (アメリカでそうであるように)それぞれのNPOが1つの地域課題に取り組む
ことで、NPOの横のつながりができるのはないかということを考えた。地域課
題を見つけ出すプロセスが大事であることが分かった。
・ CDBGは国家的課題に沿った地域の課題解決が目的では?日本と異なりアメリ
カではNPOは既に自立した存在であり、
「NPOと多様な主体の連携」は周知の
事実。専門特化したNPOが専門性を生かして地域の課題解決に当たったのでは
ないか。
・ アメリカでの地域活性化推進委員会は「地域の課題解決」の達成度を全体的にチ
ェックしアクションにつなげる役割がある。
・ プロジェクトチーム(PT)と地域活性化推進委員会の役割分担を当初からしっ
かり伝えることが肝心。
・ 日本でも「自立したNPO」が1つの地域課題に取り組むことが前提となってい
た。自立したNPOが連携することで大きな課題解決に繋がることが期待されて
いた。だからこそ地域課題を見つけ出すプロセスが当初は重視されていた。
・ NPOが地域で課題解決のために取り組む時に、地域資源の活用がうまくいかな
いところやNPOやその他多様な主体との連携がうまくいかないことなどの地域
の課題があるということから設計された事業。
・ 地域資源を掘り起こし、そこでつながっていく地域資源マップの作成が一つの目
的であるような気がして、それに向かって進めていったがうまくいかなかった。
・ 地域の中でいろいろな団体があり、様々な機関とNPOが連携することを応援す
る仕組みがないだろうかと議論し、制度を設計した。
・ 市民が地域課題を解決する仕組みがないといけないのではないかという話。
・ アメリカの補助金の話は聞いていたが、制度の話は知らなかった。もともとの制
度設計において、少なくとも現場では関係構築に重きを置いていた。
・ 当初から、CDBGの日本的な解釈が含まれ、この事業の目的(
「地域課題解決の
ための地域資源活用」>「NPOと多様な主体の連携」)が不明確になってしまっ
た。
51
事業の全体像
ここで、この当初のモデル事業の全体像を概観してみましょう。
実施地域を市町村から公募し、モデル地域が選定されます。モデル地域で「地域活性
化推進委員会(当初は世話人会と称した。)」を設置し、最初に、NPOが優先的に取り
組むべき地域課題を設定します。これが第1ステージ。その後、公募によりNPOから
提案を募集します。ここまでが第2ステージ。第3ステージで、採択されたNPOと県、
市町村の担当者が事業期間中月1回ペースで会合を持つ仕組みが「プロジェクトチーム
会議」です。課題解決に取り組むNPOが持つ専門的なノウハウを共有したり、協働し
て取り組むべき課題を見つけ、その解決手法を検討できる場を設けることによって、N
POによる課題解決力を強化することをねらいとしました。第4ステージでは、事業の
成果報告会を実施します。
「プロジェクトチーム会議」との関係において重要な機能・組織となるのが、
「地域活
性化推進委員会」です。
「地域活性化推進委員会」は、モデル事業全体のコーディネート
役を担います。第1ステージでは地域課題を設定し、第2ステージではキックオフフォ
ーラムを主催し、NPOからの提案の募集要項の作成や審査会の運営に関ります。第3
ステージ以降は、主に「プロジェクトチーム会議」を有効に機能させる役割を担います。
つまり、
「地域活性化推進委員会」は、地域の現状を分析する能力が求められ、個々のN
POをメンター(助言者)的な立場からサポートし、地元自治体など関係機関との調整
役を担いながら地域活性化に向けた総合的な環境づくりを推進していくことが期待され
ています。
このように、毎月 1 回開催する地域活性化推進委員会とプロジェクトチーム会議のサ
イクルの中で、実践と課題の共有・検討を循環的に積み重ねることによって、総合的な
地域の課題解決力を向上することを目指しました。
52
(2)手探り状況での船出(まずは実践あるのみ)
どこに向かって船を漕ぎ出すのか、県と市町村とNPOでは必ずしもゴールが一致し
ないままのスタートでした。しかし、この事業によってNPOが地域資源を活用して地
域づくりをしていく上での突破口が開けるかもしれないし、何よりこれまでにない自由
さが新鮮で面白そう、冒険に似たワクワク感がありました。
走りながら考える
制度設計後、モデル地域を募集するために、市町村に説明をしましたが、県と市町村
とNPOの3者が連携して地域の課題解決を図る初の事業で、前例もなく、事業スキー
ムを十分に理解してもらえませんでした。また「地域資源活用マップ作成事業」という名
称も手伝って、事業の目的が誤解されることもありました。
手探り状態でしたが、事業を実施していく中で、修正すべき点が出てくれば、その都
度修正していけばいい、走りながら考えようと事業をスタートさせました。
事業のスタート以降、県内部に設置した検討部会で検証を繰り返し、毎年事業スキー
ムに修正を加えてきました。初期で取り上げた課題は、活動テーマ設定のプロセスと県・
市町村のNPO担当課以外のセクションの関わり方でした。
活動テーマ設定のプロセス
初期の事業は、第1から第4ステージまでを1年間で完結し、翌年度繰り返す仕組み
でした。提案採択されたNPOの事業期間をできるだけ確保することを優先すれば、そ
の分テーマ設定に割く時間は少なくなります。与えられた時間は、わずか1か月程度。
我孫子市の事業では行政課題がNPOを公募するテーマになりました。当初の目論見は、
多くの市民の声に耳を傾けることでしたが、1か月程度の検討では中途半端なものに終
わってしまうため、
「地域活性化推進委員会」で議論を重ね、当時の行政課題がテーマに
なりました。
その後、この問題を解決するために、2か年事業の1年目を全てテーマ設定(第1ス
テージ)にあてることを試みています。
53
事業経験者からの声
声
■
地域課題の共有
・ 四街道市や我孫子市の場合は地域課題を見つけるための時間がなかった。このた
め行政主導になり、システムを立ち上げることが先行してしまった。マップ作り
は地域課題を見つけるプロセスを重視していたが、そこで一気に基本的なことが
崩れた。
・ 地域課題が何なのかを突きつめていくことは大事なことで、それを共有しながら
活動の提案をいただくことが、課題解決を深めることを想定していた。しかし、1
年の中でそれらを全て行なう設計であり時間的に無理であったため、2 年目から
もう1年議論するという動きになった。
・ 事業期間の延長は「地域課題の共有化」という点で評価できる。
・ 僕らの認識では、その頃は既にNPOは自立して活動をしており、活動する場を
求めている時期ではないかと思っていた。行政の支援はそろそろ離れなくてはい
けないのではないかとの認識が若干あった。
・ 実際に現場に入ってみると成熟している団体や準備段階の団体などがあり、どこ
を目指していくかということに非常に悩んだ。今思い起こせば、緩やかな経験を
積むことでプラットフォームの構築を目指すことがねらいであったのかと思う。
・ 我孫子市では地域の課題解決力のためにNPOの自立を促すことが主目的になっ
た。アメリカのように「すでに自立しているNPO」による地域課題の解決では
ないが、NPOの成熟度が高い地域での実践としてこの取組は特筆に価する。
・ 県が「県・市町村・NPOがともに築く地域社会事業」に事業名を変えたという
ことで、協働という具体的な形になり、事業のイメージがしやすくなった。
Point
○
地域課題は何なのか、どのような地域資源があり、どのように活動できるのかを充
分な期間を設けて議論し、
「地域課題を共有」することが大切である。
○ 地域課題を共有した上で、どこまで解決に向けた取組を行うかが次のステップとな
る。
54
1.前例がない中でのプラットフォーム事業の始まりと継続
県・市町村のNPO担当課以外のセクションの関わり方
当初の課題の一つが、県・市町村のNPO担当課以外の部署の関わり方でした。モデ
ル事業に参加したNPOから、NPO担当課以外の関わり方が弱い、またはほとんどな
いという批判が多く寄せられました。NPO側の思いを優先して、事業の中で両者の出
会いの場をつくることは簡単ですが、それだけでは継続的な関係につながりません。
この事業に対する県の関係課の関わりについて、当初は、モデル地域で地域課題を決
めた後に関係すると思われる部署に報告し、必要が生じたときにNPO担当課を通じて
協力要請することとしていました。
NPO担当課だけではなく、課題に最も関係する部署が主体的に関わってくれれば、
もっと地域が活性化すると感じていましたが、市町村やNPOの課題が必ずしも県の課
題と一致しないこと、県がその課題を認識していないこと、加えて組織が縦割りで横の
連携が取りにくいこともあり、県の中で課題に関係する課の協力が十分に得られないと
いう問題がありました。
事業経験者からの声
声
■
当時の県庁内事情(県庁内調整)
・ 当時はNPO活動推進課職員のみで対応していたため、NPO活動推進課の事業
になっているのではないかということが問題となっていた。具体的に課題が決ま
った時に事業担当課を呼んできた方が良いのではないかということになった。県
庁内に報告はしていたが調整まではとっていなかった。
・ 当時は協働提案制度という大きな事業を併せて走らせていて、こちらは県とNP
Oとの協働ということで県庁内調整はやっていたが、この事業は市町村とNPO
活動推進課とNPOとでの取組であったため県庁内の調整は行っていなかった。
・ 唯一の例外は西印旛沼流域での事業で、市町村が複数いるところからスタートし
て、課題も「印旛沼の浄化」という県の課題であったため、当初から河川の担当
Point
課が入っていた。
○ 地域課題は部局横断的に関わるものであり、事業関係課との連携は大切である。
○
部局横断的な取組み体制を目指し、取り組む課題を県の重要課題から提示すること
も1つの方法であるが、地域の主体は市民・NPOであることは常に意識を。
○ 課題の掘り下げは、市民・NPO関係者で構成される地域活性化推進委員会で議論
することが重要である。
○
広域の地域課題の解決に向けた取組では、県の事業関係課の関わりは必要不可欠で
ある。
55
(3)変化しながらの継続・育ての楽しみ(事業見直しのプロセス)
8地域でのモデル事業を通して振り返ると、組み立ても事業の方向性も変化してきた
ことがわかります。時には目的が曖昧になったり、微妙に変わったりもしてきましたが、
それは成り行き任せによる変化ではなく、この事業そのものの課題がどこにあるのかを
見つめ、ゴールを探り、常に動きながら継続してきたことによるものでした。
「地域活性化プラットフォーム事業」として継続へ
「県・市町村・NPOがともに築く地域社会事業」はモデル事業として実施していま
した。当初、モデル事業の期間を3年と定めたため、財政担当部署から事業開始後3年
目の17年度には18年度以降事業を終了するか見直すことを求められていました。
ちょうど、千葉県のNPO施策の基本方針である千葉県NPO活動推進指針を引き継
ぐ新しいNPO活動推進計画(18~20年度)を17年度中に策定する作業が千葉県
NPO活動推進委員会で行われており、その中でこの事業に変わる新たな事業が検討さ
れました。
検討していく中で、
「県・市町村・NPOがともに築く地域社会事業」について、次の
ような成果や課題が出されました。
・ モデル事業で6か所やったものを他の市町村にどのように広めるか見えてこない。
・ 事業予算が大きい、会議も多い。理念もいいが、実態が見えてこない、理解されにく
い。関わっているNPOも代表者だけしか理解していないと聞いたこともある。
・ 市町村との連携はとても大事で、直接県と市町村が一緒に関われる事業はあった方が
いい。市町村とNPOの場を県が学ぶ機会は残すべきである。
・ まず、連携ありきの事業となっている。仕組みが先にあって無理やり求めている。3
者が一緒になって取り組む課題が設定されていない。
・ NPOが市民を巻き込んでやる良い事業である。ネットワークが確立される。
・ NPO担当課とはうまくいったが、他の課とはうまくいかなかった。積み残された課
題が新たなチャレンジとなっている。
・ NPO担当課だけではなく各課でやったらもっと活性化すると感じた。
このような意見を踏まえ、
「県・市町村・NPOがともに築く地域社会事業」の骨格は
残しつつ、新たな事業として、
「地域活性化プラットフォーム事業」が提案され、新しい
指針である千葉県NPO活動推進計画(平成18年度~20年度)の行動計画に位置づ
けられたのでした。
56
(千葉県NPO活動推進計画(平成 18 年度~20 年度)での位置づけ)
行動計画
9 地域活性化プラットフォーム(仮称)の創設
県行政がこれまで実施してきた「県・市町村・NPOがともに築く地域社会事業」
の成果を踏まえ、県の重要課題等の中から、県行政や市町村行政の関係各課が横断的
に連携し、市民・NPOを軸とした地域の様々な主体が協力して、地域の課題を検討
します。そして、市民やNPO等が中心となって、さまざまな主体と連携しながら、
その課題解決に結びつく事業を実施します。
これらを通じて、市民・NPO自らが連携して、地域課題の把握、解決手法の検討
から具体的な活動に取り組む仕組み「地域活性化プラットフォーム(仮称)」を構築
します。
18年度から、これまで実施してきた「県・市町村・NPOがともに築く地域社会事
業」を発展させた事業として「地域活性化プラットフォーム事業」がスタートしました。
「県・市町村・NPOがともに築く地域社会事業」と異なる主な点として、次の2つ
があげられます。
一つは、地域で取り組む課題については、中長期的な県の基本方針であった「あすの
ちばを拓く10のちから」に基づき、県が設定することにした点です。
「NPO担当課と
はうまくいったが他の課とはうまくいかなかった。」とか、「NPO担当課だけではなく
各課でやったらもっと活性化すると感じた。
」という意見を踏まえ、NPO担当課ばかり
ではなく部局横断的に取り組む体制を整えることを目指して、地域で取り組んでもらい
たい課題を県の重要課題から出すことにしたのです。これに対しては、NPO担当課の
職員の中でも意見が分かれ、県が課題を設定するというのは、地域(NPO)がその課
題解決に取り組むときに受身的になってしまう恐れがあり、地域のみんなで課題を掘り
下げる(地域が主体的に関わる)という、
「県・市町村・NPOがともに築く地域社会事
業」の趣旨に反するという意見もありました。
二つ目は、提案者を市町村に限ることにした点です。「ともに築く地域社会事業」では、
NPOも申請できることにしていましたが、NPOが申請しようとしても市町村の協力
がなかなか得られない、協力が得られない状態でNPOの提案が採択されても、事業実
施に際し市町村の協力を得るのに時間がかかるなどの問題がありました。そこで、市町
村とNPOと県の3者の協働という事業の特長を残すため、提案者は市町村に限ること
にしました。
平成18年12月の選考委員会で、応募のあった柏市と南房総市が19年度からのプ
ラットフォーム事業のモデル地域として選考されました。
「県が課題を設定するというのは、NPOがその課題解決に取り組むときに受身的に
なってしまう恐れがあり、地域のみんなで課題を掘り下げるという、「県・市町村・NP
57
Oがともに築く地域社会事業」の趣旨に反する。」という意見を踏まえ、モデル地域の決
定後、各地域で速やかに、市町村、県、関係団体、市民・NPO関係者で構成する地域
活性化推進委員会を設置し、地域課題の堀り下げを行い、課題を明確にし、共有するこ
とにしました。
しかし、地域活性化推進委員会での検討期間が短い(2か月で1~2回の検討)ため、
地域課題の掘り下げが十分になされるのかという問題が引き続き残りました。
第2期目の地域活性化プラットフォーム事業
平成20年8月、21年度からの「地域活性化プラットフォーム事業(第2期)」のモ
デル地域2か所を募集することになりました。
柏市、南房総市の事業では、県がテーマを設定することで、NPO活動推進課以外の
県の関係課の関わりが大きくなったという効果はありました。しかし、地域のニーズは、
県よりも現場に近いところで活動しているNPOや市町村がよくつかんでいるというの
も事実です。
そこで、第2期の募集に際しては、地域が取り組む課題(テーマ)については、県が
掲げるテーマに加え、市町村の考える課題、地域のNPOが考えている課題のいずれの
応募も可能としました。また、地域も一市町村だけでなく、複数の市町村にまたがる広
域地域も対象とすることにしました。ただし、NPOが提案する場合は市町村の同意を
前提としました。
提案するNPOにとってはハードルの高い要件で、実際に同意が得られず、断念した
NPOもありました。しかし、この事業が市町村を巻き込んでの事業であり、市町村が
主体的に関わって事業を実施する必要があることから、市町村の同意を前提としました。
なお、「県・市町村・NPOがともに築く地域社会事業」では、提案したNPOは提案
が採択されれば、同時に事業実施の際のコーディネーター業務を担うことになっていま
した。しかし今回は、地域課題(テーマ)の提案と事業実施時のコーディネート業務は
別に取り扱うこととし、コーディネート業務を担う団体(企業、NPO等)は改めて公
募し、選考することにしました。これは、地域の課題を把握していることと、コーディ
ネート業務を実施していく力は別だと考えたからです。
県からは7つの課題(テーマ)を出しましたが、結果的に3市1NPOの計4団体か
ら応募があり、その内訳は、県テーマによる申請が3団体(2市1NPO)、市独自のテ
ーマによる申請が1市でした。
審査の結果、香取市とNPOの「市民活動ネットワーク風の宿」
(モデル地域は山武郡
市)の提案が採択されました。
現在、2つのモデル地域(香取市及び山武郡市)では、地域活性化推進委員会が地域
58
活性化推進計画をつくり、活動団体を募集し、その活動団体がそれぞれのテーマに沿っ
た活動を実施しています。
事業経験者からの声
声
■
事業見直しの視点
・ この事業に関して言えば、地域をベースに地域の課題に結びついて、地元の市町
村にフォローされながら課題解決される仕組みが継続されている。県は地域の課
題をどのように地域で共有させていっていくかということが重要である。
・ 最終的に、この事業は何を目指すのかという原点は何か。地域の力が弱くなって
いることもあるので、地域課題を見つけて、地域を活性化していく力をつけてい
くところでNPOが注目され、そのような中で、出てきた事業である。
・ 本来は地域課題解決をしていくためにどうするかというのがあって、NPOが活
動している。NPOは、県の思惑とは関係なく活動をしているのであって、NP
Oはそれぞれの使命、理念をもとに活動している。その辺の県側の思惑と市民・
NPO側の思惑がこの事業の中で混じって動いていると感じている。ゴールがど
こなのか動いているところがあり、動きながらゴールが出てくるのだと思う。
・ 千葉県のこのやり方は、他の県や地域ではない事業である。試行錯誤しながらい
ろいろな仕組みを見つけ出していくことが、これから地域の力をつけていくとい
うところでは、それなりの成果が上がってきていると思う。
・ NPOを育てるというのは、単にNPOが1人前になるというものではなく、N
POが課題解決力をつけることと最初は思っていた。その時に「マップ作り事業」
は課題発見と解決の手法として、NPOが担うことが育てることと考えていた。
とても難しかった。
・ 広域でやった私たちにとって、地域課題に取り組んでいるNPO活動は、市町村
の枠は関係ない。水関係など県でないとできない広域課題があり、そういう意味
では県の役割は大切である。
・ 応募してくれない事業では困る。また県がやる意義は何なのか、今までの事業で
は、市町村が行えばよいのではないかとの話があり、また県の関係機関が入りき
れなかったところもあった。また、市町村では、地域課題が上司に説明がつかな
いというところもあり、県としての課題を示させてもらい、その上で市町村に手
を上げてもらうやり方がよいのではないかとの話があり、今の「地域活性化プラ
ットフォーム事業」になった。
59
・ 地域レベルで地域課題を考えてもらうということで、県の方ではあまり口出しを
しない、課題設定については、ボトムアップで決めていくというところがあった。
県がテーマを決めるのであれば、通常の補助事業であるような気がした。
・ いくつかの理由から、事業応募数の減少があり、財政サイドからの事業継続の難
しさを指摘され、県がやる意義の再確認を迫られた。これまでの経験で市町村独
自のテーマでうまくいくという感触が得られたにもかかわらず、県の事業として
県が主導性発揮し、市町村のテーマ決めの煩雑さを回避するために、止むを得ず、
県によるテーマを位置づけた(NPOや市町村によるテーマも位置づけてある)。
その結果、通常の補助事業との違いが不明確になってしまった感は否めない。
・ 「地域課題解決型」という目的がいっそう希薄になったためか、期間が2年にな
ったものの、地域課題の共有は必ずしも十分ではなかったのではないか。
60
当時の事業に思いをよせて。みなさまへメッセージ!
(平成 17 年度
県NPO活動推進課担当者)
私が担当していた頃、このモデル事業は、前年度中、あるいは、その前の年度末に、既
に市町村への委託事業が決定していて、各地域における事業の県担当者は年度が変わって
から確定するという仕組みだったと記憶しています。
当時、私自身がこの事業の設計に関わっていたわけではありませんでしたので、2 か年
の事業のうち既に実施中の後半 1 年間の担当者になったときには、正直に言って、かな
り戸惑いがありました。
2 か年のモデル事業の設定であっても、年度ごとに担当者が入れ替わることがありま
す。県や市町村の職員には定期的に人事異動がありますので担当者が変わるのは仕方のな
いことですが、新たに事業の担当者となった時に、最も悩み、ストレスを感じたのは、こ
の事業における県の立場を理解することでした。
各地域のモデル事業において、地域の課題を踏まえたテーマや課題解決の目標を設定す
るわけですが、具体的な課題がわかっている前提で地域の市町村担当部署やNPO、関係
団体等がお互いに協力しながら課題解決のための活動を行うので、課題を解決できれば市
町村及び地域のNPO活動においては期待された成果が得られたことになります。しか
し、当時を振り返ってみると、県の事業としての目標は何なのか、県として、このモデル
事業にどのような成果を求めているのかという点を十分に理解できていなかった気がし
ます。実際、この事業で担当する地域の活動が順調に遂行できるようにサポートし、事業
の進捗管理を行う立場としての意識が強かったように思います。
この事業は、地域の市町村の意志や地域の活動を尊重しています。そのため、県の担当
者としては、あまり口を出さずに常に一歩引いて見ているような感覚がありました。事業
の進捗状況を委託事業の発注者の立場で管理しているような意識です。
本来、各地域のモデル事業の全体を統括する県としての成果目標は、このモデル事業を
通じて地域課題解決のために県・市町村・NPO・関係者等の各組織の人と人とがどのよ
うに関わっているか、すなわち、パートナーシップを築いていくための要素を見出し、普
遍的な仕組みを示すことであったと思います。
61
パートナーシップ=連携というと、組織同士の関係のように思いがちですが、実際に活
動し関わるのは人であって、パートナーシップ=連携とは人間同士の繋がりです。このモ
デル事業の地域活動を通じて、会議や活動に参加した人と人とが出会い、各々の活動につ
いて互いに意見を出し合い、情報交換をし、関わっていきます。そのプロセスの中から、
パートナーシップ=連携を構築する上で、核となる要素を見出していくこと。これが、当
時のモデル事業の目的のひとつであったと思います。
各地域で設定された具体の課題解決を成果目標とするのは、市町村と活動団体です。地
域の活動によって課題を解決していくためには、活動時間が長く、資金は多い方が色々な
面で余裕があるわけですが、じつは、時間や資金が少なければ活動内容や目標設定で調整
することはできます。事業設計上は、地域の課題解決の成果目標を設定することに関して
は、かなり自由度があるといってよいと思います。
しかし、県の成果目標の設定は違います。県としては、もう一歩踏み込んで、モデル事
業としての成果を見出す必要があります。県の成果を見出すために必要なプロセスや時間
を想定し、各主体の役割、各々が達成すべき目標を明確にしなければなりません。そして、
コーディネーターとなるNPOやコンサルタント、活動団体や推進委員と県の担当者がど
のように関わるのかを十分に理解しておく必要があります。
結局、私自身が、県の担当者として、当時の事業においてパートナーシップ=連携を構
築するという意識で十分な働きかけができていなかったというのが反省点であり、こうす
ればよかったと改善点を考えるきっかけになっています。
他の担当者は、きちんと各主体の立場を理解して事業に携わっていると思いますが、私
のような者が他にいないとも限りません。「普及」という観点からも、県における事業設
計(事業の組み立て)においては、各主体が目指す目標を明確にしておく必要があります。
思いがけず、この事業の担当者になった場合でも、各々の立場や目指すべき目標を理解
できていてこそ、この事業全体の成果目標が達成されると思います。
今後の事業普及のためにも、この体験集が有意義なものになるよう期待しています。
62
2.そもそも地域活性化プラットフォーム事業の目的は何なのか
2.そもそも地域活性化プラットフォーム事業の目的は何なのか
県、市町村、そしてNPOはそれぞれの理解の仕方でこの事業の目的を思い描いて取
り組んだと思いますが、一致する部分もあり、また少しずれているところもあったかも
しれません。
県や市町村の目的とずれるところもあったでしょうが、NPOは掲げられた大きなテ
ーマに沿って自分たちの得意分野を切り口にして解決を図ろうとしました。地域資源と
は何か、資源間のスムーズな連携はどうしたら可能になるのか、独自の課題に取り組む
NPOは地域の大きな課題に視野を広げられるか、などの不安や疑問を漠然といだきな
がらもチャレンジしたと言えます。
(1)現場の戸惑い(学びながらの実践)
特に最初は「地域資源活用マップ作成事業」についての正確な認識がないままのスタ
ートでしたので、事業名と目的と実際にやろうとすることとがつながらず、現場では戸
惑いの声が多く聞かれました。特に地域活性化推進委員会は、その重要な役割を意識で
きなかったため、何をしたらいいのかわからず、形だけになりがちでしたが、PT会議
を通して現場からの声が聞こえ始めてようやく動きだしたのでした。
事業経験者からの声
■声 「プラットフォーム的な感覚(連携型)」の芽生え
・ PT会議の中で、独立的に動いていたのが、いろいろな資源の交換をするように
なってきて、広がりがあることを自分たちで気が付いた。
・ PT会議では公募団体が入り、最初は活動報告で終わっていたが、それぞれお互
いに、情報交換したりノウハウを提供したりして、プラットフォーム的な要素が
見えてきた。当初はプラットフォームを意識していなかったが、次の事業では、
意識していこうということを感じた。
・ これからどのような形で活動して行ったらよいのか分からない方々が、情報提供
により、きっかけをつかみ前に進んでいった。
・ もともと市において、市民活動支援の体制を整えており強力にサポートをしてい
たことが、より一層連携を発揮した。
63
声
■
関係づくり(ネットワーク)のプロセスと(全体)サポート
・ 最初は、地域課題を少し具体的なものに定めて、それに向かって合わせていくも
のだと思ったけれども、動き出してみるとそうではなかった。それぞれの団体は
仮の地域課題をそれぞれが連想しており、それに向かって活動していく。コーデ
ィネーターはそれぞれの団体が描いた地域課題に向けた活動をサポートしてい
くスタイルだということが結果としては分かった。その場合、コーディネーター
としての後押しの仕方に戸惑いがあった。
・ 市民団体の活動、県や市の方の考え方を尊重して、できるかぎり、それぞれの団
体をバックアップしていく形がポイントになるが、各団体の目標は何か、それに
対して各団体ができる事は何か、それらをどうすり合わせるか、その場合の課題
は何か、それに対してどう展開するかというプロセスを追いかけながら議論して
いかないと全体は解決しない。
・ 我々はPT会議や推進委員会の中で、その為のプロセスを用意すると言ってしま
った。それらをコーディネーターが出すこと自体は、どちらかというと誘導にな
りご法度に近いスタイルである。最初のコーディネートの組み立ての段階から、
コーディネーターが団体間の連携のためのプロセスを用意するのか、本当の活動
支援という流れの中でのネットワーク構築なのかという面で、当時はきちんとし
た方針がなく戸惑った。
・ 地元のNPO・市民活動団体がネットワークを構築されて、新たな関係作りがで
きるという事実が積み重なる事の方が、県の都合、市の都合などより大切である
と考えた。地元で活動されている方が第一なので、そこに少しでもネットワーク
や新しい関係ができればよいのだということを優先して考えた。
・ コーディネーターとして私たちは、この事業の仕様を見たときに地域課題の解決
に色々な市民の力を結集する、一つのモデルを作ることであろうと考えていた。
具体的には、色々なベクトルを持った市民団体があるが、これらをPT会議や地
域活性化推進委員会なりで集めることで、何かつながりを持たせようということ
だと思った。それぞれの団体のベクトル(異なった方向の矢印)を太く長くする
ことが目的なのか、それとも大きな地域課題に対してこの束を結集することが目
的なのかで組み立てが違うと思っていた。私たちは後者であると考え、各団体の
力を少しずつ寄せ集めて、ベクトルを合わせて大きな束にすることを目指した。
64
・ 確かに地域課題解決力の強化は大切であるが、具体的にどの様な手法をとればよ
いのかということが現場ではなかなかわかり難かった。そういったことからネッ
トワークをつくることによって、更なる活動展開や課題解決につながるとの趣旨
からプラットフォーム事業に変わっていった。そのプロセスがあったためか、現
場では、ネットワークをつくることが目的であるとの認識が大きくなっている。
Point
○
実際の連携の中で役割が徐々にみえてくる。
○
違うテーマで活動している団体が出会い、新たな地域課題解決の目標に向けて動き
出す。
○ 各団体の目標は何か、それに対して各団体がでることは何か、それらをどうすり合
わせるか、その場合の課題は何か、それらを議論していかないと全体は解決しない。
○
個々の活動を進めるだけでなく、それぞれの活動を振り返り、地域課題を再確認し
ながら事業を進めることにより、県や市町村の課題など地域の大きな課題解決に向
けた取組となる。そのためには、ネットワークをつくるなど地域課題を再確認する
ことができる環境づくりのサポートが大切である。
○
それぞれの団体は独自に地域課題を連想しており、それに向かって活動していく。
コーディネーターはそれぞれの団体が描いた地域課題に向けた活動をサポートす
る。
65
(2)市町村によって異なる事情(都市部・郊外・農村部)
これはやってみてわかってきたのですが、市町村の状況によって、参加提案するNP
Oの規模や経験も異なり、大まかに3つのパターンが見られました。我孫子市や柏市の
ような都市型、四街道市や市原市、栄町のような郊外型、南房総市のような農村型で、
それぞれのパターンに共通する特徴があるようです。
事業経験者からの声
声
■
都市部の事情
・ この事業の肝は、「おんぶに抱っこ」のNPOをつくるために実施するのではな
く、今まで行っている活動の延長線上で持って来るのではなく、新たな課題を設
定し、そこにどう取り組むか、という意識付けのために作り上げるということ。
・ 団体の意識付け、皆様の活動を支援する為ではない。皆さんが新たに課題を発見
して活動する為に、そういう部分について支援するのですよというところが一番
大きかった。
・ NPO(市民活動団体)にしても、計画屋のコンサルとは始めて付き合うので、
海外の事例なども含め色んな情報をもらえた。
声
■
農村部の事情
・ 連携の課題は地域が広く参会者の移動距離が出てしまうので、連携しても隣接す
る旧市町村までとなってしまう。
・ 地理的に端っこに位置するところでは、「頑張らないといけない」と言い動く。
また人口が少なくさびれ感がある地域では頑張り感がある。さびれ感と頑張り感
は比例している。危機感があるので動いている。一方、市の入口に位置する地域
では危機感を持っていない傾向にある。
・ 事前にNPOがコーディネートしてくれるのだよという事業だったので、手を挙
げやすかった。
Point
○
合併等により、広域となった農村部では、見えない壁と地理的な壁がある。
○
危機感を持った活動が、新たな展開のつながりとなる。
○
何もないところからは、市町村もNPO(市民活動団体)もはじめられない。新
たな展開に向けたきっかけ(財政支援的な意味合いを持つ助成)は、効果的な1
つの手法。
66
(3)実践の中でようやく見えてきたこの事業の目的
郊外住宅地で行った取組から(四街道市の事例から)
事業の共通理解にいたるまで
○ 県と市とNPO(市民活動団体)が協働して行うという画期的な、魅力に満ちた「県・
市町村・NPOがともに築く地域社会事業」に理解と関心を持ってもらいたいと思い、
キックオフフォーラムの日までに、できるだけ多くの団体にじかに会って話をした。
初めて知る団体、名前だけ知っていても初めて会う団体の長も多かったが、その多く
が話を聞いてくれ、キックオフフォーラムに参加してくれた。
○ 事業提案をした経験のない団体が申請書を書き上げるまで、市も県も担当者は丁寧に
辛抱強く、つきあった。それは事業そのものを理解してもらう過程でもあった。
○ 途中であきらめそうになった団体にも根気よく説明を繰り返し、事業への理解と参加
への意欲を醸成していった。
○ 提案申請とプレゼンテーションを経て、共通理解は深まったと感じたが、PT会議で
も事業の趣旨がよくわからないという発言もあった。自分の団体が取り組む課題と全
体の事業との関連、バランス、事業の最終目標などは実感しにくかったのかもしれな
い。
意義と効果
ひとつのテーマ(地域の重点課題)の解決に向けて、種々のNPO(市民活動団体)が多
様な視点から取り組むことによる6つの意義と効果。
① 意外性が生まれ面白い
② 新たなネットワークが生まれその後の活動が効果的になる
③ 県・市町村・NPOがともに築く地域社会事業チームを、参加団体の枠を広げながらそ
の後も継続することで、行政との協働が進めやすくなる
④ 行政との協働の接点が増えるにつれ、行政職員の市民活動団体への理解が広がる
⑤ 単体では取り組めない広がりのある活動を創り出せる
⑥ 地域全体を見ることができるようになり、自分の立ち位置と地域の動きを感じながら活
動できるので、地域づくりの認識が強まる
67
事業経験者からの声
声
■
動きながら見えてきた目的とギャップ
・ 地域資源活用マップ作成事業は、事業始める中で、何を到達点にしたら良いのか
というあたりは、始めは具体的なイメージが十分ではなかった。支援事業かとい
うと支援事業ではない。ネットワーク作りかというとそうでもない。「それでは
この事業はいったい何をやるのでしょうかね」という悩みを抱えながらこの事業
はスタートした。マニュアル的なものをつくることでもない。実際の地域資源の
リストアップ化をするかというとそうでもない。つまりこのマップ事業とはいっ
たい何だというところで、入口ではすり合わせをするのが大変だったが、前に進
まなければ仕方がないから、とにかく今のスキームの中でやっていこう。走りな
がら目指していくものを見つけようということになった。
・ この事業の中で県とNPOの関係、県と市の関係、市とNPOの関係、当然我々
コーディネーターが、相互に全方向で関わってくるのだけれども、その中での役
割のポイントが徐々に見えてくるという感じだった。
・ 上手くまわしていく為のシステムや、何があるとネットワークのマップ化ができ
るのだとかというところを吸い上げようというのが途中で見えてきた。苦労した
点は、団体の人とのギャップである。団体の人たちは、自分たちは市や県に認め
てもらい、自分たちの活動を目立たせたいという思いが強く、連携の仕組みづく
りなど自分たちの団体では難しくて考えられない。また団体が考えることではな
いとういう認識があり、そのギャップをだんだん縮めていき、皆さんの今後の活
動のために、活動をしやすくなる道を皆さんも考えたほうがやりやすいではない
かと活動を後押ししつつ、吸い上げていくというところがちょっと苦労した。
・後半では、テーマを絞って活動できた。
(テーマに対して、直接関係する団体だけ
でなく)障害であったり、高齢者であったり様々なアプローチで活動を展開して
いけた。今でもそれらの団体はそれぞれに活動している。そういった意味では、
担当課としては、とてもありがたい事業であった。
・事業により活動した結果、自転車盗難発生件数が大幅に下がるなど、大きな成果
があった。
・ 個々の活動の力が一体化できないことが最大の課題であると思った。個々の団体
ではなく、いかにつながって何ができるのかを話さなければいけない。
・ 今まで到達できなかった分野の課題をどう解決していくか、その目指すべき方向
と、課題解決に向けてみんなに乗ってもらうことを併せ持ったものが必要。
68
・ 古くからやっている団体は、自分たちのやっているやり方に自信をもっているの
で、もとの鞘(さや)に戻ってしまう。新しい団体や仕事としてやっている団体
などは、成果が上がらないと、自分たちの評価が下がってしまうという立場で関
わっているのでより多くつながり、より多くの効果をもたらそうという方向に動
く傾向にあった。組み立てるときに「動きの良い団体」
(連携することが自身の事
業発展に不可欠と実感している団体)を入れることがいいと思った。
・ 何かのために組み直そうとする結束力が地域をつくる時に、一緒に一つの目標に
働きあう一体感が、いい感じである。
Point
○ 事業のスタート時に何をする事業なのか、どこがゴールなのか確認(議論)するこ
とがポイント。
○ 仕組みの構築を目的にすると、活動に重きを置く団体とのギャップが大きくなるの
で、地域を良くする手法として仕組みを考えることが大切。
○ この事業のゴールはやはり「地域課題の解決」ではないか。
「NPOの連携」なくし
て、それは達成できないが、あくまでもそれは手段である。
○ 連携は目標になりにくい。地域の課題解決に共に取組む結果として連携が育まれる。
○ 地域課題の解決のためにやるべきことは?「地域課題の発見力向上」
「地域課題共有
の仕組みづくり」「地域課題解決のシナリオづくり」「地域課題解決プロジェクトの
立上げ(課題解決能力のあるNPOの結集)
」
「課題解決に向けたスキルの向上」
「課
題解決のための人・情報・技術・資金等の多面的な連携」等々
○ テーマを実質的に絞った上で、色々な活動をしている団体のそれぞれの視点を活か
し、同じテーマに集中することで、成果をあげることができる。
69
3.地域課題の解決に向けたテーマ決め
3.地域課題の解決に向けたテーマ決め
地域には、それぞれの課題があります。一つ一つの団体がそれぞれの課題解決に向け
て取り組んでいますが、この課題をみんなで共有し、方向性を見ながら活動に取り組む
ことで大きな効果が期待できます。そのためには、活動テーマを決める過程がとても重
要です。
(1)地域課題を掘り下げる(誰がどのように活動テーマを決めるのか)
このまちの課題は何か、どういうまちに住みたいか、そのためにどんな活動をしたら
いいのか。地域の課題を掘り下げ、活動テーマを決めることがこの事業の入り口です。
まずは地域の課題の設定です。県が設定する方法と、市町村やNPOなど地域が設定
する方法があります。
次に、設定した課題をどのように掘り下げ、NPOの活動テーマを決定するかです。
これは、地域活性化推進委員会で決めることになっていますが、委員会の構成と検討期
間がポイントです。
地域には様々な地域課題があります。プラットフォーム事業は、そのような地域課題
を募集することからスタートします。募集の仕方は、これまでにいくつかの変遷があり、
平成15、16年度は市町村から募集、平成17年度は市町村、NPOから募集、平成
18年度は、初めて県が課題を設定し、その中から市町村が応募することに限定しまし
た。
そして20年度には、これまでの経過を踏まえ、市町村だけでなく、NPOからも応
募ができるようにし、課題についても県が設定するものばかりでなく、市町村やNPO
自らが考える課題でもよいこととしました。
次に、地域課題の掘り下げと活動テーマの決定です。採択されたモデル地域では、地
域活性化推進委員会を設置し、採択された地域課題を掘り下げるために議論をします。
地域活性化推進委員会のメンバーは、県・市町村のNPO担当課、事業担当課、採択
された地域課題に関係する団体(テーマによって、観光協会、森林組合、商工会議所、
農業・漁業協同組合など)
、NPO、地域の様々なネットワークの中心的な人などで構成
されます。
検討期間は、これまでの時期により異なりますが、1か月から1年かけて地域課題を
検討し、その後に募集するNPO公募事業の活動テーマ(事業テーマ)と地域活性化推
進計画を作成します。
70
この議論による掘り下げこそが地域課題を共有する第一歩となるものです。そして、
その課題を掘り下げるときに大切なのが参加するメンバーです。繰り返しになりますが、
それぞれの課題によって、専門的な知識を持った有識者や、それぞれの分野で活動して
いる団体、課題を目の当りにしている現場のNPOや行政職員、そして地域を職種的視
点で見ることができる各種団体で構成される地域活性化推進委員会で検討していくこと
になります。
それぞれの立場で地域課題を検討するので簡単には合意形成はできません。激しくぶ
つかり合うこともあるかもしれません。地域住民に問いかけることもあります。または
先進事例を視察し研究した上で取り組み方を視野に入れた課題を検討することになるか
もしれません。しかし、参加者すべてが議論に参加して検討するプロセスがとても大切
なのです。充分な議論により課題が共有され、ここで掘り下げられたテーマをもとに課
題解決に向けた取り組み事業提案を募集し、採択された団体による活動の始まりが、実
質的な事業のスタートとなるからです。そして、テーマを設定したこの地域活性化推進
委員会が、採択された団体で組織されるプロジェクトチーム会議(PT会議)の支援と
事業全体の進行管理を行う役割を担い課題解決に向けてサポートをしていきます。
事業経験者からの声
声
■
活動テーマの設定
・ 地域の課題を自分たちで発見して、自分たちで何とか解決したいというものを見
つけて、そこに飛び込むということからのスタートである。それが公共サービス
にどう繋がっていくかという手前の段階である。
・ テーマ設定は、地域課題の解決プラス、サービス提供を受ける第3者(市民)が
満足するものをつくるべき。
・ 自立したNPOが少ないので、この事業をやる事によりNPOも自立するという
ことの仕掛けとして、この事業はあったと思う。1年間、うちの方はテーマ決め
に時間を費やせたが、最初はこの事業がどんな事業なのかということとか、そう
いうことに1年間の大半を費やした。2年目に向けて、1年間でだんだん、さあ
いくぞという士気を高めていった。
Point
・
○ この事業は団体支援ではない。
「地域課題の解決力の強化」だとするならば、何が
課題か、何をもって解決とするのか。それは事業を通して受益者が満足すること。
○
地域課題の発掘・検討に時間をかけて事業を実施すると、NPOも成長幅が大き
くなる。
71
(2)テーマを共有する(いろいろな分野のNPOを巻き込むテーマ決めのコツ)
地域の課題は複雑に絡み合っています。子育て、環境、文化などがテーマでも、その
分野の団体だけが参加して活動するだけでは、暮らしやすいまちづくりには十分ではあ
りません。多くのNPO、市民と共有してテーマを決めることは、様々な分野の団体か
ら良い事業提案をいただくためには重要なポイントです。
コーディネーターの視点(栄町の事例から)
栄町で実施した事業では、1年目は地域課題の洗い出し、地域資源の掘り起こし、人
材の発掘を目的に行いました。そして栄町地域活性化推進委員会準備会を設置し、次年
度に取り組む活動テーマを検討し、決定しました。準備会は、フォーラムの企画、広報
の実施、活動成果の取りまとめなど事業を推進する役割を担い、メンバーは地元のNP
O(環境保全、観光・まちづくり、こども会育成連絡協議会、住民活動支援センター)
から4名、県・町のNPO担当課から選出し、計10名で6月から1月まで6回開催し、
さらに拡大準備会を1回開催しました。
栄町は「栄町町民総意識調査」を平成17年3月にまとめた報告書があり、参考にな
りました。調査概要は、居住環境・生活環境、町の事業等に加え、コミュニティ・地域
活動についての調査項目がありました。住民の意識は、概ね地域に対して愛着を持ち、
70%の住民はなにかしらの地域活動に参加したことがあるというものでした。この町
の特徴は、昭和50年代に宅地開発で移り住んできた新住民と造成された団地を囲む農
村地域の旧住民で構成されていることです。このことは住環境、地域のつながり方の違
いなどがあり、地域課題を洗い出す中で多くの市民とテーマを共有する際には重要なポ
イントと感じました。
「テーマを絞るために実施したこと」
事業開始を住民に知らせるために開催したキックオフフォーラム「あなたの出番で
す!みんなでまちづくりフォーラム」ではまちづくりの活動を実践している方の講演、
この事業を先行して実施している市原市と四街道市の事例報告を聞いた後、
「みんなで話
そう」意見交換会を行いました。参加者98人の参画意識も盛り上がったところで、町
の地域課題は何かをアンケートに記入してもらい、「環境保全」「障害者がともに暮らせ
るまちづくり」「商店街の活性化」「子どもとお年寄りの交流」等に関心が高いことがわ
かりましたが、分野も広く絞りきるためには困難が予想されました。そこで、地域ミニ
集会を計画、3つのテーマで県内他市の身近な活動事例を聞きながら、改めて栄町の地
域課題を考える機会をつくりました。「みんなで安心なまちづくり」「定年後の地域デビ
72
ュー」
「みんなの力で子どもの居場所づくり」のテーマで3回開催、50名の参加があり
ました。この町でこんな活動があれば、地域はこうなるという具体的な事例はわかりや
すかったようです。また、栄町住民活動支援センターに登録している団体100団体に
対して活動実態アンケートを実施、その中から10団体に対してヒアリングを行いまし
た。地域課題と活動内容、必要とする支援等について伺いました。また、県外の先進事
例から学ぼうと、準備会委員等15名で「まちづくり地域活性化」のテーマで「NPO法
人不忘アザレア」、「NPO支援と協働」のテーマで「NPO法人せんだい・みやぎNP
Oセンター」の活動現場の視察を行いました。この視察では、大いに触発され、栄町を
こうしたい、ああしたいと課題解決に向けて盛り上がりました。しかし、まだテーマを
絞るまでには至らなく、県担当者はそろそろ具体的なテーマを描こうと言い、町の担当
者は分野を特定するようなテーマではNPOの参画が少ないのではないかという不安が
あり、食い違っている状態でした。コーディネーターとしては「まちづくり」という漠
然としたテーマでもいいのではないかという安易な考えも頭をよぎりましたが、
「○○○
でまちづくり」の○○○を皆で共有するために1年間、活動してきたわけですからここ
で妥協するわけにはいきません。
もう一度、住民と重点テーマについて掘り下げる場として「新春集会」を企画、これ
までの振り返りを行い、ワークショップ形式で意見交換をしました。その時の重点テー
マは、「人のつながり」「元気な子ども」
「高齢者」
「町の元気」「男性の参画」「環境」と
だいぶ関係性が見えてきました。再度、準備会で議論していると、
「昔自分たちが子ども
時代は、外で泥んこになって遊んで、野良坊って言われていた」という意見がでて、
「野
良坊」―「元気な子ども、地域の活性化」のフレーズに「これだ!」と皆合点したので
した。回を重ね長く議論してもまとまらなかったものが「野良坊」のイメージを膨らま
せ、各分野で自分たちが実施しているまちづくり活動と重ねられた瞬間でした。そのテ
ーマは「子どもがかけまわれるまち・Sakae~よみがえれ野良坊」
。後にこの事業を「野良
坊事業」と呼ぶことになるほど印象的な言葉です。
1年間議論する時間を設けることで、地域課題の掘り起こしを住民自身が考え、聞き
出し、他の実践事例から学び、栄町にひき寄せて具体的に考えることができたのではな
いかと思っています。関係者が確信を持ってテーマを決められたことは、次の年度に始
める団体の公募事業へとスムーズにつながっていきました。
73
県事業担当者の視点(柏市の事例から)
県テーマと市テーマの反映
このときは、県が提示した課題(テーマ)の中から市町村が選び、応募するという仕
組みでした。柏市が選んだテーマは、県の文化振興課から提案した「公共施設等を利用
した文化拠点づくり」でした。文化振興課の意図は、市民が音楽や演劇等の活動や練習
を行う際にスペースが欲しいとの要望が多いことから、市町村と連携して、アーティス
トに活動の場として、一定のルールの下に、市町村施設、駅周辺のスペース及び空き店
舗等を提供することで、アーティストを育てるとともに、まちの中に文化拠点を創出し、
併せて市民とアーティストとの触れ合い・交流を通して、文化・芸術活動の振興を図ろ
うとするものです。
これに対し、柏市から提出されたモデル地域申請書のテーマは、
「公共施設等を利用し
た文化拠点づくり~文化振興による地域活性化~」でした。柏市では、文化振興基金や
芸術文化自主事業基金を設置したり、芸術鑑賞会や文化祭の開催を通して、市民の文化
活動への支援を図ったりしていることから、文化団体や劇団が多数存在しています。ま
た、特に近年はアート(芸術文化)を基調として、常磐線沿線のイメージアップと活性
化を図るため、JOBANアートラインプロジェクト実行委員会の設立、東葛映画祭の
開催等、市民の文化活動が活発化しています。こういった状況を踏まえ、市民参加によ
る文化活動と各文化団体が行っている活動が有機的にネットワークを構築し、連携して
いくことを目的とした申請でした。
柏市選定後のテーマ案は「文化振興による魅力あるまちづくり」となり、さらに、地
域活性化推進委員会で検討した結果、テーマは次のようになりました。
アート(芸術文化)がつなぐまちづくり
市民(団体)が主体的に芸術文化活動に参加することを通じて、各団体の活動促進を
図るとともに、芸術文化に身近に触れられる機会を創出します。さらに、伝統文化・
新たな文化など様々なスタイルの芸術文化の共存・融合や市民・NPOを軸とした多様
な主体によるネットワーク形成により、まち自体の魅力の向上と活性化をめざします。
このテーマによって活動団体を募集・選定し、地域活性化推進委員会やPT会議によ
ってそれぞれの団体の活動との調整をしながらテーマの共有を図ってきました。
74
テーマの期待と思い
このように県テーマをもとに作成された市のテーマを地域活性化推進委員会で検討し
た結果、単なる文化拠点づくりにとどまらず、アート(芸術文化)によるネットワーク
形成によって魅力あるまちづくりを目指すものとなりました。
実際に、このテーマをもとに選考された団体が活動することにより、市民の文化活動
が広がり、市民が手軽に文化活動に触れられる機会をつくることができました。
一方、上記テーマは「伝統文化」も含めて考えており、選定団体の中に伝統文化に関
する活動団体が含まれ、市民にとって伝統文化がより身近なものになることを期待して
いましたが、伝統文化に関係する団体の企画提案は十分に目的に合致するものとなって
いなかったため、残念ながら選定されませんでした。
テーマの決め方のコツ
今回、県テーマは、文化拠点づくりによって文化振興を図ることをねらいとしたもの
でしたが、上述のような文化活動の充実した柏市の状況を踏まえて、様々なスタイルの
芸術文化の共存・融合や市民・NPOを軸とした多様な主体によるネットワーク形成に
よって、まち自体の魅力の向上と活性化をめざすものへと広がっていきました。
このことからもわかるように、地元自治体と連携して地域の実態を十分洗い出し、そ
れを踏まえて、本来の趣旨を損なわないよう働きかけながら、テーマを決定していくこ
とが重要です。
県事業担当者の視点(南房総市の事例から)
テーマ設定の経緯
都市住民を中心に、豊かな自然や景観が残る農山漁村を訪れ、農林漁業体験や人々と
の交流を楽しむ参加体験型の活動が盛んになってきました。一方、農山漁村地域におい
ては、都市住民との交流が農林水産物の販路拡大や新たな雇用の創出など、地域活性化
の有効な手段の一つとなっています。
こうした中、千葉県では平成15年2月に「大地と海の『グリーン・ブルーツーリズ
ム※in ちば』推進方針」を策定しました。この方針では、本県の特色を生かし、誘客体
制の整備促進や地場産業の振興、情報発信などの施策を実施することとし、施策展開に
当たっては農林水産業者、観光事業者や商工業者、地域住民などが一体となった新たな
地域づくり運動として取り組むとともに、NPOやボランティアとの連携など民間の創
意に基づき推進していくこととしています。
首都圏に位置する本県は、温暖な気候と豊かな自然に恵まれ、全国有数の農林水産業
75
県でもあることから、苺や梨の観光農園をはじめ、稲作・落花生などの農産物オーナー
制農園、漁業関連では地引網漁体験など、様々な体験ができる施設も多く、また、手軽
に農業体験ができる市民農園、地元産農林水産物を生産者が消費者と対面で販売する直
売所なども多数整備されてきました。
今後、さらに都市の人々を呼び寄せていくためには、施設が単独で活動する「点」と
してだけでなく、地域に散在する施設や人を有機的に結び、地域が一体となる「面」と
しての機能を充実させ、地域そのものをブランド化していく必要があると考えていまし
た。
このような取組を県として実現化していく場合、これまでは補助事業を立ち上げ、主
体となる団体に補助金を交付する方法が多く行われていましたが、この「地域活性化プ
ラットフォーム事業」は、県や市町村も含め、市民、NPO、関係団体など地域の様々
な主体が一緒になって課題に取り組むことができるとともに、NPOならではの柔軟な
発想と地域に根ざした息の長い取組ができるのではないかと考え、
「地域が連携して取り
組むグリーン・ブルーツーリズム」をテーマとして提案しました。
※ グリーン・ブルーツーリズム
都市の人々が農山漁村に滞在して、農山漁村での生活や農林漁業体験を通じ地域の人々と交流した
り、川や海・田園景観などふるさとの風景を楽しむ余暇活動のことをいいます。千葉県では、こうし
た滞在型の余暇活動に加え、首都圏に近いという立地条件を生かし、日帰りでできる農林漁業体験や
身近な市民農園での農業体験、農林水産物直売施設を介した都市住民との交流など幅広く取り組んで
います。
グリーン・ツーリズムという呼称が一般的ですが、千葉県の3方を囲む海という恵まれた資源も積
極的に活用していくという意味を込めて、
「グリーン・ブルーツーリズム」と呼んでいます。
連携のイメージ
テーマの共有と事業実施
小さな「面」
県の安全農業推進課が提案したテーマ
資源
に南房総市から申請があり、事業実施が行
活
動
団
体
農 家
われることになりましたが、南房総市は7
つの町村が合併により誕生した市で、「道
資 源
団 体
資 源
の駅とみうら 枇杷倶楽部」を開設した旧
連 携
富浦町や、廃校活用の体験交流施設「自然
資 源
の宿くすの木」を中心とした都市との交流
資 源
活動が盛んな旧和田町など、それぞれの地
域がともにグリーン・ブルーツーリズムに
活
動
団
体
資 源
漁業者
NPO
飲食店
は積極的で、市内にはこれらの施設の他に
小さな「面」
大きな「面」
76
資 源
団 体
小さな「面」
地域それぞれに特色を持った様々な施設
活
動
団
体
も整っています。また、修学旅行の誘致をはじめ観光施策の推進に市を挙げて取り組ん
でいます。
この市で、グリーン・ブルーツーリズムをテーマにどのような形で関係者が連携し、
「面」としてその取組の幅が広がっていくか、この事業に期待していました。
当課が想定していた連携は、それぞれの参加団体がその活動拠点の地域内で、交流施
設や観光農園などのグリーン・ブルーツーリズム資源が互いに連携して誘客体制を整え
たり、活動そのものを地域の関係者・機関と連携して行ったりと、
「点」から「小さな面」
を構成し、それがさらに活動団体同士の連携によって「大きな面」になっていくという
ものでした。
応募のあった団体の活動内容は、グリーン・ブルーツーリズムというテーマには即し
ているものの、新たなグリーン・ブルーツーリズムへの取組としてのイベント開催であ
ったり、連携の幅が小さいものが多かったのは残念でした。
しかし、なかには地域特有の資源を他の団体や飲食店、観光協会などと連携しながら
魅力のあるイベントを開催する団体もありました。また、グリーン・ブルーツーリズム
の受入を行っていく方が増えることで新たな連携が生まれるという期待もありました。
なにより、応募団体の方々の意気込みは大変なもので、市民と市が互いに地域の課題解
決に向けて取り組んでいこうとしている姿勢が強く感じられたところです。
事業実施期間中は、事業の全体管理を行う地域活性化推進委員会や活動団体同士の意
見交換の場となるプロジェクトチーム会議(PT会議)を通じて、各団体の活動の進捗
状況が、地域活性化推進委員として参画している関係者だけでなく、参加団体も互いに
確認できた点や、各団体が活動を行っていく上での課題などを共有することができたこ
とは非常に良かったと感じました。ただ、各団体の共通の課題として、いかにして都市
住民を集めるかに偏ってしまい、訪れた方が又来たくなるようにするにはどうしたらよ
いかなど、訪れる側(反対側)からの視点が少なかったように感じました。
また、テーマ提案課としての活動団体への協力が、県ホームページ(グリーン・ブル
ーツーリズム関連)での情報発信やマスコミ向けの月間情報紙への掲載にとどまってし
まい、もっと支援できたのではと反省しています。
77
3.地域課題の解決に向けたテーマ決め
事業経験者からの声
声
■
きめ細かい手続きによる地域課題(テーマ)の共有化
・ コーディネーターとして、よそ者で地元にいないという弱点。それをカバーした
のが、市民活動支援センター。NPOを束ねる機関を町が持っているので、とて
も助けられてコーディネートができた。
・ 県としては、きちんと課題を決めて次に団体を募集することを言っていたが、小
さな町でそんなに団体はないなど、地域活性化推進委員会で話し合った。1 年かけ
ていろいろなことをやって、最後に地域課題をどうしようかという時に大変苦労
した。
・ 狭いテーマに絞って議論した方が団体間のつながりやテーマの共有という面で、
連携がとれると思い、絞ることをお願いした。テーマを決めるときは、地域活性
化推進委員会のワークショップで決めた。
・ 地域活性化推進委員会で協議し、個別に環境、福祉分野の団体でも文化というテ
ーマにつながることなどを丁寧に説明し手分けをして声をかけた。
・ コーディネーターから、ネットワークをつくることが、地域活性化推進委員会の
残された役割と言われ団体や地域活性化推進委員に声をかけネットワークを立上
げた。
・ 課題というよりもどういう活動であったら市民が参加しやすいかと考え、テーマ
を選んだ。地域課題を決めるまでに、いい手法があるとうまくいくのではないか。
団体の意見が入らない中でテーマが決まっているので、1年目は決まっているテ
ーマに従うような状態であった。
・ 県テーマで提案し、1~2回の地域活性化推進委員会の会議の中で決定している
ので、スタートのところで意見が出ていれば、もっとよく動くのではないかと思
う。
・ テーマ決めのワークショップは、一人ひとりの意見が出せる環境をつくるという
ことである。地域課題はどこの町にも同じようにあるので、取り組むべき課題と
いうことでみんなが、それを共有できれば事業に向かう。
・ NPOの活動は、誰が参加しても良い様な活動をしていること、第3者の市民か
らみても社会的なことをやっている活動であることなどを、具体的にこの事業を
通じて2年間様々なところで、市内全地域で展開し、また町内回覧や市政だより
など市の広報媒体を積極的に利用したので、理解はすごく深まってきた。
78
Point
○
大きなテーマは、一見いろんな団体が飛びつきやすいが、深まりにくい。また、抽
象的で「その地域特有の課題解決」のテーマにならない。
○
テーマを絞っても、色々な分野の団体が事業に参加できることをコーディネーター
や地域活性化推進委員会が丁寧に説明することで活動団体が集まる。
○
きめ細かいテーマ決めの手続き(「地域課題解決」の目的の明確化)は、事業終了
後の連携にもつながる。
○
参加しやすいテーマというよりも、独自の地域課題の方がその後の活動の方向性が
明確になりやすい。その地域独自のテーマの設定が有効。
○
地域活性化推進委員会や活動団体によるテーマの共有、特にそのために、参加者の
意見が入れられるようなテーマ決めの方法がその後の活性化に繋がる。
自然保護
福 祉
子育て
環境学習
ネットワーク構築
テーマ
(課題)
課題解決
観 光
1つのテーマ(課題)を様々な角度
から課題解決に向けて取り組むこ
とにより、地域のネットワークが強
化されます。
歴史・文化
地域課題解決力の強化へ
79
(3)地域課題の達成のコツ(目に見える成果をあげやすく、継続性のある
テーマ)
地域課題は何なのか。みなさんの活動は地域課題のどこに位置する取組なのか。この
事業に参加する前に事業の全体像を確認し、どの位置からどう取り組むのか、目に見え
る成果をあげやすく、継続性のあるテーマからはじめることが達成に向けたポイントと
なります。
事業経験者からの声
声
■
事業全体像の確認
・ この事業がNPO支援のためにやるのではなくて、地域のまちづくりをどう行っ
ていくか、その担い手作りという意味での市民活動団体の推進という部分があっ
たので、当時課題になっていた、地域スポーツの振興と商店街の活性化という2
つのテーマを設定しようとなった。これは、市役所と地域活性化プロジェクトチ
ームの方で決めたテーマであるが、それによって結果的にはいろいろな活動が新
たに起ち上がって、今もかなり発展しているというところでは、そういうプラッ
トフォーム的見方というのは良かった。
・ この事業の良かったところは、市役所内部については、NPOに対しての理解が
深まったこと。市民活動からすると、新たに組織がつくられ、未だにそれが活動
しているということ。※最終的に地域課題であった犯罪発生率の関係についてい
えば、その当時に比べれば半分に減ったという成果が出た。また、NPOと一緒
に力をあわせてやっていけるという感触が出てきた。
※
明確に現れた成果(浦安市の事例)
浦安市では、犯罪のないまちづくりを推進し、
「安心・安全なまちづくり」というテ
ーマで事業を実施しました。防犯に特化せず、地域コミュニティを強化していくこと
が、防犯につながるという視点からテーマを設定し活動を展開していきました。
自転車盗難防止啓蒙パトロールの実施や防犯サミットの開催などテーマに即した活
動を展開した結果、自転車盗難発生件数が減少するなど、軽犯罪の発生件数が大きく
減少し、事業の導入効果がありました。
80
・ この事業を理解していただくために、やっていたのは、団体の選考の前の段階の
キックオフフォーラムの際に、大きないろいろなワークショップをやり参加され
た方々の思いを一つのマップ上に配置をして活動テーマに対して、こういう切り
口はこういう配置になっているという、全体像を見せたこと。
・ そもそも地域課題とは何というところでの絞り込みや定義づけがしっかりでき
ていると動きやすいものがあった。
・ 大きな分野の地域課題の設定はいいと思うが、「1年2年活動してどういう人が
どういう状態になることを目指そう」という到達点の定義を1つでなくても良い
がいくつかクリアにしておいて、それがいろんなメンバーで共有できるともっと
動きやすいのではないかと思う。
Point
○
スタート時点で事業の全体を見せること、用語の定義を明確にすること、ゴールを
確認することにより、テーマの共有が深まる。
声
■
農村地域ならではの課題
・ 町村が合併し、新市長が市民と協働を進めたいとの話になりスタート。市民活動を
進めるには何がやりやすいかと考えていた時にちょうどこの事業の募集があった。
・ 一番困ったのは、会議の場で意見が出ないこと。行政が提案すると文句をつけず
認めるのが美徳であるという地域性があった。
・ 地域コミュニティを主眼にこのような事業に手を上げている団体が多く、コミュ
ニティビジネスの手法での参加が多かった。
・ 町おこしのようなもの。この規模の予算があれば、コミュニティと行政が中心に
なって行うことができる。
Point
○
この事業は市町村が市民協働事業を実施するうえでも極めて参考になる。
○
農村地域では、NPOが地域課題を解決するのか、町内会・組合など既存の組織が
解決をするのか、それらが連携して解決するのか、それぞれの特性を厳密に見極め
事業の推進を図る必要がある。
81
4.地域の課題解決に向けたNPOの連携
3.地域の課題解決に向けたNPOの連携
地域課題の解決に向けて取り組むためには、お互いを知ることが大切です。また事業
を実施するには事務処理能力が必要となります。そしてこの事業の中心の1つであるプ
ロジェクトチーム会議(PT会議)では、法人化した団体や事業に参加するために立ち
上げたできたての団体が入り混じり、小さな経験から大きな体験までいくつもの苦難を
乗り越えて連携からネットワークの構築へと広がっていきました。
(1)連携を促すPT会議
地域活性化プロジェクトチームは、NPOが地域課題や事業実施に必要な情報を共有
し、課題解決のための対処法について検討する組織です。新たな打開策の発見、NPO同
士の連携の実現など貴重な機会となっています。
NPOが月1回集まって活動を報告する場だけにならないように留意しましょう。
プロジェクトチーム会議は実は重要なカギ(四街道市の事例から)
当初プロジェクトチーム会議(PT会議)は、各団体からの報告だけになってしまい、
「県と市町村とNPOがともに築く地域社会事業」が掲げたテーマにみんなが歩み始め
ていることの魅力が陰に隠れてしまいました。PT会議が3度目4度目になったとき、
活動団体から不満が出始めました。報告だけのために貴重な時間を費やしたくないとい
うものでした。確かにプレゼンテーションのときに感じた〈地域が動き出していくよう
な予感に満ちた期待感〉を満足させるようなものではありませんでした。
各団体からは、事業を進める上での壁、つまづきが多く述べられた。それらに対して、
「こういう方法もあるよ」「それはこう解決した」という交換もあり、その点では効果
がありましたが。
コーディネーターや行政担当者は、団体がぶち当たっている困難の打開のために、精
力的に動いてくれて、ひとつずつ解決していったのでしたが、団体に余裕がなくで、打
開策をそのときだけの手当て、処置で終わらせてしまい、後続への道を開いておく点で
はやや残念でした。とはいえ、PT会議で、新たな打開策や自分の団体では思いつかな
かった手法などを学べたのは確かです。それは団体が力をつけるという意味で評価すべ
き効果です。
82
中間支援機能を活かしたサポート(栄町の事例から)
コーディネーターを担ったNPOは千葉県内を活動範囲とする中間支援団体で千葉市
に事務所があり、栄町の団体にとっては県と同じようによそ者です。また、活動団体と
同じくNPOなので団体運営の強みや弱みを理解し共有することができました。事業採
択された12団体で構成するPT会議では、お互いの活動の進捗状況と課題について出
し合い意見交換しましたが、その中で「人件費の積算の考え方」
「領収書のもらい方」
「案
内チラシの作り方」
「事業報告書のまとめ方」等についての質問や相談があり、マネジメ
ントに関わるアドバイスもしていました。初めて公的な資金を扱う団体も多くあり、日
常的に取り組んでいるNPO支援の活動を活かすことができました。活動団体の事業に
は、県、町と共に現場に参加して、市民と一緒に楽しんだり、準備を手伝ったりと盛り
あげ係を果たしました。事業期間中に町担当者とともに現地で大活躍したのが、栄町住
民活動支援センターのスタッフの方々です。普段の業務に加えてこの事業のために団体
の利用も増え、問合せ対応等仕事が増大したことをプラスに変え、力をつけて中間支援
団体が立ち上がりました。この団体は3年経過した今、栄町ばかりではなく北総地域を
カバーする中間支援団体として活動を積み重ね、ネットワークを広げています。
採択された12団体のうち、選考の結果、申請金額から減額された団体があり、当初
は会議のたびに不協和音が聞こえました。減額された口惜しさはわかるしこれはしよう
がないかなと思いつつも、事業が進むうちに打ちとけお互いの団体を認めあえるように
なり、事業終了後は「野良坊ネットワーク」が再編され、町中心部で「野良市」の開催
を継続しています。
「野良市」は団体間の信頼関係を築いた上での連携事業と捉えること
ができます。
PT会議運営のポイント!(柏市の事例から)
どの事業も同じかもしれませんが、特に地域活性化プラットフォーム事業を推進する
際に最も重要なのは、関わる人々の人間関係をいかに良くしていくかだと思います。
たとえば、地域活性化推進委員会では、発言しやすい雰囲気作りを行い、いただいた
意見は尊重し、今後の事業に反映させていく、PT会議では、楽しく自らが進んで活動
や参加を促すようにしていく・・・。
特に、PT会議は、地域活性化推進委員会のように行政側が構成員を決定するのでは
なく、選考によって決定するものなので、活動団体の実績(活動地域、年数、活動に関
する考え方など)がバラバラであり、まとまるのは難しいものでした。
83
実績のある団体には甘えるべし。
10年近く地域で活動している団体と、新たにこの事業のために作られた団体がほ
ぼ半数ありました。新たにできた団体で、実績のある団体に広報・集客の方法やイベ
ントのやり方などをPT会議の場で教えていただきながら活動を実施した団体は事業
自体もうまくいっていました。
会議の会場は明るい場所、肉声で全員の話が聞こえる場所で行うべし。
壁面全体が黒、天井が高く雨の日は発言者の声がかき消される場所では会議を行わ
ないほうが良いです。マイクを利用することもありましたが、気軽に発言できない雰
囲気にもなり、会議自体の盛り上がりにかけてしまいました。
懇親会は適度に開催すべし。
1年目に活動団体であった団体が2年目のコーディネーターとなり、1年目の反省
から、ほぼ毎回PT会議の後は懇親会がありました。飲み会の力は大きいもので、活
動団体が決定してからまもなく参加者同士の仲間意識、団結心が芽生えました。
その他、いろいろありますが、活動していただいた皆さんとともに担当者も新たな
発見があり育てていただいたこと、いろいろな方々と出会うことができたこと、事業
を実施した町が私の大好きな町になったことなど、とても感謝しております。
事業経験者からの声
声
■
PT会議の役割
・ 運営側の地域活性化推進委員会と団体の方のプロジェクトチームというものが
あり、そこで団体相互の横の連携が図れ、いろいろな情報交換をできたことは、
非常に大きかったと思う。
・ PT会議と地域活性化推進委員会の違いは、地域活性化推進委員会は当然、どう
団体の方に意識付けしていくのか、何を目的としてやるのかと、きちんと伝えよ
うとする会議であり、テーマもそこで決めた。PT会議では、実際のテーマに対
してどう向かっていくかという中身を議論した。
・ 地域活性化推進委員会とPT会議は同じことをやっていた。さらに、コーディネ
ーターとの打ち合わせもあり、県との打ち合わせ会議をやり、3 回同じことをや
っていた。この時間の無駄というのは、何とかならないかとずっと思っていた。
・ ワークショップにより課題の掘り下げと解決方法の検討が必要であったが、全体
像が見えるような形にした。
84
・ 自分たちの活動を認知してもらうためには、どのようなところにどうネゴシエー
ション(交渉)したり、手を上手く結びながら進めていったりということをやら
ないと、そんなに世の中は甘くないのだということ、自分たちのミッション(使
命)とパッション(情熱)だけでは、駄目なのだということに気がつき始めた。
・ PT会議をうまく回すコツは、そこに出てきた報告や、課題、問題点に対して良
いアドバイスを与えること。
・ 異色の様々な団体が、一緒にやることで、それぞれが事業のやり方に気付きとい
う意味ではすごく良かった。
・ 走り出し立てのNPOで、どうしたらよいか分からないという人たちは、非常に
元気になって、とても効果があった。情報交換なり人の紹介なり、アドバイスが
あり、それはとても良かった。PT会議というのは、我々が何とかしたというこ
とよりは、あの場そのものが力を持っていたのだろうと思う。
・ 逆に力のあるNPOの方々も参加されていましたが、あの方々にとってPT会議
が活動(事業)にどういうメリットがあったのか、それともちょっと大変だった
のか判りにくいところがある。
・ 当市の場合、PT会議が少なかったが、その分、テーマごとの部会のような個別
の会議があり、それが充実し、PT会議はそれを確認する感じだった。テーマ別
会議ではより活動に即した話が生でできた。
・ PT会議をうまくコーディネートするというよりは結構、右往左往していた。最
初の一年間で、どういう段取りで活動しようかと、各団体にシートを作っていた
だき、毎回それを使ってフォローアップしていった。そのシートで各団体が「ど
こまで進んでいるか?」
「何が問題か?」
「どのように解決したらよいか?」とい
ったことを確認していった。基本は、活動状況の把握と問題の共有である。
・ PT会議では、ワークショップ風に課題が何かとか何を解決しなければいけない
かとかやりたかったが、その代わりに各団体が自ら自分たちの状況や問題点に気
づくように全体像が見えるような形にした。
・ PT会議は、団体間のアドバイスになった感じがある。テーマの違う人たちなん
だけども、「こんな事をやっていますよ」みたいなことを言うと、別のテーマの
人たちが「私あんな人知っているわ」みたいな感じで繋がりが広がっていく。
・ 極端な話になるが、始めたばかりの頃は、「活動の方が大変だからPT会議なん
か止めてよ。
」といった面を活動団体の雰囲気で感じた。
85
・ 終盤になると、PT会議があったので、どこか突破できたという事に気付かれさ
れることになる。一番嫌がるのは、報告ということに慣れていないから面倒だと
いうこと。自分の成長が見えてくると、次第に嬉しくなってくる。必ずしもゴー
ルが明確でなくても活動団体が元気に成長するような潜在的な効果がこの事業
にはある。情報が共有化でき、それが見え自覚ができるというのが大きい。
・ 市民が元気になったと言う面では、実績のあるNPOではなくて、走り出し立て
のNPOの方が目立つ。
Point
○ PT会議の基本は、活動状況の把握と問題の共有、そして現場の課題や問題点に対
する具体的なアドバイスをすることで、団体間のネットワークがつくられる。集ま
り話し合うことで、他人とのつながりの難しさと必要性を知る機会になる。
○ 地域活性化推進委員会とPT会議の目的の違いをしっかりと認識すると、両方の会
議に重複するメンバーがいても、有効な会議となる。
○
県や市町村が一緒にいて、コーディネーターがいて、立場が違う仲間たちがいると
いう場があり、色々やり取りができて、情報交換や人の紹介ができるようになる。
○
市町村に市民活動センターがある場合、市民団体ともかなり通じ合っているので、
そのネットワークが生きる。
○
各活動団体にシートを作ってもらい、毎回それを使ってフォローアップする。その
シートで各活動団体が「どこまで進んでいるか?」
「何が問題か?」
「どのように解
決したらよいか?」といったことを確認する。
○
コーディネーターの役割は、そこに出てきた報告とか、課題、問題点に対して良い
アドバイスを与えること。
○
PT会議は、活動団体間の相互のアドバイスの会になる。ある活動団体が「こんな
事をやっていますよ」みたいなことを言うと、別のテーマで活動している人たちが
「私、あんな人知っているわ」という感じで繋がりが広がっていく。
○
始めたばかりの頃は、
「活動の方が大変だからPT会議なんか止めてよ。
」といった
活動団体の雰囲気を感じるが、終盤になると、PT会議があったことで、どこを突
破できたのかということに気付かれされることになる。
○
一番嫌がるのは、報告ということに慣れていないから面倒だということ。自分の成
長が見えてくると、次第に嬉しくなってくる。
86
ワクワクドキドキ体験
ワクワクドキドキ体験(四街道市の事例から)
この新しい事業への挑戦を市に働きかけた団体として、いったいこの事業はどのような展開
になるのだろう、果たして手を上げてくれる団体はあるだろうかなど、大きな不安とそれに劣
らぬ期待を持ちながら歩みだした。ワクワクしながらも、ドキドキしていた。
キックオフフォーラムの集客が最初のポイント
暇を見つけてはいろんな団体に電話をかけたり、出かけて行ったりして、市内の団体のヒア
リングをしながら、
「県と市町村とNPOがともに築く地域社会事業」の私なりの理解を話し、
まずはキックオフフォーラムに来てほしいと誘った。フォーラムに大勢の参加があり、手ごた
えを感じた。(成功の予感①)
第 2 のカギはプレゼンテーションの盛り上がり
プレゼンテーションの会場は熱気に満ちたものになった。どの団体も最初から最後まで参加
し、他の団体のプレゼンに聞き入った。プレゼンが初めてという団体には十分な刺激になった。
好ましい競争と連帯が生まれるという可能性を感じさせるものだった。このプレゼンテーショ
ンには大いにワクワクした。(成功の予感②)
しかし、実際に個々の団体がそれぞれの提案した事業に着手し始めると、その実行に追われ、
同時進行している他の団体の事業に参加する余裕がなかった。
それを見越して地域活性化委員会は活動すべきであった。プロジェクトチーム会議も地域活
性化委員会も、何をどうすべきなのかの明確な道しるべを持たずに、歩きながら、失敗しなが
ら模索したような気がする。だから、失敗と効果が混在した。ハラハラしどおし。
失敗事項
○当初の成功の予感①②を、生かせなかった。広報紙は数多く発行したが、発行数は決め手
にならない。キックオフフォーラムに参加した人たちへの持続的なフォロー(主に直接的
なフェイス ツウ フェイスの情報提供)をしなかったために成果報告会の参加につなが
らなかった。キックオフフォーラムの参加者より、成果報告会の参加者が多くなっていな
ければ本当の成果と言えないなと感じている。
87
(2)連携は少しずつ進化する(まずは相互に知り合うところから始める)
これまで違った視点で活動を続けていた団体が、この事業の中で初めて出会いお互い
の存在を知ることもあるかも知れません。同じ課題でも取り組み方法が異なると意見が
ぶつかることもあるかも知れません。その様な中でも、PT会議で毎月顔を合わせ、お
互いの活動を知ることや自分たちの活動を振り返ることで、お互いの強みを知り、自発
的な連携に進化していきます。
事業経験者からの声
声
■
近郊部における進化
・ 農村部と新住民が混在している小さな町では、NPO活動をどうにかしないとい
けないというところで、この事業にめぐり逢い手を挙げたものである。1年間や
ってきたことは、まずこの事業を住民の方に知らせること。人を集めること。魅
力ある企画をすること。それが地域活性化準備会といい、地域活性化推進委員会
を立ち上げる前に組織し、人を集め意見をもらいその中から課題が見つかればよ
いなということで、試行錯誤して1年やった。
・ 2年目に子どもという、「よみがえれ野良坊」というテーマで、子どもを外に引
っ張り出して、子どもが外に出れば町が元気になるのではないかというような考
えで課題をそこに絞って12団体で事業を行った。その12団体は法人化してい
る団体もあり、まだできていない団体もあり、これからという団体などいろいろ
あったが、コーディネートNPOに引っ張ってもらい、1 年間どうにか事業をや
った。振り返ると確実に団体のレベルが上がった。それと同時に私自身(市担当
職員)も異動しきてすぐにこの事業であったため、私を含め町も多少進歩できた
と思う。事業が終わった後に、今、野良市(のらいち)という5つの団体が集ま
った事業を展開しているが、その様なものもできた。その様なものが成果である
と思う。
声
■
PT会議のポイント
・ 硬い団体とNPOみたいなものが一緒になれば当然けんかになる。不満だけでぶ
つかり合っても、この場は、一緒になってやっていこうという場であることを伝
え、問題解決のポジティブな方向にいくような形でひと言、ふた言、言うだけで
気付いていく。結果こうだったじゃないですか。こういう転換が良かったのでは
ないですか、という振り返りを皆で再確認するということの積み重ねだった。
88
・ 自分たちで課題を見つけ突破するノウハウやスキルを学ぶというやり方がきっ
とある。
・ 活動をした方がいろいろなセクターの人たちと出会いながらやって来られたと
いうこと自体は、活動支援、団体育成、という意味も含めて、意義はあった。し
かし最後にプラットフォーム的なものが本当にできたのかということでいうと、
達成感は少ない。次へのつながりがあると良いのだが。
・ トータルで活動を振り返ってみると、活動の若い団体、戸惑いながら活動してい
た団体からみると、かなり面白いまとまりがあって、何か相談するといろいろな
ところから答えが返ってくる。地域活性化推進委員の中からも返ってくるし、わ
りと市や県の方からもアドバイスがもらえた。
・ 一番効果、成果が上がったというのがPT会議で連携が図れる機会をいっぱい持
てたこと。テーマは個々でバラバラに活動しているが、根っこの部分が一緒であ
る。事業の中間までは、個々の活動の話をするだけで、市全体としてのプロジェ
クトチームとしてどのように今後取り組んでいくのか、具体的な話ができず、P
T会議の時間がもったいないとの話もあった。しかし、一番最後のあたりでは、
市民活動センターの新設置について議題を投げかけた時に、バラバラであった発
言が一つにまとまり、時間と議題を共有し意義ある話し合いが何回か持てた。
・ PT会議や地域活性化推進委員会で2年目の活動団体が協力してやることによ
り力がついたところがPT会議と地域活性化推進委員会のいいところであった。
Point
○
PT会議での振り返りの積み重ねが、結果的により良い効果が得られる。
○ 参加者の意識とコーディネーターのサポートによりPT会議の効果が見込まれる。
89
(3)連携を進めるためのコツ
連携を進めていくためには、広報等を通じて活動内容を多くの人や関係団体に知って
もらうことが大切です。また、PT会議などで活動を振り返る場を設け、課題解決のた
めの連携の意識を少しずつ強めていくなど、NPO自ら連携の大切さに気づくための仕
掛けを地域性も考慮して進めます。なお、事業では責任の所在と役割分担を明確にして
おくことも必要です。
ポイントは、事務処理の役割分担と関係づくりのノウハウ!!(市原市、浦安市の事例か
ら)
当時(平成17年)
、このモデル事業は、各地域において地域活性化推進委員会を設置
し、地域課題の抽出、テーマ設定等を行い、公募による活動団体決定後はPT会議によ
り各団体からの出席者同士あるいは地域活性化推進委員との意見交換や情報交換をしな
がら活動の進行管理をし、課題解決に向けて事業を進めていくという仕組みになってい
ました。
そもそも、
「地元市町村や関係機関、活動団体が、いかに連携していくか」がこの事業
の「キモ」であると思います。そのために、市や関係機関の方と団体同士で連絡を取り
合いながら、地域活性化推進委員会で各団体活動の進捗状況をみて、必要に応じてアド
バイスをしながら事業を進めていました。市の担当者や関係機関の方々がいろいろサポ
ートしてくれたおかげで、うまく進められたと思います。事業を円滑に進める上でも、
PT会議で進捗状況を把握し調整できることは有効でした。ただし、PT会議をうまく
機能させるためには、当たり前のことですが、当日の議論の目的を明確にしておくこと
や事前の準備・連絡を確実に行うことが必要です。
当時、この事業を担当していて、定期的に地域活性化推進委員会とPT会議を行って
いたわけですが、事務手続きや会議運営を複数の主体が協力しながら行うことは、必ず
しもプラス面ばかりではないと感じました。地域の課題解決に向けて、様々な主体が関
わりながら進めていくこの事業は、パートナーシップを築くために、皆が和気あいあい
と参加できることに意義があるともいえます。自由に意見交換ができ、いろいろな議論
をしながら関係を深め、広げていくことがこの事業のねらいの一つであると思います。
しかし、馴れ合いの関係はパートナーシップではありません。
任意の参加ではなく、正式な依頼や契約等の行為がある以上、この事業に参加するこ
とはビジネスです。適切なタイミングで必要な事務手続きを行うことは基本です。
90
PT会議の議題調整、地域活性化推進委員への事前連絡、会議資料の準備で不手際が
あった場合は多くの主体が影響を被ります。各種の手続きや契約関係書類の提出が遅れ
れば事業の進捗や活動期間にも影響があります。多くの主体が関わるこの事業において、
必要な時に連絡が取れないというのはとんでもないことです。様々な事務処理を誰が責
任を持って行うのか、責任の所在と役割分担を明確にしておくことが必要だと思いまし
た。
実際に支障があった際に、責任を持って、時には厳しく対応する者が誰なのかという
と、いまひとつ明確になっていないと思います。実際には、県、市町村、地域活性化推
進委員会、コンサルタントという複数の主体が、それぞれ牽制しあってしまうようなと
ころがあり、
「もっときちんとやってくれと言いたいけれど、自分が言える立場ではない
かもしれない・・・」と思って言葉を飲み込んでしまうのです。
このような経験からすると、事業を円滑に進めていくためには様々な事務処理や作業
を誰がやるのが最も効率的であるかというのが重要なポイントになります。行政との関
係で事務処理の経験を積むことが事業の目的ではないならば、本来、期待されている成
果目標を達成するために力を注ぎ、細かな事務処理は、それに慣れている人がやればよ
いという判断もあります。面倒かもしれませんが、気付いた時点で、その都度、役割分
担をしておくほうがよいと思いました。
また、この事業では、会議での議論もお互いの関係づくりの重要な場でした。お互い
に牽制しあうか言いたいことをストレートに言うかは、個人の性格にもよりますが、率
直な意見を言っても普通に受け止められるのかどうかは、参加者により違ってきます。
いずれにせよ、会議できちんと議論できることは相手との良好な関係を築いていく上で
のノウハウだと思いますし、地域活性化推進委員会やPT会議を円滑に進めるためのコ
ツといえるものなのかもしれません。要するに、いかによい雰囲気で話ができているか
ということですが、そのような場の雰囲気はねらってできるものではないように思いま
す。仲良しグループが集まっているわけではありません。気が合わない人もいるかもし
れません。それでも、同じ事業に参加して成果目標を共有しながら協力して活動するの
ですから、普段は話をしない人と、どのように話をつなげていくかというような気遣い
や関係づくりのノウハウも、地域活性化推進委員会やPT会議、地域での活動を通じて
培われていくものだと思います。事業を円滑に遂行し、お互いの関係づくりを進めてい
くためには、このような意識をもって事業に参加していただくことが大切だと思います。
91
事業経験者からの声
声
■
それぞれの工夫
・ 我孫子市の場合はPTの中でテーマごとにそれぞれの部会を開催した。
・ 身の丈にあった活動、団体支援というのをコツコツとやっていくしかなかった。
・ 市の各部署との連携についても、色々アプローチをすると動いてくださるセクシ
ョンと割と相変わらず動かないセクションがある。それでも、話を通していけば
少しずつ改善される。団体の方々と行政で話をした時、コーディネーターのよう
な人がいて三角形になっているというのが大事である。それが市民活動支援セン
ターの人や行政側に話せる人がいて、そういう方々が常に等距離で両者に相対し
ていた。市の各部署にアプローチするためには、複数のチャンネルがあるので、
何回か繰り返していると段々と開いてくる。
・ 同じ連携という言葉でもみんなイメージが異なる。取り組んでいて団体が思って
いる連携とコーディネーターが思っている連携と我々(行政)が思っている連携
とで異なっている。団体の本音を言えば自分の都合の良い時に助けてくれるとこ
ろがあれば良いという連携であったり、我々(行政)からすると、事業終了後に
連合会のような組織を立ち上げて結果として残すというイメージ。
Point
○ 言葉の定義について共通認識を持つことが重要。
○ 行政と話をする時は、話をする団体のほか、もう一人いて三角形になっているとい
うのが大事。市民活動支援センターの人や行政側に話せる人が常に等距離で両者に
相対するとよい。
○ 行政の各部署との連携については、色々アプローチをすると動いていくセクション
と相変わらず動かないセクションがある。行政の各部署にアプローチするために
は、複数のチャンネルがあるので、繰り返しアプローチすることで入口を開くこと
ができる。
○
連携は目標になりにくい。地域の課題解決に共に取組む結果として連携が育まれ
る。
92
事業経験者からの声
声
■
活動団体が自ら連携の大切さに気づくための支援
・ コーディネーターとしては、各団体に対して「まずはぶつかってみなさい。」と
アドバイスした。ぶつかってみて問題が発生すると、その場で「それではどうし
ましょうか。」と投げかける。不満だけをぶつけ合っても解決しない。そこで問
題解決のポジティブな方向にいくようなひと言、ふた言のアドバイスをする。多
くの場合、それだけで気付いていく。
・ 「こういう転換が良かったのではないですかね。」という振り返りを皆で再確認
する。こうしたことを積み重ねていった。振り返って、持ち帰り「この間、こん
なことがあって、活動が一歩、半歩すすんだという場面がありましたよね」とい
うようなことを、おさらいしながら話し合っていた。
・ 普段、コンサルタントの仕事として、現場で市民参加という具体的な場面におい
て、住民同士がぶつかり合ったり、行政と住民がぶつかり合ったりすることを経
験している。そのような中で、ぶつかっていくチャンスを上手く使って、ちょっ
と寄り添ったり、関係作りをしていかないとなかなか進まないという意識がある。
Point
○
個別の活動を後押ししつつ、少しずつ転換し「そうは言っても皆さん今後活動してい
くときにより活動をしやすい方がやりやすいじゃないですか」というように連携の意
識を少しずつ強めていく。
○
コーディネーターとしては、各団体に対して「まずはぶつかってみなさい」とアドバ
イスをする。ぶつかってみて問題が発生するとその場で「それではどうしましょう
か?」と投げかける。不満だけをぶつけ合っても解決しないので、そこで問題解決の
ポジティブな方向に行くようなひと言、ふた言のアドバイスをする。多くの場合、そ
れだけで気付いていく。
○
結果的に、「こういう転換が良かったのではないですかね」という振り返りを皆で再
確認する。
93
事業経験者からの声
声
■
農村部特有の有効な手段
・ 連携というのは、結構、隣組とか農村部の方がしっかりしており、何かヒントを
あげると、すぐに新しいうねりが出てくる。
・ 2年目になるとニュースレター等でPRした結果、NPOの方々の認知度が上が
り、少し評判が良くなり、NPOの方が行うイベントに合わせて観光協会のイベ
ントも同じ日に行い、駅からのバスは観光協会が持つ形で、連携して1つのイベ
ントができたということは、成果である。
Point
○
地域コミュニティが未だに強い農村部では、少しのアドバイスで大きな展開が期待
される。
○
活動内容を行政広報誌をはじめ広くPRすることで、多くの人に知ってもらい、関
係団体との連携につなげる。
94
5.継続するための推進体制づくり
5.プラットフォームを形成するための体制
この事業では、あらたなプラットフォームを形成し地域課題に取り組む団体を支援す
るために、地域に地域活性化推進委員会とプロジェクトチーム会議(PT会議)を設置
する仕組みになっています。こうした取組を推進するためには、県や市町村という行政
の各部署が連携して協力する仕組みも必要になってきます。本章では、既に説明したP
T会議以外の地域活性化推進委員会、コーディネーター、県、市町村の推進・協力体制
についてヒントになるような Point について述べています。
(1)地域活性化推進委員会の役割
地域活性化推進委員会は、地域課題の解決のための全般的なコーディネート、モニタ
リングを行います。活動するNPOと市民・地域を結ぶことや、適切なアドバイスを行
う役割を担います。フットワーク良く、地域を巡り、広い視野を持って、課題を構造的
に理解することが求められます。
ところで、この地域活性化推進委員会は、地域活性化推進計画を策定するまでと、活
動団体の公募がスタートしてからでは、委員の構成を変える必要があると感じています。
地域課題を掘り下げ、事業テーマを決定し、地域活性化推進計画を策定するまでは、地
域の市民・NPOが主体的に係わって地域課題の掘り下げが行われるような委員の構成
とすべきではないかと思います。
一方、活動団体の公募がスタートし、活動するNPOをサポートする段階では、NP
O主体のプロジェクトチーム会議(PT会議)が設置されるので、関係団体、企業、行
政等中心の構成がよいのではないでしょうか。
地域活性化推進委員会委員の視点(四街道市の事例から)
地域活性化推進委員会は何をすべきったのか・・・成功の最大のカギを握るのはどこ?
事業全体のテーマが「子どもが伸びやかに育つ環境づくり」であったので、各団体の取組
も教育委員会や学校との接点が多くなったのだが、その壁の厚さにつまづくことが多かった。
それを何とかしたいと、地域活性化推進委員会で検討し、ある学校の校長先生を囲む勉強会
をPT会議に設定した。これは大きな効果を生んだ(と私個人は思っている)。学校長の人柄
からもにじみ出る魅力あふれる話は、具体的な解決策を示してくれたわけではないが、教育
界の壁の厚さに納得できずにこわばっていたメンバーたちの気持ちをふんわり溶かす作用が
あった。
「力まずやろうよ、話せる教師や教育委員はこのまちにもきっといるよ」という気持
ちになり、PT会議のメンバーに元気が出た。
95
しかし、この作用は全部の団体に及んだわけではなかった。関連のない事業を展開してい
る団体へはまた別の支援を組むべきであった。
(これは報告会で気づかされた。
)
地域活性化推進委員会は、その後もPT会議での発言や状況を見ては、必要な勉強会を取
り入れていった。
地域活性化推進委員会とコーディネーターの役割
地域活性化推進委員会は本来何をすべきだったのだろう。会議だけで終わらせたのではい
けなかったのではないか、もっとフットワーク良く、地域を巡り、提案団体と地域を結ぶ役
割を担うべきではなかったのかという思いが今も残る。
でも、それはコーディネーターの役割?第 1 年目の四街道市の場合、コーディネーターは
地域を知らない外部の団体だったのと、地域を知る時間もないままのスタートだったので、
熱心な人たちだったし、状況の分析や資料作りその提供の仕方、ファシリテイト振りなど多
くを学ばせてもらったが、本来の役割の点で私(地域活性化推進委員)の中では少し不足の
感が残った。
地域活性化推進委員会は、コーディネーターと協力し合って、多様な団体が共通のテーマ
でともに地域を築こうとようやくむくむく動きだした萌芽をもっと熱心に市民に伝え、より
確かなものに育てようとの意識を持つべきであったかと思う。
失敗事項
○ PT会議、地域活性化推進委員会、コーディネーターが、それぞれどういう役割を担うのか相互
に明確でなかった。
○ より多くの市民を巻き込めなかった。それぞれの団体が展開した事業には参加があったが、その
参加者たちを成果報告会に導いて、この事業全体が生み出したものを共有して更なる参加につな
げることができなかった。
○ 地域活性化推進委員会はコーディネーターを十分に生かせなかった。
事業経験者からの声
声
■
地域活性化推進委員会の役割
・ 県・市・NPOの 3 者の関係がうまくいくか、地域活性化推進委員会がコーディ
ネートしていくことを求めた。地域活性化推進委員会がコーディネート的役目を
果たしていくためのトレーニングをしなければならなかった。
・ 地域活性化推進委員会が地域課題の解決に向けたコーディネートを担う機能があ
るとの意識はあった。
96
・ 活動団体の課題を1歩引いて仕組みとして何ができるのかなど、どういった情報
を出していったら良いのかを地域活性化推進委員会の中で議論できたらよいなと
思っていた。
・ 地域活性化推進委員会は、モニタリングするところであるのではないか。千葉の
場合は、地域の有力な団体を入れないと、その後円滑に事業が進まない。
・ 最初は、地域活性化推進委員会の印象が薄かった。何回もやっているうちに、P
T会議を支援しようという、PT会議の課題をなんとか解決しようという動きが
生まれた。
・ 地域活性化推進委員会の主たる議題は地域活性化推進委員会として、いかに団体
の活動を支援していくかということである。
・ 最初の1年は、事業で課題を見つける為にフォーラムやミニ集会をやり、その役
割を地域活性化推進委員が担い、PT会議との明確な違いはあったが、事業を推
進していくという事になると役割というのがちょっとよく見えなかったという点
もあった。推進していくのだというよりも、この事業をまとめていくという感じ
のほうにいってしまった。
・ 地域活性化推進委員会とPT会議の構造、二重構造が理解されず、最初の地域活
性化推進委員会の一回を潰して、話し合いみんなで考えた。
・ 地域活性化推進委員会の中にこういうような仕組み、こういうような役割が良い
のだということをオーソライズする意思決定する役割がない。だから皆、戸惑う
のではないか。人選で解決できる部分があるかも知れないけれど、そこの部分の
制度設計ができていない。特に農村部に行くほど、そういう役割が見えてこない
のかなという気がする。
・ メンバー間で誰がどういう手順で仕切るのかが混乱。地域活性化推進委員会・P
T会議・活動団体の 3 重構造の道具は揃っているが、どのような方向で進めるこ
とができるのかが課題。
・ 行政の他セクションというのは、全然、表に出なかった。市の方は、市側の担当
の方々が上手く振舞っていた。本来ならば地域活性化推進委員会が県、市、活動
団体、全体をコーディネートする必要があると思う。
97
Point
○ 本来の目的で言えば、地域活性化推進委員会は「地域課題の解決のための全般的な
コーディネート(チェック・アクション)
」。PT会議は各団体の地域課題解決の達
成状況の相互チェック・意見交換の場である。
○
本来ならば地域活性化推進委員会が県、市町村、団体、全体をコーディネートする
必要がある。地域活性化推進委員会の中で、コーディネートの仕組みや役割がオー
ソライズ(確認)できれば、戸惑いが少なくなる。
声
■
地域活性化推進委員会の人選
・ 自分から能動的に団体の活動に参加し、体験していただけたメンバーが地域活性
化推進委員会に集まったことが、非常に大きい。
・ 当時NPOの代表の方が、全体的なNPO活動のボトムアップというような視点
で関わってくれていたことと、市民活動の概念がしっかり持てている人であった
ことが大きかった。
・ PT会議の方も、コーディネーターの方もちょっと不満になりやすい。今後もこ
のような事業をやるのであれば、PT会議の代表で何人か委員会に出るという方
が上手くできると思う。
・ 地域活性化推進委員会が、地域の名のある方が入っているので、逆にそれが上手
く動かず形骸化してしまう。
・ 肩書よりは、活きの良い人たちが委員会やPT会議に入っていただいた方が良い。
・ 地域活性化推進委員会とPT会議はメンバーがだいぶ重なっている部分もあっ
た。
・ 活動を得意とする人と仕組みや構造的に把握することが得意な人がいるが、活動
を得意とする人だけで構成されると、委員会があまり動かない。
・ 市町村の職員の中には、何で呼ばれているのかなという雰囲気もあり対応しづら
かった。役所が入る場合、関係の深い部署に入ってもらい関心を持ってもらい、
必要に応じてプラスしていく方が会議がうまくいくと思う。
Point
○
地域活性化推進委員会は、仕組みと活動の継続を考える場であるとするならば、構
造的に理解することを得意とする人、広い視野を持つ人が適任かもしれない。
○
さらには現場を知っている、又は活動を見て努力をする活気のある人が望ましい。
98
(2)コーディネーターの役割
この事業では、地域で地域課題の解決に向けて取り組む各活動団体の力を最大限に生
かし、活動団体同士の連携を促がすために有償のコーディネーターを置いており、事業
の大きな特徴のひとつになっています。しかし、わが国では残念ながらコーディネータ
ーが職能として十分に確立していません。地域性を反映しつつ、活動団体同士および県・
市町村の連携を促すところにコーディネーターの存在意義があります。
コーディネーターの存在意義
コーディネーターは、事務局機能を担う役割もありますが、県や市町村など行政の視
点や市民の視点を客観的に見て、市民・NPOのニーズと行政のニーズをつなぎ合わせ
る役割を担っています。ここでは、栄町の事例をコーディネーターの視点で紹介します。
コーディネーターの視点(栄町の事例から)
県の担当者は、先行実施している他市での事業経験があり、初めて取り組む栄町と私
たちにとっては、事業のスタート時は特にありがたい存在でした。これまで実施してき
た県の経験に加え、この町のオリジナリティをどうつくることができるか、町の特徴や
良さをどう活かすのか考えました。県はこれまで人口25,000人の小規模な町でこの
事業を実施した経験がないのですから、この事業の持つ特性を発揮できると思っていま
した。それは、市民活動団体の事業を通して、地域住民に直接的な参加を呼びかけられ
ること、町中の話題になることです。現地の役割は、事業に関係する機関へのつなぎ等
で例えば小学校6校、中学校2校へのチラシ配布の依頼とか他部署への協力依頼等、ま
た、団体は朝の通勤時間帯にJR安食駅前でのチラシ配布などを積極的に実施してもら
いました。広報で効果的であったのは、自治会の回覧板で配布してもらった「野良坊ニ
ュース」600部でした。
県とコーディネーター(栄町の場合:中間支援NPO)は、よそ者としての役割を担
いました。栄町の地域資源は、高い建物やマンションがなく空が広いこと、一戸建て住
宅が並ぶ地域はブロック塀がなく生垣で統一されていること、おいしい本格的な蕎麦屋
が何軒もあることなど住んでいる人たちには当たり前なことです。小規模な町は、住民
の顔が見えやすく、機関等も把握しやすいなど、市民活動にとっては活動しやすい点が
いくつもあります。外部から町の良さを発信し、現地は改めて町の資源を確認するとい
う作業は、私たちにとっては栄町が好きになるプロセスでした。町役場と活動団体にワ
99
クワク感を感じてもらい積極性をどう引き出すのか、次にどうつなげるのか、どうステ
ップアップしていけばよいのか、いつも思いめぐらしていました。
コーディネーターとして、事業の事務局を担う役割がありますが、もう一つ現地に外
から新しい風を吹き込む役割があります。県、町でなくもう一つの立場、役割を担うこ
とに関わるメンバーと位置づけ、その役割を果たすことで信頼関係を築くことにつなが
ったのではないかと考えています。
事業経験者からの声
声
■
コーディネート方法
・ 何を解決してどのような人がどのような状態になればよいのかということをみん
なで議論し共有さえできれば、ある程度自動的にそちらの方に向いていくのでは
ないか。
・ 地域資源を見つけて何かを解決する場合もあれば、ある課題に向けて必要な地域
資源をかき集める部分もある。
・ コーディネーターのアドバイスにより、模造紙の書き方やアポの取り方など小さ
なスキルが身についたことで、団体が元気になった。
・ 市民活動支援という部分では、それぞれが目指している方向に向かうようなサポ
ートをするということや、もう一つは何かの問題があり、それに向かって解決で
きそうな人たちを集め、解決策を探るということがある。今回の事業では、前者
のような活動団体を後押しするような部分での効果が大きい。
・ コーディネートのコツは、その地域の中で、行政なり市民団体がどういう構造に
なっていて、誰がキーマンになっていて、どこにどんなネットワークを持ってい
るかということをじっと見て、それに合わせて動くことだと思う。
・ この事業を理解していただく為に活動団体の選考の前の段階のキックオフの大き
なフォーラムで、ワークショップやった。そこに参加された方々の思いを一つの
マップ上に配置をして、地域課題に対して、こういう切り口はこういう配置にな
っているという全体像を見せた。最初にやったので、どんな団体も、こういうテ
ーマに対して個々にポジショニングできるのではないかということを見せたり、
関係付けをしたりするようなことが有効だと思う。
100
・ コーディネートが難しいのは、到達点の合意ができないからなのではないか。こ
れさえ定まってしまえば、いけるのではないか。それぞれが専門家だから合意す
るところが大変だ。ただ、もし合意ができたら一個一個のベクトルは強いので、
一気にいくはずだけれどこれが頑強で難しい。引っ張っていけるのは、力のある
人、または、議論・合意に応じるちゃんとしたプロセスをコツコツ積んでいくと
いうやり方の人のどちらかしかないと思う。
・ 当然、プロポーザル方式で選考されたのだから、うちの提案ですべて進められる
とは思ってない。いろんな方としっかり確認をしあいながら進めていくというこ
とを途中の段階でもやっていかないとうまくいかない。プロポーザルにはああ書
いたけれど、県の思いは、実はどうなのという辺りは、スタートの時点でちゃん
と確認しないと、履き違えてとんでもないことになる。そこは本音の話を引き出
す。
Point
○
地域活性化推進委員会・PT会議では「同じ目線からの」アドバイスが有効。
○
地域課題(テーマ)の解決に向かって事業を実施するためには、ファシリテートしな
いと進まない。活動団体は、戸惑いながら事業を進めていることもあるので方向性を
見失わないようにサポートすることで、結果的に大きな課題解決に向けた取組となる。
○
地域課題の発見ではなく、課題が先にあって、みんなでどうやって解決するのかとい
うような場面であればコンサルタントのノウハウが活かせる。
○
コーディネートのコツは、その地域の中で、行政なり市民団体がどういう構造になっ
ていて、誰がキーマンになっていて、どこにどんなネットワークを持っているかとい
うことをじっと見て、それに合わせて動くこと。
○
キックオフフォーラムの段階で、ワークショップを行い、参加者の思いを一つのマッ
プ上に配置をして、地域課題に対して、こういう切り口はこういう配置になっている
という全体像を見せることも有効。
○
地域課題への取組や連携の必要性といったこの事業の本来の目標を目指す前に、NP
Oや市民活動、市民組織の運営等に関する基本的な学習を重視する。
○
目標を定めることにより、コーディネーターの戸惑いはなくなる。
○
プロポーザルに書いた内容をスタートの時点でもう一度確認する必要がある。事業の
本質を確認してからのスタートが有効である。
101
声
■
・
ビジネスとしてのコーディネート業務
コーディネーターの存在を評価していただけるという場面は非常に少ない。やはり
最終成果が問われるのだと思う。それなりの期間とお金を掛けているわけだから何
かはできるのだけれど、次に繋がる何かがきちんと仕組まれていて、それが動くよ
うな状況が仕組まれていることが最終的にできているか、できていないかが評価に
なってしまう。正直なところコーディネート部門を評価していただいて、そこが有
償の職能ですよねって言って頂ける社会はどこにあるのだろうという気はしてい
る。
・
コーディネーターとして、この事業の頭や目になるといった重要な部分を担うこと
ができる方々はそうは多くない。コーディネーターに対してはそれなりにきちんと
した位置づけがあるべきだと思う。コーディネートする上で、活動支援の記録をと
るとか、ちょっとお手伝いに行くという頭でない手足となる胴体の部分の方がお金
としては食ってしまう実態がある。頭の部分と胴体の部分は別で、ボディーの分は
他の方でも学生さんも含めてやりうる。あるいは、地域の方がやった方がより良い
かもしれない。頭で考えている事が、色んなフィルターを通って最終的にアウトプ
ットに繋がるので、そこをどう評価するかが最も難しい。
・
コーディネートターとして仕事を受けての費用対効果は、この事業後の話がちょっ
と見えてない部分があるので本当のところは分からない。制度設計が十分に詰めら
れていないというところはあったが、コーディネーターとしての満足度は高かった。
企業としての採算ということで言うと、活動費(胴体の部分)を出したとしたら、
事業採算性は低い。
・
各団体の活動をサポートしていく中で、この事業のゴールを県や発案者の目的意識
や事業発意にどのように近づけたらいいのかを考えながら運営していた。テーマを
どのように引き出していけばいいかといった作戦を練るのが大変だった。僕らから
すると県から雇われてやっている身なので、それなりのオーダーに答えていかない
といけないという使命感もあるので、今の中で事業に関わっている中で何が出せる
だろうかということを見据えたなかで、ここまでは引き出せそうだからこういうア
プローチをしていこうというような組み立てを考えていた。クライアントである県
の満足感をどこまでひきだせるのかというのを、実際の事業の中でどう組み立てる
かが大変だった。
102
Point
○
コーディネーターの存在が評価されるのは最終成果。次につながる何かが仕組まれ
ていて、それが動くような状況になっていることが最終的に評価につながる。
○
コーディネーターとしてこの事業の“頭”や“目”になるといった重要な部分を担
うことをできる方々はそうは多くはいない。コーディネーターに対してはきちんと
した位置づけが必要である。コーディネートする上で、活動支援の記録をとるとか、
ちょっとお手伝いに行くという“頭”でない“胴体”の部分の方が費用がかかって
しまう実態に配慮する。
○
コーディネーターとしての費用対効果は、各団体をサポートしなければいけないた
め、資金的・組織的に相当厳しいが、満足度は高い。
○
コーディネーターは、各団体の活動をサポートしていく中で、この事業のゴールを
発注者の目的意識や事業発意にどのように近づけたらいいのかを考えながら運営す
る。
声
■
・
コーディネーターの存在意義
最後の頃は、PT会議ではコーディネーターがいなくても自動的に回っていった。
市の力やPT会議のメンバーの力が強かったのでコーディネーターは司会をして
いるだけで存在感が無かったのだろうと思う。そういう意味で言うと、我々はコー
ディネーターではあるけれども最終的には黒子の存在となり、各団体自らが積極的
に動いている状態の方が望ましいと思う。
・
一方で矛盾するが、コーディネーターとしては、それなりに存在感を出さなければ
いけないという面もある。この事業の場合には、プロポーザル方式だったので、こ
ういうプロセスを追っていくことで課題解決に導くという提案をさせていただい
ていた。しかしそれでもよいと勘違いしていた所もあった。実際はその点の認識は
少し違っていた。提案した内容で進めさせていただく方が、偶然ではなくて必然的
な結果として比較的、課題解決の結論にたどり着きやすいと思う。
・
コーディネーターが大変なことは、最終的に地域活性化推進委員会のような意志決
定権者が一番遠い所にいて、どうやってそこにたどり着くかだと思う。
103
・
コーディネーターとして、県・事業設計発案者・市といった色々な立場の方々の思
いにアンテナを張り巡らしながらやったという自負はある。彼らを動かすというコ
ーディネートは色々な面がある。ある種の職能として県を動かすときには誰がポイ
ントでそこをどういじれば良いのかというのを見極めるようなコーディネート力
は備わっている。
・
理想的には、コーディネーターとして、行政を見て住民を見たうえでNPOという
仕組み・制度・日本の実情・海外の状況というのを知りえている人の関わりも必要
である。
・
一般的な職能として住民と行政を繋ぎながら進めて成果を出すということをやれ
る人がいないと何も立ち回らない。
・
NPOのレベルが上がってきたということであるが、今まで正直言っていろいろな
助成金に手を挙げるNPOはいなかったし、お金をもらってやるということもあま
りなかった。事業をきっかけに多少自信を持てただろうし、民間の助成に応募を始
めた団体もある。中間支援的なNPOもこの事業から育っていった。それは、事業
をコーディネートしてくれたNPOにより、いろいろ勉強させていただいたからで
ある。
Point
○ コーディネーターは最終的には黒子の存在となり、各活動団体自らが積極的に動い
ている状態の方が望ましい。
地域性を反映したコーディネート
コーディネートの方法は、地域性を知った上ではじめることが大切です。活動が活発
な都市部、見えない壁のある農村部、そしてその中間に位置する近郊部など、それぞれ
の地域性を意識することにより、地域に解け込んだコーディネートをすることが期待で
きます。
事業経験者からの声
声
■
都市部でのコーディネートを通して考えたこと
・ コーディネートは重要であるがその認識は行政のセクションにより温度差があ
る。コーディネーターは中間支援組織が担い、行政はその組織を支援していくべ
き。
104
・ 町自体に本当に中間支援機能が必要かどうかというのは、役所が決めるというよ
りも、需要があって出てくるところであり、結果として支援センターがあるので
はないか。
・ 制度の設計自体も地域活性化推進委員会主導でできたり、市町村の独自性を出せ
るようなゆとりを持った制度になればよいと思う。
Point
○
制度設計自体に、市町村の独自性を出せるような自由度があることが望ましい。
声
■
近郊・農村部に共通するコーディネートのポイント
・ コーディネーターが重要な役割であることは最初の経験で思ったが、外部のコン
サルタントがコーディネーターだったので、地域のことを知らないという意味で
コーディネーターに違和感を感じた。
・ コーディネーター役は、中間支援型のNPOが担うべきという話が市民から出て
いた。
・ 県と市が連携を図り事業をやっているということでNPOの人たちは安心する。
また、地域の不特定多数の人にいろいろな問題点を投げかけたことにより、市民
も安心した。
・ 行政とNPOだけではこのような事業展開はできないし、コーディネーターが入
ったことでできた。
・ 地域に中間支援団体を育てたいという思いでコーディネートしそれが実現でき
た。
・ コーディネーターとして、1 年間は地域課題を掘り起こしていく、資源を見つけ
ていく、それを住民の方に一緒に考えていただく。地域課題を出したところで、
住民の方が「これだ」とは思わないので、「自分の町のいいところはどこ」とい
う投げ方をして、参加を募った。
・ 団体の方々に対しては、町以外のいろいろな活動事例を引っ張ってきたり、NP
Oが取り組んでいるまちづくりの事例を県外に見に行ったり、NPOがコーディ
ネーター役として取り組んでいくところでは、市民に近いという利点はあったか
と思う。
・ 地域課題とは言わないで、「ここの町の困ったことはなんだ」とか投げかけてい
くことがよかった。活動事例をみんなに聞いて欲しいときには、
「オヤジの底力」
などおもしろおかしくみんなに来ていただきたいという工夫があった。
105
・ 地元でないということは交通費がかかるので、経費の面でも不利であるし、月に
4回位は3人で通うので結構お金がかかり、地元でないことは不利な場合もある。
また、外部のNPOである私たちがコーディネーターとして団体から信頼を得、
私たちが団体を理解するために、主要な団体の方々に事前にアンケートとヒアリ
ングを 1 年目にさせていただいた。地域のことを知るということが大切であり、
市の住民意識調査の報告書などにもしっかり目を通した。その中に市民活動や地
域をどの様に思っているのか、地域資源を町の人はどう考えているのか、はっき
りと出ていた。地元のコーディネーターではないというマイナス点はそのような
形でクリアした。
Point
○
県と市町村が連携を図り事業をやっているということを見せることでNPOの人た
ちは安心する。
○
課題を見つけるというよりも、このような事業を町で始めることをみんなに知らせる
ことから始める。
○
行政とNPOだけではこのような事業展開は出来ない。コーディネーターが入ること
でできる。
○
一方的に地域課題を出しても団体の理解は浅い。
「自分の町のいいところはどこか?」
「この町の困ったことはなにか?」という投げ方をして理解を深め参加を募ってい
く。
○
団体の育成から始めるような地域でのコーディネーターは中間支援NPOの方が適
しているかもしれない。
○
外部地域のコーディネーターが団体から信頼を得て、団体を理解するためには、初期
の段階で、主要な団体へのアンケートやヒアリングを実施すると効果的である。
○
市町村の住民意識調査の報告書などにもしっかり目を通しておくことで、市民が市民
活動や地域をどう思っているのか、地域資源を地域の人々はどう考えているのか、を
知ることができる。
106
事業経験者からの声
声
■
農村地域ならではのコーディネートの難しさ
・ 活動団体は必ずしもNPOというものが理解できていない。プラットフォームが
理解できていない。活動テーマが理解できていない。活動テーマについては県の
事業担当課の職員に話をいただき理解した。
・ 海辺もあれば山間部もあり、合併した町村の中で一体感のない関係、旧町村単位
の縄張り意識が抜けない状況をどう連携させるかを考えた。特定の地域だけが盛
り上がっている動きがある。全市一丸でという動きになりにくい。
・ 市の担当職員の仲介により、各団体の中に踏み込み顔つなぎをした。イベント等
の運営にマンパワーが必要となり、コーディネーターNPOのスタッフを送り込
み地域との交流ができてきた。
・ 農村部では、市の役割が重要である。市の担当者が地域とコーディネーターを繋
ぐ役割を担う必要がある。
・ 既に連携できるような動きは水面下でできている。色々な団体があるので、個別
の団体同士が、あまり仲良くしている状況を表沙汰にはできない状況がある。地
域活性化推進委員会は発言が少なく静かである。
・ 活動団体は市民活動については理解しているが、一般市民が理解していない。
・ 農村部では市民活動をボランティアでおこなっている方が多い。NPO=ボラン
ティア団体という認識。活動の中に入ると人間対人間であり面白い。なので、採
算ベースに合わなくてもやってやろうというという意識がある。
・ 都市型と比較されるかもしれないが、懇親のための飲み会をやってしまうと広域
で車しかないので帰れなくなってしまう。
・ コーディネーターが、町の中のNPOでなかったから、ある程度は厳しいことも
言えるし、引っ張っていけた。小さい町だと、
「なあなあ」になってしまうのでは
ないか。
・ 学校への働きかけ方など、事業の進め方も事業をきっかけに分かってきた。
・ 深く考えると、町レベルで中間支援が本当に必要なのかと感じることもある。
・ 事務所も幸い地元にあるものですから、担当がそれぞれの団体に訪ねていって、
各団体と話をしながら、少しずつ団体の問題点が見えて来た。そしてそれに対し
て応援しながらさらに連携をというような取組ができてきたと思っている。
107
Point
○ 旧市町村や集落レベルでの地域性を十分考慮した活動支援を行う。
○ 農村部ではコーディネーターとしての市町村の担当者の役割が大きい
○
コーディネーターは、個別の団体単位での活動に参画し、個別に親密になった上で
少しずつ議論をしたり意見を述べ合うことに慣れていただくことがポイントであ
る。
○
多くの団体の連携を一挙に進めるよりは、農村部では個別の団体を少しずつ繋いで
いくほうが馴染みやすい。
○
一度、地域コミュニティに受け入れられれば、採算を度外視した活動の継続性が期
待できる。
○
コーディネーターの拠点が地元にあれば、コーディネーターと団体のつながりがで
きて、また新しい事業展開につながる可能性がある。
108
(3)県の役割
県は、市民やNPO、市町村などとともに地域づくりを担う一つの主体です。地域づ
くりの主役は市民・NPOだという意識を持って、現場に入り、様々な主体のつなぎ役、
コーディネート役を担います。なお、市町村の区域を越える広域の課題に対しては県の
役割は大きいといえます。
※
広域の事例(西印旛沼流域の事例から)
「印旛沼流域とその河川の水質浄化に対する意識啓発と実践活動」というテーマで、
船橋市、佐倉市、八千代市、白井市の4市において、印旛沼とその流域河川の水質浄
化に対する意識啓発と実践活動を、市民同士又は、市民と行政の連携という手法を用
いて実現するという視点で事業を実施しました。
広域的な事業でしたので、それぞれの市の事業への関わり方の難しさという課題が
残ったものの、NPO主体による中間支援組織が設立されたことや、印旛沼関連団体
と手賀沼関連団体との連携の動きも生まれました。
声
■
行政区域を越えた視点
・ 1年目のときに市外のNPO法人が当市をフィールドとして活動をしたいとい
うことで採択された。その時県の担当者が「我孫子をフィールドとして、我孫子
にとってプラスになるのであれば、市外でもどこの団体でもやりましょう」と言
ってくれたことがきっかけとなったことで非常に大きいものになった。そんなと
ころも、県の役割の1つとしてあった。
・ 課題というのは、私たち市町村の職員は市町村の中しか考えていないが、行政界
はあっても住んでいる住民からすれば、いきなり壁があるわけではない。人が生
活をしているところもあり、行政区を越えて隣のNPOと一緒にやって下さいっ
ていうことは、市町村ではなかなか言えない。そこに、県が入ると、お互いの市
町村が理解をすれば、上手くできる。そういうつなぐ役というのは、県の人に期
待したいというところである。
109
・ この事業がはじまるときまでは、市町村とNPOや県とNPOという2者関係の
事業が基本であった。新しく3者の関係となったが、NPO活動推進課の役割と
してどこまで入っていけるのか、地域に行くとこれまで県の担当者が入っていな
かったので地域が見えなかった。この3者の事業をやることによって、「県」と
いうところが近く感じられるようになったといわれている。これはこれで良いの
であるが、市町村や県が主導にならないように、いかに地域が主導にやっていく
のかが必要である。
・ 職員の意識改革や職員の育成では今回の県職員の関わり方が非常に良かった。
Point
○
県の立場で広い視点で見ることが、行政区域を越えたネットワークの構築につなが
る。
事業経験者からの声
声
■
広域の場合は県のサポートが重要
・ 2年の事業であったため、3年目以降どのように存続させるのかが全ての成果で
あると思っていた。地域活性化推進委員会については、河川担当課が所管の課で
あるため、そこを中心に県が設置している印旛沼流域水循環健全化会議の主要ポ
ストの方を委員に入れた。
・ 県のこれからの新しいあり方の1つのパターンをつくりえたのではないか。県の
役割の突破口を開いた事業であると思う。
・ 県の役割としては、広域的な活動をしているNPOに対してもっと支援し、市町
村は個別のNPOを支援するという役割分担が必要。
・ 広域の場合、関係市町村の担当課への呼びかけや調整を県が担うことが望ましい。
コーディネーターNPOには荷が重いのではないか。
・ 西印旛沼流域でも挙げられている様に、1つの市町村では課題解決ができない広
域のものは、県の役割が大きいのではないかと思う。
Point
○
広域の取組こそ、県のサポート(県・市町村事業担当課への呼びかけや調整)が重要。
110
(4)市町村の役割
市町村は、市民やNPOにとって、県よりもずっと身近な存在です。市民が活動に取
り組みやすい環境を整備するとともに、関係する人や組織、資源をつないでいくことが
地域の課題解決につながります。
ところで、この事業の実施形態としては、県がコーディネート業務を担えるNPO又
は企業に委託する形態とモデル地域として選考された市町村に委託する形態があります。
県としてはこの事業に、市町村がより主体的に関わってほしいとのねらいがあり、モ
デル地域が一市町村である場合には、市町村に委託する形態としたいという思いがあり
ましたが、結果的にはコーディネート業務を担えるNPO又は企業に委託する形態とな
った地域がありました。市町村に委託する形態をとりづらい市町村の事情としては、予
算計上しなければならない、業務が増えても人員を増やせないといったことがあります。
事業経験者からの声
声
■
成果を見せる大切さ
・ 市役所の職員が、NPO が社会的なことが結構できるというのに気がつきはじめ
た。
・ 地域の課題が解決されつつあるということを見せられることが一番大きな成果。
事例として上手く見せながら、この事業に手を上げてもらえるように、NPO担
当課に理解してもらう。受けたところは、他の関係課にそれを理解してもらうこ
とが大切である。
・ 初年度はやはり厳しかったが、一年事業を実施し、多少の成果が見えてくると、
事業担当課の職員も多少変わり、年を追うごとに分かってくれて上手くいくよう
になってきた。
・ 成果というのが見えてくると、面白いというところの興味から結構入ってくれる
ような場合もある。
Point
○
結果や成果を上手く見せることにより、意志のある連携につながる。
○
課題解決の成果が数字で見せられるような状況は励みになる。
111
声
■
職員の意識が重要
・ 市の職員は、コーディネートするという役割が大きい。
・ これから市民活動を推進する自治体にとって、協働することが目的というスタン
スで事業設計していくと多分違ってしまう。その辺は気を付けた方が良い。
・ この事業の一番の特徴は、つながるということ。特に市の職員に対して、地域に
ある人と人、組織と組織、資源と資源など、それをつなぐことが地域の課題の解
決につながるということを担当課の職員が理解することがすごく大きなこと。
・ 例えば協働ということを考えても、一緒にやるのが当たり前。ただその時の役割
分担をどうするかというところで、悩みながらやっている。
Point
○
職員一人ひとりが、地域の課題を認識し、何をどのようにすることがベストなのか
意識して解決に向けた取組をサポートすることが重要。
112
(5)行政内部の連携
県と市町村とNPOの3者が連携して、地域課題の解決に向けて取り組む初めての事
業であり、中でも県と市町村が課題を共有し、一緒に取り組む珍しい事業です。この特
性を活かすためには、県と市町村のNPO担当課だけではなく、県と市の各事業担当課
が連携して取り組むことが求められます。県の立場と市の立場から率直に意見を出し合
い議論するとともに、お互いの情報を共有することが大切です。
事業経験者からの声
声
■
県および市町村におけるNPO担当課と各事業担当課との協力体制
・ 事業に参加していた団体からは、県に要求がないので、少し寂しい。言ってくれ
れば何かできるのにと感じる。県は予算がほとんどないので情報提供のみとなっ
てしまうが、国の予算があるので、情報提供はできる状態であったが、そんなに
多くの団体は聞きに来ていない。
・ 予算がないのではない。使える制度はあるが、使えるところまで関係団体を引き
込めていないのである。NPO関係の資金は、新しくできたものが多いが、それ
らの制度がうまく活用されていない。
・ 自治体では制度設計上乗り越えられない壁があり、事業担当課を巻き込んでなん
とか解決する方法を行政内の横つなぎでやっていく仕組みも考えられる。行政の
人が地域活性化推進委員会に参加しているだけでなく、乗り越えられないものを
県庁内で連携してやっていくことが大切。これは県だけでなく市町村も市民活動
部門だけでなく横に連携していかないといけない。
・ 事業担当課の担当者は、担当でない事業や他の課の事業で活用できるものが、な
かなかわからない。それを同じテーブルをもって、横断的にできるセクションが
あればよい。
・ 事業担当課の持っている事業を、NPO担当課のチャネルを通して、みんなに発
信してくれればいいのだと思う。一元化できないのかと思う。要するに公募型の
ものは、NPO担当課の情報ネットを通して公開するなどのルールにしてもらい
たいと思う。
113
・ NPO担当課でもワンストップサービスを大きく掲げている。部局担当者がそれ
ぞれいるが、なかなか職員同士の情報交流がうまくできていない。他の部署でN
POがチャレンジできる事業は沢山あるが、NPO担当課でも把握しておらず、
事業担当課としても、NPO担当課に言わなくても自分たちで情報を出している
といっている。
・ 実際のメニュー組み立てを確認しつつ進めていく。方向性が変わっても柔軟に対
応できるような形。それを県や市の方をはじめ、いろんな方としっかり確認をし
あいながら進めていくこと。スタートの時点できちんと確認しないと、履き違え
てとんでもないことになる。
・ テーマを観光や子どもなどの切り口でやってもその事業の担当課をこの事業に主
体的に巻き込むということは、大変であると思う。自分のところで予算をもって
いないと「お手伝い」という立場で参加されてしまう。関係課を主体的に参加さ
せるにはどうしたら良いかということが課題である。
・ 事業の途中で、県とコーディネーターが、活動団体と市の事業担当課を誘い、こ
の事業を始めてどうだったか、これからどうなのかという内容のお見合いを相当
数行った。それにより、団体と市の事業担当課がコンタクトを取れるようになっ
た。
・ 事業担当課も大きく変った。学校が大きく変った。今までは、話を持っていって
も聞いてくれることはなかったのが、今は話を聞いてくれるようになった。
・ 当時の教育長に、コミュニティスクールなど、地域における学校の位置づけを明
確にするような命題がだされていた背景も手伝って、上手く回り始めた。
Point
○
事業担当課が当初からテーマの決定にかかわっている場合は、事業担当課としての
期待も大きく、その他の事業担当課が持つ情報なども直接流すルートができる。
○
NPO担当課と各部署の担当課による仕組みづくりが重要。まず、事業担当課は自
分のところだけで情報を抱えるのではなく、持っている事業や関連する情報をNP
O担当課のチャネルを通して発信するなど、情報提供の一元化を手始めにスタート
する。
○ 事業担当課と連携するには、予算をもってもらうことも1つの方法かもしれない。
○
県とコーディネーターがチームを組み、市町村の事業担当課との会合を設定しきめ
細かい説明をする。そのことで活動団体はアプローチしやすくなる。
114
6.コーディネーターの機能と役割
6.今後のプラットフォームづくり支援に向けた展開
事業を通して築き上げた連携・ネットワークは、地域の力の源となり得るものです。
1つの課題にも様々な角度から課題解決に向けた取組を行うことができます。そして、
市民・NPOが中心となって、企業や学校など地域の様々な主体と連携し、行政をリ
ードする地域の力となることが期待されます。県内各地域で、地域の様々な主体が連
携して課題の把握、解決手法の検討から、具体的な活動に取り組む自立・継続したプ
ラットフォームが立ち上がることが重要です。様々な主体が連携・協力し合う関係を
つくることでより良い地域をつくっていくため、引き続き、地域でのプラットフォー
ムづくりの支援を進める必要があります。
事業経験者からの声
声
事業終了後の展開に向けた成果と課題
・ NPOが、いろいろなところのメニューを拾ってくる術を知った。どこで探せば
よいのかという緩やかなネットワークを活用する術を皆さんが知りつつある。
・ 予想外に市民活動の幅が広いと感じた。例えば地域課題に直接関係することがな
いような団体も、地域課題との接点や地域課題の解決に貢献できることをみつけ
て繋がっていくのが見えて面白かった。
・ モデル事業で関わったコアメンバーが、辞めていき、その団体が去りつつあり世
代が交代してしまうときの継続性が心配。
・ 誰がリーダーになるかというのは、行政やインターミディアリー(中間支援組織)
や地元のNPOや一個人など誰でも良いが、多分今は誰も走り出さない。底辺の
方のいろいろな活動も芽生え始めている段階であり、これを組織化するのが次の
ステップなのだと思う。
・ 事業関係者にアンケートやヒアリングを実施し効果を分析し、事業終了後どうな
っているか見ることは大事。大学はそのような役割を果たす。
・ この事業に関わった人たちが、そこで学んだ仕組みをその後成長させ続けられた
かどうかはわからない。成長させるためには、それを後押しするサポートなり事
業意図が必要であるが、行政、市町村、参加している人たちは、その時点ではそ
うした意識はなかった。
・ 地域レベルの中で中間支援的なものや色んなものをブリッジしていくみたいな
機能、地域のテーマに合わせて、色々なスケールの縦糸横糸を結び付けるという
機能があったらよいと思う。
115
・ 個人から組織へつながりをつくるには、事業終了後の振り返りとフォローアップ
が必要。
Point
○
地域課題に直接関係することがないような団体も、地域課題との接点や地域課題の
解決に貢献できることをみつけて繋がっていくことができてきた。
○
個々の団体は育ち始めて回り始めているが、これを組織化するのが次のステップ。
地域のテーマに合わせて、色々なスケールの縦糸横糸を結び付けるという機能があ
るとよい。
声
■
この事業はその役割を終えたのか
・ (市町村の担当者が)NPOを知らない、支援センターもない、
(自分の町の)N
POの活動内容もわからない町が、NPOが事業に応募してくることに抵抗があ
る気持ちは分かる。しかし、そこでステップを踏んで、提案者が市町村に歩み寄
り、市町村も歩み寄る事によりこの事業の意味が分かってくると思う。段階を踏
まないとパートナーシップを築くには難しいかもしれない。
・ 市民活動だけで言えば、補助金制度をつくっているので、その中で(この事業と
同じようなことは市町村単位でも)できると思う。
・ 各地で市町村単位での市民協働の事業が整ってきつつあるなかで、市民協働が実
践できていることを形式的には示すことができたり、市町村側が自分のところの
地域課題の発掘(テーマ決め)の煩雑さや自分のところのNPOとの綿密な連携
を回避したいが故に市町村の応募が少なくなったとしても、その責任の所在をこ
の事業の不備とするべきではない。この事業がこれまでに蓄積した成果は極めて
大きい。安易なお手盛り型の市民協働が増えやすい時代であるからこそ、NPO
立県千葉としてのプライドをかけて、この事業の精神を初志貫徹すべきであろう。
・ この事業を現場で担ってきたNPO活動推進課(代々の職員のその熱い想い)と
これまでに関わったパートナーの責任において、この事業の成果と存在意義を自
身できちんと評価し全国に発信していく必要があろう。
Point
○
市民活動センターのような機能が市町村にあれば、NPOの提案を市町村とつなげ
て、こうした事業を実施しやすくなる。
116
声
今後のプラットフォームづくり支援に向けた課題
・ 活動をした方が色んな人たちと色んなセクターの人たちと出会いながらやって
来たということ自体は、活動支援、団体育成という意味も含めて、それはそれで
意義はあったし、関わった人たちもよかったと思う。しかし、最終的にプラット
フォーム的なものが本当にできたのかということになると実感は薄いかもしれ
ない。
・ 事業の結果として、団体同士では高めあうようなものが出てきて活動団体は育っ
たけれども、プラットフォームのイメージとして、ここまでは成長させたいとい
う明確な目標がなかった。
・ 新しく事業を設計するならば、段取りを組む事で一応ゴールまで見えるはずとい
う枠組みのスキームをつくる。
・ 中途半端に色んな人が関わったけれど、そうした人々をもうひとつ後押しをする
ことが制度設計の中で行われた方がよいと思う。個々の付き合いはできているか
もしれないが、プラットフォーム的なものとしての仕組みは発展することが重要
である。多分それには一年では無理だと思う。そこをもう一回おさらいしたほう
が良い。
・ プラットフォームを作るための最後の一手というものが事業の中にもう少し明
確に位置づけされていればよいと思う。
・ 地元の地域で解決すべき課題が発生した時に自分たちでちょっと仲間を集めて
きて行政を引きずり込んで、課題解決に向けて行動を開始できるぐらいの力が備
わっているのがよいと思う。
Point
○ 目的とゴールを設定した枠組みを見せることでやるべき課題が明確になる。
○
この事業に関わるいろいろな人々を、制度設計の中で、もうひとつ後押しをすること
が行われた方がよい。個々の付き合いだけではなく、プラットフォーム的なものとし
ての仕組みに発展することが重要。
○ 地域で解決すべき課題が発生した時に、自分達で仲間を集めてきて行政を引きずり込
んで、課題解決に向けての行動を開始できるぐらいの力が備わるような状態を目指す
べき。
○ 県ができることは何か。市町村の枠をこえた広域プロジェクトなど県としての課題解
決の対象の明確化。関係する事業担当課、企業や国等との連携による具体的な戦略づ
くり。あらためて当初のマップづくりに立ち返ることも有効ではないか。(初期の制
度設計に多くのヒントがある)
。
117
8.事業の効果
7.事業の効果~アンケート調査結果から~
~アンケート調査結果から~
ここでは、活動団体に実施したアンケート調査の一部を紹介します。集計結果からは
事業前と事業終了後で比較してほとんどの活動団体が力をつけているようにみえますが、
実際に内部の事情をよくご存知の方にこのアンケート結果の解説をしていただきました。
表面的な調査からだけではわかりにくい、活動団体への支援のあり方と団体の成長につ
いてお考えいただくときにヒントになると思います。
●柏市のアンケート調査結果から
柏市では18年度を準備期間として、19、20年度の2年間で『アート(芸術文化)がつなぐま
ちづくり』をテーマにNPO公募事業を実施した。
テーマは『アート』だが、文化振興や芸術だけではなく、商店街や子ども会、町内会を盛り上げて
きた文化イベント、環境や福祉などを含めた『アート』を通してまちを活性化させたり、『アート』
を普段の生活や団体の活動を楽しくする道具として使い、団体同士が連携・協力した。
このような、芸術文化が身近にある「まちの空気」が醸成されたことや、団体内、団体同士、行政
と団体等、様々な連携の素地ができた
課題・ニーズを発見する力
300
こと、この事業に参加することによっ
て新たなことにチャレンジすること
250
ができ、「新たな気づき」の場になっ
200
たことは成果といえる。
150
このアンケート結果からもこのよ
財源を生み出す力
100
広報を活かす力
50
うなことが読める。
0
グラフの成長度全体を見ると、課
事業前
題・ニーズを発見する力、広報を活か
事業後
す力、組織を育てる力、事業を推進す
る力、財源を生み出す力と、すべての
項目において、事業前より後のほうが
ポイントは上回っていた。これは、P
事業を推進する力
組織を育てる力
T会議などで、団体間で情報交換をする場ができ、今までの活動のジャンルを超えた団体間の交流や、
柏で長く活動をしている「先輩団体」から、「新たな団体」に広報の方法やイベントの場所の確保方
法等の様々な情報を共有することができた成果と思われる。
また、「またこのような事業があった時に参加したい」という回答がすべての団体から寄せられ、
団体としても事業は有効であり、楽しく参加していたことがわかる。
○ 事業終了後の活動展開
事業終了後については、これから考えていかなければならない部分もあるが、ジモトのコーディネ
ーターとして活躍したストリートブレイカーズを核とした緩やかな連携や、事業の活動団体だった
JOBANアートライン柏実行委員会が実施しているアートライン月間に参加する等、今後の継続・
発展が期待される。
118
●南房総市のアンケート調査結果から
南房総市では、農林漁業体験施設や、観光産業、関連する地域産業などの様々な主体が連携協力し
都市住民が何度でも訪れたくなるような魅力的な地域を目指して、平成18年度を準備期間として、
19、20年度の2年間で「地域が連携して取り組むグリーン・ブルーツーリズム」をテーマに事業
を実施した。
平成20年度は、8団体により、南房総の温暖な気候や海、山、畑など地域資源を活かした体験メ
ニューなどで都市住民を魅了した。この事業を実施した8団体にアンケート調査を行った6団体から
回答があり、次のような傾向があった。
「今回の事業に参加してみてまた次の機会にこのような事業があったとき参加したいと思います
か。」という問に対して、回答のあった6団体全てが参加したいと回答している。その理由として、
人の交流の輪を広げることができる、地域コミュニティの醸成の手段として必要がある、新たな取組
を行うきっかけになるなどそれぞれの団体も多くのメリットがあり、更なる活動展開や新たなネット
ワークの構築につながるとの意向が現れている。
課題・ニーズを発見する力
150
また、団体が事業に参加する前と
現在では、どの様に変わったかとい
120
うアンケート調査では、
「課題・ニー
90
ズを発見する力」や「広報を活かす
60
財源を生み出す力
力」のポイントが大きく伸びており、
広報を活かす力
30
「事業を推進する力」や「組織を育
0
事業前
てる力」のポイントが上がっている。
これは、参加団体の基盤が強化され、
事業後
底上げされたことが推測される。
事業を推進する力
組織を育てる力
○ 事業終了後の活動展開
連携という視点では、この事業により、観光協会等が団体の活動を認められ、今では、その団体の
イベント時期に観光協会のイベント開催を合わせ、同協会がバスを出すなどの連携につながっている。
また、事業終了後の継続については、この事業にかかる報告会で講演を頂いた講師の提案した国の
事業(『田舎で働き隊!』事業【農村活性化人材育成派遣支援モデル事業】
:農林水産省)が採択され、
コーディネーターとして関わった千葉自然学校を中心に、プラットフォーム事業に参加した団体によ
る体験ツアーを行うこととなった。さらに、南房総市でも地域のネットワークをサポートする独自の
事業展開を検討する動きとなっている。
119
●栄町のアンケート調査結果から
提案型の事業に応募したことのない団体が大半を占める栄町では、集会やキックオフォーラム等の
イベントを開催し気持ちを少しずつ高めていくことからのスタートでした。
参加のきっかけの問いに対して「事業に参加することで団体が成長すると思った」と意欲的に答え
ている団体は市民や学校、商店などをうまく巻き込めたなど達成感を感じ、会員の自信につながって
いった。
グラフでは12団体中、11団体は共通に課題・ニーズを発見する力や、事業を推進する力がつい
たという結果になっている。地域課題を発見する力は「私たちのまちは私たちで創る」という意識が
でき、自ら気付き活動を考えることが
課題・ニーズを発見する力
できるようになったこと、また事業を
300
推進する力は毎月のPT会議での情
250
報交換、課題の共有、報告会、まとめ
200
など県、町、コーディネーターのアド
150
バイスを得ながら、一年間やり遂げた
財源を生み出す力
ことが自信につながったことの成果
100
広報を活かす力
50
だと考える。
0
中でも平均的にバランスよく成果
事業前
の表れている団体はその後も少ずつ
事業後
活動がのびている。そして、ほとんど
の団体が他団体との連携をしながら、
次のステップに歩みだしている。
事業を推進する力
組織を育てる力
○ 事業終了後の活動展開
この事業で他団体の活動を知り連携して活動できる関係を築くことができ、終了後のワークショッ
プで「野良坊ネットワーク」として継続していくことになった。またこの事業で採択された中間団体
は団体が連携して事業を行うためにはコーディネーターの役割が大切である事を痛感し、事業終了後
にNPO法人を取得した。その中間支援団体が中心になり、団体の強みを活かし平成19年7月から
12団体のうち5団体で「野良坊市(通称のら市)」を開催している。この市は朝市のような形態で
必ず子どもの昔遊びや子どもに伝えたい行事などを取りいれ、またエコバック持参やキャンドルナイ
トなど環境の発信地にもなっている。多くの人を巻き込みながら、まちの活性化につながるよう進め
ている。今後もそれぞれの団体の力も強めつつ、連携を深め、人と人とのつながりを大切にして着実
な歩みと広がりで社会に必要とされる活動が展開されていくことを期待している。
120
●西印旛沼流域のアンケート調査結果から
17年度18年度の2年間の事業として実施した。実施団体の調査結果から、回答団体が11団体
中6団体であったことから、実施後時間が経過し、熱意が冷めた頃の調査ではなかったかと感じた。
我々が本事業のコーディネーターとして応募した目的には、「印旛沼流域の水環境改善」を継続し
て取り組むことのできる民間団体側の体制作りを、一気に加速させようというねらいがあった。当時
より、県では土木部局に印旛沼流域水循環健全化会議という、行政機関と研究者らに住民団体の代表
も加わった組織が動いていた。その中で、63項目におよぶ、緊急行動計画が策定されており、その
中には、当然地域住民が関与しないと成果の挙がらない項目が相当に組み込まれていた。
NPO法人とんぼエコオフィス
課題・ニーズを発見する力
140
は、自ら現場で実践する団体であっ
120
たため、コーディネート中間支援の
100
意味を体で覚えてきた経験はなか
80
った。この事業を通じて学んだこと
は、互いが相手のメリットのために
60
財源を生み出す力
40
広報を活かす力
20
働きあうことで、相乗効果が生まれ、
0
事業前
通常は不可能と思う成果が引き出
されることを体感した。このときに
事業後
感じた「連携の躍動感」が、後のプ
ラットフォームとなる「印旛・手賀
沼環境あっぷ協議会」設立のエネル
事業を推進する力
組織を育てる力
ギー源となった。
事業目標の達成イメージを当初から、牽引役となる民主体のプラットフォーム組織のスタートと考
えていた。1年目は成果のイメージを見せていこうという方針で、スピードアップでモデル事業と称
して複数の現場を少し動かしておいた。2年目はそのイメージを見せて示して、公募で11団体に事
業を実践してもらった。3年目につなげるには、8月までにその方針を土木関係部局に持ってもらわ
ねばならなかったが、全く話は進まなかった。最後のチャンスとして、早すぎるとの批判を押し切っ
て、10月に実施団体による事業評価を出してもらった。しかし、これでどんな結果が出ようとも、
到底何も変わるはずはなかった。この2年間が何だったのかという無力感を痛切に覚えながらも次の
策を探し、財団法人日本グラウンドワーク協会への事業協力という滑走路を活用しながら、翌19年
「印旛・手賀沼環境あっぷ協議会」を離陸させた。
NPOが担う分野にはまだ評価の規定コースはない。「ここまでの成果があれば道が続く」ことが
とにかく重要だと思う。事業終了から2年を経た20年度末、ようやく、プラットフォーム組織の必
要を盛り込んだ行動計画が県の土木関係部局より示されてきた。このスピードのズレが障壁となって
くることも又現実である。
121
●四街道市のアンケート調査結果から
課題・ニーズを発見する力
・事業を実施してから年数が経って
180
いたせいか、回答をした団体が少な
160
140
かった。
120
(回答数 13 団体中7団体)
・事業終了後1~2年で活動を休止
100
80
財源を生み出す力
してしまった団体が2団体(回答し
60
広報を活かす力
40
20
た1・回答なし1)
0
・それぞれの団体には事業実施中の
事業前
苦労や大変さが残っていて、「この
ような事業をまたやってみたいか」
事業後
の問いには消極的。
(回答7団体の
うち積極回答は3団体のみ。1団体
事業を推進する力
組織を育てる力
は参加しないと答えながら、書き込
みには「やっぱり参加したいかな」と書いている。魅力も感じているということか?)
・かなり背伸びをして参加した団体は、自ら立案した事業をこなすことが精一杯で、PT会議の活用
も充分できなかった。
・事業を実施したことで自分の団体が変わったと答えた団体は少ないが、その後の活動ぶりや団体同
士の協力の様子を見ると、経験やつながりを生かしているのがわかる。
・無回答団体のうちの2つの団体は、この事業をきっかけに立ち上げたものであったが、その後も順
調に活動を継続し、地域で人々の良い関係を生み出し、着実な成果を挙げている。
○ 事業終了後の活動展開
(1)この事業によるネットワークが生かされている例):北総地域の「みんなで人権を考える集い
in 四街道」の開催を四街道市より依頼され、ともに築くネットが実行団体となり市民の手で創り
上げた(事業の展開を見ていた市職員が依頼してきた)。人権の集いはその後も毎年、ともに築
くネットによる実行委員会形式で続行している。
(2)プレーパークどんぐりの森が、この事業により、市内の里山をフィールドとして定着させるこ
とができ、それによって千葉県の真っ白い広場事業の最初のモデルとなった。どんぐりの森は現
在NPOが受託する四街道市の事業となり、市内外の多くの人々を集めて賑わっている。
(3)事業終了とともに子どもの居場所「まじゃりんこ」が誕生(ふきのとうの事業から)し、文部
科学省の補助金を得て活動し、現在は四街道市の放課後子ども教室事業として助成金を得、週6
日間開設している。
(4)緩やかなともに築くネットが、事業終了後も市民に種々のNPO・市民活動を知ってもらおう
と「わくわく市民活動フェスタ」を開催している。
フェスタ参加者の推移
16 年度 120 人
17 年度 170 人
18 年度 360 人 この年から小学校の体育館で開催
19 年度 550 人
20 年度 600 人
122
千葉県発『地域活性化プラットフォーム事業』の経験則
千葉県発『地域活性化プラットフォーム事業』の経験則
千葉工業大学工学部建築都市環境学科
教授 鎌田
元弘
ここではこの普及のための体験集のまとめとして、Ⅱ編で述べたいくつかの個別の
Point を、都市部・郊外・農村部という大きな括りで整理した(次ページの表)
。本体験
集で述べている種々の Point は、その性格上しっかりした論拠を示した上で汎用化でき
るようなものではない。しかし、振り返って全体で通して眺めてみると、都市部・郊外・
農村部といったごく大雑把な括りであれば、ある程度、これらの Point を整理すること
ができることがわかった。
プラットフォーム事業では、最初から都市部・郊外・農村部を分類してそこから市町
村を選定していない。
「はじめに」でも述べたように、千葉県という極めて多様な立地の
市町村から、毎回、県下の全市町村を対象として募集し、結果的に選ばれた市町村がた
またま都市部・郊外・農村部に大きく区分されたというものである。あくまでも限られ
た事例の中での仮説的な区分での整理なので、都市・郊外・農村といった厳密な定義や、
それぞれの区分に各項目で述べている事項が例外なく妥当なものであるかどうかといっ
た面を問われると、全く自信がない。
しかし、本体験集でご紹介していることは、いずれの事項も経験・体験を通して当事
者が直に感じとったことや、様々な場面において「こうすればもっと良くなるだろう」
と考えたことを Point として積み上げたものであり、それをご紹介できることについて
は自負している。こうしたものを紹介した類書がない以上、個別の Point を経験則とし
てご活用いただくに当たり、少し乱暴ではあるが、都市部・郊外・農村部といった形で
ご活用いただく場面を想定してノウハウを整理した方が体験集としては使いやすいので
はないかと考えた。
今後、さらに事例が増えそれらから得られる Point がさらに蓄積されれば、もっとき
め細かくかつ正確で、新しい切口のものができるであろう。ここで示すまとめは、こう
した未熟さを差し引いてご活用いただければ幸いである。
表は、あくまでも千葉県のプラットフォーム事業のような形態や場面を想定している。
すなわち、組織の仕組みとしては、「現場で地域課題に取り組む団体」がいて、「それら
を支援するコーディネーター」がいて、「事業全体を推進する委員会」があり、「県と市
町村は連携してプロジェクトを支える」という形態をとるものとする。また、活動とし
ては、目標を共有し活動テーマを決め、そこから事業期間と補助金額がきまり、事業終
了後には地域課題解決のための活動が自立的に発展していくという流れを想定している。
123
まず、都市部・郊外・農村部別に、事業目標を設定し事業テーマを決める。次に目標
設定やテーマに合わせた事業期間や補助金額を決める。期間は長く金額は高額であれば
良いというものではない、立地区分によりある程度の目標レベルが違ってくるので、そ
れに合わせた期間や補助金額が決められた方がよい。課題解決のためにはじっくり取り
組める期間と資金が必要となるし、団体育成のためには短期で低額でも回数が多い方が
好ましい。
その次は事業で活動する団体とコーディネーターを決める。団体の選定にあたっては
実際に地域課題に取り組めるような団体を選定するのか、または将来を展望して将来を
担えるような団体を育成し連携を促進するのかという点に的をしぼった方が良い。コー
ディネーター選びも地域課題への取組の状況や団体の選定に合わせて、コンサルタント
やNPOなどを選定する。
次の段階では、活動団体とコーディネーターによる連絡会議(PT会議)や事業を全
体的に推進する委員会のフレームを決める。当然ながら、目標やテーマにより活動団体
が選定され、その内容に合わせたPT会議の形式をとることになる。PT会議ではあれ
もこれもと欲張らずに目標に合わせて会議内容を絞り込んだほうが良い。推進委員会は
地域課題解決を目標とするような場合は特に重要な役割を担う。団体を育成する状況で
は、団体の成長に合わせて上からの立場ではなく、目線を合わせたアドバイスができる
ような構成員が望ましい。
最後の段階では、県や市町村による事業の関わり方について確認しておく必要がある。
特に県・市町村に共通するのはNPO担当課だけで進める段階なのか、関係する事業課
を巻き込みながら進めるのかといった点がポイントとなる。市町村の事業課を巻き込む
場合、県のそのジャンルの事業課を予め巻き込んでおき、そのルートから引き入れると
いうやり方も有効である。農村部においては、行政組織としての支援という以前に、行
政内部にコーディネーター的な感覚をもつ人材を育成することが、結果的にその先の事
業の発展に大きく寄与する。
また、県がプラットフォーム事業のようなフレームで継続的に地域課題に取り組むと
すれば、自治や市民協働が成長してきた今日では、市町村の範囲での事業は、それぞれ
の市町村のプログラムとして実施可能なことであるので、市町村の領域を超えた「広域
的テーマ」に取り組むことが望ましい。その場合のポイントは県が関係市町村との連携
をどのように構築できるかということである。
124
プラットフォーム型事業推進の経験則
立地区分
住民構成
本事業における
参考事例
目標設定
都市部
郊外住宅地
農村部
新住民中心
新旧住民
地域コミュニティ中心
我孫子市・浦安市
四街道市・栄町
南房総市
地域課題の共有・解決
団体同士の連携
(連携のメリット模索)
団体の底上げ
(組織の体裁・継続)
テーマ内容
具体的な地域課題を設定
大きな地域課題を設定
テーマの決め方
ワークショップ方式等で
テーマを絞り込み・共有
時間をかけて連携を意識 県または市町村がテーマ
しながらテーマを発見
を設定
事業期間
中期~長期(地域課題の 中期(連携を構築した上
短期(回数を多くする)
難易により決定)
で、課題解決に取り組む)
補助金額
取組み課題に応じて金額 金額は低くてもよいが時 トレーニングができる程
を決定(事務局経費含む) 間をかける
度(高額ではない)
団体の選定
課題解決能力のある団体
コーディネータ
課題解決のための技術力 経験・実績のある中間支 面倒見のよい小回りがき
をもつコンサルタント
援型NPO(地域で育成) くNPO
コーディネート
方法
課題解決の目標管理・目 団体が連携しやすいプロ 楽しい雰囲気での実践的
標達成のための連携構築 グラムを提示
な学習を支援
PT会議の役割
課題解決の達成状況報告
技術面での研修会
1 対 1 の連携から開始
連携メリットへの気づき
NPOについての学習
基礎知識・技能の習得
推進委員会の
役割
地域課題解決の目標管理
継続の仕組みづくり
連携のためのアドバイス
推進委員が現場に参加
中長期計画の策定
NPO支援組織の立上げ
推進委員会構成
資金・情報提供等、課題 活動経験豊富なNPOを 地域の役職者中心を避け
解決に協力しうる組織
入れてPT会議を支援
硬直化を回避
市町村の役割
地域課題の解決に関係す NPO担当課・NPO支 行政にコーディネータ的
る全ての事業課が参加
援組織がリード
感覚をもつ人材を育成
県の役割
関係する事業課に情報提
NPO担当課
供・活動支援を依頼
(各市町村の最新のNPO力を各事業課に発信)
県事業の方向性
行動力・若い団体を選定 今後担い手となる可能性
し中間支援団体に育成
が高い団体を育成
県として「広域の地域課題解決」のプログラムを提示(参考例:西印旛)
⇒県は関係する市町村をリードし、県庁内の事業課に協力を呼びかける
125
(参考)
1 これまでの実施形態
主な形態
1 地域の主体性を持たせるために、県が市町村に事業全体を委託し、市町村がコーディネーターに
コーディネート業務を委託するとともに、活動団体に活動費を交付する。
(平成17年度の市原市、平成19・20年度の南房総市)
県
コーディネーター
市町村
委託
委託
(主な業務)
・ニュースレター、ホームページの作成、
・キックオフフォーラム等の企画・運営
・各種会議の企画・運営
・活動団体の支援 ほか
活動費交付
活動団体
活動団体
活動団体
活動団体
2 広域で実施する場合や、より事業の効果が見込まれる場合は県と市町村で協議の上、県が、コー
ディネーターに事業全体を委託し、コーディネーターが活動団体に活動費を交付する。
(平成15年度の四街道市、我孫子市、平成16年度の市原市、浦安市、平成18年度の栄町、
西印旛沼流域、平成19・20年度の柏市、平成21年度の香取市、山武郡市)
県
コーディネーター
委託
活動費交付
協力
活動団体
市町村
活動団体
活動団体
活動団体
その他形態
1 県が、市町村に事業全体を委託し、市町村がコーディネーターにコーディネート業務と活動団体
への活動費の交付業務を委託する。
(平成16年度の我孫子市、平成17年度の浦安市)
※
県
市町村
委託
我孫子市の場合は、負担金の協定
コーディネーター(我孫子市は地域活性化推進委員会)
委託
活動費交付
活動団体
活動団体
活動団体
活動団体
2 県が、市町村に事業全体を委託し、市町村は自らコーディネートを行うとともに、市町村が活動
団体に活動費を交付する。
(平成16年度の四街道市)
県
市町村
委託
活動費交付
活動団体
126
活動団体
活動団体
活動団体
2 地域活性化プラットフォーム事業に係る協働推進専門委員会ワーキン
ググループについて
氏
名
所
属 団 体 等
鎌田 元弘
千葉工業大学工学部建築都市環境学科 教授
グループ長
國生 美南子
特定非営利活動法人
たすけあいの会ふきのとう 副代表
副グループ長
杉浦 美穂子
地域支援委員会代表
長峰 敏幸
浦安市市民経済部市民活動推進課長
牧野 昌子
特定非営利活動法人
ちば市民活動・市民事業サポートクラブ 代表理事
3
地域活性化プラットフォーム事業普及のための体験集作成までの軌跡
時期
平成 19 年
平成 20 年
5 月 14 日
5 月 26 日
7 月 29 日
10 月 17 日
11 月 16 日
11 月 18 日
12 月 17 日
12 月 22 日
12 月 24 日
平成 21 年
1 月 13 日
1 月 16 日
1 月 21 日
2 月 08 日
3 月 06 日
3 月 31 日
11 月 01 日
会議・調査等
関係者へのインタビューの実施
事業実施団体へのアンケートの実施
地域活性化地域活性プラットフォーム事業に係る協働推進専門委員会
ワーキンググループ設置
協働事業専門委員会第 1 回ワーキンググループ開催
協働事業専門委員会第2回ワーキンググループ開催
協働事業専門委員会第3回ワーキンググループ開催
地域活性化プラットフォーム事業座談会開催
活動団体へアンケート調査の実施(南房総市)
活動団体へアンケート調査の実施(柏市)
協働事業専門委員会第4回ワーキンググループ開催
プラットフォーム事業関係者インタビュー実施
活動団体へアンケート調査の実施(我孫子市、浦安市、市原市)
市町村合同インタビューの実施
一部のコーディネーター合同インタビューの実施
プラットフォーム事業関係者インタビュー実施
地域活性化プラットフォーム事業座談会第 2 弾開催
協働事業専門委員会第5回ワーキンググループ開催
協働事業専門委員会第 6 回ワーキンググループ開催
地域活性化プラットフォーム事業普及マニュアル作成
地域活性化プラットフォーム事業普及体験集として作成
127
執筆分担・協力者一覧(所属、役職等は平成 21 年 3 月現在)
■執筆者
第Ⅰ編
NPO法人ローカルアクション-シンクポッツ・まち未来 理事 辻利夫
千葉工業大学工学部建築都市環境学科 教授 鎌田元弘
第Ⅱ編
千葉工業大学工学部建築都市環境学科 教授 鎌田元弘
NPO法人ちば市民活動・市民事業サポートクラブ 代表理事 牧野昌子
NPO法人たすけあいの会ふきのとう 副代表 國生美南子
栄町住民活動支援センター 事務局長 山野井美和子
印旛・手賀沼環境あっぷ協議会 代表 岩波初美
地域支援委員会 代表 杉浦美穂子
千葉県商工労働部産業振興課 主査 湯下健一
千葉県県土整備部建築指導課 副主査 及川多恵
千葉県発『プラットフォーム事業』の経験則
千葉工業大学工学部建築都市環境学科 教授 鎌田元弘
■合同インタビュー・合同座談会協力者
NPO法人ローカルアクション-シンクポッツ・まち未来 理事 辻利夫
千葉工業大学工学部建築都市環境学科 教授 鎌田元弘
株式会社計画技術研究所 取締役 加藤 明
株式会社地域計画連合 主任研究員 山口智幸
印旛・手賀沼環境あっぷ協議会 代表 岩波初美
栄町住民活動支援センター 事務局長 山野井美和子
NPO法人たすけあいの会ふきのとう 副代表 國生美南子
NPO法人ちば市民活動・市民事業サポートクラブ 代表理事 牧野昌子
NPO法人柏市インフォーメーション協会 事務局長 藤田とし子
NPO法人千葉自然学校 事務局長 遠藤陽子
NPO法人千葉自然学校(南房総市大房岬少年自然の家 所長) 小松敬
柏駅周辺イメージ推進協議会ストリート・ブレーカーズ 代表責任者 市村日出夫
柏駅周辺イメージ推進協議会ストリート・ブレーカーズ 木ノ内珠貴
柏駅周辺イメージ推進協議会ストリート・ブレーカーズ 五十嵐泰正
四街道市経営企画部管財契約課 副主幹 宇田俊哉
我孫子市環境経済部商工観光課 主幹 杉山敦彦
浦安市健康福祉部障がい福祉課 課長 鶴見仲寛
浦安市総務部防犯課 副主査 吉泉 剛
栄町住民活動推進課 地域自治班 班長 奥野陽一
南房総市企画部企画政策課 主事 結縄宜隆
柏市市民生活部市民活動推進課 主査 後藤能成
千葉県環境生活部文化振興課 副主幹 吹野恭一
千葉県農林水産部農村振興課 副主幹 高安邦夫
千葉県商工労働部経済政策課 副主幹 召田充弘
千葉県商工労働部産業振興課 主査 湯下健一
■資料作成・アンケート実施協力者
千葉工業大学建築都市環境学科 鎌田研究室
地域活性化プラットフォーム事業関係団体
128
“千葉県発”ハラハラ・ワクワクの『プラットフォーム事業』
―プラットフォーム型事業の普及のための体験集―
平成 21年10月
発行・編集:千葉県環境生活部NPO活動推進課
〒260-8667 千葉県千葉市中央区市場町1-1
TEL043-223-4166 FAX043-221-5858
E-mail [email protected]
千葉県NPO情報ネット
http://www.chiba-npo.jp/index.html
129
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