...

状態A 状態B

by user

on
Category: Documents
3

views

Report

Comments

Transcript

状態A 状態B
2 学年
物理
「熱力学第二法則」
6.4.4
6.4.4 断熱変化
断熱変化
等温変化,定積変化,定圧変化に加えて,もう一つ状態変化を追加する.図のようにシリンダー内にピスト
ンで気体を閉じ込める.このピストンをごく短い時間で押すと,シリンダー内の気体は周囲と熱のやりとりを
行う前に圧縮される.このとき,シリンダー内の気体は圧力,体積,温度の 3 つが変化する.このように,周
囲と熱のやりとりが行わないで状態が変化する場合を[
]という.断熱変化における気
体の内部エネルギーの変化Δは,
と表せる.また,定積比熱 = Δ/Δより,[
]と表せる.
状態A
p
状態B
V
0
7.1 熱機関
この週までに,シリンダー内部の気体の状態変化,その状態変化を実現するための熱量や仕事の移動を学ん
できた.ここでは,気体に加えた熱量の一部を仕事として取り出す[
]について学ぶ.熱機関は蒸
気機関,ガソリンエンジン,ディーゼルエンジン,電気冷蔵庫に応用されている.
34
7.1.
7.1.1 蒸気機関
最初に蒸気機関を発明したのは,ニューコメン(イギリス, 1712 年)である.図にニューコメンの蒸気機関
の概略図を示す.まず,①ボイラーにより水を加熱し,水蒸気によりピストンを押し上げる.続いて,②シリ
ンダー内に冷却水を流し,水蒸気を凝縮させる.その結果,③シリンダー内部は真空に近い状態になり,大気
圧によってピストンが押し下げられる.このようにしてピストンの上下を利用し,石炭鉱山の湧き水をくみ上
げた.しかし,ボイラーに大量の石炭を使うという欠点があった.
7.1.
7.1.2 熱機関の効率
熱機関は基本的に 3 つの要素からなる.
まず,
熱量を受け取って,
それを仕事に変える[
その作業物質に熱を加える[
],そして,余った熱を捨てる[
ある.ニューコメンの蒸気機関を例にして考えると,作業物質は[
[
],
],低温熱源は[
い外に仕事をし,また最初の状態に戻る[
]で
],高温熱源は
]となる.作業物質は,最初の状態から膨張や収縮を行
]を行う.このとき,高温熱源から低
温熱源に必ず熱量のやりとりが発生する.
ある作業物質が,高温熱源から熱量
を受け取り,その一部で外に仕事を行い,残りの熱量 を捨てた
としよう.式で書くと以下のようになる.
また,高温熱源から受け取った熱量
のうち,どの程
度を仕事に変換できたかを以下で表す.
を[
]という.
35
7.1.
7.1.3 スターリングエンジン
スターリングエンジンは,1816 年にイギリスの牧師スターリングによって発明された.このエンジンは,外
部から作業物質に熱を伝える[
]である.そのため,排気物質が生じず,環境によいエン
ジンとして注目されている.
図に,スターリングエンジンの模式図を示す.2 本のピストンとシリンダーからなる.シリンダー内の作業
物質は,左右のシリンダーを行き来する.片方のシリンダーを加熱し,もう片方は冷却して作業物質に熱を与
えたり奪ったりする.2 本のピストンは,回転軸に回転角を 90°ずらして連結されている.
スターリングエンジンは以下の過程により動作する.①作業物質がほぼ高温側にあるので,高温側にある作
業物質は熱を得て,シリンダー内が高圧になる.それと同時にピストンを押し下げる[
],②
高温側のピストンは最下点から中央に,同時に低温側のピストンは中央から最下点へと動き,それと同時に熱
を失う[
],③作業物質がほぼ低温側にあるので,低温側にある作業物質は熱を奪われて,シ
リンダー内の圧力が下がる.それと同時にピストンから押される[
],④高温側のピストンは
最上点から中央に,同時に低温側のピストンは中央から最上点へと動き,それと同時に熱を得る
].以上,4 つの過程からなる.
Pressure
[
0
Volume
それぞれの過程でシリンダー内の気体の内部エネルギーがどのように変化したか,以下に示す.点 A から点
B までの変化において気体の内部エネルギーの変化はΔ,気体が得た熱量は ,気体がされた仕事は
というように,それぞれの物理量に添え字をつけて表す.
A → B
B → C
C → D
D → A
また,1 サイクルごとに気体の内部エネルギーは元に戻るので,
以上から,高温熱源から受け取った熱量
,外にした仕事,低温熱源に逃がした熱量 は,
36
7.1.
7.1.4 カルノーサイクル
熱機関の効率をあげるためには,低温熱源に逃がす熱量 をできるだけ小さくする必要がある.そのために
は,熱の移動が生じたときにできるだけ多くの仕事をすればよい.このように考え,理論的に最大の効率を持
つ熱機関を考案したのがカルノー(1824)である.上記のことを念頭に,4 つの状態変化を以下で比べる.
定圧変化:
等温変化:
断熱変化:
Pressure
定積変化:
以上の比較から,等温変化と断熱変化を組み合わせたサイ
クルの効率が最も高いと考えられる.
前節と同じように,それぞれの過程において,内部エネ
ルギー,熱量,仕事がどのように変化したか,以下に示す.
0
Volume
A → B
B → C
C → D
D → A
また,1 サイクルごとに気体の内部エネルギーは元に戻るので,
以上から,高温熱源から受け取った熱量
,外にした仕事,低温熱源に逃がした熱量 は,
37
7.2 熱力学の第二法則
熱機関は低温熱源へ放出する熱量をゼロに出来れば,最高の効率が得られる.これは,1つの熱源から吸
収した熱をすべて仕事に変換する装置である.このような熱機関を(
)という.
しかし,多くの経験的事実から,上記のような熱機関は実現不可能であることが明らかになっている.これ
より,熱力学の第二法則がつくられた.熱力学の第二法則は以下に示すように,いろいろな形式に表現されて
いる.
1.(
)
1 つの熱源から熱を取り,それをすべて仕事に変える以外に,何も変化を残さないような過程は不可能であ
る.または,1 つの熱源から熱を取り,それをすべて仕事に変えるようなサイクルは存在しない.
2.(
)
低温物体から熱を受け取り,それをすべて高温物体に移す以外に何の変化も残さないような過程は不可能で
ある.
高温熱源
高温熱源
低温熱源
低温熱源
7.3 可逆変化と不可逆変化
ある気体(または物質)が,状態Aから出発して状態Bになったとき,周囲に何の変化も残さないで状態B
に戻すことが可能ならば,この状態変化を(
状態Bに戻すことが不可能ならば,この状態変化を(
)という.逆に,周囲に何の変化も残さないで
)という.以下の例は,すべて不可逆
変化である.
熱力学第二法則は,すべての熱源小に不可逆過程が存在することを述べている.
38
例題 7-1
次の過程は可逆変化か不可逆変化か答えよ.
1.
コーヒーにミルクを混ぜる
2.
コーヒーに氷を入れて温度を下げる.
3.
アイスコーヒー(0℃)の中で氷が融ける.
例題 7-2
A から石を静かに放したところ,B での速度はであった.以下の場合,この変化は可逆であるか,不可逆である
か.
1.
空気の抵抗がない場合.
2.
空気の抵抗がある場合.
例題 7-3
次のピストンはいずれも摩擦がないとする.ピストンが右へ移動する過程は,可逆か不可逆か.
1.
次の図のピストンの左側が 2[atm],右側が 1[atm]であるとき.
1[atm]
2[atm]
2.
次の図のピストンの左側の内部が 2[atm]に,右側が 1[atm]に保たれているとき.
(左右のピストンは十分
に長くて,ピストンが多少移動しても,内部の圧力の変化は無視できるとする.
)
2[atm]
断面積S
1[atm]
断面積2S
39
例題 7-4
図に示すような熱機関が高温物体から吸収した
熱量が 500 J,低温物体に放出した熱量 が 425
J であった.残りの熱量はすべて仕事に変換される
とすると,得られた仕事は何[J]か.また,この
熱機関の効率は何%か求めよ.
例題 7-5
なめらかに動くピストンがついた容器に,気体を閉じこめた。
(1) ピストンにおもりをのせた状態で気体を加熱したところ,気体は膨張し,おもりは
上昇した。この過程で気体が吸収した熱量を 7.2 % 10 2 J,気体が外部にした仕事を
2.4 % 10 2 J とする。このときの気体の内部エネルギーの変化 l U 1 "J# を求めよ。
(2) 次に,おもりをピストンから下ろして容器を放置したところ,気体は熱を放出し
ながら収縮し,やがて初めと同じ状態 (同じ圧力 ! 体積 ! 温度) にもどったとする。こ
の過程で気体が外部からされた仕事を 2.0 % 10 2 J とするとき,気体が放出した熱量
を求めよ。
(3) (1),(2) の過程のくり返しを熱機関とみなしたときの熱効率 g を求めよ (分数で答え
てよい)。
40
例題 7-6
状態 A(圧力 ,体積)にある理想気体が定積過程を経て状態 B(2 ,)へ,次に定圧過
程を経て状態 C(2 ,3)へ移った.定積過程 A→B では 10[J]の熱を吸収,定圧過程 B→C で
は 80[J]の熱を吸収した.気体はさらに図に示すように,定積過程 C→D,定圧過程 D→A を経て
元の状態 A に戻った.すべての状態変化はゆっくりと行われ,定積比熱と定圧比熱は一定である
として,以下の量を求めよ.
1. 定積過程 A→B における内部エネルギーの変化Δ
定圧過程 B→C における内部エネルギーの変化
3.
Δ と気体が外からされた仕事
定積過程 C→D において気体が得た熱量
4.
定圧過程 D→A において気体が得た熱量 と
外からされた仕事
5.
この熱機関の効率
2P0
B
C
A
D
圧⼒
2.
P0
V0
3V0
体積
41
例題 7-7
理想気体では,断熱変化に際してその圧力と体積の間に
pV c =一定 (c は一定値) …… ①
の関係が成りたつ。
(1) ① 式とボイル ! シャルルの法則から,絶対温度 T と体積 V について成りたつ類似の関係式を導け。
(2) 気密なピストン付きのシリンダーに一定量のヘリウム (He) を封じ,急速にピストンを押しこんで
気体の体積をはじめの 1/10 倍にした。はじめの温度が 280 K だったとしたら,圧縮後には気体の温度
は何 K になるか。ただし,c=1.7 とし,10 1.7=50,100.7=5.0 とする。
(1) TV c-1 = 一定 (2) 1.4 % 10 3 K
42
例題 7-8
1 mol の単原子分子理想気体の状態を,図のように
B 0T 01
A . B . C . A の順序で変化させた。気体定数を
R とする。
4 A . B 5 :温度を T0 に保ったまま気体を圧縮した。
圧縮するための仕事は W 0 であった。
4 B . C 5 :断熱した状態で気体を膨張させた。このとき
気体の温度は T0 から TL まで降下した。
圧
力
等温圧縮
T=T0
断熱膨張
C 0 T L1
4 C . A 5 :圧力を一定に保ったまま外部から熱を加えて
気体を膨張させた。このとき気体の温度は TL から T0 まで上昇した。
等圧膨張
A 0T 01
体積
(1) A . B における内部エネルギーの変化 UAB と,A . B . C . A の内部エネルギーの変化 lU
を求めよ。
(2) A . B,B . C,C . A の変化で気体が吸収した熱量 QAB,QBC ,QCA を求めよ。
(3) A . B . C . A の変化で気体にされた全仕事 W を求めよ。
(4) A . B . C . A の変化で,QAB,QCA ,W の間に成りたつ関係式を書け。(W >0 であるので,
この関係式から QAB + QCA <0 である。すなわち,1 サイクルの過程で気体は仕事をされ,熱を
放出することがわかる。)
(1) UAB:0 lU:0 (2) W 0 -
5
5
R T - TL 1 (3) Q AB:-W 0 Q BC:0 Q CA : R 0T0 - TL1 2 0 0
2
(4) Q AB+ Q CA +W =0
43
Fly UP