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生活家電 - 格付投資情報センター

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生活家電 - 格付投資情報センター
業種別格付方法
公表日:2016 年 9 月 26 日
生活家電
家電(家庭用電気機械器具)の範囲として、R&I は、ルームエアコン、冷蔵庫、洗濯機、掃除機に代
表される白物家電、炊飯器、電子レンジといった調理家電、シェーバー、ドライヤーをはじめとする理
美容機器、白熱灯、蛍光灯、LED(発光ダイオード)を使う家庭用照明器具など消費者の生活に密着し
た家電製品を総合し、「生活家電」とする。
生活家電は、機能やデザインに国・地域の文化や生活様式が色濃く反映されるため、一律の製品を各
地域で販売することが難しい。生活家電の業界は、自国市場だけで展開する中小規模のメーカーから数
多くの国・地域で基盤を構築する大手メーカーがある。対象市場はグローバルをベースに考える。
I.事業リスクの評価
1.産業リスクの見方
白物家電や照明器具は、生活必需品としての性格が強く、電気製品の中で最も早く発達した分野だ。
多機能化や使い勝手の改善、環境対応の取り組みは継続的に行われているが、基礎的な技術・機能は成
熟している。デジタル機器のように、新技術や新製品が短期間のうちに既存製品を置き換えることはほ
とんどない。販売価格が下がりにくい特性もある。地域ごとのきめ細かい製品・サービス対応や、アナ
ログ的な技術・部材も重要であり、上位メーカーの顔ぶれが激変することはまれで、ある程度の企業淘
汰を経た先進国では、強いブランドを持つメーカーが今後も高い市場地位を維持できる可能性が高いと
いえよう。個々の市場・製品の他社との競争環境は厳しいが、需要の変動性は比較的小さい。一定の収
益基盤があれば収益は安定しやすく、設備投資の負担が軽いためフリーキャッシュフローの黒字も確保
できる。こうした点を踏まえ、生活家電の産業リスクは中程度であると判断している。
産業リスクは具体的に以下のような視点で評価している。
(1)市場規模、市場成長性、市場のボラティリティー
グローバルベースで正確な数字をつかむことが難しく、家電製品の取り扱い範囲によっても市場規模
に違いが出てくるが、世界の生活家電の市場規模は 2014 年で 20 兆円を超えていると推定される。販売
額では、ルームエアコン、冷蔵庫、洗濯機といった大型製品が高いウエートを占める。需要数量を地域
別にみると中国市場が圧倒的な存在感を示しており、他にもブラジル、インド、ロシアといった地域が
人口の多さを背景に上位国として名を連ねる。
株式会社格付投資情報センター
Copyright(C) 2016 Rating and Investment Information, Inc. All rights reserved.
〒103-0027 東京都中央区日本橋 1-4-1 日本橋一丁目三井ビルディング(お問い合わせ)インベスターズ・サービス管理部
TEL 03-3276-3511
当サイト、当サイトの内容その他当サイトに含まれる情報に関する一切の権利・利益(著作権その他の知的財産権及びノウハウを含みます)は、特段の記載がない限り、株式会社
格付投資情報センター(以下「R&I」といいます)に帰属します。R&I の事前の書面による許諾無く、これらの情報等の全部又は一部を使用(複製、改変、送信、頒布、譲渡、貸与、
翻訳及び翻案等を含みます)し、又は使用する目的で保管することは禁止されています。
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生活家電の需要は、その特徴から人口、世帯数、1 人当たり国内総生産、所得水準といった経済指標
との関連が高い。個別製品では世帯普及率も大きく影響する。先進国は経済成長率や普及率からみて高
い市場成長は見込みにくいが、一定期間で買い替えが発生する。高機能化や省エネ化もあって安定した
需要が見込める。空気清浄機や IH クッキングヒーター、ロボット掃除機など、過去になかった製品が
市場を掘り起こすこともある。一方、新興国は経済成長に伴い所得水準が向上している。アジアを中心
に、エアコン、冷蔵庫、洗濯機などは高い市場の伸びが予想される。販売価格が激しく変動するわけで
はなく、グローバルにみて市場のボラティリティーは比較的小さいとみている。
(2)業界構造(競争状況)
日米欧など先進国市場は、自国やその周辺地域で高いシェアを持つ大手企業がそれぞれ存在する。各
社とも自国以外の開拓も進めているが、文化・生活に根ざした機能・デザイン開発力、ブランド認知度、
販売・サービス体制の構築などが、他国・地域への参入障壁となる。
欧米では老舗の大手メーカーの存在感が大きい。日本市場は日本メーカーの牙城であり、日本に進出
している韓国や中国メーカーも日本メーカーを凌駕するプレゼンスは確立できていない。特に高価格帯
ではその特徴が顕著だ。逆に日本メーカーも欧米市場ではなかなか目立たない。中国ではコスト競争力
に優れる中国メーカーが数量ベースで非常に高いシェアを持つ。韓国メーカーは自国市場が小さいゆえ
に早くから海外に展開しており、自国以外の市場での地位が高いのが特徴だ。
いずれの国・地域にせよ、自国・外資の複数社が市場に参入しており 1 社が断トツのシェアを獲得し
ている製品は少ない。基礎的な技術・機能が成熟しているなかで開発と販売の両面で競争しており、広
告宣伝費や販売促進費の投入が欠かせない。業界内で突出した利益率を確保することは難しい。もっと
も、価格帯ごとに緩やかなすみ分けもあり、一定の収益基盤があれば利益を安定的に確保しやすい。国・
地域の垣根が低いデジタル機器ほどの競争ではない。
(3)顧客の継続性・安定性
一般消費者は家電量販店などで、機能と価格、住居への適合性などを総合的に比較検討して購入する
製品を決めており、ブランド名は検討要素の 1 つに過ぎない。高額の製品も含まれるため、以前利用し
た経験がブランドに対する安心感や信頼感を生み、特定メーカーの製品を継続して買うこともあるが、
それを促す仕組みがある訳ではない。店頭で検討した結果、異なる企業の製品を選ぶことも十分にあり、
顧客の継続性・安定性は低い。
生活家電は技術的に成熟した製品が多く基本的な機能での差別化は難しい。各社は新機能やデザイン
性を高めた製品を投入して需要を取り込もうとするが、他社もすぐに類似製品を開発するため、差別化
は長続きしない。これまでの日本市場を見ても、フィルター自動掃除エアコン、ドラム式洗濯乾燥機、
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翻訳及び翻案等を含みます)し、又は使用する目的で保管することは禁止されています。
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ロボット掃除機など、付加価値を高めた製品投入で単価の引き上げに成功しても、先行メーカーに続い
て他社も相次いで同様の製品を発売している。 家電の買い替えサイクルを踏まえると、次の買い替え
時には各社の製品が出揃っているため、目新しい機能でも顧客の継続性につながるわけではない。
(4)設備・在庫投資サイクル
金型投資を含めても、設備投資負担は重くない。モーターやコンプレッサーなどがコアの部品で、照
明用の LED などを除くと画期的な技術革新が起こりにくい。製造設備は修繕(維持・更新投資)を繰
り返しながら、長期間にわたり利用することが可能である。実際には 10~15 年程度継続して使用して
いるケースが多いようだ。アジアへの生産拠点シフトや能力増強といった設備投資も発生するが、組み
立て主体のため高額な生産設備を必要とするわけではない。
消費者の買い替えサイクルは比較的長い。内閣府の消費動向調査によると、日本の平均使用年数は、
ルームエアコンや冷蔵庫が 10 年超、洗濯機 9 年、掃除機 7 年という状況だ。
在庫リスクは一定程度ある。販売が想定を下回り、過年度のモデルを抱えたままになることがあるた
めだ。とりわけ気候次第で需要が大きく変動するエアコンは、夏の到来前に一定の規模の在庫を準備す
るため、その傾向が目立つ。メーカーが在庫を保有していなくても、流通在庫が積み上がり、翌年以降
の販売を鈍らせることもある。
(5)保護・規制、公共性
省エネ家電が各国政府の補助金の対象になることはあるが、信用力評価で特に考慮するほどの保護・
規制は無い。
(6)コスト構造
総じて製品のサイズが大きいため樹脂・金属など材料費のコスト構成が高く、デジタル機器のように
半導体の性能進化によって劇的にコストを引き下げることができない。また外注を含めた製造・組み立
てに関わる人件費の負担も小さくない。各社とも人件費が安い国・地域で生産しているが、新興国の人
件費は上昇している。広告宣伝費や販売促進費など販売網の維持・拡大に費用が必要で、一部の高額製
品や特定分野で高シェアを握る企業を除けば、それほど高い利益率を確保できるわけではない。生産地
域と販売地域の通貨が異なれば、為替の変動リスクも無視できなくなる。
もっとも、価格帯によって一定のすみ分けがなされているうえ、デジタル家電のようにグローバルメ
ーカーが各国・地域で常にトップの競争力を持つわけでもない。需要や価格が比較的安定性しており採
算の振れは大きくない。
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2.個別企業リスクの見方
産業リスクが対象企業の属する業界の標準的なリスクを示すのに対し、以下のような個別企業リスク
により各社の事業リスクは相違する。
(1)製品分野、品揃え、競争力
生活家電は、個々の製品によって市場の規模や成長率、必要性の高さなどが大きく異なる。このため、
手掛ける製品分野が利益・キャッシュフローの制約条件となる。品揃えの充実は、アクセスする市場規
模を広げるだけでなく、ブランド認知度にも好影響を与えよう。販売活動や物流の効率化にもつながり、
収益力を高めやすくなる。もっとも、幅広い製品を手掛けていても、各製品の競争力や収益性が十分で
なければ、そうしたメリットは得られず、評価には結びつかない。
(2)市場シェア
市場シェアは、総合的な競争力を示す重要な指標だと考えている。高いシェアは、消費者から受け入
れられている証拠であり、製品のブランド力、マーケティング力、製品開発力が優れていることを示す
と言える。出荷台数が多いほど規模の経済性を享受できるので、コスト競争力も得られる。販売を担う
小売り店舗に対して価格交渉で優位に立ちやすく、競合他社に対して小売り店舗内の棚割りで差をつけ
られるといったメリットもある。
(3)開発・生産・販売体制
日米欧などの特定の先進国市場だけに依存していると、利益・キャッシュフローの伸びを期待できず、
長期的な市場縮小リスクからも逃れられない。短期的には先進国に比べて需要の変動性が大きくても、
中国、インド、ブラジルなど、人口が多く潜在的な市場規模が大きい国でも開発・生産・販売の体制を
強化することが、長期的なリスク分散や収益基盤の安定化に寄与すると考えている。
もっとも、生活家電は、それぞれの地域の生活習慣に密接に関わるだけに、自国でヒットした商品が
他の国・地域でも同様に売れる保証はない。現地の人材を生かしたローカルベースでの商品企画や開発
も重要だ。販売チャネルの整備・拡充などにも一定の先行投資が必要になる。そうした基盤の充実度の
ほかに、販売代金の回収リスクが問題となる新興国もあり、既存市場とは異なるリスクのコントロール
手法も注目点になる。
II.財務リスクの評価
財務リスクの分析では、財務データといった定量要因に加えて、財務運営方針や流動性リスクなども
評価している。事業特性から以下のような財務指標を重視している。
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(1)収益力
EBITDA(利子・税金支払い前、償却前利益)マージン、EBITDA/総資産平均、売上高営業利益率
収益力の指標として、EBITDA を売上高で除した EBITDA マージンを重視している。格付はキャッ
シュフローベースの指標を重視しており、EBITDA は減価償却費の会計処理が異なる会社間の比較にも
適している。ただし、生活家電のコスト構造を見ると、原材料費や人件費のウエートが高く、減価償却
費の比率は小さい。このため、営業利益率も参照する。採算は比較的安定しているが、製品は国・地域
で一律でないため量産効果を高めにくい面もあり、高い利益率がとれるわけではない。資産効率を見る
という観点から、EBITDA/総資産平均も重要な指標だ。
(2)規模・投資余力
EBITDA、自己資本
設備投資の負担は大きくないが、新興国など自国以外の市場の成長を取り込むには一定の先行投資が
必要となる。開発費やマーケティング費用を追加的に投入できるキャッシュフローを確保しているか判
断するために、EBITDA を重視している。EBITDA はアクセスしている市場規模とその市場における
競争力も間接的に示してもいる。信用力評価には、損失を吸収するためのバッファーとして自己資本の
厚みも重要である。
(3)債務償還年数
純有利子負債 EBITDA 倍率、純有利子負債営業 CF 倍率
あまり大きな技術革新はなく、金型を除けば修繕を繰り返して設備を長期間にわたり利用することが
可能だ。設備の耐用年数が比較的長いことも勘案して評価している。
(4)財務構成
自己資本比率、ネット D/E レシオ(純有利子負債の自己資本に対する倍率)
製品や技術変化の時間軸が相対的に長く収益の安定性が高いことを勘案して、ネット D/E レシオや
自己資本比率を評価している。
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III.生活家電業界の格付
発行体格付
個別企業リスク
製品分野、品揃え、競争力
市場シェア
開発・生産・販売体制
重要度
◎
◎
◎
収益力
規模・投資余力
債務償還年数
財務構成
財務リスク
指標
EBITDAマージン
EBITDA/総資産平均
売上高営業利益率
EBITDA
自己資本
純有利子負債EBITDA倍率
純有利子負債営業CF倍率
自己資本比率
ネットD/Eレシオ
重要度
◎
◎
○
◎
◎
◎
○
◎
◎
産業リスク 中程度
注) 重要度は、◎極めて重視 ○重視 △比較的重視
*これまで公表した同種の格付方法は、本稿に代替されます。
R&I が格付対象の評価に用いる格付付与方針及び格付方法(以下「格付付与方針等」と総称します)は、R&I が独自の分析、研究等に基づいて作成し
た R&I の意見にすぎず、R&I は、格付付与方針等の正確性、適時性、網羅性、完全性、商品性、及び特定目的への適合性その他一切の事項について、明
示・黙示を問わず、何ら表明又は保証をするものではありません。また、R&I は、格付付与方針等の開示によって、いずれかの者の投資判断や財務等に
関する助言を行い、又は投資の是非等の推奨をするものではありません。R&I は、格付付与方針等の内容、使用等に関して使用者その他の第三者に発生
する損害等につき、請求原因の如何や R&I の帰責性を問わず、何ら責任を負いません。格付付与方針等に関する一切の権利・利益(特許権、著作権そ
の他の知的財産権及びノウハウを含みます)は、R&I に帰属します。R&I の事前の書面による許諾無く、格付付与方針等の全部又は一部を自己使用の目
的を超えて使用(複製、改変、送信、頒布、譲渡、貸与、翻訳及び翻案等を含みます)し、又は使用する目的で保管することは禁止されています。
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