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ミュンスター編(pdf)

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ミュンスター編(pdf)
(ミュンスター編)
NABU ミュンスター支部
NABUとはNaturschtzbundの略称です。9時頃市内にあるNABUミュンスター支部に到着。
理事長のリートマンさんに面会し、10時過ぎまでお話を伺いました。以下は私の質問に対す
るリートマンさんのお答えの一部です。
ミュンスター支部には1000名を越える個人会員がいる。そのうち実際の環境保護活動に参
加しているのは150名ほどである。支部には13のアルバイトグループがある。その一つである
ポトニック(植物学)は、ミュンスター大学で生
物学、環境整備学を学ぶ学生の講義科目と
なっているが、実習を伴うので学生は喜んで
やっている。その他、グループの中には、農
地の景観(ランドスケープ)保全や貴重な野
生のランの保護、などがある。NABUとミュン
スター市環境局との関係は良い。市から財
政的な支援もある。人件費を出してもらい、
スズメバチの保護(種の保存)も行っている。電話があれば巣の移動を行う。行政は1996年以
来自然保護に力を入れる政策を進めている。私有地内の自然保護に関しては苦い経験があ
る。市や農民に対しては粘り強い説得が必要である。予算は会費のほか、行政から2500ユー
ロ/年、その他1000ユーロ、リートマンさんの理事長および果樹園園長としての役職収入など
である。
Umweltforum ミュンスター協会
NABUミュンスター支部が入っている
ビル、Umwelthaus、はミュンスター市が
所有しています。16年前に、
Umweltforum (環境フォーラム) が入居
しました。UmweltforumにはADSC,
BUND, Emshof, Energiewendegruppe,
Greenpeace, MoA, WWFなど16の団体
が所属しておりそれぞれが自然保護、
エネルギー問題、交通問題など様々な
分野で活動しています。16のグループは月に一度定例会を開いているとのことです。その一
つBUNDミュンスター支部を訪問し、特に行政の対応についてお聞きしました。それによると、
何か用事があると環境局と話し合いを持つそうですが、環境局の職員は環境保護に関して見
識もありかなり専門的知識もあるので、実のある議論や迅速な対応ができるとのことでした。
行政の中に専門的知識を持つ職員がいない日本とは事情がかなり異なるようです。
1992年6月の「地球サミット」で採択された「環境と開発に関するリオ宣言」の実現のための行
動計画として策定されたアジェンダ21やローカルアジェンダに関する話の中で、日本のアジェ
ンダ21はどうなっているのかという質問を受けました。
ミュンスター市 観光局
NABUミュンスター支部リートマンさんの案内
で、ミュンスター市観光局のグットラーさんに面
会、1時間30分ほどミュンスター市の概要につ
いてレクチャーを受けました。ミュンスター市は、
現在「自転車首都 ミュンスター」としての都市
構築のため広範な広報活動を展開しています。
グットラーさんは、ミュンスター市の自転車指導
者”Farradbeauftragte”の一人です。以下は彼
女のレクチャー内容の一部です。
2003年に大気汚染状況を調べる目的で、ADSCとBUNDが共同でドイツ各都市の自転車所
有台数の調査を行った。ミュンスター市が全国一であった。2004年も全国一となった。総数は
28万台で、これは市民一人が2台所有していることになる。このうち学生の所有台数は5万台
である。自転車は、この町では昔からの伝統的に利用されてきた乗り物であり、すべての世
代に好まれてきた経済的な乗り物である。ミュンスターの自転車台数の増加は戦災から始ま
った。その後市は自転車が走りやすい都市つくりを計画的に進めてきた。市の中心部には、
一般自動車の進入をシャットアウトし、バスとタクシーだけ許可する自転車専用のブロムナー
ドを建設した。自転車は、このブロムナードを、一日1200台(1時間当たりでは80台)走ってい
る。
市は自転車を通学や通勤に利用することを勧めておりそのための広報を行っている。ミュン
スター駅の地下一階に、3300台用の駐輪場を建設した。この駐輪場の広さはドイツ一である。
建設経費の半分は州の予算から支出された。当初、この計画は無謀だという人がいたが、今
では3300台分でも間に合わない状態である。様々な自転車優先対策は、自動車愛好家から
当初不評を買ったが、市は自転車を優先するコンセプトを強力に打ち出してきた。自転車有
効宣言都市は、10年前は6都市だったが、自転車利用についての広報活動、特に80年代から
自転車を使う魅力を訴えてきた結果、今では33都市に増えた。 自転車はどんなものでも良
いというわけではなく、規制がある。
ところで、観光局へはリートマンさんの車で
行ったのですが、とても感心したことがありま
した。車はレンタカーなのですが、リートマンさ
んはレンタカー会社と、必要なとき電話しオフ
ィスまで持って来てもらい、使い終わったら引
き取りに来てもらう、支払いは走行距離に対し
て払う、というような契約をしていました。車の
利用率が高くない人にとっては、とても良いシ
ステムであると思いました。
スズメバチ展示会
招待されていたスズメバチ展示会(Hornet Exhibition)に出席しました。この展示会は、シュ
ミッドさんという89才のスズメバチの保護活動家が、保護の必要性を訴えるため開催したもの
です。収集した様々な種類や大きさのスズメバチの実物とともに、巣を移動するときに使用す
る防護服なども展示してあり、とても興味深いものでした。またスズメバチの習性などがパネ
ルで分かりやすく説明されていました。シュミッドさんは89歳の今でも保護活動を続けていま
す。スズメバチというと多くの人は刺されると死に至る恐ろしい生物と感じていると思いますが
とても勇気の必要なお仕事ですねと申し上げたところ、シュミッドさんは、スズメバチは習性さ
え知っていれば、決して恐ろしい生物ではなく、そのことを多くの人に知ってほしいということ
でした。なお、シュミッドさんは著名な音楽家でもあります。展示ホールで市長や観光局局長
などが出席の上で開会のセレモニーが行われました。プレスも来ており、翌日の10月26日付
地方紙“Westfalische Nachrichten”に写真入りでその様子が報道されました。
HBZ ミュンスター
HBZは、Handwerkskammer Bildungszentrum (手工業会議所 研修センター)の頭文字を
取ったものです。本センターでは、革新
的で持続的な居住が可能な建物空間
およびそのための建築技術はどうある
べきかなどに関する研修を行っていま
す。建物内は展示ルームともなってい
て、専門的説明員のディークマン博士
にセンター内の展示物のうち、省エネ
ルギーに関する構造材や技術につい
て説明してもらいました。
この建物自体が省エネ構造となってい
るせいで、10月末で外は冷たい雨の日でしたが内部はとても暖かかったです。
ミュンスターランド Obstwiesenschutz
9時にNABUミュンスター支部に到着。リー
トマンさんとともに、NABUが保護を任されて
いるミュンスターランド 果実栽培保護区
(Obstwiesenschutz im muensterland)を訪問
しました。以下は、リートマンさんのレクチャ
ーの一部です。
ここでは、農地の休耕田を利用して非常に
古い品種のりんごや梨を有機栽培している。
できるだけ古くからの樹木を残してそれを利
用して果実栽培している。梨の木の中には
100年経つものがある。250年まで利用できる。果実は、2000年ほど前にはローマ人の中で特
別な階級の人だけが健康のため食べることができた。りんごの木は挿し木で作られるが、修
道院の教師が作った。この地方の教師の採用の条件は果樹栽培ができることだった。その後
研究が進み1200種類のりんごが作られるよ
うになったが、1855年推奨銘柄が決められた。
農園は果実とともに家畜も育てた。牛が多か
ったが、ここは軍用馬でも有名である。牛や
豚は問題なかったが、馬は首が長いのでり
んごの実を食べてしまうので問題であった。
そのため果樹の背丈を高くしたが、収穫が大
変となった。平均樹齢は80年で、手入れは自
然保護協会が行っており、現在65本ある。
ここで栽培しているりんごは、いわゆる”規格りんご”ではありません。形や大きさ、色は不
揃いです。余裕のある時代になって規格化に対する反省が生じ、古くから残っている樹木を
調査し自然果樹物として保存しています。このような地域は現在30ヶ所あり、NABUが市から
保護を任されているという。
果樹の中の古木の中にできた穴には小さい
型のふくろうが住みついているそうで、樹木畑
の雑草を、ふくろうが隠れやすいように短く刈
り込まないようにするなどの保護活動も続けて
おり、以前8巣だったのが、昨年は100巣に増
えたとのことでした。
ミュンスターランド Obstwiesenschutzか
らの帰り、ミュンスター市内のドーム広場マ
ーケットに向かいました。NABUが店を出し
ており、いろいろな品種の不規格りんごや
自家製のジュースなどを販売していました。
値段は規格りんごより少し高いのですが、
愛好家が買いにくるとのことでした。
畜牛と馬による景観保護地区 Emsaue
NABUミュンスター支部のマンテルさんの
案内で畜牛と馬による景観保護地区
Emsaueと、エムズ河復元修復地帯を視察
しました。
ここでは、以前農地だったところを市が
買い取って草地にし、そこで古い品種の馬
や羊をまったく自然のままに育てています。
この地区は、現在市が管理しており、
NABUは景観保護を任されています。草地
にするのは実に大変なことです。農地では
化学肥料や農薬が大量に使用されており、
古くからの汚染されていない土壌は農地の下にあるので、草地として使用するには農地とし
て使用していた土壌を掘り返し取り除く必要があります。この大変な作業は現在も続いており、
これを行っている市の姿勢に頭が下
がりました。日本と比べてしまいまし
た。草地は、馬や羊をできるだけ昔と
同じ生育環境で育てるため、牧草は
植えずに自然そのままに放置されて
います。馬はあたりまえですが野草
花の中から選んで食べるそうです。
放牧地内を歩いていると、馬が人
を恐れず近づいてきます。見ると、た
て縞のあとが残っていて古い品種だ
ということが分かりました。
またこの地域を流れているエムズ川の河岸を元の形に復元する計画が進められていまし
た。以前に洪水防止のため川底を2mほど掘り下げたそうです。その結果この地域の乾燥化
が進み、環境が変わってしまったとのことです。現在一方の岸を含む地帯で復元が進み湿地
化が進んでいました。ただしこの復元
は自然のままに任せているため進度
は遅く、完全復元には多くの年月を必
要とするとのことでした。
以上の景観復元プログラムをNABU
ミュンスター支部の5名で担当していま
す。こうした景観保護の対象となる100
ヘクタールほどの草地はエムズ川沿
いに3ヶ所あるそうですが点在していま
す。将来はこれらをつなげ、主に馬な
どの家畜を対象に、種の絶滅を防ぐための多様な環境を作りたい、とマンテルさんは熱っぽく
語ってくれました。
以上
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