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Title 地下水浸透流解析モデルのパラメーター推定: 推定の不確実 性と

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Title 地下水浸透流解析モデルのパラメーター推定: 推定の不確実 性と
Title
地下水浸透流解析モデルのパラメーター推定: 推定の不確実
性とその予測への影響( 本文(Fulltext) )
Author(s)
本城, 勇介
Citation
[土木学会論文集] vol.[400] p.[215]-[224]
Issue Date
1988-12
Rights
Japan Society of Civil Engineers (公益社団法人土木学会)
Version
出版社版 (publisher version) postprint
URL
http://repository.lib.gifu-u.ac.jp/handle/123456789/24259
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
215
【土 木 学 会 論 文 集
第400号/III-10
1988年12月
】
地 下 水 浸 透 流 解 析 モ デ ル のパ ラ メー タ ー推 定:
推 定 の不 確 実 性 とそ の予 測 へ の影 響
PARAMETER
ESTIMATION
ESTIMATION
OF NUMERICAL
UNCERTAINTY
MODELS
AND ITS
OF GROUNDWATER
INFLUENCE
FLOW:
ON PREDICTION
本 城 勇 介*・ 森 嶋
By
The purpose
of this
under new boundary
and geological
information.
uncertainties
meters
are
study is to propose
conditions
that
Also,
are present
estimated
based
with
special
involved
a procedure
on previous
in every
Yusuke
estimation
to predict
observations
emphasis
stage
HONJO
and
groundwater
and on prior
errors
based
First,
MORISHIMA
behavior
geotechnical
is given to the quantification
of the procedure.
Akira
章**
of the
the model para-
on observations
and the
prior information
by following an inverse analysis procedure.
Second,
the information
obtained is used as input to predict the future behavior of the groundwater
by introducing a stochastic
finite
element
procedure.
The final
outcome
of this
procedure
is the
prediction
of ground water under new boundary conditions with quantified
uncertainties
involved in it. A rather simple numerical example is attached
to illustrate
the results.
Keywords:
1.
groundwater,
inverse problem,
statistical
analysis,
FEM
メ ー タ ー値 の決 定 の問 題 を数 理 的 に 明確 に定 式 化 し, よ
ま え が き
り系 統 的 に行 お う と す る の が い わ ゆ る逆 解 析(モ
近 年 の 数 値 解析 計 算 技 術 の 発 展 に よ り, 地 下 水 の 挙 動
ラ メ ー タ ー の同 定)と
デ ルパ
い わ れ る方 法 で あ る. 地 下 水 浸 透
予 測 の 問 題 に お い て も, 有 限 要 素 法 な ど に よ り地 下 水 滞
流 解 析 モ デ ルへ の逆 解 析 手 法 の適 用 は, 地 盤 工 学 分 野 で
水 層 をモ デル 化 し, 解析 を行 う こ とが 多 い. 一 般 に地 下
は最 も逆 解 析 の研 究 の進 ん で い る分 野 の1つ と考 え られ
水 を含 む 地 盤 工 学 の 問 題 で は, この よ う な解 析 モ デル を
る. 最 近 で はTownley1), CarreraとNeuman2)な
どの
用 い る とき, そ の モ デ ル パ ラ メー ター 値 の 決 定 が 地 盤 の
包 括 的 な研 究 が あ り, ま た一 方 で はCooleyら3)に
よる
不 均 質性 な ど の た め, 構 造 工 学 の 問 題 な ど に比 べ て 困 難
大 規 模 な実 問 題 へ の適 用 例 も発 表 さ れ て い る. ま た わ が
で あ る. そ こで 地 盤 工 学 の 解析 で は, パ ラ メー ター 値 の
国 で も大 西 と井尻4), 青木と 嘉 門5)な ど の 研 究 が あ る.
決 定 に あ た り, 地 盤 調 査 ・土 質 試 験 な どの 結 果 に基 づ き,
今 後 は これ らの研 究 成 果 を ふ ま え, 実 問題 へ の適 用 を通
工 学 的 判 断 も加 え て, 一 応 パ ラ メー ター 値 を設 定 し解 析
じ, そ の改 良, 適 用 限 界 の把 握 な ど が行 わ れ て い くと考
を行 い, す で に 得 られ て い る観 測 結 果(た
え られ る.
とえ ば, 井 戸
の水 頭観 測 結 果 な ど)の 挙 動 が うま く説 明 で き るま で パ
本 研 究 は, 以 上 の よ う な地 下 水 浸 透 流 モ デ ル の逆 解 析
ラメ ー ター を 試行 錯 誤 に よ って 調 整 す る とい う手続 きが
の研 究 動 向 を ふ ま え, 実 問題 へ の適 用 を考 え た と き重 要
と られ る場 合 が 多 い. この よ うに して 得 られ た パ ラ メー
と判 断 さ れ る以 上 の2点 に特 に焦 点 を あ て考 察 を行 う も
ター値 を用 い る こと に よ り, 現 在 と は 異 な る 条 件 下 に お
の で あ る.
け る挙 動 の予 測 の精 度 が 向 上 す る と考 え られ る.
従 来 試 行 錯 誤 に よ っ て行 っ て い た 上 記 の よ うな パ ラ
(1)逆
解 析 に お け る事 前 情 報 の役 割 とそ の効 果
実 際, 地 下 水 滞 水 層 に つ い て逆 解 析 を行 お う と す る場
合, わ れ わ れ は井 戸 の水 頭 観 測 結 果 の ほ か に, 地 盤 調 査
*正 会 員
Ph. D.
(株)竹 中土 木
技 術 開発 本 部
竹中技術研究所 研究員
(〒136 江東区南砂2-5-14)
**正 会 員
(株)竹 中 土木 工 事 本 部
(〒104
中央区銀座8-21-1)
副 部 長(兼)
に基 づ い た地 質 学 的 情 報, ま た場 合 に よ っ て は 直接 あ る
い は間 接 的 な 方 法 に よ る水 理 定 数 に 関 す る情 報 な ど を
もっ て い る こ と が 多 い. 逆 解 析 に お い て これ らの情 報 は
事 前 情 報 と して役 立 て られ る わ け で, 本 研 究 で は特 に ご
216
本 城 ・森 嶋:
の事 前 情 報 の解 釈 と そ の推 定 結 果 へ の効 果 に つ い て検 討
に多 量 の デ ー タ が必 要 で あ る. 事 実, た と え ば観 測 が空
した.
間 内 の 隔 散 的 な点 で しか行 わ れ て い な い場 合 は, た と え
(2)逆
解 析 結 果 に基 づ い た 予測 の信 頼 性 の 評価
逆 解 析 を行 い モ デ ルパ ラ メ ー ター の推 定 を行 うの は,
地 下 水 が現 在 と異 な っ た条 件 下 で示 す挙 動 を予 測 す るた
め で あ る と い っ て よい. した が っ て 逆解 析 に よ って 推 定
観 測 が 時 間 的 に は連 続 して 行 わ れ た と し て もパ ラ メ ー
タ ー分 布 は 同定 不 可 能 で あ る.
以 上 の よ う に わ れ わ れ が 問題 と して い る地 下 水浸 透流
モ デ ル の逆 解 析 は, 本 質 的 に 同定 不 可 能 な 問題 で あ る.
さ れ たパ ラ メ ー タ ー の不 確 実 性 が最 終 的 な 予 測 に ど の よ
しか しこ の事 実 は わ れ わ れ が この 問題 に逆 解 析 手 法 を適
うな 影 響 を与 え る か を評 価 す る こ と は 重 要 な 問 題 で あ
用 す る こ と の有 用 性 を必 ず し も妨 げる もの で は な い と い
る. 本 研 究 で は, 逆 解 析 に よ って推 定 ざれ るパ ラ メー ター
うの が本 研 究 の立 場 で あ る. これ は以 下 の理 由 に よる.
値 の不 確 実 性 を そ の推 定 分 散 に よっ て 評価 し, さ ら にそ
われ わ れ が地 下 水 浸 透 流 を数 理 的 に モ デ ル化 す る と き,
の予 測 値 へ の伝 播 を確 率 有 限 要 素 法 に よ って 評 価 す る こ
そ こ に種 々 の近 似 や単 純 化 が入 っ て い る こ とは周 知 の事
と を試 み た. この よ うに観 測, 逆 解析, 予 測 とい う一 貫
実 で あ り, ま た観 測 デ ー タ も外 乱 の影 響 を免 れ る こと は
した流 れ と して解 析 を と らえ る こ とは, 求 め られ る予 測
で きな い. しか し なが ら われ わ れ は, この よ う に単純 化
の精 度 と, 事 前 情 報 量 や観 測 に よ って 得 られ る情 報 量 の
され た近 似 的 なモ デル が, 地 下 水 挙 動 につ い て工 学 的 に
関係 な ど を 考 え る うえ で も重 要 な こ とで あ る.
許 容 し得 る 範 囲 の 精 度 で 予 測 な ど に 役 立 つ と考 え て い
る. し たが って, われ わ れ が逆 解 析 を行 う と き も, 与 え
図一1に 本研 究 の 解析 の 手 順 を示 し た.
な お,
Neuman2)や
本 研 究 で は ふ れ て い な い が,
られ た情 報 の も と で, 地 下 水 挙 動 を工 学 的 に許 容 し得 る
池 の 情 報 量 基 準)
範 囲 の 精 度 で 近 似 的 に表 現 し得 る上 記 の よ う な工 学 的 な
大 西 ・井 尻4)がAIC(赤
Carrera・
な ど を用 い て行 っ て い る よ う な, 逆 解 析 に お け る統 計 的
モ デル のパ ラメー ターを推定 しよう としてい るので あ
な最 適 モ デ ルの 選 択, あ る い は モ デ ル ・パ ラメ ー ター の
る. この よ う な視 点 に立 つ と き, パ ラ メ ー タ ー の数 の限
数 の 限 定(parameterization)の
定(parameterization)や,
問 題 は, 後 述 す る と お
種 々の事前情 報の利 用の問
りき わ め て重 要 かつ 本 質 的 な 問題 で あ る が, 本研 究 で は
題 は, 逆 解 析 で は本 質 的 な 問題 と な る. わ れ わ れ は こ の
この 問 題 は一 応 お き, 上 記2つ
よ う な操 作 を通 じて, 本 質 的 に 同定 不 可 能 な 問題 に, 少
の 問題 に 限定 し考察 を進
め る. 最 適 モ デ ル の選 択 の 問題 は, 今 後 の課 題 と す る.
最 後 に逆 解 析 の1つ の重 要 な側 面 で あ る, 解 の 唯一 性
(uniqueness),
同 定 可 能 性(identifability)に
な く と も局 所 的 な解 の唯 一 性 を与 え る こ と に よ り, 工 学
的 に有 用 な モ デ ル を得 よ う と す る の で あ る.
つ いて
述 べ る. こ れ らの言 葉 の 定 義 に は や や混 乱 が あ る の で,
ま ず定 義 を与 え る こ と か ら始 め る.
2.
モ デ ル ・パ ラ メ ー タ ー の 推 定
(1)問
題の定式化
解 の唯 一 性 と は, 与 え られ た逆 解 析 の定 式 化 が, あ る
地 下 水 流 は本 来 三 次 元 的 な流 れ で あ る が, こ こ で は広
任 意 の観 測 結 果 に対 して, た だ1つ の パ ラメ ー ター の 組
域 地 下 水 問 題 な ど を 扱 う場 合 に 広 く行 わ れ て い る よ う
合 せ を与 え る こと で あ る. これ に 対 して 同 定 可 能 性 と は,
に, 地 下 水 の鉛 直方 向 の流 れ を無 視 し, 二 次 元平 面 問題
逆 解 析 の定 式 化 と は 関係 な く, 順 解 析 で 採 用 して い る 数
と して取 り扱 う. こ の と き の 支配 方程 式 は熱 伝 導 形 の偏
理 モ デ ル が あ る任 意 の観 測結 果 に 対 して, 数 学 的 に た だ
一
一組 の パ ラメ ー ター が対 応 して い る こ と をい う. 普 通,
微 分 方 程 式 に よ っ て与 え られ る. この 方程 式 を 与 え られ
問題 が 同定 可能 で あ れ ば, 逆 解析 の 解 は 唯 一 で あ るが,
要 素 法 を用 い る こ と に す る. この 定式 化 をマ トリ ック ス
この 逆 は成 り立 た な い. 文 献2)や6)で
表 示 す る と以 下 の よ うに な る7).
詳 し く述 べ ら
た初 期 条 件 と境 界 条 件 の もと で 解 くた め に こ こで は 有 限
れ て い る よ うに, 地 下 水 浸 透 流 解 析 が 基 礎 をお いて い る
⊿[θhk+1+(1-θ)hκ]+B(hk+1-hk)/⊿lk=Fk+θ
(1)
放 物 型 の 偏 微 分 方 程 式 の パ ラ メー ター 分 布 が 同 定 可 能 で
あ る ため に は, 普 通 地 下 水 観 測 で 計 測 され る よ りは るか
こ こ に, A:
ス, F:
透 水 量 マ トリ ッ クス, B:
貯 留 マ トリ ッ ク
系 へ の 流 出 入 量 に 関 す るベ ク トル, h: 時 間 ス
テ ッ プ を示 す 指 数, h:
節 点 水 頭 ベ ク トル, θ: 時 間 差
分 に 関 す る係 数, Atk=tκ+1-tκ:
こで, Aは 透 水 量 係 数(T)の,
時 間 差 分 で あ る. こ
Bは 貯 留 係 数(旦)の, 丑
は 各 種 の 流 出 入 量(境 界, 降雨, 揚 水, 注 水 な ど: Q)
の 関 数 で あ る. と こ ろ で, 透 水 量 係 数 丁 と 貯 留 係 数S
は, そ の対 数 変換:
図一1
解析手順の概念図
y=logT, C=logS
地 下 水 浸 透 流 解 析 モ デル の パ ラ メ ー タ ー推 定:推
定 の不 確 実 性 と そ の予 測 へ の影 響
が 正 規 分 布 に 従 う こ と が 知 られ て い る8). した が っ て 本
もの で あ る が, この 目 的 関 数 を最 小 化 す る こ と に よ って
変 換 して扱 う こ と にす る. ま た以 後 の 便 宜 を考
パ ラメ ー ター を推 定 す る こ との 意 味 につ い て, 統 計 学 的
え, Y, C,
Qは 一 括 し て パ ラ メ ー ター と よ びu=(Y,
C, Q)γで 表 わ す. 後 の 式 の 展 開 を 容 易 に す る た め, 式
(1)を
定 式 化 は, 重 み 付 き最 小 二 乗 法 と い われ る
Sは す べ て
論 文 で は統 計 的 な取 扱 い の 容 易 さ を考 えT,
Y, Cに
式(3)の
217
状 態 空 間 表 示 の 式 に書 き 直す と,
Cκ(u)hk+1=Dκ(u)hκ+fκ(u)
に は ベ イ ズ推 定 あ る い は最 尤 推 定 の2通
りの 代 表 的 解釈
が あ る.
2つ の解 釈 の違 い を 簡 単 に 説 明 す る. ベ イズ 推 定 で は,
(2)
こ こ に, Cκ=Aθ⊿tκ+B
推 定 しよ う と す る モ デ 川 パ ラメ ー ター 自身確 率 変 数 で あ
る と仮 定 す る. 推 定 の過 程 は, 技 術 者 が 求 め よ う とす る
Dκ=B-A(1-θ)⊿tκ
パ ラ メ ー タ ー に与 え た事 前 分 布 が, 得 られ た観 測 デ ー タ
fκ=AtkFκ+θ
に よ っ て ベ イ ズ の定 理 を通 じて更 新 され, 事 後 分布 を得
パ ラメ ー タ ー の 同定 を行 う方法 は, 一 般 に 直接 法 と 間
る過 程 と して記 述 さ れ る. 事 後 に お い て も推 定 され た パ
接 法 に分 類 され る9). 直 接 法 は, も し対 象 と して い る領
ラ メ ー タ ー は確 率 変 数 で あ る. ここ で は確 率 は一 貫 して
域全 体 に つ い て 水頭 と 水 頭 勾 配 の分 布 が わ か れ ば, これ
技 術 者 の確 信 の度 合 と して解 釈 さ れ る. な お, 以上 の よ
を た と え ば式(1)を
用 い る こと に よ りパ ラメ ー ター 値
う なベ イ ズ推 定 は, す べ て の確 率 変数 が正 規 分 布 に従 い,
に 直接 変 換 し推 定 で き る こ と を利 用 す る 方 法 で あ る. 実
か つ観 測 値 が, パ ラ メ ー ター の線 形 変換 に よっ て一 意 的
際 に は水 頭 観 測 値 は, 領 域 内 の 限 られ た 点 で しか得 られ
に 表 わ さ れ る と き 式(3)を
て い な い か ら, これ ら観 測 値 よ り任 意 点 の水 頭 と水 頭 勾
の平 均 値(ベ
最 小此 す るuが
事後分布
イズ推 定 値)に 成 る こと が 知 られ て い る.
配 を 内挿 す る必 要 が あ る. こ の 内挿 に は 当然 多 くの 誤差
した が っ て本 研 究 が 対 象 と して い る 地 下 水 浸 透 流 解析 で
が含 ま れ, こ の誤 差 は推 定 結 果 に大 き な影 響 を 与 え る.
は, 観 測値(水 頭)と
ま た 内挿 法 と して はKrigingな
立 しな い の で, 近似 的 に成 り立 つ だ けで あ る.
ど純 粋 に統 計 的 な方 法 が
パ ラメ ー ター の 間 に 線形 関係 は 成
と られ, 背 景 と な る数 理 モ デ ル が考 慮 さ れ る こと は な い.
一 方 最 尤推 定 で は, パ ラ メー ター は未 知 の 確 定 値 を も
以 上 の よ う な理 由 の た め, 比 較 的 観 測 点 が 少 な くか つ平
つ と考 え られ る. た だ し, 観 測 値 や, パ ラ メー ター の 事
面 的 に偏 っ て分 布 して い る実 際 問題 を対 象 と す る と き 直
前 推 定 値 に は, 観 測 誤 差 や, モ デ ル 化 誤 差 な どの ノ イズ
接 法 は必 ず しも適 当 な方 法 で は な い.
が 混 入 して い る と仮 定 して い る. 推 定 に よ って 得 られ る
こ れ に対 し間接 法 は, あ る 目的 関数(代 表 的 に は 各観
推 定 値 は, パ ラ メ ー タ ーの 最 尤 推 定 量 で あ り, そ の 誤 差
測 点 に お け る観 測 値 と計 算 値 の差 の二 乗 和)が 極 値 を と
は ノ イ ズ等 に 起 因 す る 推 定 誤 差 で あ る. も し水 頭 誤 差
る よ う にパ ラ メ ー タ ー を調 整 す る こ と に よ り推 定 を行 う
(hk-h*k)と
方 法 で, 直接 法 よ り計 算 時 間 は か か る も の の, 汎 用 性 に
変 量 正 規 分 布 す る と仮 定 で き, ま た 互 が 旦 の 線 形 変 換
豊 む方 法 で あ る. さ らに, 間接 法 は統 計 学 的視 点 か らは,
と して一 意 的 に表 わ さ れ る とす れ ば, 式(3)を
非 線 形 回帰 分 析 と して み る こ と が で き, した が っ て推 定
す るuが
さ れ たパ ラ メ ー タ ー の信 頼 性 な ど を定 量 的 に評 価 す る こ
パ ラ メ ー ター の 残 差 の 勉 一旦り が と も に 多
最小化
最 尤 推 定 量 と な る こ とが 容 易 に導 か れ る.
以 上 の よ う な2つ の 解 釈 の う ち, ど ち らの解 釈 が 適 当
とが で き る な どの 利 点 を もつ. 現 在 ま で に発 表 さ れ て い
で あ るか と い う こ と は一 概 に は い え な い. こ の よ う な解
る主 要 な包 括 的 研 究 はす べ て間 接 法 に よ っ て お り, 本 研
釈 の 違 い に よ り異 な っ て くる 側 面 は, (i)事
究 も この 定 式 化 に従 っ て い る.
推 定 結 果 さ らに予 測 結 果 の確 率 の意 味 づ け が異 な っ て く
以 上 よ り本 研 究 で は, 次 の 目 的 関 数 を 最 小 化 す る 駕
を選 ぶ こ と に よ って 行 われ る.
る, (ii)AIC(赤
池 の情 報 量 基 準)な
前分布 や
ど に よ り最 適 モ
デ ル を選 択 しよ う と す る と き解 釈 の違 い に よ り採 用 す る
基 準 が異 な り, した が っ て選 択 され る モ デ ル が異 な っ て
J(u)=Σkk=1Σkl=1(hk-h*κ)T(ρklVh)-1(hl-h*l)
くる可 能 性 が あ る, な ど が考 え られ る. 先 に 「ま え が き」
+(u-u')TV'u-1(u-u')
(3)
で も述 べ た よ うに, 本 研 究 で は モ デ ル選 択 の 問題 は扱 わ
こ こ に, h*k:
h時 刻 ス テ ップ に お け る水 頭 観 測 値 ベ ク
な い の で, これ ら2つ の 方法 の差 は確 率 の解 釈 の差 で あ
トル, u': uに
関 す る 事 前 平 均 値, ρkl: 時 間 間 隔 に関
る. これ は 多 分 に形 式 的 な もの で あ る か ら, 本 論 文 で は
す る観 測 水 頭 の 共 分 散, Vh:
平 面距離 に関 する観測水
頭 の 共 分 散 マ ト リ ック ス, V'u: uに
関 す る事 前 共 分 散
マ トリ ッ クス, κ: 観 測 時 刻 ス テ ップ数 で あ る. 式(3)
ど ち らの 方 法 を採 る か と い う選 択 は保 留 す る こ と と す
る.
な お, 以 上2つ の 立 場 の ほか に, 事 前 情 報 にあ た る も
で, 水 頭 に関 す る共 分 散 は, 時 間 に関 す る部 分 と平 面 距
の を, 統 計 解析 で 解 を安 定 させ る ため の フ ィル ター の よ
離 に関 す る部 分 に分 け る こ とが で き, か つ 全 共 分 散 は そ
う に考 え て 用 い る 方 法 が あ る. Cooleyの
の 積 に よ って 与 え られ る と仮 定 して い る2).
方 法 が これ に
当 た り, リ ッジ回 帰 分 析 の方 法 を拡 張 した も の で あ る10).
218
本 城 ・森 嶋:
統 計 解析 で は しば しば 用 い られ る 方 法 で あ る が, そ の 結
分 布 と して, 最 尤 推 定 の 立 場 に立 て ば推 定 共 分 散 と して
果 の 解釈 が 明確 で な い と ころ が 難 点 で あ る一
求 め られ る. と こ ろで, 本 研 究 が 対 象 と して い る地 下 水
(2)問
浸透 流 モ デ ル は, パ ラ メ ー タ ー に関 して 非 線 形 なモ デル
題 の解 法
最小 にす る 旦 の
で あ る か ら, これ に対 し上 記 の よ う な推 定 値 の 信 頼 性 を
組 合 せ を求 め る こ とに よ って 行 わ れ る. これ に は非 線 形
求 め る ため に は, こ れ を求 め られ た推 定 パ ラ メ ー タ ー 愈
関 数 を最 小 化 す る種 々 の 方 法 が 用 い られ る11). 一 般 に 目
に お い て 近 似 的 に線 形 化 し, 線 形 モ デ ル につ い て確 立 さ
的 関 数 が 式(3)の
よ う に二 乗 和 の 形 を して い る と き は,
れ て き た ベ イズ 推 定 や 最 尤 推 定 に お け る方 法 を用 い るの
の ア ル ゴ リズ ム が 計 算 時 間 を短 縮 す る
が 最 も一 般 的 な方 法 で あ り, 本 研 究 に お い て も この 方 法
パ ラ メ ー ター の推 定 は, 式(3)を
Gauss・Newton系
う え で 有 効 で あ る と考 え ら れ て い る. 実 際 最 近 の 大 西
ら4), 青 木 ら5)の研 究 で は, こ の 系 統 の ア ル ゴ リズ ム が
に 従 っ た.
い ま 式(3)を
最 小 に す る パ ラ メー タ ー の 組 合 せ 倉
用 い られ て い る. これ らの アル ゴ リ ズ ム を用 い る と き,
が 得 られ た と しよ う. uの 信 頼 性 を評 価 す る た め に ま ず
感 度 行 列 と よ ばれ る下 記 の 行 列 を効 率 よ く計 算 す る必 要
nで テ ー ラー 展 開 を用 い て シ ス テ ム を線 形 化 す る.
が あ る.
hk(u)=hk(u)+[dhk/duT]u=u(u-u)=Ψk+sku
sk=[∂hk/∂uT]
こ こ に, Φk=hk(u)-Sku,
Yeh9)は この行 列 の 計 算法 と して, (i)影
感 度 方 程 式 法, (iii)変 分 法 の3つ
の う ち(i)と(ii)は,
メ ー ター 数+1)回
方(iii)で
Sk=[∂hk/∂uT]u=u
響 係 数 法, (ii)
を 紹 介 して い る. こ
感 度 行 列 を求 め るの に(パ
ラ
方 程 式(2)を
解 く必 要 が あ り, 一
は, (観 測 点 数+1)回
解 く に相 当 す る計 算 量
な る定 数 ベ ク トル と定 数 マ トリ ック ス で あ る. 式(5)
を式(3)に
代 入 す る と,
J(u)=Σkk=1Σki=1(Φ
κ+Sku-h*κ)T(ρklVh)-1(-Φl+Slu-h*l)
+(u-u')TV'u-1(u-u')
が 必 要 で あ る. 青 木 ら5)は, (iii)の 方 法 に よ り感 度 行
以 上 の よ う な線 形 化 の 結 果,
列 を求 め て い る.
一 方, 一 般 的 な 非 線 形 関 数 の 最 小 化 手 法 と して 共 役 勾
配 法 系 の ア ル ゴ リズ ム が あ る11). この 方 法 で は, 目的 関
数Jの
(5)
(4)
パ ラ メ ー タ ーuに
関 す る 偏 微 分 値 ベ ク トル
(∂J/∂uT)を 求 め る必 要 が あ る. 前 記(iii)と
同様の考
え に立 ち, この 偏 微 分 値 を きわ め て迅 速 に計 算 す る随 伴
状 態 法 と よ ば れ る 方 法 がNeumanに
よ り地 下 水 の 逆 解
析 に も応 用 され て お り12),本 研 究 で は こ の方 法 に従 っ た.
(6)
この 問 題 はuに
関 する一
般 的 な 線 形 重 み 付 き最 小 二 乗 法 の 問 題 に帰 着 され, 線 形
モ デ ル に つ い て 確 立 され た回 帰 係 数 の 信 頼 性 の 検 討 方 法
を用 い る こ とに よ って, パ ラ メ ー タ ーの 信 頼 性 評 価 を行
う こ とが で き る.
ベ イズ 推 定 で も, 最 尤 推 定 で も式(5)の
線形近似 に
よ って 得 られ るパ ラ メ ー タ ー の信 頼 性 につ い て得 られ る
情 報 は形 式 的 に は同 じで あ っ て, 次 式 に よ っ て与 え られ
る.
この 方 法 で はパ ラ メ ー タ ー数 にか か わ りな く式(2)を
2回 解 くに 相 当 す る 計 算 量 で, (∂J/∂uT)を 求 め る こ と
が で き る. 随 伴 状 態 法 の 詳 細 は, 付 録Aを 参 照 さ れ た い.
y"u=[1/σ2hΣkk=1Σkl=1Sk(ρklVh)-1Sl+V'-1u]-1
(7)
こ こ に,
随 伴 状 態 法 を採 用 したの で, 本 研 究 で は, 共 役 勾 配 法
系 の ア ル ゴ リズ ム で あ るFletcher-Reeves法(以
法)お よ びDavidson-Fletcher-Powell法(以
の2つ を 用 い比 較 した. 同 様 の 比 較 はTownley1),
reraとNeuman2)に
DFP法
下FR
下DFP法)
Car-
よ っ て も 行 わ れ て い る. 前 者 は
が 収 束 が よ い と し, 後 者 はFR法
が優れ ている
と して い る. 本 研 究 で計 算 した か ぎ りで は, FR法
が 収 束 が よい と思 わ れ た. な お, FR法
の方
あ る い はDFP
法 で探 査 方 向 を決 定 して か らの 一 次 サ ー チ は, 二 次 曲 線
当 て は め 法 に よっ て行 っ た.
(3)推
定 され た パ ラ メー タ
σ2h=Σkk=1[hk(u)-h*k]T[hk(u)-h*k]/NK-M
な お, こ こ に, Nは
観 測 地 点 数, Mは
全推定パ ラメー
タ ー数, Kは 観 測 時 間 ス テ ッ プ数 で あ る.
式(7)は
ベ イ ズ推 定 で は 事 後 分 布 の 共 分 散 マ トリ ッ
クス, 最 尤 推 定 で は推 定 誤差 共 分 散 マ トリ ッ クス と 解釈
され る.
VecchiaとCooley13)は
最 近, 近 年 得 られ た非 線 形 回
帰 分析 にお け る新 しい 信 頼 性 区 間 の 求 め方 を, 地 下 水 逆
解析 に よ って 得 られ た結 果 に適 用 す る こ と を検 討 して い
の 信 頼性
推 定 され た パ ラ メー ター の 信頼 性 を定 量 的 に求 め る こ
る. 彼 ら は, 上 に示 した よ う な線 形 化 近 似 に よ る方 法 で
とは, 逆 解析 結 果 を評 価 す る うえ で も, これ らパ ラ メー
は, 信 頼 性 区 間 を過 少 に評 価 す る場 合 が あ る と述 べ て い
ター を用 い て 予 測 を行 う うえ で も非 常 に重 要 で あ る. こ
る. パ ラ メ ー タ ー推 定 信 頼 性 の 精 度 の よ い評 価 法 は, 今
の よ う な 評 価 は, ベ イ ズ 推 定 の 立 場 に立 て ばuの
後 の 残 され た問 題 の1つ
事後
で あ る.
地 下 水 浸 透 流 解 析 モ デル の パ ラ メ ー タ ー推 定:推
定 の不 確 実 性 と そ の予 測 へ の影 響
219
る必 要 が あ る.
3.
パ ラ メー タ ー の 不確 実性 を考 慮 した予 測
先 に も述 べ た よ うに 本研 究 で は, 事 前 情 報 と観 測 デ ー
4.
計 算例 お よび 考 察
タに基 づ い て 推 定 され た パ ラ メー ター を用 いて, そ の 不
本 章 で は, 比 較 的 簡 単 な 計 算 例 題 を用 い て, 前 章 まで
確 実性 も含 め て 予測 を行 い, 最 終 的 な 予 測 結 果 の 不 確 実
に 述 べ て き た もろ もろ の 点 に つ い て 例 示 し, 考 察 を加 え
性 を評 価 す る こ と を研 究 の 目的 の1つ
る. 例 題 と して取 り上 げ るの は, 図 一2に 示 す よ うな 滞
と して い る. この
た め に は, 解 析 モ デ ル を1つ の シス テ ム と して 考 え た場
水 層 で あ る. この 滞 水 層 は, 透 水 量 係 数(T)と
合, 入 力 で あ るパ ラ メー ター の 不 確 実 性 が, この シ ス テ
数(S)の
ム 内 を伝 播 し, 最終 的 な 出 力(水 頭 や 流 量)の 不 確 実 性
右 上 よ りあ り, 左 下 の 定 水 頭 境 界 よ り流 出 が 生 じて い る.
に どの よ うに 影 響 す るか を, 定 量 的 に評 価 しな けれ ば な
設 定 したT, S,
らな い. この 評 価 を, 本 研 究 で は一 次 近 似 二 次 モ ー メ ン
図 一3に は有 限 要 素 分 割 図 を示 し た. ま た図 一4は,
ト法(FOSM法)に
記 の よ うな境 界 条件 下 に お け る定 常 状 態 の 水 頭 分 布 を示
基づ いた確率有 限要素法 に基づ い
て 行 っ て い る. FOSM法
を地 下 水 浸 透 流 有 限 要 素 法 解
析 に 用 い た 研 究 と し て は, Sager14)やDettingerと
貯留係
異 な る4っ の ゾー ン よ り成 り, 流 入(Q)が
Qの 真 値 は 図 中 に 示 す とお りで あ る.
上
した. 初 期 水頭 は, この 分 布 に 従 う もの とす る.
以 下(1)で
は, 逆 解析 を種 々 の 要 因 を変 化 させ て 行 っ
Wilson15)の も の が 知 ら れ て い る. ま た, Townley1)は,
た 場 合 の 結 果 お よ び そ の 考 察 を 述 べ, (2)で
本研 究 と同様逆 解析結 果 を用 いて確率有 限要素 解析 を
析 結 果 に基 づ き確 率 有 限 要 素 法 を用 い た 行 っ た予 測 結 果
行 って い る.
を示 し, 考察 を 行 う.
式(2)に
与 え られ る有 限 要 素 法 は, パ ラ メ ー タ ーu
を 入 力 と し, 各 時 刻 に お け る接 点 水 頭hを
出 力 とす る,
1つ の非 線 形 シス テ ム と み る こ とが で き る. す な わ ち,
hκ=Fk(u)
(k=1,
…, K)
(8)
こ こ に 旦 は, 平 均 豊(逆 解 析 に よ る推 定 値),
トリ ッ ク ス γ"u(式(7)で
与 え られ る マ トリ ッ ク ス)
を もつ, 確 率 変 数 で あ る. FOSM法
ず 式(8)を
共分散マ
(1)逆
解 析 の 計 算 例 お よび 考 察
逆 解 析 に用 い る 水 頭 観 測 値 と して は, 図一3に 示 す よ
う に, 対 象 滞 水 層 の 中 央 部 分 の 井 戸 よ り1000m3/day
の 揚 水 を約100日
間 続 け, この と きの 水 頭 観 測 結 果 を用
い る も の と す る. 揚 水 に よ り, 揚 水 井 に 近 い 観 測 井 で8
∼10m,
遠 い観 測 井 で も2∼3mの
水 頭 変 化 が あ り, こ
の 手 順 に従 い, ま
豊 で線 形 化 す る と,
hk=Gku+b
(9)
こ こ に, Gk=[∂Fk/∂ur]u=u
6=Fk(u)-Gκu
式(9)を
用 い て, 節 点 水 頭 の 平 均 値 お よび 共 分 散 の1
次 近似 は, 次 の よ うに 求 め られ る.
nkh=E[hκ]=Fκ(u)
(10)
Hkh=E[(hκ-mkh)(hk-mkh)T]=GκV"uGkT
(11)
式(10),
(11)に
よ って, 各 節 点 水 頭 の 予 測 値 の 不 確 実
性 は定 量 的 に 評 価 され る.
近年, 地 盤 工 学 の他 の分 野 で も確 率 有 限 要 素 法 は応 用
図一2設
定 モデル
され, 地盤 の不 均 質性, 外 力 の ば らつ きな どが 最 終 的 な
構造 物 の信 頼 性 に 与 え る影 響 に つ い て 評 価 を行 う試 み が
な され て い る 一 この と き空 間 的 に 分 布 す る パ ラ メー ター
の 自 己相 関構 造 を解 析 に 考慮 しな い と, 著 し く真 値 と異
な っ た 計算 結 果 を得 る こと もあ り得 る こ とが 指 摘 され て
い る. こ れ に対 し, 本 研 究 が行 っ て い る よ うに, 逆 解 析
に よ っ て得 られ たパ ラ メ ー タ ー の共 分 散行 列V"uを 確 率
有 限 要 素 法 の 入 力 と す れ ば, パ ラメ ー ター の 空 間 的 自己
相 関 構 造 は あ る 程 度 自動 的 に考 慮 さ れ て い る こ と に な
る. い う ま で も な く観 測 井 戸 分 布 の 偏 り等 の 影 響 が π
の共 分 散 行 列(式(7))に
影 響 を与 え る こ と は注 意 す
は, 逆 解
図-3
要 素分割 図
220
本 城 ・森 嶋:
●---Observation
觀 測 井 戸 の 配 置:
図一4 初 期水 頭分布図
觀 測 井 戸 の 配 置: W2
觀測 井 戸 の 配 置:
W1
觀 測 井 戸 の 配 置: W3
図 一5(a)観
れ を 用 い て逆 解 析 を行 っ た.
計 算 例 は, a)事
W0
Well
觀 測井 戸 の 配 置:
W4
測井戸配置図
前 情 報 を 考 慮 しな か っ た 場 合 と, b)
事 前 情報 を 考慮 した場 合, の2通
りに 大 別 され るの で,
以 下 この順 序 に従 っ て述 べ る.
a)事
前 情 報 を考 慮 しな か っ た場 合(シ
これ は式(3)で
第2項
リー ズI)
を考 慮 せ ず に 推 定 を行 った 場
合 に 相 当 す る. この 場 合 検 討 した 種 々 の 要 因 と, 計 算 ケ ー
図一5(b)観
ス名 の 対 応 を 表一1に 示 し た. こ の計 算 例 は, 井 戸 観 測
値 間 の 平 面 的 相 関 構 造 を考 慮 しな い場 合(I-1シ
と, 考慮 した場 合(I-2シ
リー ズ)の2つ
平 面 的 相 関 構 造 と は, 式(3)の
リ ー ズ)
に大 別 され る.
覧 マ トリ ック ス に よ っ
測 頻 度 と時 間間 隔
は100日 間 に9回 の観 測 を行 っ た場 合 で あ る.
(iii)観 測 ノイ ズ: 逆 解 析 に用 い た観 測 は, す べ て を
真 値 に設 定 し, 25番 節 点 よ り1000m3/dayの
揚 水 を行
て表 わ され る もの で, 個 々の 井 戸 にお け る観 測 値 が 独 立
うと い う条 件 で 問題 を 解 き, この と きの 各 観 測 井 戸位 置
で あ る と仮 定 され る と き この 共 分 散 マ トリ ック ス 覧 は
に お け る 水頭 変 化 に 所 定 の ノ イ ズ を加 え る こ とに よ り生
対 角 要 素 の み に零 で な い 要 素 を もつ マ トリ ッ ク ス で あ
成 した. この と き加 え られ た ノ イズ の性 質 を 次 の3種 類
る. 一 方, 相 関 構 造 を考 慮 す る場 合 は, 各 井 戸 の 観 測 値
と した. N0は,
は そ の 相 互 間 の 距 離 な ど に応 じ た相 関 を 考 慮 し, し た
均0,
が っ てyhは
と して ノ イ ズ を加 え た場 合 と す る.
対 角 要 素 以 外 に零 で な い 要 素 を含 む 対 称 マ
トリ ック ス と な る. 本 計 算 例 で は, 一 様 に 自己 相 関 関 数
exp(-Ax/4000(m))に
よ ってVhの
こ こ に 自 己 相 関 距 離4000mは,
ン が3kmと
各 要 素 を求 め た.
分 散1. 0の,
ノ イ ズ を 全 く加 え な い 場 合, N1は
N2は
平 均0,
平
分 散9. 0の 正 規 乱 数
今 回 の検 討 で は, あ る程 度 の ノ イズ が 存 在 す る の が 標
準 的 な 状 態 と 考 え, W0T0N
1の ケ ー ス を標 準 ケ ー ス と
本 設 定 モ デ ル で各 ゾ ー
して, こ れ と比 較 して種 々 の 要 因 の 影 響 を調 べ た. な お
大 き い こ と に よ り, この オ ー ダー を表 わ す
先 に ま え が き で述 べ た よ うに, 本 報 告 で は最 適 モ デル の
値 と して設 定 した. この よ う に平 面 的 相 関 構 造 を考 慮 す
選 択 の 問題 は論 じな い の で す べ て の ケ ー ス で, ゾ ー ン数
る こ と は, パ ラ メ ー タ ー推 定 に お い て観 測 値 に相 対 的 な
を4個
重 み を考 慮 す る こ と に な る.
の 合 計10個
以 上 の よ う に2つ に 大別 した う え で, 以 下 の 要 因 に つ
い て考 察 した.
(i)観
2とW3は
測 井 戸 の数 と平 面 的 分 布: 図 一5(a)に
示す
最 も密 に配 置
粗 に, しか し対 称 に配 置 した場 合. W
そ れ ぞ れ, ゾ ー ン2と ゾ ー ン4に 偏 っ て配
置 し た場 合 で あ る. ま たW4は,
観 測井戸 数が極端 に
少 な い 場 合 の例 で あ る.
(ii)観
3つ の 場 合 を考 え た. T0は,
行 っ た場 合 で あ る. T1とT2は
最 初 の20日
の流 入 量(Q)
計 算 の打 ち切 り条 件 と して は, 連 続 した2回 の 共 役 方 向
与 え られ るJ(u)が1%以
上 改 良 され な い と き は計 算 を打 ち切 る と い う基 準 を, す
べ て の ケ ー ス で 一 律 に 採 用 し た.
表一1に シ リー ズ1の 推 定 結 果 を 示 した. な お, 推 定
に 際 して 設 定 し た各 パ ラ メ ー タ ーの 初 期 値 も合 わせ て表
に 示 して あ る. 結 果 と して は, 各 パ ラ メ ー タ ーの 推 定 値
お よ び, 求 め ら れ た事 後 共 分 散 マ トリ ック ス の 各 パ ラ
測 頻 度 と時 間 間 隔: 図一5(b)に
を減 じ, T1は
よ びSと2個
の パ ラ メ ー ター を同 時 推 定 す る. ま た 推 定
へ の 収 束 計 算 で式(3)で
よ うな5つ の パ ター ンを設 定 した. W0は
した場 合. W1は
と し, 4個 のTお
示 す よ うな,
100日 間 に17回
の観 測 を
と も に9回 に観 測 回 数
間 に観 測 を 集 中 させ, T2
メー ター に対 応 す る対 角 要 素 の平 方 根 を標 準 偏 差 と して
示 し, 推 定 精 度 の 目安 と した. ま た事 後 共 分 散 マ トリ ッ
ク スの トレー ス(tγ(V"u))を
示 し, こ れ に よ っ て各 ケ ー
ス の 相 対 的 な推 定 精 度 を比 較 す る指 標 と した.
地下 水浸透流解析 モデルのパ ラメー ター推定: 推定の不確実性 とその予測 への影響
表-1事
前 情 報 を考 慮 しな い場 合 の ケ-ス
ス ター
デ ィ結 果(シ リ ーズI)
井戸観測値間の平面的相関構造 を考慮 しない場合
表-1(a)は,
221
井戸観測値間の平面的相関構造 を考慮 した場合
平 面 的 相 関 構 造 を考 慮 しな い 場 合 の 観
行 わ なか っ た ケ ー スT2の
精 度 は最 も劣 る. T0の
精度
測 井 戸 の 数 お よ び配 置 パ タ ー ンが 推 定 結 果 に与 え る影 響
が 最 も よ い の は 当然 と して, T1がT2よ
につ い て調 べ た もの で あ る. tr(y"u)を 比 べ る と, 観 測
の は, 揚 水 開 始 直 後 の 水 頭 変 化 の 著 しい 時 間 に 観測 が集
井 戸 数 の 最 も多 い ケ ー スW0が
他 に 比 べ て大 きな 値 を
中 して い るた め と考 え られ る. 以 上 の事 実 は, 平 面 的相
と り, 推 定 精 度 が 劣 っ て い る こ と を示 して お り, 奇 異 に
関 構 造 を考 慮 す る しな い に か か わ らず, 共 通 に み られ た.
思 わ れ る. 一 方 表-1(d)の
平 面 的 相 関 構 造 を考 慮 した
り優 れ て い る
観 測 ノ イズ の 影 響 も きわ め て 明 解 に 現 わ れ た. す な わ
場 合 は, tγ(V"u)で 比較 し た各 ケ ー ス の推 定 精 度 は, 観
ち推 定 誤 差 は, ノ イズ が 小 さい ほ ど小 さか った. 特 に,
測 井 戸 数 と ほ ぼ整 合 した値 を示 して い る. こ れ よ り表 一
平 面 的 相 関 構 造 を 考 慮 し ノ イ ズ が 零 の 場 合(ケ ー スI
-2-W0T0N0),
推 定 値 は真 値 に き わ めて 近 くな って い る.
1(a)の
場 合 相 関 構 造 を考 慮 し て い な い た め, 観 測 値 間
の ウ ェ イ トが う ま く調 整 さ れ ず, W0の
場 合, 観 測 井 戸
の 多 さ が か え っ て妨 げ と な り, 観 測 井 個 数 は 少 な い が そ
れ が 全 領 域 に う ま く分 散 して い る ケ ー スW1の
い推 定 を与 え て い る こと が ケー スI-1-W0T0N
精 度 が 劣 る理 由 と思 わ れ る. ケ ー スW2とW3は
ぞ れ ゾ ー ン2と4に
方がよ
1の 推 定
それ
偏 っ て観 測 井 戸 を配 置 した 場 合 で あ
b)事
前 情 報 を考 慮 し た場 合(シ
リー ズID
表 一2に シ リー ズIIの 計 算 ケ ー ス お よ び そ の結 果 を 示
した. こ の シ リー ズ で は 観 測 井 戸 の 配 置 をW0とW4
(図-5(a)参
照)の2通
り と し た. W0は
測 井 戸 が 配 置 され て い る場 合 で あ り, W4は
か な り密 に 観
きわ め て 粗
な場 合 で あ る. 以 上 の も とで さ ら に事 前 分 布 の 平 均 値 が
る が, そ れ らの ゾ ー ンが こ れ らの ケ ー ス で特 に顕 著 に精
真 値 よ り相 対 的 に 隔 た っ たP0,
度 よ く推 定 され て い る と は い い き れ な い. ま た ケ ー ス
近 したPO',
W4は
2脚 注 参 照). ま た 事 前 分 布 の 共 分 散 に つ い て は, 表一2
観 測 井 戸 が極 端 に少 な い場 合 で あ る が, 推 定 値 は
P1',
P2',
予 想 以 上 に真 値 に近 づ い た. しか しそ の推 定 誤 差 は 大 き
脚 注 に 示 す よ う に, P0,
く観 測 点 数 の 少 な さの影 響 が この 点 に 現 わ れ て い る.
で はlogTや10gSの
表 一1(b),
(e)に 示 した, 観 測 頻 度 や 時 刻 を 変 化 さ
8の 一 桁),
せ た ケ ー ス で は, そ の影 響 が 明確 に 現 わ れ て い る. す な
の2割
わ ち, 観 測 頻 度 の 最 も多 い ケ ー スT0で
P2,
P1,
P3'の2つ
P0'で
P2,
P 2'はP1,
接
に 大 別 した(表 一
は 無 情 報, P1,
標 準 偏 差 が1. 0(す
の 値 と した. ま たP3,
P3と,
P1'
な わ ちTや
P 1'で 設 定 した 標 準 偏 差
P3'で
は, パ ラ メ ー タ ー
は精 度 は最 も
間 に若 干 の相 互 相 関 を考 慮 した. こ の シ リー ズの 推 定 で
よ く, 続 い て揚 水 を開 始 し て か ら20日 間 に9回 の観 測
は すべ て の ケ ー ス で, 水 頭 観 測 値 の 平 面 的 相 関 構 造 を シ
を行 っ た ケ ー スT1が
リー ズ1-2と 同 様 に考 慮 して い る.
よ く, 100日 間 に9回 の観 測 しか
222
本 城 ・森 嶋1
ま ず 表-2(a)に
よ っ て, 事 前 分 布 の平 均 値 が 推 定 に
与 え る影 響 を み る. まずP0とP0'を
す る こ と は十 分 現 実 的 で あ る. P0',
P1',
P2'の 比 較
比 較 す る と, 両
か ら も同 様 の こ とが い え る. 以 上 よ り, 事 前 分 布 を推 定
者 が 無情 報 で あ る に もか か わ らず, 異 な った 推 定結 果 を
に用 い る こ と は, パ ラ メ ー タ ー の推 定 誤 差 を現 実 的 に評
与 え る の は, 初期 設 定値 が 異 な る た め, 異 な る 収 束 値 へ
価 す る う えで 有 効 で あ る こ と が わ か る.
収 束 した た め で あ る. P0とP1を
比 較 す る と, P1の
表-2(b)は,
観 測 井 戸 の配 置 が きわ め て粗 なW4の
方 が 真 値 に 近 い 推 定 値 を与 え て い る. これ は事 前 分 布 に
場 合 で あ る. ケ ー スP-,
よ って 推 定 値 に 制 約 を加 え た た め で あ り, この 結 果 た と
推 定 結 果 を得 た. 一 方P0',
え ばTl,
真 値 に近づ い た
値 は事 前 分 布 の平 均 値(二 初 期 設 定 値)か
もの と考 え られ る. 一 方P0'とP1'を
比 較 す る と, こ
か ず, 観 測 デ ー タ が推 定 に ほ と ん ど寄 与 して い な い こと
れ らの ケ ー ス で は, 無 情 報 のP0'の
方 がわずか で はあ
T2,
T4が
拘 束 さ れT3は
が わ か る. PO以
るが, 真 値 に近 い推 定 値 を与 えて い る. これ は事 前 情 報
に よ っ てuを
P1,
P3で
Pl',
は予 想 外 に よ い
P2',
P3'で
は推 定
らほ と ん ど動
下 の ケ ー ス の推 定 値 が, P-'以 下 の ケ ー
スの そ れ よ り, か な り良好 で あ っ た 理 由 は必 ず し も明解
拘 束 し た こ とが か え っ て 正 確 な推 定 を妨
で な い が, そ の1つ の原 因 が この 計算 で採 用 した収 束 計
げ る 場 合 が あ る こ と を 示 して い る. この こ と はP2'の
算 の 打 ち切 り方 に 関係 して い る と 思 わ れ る. す な わ ち,
と き よ り明 瞭 に な っ て い る. こ こ で示 した例 題 で は, 以
初 期 値 の設 定 が真 値 に近 い と か え っ て 連続 した2回 の 共
上 の 結 果 だ けか ら事 前 情 報 の有 効 性 を議 論 す る こ と は 困
役 方 向 に お け る 目 的 関数 の 改 良率 が悪 く, 計 算 が 早 く打
難 と思 われ る. 事 前 情 報 の 有 効 性 は, む しろ次 の推 定 誤
ち切 られ る こ と が あ る と考 え られ る.
差 の大 き さ に現 わ れ る の で, 次 に こ の点 に議 論 を進 め る.
表 一2(a)のP0,
P-'の 無 情 報 の 場 合,
そ の誤 差 は極 端 に 大 き く, 大 きな 推 定 誤 差 を含 む こ と を
は前 記 の順 序 で ほ ぼ1桁 ず つ減 少 して お り, 事 前 分 布 を
物 語 っ て い る. 事 前 分 布 を考 慮 して い るケ ー ス で は, 推
与 え た こ と の影 響 が 明確 に現 わ れ て い る. ま た これ に付
定 誤 差 は か な り小 さ くな っ て い る が, 表-2(a)の
随 して, 各 パ ラメ ー ター の推 定 誤 差(=事
ス と比 べ る と ほ と ん ど の ケ ー ス で か な り大 き く, 観 測
やlogSの
P2を
推 定 誤 差 を み る と, ケ ー スP-,
比 較 す る と, tγ(V"u)
偏 差)も
P1,
減 少 して い る. 特 にP1は,
分 散 を1-0と
後 分 布 の標 準
事 前 分 布 の10gT
ケー
デ ー タ数 の 少 な い こ とに よ る推 定 精 度 の 悪 さが, 明 確 に
した場 合 で あ り, これ は これ ら
現 わ れ て い る.
パ ラメ ー ター の標 準偏 差 と して 一桁 を設 定 して い る こ と
(2)不
に相 当 し, この程 度 の精 度 で 透 水 量 係 数 等 を事 前 に推 定
前 節 で推 定 した パ ラ メー ター を入 力 と して, 新 しい 条
表 一2事
前情 報 を考 慮 した 場 合 の ケ ー ス ス タデ ィ結 果(シ
観測井戸がかな り密に配置 されている場合
・P0', P1,
P2, P3の 平 均値 は、
P2',
u=(2.0,
P3, の平 均値 は、
・共分数行列は、以下の通り.
2.0, 2.0, 2.0, -3.52, -3. 52, -3. 52, -3. 52, 0.25, 0.25)と
u'=(1.48,
した.
2.18, 1.48, 2.18, -3, 40, -3.82, -3. 40, -3. 82,0.25, 0.25)
P0, P0
と した.
P1, P1,
+
P2, P2':
1.0
0
P3, P3'
0.04
1.0
1.0
0
リ ー ズ 皿)
観測井戸 がきわめて粗 に配置されている場合
柱1)す ぺてのケースで水頭觀測網の平面的相関構造壱考慮している.
注2)事 前分布の平均と共分融行列は、以下のように殴定している.
・P0, P1,
確 実性 を考 慮 した 予 測
0.04
1.0
+
1.0 0.0 0.5 0.0
1.0 0.0 0.5 0
1.0 0.0
1.0
0.04
0
0
0.04
1.0
0.09
1.0
1.0 0.0 0.5
0.04
1.0
0.04
0 1.0
0 0.04
0.04
0.04
sym.
0.0025
0.0
1.0 0.0 0.5
1.0 0.0
1.0
0.04
0.0025
-0.02
0.04
地 下 水 浸 透 流 解 析 モ デ ル の パ ラメ ー ター 推 定: 推 定 の 不 確 実 性 と その 予 測 へ の 影 響
●
Disdar6e
8
Well -200m3/day
(a)平 均水頭と揚水井戸配置
図 一62つ
Discharge Well
(b)水 頭の標準偏差
-200m3/day
●
Discharge
図-7
件 下 に お け る水 頭 分 布 の 予 測 を確 率 有 限 要 素 法 に基 づ い
て 行 った. 新 し く設 けた 条 件 は, パ ラ メ ー タ ー推 定 時 の
-500m3/dav
2つ の井 戸 か ら揚 水 した場 合 の 水 頭 分 布 の 予 測(W0T0N
lP2'に
よ る パ ラ メ ー ター の 推 定 値 を 入 力 とす る場 合)
Well
(b)水 頭の標準偏差
(a)平 均水頭と揚水井戸配置
の 井 戸 か ら揚 水 した場 合 の 水 頭 分 布 の 予 測(W0T0N
1P0'に
O
DischargeWell -500m3/day
223
よ るパ ラ メ ー タ ー の推 定 値 を 入 力 と す る 場 合)
結 論 は以 下 の とお りで あ る.
(1)水
頭 観 測 結 果, 事 前 情 報 に基 づ きパ ラ メー ター
滞 水 層 中 央 部 か らの 揚 水 を や め, 図 一6に 示 す よ う な2
を推 定 し, これ を入 力 と して 不 確 実 性 を含 め 将 来 の 地 下
か 所 の 井 戸 か らそ れ ぞ れ200m3/dayと500m3/dayの
水 環 境 を予 測 す る手 法 を, 1つ の シ ス テ ム と して 提 案 で
水 を行 う も の で あ る. 図-6に,
揚
ケ ー スII-1-W0T0N 1
P0'で 推 定 し た パ ラ メ ー ター 値 を 入 力 し た場 合 の定 常
きた.
(2)例
題 を通 じて, 観 測 井 戸 の 数 と分 布, 観 測 頻 度,
平 均 水 頭 分 布 予 測 お よ び その 標 準 偏 差 の 分 布 を, 図一7
雑 音 の 大 小 な どが, パ ラ メ ー タ ー推 定 に与 え る影 響 につ
にケ ー スH-1-W0T0N1P2'の
いて 調 べ, 推 定 誤 差 が それ らの 影 響 を明 確 に反 映 す る こ
結 果 を 同様 に 示 した. 両
者 の 平 均 水 頭 分 布 は類 似 して い るが, パ ラ メ ー ター の 推
定 分 散 の小 さ い 図 一7の ケ ー ス で は, 予 測 値 の 分 散(=
標 準 偏 差)も 小 さい こ とが わ か る. この ほか, 確 率 有 限
と を示 した.
(3)提
示 し た例 題 の 範 囲 で は, 事 前 情 報 はパ ラ メー
ター の(平 均 値 の)推 定 よ り も, そ の 不 確 実 性 の 評 価 に
要 素 法 よ り, 各 節 点 にお け る経 時 的 な平 均 水 頭 変 化 お よ
おい て 重 要 な役 割 を果 た し た. す なわ ち, よ り現 実 的 な
び その 不 確 実性 の 推 移 を知 る こ と が で き る. 図 一8に 図
-6の ケ ー ス に 対 応 し た, 節 点11と33に
お け る経 時 的
推 定 共 分 散 マ トリ ッ ク ス を与 え た(し か し, 他 の 問 題 で
な 平 均 水 頭 変 化 の 予 測 値 お よ び その 標 準 偏 差 を示 した.
重 要 な場 合 が あ る と考 え られ る).
5.
結
は事 前 情 報 はパ ラ メ ー タ ーの 推 定 それ 自身 に お いて も,
(4)確
論
率 有 限 要 素 法 は, パ ラ メ ー タ ーの 不 確 実 性 の
予 測 へ の 影 響 を評 価 す る う えで 有 効 な 方 法 で あ る こ とが
本 研 究 で は, 地 下 水 水 理 解 析 に お け る逆 解 析 の 問 題 を,
不 され た.
観 測 結 果 と事 前 情 報 に基 づ い た パ ラ メ ー ター 推 定 と その
残 され た最 も大 き な問 題 点 は, 本 文 の 中 で も たび たび
不 確 実 性 の 評 価, さ ら に これ を入 力 とす る予 測 と い う一
述 べ た よ う に, 最 適 モ デ ルの 選 択 法 に関 す る もの で あ る.
貫 した シス テ ム と して 不 確 実 性 を定 量 的 に捉 え る手 順 を
その よ うな 方 法 を この 研 究 で 示 した 解析 手 順 の 中 に組 み
示 した(図 一1).
込 む こ と に よ り, 本 方 法 は地 下 水 挙 動 を予 測 す る うえ で
この た め特 に事 前 情 報 の 役 割, 推 定 パ
ラ メ ー タ ーの 定 量 的 な不 確 実 性 評 価 法, お よ び この よ う
よ り有 用 な 方 法 とな る と考 え られ る.
な不 確 実 性 が 予 測 値 に 与 え る 影 響 の 計 算 法 に つ い て 述
べ, 計 算 例 に よ っ て上 記 の点 を例 示 した. 得 られ た主 な
一Predieted Avevage Head
-----Predieted (Avevage)±(S.d.)Head
NODAL
POINT
NO. 11
NODAL
POINT
NO. 33
付 録A
随 伴 状 態 法 に よ る ∂J/∂uTの
随 伴 状 態 法(adjoint
state method)は,
計算法
最初 石油 工
学 の 分 野 で 応 用 が 始 ま っ た方 法 で あ るが, 地 下 水 の 逆 解
析 の 問 題 に はNeumanに
よ っ て 導 入 さ れ た12). こ の 方
法 は通 常 変 分 法 を用 い て 定 式 化 され て い るが, こ こで は,
Towenleyに
従 い式(2),
(3)で
与 え られ た 隔散 形 の
ま ま, ラ グ ラ ン ジ ェの 未 定 乗 数 法 に準 拠 した方 法 に よ り
定 式 化 を行 う1).
図-8
節 点11お
よ び33に
の 不 確 実 性(W0T0N
を入 力 と し た場 合)
お け る予 測 水 頭 の 経 時 変 化 お よ び そ
1 P0'に お け るパ ラ メ ー タ ー推 定 値
等 式 制 約 条 件 下 で, あ る 目的 関 数 の最 小 化 を行 う の が
ラ グ ラ ン ジ ェの 未 定 乗 数 法 で あ る. い ま こ こ で式(3)
を最 小 化 す る問 題 を, 形 式 的 に 式(2)の
等 式 制 約条 件
224
本 城 ・森 嶋:
下 で式(3)を
最 小 化 す る問 題 で あ る と み な す. こ う す
部 長尾義三教授, 竹澤三雄教授に深謝の意 を表 します.
る こ とに よ り, 形 式 的 に 旦 と 互 が独 立 の 変 数 で あ る と
また計算 は日本大学 理工 学部卒 業生 安藤
み る こ と が で き る. い ま こ の定 式 化 に従 っ て 問題 を書 く
秀樹君 の援助 を得ま したので, ここに合わせて謝意 を表
と,
します.
L=Σkk=1Σkl=1(hκ-h*k)T(ρklVh)-1(h1-h*l)
参 考 文 献
1)
+(u-u')TV'u-1(u-u')+Σk-1k=0(λk)T{Ck(u)hk+1
第3項
L. R.: Numerical
Prediction
形
2)
MIT Ph. D, thesis,
J, and Neuman, S. P.:
Parameters
は必 ず 零 と な
一 致 す る. した が っ て ま た, 式(A・1)の
Carrera,
Under Transient
1, 2 & 3, WRR 22(2),
3)
Models of Groundwater
and Parameter Estimation in the pre-
sence of Uncertainty,
(A・1)
こ こ に, 蜜 は ラ グ ラ ン ジ ェ乗 数 で あ る. 式(A・1)は
り, JとLは
Townley,
Flow:
-Dk(u)hk-fκ(u)]
式 上 書 か れ た もの で, 式(A・1)の
学君, 中谷
Cooley,
R. L.,
and Steady Conditions:
pp. 199-242,
Konikow,
1983.
Estimation of Aquifer
L. F,
1986.
and Naff,
R. L.:
λkは任 意 の 定 数 を と り得 る. Lを 連 続 で 滑 らか な関 数
Nonlinear-Regression
で あ る と仮 定 す れ ば, これ をuとhに
Deep Regional Aquifer System, WRR 22 (13), pp. 1759
-1778, 1986.
ついて全微分 で
き る.
4)
dL=(∂L/∂hT)dh+(∂L/∂uT)du
式(A・2)は
(A・2)
第1項
大 西 有 三 ・井 尻 裕 二:
不 均 質 地 盤 に お け る浸 透 流 の 逆 解
析 手 法 に 関 す る基 礎 的 研 究,
任 意 の 螢 に つ い て成 り立 つ の で, ガ を調
整 して式(A・2)の
Groundwater Flow Modeling of a
が零 に な る 条 件 を求 め る こ と
/III-6,
5)
青 木 一 男 ・嘉 門 雅 史:
不 均 質 地 盤 に お け る滞 水 層 定 数 の
同 定 につ い て, 土 木 学 会 論 文 集, 第382号/II-7,
が で き る. こ の条 件 は λ元が 次 の 連 立 方 程 式 を満 た す こ
6)
とで あ る.
土 木 学 会 論 文 集, 第376号
1986.
(λκ-1)TCκ-1(u)+Σkl=0(hl-h*l)T(ρklVh)-1=0
of parabolic type, SIAM J. Contr.
(λκ-1)TCk-1(u)-(λ
pp. 785--802, 1977.
Huyakone, P. S, and Pinder,
κ)TDκ(u)
7)
(A・3)
Inc.,
(for k=1,
…, κ-1)
解 い て 式(A・2)のdhに
8)
関 す る項 が 消 去
で き る よ う な 差 が 求 ま る. 式(A・3)は
式(2)と
わ め て類 似 し た形 を して い る. しか し式(A・3)は
形 を して お り, ま ず式(A・3)の
第1式
後退
…, 0)
を求 め て い く こ と に な る. 以 上 のλkを 式(A・2)に
9)
Yeh,
W. W-G.:
in
Problem,
10)
代
∂J/∂uT=∂L/∂uT=2(u-u*)TV-1u+ΣK-1k=0(λκ)T∂/∂uT
・[Cκ(u)hκ+1-Dk(u)hκ-fk(u)]
Cooley,
11)
(A・4)
偏 微 分 ∂J/∂uTは,
式(2)
13)
注 意 して み れ ば わ か る よ う に, こ
の 方 法 で は等 式 制 約 条 件 が式(2)で
り立 つ. す な わ ち式(4)に
WRR 18(4),
(2nd, ed.),
1984.
pp. 491, Addison-Wesley
S. P.:
14)
法 に よ っ て求 め る と きの 定 式 化 も, 以 上 の 方 法 と全 く同
15)
on
Groundwater
pp. 965-976,
D. G.:
Neuman,
Inverse
of Prior Information
Regression
Luenberger,
1982.
Linear and Nonlinear Programming
A Statistical
Publishing
Co.,
Approach in the Inverse
pp. 331
Vecchia, A. V, and Cooley, R. L.: Simultaneous Confidence and Prediction Intervals for Nonlinear RegresModel, WRR 23 (7),
示 した感 度 行 列 を随 伴 状 態
様 に行 う こ とが で き る.
Nonlinear
The
1986.
sion Models with Application to a Groundwater
与 え られ る も の で
あ れ ば, 目的 関 数 は 」 に 限 ら ず 任 意 の 関 数 に対 し て成
Incorporation
into
Hydology:
pp. 95-108,
1975.
Identification
Problem of Aquifer Hydrology 3, WRR 16 (2),
-346, 1980.
ずつ 解 き, 付 加 的 な計 算, 式(A・4)
を行 え ば, 求 め る こ とが で き る.
Groundwater
R. L.:
pp. 725-741,
Review of Parameter
WRR 22(2),
Parameters
12)
な お, 式(A・1)を
Computational
1983.
Flow Models,
と式(A・3)を1回
15(5),
Freeze, R. A.: A Stochastic-Conceptual
Analysis of
One-Dimensional
Groundwater Flow in Nonuniform
Procedure
入 す る と,
お け るJの
G. F.:
Homogeneous Media, WRR 11 (5),
き
を解 い て λκ-1を
求 め た 後, 時 刻 を さ か の ぼ っ てλk(h=κ-2,
す な わ ち, uに
Optimiz.,
Methods in Subsurface Flow, pp. 473, Academic Press
+Σkl=0(hl-h*l)T(ρklVh)-1=0
式(A・3)を
1987.
Kitamura, S. and Nakagiri, S.: Identifability of spatially varying and constant parameters in distributed system
pp. 1237-1250,
Flow
1987.
Sager, B.: Galerkin Finite Element Procedure for
Analyzing Flow Through Random Media, WRR 14 (6),
pp. 1035-1044, 1978.
Dettinger, M. D, and Wilson,
J. L.:
First Order Analy-
sis of Uncertainty in Numerical Models of Groundwater
Flow, WRR 17 (1), pp. 149-161, 1981.
謝
辞: 本 研 究 遂 行 に あ た りお世 話 に な っ た, 基 礎
地 盤 コ ンサ ル タ ン ツ(株)阪
上 最 一 氏, 日本 大 学 理 工 学
(注)
WRR:
Water
Resources
Research
(1988.
4. 18・ 受 付)
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