...

住友商事の水民営化事業への取り組み ー英国水事業への

by user

on
Category: Documents
5

views

Report

Comments

Transcript

住友商事の水民営化事業への取り組み ー英国水事業への
特 集
住友商事の水民営化事業への取り組み
ー英国水事業への投資と今後の展開
住友商事株式会社
水・環境ソリューション事業部
当社はこれまで中国、アジア、中東、米州
などの地域において上下水処理および海水
淡水化の BOOT / BOO 事業(注 1)を展開し、
水ビジネスの実績を重ねてきました。今後
世界各地の人口増加や新興国の経済発展を
背景に上下水事業の市場規模は拡大すると
予想されています。中でも今後大きな拡大
が見込まれる上下水民営化事業参入に向け
て、 当 社 は 2013 年 2 月 に 英 国 の 上 水 道 会
社 Sutton & East Surrey Water 社( 以 下、
「SESW 社」
)の全株式を取得しました。
当社が SESW 社に出資した目的は、これ
まで当社が積んできたさまざまな水事業の経
験を活かし SESW 社の価値向上に努めると
ともに、同社の事業ノウハウを吸収し、さら
なる展開の布石とすることです。
SESW 社の価値向上に向けては、2013 年
2 月に当社出資直後から、短期(100 日)およ
び中長期の Post Merger Integration Plan(注 2)
を策定し、さまざまなサポートを行ってきま
した。経営・オペレーション面においては
英国水民営化事業へ参入
SESW 社は 1862 年に設立された水道事業
会社であり、ロンドン南東部地域の約 67 万
人に対して上水の供給サービス事業を行って
います。現在 8 ヵ所の浄水場、全長 3,445km
に及ぶ管路などの事業資産の運営・維持管理、
設備投資、水道料金の設定、規制当局との
折衝、顧客への課金・徴収等の顧客管理、顧
客サービス対応に至るまで、一貫した上水道
民営化事業を行っています。
SESW 社の貯水池
SESW 社での水処理施設の様子
2014年3月号 No.723 19
特 集
複数の常勤派遣員や欧州住友商事を通じ全面
的なサポートを実施し、管理面については、
延べ 10 人以上の当社社員が当社基準に準じ
た財務・経理関連や業務プロセスの導入や、
コンプライアンス基準の強化等に携わりま
した。
英国の各水事業会社は 5 年ごとに事業計
画を監督機関である OFWAT(水サービス
規制庁)に提出する必要があり、現在 2015
年 4 月から始まる次期 5 ヵ年計画の策定期
間(Price Review 14)の真っ最中でもあり
ます。水道会社における事業計画の策定、当
局との交渉、顧客団体との折衝等を最前線で
経験できることは、当社にとって何にも替え
難い経験であり、大きな知見の蓄積だと考え
ています。また、オペレーション面において
も公共企業ゆえの志の高さを日々実感してい
ます。例えば、2013 年末暴風雨が英国南東
部の SESW 社管轄地域を襲い、大規模停電、
通信停止、倒木による道路の閉鎖が発生しま
した。さらに短時間の大量降雨により近郊を
流れている川が氾濫し、給水設備が浸水する
事態が生じました。この時 SESW 社は緊急
対策室を設置し、当社派遣員を含む社員は
24 時間体制で、顧客への給水、浄水場の給
水機能維持、作業員の安全、を最優先にさま
ざまな事態を視野に入れた対策に取り組み、
無事に事態収束に至りました。本件は一例で
はありますが、このような自然災害への緊急
対応や日々の事業運営における経験が、今後
のさらなる水事業展開の大きな糧になると考
えています。
大阪ガスとの共同事業へ
一方 SESW 社のさらなる経営品質向上の
た め、2013 年 10 月、 当 社 は SESW 社 株 式
の 50%を大阪ガス UK 社に譲渡し、大阪ガ
スグループ(以下、大阪ガス)との共同事業
に移行しました。都市ガス事業と水道事業は
配管を通すものは異なりますが、製造所から
20 日本貿易会 月報
洪水時の状況
導管を通じて各需要家に供給し、料金を徴収
するという仕組みは、類似性が高く、大阪ガ
スが長年国内都市ガス事業にて培ってきた、
顧客サービスの向上や配管網設備の維持管理
などのノウハウを融合し、SESW 社の事業
基盤を強化することで、さらなる企業価値向
上が可能になると考えます。
今後の展開
住友商事では、東京都との連携や大阪ガス
との協働を活かし、欧州・米州・アジア等他
地域においても上下水道の民営化事業拡大を
図り、水資源の最適な循環サイクルの構築、
安定的なサービスの提供を通して、安全・清
潔な環境の実現に貢献していきます。
(注)
1 BOOT:Build-Own-Operate-Transfer、水事業の投資事業の一形
態。国・地方自治体に対して長期契約に基づきサービスを提供し、契
約期限到来後は事業資産を無償で顧客へ移管するビジネスモデル。
BOO:Build-Own-Operate、水事業の投資事業の一形態。BOOT
同様、国・地方自治体に対して長期契約に基づきサービスを提供
するが、資産は事業者が保有し続けるビジネスモデル。
2 Post Merger Integration Plan :M&A 実行後において、シナジー
を実現し、企業価値を向上させるための統合計画。
JF
TC
Fly UP