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発表要旨 [PDFファイル/167KB]

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発表要旨 [PDFファイル/167KB]
西日本鉄道株式会社
小野
哲也
執行役員
発表要旨
(イントロ)
ご紹介いただきました西日本鉄道の小野でございます。本日は,九州バス協会SUNQ
パス運営委員会の幹事会社という立場でお話を申し上げます。私に与えられたテーマは,
九州における事業者連携がどのようにして生まれたか,また,九州島内の広域観光の重要
なツールとなっておりますSUNQパスができた経緯と現状についてです。
(2 ページ,3 ページ)
そもそもSUNQパスとはどのような商品かということですが,一言で申し上げますと,
全九州及び下関市の高速バス,空港連絡バス,路線バス,一部のフェリーが,全て利用可
能な乗車券です。フェリーについては,九州の最北端である門司港と下関を結ぶ航路,福
岡県ならびに熊本県から長崎県島原半島を結ぶ航路,鹿児島県内の鹿児島市内と桜島を結
ぶ航路が利用可能です。
(4 ページ)
さて,九州と東北を比較すると,共通しているところが二点あると感じました。一つは,
日本列島にも共通しますが,背骨の部分に大きな山脈があるため,南北は平らでつながっ
ていますが,東西が隔てられていることが特徴的です。
それから,高速道路と新幹線の開業の歴史を比較してみましたが,高速道路は福岡から
熊本の開業年次と,埼玉から仙台の開業年次は,全く一緒でした。東西の路線では,福岡
から長崎の開業は 1990 年,仙台から山形の開業は 1991 年であり,高速道路の建設状況は
ほとんど同時期のようです。
一方,新幹線は,東北新幹線が盛岡まで 1982 年には開業している一方で,九州新幹線は,
博多~鹿児島の全線開業が近年の 2011 年であり,九州における新幹線整備は東北と比較す
ると大幅に遅れており,これらが九州において高速バス網が発達した主な背景の一つであ
ると感じています。
(5 ページ)
マイカーを除いた輸送機関別輸送人員の過去 20 年間の推移を見ると,特に新幹線の整備
時期の影響もあり,九州は東北と比較すると,年々減ってはおりますが,バスの占めるウ
ェイトが一定程度有るのが特徴的だと思います。
(6 ページ)
事業者連携の経緯についてお話しします。ここから先は,私自身が各事業者様と議論を
重ねた経験を踏まえて話しをさせていただきますが,私の独断と偏見が入っているかもし
れませんので,そのつもりでお聞きください。
高速バスのネットワーク化についての話は,2001 年まで遡ります。九州島内の高速バス
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路線網は,その時点で既に成熟しており,拡大の余地がない段階に至っておりました。今
年 3 月に東九州自動車道が北九州から大分,宮崎まで開通しますが,それまでは当面の間,
都市間を結ぶ高速道路の整備計画がない状況でした。高速バスは,高速道路の開通に合わ
せて,それぞれの拠点を地盤とするバス事業者同士が協議を行ない路線を新設するという
形で発展してきました。共同運行方式と呼ばれるものです。新しい高速道路ができ,或い
はそれが延伸し,拡大するのに合わせて高速バス事業が発展してきましたが,高速道路の
新規開業ができなければ,市場が拡大しません。
それから,競合するJRが 2001 年から特急の増便や,格安切符の発売を開始しました。
高速バスの料金はJRと比較して安いというのが売りでしたが,バスの低価格戦略へ影響
が及びました。それから,これが最も大きな理由ですが,乗合バスの規制緩和が 2004 年に
実施されました。ただでさえ厳しいバス事業の状況の中,新たなバス事業者が参入してく
るのではないかと,非常に危機感を持った時期です。併せて,いよいよ九州新幹線が部分
開通することになり,2004 年は一つのターニングポイントでありました。
そうした中で,九州のバス事業者連携を図れないかという使命が生まれたわけです。以
前の九州はひとつひとつで,バス事業者もひとつひとつで事業をしていたというのが実態
でした。しかし,新規参入が見込まれる時に,既存のバス事業者同士がそっぽを向いてい
ても仕方がありません。九州の高速バスをひとつひとつの路線ではなくて,ネットワーク
で売れないか,そうすることで市場を維持できないかという使命が与えられました。
(7 ページ)
バス協会というのは各県単位で法人格を持っています。これらをベースにして日本バス
協会がありますが,九州の特徴として,九州バス協会という任意団体が既にありました。
私たちは九州バス協会のメンバーである各県の主要なバス事業者にお集まりいただき,先
程の使命についての議論を重ねました。
最大のネックは高速バスの予約システム,乗車券の発券システムが各社バラバラである
ことでした。お客様は運行バス事業者を確認した上で,その運行会社に問い合わせないと,
予約も発券もできないというのが現状でした。これでは,ヘビーユーザーのお客様しか利
用できないのが実態であったと思います。県内のお客様だけではなく,もっと域外や海外
のお客様に利用していただくためにはどうすれば良いかを考え,予約と発券のシステムの
共有化を図ろうという一つの結論に至りました。それを中心にできたのが,九州高速バス
ネットワーク協議会です。また,九州全部で使える共通乗車券があればとても便利であり
売りにできないかといった意見もありました。それから高速バスのバス停は,時刻表と路
線図を貼っているだけで,お客様にとって見づらくつまらないとの話もありました。
こういった課題を解決するため,九州バス協会の中に高速バス専門委員会を立ち上げま
した。これが 2001 年です。19 事業者が加入いたしましたが,ここを高速バスに係る全ての
協議,決定機関に位置づけました。さらに,いくつかのワーキンググループを設けまして,
それぞれのテーマ毎に作業を進めていきました。
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(8 ページ)
実際の成果として,まず 2005 年にオール九州・高速バス予約システム『楽バス』を作り
ました。これは,構想から丸 4 年以上かかりました。このときに,SUNQパスも発売開
始しました。2006 年には,高速バスロケーションシステム『Qバスサーチ』を導入するな
どして,現在に至っております。以下,個別に説明いたします。
(9 ページ)
オール九州・高速バス予約システム『楽バス』は 2005 年に運用開始し,当初の参加事業
者は 11 事業者,対象路線が 38 路線でした。システム開発費の一部については,国土交通
省様からの補助を活用させていただきました。このシステムでは,加盟各社の高速バス予
約を共通化・一本化しました。このことでお客様は,加盟事業者のバスであれば受付会社
に限らず予約可能になりました。それから現在では当たり前の話ですが,インターネット
や携帯電話による予約が可能になりました。また,コンビニエンスストアでの発券も可能
になったのが大きな特徴でした。併せて,それまでは各事業者が個別に電話受付窓口を設
置しておりましたが,
「九州高速バス予約センター」を設置し,フリーダイヤルを設けて,
全ての加盟各社の高速バス予約に対応するようにしました。さらに,高速バス路線同士の
乗り継ぎ割引区間を 21 区間に拡大しました。
(10 ページ,11 ページ,12 ページ)
次は,「Qバスサーチ」です。九州高速バスロケーションシステムというもので,バスに
GPSシステムを設置して,バスの現在地を把握するものです。20 事業者 37 路線で,パソ
コンや携帯電話を通じてバスの状況が一目で確認できるサービスを始めました。お客様は
このシステムを使って,自分が乗りたいバスがどこを走っているか,そのバスの到着予測
時間はどうなっているか,そのバスに空席があるかの確認ができるようになりました。一
方でバス事業者の運行面でも,自社のバスだけではなく他社のバスの状況もわかりますの
で,高速道路の渋滞状況や,お客様からの問い合わせに対して,他社のバスも含めて到着
予測時刻が確認できることで,乗換案内などに有用であるというメリットがあります。
(13 ページ,14 ページ)
高速バスロケーションシステムを活用した,基山パーキングエリアにおける乗り継ぎ社
会実験についてご説明します。九州の高速バスはクロスロードと言われており,東西と南
北に大きく分けられ,福岡市を中心に各都市,観光地,空港に繋がるネットワークが構築
されております。これは,例えば九州の東西である長崎から大分へ行かれるお客様にとっ
ては,福岡市を経由すれば乗り継ぎ本数が充実するという状況ですが,逆に言いますと,
乗り継ぎの選択肢を増やすためには,福岡市に用事が無くても,一度福岡市に立ち寄る必
要がありました。
そこで,クロスロードの交差位置にある基山パーキングエリアを使って乗り継ぎができ
ないか,国道事務所様,当時の高速道路公社様にご相談したところ,道路施策として取り
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組んでいただけるということになり,基山に高速バスの待合所,上り線~下り線の歩行者
専用連絡通路,そしてパークアンドライド用駐車場を道路管理者に整備していただき,先
程説明したバスロケーションシステムを組み合わせて,お客様のバス待ちの利便性を向上
させて,基山での乗り継ぎを実現しました。高速基山バス停には,957 便を停車させて,基
山を起点とした九州各地域へのアクセスを飛躍的に向上させました。従って,乗り継ぎの
ために福岡までご利用いただいていた従前と比べると,所要時間が短縮でき,割安な運賃
提供が実現したのです。
(15 ページ)
続いて,SUNQパスです。発売開始当初は九州高速バス予約システム運営委員会で暫
定的に運営していましたが,参画事業者が増えたために,SUNQパス運営委員会という
専門の委員会を立ち上げて,管理運営を行っています。弊社はその幹事会社を担っており
ます。参画事業者数は当初 11 社でしたが,現在では 50 社局の民間バス会社ならびに市営
交通局が参画しています。対象エリアも,当初は鹿児島県と宮崎県を除く北部九州エリア
で展開しましたが,その後,全九州へとエリアが拡大し,更に船舶航路が対象に加わりま
した。SUNQパスが利用できる路線は当初は 35 路線でしたが,現在は約 2,400 路線とな
り,九州内の大半のバス路線でご利用いただけます。
(16 ページ)
2005 年 3 月の発売開始後,8 月には韓国で発売を開始しました。また,旅客の使いやす
さを求めて,ハングル語版のガイドブックを作成しました。日本語版や中国語版に先駆け
て作成しており,海外販促の経緯として特徴的なことであったと思います。2010 年には,
九州観光推進機構様のご支援をいただきまして,航空会社様とのタイアップキャンペーン
なども行っております。
SUNQパス発売実績は,2007 年が過去最高で,約 45,000 枚を売り上げました。ところ
がその後,海外販売の主要販売先である韓国のウォン大幅下落や,高速道路料金の 1,000
円上限或いは無料化といった施策,九州新幹線の全線開業などの要因があり,右肩下がり
で推移してきました。このような状況の中で,現在力を入れているのが海外のお客様への
対応です。当初から,海外のお客様が九州以外の国内のお客様より多いことが特徴ですが,
いかにしてインバウンドのお客様を増やすのかを最大のテーマとしております。
(17 ページ)
九州における外国人入国者数を棒グラフで,SUNQパスの海外販売実績を折れ線グラ
フで示しています。2014 年の入国者数は 160 万人に達するようですが,それに合わせてS
UNQパスの海外売り上げも,過去最高更新できるのではないかと考えています。
(18 ページ)
海外から九州に来られるお客様の 6 割は,韓国からです。そこで,弊社は幹事会社とし
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て,SUNQパス販売強化に取り組むべく,韓国人を新たに社員登用して,この社員を中
心に訪韓を重ねて,現地旅行会社などにアプローチしました。その結果,当初は韓国の旅
行会社との契約は 2 社でしたが,現在は韓国 14 社,台湾 5 社と契約させていただいており
ます。また,SNS,インターネットを利用したPRも,韓国で大きな効果を得ています。
韓国人の社員の書き込みに対して,すぐに反応が返ってきます。韓国の方々とコンタクト
を取るには,SNSは有効な手段であると改めて感じております。
(19 ページ)
最後にまとめですが,SUNQパスは,広域観光に資するためというよりも,我々の事
業を守るためという使命から検討が始まりました。結果的にできあがったものが,九州以
外のお客様,特に海外のお客様にとって,使いやすい商品であるということから,今日の
支持に繋がっています。事業者連携の要点を幾つか挙げたところでございますが,バス事
業者同士が規制緩和を前にして危機意識を共有できたことが,大きなエネルギーになった
と思っております。それから各県のコア事業者のリーダーシップも,大きな役割を果たし
たと思います。そして,国土交通省様をはじめ様々な行政支援を受けたことで実現に至る
ことができました。行政による適度・適時の支援は,絶対欠かすことができない要素にな
ります。
以上で,私の発表を終わらせていただきます。ご静聴ありがとうございました。
福田エグゼクティブディレクター
小野様,ありがとうございました。最後のまとめでお話しいただきましたが,民間企業
として自分たちのビジネスを守って育てていこうという,企業であれば誰もが持つ思いや
仕組みですが,それが地域を巻き込んだ取り組みを生んでいます。まさに,仙台空港民営
化が目指している姿,企業が自立的成長を求める思いや力を,地域のために生かしていく
仕組みを空港で作っていくためのモデルとなるもので,非常におもしろいお話をいただき
ました。
最後に伺いたいのですが,このようにまとめると非常にきれいですが,一方で,バス事
業者さんはそれぞれの利益を最大化することを目的に,事業を営んでおられる方々です。
2005 年にSUNQパスが始まったときには 11 社だったものが,足下では 50 社になってい
るように,最初は様子見をしていた事業者も多くて,徐々に広がっていったようにも見え
ます。多くの方々がこの制度に乗っかろうと思ったきっかけがあったらお伺いしたいと思
います。
もう一つは,何かをやるときには必ずコストがかかりますが,対等な企業同士で,いか
にコストを負担していくのか決めるのは難しいところもあると思いますが,そのような取
り決めをする上でチームとして配慮していること,工夫していることをお教えいただけな
いでしょうか。
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小野執行役員
当初 11 事業者と申し上げましたが,九州各県の大手バス会社が加盟しておりましたので,
対象路線数はある程度の規模は確保できておりました。なお,一番大事なのは,いかに事
業者メリットを追求するかということであり,予約や乗車券の発券システムの統合につい
ては,バス事業者が各社毎に運営するバスセンターや窓口で対応していたものを,バス事
業者間で運用を共通化することで,例えばオペレーターの人数削減などのコストの削減が
実現でき,目に見える事業者メリットを享受することができました。そのような効果を踏
まえて,九州バス協会のような場で我々がメリットを提案することで,様子見だったバス
事業者も,自分たちのメリットが理解できたのだろうと考えております。
次にチームとしての配慮につきましては,詳しいことは申し上げられませんが,各社の
コスト負担は,リターンの多いところがコストを負担するのが基本です。新しい事業者が
参画する際も,適宜配分を計算し直します。それを全て統括しているのが運営員会であり,
西鉄は幹事会社として事務局の役割担っておりますが,客観性を持たせるためにも,九州
バス協会の中の組織として,運営委員会の指示に従って役割を果たすことを心がけていま
す。
福田エグゼクティブディレクター
ありがとうございます。まさにビジネスとして関係している方々が,それぞれ利益を上
げられるようにお互い配慮しながら進められているということが,よくわかりました。本
当に,ありがとうございました。
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