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県民まちなみ緑化事業(第2期) 評価・検証にかかる報告書 (案)

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県民まちなみ緑化事業(第2期) 評価・検証にかかる報告書 (案)
資料4
県民まちなみ緑化事業(第2期)
評価・検証にかかる報告書
(案)
平成27年
兵
庫
月
県
-目
Ⅰ
第2期事業(H23~27)の概要
Ⅱ
事業実績
次-
……………………………………………
P1
-緑の量的拡大-
1
年度別の事業実績
2
地域別の事業実績…………………………………………………………… P2
3
緑化手法別の事業実績
3-1 一般緑化……………………………………………………………
3-2 校園庭の芝生化……………………………………………………
3-3 ひろばの芝生化……………………………………………………
3-4 駐車場の芝生化……………………………………………………
3-5 建築物の屋上緑化・壁面緑化……………………………………
Ⅲ
第2期事業の効果
1
2
3
………………………………………………………… P2
P4
P5
P6
P7
P8
-緑の質的向上-
事業効果の評価・検証
1-1 事業効果の評価・検証 …………………………………………
1-2 花緑検討小委員会による検討 …………………………………
事業効果① -緑が本来持つ公益的な効果-
2-1 環境効果
(1) ヒートアイランド現象緩和効果 ………………………
(2) 二酸化炭素低減効果 ……………………………………
(3) その他の環境効果 ………………………………………
2-2 景観効果
(1) 景観向上効果 ……………………………………………
2-3 防災効果
(1) 都市型水害発生リスク低減効果 ………………………
(2) 樹木による延焼防止効果 ………………………………
(3) 建物倒壊防止・落下物飛散防止効果 …………………
事業効果② -緑の活用による波及的な効果-
3-1 環境学習効果 …………………………………………………
3-2 教育環境向上効果 ……………………………………………
3-3 コミュニティ形成効果 ………………………………………
3-4 心理的効果 ……………………………………………………
P9
P9
P11
P16
P17
P18
P23
P25
P26
P27
P28
P29
P30
\\lb12z0672\都市政策課\緑化政策係\01 県民まちなみ緑化事業\報告書作成(山田作成中)\_委員会で提出した時点のもの
\15.06.30_H27①小委員会配布時点.docx
3-5
3-6
4
………………………………………………… P31
………………………………………………… P31
費用対効果
(1) 環境・景観面の費用対効果 ………………………………………
(2) 防災面の費用対効果 ………………………………………………
P34
P35
効果の特徴と課題
5-1 効果の特徴
(1) 緑化活動の全県的な広がり ……………………………
(2) 緑の活用による波及的効果の創出 ……………………
(3) 費用対効果の高い緑化の推進 …………………………
P36
P38
P41
5
5-2
Ⅳ
地域核の再生
その他の効果
課題
(1) 緑の量の地域的偏在 ……………………………………
(2) 大規模な都心緑化に非対応 ……………………………
(3) 維持管理不良の存在 ……………………………………
P42
P43
P44
今後の展開方向
1
緑の少ない人口集中地区における緑化を優先的に推進
…………
2
校園庭の芝生化の推進
3
大規模な都心緑化の支援 ……………………………………………
4
適切な維持管理の推進
P46
……………………………………………… P46
P46
……………………………………………… P46
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Ⅰ
第2期事業(H23~27)の概要
1 事業目的
都市の環境改善や防災性向上を図ることを目的に、平成 18 年度から導入された県
民緑税を活用し、住民団体等が実施する植樹や芝生化などの緑化活動を支援している。
2 対 象 者
・自治会、婦人会、老人会などの住民団体
・緑化などのテーマを目的として活動する団体、グループ
・まとまった面積(100 ㎡以上)の緑化が可能な土地所有者等(個人、法人等)
3 対象地域
年度
H23、24
住民団体が公共用地で実施
個人・法人等が実施
・市街化区域(都市計画法第7条)
・同 左
・非線引き都市計画区域(用途地域が定め
られた区域)(同法第8条)
・まちの区域(緑豊かな地域環境の形成に
関する条例(以下「緑条例」という。)
第9条第1項第4号) など
H25~
上記に加え、下記を対象地域に追加
・同 上(変更なし)
・市街化調整区域(都市計画法第7条)
・非線引き都市計画区域(用途地域の指定
のない区域)
・さとの区域(緑条例第9条第1項第3号)
ただし、校園庭の芝生化は県下全域が対象
4 緑化内容
・一般緑化(空地等への植樹)
・ひろばの芝生化(平成 24 年度から実施)
・建築物の屋上緑化・壁面緑化
5 補助対象及び補助率
年度
住民団体が公共用地で実施
H23、24 下記の実費相当額
・緑化資材費
・自主施工困難な施工費
H25~
同 上
6 事業期間
平成 23~27 年度(第2期)
-1-
・校園庭の芝生化
・駐車場の芝生化
個人・法人等が実施
下記の実費相当額
・緑化資材費
下記の経費の合計の 1/2 以内
・緑化資材費
・施工費
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Ⅱ
事 業 実 績
-緑の量的拡大-
1
年度別の事業実績
○
第2期事業では、平成23~26年度の4ヶ年で696件、約1,657百万円の補助を実施
し、約51haの緑化が行われた。
○ 内訳は一般緑化が最も多く全体の53%、次に校園庭の芝生化が18%となっている。
○ また、第1期事業からの累計件数では、平成18~26年度の9ヶ年で1,641件、約
4,285百万円の補助を実施し、約112haの緑化が行われた。
表
年度別事業実績
第1期
小 計
件
数 (件)
第
H23
H24
2
H25
期
H26
小
計
合
計
945
91
144
216
245
696
一般緑化
476 (50%)
39
72
131
124
366 (53%)
842 (51%)
校園庭の芝生化
174 (18%)
26
39
30
33
128 (18%)
302 (18%)
14
27
42
83 (12%)
83 (5%)
ひろばの芝生化
※
-
-
1,641
駐車場の芝生化
239 (25%)
15
13
25
42
95 (14%)
334 (20%)
屋上・壁面緑化
56 (6%)
11
6
3
4
24 (3%)
80 (5%)
事業費 (千円) 2,628,290 211,584 316,400 510,432 618,118 1,656,534
植樹本数
362 千本 25 千本 49 千本 96 千本 75 千本
4,284,824
245 千本
607 千本
芝生化面積
23 ha
5 ha
7 ha
6 ha
8 ha
25 ha
48 ha
緑化面積
61 ha
7 ha
11 ha
16 ha
17 ha
51 ha
112 ha
※)ひろばの芝生化は平成 24 年度から実施
注)表示単位未満四捨五入の関係で積み上げと合計が一致しない場合がある。
2
地域別の事業実績
○ 地域別の事業実績をみると、神戸地域が最も多く全体の約2割(18%)を占め、
続いて、阪神南地域(16%)、中播磨地域(14%)となっている。
○ 次に地域別の特徴をみると、神戸、阪神南、阪神北、東播磨、丹波、淡路地域で
は、一般緑化の実施割合が最も高くなっている。
○ 特に、神戸、阪神南、阪神北地域では、地域における実施件数の70%以上を一般
緑化が占めている。
○ 北播磨地域では、ひろばの芝生化が最も多く、地域における実施件数の33%を占
めている。
○ 中播磨地域では、駐車場の芝生化が最も多く、地域における実施件数の41%を占
めている。
○ 西播磨、但馬地域では、校園庭の芝生化が最も多く実施されているのが特徴であ
り、特に但馬地域では、地域における実施件数の63%を占めている。
-2-
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図 地域別(県民局別)事業実績
平成 23 年度~平成 26 年度
件数ベース
-3-
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3
緑化手法別の事業実績
3-1 一般緑化
○ 空地、広場、公園、道路や河川沿い、土石採取跡地などへの植樹を行う住民団
体等に対し、緑化に係る費用を補助している。
○ 第2期事業では、平成23~26年度の4ヶ年で366件に補助し、約24万本が植樹さ
れた。
○ 内訳は学校・公園内の植樹が約47%、施設敷地内の植樹が19%となっている。
表
一般緑化の実績
第1期
小
件
計
第
H23
H24
2
期
H25
H26
小
計
合
計
数(件)
476
39
72
131
124
366
842
学校・公園の植樹
193
17
37
53
66
173
366
団地内の植樹
127
8
14
17
18
57
184
69
86
9
5
6
14
32
25
21
19
68
63
137
149
1
0
1
4
0
5
6
施設敷地内の植樹
道路・河川沿いの植樹
修景緑化・生垣
植樹本数(本)
高
木
低
木
346,174 25,256 47,613 95,042 74,651 242,562 588,736
20,064
1,240
2,050
5,010
5,913
14,213
34,277
326,110 24,016 45,563 90,032 68,738 228,349 554,459
【整備事例】
小学校内で地域住民と生徒たちが植栽(芦屋市)
地域の公園を町内会で植栽(加古川市)
<整備前>
<整備後>公園花壇を再整備(西宮市)
-4-
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3-2 校園庭の芝生化
○
学校とPTAの地域住民で構成する芝生化実行委員会等に対し、学校、幼稚園、
保育園等の校園庭の芝生化に係る費用を補助している。
○ 第2期事業では、平成 23~26 年度の4ヶ年で 128 件に補助し、約 15 万㎡が芝
生化された。
表
校園庭の芝生化の実績
第1期
小
第
2
計
174
H23
26
H24
39
H25
30
芝生化面積(㎡) 157,636
43,465
46,505
33,956
件
数(件)
期
H26
33
小
計
128
合
計
302
23,905 147,830 305,466
注)表示単位未満四捨五入の関係で積み上げと合計が一致しない場合がある。
【整備事例】
芝生化された幼稚園の園庭(神戸市)
小学校の生徒たちによる芝張り(太子町)
芝生化された中学校の校庭(猪名川町)
芝生化された高等学校の中庭(淡路市)
<整備中>生徒たちによる芝張り
<整備後>芝生化された中学校の校庭(西宮市)
-5-
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3-3 ひろばの芝生化
○ 公園、広場、グラウンド等の芝生化を行う住民団体等に対し、芝生化に係る費
用を補助している。
○ 平成 24 年度より事業実施し、平成 24~26 年度の3ヶ年で 83 件に補助し、約7
万㎡が芝生化された。
表
ひろばの芝生化の実績
第1期
小
数(件)
-
H23
-
芝生化面積(㎡)
-
-
件
計
第
2
期
H24
14
H25
27
H26
42
15,312
21,711
36,634
小
計
83
73,656
合
計
83
73,656
※ひろばの芝生化は平成 24 年度より実施
注)表示単位未満四捨五入の関係で積み上げと合計が一致しない場合がある。
【整備事例】
地域住民の交流広場を芝生化(加西市)
芝生化された公園(芦屋市)
施設内の敷地を芝生化(篠山市)
地域の公園とその法面を芝生化(福崎町)
<整備中>地域の子どもたちによる芝張り
<整備後>芝生化された地域の広場(高砂市)
-6-
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3-4 駐車場の芝生化
○ 駐車場の芝生化を行う駐車場の所有者・管理者等に対し、芝生化に係る費用を
補助している。
○ 第2期事業では、平成 23~26 年度の4ヶ年で 95 件に補助し、約2万㎡が芝生
化された。
表
駐車場の芝生化の実績
第1期
小
第
2
期
計
239
H23
15
H24
13
H25
25
H26
42
芝生化面積(㎡) 55,936
3,130
2,667
5,419
10,927
件
数(件)
小
計
95
22,143
合
計
334
78,079
注)表示単位未満四捨五入の関係で積み上げと合計が一致しない場合がある。
【整備事例】
コンクリートブロック型の芝生化駐車場(尼崎市)
プラスチックマット型の芝生化駐車場(神戸市)
老人福祉施設の芝生化駐車場(宝塚市)
歩行性に配慮した芝生化駐車場(高砂市)
<整備前>未舗装の駐車場
<整備後>コンクリートブロックで補強の
芝生化駐車場(養父市)
-7-
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3-5 建築物の屋上緑化・壁面緑化
○ 建築物の屋上・壁面緑化を行う建築物の所有者や管理者等に対し、緑化に係る
費用を補助している。
○ 第2期事業では、平成 23~26 年度の4ヶ年で屋上緑化は 21 件の補助を行い、
約 100 本の植樹と約5千㎡の芝生化が、壁面緑化は3件の補助を行い、約 400 ㎡
の緑化が実施された。
表
建築物の屋上緑化・壁面緑化の実績
第1期
小
件
屋
上
計
第
H23
H24
2
期
H25
H26
小
計
合
計
数(件)
50
10
5
2
4
21
71
植樹本数(本)
8,648
0
13
81
15
109
8,757
362
0
0
16
15
44
406
8,286
6,475
0
1,827
13
1,027
65
391
0
1,819
65
5,064
8,351
11,539
6
1
1
1
0
3
9
632
145
120
171
0
436
1,068
高
木
低 木
芝生化面積(㎡)
数(件)
壁 件
面 緑化面積(㎡)
注)表示単位未満四捨五入の関係で積み上げと合計が一致しない場合がある。
【整備事例】
樹木と芝生による屋上緑化(姫路市)
芝生による屋上緑化(西宮市)
登はん型による壁面緑化(播磨町)
基盤造成型による壁面緑化(伊丹市)
-8-
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Ⅲ
参
第2期事業の効果
-緑の質的向上-
考:緑の質とは(ひょうご花緑創造プラン)
国土・地球環境の保全、都市の防災、地域の景観、生物の生息の場、レクリエーションの
場など、樹木の公益的役割は良く知られている。
また、美しい景観、心の癒し、まちづくりやボランティア活動のきっかけなど、花づくり
の取組みにも多くの役割がある。
本プランでは、花と緑の持つ様々な役割を質として捉え、その役割が最大限に発揮される
ようにして、質の向上に取り組んでいく。
(出典:ひょうご花緑創造プラン(平成 19 年 7 月策定)P2)
1
事業効果の評価・検証
1-1 評価・検証に係る調査
事業の評価・検証にあたり、次の調査を実施した。
(1) 事業実施箇所の生育状況調査
事業実施箇所を現地確認し、生育状況等について調査を行った。
なお、生育状況調査は、事業実施後5ヶ年度を経過するまでの間、毎年実施し
ている。
(2) 事業効果の評価・検証
以下の調査を実施し、事業効果の評価・検証を行った。
・サーモグラフィ調査
・平均放射温度(MRT)※調査
・緑視率調査
・事業実施した住民団体等へのヒアリング調査、アンケート調査
など
※
平均放射温度(MRT);周囲の全方位から受ける放射熱を平均化した場合の表面温度
(3) 制度運用の妥当性の検証
県民を対象とした県民モニター調査※(アンケート調査)や事業実施した住民
団体、学校関係者等へのヒアリング調査などから、制度運用の妥当性について検
証を行った。
※
県民モニター調査; 身近な県政課題等について事前登録している県民(県民モニター)に
対し、インターネットにより行うアンケート調査
1-2 花緑検討小委員会による検討
まちづくり審議会の部会として、都市緑地、地域計画、住民参画等の専門家及び
公募委員の計7名からなる花緑検討小委員会を設置し、専門的な観点から評価・検
証に係る手法や内容について検討を行った。
-9-
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2
事業効果①
-緑が本来持つ公益的な効果-
緑が本来持つ公益的な効果とは、緑が存在することにより当然に発現される効果
のことを言い、この効果を環境、景観、防災効果に大別し、サーモグラフィ調査、
平均放射温度(MRT)調査、緑視率調査、事業実施した住民団体等へのヒアリン
グ調査などにより、効果の検証を行った。
表
緑が本来持つ公益的な効果の分類
効 果 の 分 類
2-1 環境効果
(1) ヒートアイランド現象緩和効果
① ヒートアイランド現象の緩和
② 地表面温度の低下
③ 緑陰形成による体感温度低減
④ 涼しさの実感
⑤ 屋上緑化による消費電力削減
(2) 二酸化炭素低減効果
(3) その他の環境効果
① 防塵
② 大気浄化
③ 騒音防止
2-2 景観効果
(1) 景観向上効果
(1) 都市型水害発生リスク低減効果
2-3 防災効果
(2) 樹木による延焼防止効果
(3) 建築物倒壊防止・落下物飛散防止効果
- 10 -
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2-1 環境効果
○ 第2期事業では緑地面積を 51.4ha 増加させ、ヒートアイランド現象緩和に寄与
○ サーモグラフィ調査、平均放射温度調査により、緑化による地表面温度、体感温
度の低下を確認
(地表面温度:校園庭芝生化:-5℃、駐車場芝生化:-10℃、屋上緑化:-30℃)
○ 植樹した約 24 万本の樹木が、年間約 1,402 トンの二酸化炭素を吸収
(ガスタンク 54 基、公園約 131ha 分の吸収量に相当)
(1) ヒートアイランド現象緩和効果
①
ヒートアイランド現象の緩和
近年、都市においてはヒートアイランド現象の進行が見られるなど熱環境が
著しく悪化している。
都市の熱環境の悪化は、熱中症の増加、熱帯夜の増加、熱雷の発生による局
所的な集中豪雨の増加、蚊などの媒介生物を通しての感染症(デング熱など)
リスクの増加など、社会に大きな影響を及ぼしている。
緑化には、高温・強日射下において、気温、表面温度、輻射熱量を低下させ、
局所的にヒートアイランド現象を緩和する効果がある。
当事業では、第2期(平成 23~26 年度)の4ヶ年で 51.4ha の緑化を行った。
そして、これらの緑地が局所的にヒートアイランド現象を緩和し、周辺地域
の微気象に良好な影響を及ぼしていると考えられる。
図 ヒートアイランド現象の仕組み
(出典:兵庫県ヒートアイランド対策推進計画)
- 11 -
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参
考:神戸における気温、熱帯夜の長期変動
1
神戸における気温の長期変動
神戸地方気象台の観測による年ごと
の平均気温の経年変化は右のとおりで
ある。年平均気温は長期的に有意な上
昇傾向を示しており、100 年あたり
1.29℃(統計期間:1897~2012 年)の
割合で上昇している。
2
神戸における熱帯夜の長期変動
神戸地方気象台の観測による熱帯夜(日最低気温
25℃以上の日)の年間日数の経年変化(1931~2012
年)は右のとおりである。長期的な変化傾向を調べ
た結果、熱帯夜は有意な増加傾向がみられる(統計
期間 1931~1998 年)。熱帯夜は 1931 年~1940 年の
平均 10 日から 1989 年~1998 年の平均では 26 日に
増加した。
(出典:大阪管区気象台;近畿地方の気候変動(2013 年版)第 4 章 4-7 兵庫県の気候変動)
参
考:ヒトスジシマカ(デング熱媒介蚊)の分布と年平均気温の関係
ヒトスジシマカは、デング熱の媒介蚊として知られている。下図はヒトスジシマカの分布
と年平均気温との関係を示したものである。ヒトスジシマカの分布は、年平均気温 11℃以上
の地域とほぼ一致しており、1950 年以降、分布域は東北地方を徐々に北上していく傾向がみ
られる。岩手県では、2009 年と 2010 年の調査で、北限地点が約 30km 北上したことが確認さ
れ、これは気温の上昇が影響しているとの報告がある。ヒトスジシマカの分布拡大は、直ち
にデング熱等の流行に結びつくものではないが、今後デング熱流行のリスクを有する地域が
拡大していくことを示唆していると言える。
図 ヒトスジシマカの分布(左)と年平均気温との関係(右)
(出典:文部科学省、気象庁、環境省;気候変動の観測・予測及び影響評価統合レポート『日本の気
候変動とその影響』(2012 年度版)
)
- 12 -
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\15.06.30_H27①小委員会配布時点.docx
②
地表面温度の低下
当事業で緑化した校園庭、駐車場、建築物の屋上と緑化していない箇所を比
較し、表面温度がどの程度下がっているかをサーモグラフィ調査により確認し
た。
この結果、校庭を芝生化することによって地表面温度が約5℃、アスファル
ト駐車場を芝生化することによって表面温度が約 10℃、建築物の屋上を緑化す
ることによって屋上表面温度が約 30℃低下している事例を確認できている。
校園庭の芝生化|芝生部分(42.6℃)と裸地部分(47.5℃)の温度差:約5℃
42.6℃
47.5℃
校園庭の芝生化のサーモグラフィ調査(平成 21 年9月)
駐車場の芝生化|芝生化駐車場(32.4℃)と隣接道路(41.9℃)の温度差:約 10℃
32.4℃
41.9℃
駐車場の芝生化のサーモグラフィ調査(平成 21 年9月)
屋上緑化|緑化屋上(38.1℃)と非緑化屋上(66.4℃)の温度差:約 30℃
38.1℃
66.4℃
屋上緑化のサーモグラフィ調査(平成 21 年9月)
- 13 -
\\lb12z0672\都市政策課\緑化政策係\01 県民まちなみ緑化事業\報告書作成(山田作成中)\_委員会で提出した時点のもの
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③
緑陰形成による体感温度低減
緑陰は放射熱を低減させ、体感温度低減効果を有
すると言われている※1。
そこで、当事業の実施箇所において、平均放射温
度(MRT) ※2を測定し、緑陰(緑化箇所)と非緑化
箇所の体感温度の違いを測定し、体感温度低減によ
る人の感じる快適性の変化を快適指数(PMV)※3を
用いて分析した。
緑陰形成による体感温度
低減のイメージ※1
調査|煉瓦倉庫西広場植栽(神戸市中央区)
1.測定状況
測定場所:煉瓦倉庫西広場植栽(神戸市中央区)
測定日時:平成 26 年 11 月 4 日 12:40~13:15
(緑化区:緑陰内)
(対照区:非緑化箇所)
2.測定結果
○ 平均放射温度は緑化区(緑陰内)では43.4℃、対象区(非緑化箇所)では60.9℃
であり、緑陰内の方が17.5℃低い結果となった。
○ また、快適指数は緑化区(緑陰内)では-0.1(ほぼ快適)、対象区(非緑化箇
所)では1.2(やや暖かい)であり、緑陰内の方が快適性が高いことが分かった。
○ これらの結果より、緑陰により平均放射温度が低減し、非緑化箇所よりも体感
温度が低減し、快適性の高い空間を形成していることが確認できた。
図
平均放射温度(MRT)
図
90
80
2
70
1
60
PMV
温度(℃)
快適指数(PMV)
3
50
40
0
12:40 12:45 12:50 12:55 13:00 13:05 13:10 13:15
-1
30
-2
20
-3
10
12:40 12:45 12:50 12:55 13:00 13:05 13:10 13:15
緑化区気温
対照区気温
緑化区平均放射温度
対照区平均放射温度
- 14 -
緑化区PMV
対照区PMV
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当事業では、第2期の4ヶ年(平成 23~26 年度)で約 14,400 本の高木を植
栽し、緑陰面積が約 14.4ha 増加したと推計される。
そして、これらの緑陰が局所的な体感温度の低減や快適性の向上に寄与して
いると考えられる。
※1
※2
※3
環境省水・大気環境局大気生活環境室(2012);「ヒートアイランド対策マニュアル
~最新状況と適応策等の対策普及に向けて~」pp.111、120
平均放射温度(MRT);周囲の全方位から受ける放射熱を平均化した場合の表面温度
快適指数(PMV);温度環境に関する6要素(空気温度、平均放射温度、気流(風)、
湿度、着衣量、代謝量)から求められ、次の7段階の感覚量で示される。
(-3:寒い、
-2:涼しい、-1:やや涼しい、0:どちらでもない、1:やや暖かい、2:暖かい、3:暑い)
屋内環境の温熱指標として用いられることが多いが、暑すぎず寒すぎない 11 月の調
査のため、屋外環境への適用も可能と判断した。
④
涼しさの実感
緑化箇所の利用者、管理者、所有者等へのアンケート調査では、校園庭の芝
生化では 69%が、駐車場の芝生化では 67%が、緑化により周りの裸地やアス
ファルト道路と比べ「夏場に涼しくなった」と実感していることが確認された。
また、全体でも 44%が夏場に涼しさを感じていることから、緑化箇所付近
において夏季の温度低下に関する局所的な効果があると考えられる。
校園庭の芝生化
69%
駐車場の芝生化
全
図
67%
体
44%
0%
20%
40%
60%
80%
100%
夏場に涼しくなったと実感する割合(アンケート調査)
⑤
屋上緑化による消費電力削減
屋上緑化を行うことにより、夏季の屋上直下階の温度が下がり、エアコンの
消費電力が削減し、人工排熱が減少するため、ヒートアイランド現象の緩和に
一定の効果がある。
実物大建物実験の解析例では、屋上緑化により直下階で消費電力が3割程度
削減されたという報告※がなされている。
(ただし、建築物の断熱仕様や開口部
の状況等により、緑化した屋上の直下階の温度低下や消費電力削減量には大き
な差がある。)
※
山田宏之・田中明則・奥田芳雄・一柳隆治(2008)
「高保水性外装資材による省エネル
ギー効果の実物大建物実験と解析」
『土木学会環境システム研究論文集』vol.36,pp.419
~425.
- 15 -
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(2) 二酸化炭素低減効果
近年、地球温暖化防止のため、二酸化炭素低
減が必要とされている。
樹木は大気中の二酸化炭素を吸収し、光合成
を行うため、植樹を行うことは二酸化炭素低減
に寄与し、地球温暖化防止の一助となり得る。
国土交通省の調査等※では二酸化炭素吸収量
(林野庁ホームページより)
は、高木1本あたり 33.4kg-CO2/年、低木1本あたり 4.0kg-CO2/年とされている。
これをもとに、第2期事業で植樹した約 24 万本(高木 14,400 本、低木 230,300
本)の年間二酸化炭素吸収量を推計した結果、年間約 1,402 トンの二酸化炭素を
吸収していることが判明した。
※
国土交通省都市・地域整備局公園緑地・景観課(2009)
;国土交通省資料「都市緑化(植生
回復)による温室効果ガス吸収量の算定方法について」
島根県;環境学習プログラム『まち・むらの緑を調べよう~葉っぱ博士になろう~』pp.8
①
第2期事業で植樹した樹木約 24 万本の二酸化炭素吸収量(年間)
○
○
高
低
木: 14,400本 × 33.4(kg-CO2/本・年)= 480,960(kg-CO2/年)
木:230,300本 × 4.0(kg-CO2/本・年)= 921,200(kg-CO2/年)
合
計(高木+低木)
②
1,402,160(kg-CO2/年)
= 1,402(トン-CO2/年)
第2期事業による二酸化炭素吸収量(年間)の換算
ガスタンクに換算
第2期事業
における
二酸化炭素
吸 収 量
①のCO2吸収量を体積に換算
1,402,160kg-CO 2 /年×24/44(体積重量
比)=764,815m3/年(20℃1気圧)
ガスタンク(直径30m、14,130m3)に換算
764,815m3/年÷14,130m3/基≒54基/年
換算
54基分に相当
1,402,160
(kg-CO2/年)
公園面積に換算
換算
131ha 分に相当
- 16 -
公園1haあたりの年間CO2吸収量を推計
高木200本/ha×33.4kg-CO2/本・年
+低木1,000本/ha×4kg-CO2/本・年
=10,680kg-CO2/年・ha
(公園の平均樹木本数を高木200本/ha、低木
1,000本/haと設定(東京都公園協会HP参考))
公園面積に換算
1,402,160kg-CO 2 / 年 ÷ 10,680kg-CO 2 /
年・ha≒131ha
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(3) その他の環境効果
①
防塵
芝生化には、地表面からの土埃や砂埃の飛散を防止する防塵効果がある。
当事業の緑化箇所の利用者、管理者、所有者等へのアンケート調査において
も、校園庭の芝生化では 63%、ひろばの芝生化では 64%、駐車場の芝生化で
は 42%が、防塵効果を実感していることが確認できた。
校園庭の芝生化
63%
ひろばの芝生化
64%
駐車場の芝生化
図
42%
0%
20%
40%
60%
80%
防塵効果を実感する割合(アンケート調査)
100%
②
大気浄化
植物による大気浄化効果として、大気汚染物質そのものを除去する「沈降、
吸着、吸収」の効果と物質濃度を低下させる「拡散、希釈」の効果がある。
近年、微小粒子状物質(PM2.5)
や黄砂の影響などによる浮遊粒
子状物質(SPM)が環境基準を超
過するケースがあることから、植
物による大気浄化の効果が期待
されている。
樹木により大気が浄化される仕組み
(社)道路緑化保全協会:緑の情報シートより
③
騒音防止
植物による騒音防止効果として、物理的に音を「緩衝、遮音」する効果と人
間の心理に働きかける「音響改善、視覚心理」効果がある。
緩衝効果は、距離による音の自然衰退により騒音を緑地内に留めるものであ
り、遮音効果は、植物に反射・吸音させて騒音を防止するものである。
また、音響改善効果は、緑地か
らの自然の音などを加えること
で快適性を高めるものであり、視
覚心理効果は、緑による安らぎ感
により騒音の不快感を減じるも
のである。
騒音を和らげる緑のはたらき
(社)道路緑化保全協会:緑の情報シートより
- 17 -
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2-2 景観効果
○
○
○
景観向上に寄与する事例が数多く創出され、街なかの緑視率が向上
街なかの緑に対し景観を美しくする機能を重要と思う割合:53%
事業実施箇所の景観向上を実感している割合:81%
(1) 景観向上効果
①
緑視率調査
街路樹や空地への植栽、花壇整備など、緑地には地域景観を向上させる効果
がある。国土交通省調査※では、景観向上を示す指標である緑視率(景色の中
に緑が見える割合)がおよそ 25%を越えると緑が多いと感じはじめるとされ
ている。
そこで、当事業の実施箇所において、緑化前と緑化後を比較し、緑視率の増
加が景観へ与える影響などについて調査した。
※
国土交通省都市・地域整備局公園緑地課緑地環境推進室(2005);「都市の緑量と心理的効果の相関関
係の社会実験調査について~真夏日の不快感を緩和する都市の緑の景観・心理効果について~」
)
緑視率調査Ⅰ|煉瓦倉庫西広場植栽(神戸市中央区)
1.地点選定:観光客等の施設利用者の動線上であるとともに、事業実施対象地への
視界が開ける地点を選定
事業前|イメージ
事業後|現況
それぞれについて緑を抽出し、緑視率を測定
緑視率 40.2%
緑視率 22.7%
2.効 果
○ 事業実施により緑視率が 17.5%上昇し 40.2%となり、緑が多いと感じ始める緑
視率 25%を超え、当事業が景観向上に寄与していることがうかがえた。
○ また、緑視率の上昇により景観の質が高まり、県民の満足度の高い緑化が行わ
れていることが推察される。
- 18 -
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緑視率調査Ⅱ|社屋壁面緑化(神戸市中央区)
1.地点選定:社屋入口に接する歩道上であり、人々が事業実施箇所の緑(壁面緑化
部分)を認識しやすい地点を選定
事業前|イメージ
事業後|現況
それぞれについて緑を抽出し、緑視率を測定
緑視率 55.8%
緑視率 35.1%
2.効 果
○ 事業実施により緑視率が 20.7%上昇し 55.8%となり、当事業が景観向上に寄与
していることがうかがえた。
○ 今後さらに壁面緑化が生育することにより、緑視率が増加し、ボリューム感の
ある質の高い緑地となることが期待される。
参
考:都市の緑量と心理的効果の相関関係の社会実験調査について
~真夏日の不快感を緩和する都市の緑の景観・心理効果について~
○
東京都心の再開発地区で行った、都市の緑量と心理的効果の相関関係を解析する社会実
験調査結果(調査日:平成 16 年 7 月)
○
緑視率が高まるにつれ、
「安らぎ感」
「さわやかさ」
「潤い感」などの心理的効果が向上す
る傾向が見られる。
(出典:国土交通省都市・地域整備局公園緑地課緑地環境推進室(2005);「都市の緑量と心理的効果の
相関関係の社会実験調査について~真夏日の不快感を緩和する都市の緑の景観・心理効果に
ついて~」
)
- 19 -
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②
景観向上に寄与した事例
地域公園の花壇を再整備した事例(西宮市)
before
緑視率 43.0%
after
緑視率 79.1%
沿道空地にアジサイを植栽した事例(西宮市)
before
緑視率 31.5%
after
緑視率 80.0%
学校敷地への植栽事例(尼崎市)
before
緑視率 21.1%
after
緑視率 69.1%
道路法面への植栽事例(伊丹市)
before
緑視率 15.5%
- 20 -
after
緑視率 71.4%
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中学校校庭を芝生化した事例(西宮市)
before
緑視率 2.9%
after
緑視率 72.6%
公民館駐車場を芝生化した事例(養父市)
before
緑視率 28.1%
after
緑視率 68.6%
ビル屋上を芝生化した事例(西宮市)
before
緑視率 9.8%
- 21 -
after
緑視率 68.7%
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③
景観向上に関するアンケート調査
県民を対象としたアンケート調査(平成 26 年度第2回県民モニター調査)
においても、街なかの緑が持つ機能で特に重要と思うものは何かとの質問に対
し、回答者の 53%が「景観を美しくする」と回答した。このことから、県民
が緑化に対し、景観向上の効果を期待していることが見てとれる。
55.6%
見る人の心をなごませる
53.0%
景観を美しくする
49.2%
二酸化炭素を吸収し、地球温暖化を防止する
44.4%
気温上昇(ヒートアイランド現象)をおさえる
34.1%
多様な生き物の生息環境を提供する
24.5%
夏季に涼しさを感じさせる
15.2%
火災の延焼防止など災害を防ぐ
周りの騒音を小さくする
4.8%
その他
1.0%
わからない
0.3%
図
0%
20%
40%
60%
80%
100%
街なかの緑が持つ重要と思う機能(H26 年度第2回県民モニター調査)
また、当事業による緑化箇所の利用者、管理者、所有者等へのアンケート調
査によると、81%が実施箇所の地域景観向上を実感していることが明らかにな
った。
全
体
81%
(一般緑化)
78%
(校園庭・ひろばの芝生化)
90%
(駐車場の芝生化)
79%
(屋上・壁面緑化)
54%
0%
図
20%
40%
60%
80%
実施箇所の景観向上を実感する割合(アンケート調査)
- 22 -
100%
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2-3 防災効果
○
○
地表面をアスファルト等から芝生に変えることで浸透面約 50ha を創出し、都
市の水害リスク低減に寄与
樹木の延焼防止効果により、火災時に安全に避難できる幅が約 3.5m、延べ約
2.7km 増加
(1) 都市型水害発生リスク低減効果
近年、開発や都市化の進行による緑地の減少、気象変
化などを背景に局地的大雨が多発し、従来よりも雨水の
流出が増え、浸水による被害が拡大してきている。
そこで、これまでの治水対策だけではなく、雨水を一
時的に貯留・地下に浸透させる対策が重要となってきて
いる※1。
大雨で道路が浸水している様子
(神戸市)※2
雨水は地表面より土壌中に浸透し、一般的に柔らかくて水が浸透する空隙のあ
る土壌は浸透する能力(浸透能)が高い傾向にある。
当事業では、アスファルトや裸地を植栽や芝生に変えているので、地表に浸透
面が増加する。その結果、局所的に地域の浸透能が向上し、水害発生リスク低減
に役立っていると考えられる。
※1
兵庫県県土整備部土木局総合治水課 HP
https://web.pref.hyogo.lg.jp/ks13/sougouchisui-jyorei.html
※2
兵庫県県土整備部土木局総合治水課;『みんなでとりくもう!「総合治水」水害から命
と暮らしをまもるため』
①
浸透面増加面積(平成 23~26 年度)
・芝生化(校園庭、ひろば、駐車場等)242,463 ㎡
・植 樹(屋上緑化除く)
258,472 ㎡
合
計
500,935 ㎡
②
=
50ha
浸透増加容量(平成23~26年度)
・裸地を芝地、植栽地にしたことによる浸透能力の向上(1㎡、1時間あたり)
0.05m3/㎡・h-0.002m3/㎡・h=0.048m3/㎡・h
(浸透能力を裸地0.002m3/㎡・h、芝地・植栽地0.05m3/
㎡・hとして算出(東京都総合治水対策協議会(2009)
「東京都雨水貯留・浸透施設技術指針」)
・増加した浸透容量を算出(1時間あたり)
500,935㎡×0.048m3/㎡・h=24,045m3/h
・25mプール(1.2m×25.0m×12.0m=360m3)に換算
すると、1時間あたり67杯分の浸透容量の増加(24,045m3/h÷360m3=67杯/h)
- 23 -
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一方、屋上緑化には、雨水貯留効果と雨水排水の遅延効果という2つの効果が
ある。
一般的に屋上緑化で用いられる人工土壌は、地植えに用いる土壌に比べ、有効
水分量が高いため、雨水貯留効果があると言える。
また、雨水排水の遅延効果について、厚さ6
cm の土壌を用いた屋上緑化では、全体の降雨
量の1/2を排出するのに要する時間が、緑化
していない場所に比べ、人工土壌のみの場所で
約3分、人工土壌に芝を張った場所で約6分遅
いという実験結果がある※。
屋上緑化による雨水排出遅延効果※
※
参
出典:財団法人都市緑化技術開発機構、特殊緑化共同研究会編(2003)『知っておきたい
屋上緑化のQ&A』,pp.24-25.(鹿島出版会)
考:近年の集中豪雨の増加
(出典:気象庁 HP
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/info/heavyraintrend.html)
- 24 -
\\lb12z0672\都市政策課\緑化政策係\01 県民まちなみ緑化事業\報告書作成(山田作成中)\_委員会で提出した時点のもの
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(2) 樹木による延焼防止効果
建築物に近接して行われる植樹には、火災時に建
物から出る火炎輻射熱を遮断する効果がある。
阪神・淡路大震災後の調査※1でも、公園内や宅地
内の樹木群が隣家への延焼を食い止めた事例や生け
垣が輻射熱の遮断や低減に役立ったと見られる事例
が報告されている。
発災時の延焼防止帯として機能
阪神・淡路大震災時の大国公園
(神戸市長田区)
そこで、当事業で行った植樹により、火災時に人
が安全に避難することができる距離(以下「安全距離」という。)がどれだけ増
加しているかを推計したところ、樹木の成長により、10 年後には安全距離が概
ね 3.5m増加することが確認できている※2
また、第2期事業では、建築物に近接する箇所での植栽(一般緑化)が 303 件
実施されており、これらの樹木(高木:約 11,000 本)が成長することで、10 年
後には、幅約 3.5mの安全な区域が延べ約 2.7km 分増加することが推計できた。
※1
※2
社団法人日本造園学会阪神大震災調査特別委員会(1995)
『公園緑地等に関する阪神大
震災緊急調査報告書』,pp.125-155.
兵庫県(2011)
『都市緑化推進検討調査報告書』,pp.77-81.
<安全距離の算出方法>
①
増加した安全な区域(安全距離の変化)の平均値
10 年後:3.549m≒3.5m
(兵庫県立淡路景観園芸学校(兵庫県立大学大
学院緑環境景観マネジメント研究科)
(出典:ランドスケープエンジニアリング研究
室)兵庫県(2011)『都市緑化推進検討調査
報告書』,pp.77-81.)
②
安全な区域(幅約 3.5m)が増加した箇所の緑化幅
緑化幅(近接建物幅)の平均値:約9m
建築物に近接する箇所での植栽件数(一般緑化のうち道路・河川沿いへの
植栽を除いた件数):303 件(平成 23~26 年度)
9m×303 件=2,727m≒2.7km
- 25 -
\\lb12z0672\都市政策課\緑化政策係\01 県民まちなみ緑化事業\報告書作成(山田作成中)\_委員会で提出した時点のもの
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(3) 建物倒壊防止・落下物飛散防止効果
阪神・淡路大震災後の調査で、街路樹が家屋の倒
壊を支え道路上への家屋の倒壊を防いだ事例やブ
ロック塀が前面にある樹木にもたれかかるように
して止まった事例等が報告されている。※1
また、建築物周囲の緑地や庭が、エアコンの屋外
機器、看板、壁面のタイルや窓ガラスなどの落下物
樹木が倒壊した家屋を支えた例
を受け止め、道路などへの飛散防止機能を果たした (出典:防災技術公園ハンドブック
(財)都市緑化技術開発機構
事例も報告されている※2。
公園緑地防災技術共同研究会編)
よって、当事業による街路樹や建築物周囲への植樹においても、樹木が成長す
ることで、このような防災効果の発揮が期待できる。
※1
社団法人日本造園学会阪神大震災調査特別委員会(1995)
『公園緑地等に関する阪神大震
災緊急調査報告書』,pp.117-124.
※2
日本造園学会阪神大震災調査特別委員会(1995)
「阪神大震災調査特別委員会緊急報告」
『ランドスケープ研究』58(3),pp.250~262.
参
考:阪神・淡路大震災時の樹木による建物等倒壊被害軽減効果
建物等被害軽減効果の事例は、神戸市灘区、東灘区、芦屋市、西宮市を中心にした調査で
57 カ所報告されている。しかし、巨大な構造物や大きな建物についての事例が確認できなか
ったことからも過度の期待は禁物であるといわれている。
樹木分類
対
家屋
ブロック塀
塀
象
ネットフェンス
物
電柱
電線
不明
総合計
街路樹
15
0
0
0
0
1
0
16
公
園
庭
木
0
17
0
14
0
4
1
1
0
2
0
0
0
1
1
39
不
明
0
0
1
0
0
0
0
1
件
数
32
14
5
2
2
1
1
57
(出典:社団法人日本造園学会阪神大震災調査特別委員会(1995)
『公園緑地等に関する阪神大震災緊
急調査報告書』,pp.117-124.)
- 26 -
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3
事業効果②
-緑の活用による波及的効果-
緑の活用による波及的効果とは、緑地整備、緑化活動を行うことにより、直接的
または間接的に住民にもたらされる効果のことを言い、この効果を環境学習、教育
環境向上、コミュニティ形成、心理的効果、地域核の再生等に大別し、効果の検証
を行った。
3-1 環境学習効果
近年、都市化、少子化などの社会の変化により、子どもたちの成長に欠かせない
自然と直接触れ合う機会が乏しくなってきている。
このような中、地域に身近な緑地があれば、野鳥や昆虫、植物の観察など、子ど
もたちに自然を体験する機会を提供することができる。
当事業においては、自然が少ない都市部において、学校内に生き物の生息・生育
の場となるよう整備したビオトープが、自然とのふれあいを深める環境学習の場と
して利用されている事例などがある。
また、当事業は、県民参画による緑化を理念とし、芝
張りや低木植栽などの作業を県民自らが行っている。
これにより、県民が自然に触れ合い、自然の素晴らし
さを再認識することにより、当事業が環境学習に一定の
地域住民や児童たちによる植栽
役割を果たしていると言える。
参
考:自然体験と自立的行動習慣の関係
自然体験を最も多く行っている
群における「困ったときでも前向
きに取り組む」
(図 204)の比率は、
最も行っていない群の「とても当
てはまる」の比率の3倍を超えて
いる。
自然体験を最も行っている群に
おける「勉強は得意な方だ」(図
220 ) の 「 と て も 思 う 」 の 比 率
(17.9%)は、最も行っていない
群における比率(3.3%)の5倍以
上である。
(出典:
「青少年の体験活動等と自立に関する実態調査」H22年度調査報告書(国立青少年教育振興機構))
- 27 -
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3-2 教育環境向上効果
学校、幼稚園、保育園等で行う校園庭の芝生化は、夏季の照り返しの抑制や運動
場の土埃、砂埃の飛散防止など、保育環境・教育環境の向上・改善に役立っている。
校園庭の芝生化を実施した学校、PTA等へのアンケート調査でも、63%が防塵
効果を、69%が夏季の涼しさを実感していることが分かった。
全
体
36%
(校園庭の芝生化)
図
全
63%
0%
20%
40%
60%
80%
防塵効果を実感する割合(アンケート調査)
体
44%
(校園庭の芝生化)
図
100%
69%
0%
20%
40%
60%
80%
夏場涼しくなったと実感する割合(アンケート調査)
100%
また、一般的に芝生化することで擦り傷などの怪我をしにくくなるため、外遊び
の機会が増加し、体力や運動能力が向上すると言われている。さらに、外遊びを通
じ、児童同士のコミュニケーション機会が増加するなど、芝生化にはコミュニケー
ション促進の効果があるとされている。
同アンケート調査でも、芝生化後、擦り傷などの怪我が少なくなったと回答した
割合が 62%、外遊びや芝生箇所で児童同士が交流する機会が目立つようになったと
回答した割合が 40%となっており、当事業でも、芝生化が体力、運動能力の向上や
コミュニケーション促進などに役立っていることがうかがえた。
参
考:校庭の芝生化による怪我の減少効果について
豊岡市立港東小学校における調査では、芝生化実施後、グラウンドでの怪我の発生件数が
減少していることが確認された。
表
芝生化実施前後の怪我の件数の比較
H20.9~12 月
(芝生化前)
怪我の件数
15件
H21.9~12 月
(芝生化後)
3件 (△12件)
※H21 年 7~8 月に芝生化実施
港東小学校の校庭
(出典:豊岡市教育委員会教育総務課ホームページより
http://www.city.toyooka.lg.jp/www/contents/1277717892896/index.html)
- 28 -
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3-3 コミュニティ形成効果
植栽や維持管理等の緑化に関わる活動は、緑に愛着を持ち育てるだけでなく、地
域住民間の交流を図ることができ、地域コミュニティ形成や地域交流の拡大に寄与
している。
当事業においても、自治会や老人クラブ、幼稚園等
が一体となり地域の広場を芝生化し、祭りや運動会な
ど地域交流の場として活用している事例や住民間の連
帯が薄れてきた自治会において、植栽の維持管理活動
を継続的に行い、住民間の交流機会が増加した事例な
どに活用されている。
これらより、当事業が地域コミュニティの形成や地
域交流の拡大に寄与していることがうかがえる。
植栽活動を行う地域住民
また、最近では、樹種や植栽箇所など植栽計画を策
定する際、住民の意向を反映できるよう専門家による
アドバイスを受けたり、ワークショップを開催したり
する事例が増えてきている。
こうした場合、植栽後、住民自らが積極的に維持管
理活動に参加するため、良好な緑地が保たれるととも
に、地域コミュニティ活動が活発になる傾向が見受け 地域住民によるワークショップ
られる。
また、全国花のまちづくりコンクールにおいては、当事業実施団体から6団体が
受賞(うち2団体は大賞(国土交通大臣賞))し、花緑を介した地域交流活動が評
価されてきていることが。
参
考:昆陽南公園苗圃を活用する会(全国花のまちづくりコンクール大賞受賞団体)
昆陽南公園苗圃を活用する会は、2005(平成 17)年から公園内の育苗施設を活用し、市か
ら提供された資材や自家採種した種子などを利用しながら、年間に1万5千株の花苗を育て
ている。
育てた花苗は、周辺の幼稚園や小中学校、市内各所のコミュニティ花壇など 33 ヶ所に年2
回提供するとともに、花壇づくりに取り組む子どもたちや住民
に花づくりの指導も行っている。
また、
当事業を活用し、
低木類の植栽と花壇を組合せて植え、
花と緑で潤いのあるまちづくりに貢献している。
高い栽培技術と指導力を持つのみでなく、
行政の施策と連携
した花緑を介したまちづくり活動が高く評価され、平成 25 年、
全国花のまちづくり活動において大賞を受賞した。
- 29 -
花壇の手入れをしている様子
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3-4 心理的効果
緑には視覚疲労や肉体的疲労など、疲労感を和らげる効果や精神的ストレスの解
消、自然と触れ合うことによる癒し効果などがある。
県民を対象としたアンケート調査(平成 26 年度第2回県民モニター調査)にお
いても、街なかの緑が持つ機能で特に重要と思うものは何かとの質問に対し、回答
者の 55.6%が「見る人の心をなごませる」と回答し、もっとも割合が高かった。
このことから、県民が緑化に対し、心理的な機能・効果を期待していることがう
かがえる。
見る人の心をなごませる
景観を美しくする
二酸化炭素を吸収し、地球温暖化を防止する
気温上昇(ヒートアイランド現象)をおさえる
多様な生き物の生息環境を提供する
夏季に涼しさを感じさせる
火災の延焼防止など災害を防ぐ
周りの騒音を小さくする
その他
わからない
図
55.6%
53.0%
49.2%
44.4%
34.1%
24.5%
15.2%
4.8%
1.0%
0.3%
0.0%
20.0%
40.0%
60.0%
80.0%
街なかの緑が持つ重要と思う機能(H26 年度第2回県民モニター調査)
100.0%
また、緑の持つ心理的効果を生かして、心の健康、
体の健康、社会生活における健康の回復を図る園芸療
法が近年、多く行われている。
当事業においても、病院や福祉施設において敷地内
や屋上を緑化し、患者や入所者の憩いの場として活用
されている事例が見受けられる。
園芸療法のイメージ
(兵庫県立淡路景観園芸学校 HP より)
参
考:植物によるリラックス感向上効果について
低い ← リラックス感 → 高い
緑地の心理的効果を分析するため、人が植物を α波総量(μv)
300
見たときの脳波、特にα波について解析を行っ
290
た。具体的には、鉢植えのゼラニウム、ベゴニア
280
で葉だけを付けたもの、花を付けたもの、そして、
270
その比較対象物として円柱、鉢を被験者の前に呈
260
248.29
示し、それぞれの対象物を見た後の閉眼時におけ
250
るα波出現量を比較検討した。
240
その結果、ゼラニウム、ベゴニアともに、α波
230
出現量が花では他の対象物に比べて安定して多
220
白い円柱
くみられ、葉も花よりは低いが花と同様、一定し
た値を示す傾向がみられた。
286.16
289.11
278.91
植木鉢 ゼラニウム ゼラニウム
のみ
(葉のみ) (葉・花)
(出典:中村隆治・藤井英二郎(1990)
「植物(ゼラニウム及びベゴニア)を見たときの脳波特性、特に
α波の量と周波数について」『造園雑誌』53(5),pp.287~292.)
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3-5 地域核の再生
近年、市街化の進行や管理者の高齢化などにより、
地域に親しまれている緑地、地域に固有の緑地、歴史
的な緑地が減少、荒廃してきている。
当事業では、そのような緑地の再整備を支援するこ
とにより、地域核の再生、地域の活性化に貢献してき
住民による地域固有の緑の植栽
ていると言える。
例えば、神社社叢において、かつて地域で親しまれ
ていた樹種を植栽し、地域固有の緑の復活に寄与した
事例や地域の歴史的名所において、桜並木を守り継ぐ
ため、地域住民が連携し、桜の植え替え、古木の手入
れ、植樹等を行い、歴史的な緑の保全に寄与した事例
などに活用されてきている。
住民による歴史的な緑の保全
3-6 その他の効果
(1) 生物多様性の確保
都市緑化には、昆虫や鳥などが生息する環境をつくる生物多様性確保効果があ
ると期待されており、緑化箇所の利用者、管理者、所有者等へのアンケート調査
では、25%が鳥や昆虫などの生物の増加を実感していることが分かった。
また、当事業では、特定外来生物による生態系に係る被害の防止に関する法律
で指定された特定外来生物、要注意外来生物及び兵庫県の生物多様性に悪影響を
及ぼす外来生物リスト(ブラックリスト)(2010)で指定された種について、補
助対象としないことにより侵略的外来種の植栽を防ぎ、生物多様性の確保に配慮
している。
(2) 健康増進効果
緑地が増えると、そこで園芸活動をしたり、運動をしたりする人が増えるため、
緑には健康増進の効果があると言われている。
当事業においても、地域の老人会が広場や公園を
芝生化し、グラウンドゴルフの場として活用されて
いる事例などが見受けられる。
事業箇所でグラウンドゴルフ
を行っている様子
- 31 -
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【参考:緑の活用による波及的効果を創出している事例】
東山公園を美しくする会|芦屋市
1
2
背景・概要
○ 東山公園は、芦屋市内の閑静な住宅地内にある公園
○ 公園周辺には、戸建て住宅に古くから住む住民と、近年できたマンションに住む
新しい住民が混在している。
○ 公園内にはたくさんの雑木がうっそうと生い茂り、近寄りがたくなっていた。そ
れを見かねた周辺住民が市と相談し、自ら雑木を伐採し、季節感のある低木を植栽
するなど、明るい公園づくりに取り組み始めた。
緑化による波及的効果
新旧住民の交流
世代間の交流
・バーベキュー、花火見物の実施など
公園に人が集まるようになった
・公園入口の花壇を新住民が管理
→新住民が公園に来るようになり、新
旧住民の交流が生まれた
・子どもを遊ばせるお母さんが増加
・引きこもりがちな一人暮らしの老人
が公園に来るようになった
→年配者が子育てのアドバイスを行う
など、世代間の交流が生まれた
新しく設
置された
健康遊具
公園入口の花壇
東山公園
県民まちなみ緑化事業
植樹式の様子
男女間の交流
・犬の散歩に来る女性が増加
・花の手入れに来る女性が増加
・看板の手作りや樹木伐採のため、公
園に来る男性が増加
→目的は異なるが公園に来ることによ
り、男女間の交流が生まれた
手作りの看板
- 32 -
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4
費用対効果
○
第2期事業では、平成 23~26 年度の4ヶ年で、投資額約1,657百万円に対し、
約5,891百万円の効果(総事業費の約3.6倍)
(1) 環境・景観面の費用対効果:
①ヒートアイランド緩和機能:
3,049百万円
465百万円
屋上緑化、校園庭芝生化、駐車場芝生化等によるヒートアイラ
ンド現象緩和の効果を評価
効
果
②二酸化炭素低減機能:
植樹した樹木による二酸化炭素低減に係る効果を評価
額
③地価の変動を指標とした環境・景観改善効果の把握:
2,580百万円
第2期事業
に お け る
投
資
4百万円
緑地整備による周辺の環境・景観改善効果を評価
額
+
1,657
(2) 防災面の費用対効果:
(百万円)
2,842百万円
①都市水害防止機能:
効
浸透面の増加による雨水の調節機能の向上に係る効果を評価
果
額
1,671百万円
②延焼防止機能:
1,171百万円
植樹による安全に避難できる区域の増加に係る効果を評価
=
投資額
×3.6
〔合 計〕(1)+(2)
第2期事業における効果額:
5,891(百万円)
- 33 -
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(1) 環境・景観面の費用対効果
①
ヒートアイランド緩和機能
緑化により低減された熱エネルギーを人為的に低減する場合、4 億 6,500 万
円の電気料金が必要となる。
■算出方法
ⅰ 緑化により低減された熱エネルギー
0.230KWh/㎡※1×6,005㎡※2+0.021KWh/㎡※1×500,935㎡※2=11,901KWh
※1:緑化により低減される熱エネルギー屋上0.23KWh/㎡、校園庭など0.021KWh/㎡
(出典:東京都環境科学研究所年報(2004)pp.3-9.(2006)pp.104-106.)
※2:屋上緑化:6,005㎡(壁面含む)
、その他緑化:500,935㎡
※3
ⅱ 電気料金への換算
11,901kwh×6h×90日×(400W/1000W)×36.14円=92,900千円
5年間の効果:92,900円×5=464,500千円
※3:熱遮蔽効果×電力換算比率×電力料金により算出
(出典:財団法人都市緑化技術開発機構(1996)『新・緑空間デザイン技術
マニュアル』p.46.(誠文堂新光社).電力料金は、関西電力(2015)
『電力量料金』の昼間時間の値を用いた。)
②
二酸化炭素低減効果
緑化により低減された二酸化炭素量を二酸化炭素排出権取引価格で購入す
ることとした場合、400 万円分の二酸化炭素排出権に相当する。
■算出方法
610 円/t※1×1,402t※2=855,220 円
5年間の効果:855,220 円×5=4,276,100 円
※1:二酸化炭素の排出権取引平均単価:610円/t
(平成25年環境省「自主参加型国内排出量取引制度」平均取引単価)
※2:二酸化炭素の低減量:約1,402t/年(Ⅲ2-1(2)二酸化炭素低減効果参照)
③
地価の変動を指標とした環境・景観改善効果の把握
緑地整備が周辺地価に与える影響に係る研究結果では、100 ㎡の緑地整備を
行った場合、周辺の地価が上昇(半径 50m内の地点では 2.8%)することが確
認されている※1。
当事業で 100 ㎡以上の新たな緑地整備を行った箇所について、周辺の地価が
この研究結果と同様に上昇したと仮定した場合、2,580 百万円の地価が上昇し
たこととなる。
■算出方法
(3,388 円※2×7,850 ㎡※3)×97 件※4=2,580 百万円
※1:肥田野登(1997)『環境と社会資本の経済評価』pp.96-97.(勁草書房)
矢澤則彦・金本良嗣(1992)「ヘドニック・アプローチにおける変数選択」『環
境科学会誌』5(1),pp.45-56.
※2:土地1㎡あたりの地価上昇額:121千円/㎡×2.8%=3,388円
(平成26年度兵庫県地価調査.県内調査地点の平均地価:121千円)
※3:地価が上昇する区域の面積(半径50m内):50×50×3.14=7,850㎡
※4:100㎡以上のまとまった緑地を新たに整備した件数:97件(平成23~26年度)
- 34 -
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(2) 防災面の費用対効果
①
都市水害防止機能
緑化により増加した地表面の浸透能力と同程度の雨水貯留が可能な施設を
整備する場合、16億7,100万円の整備費用が必要となる。
■算出方法
69.5千円/m3※1×24,045m3/h※2=1,671,128千円
※1:雨水貯留施設建設費:69.5千円/m3
(神戸市春日野公園雨水貯留施設建設費より:148百万円(貯留量 2,130m3))
※2:緑化により増加した浸透容量(Ⅲ2-3(1)②都市型水害発生リスク低減効果参照)
②
延焼防止機能
緑化により増加した避難上安全な区域と同面積の土地を確保する場合、11
億7,100万円の費用が必要となる。
■算出方法
121千円/㎡※1×3.549m※2×2,727m※2=1,171,053千円
※1:平均地価121千円/㎡(平成26年度兵庫県地価調査.県内調査地点の平均値より)
※2:緑化により増加した安全に避難できる区域(Ⅲ2-3(2)樹木による延焼防止効果
参照)
参
考:産業連関分析による経済波及効果
第2期事業の実施による産業への影響など、経済への波及効果を産業連関表(平成 23 年産
業連関表(速報)
)を用いて推計した。
その結果、新規需要額(事業費)1,657 百万円に対し、波及効果 2,792 百万円と算出され、
事業費の約 1.68 倍の経済波及効果が確認された。
(出典:総務省ホームページより、http://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/data/io/index.htm)
- 35 -
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5
効果の特徴と課題
5-1 効果の特徴
第2期事業では、緑化面積の増加(量的効果)に加え、環境、景観、防災面など
の緑が本来持つ公益的な効果や環境学習、コミュニティ形成、心理的効果などの緑
の活用による波及的効果(質的効果)を確認することができた。
中でも第2期事業の効果の特徴として、
・緑化活動が全県的な広がりを見せたこと(量的拡大)
・緑の活用による波及的効果を創出した事例が数多く見受けられたこと
(質的向上)
・費用対効果の高い緑化が推進されたこと
という3点が明らかとなった。
(1) 緑化活動の全県的な広がり
当事業は都市における環境改善等を主な目的としているため、都市地域で多く
活用されてきている。また一方で、都市以外の地域においても、緑化が地域交流
や地域核の再生のために活用されるケースが増えてきており、全県に緑化活動が
広がってきていることが確認できた(次ページ参照)。
また、緑化面積については、平成 18~26 年度の9ヶ年において 112ha もの緑
地を創出し、第2期終了である平成 27 年度までには 129ha の緑地を創出できる
見込みとなっている。
一方、今後はこれらの緑を継続的に維持管理していくとともに、開発等により
減少すると予想される都市の緑を確保できるようさらに対応していく必要があ
る。
表 当事業により創出した緑地面積
区 分
緑地面積
第 1 期
61ha
- 36 -
第 2 期
68ha
合 計
129ha
(見込み)
(甲子園球場約 34 個分)
\\lb12z0672\都市政策課\緑化政策係\01 県民まちなみ緑化事業\報告書作成(山田作成中)\_委員会で提出した時点のもの
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\\lb12z0672\都市政策課\緑化政策係\01 県民まちなみ緑化事業\報告書作成(山田作成中)\_委員会で提出した時点のもの
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(2) 緑の活用による波及的効果の創出
第2期事業では、住民団体による事業実施が増えてきている。
事業全体に占める住民団体の実施割合が、第1期では約 66%であったが、第
2期では約 84%に上昇しており、県民の参画と協働による緑化が進んできてい
ることが確認できた。
表
住民団体の事業実施割合(年平均、下段カッコ書きは総件数)
事業件数
うち住民団体
住民団体の割合
第1期
(5年:H18~22)
189 件/年
(945 件)
124 件/年
(621 件)
66%
第2期
(4年:H18~26)
174 件/年
(696 件)
147 件/年
(588 件)
84%
また、平成 18 年度の事業開始から9年が経過し、単に緑地整備を行うものだ
けでなく、緑化を活用したコミュニティ形成、心理的効果の創出など、波及的な
効果を期待した事業活用が数多く行われていることが、事業実施した住民団体へ
のヒアリング調査などで分かった。
平成 23~25 年度までの3ヶ年で実施した 451 件について内容調査を行ったと
ころ、122 件(約 27%)において、緑の活用による波及的効果が創出されている
ことが確認できた。
特に、学校や公園、広場、道路、河川沿いなど公共性の高い場所で行う緑化で
は、地域交流の拡大や住民交流の活性化などの効果が数多く創出されていること
が分かった。
参
考:参画と協働による花と緑のまちづくりの推進
(県民・団体・事業者など民間セクターの自立と強化)
県民・団体、事業者、行政など多様な主体が、立場や特性
に応じた多彩な活動を展開することが何より大切です。
特に、大規模な事業者・企業は、法令等に基づき敷地内の
緑化が求められていますが、長年にわたって整備された緑
地が地域特有の景観を形づくったり、緑地を地域に開放す
るなど、既にさまざまな貢献が進められています。
今後は、民間セクターの各主体が互いに助け合い、支え合いながら活動の輪を広げ、行政の
ハード、ソフトの包括的な支援を受けながら、自立的、継続的な活動をめざすことで参画と
協働の取組みを一層高めていきます。
(出典:ひょうご花緑創造プラン P17)
- 38 -
\\lb12z0672\ 都市政 策課\緑化 政策係\01 県 民まち なみ緑化 事業\報告 書作成( 山田作成中 )\_委員 会で提 出した時 点の もの
\15.06.30_H27①小委員会配布時点.docx
表
緑の活用による波及的効果が現れた事業件数(平成 23~25 年度)
緑化区分
学校での植樹
(一般緑化)
公園、広場での
植樹
(一般緑化)
環境学習効果
教育環境向上効果
15件
・マイツリーの植樹・育成
・自然環境学習に利用
・果樹による食育効果
2件
・荒廃した緑地の再生
・空きスペースの緑地化
3件
3件
・植樹式を行い、自治会、地
域住民と連携
・地域住民の憩いの場の創出
7件
・近隣学校生徒による植樹
・ビオトープの整備
・親水空間の整備
・果樹による食育効果
・イベント開催を通じた地域
交流の拡大
・地域と近隣福祉施設が交流
・地域住民の憩いの場の創出
団地・住宅での
4件
・緑化に係るワークショップ
をし、住民交流機会を創出
・地域住民交流のきっかけづ
くり
植樹
(一般緑化)
施設敷地内での
5件
・福祉施設利用者の憩いと交
流の場の創出
・イベント開催を通じた地域
交流の拡大
植樹
(一般緑化)
道路・河川沿い
6件
・マイツリーの植樹、育成
・イベント開催を通じた地域
交流の拡大
での植樹
(一般緑化)
校庭・園庭での
コミュニティ形成効果
1件
11件
3件
・園児たちによるオーバーシ ・芝生化による運動能力向上 ・イベント、地域運動会を通
ードの実施
・園児・児童の安全性向上
じた地域交流の拡大
(校園庭の芝生化)
・外遊びの増加
・PTA と学校の連携強化
芝生化
公園、広場での
1件
・ビオトープ整備による生物
芝生化
生育環境の保全
(ひろばの芝生化)
3件
・イベント開催を通じた住民
交流の拡大
・地域住民交流のきっかけづ
くり
駐車場の芝生化
1件
・砂埃飛散防止、雨後のぬか
るみ防止
建築物の屋上・
1件
・園児の遊び場の創出
壁面緑化
合
計
20件
15件
- 39 -
31件
\\lb12z0672\ 都市政 策課\緑化 政策係\01 県 民まち なみ緑化 事業\報告 書作成( 山田作成中 )\_委員 会で提 出した時 点の もの
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心理的効果
地域核の再生
その他の効果
2件
(62件)
5件
21件
・住民、企業の連携による賑 ・住民交流の場の創出
わいの創出
・維持管理を通じた住民交流
・公園利用者へのウエルカム
の活性化
緑化、癒しの提供
(47件)
1件
5件
・マラソンコースでのウエル
カム緑化
4件
(46件)
5件
2件
・施設見学者へのウエルカム ・地域交流の場の創出
・緑地整備による不法投棄、
緑化
・駅周辺緑化による地元ローカル
ポイ捨ての減少
・福祉施設における癒し空間
線への愛着意識の醸成
の創出
2件
5件
1件
・緑地の再生による地域愛着 ・地域中心地の花壇を再生
・県内最北部での県花のじぎ
心の創出
・道路沿いの樹木を生かした
くの栽培に挑戦
・法面緑化で雑草が減少し、
イルミネーションの実施
心理的負担が軽減
5件
2件
・防塵効果による周辺地域か
らの苦情解消
・癒し効果とストレス軽減
・過疎対策の一環としての校
庭芝生化
7件
1件
・住民交流の場の創出
・スポーツ活動を通じた住民
・芝張り、維持管理作業を通
の健康増進
じた住民交流の活性化
3件
1件
・緑が少ない都市地域におけ
る緑地の創出
・マンション来客駐車場の地
域開放
4件
16件
(44件)
14件
(45件)
22件
(94件)
12件
(40件)
5件
(53件)
5件
・緑が少ない都市地域におけ
る憩いの場の創出
・福祉施設における癒し空間
の創出
27件
計
22件
・学校への愛着の創出
・記念植樹による思い出づく
り
6件
合
(カッコ内は全件数)
(20件)
22件
7件
122件
(451件)
- 40 -
\\lb12z0672\都市政策課\緑化政策係\01 県民まちなみ緑化事業\報告書作成(山田作成中)\_委員会で提出した時点のもの
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(3) 費用対効果の高い緑化の推進
1㎡の緑化に要する費用は、第1期では約 4,300 円であったが、第2期では約
3,200 円となり、約 1,100 円減少した(下表1参照)。
これは、第2期では、ひろばの芝生化の追加などにより、まとまった緑化面積
を確保できる芝生化事業の割合が増加したためと考えられる。
また、第2期では、公益性に応じた負担とするため、個人・法人が事業実施の
場合、事業費の概ね半分が自己負担となるよう補助対象及び補助率の改正を行っ
た。
この結果、個人・法人による事業実施の場合、緑化による効果を第1期の概ね
半分の事業費で得ることができると考えられる。
環境、景観、防災面における経済的効果の推計では、第1期では総事業費の約
2.8倍であったが、第2期では約3.6倍となり、第2期事業では費用対効果
の高い緑化が行われたことが確認できた(下表2参照)。
表1
第1、2期の事業費、緑化面積の比較(年平均)
第1期
第2期
費
526 百万円/年
414 百万円/年
緑 化 面 積
122,053 ㎡/年
128,397 ㎡/年
1㎡あたりの
事
業
費
4,300 円
3,200 円
事
業
(対第1期比
表2
▲1,100 円)
第1、2期の費用対効果の比較(年平均)
第1期
第2期
事
業
費
526 百万円/年
414 百万円/年
効
果
額
1,453 百万円/年
1,473 百万円/年
費用対効果
2.8 倍
3.6 倍
(対第1期比
- 41 -
+0.8)
\\lb12z0672\都市政策課\緑化政策係\01 県民まちなみ緑化事業\報告書作成(山田作成中)\_委員会で提出した時点のもの
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5-2 課題
緑化箇所の生育状況調査やアンケート調査など、評価・検証に係る調査の結果、
当事業の課題として、以下の3点が明らかとなった。
・緑の量の地域的偏在
・大規模な都心緑化に非対応
・維持管理不良箇所の存在
(1) 緑の量の地域的偏在
緑地率調査の結果、市街化区域内の緑地率は 30.6%であり、ひょうご花緑創
造プランにおける目標である 30%を上回っていることが判明した。
しかし、地域別に見てみると、人口集中地区(総務省統計局 DID 地区)※1にお
ける緑地率は 23.3%にとどまっており、緑の量に地域的な偏在があることが明
らかとなった。
当事業では、住民団体等の申請により、その緑化活動を支援しているため、緑
化箇所がスポット的に点在することとなる。しかし、今後は、緑の地域的偏在の
解消を図るため、緑の少ない地域で優先的に事業実施できるような方策が必要と
考えられる。
※1
表
参
人口集中地区:国勢調査基本単位区などを基礎単位として、原則として人口密度が1k
㎡当たり 4,000 人以上の基本単位区等が市区町村の境域内で互いに隣接して、それらの
隣接した地域の人口が国勢調査時に 5,000 人以上を有する地域(総務省統計局ホームペ
ージより)
市町別の人口集中地区緑地率(30%未満の市町を抜粋(平成 25 年調査))
市町
緑地率(%)
市町
緑地率(%)
市町
緑地率(%)
尼崎市
14.6
明石市
20.6
伊丹市
25.2
播磨町
17.1
芦屋市
20.9
西脇市
27.6
高砂市
17.7
姫路市
21.5
太子町
28.3
西宮市
18.2
神戸市
22.4
三木市
28.6
加古川市
19.6
赤穂市
24.0
稲美町
29.1
考:都市地域の望ましい緑の姿(ひょうご花緑創造プラン)
ゆとりと潤いのある都市空間であるためには市街地
における永続的な緑地の割合が概ね 30%以上必要とさ
れることから、本プランでも都市地域の緑地を 30%以上
確保することを目指します。
(出典:ひょうご花緑創造プラン(平成 19 年 7 月策定)P33)
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(2) 大規模な都心緑化に非対応
当事業では申請1件あたりの補助限度額を設けており、その範囲内で緑化活動
を支援している。
しかし、近年、多くの県民が利用する駅周辺などの公共性が高い都心空間にお
いて、大規模でデザイン性の高い緑化ニーズが現われてきている。
現行制度では、このような緑化ニーズに対応できないため、今後、都心空間の
まとまった緑化の推進を図るためにも、大規模な都心緑化を支援できる方策が必
要と考えられる。
表
緑化区分ごとの補助限度額
緑化区分
住民団体が公共用地で実施
一般緑化、
校園庭・ひろばの芝生化
400 万円/件
駐車場の芝生化
375 万円/件
屋上・壁面緑化
参
個人・法人等が実施
250 万円/件
250 万円/件
考:大規模な都心緑化の事例
あべのハルカス屋上庭園
グランフロント大阪屋上庭園
大阪マルビル壁面緑化
なんばパークスガーデン
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(3) 維持管理不良の存在
①
維持管理の考え方
当事業では、当初の緑地整備は県が支援し、維持管理については、県民参画
による自主的な実施を原則とし、事業年度の翌年度以降5年間、散水、除草、
施肥等の日常の手入れ及び枯損箇所の補植などの維持管理を義務づけている。
ただし、事業箇所の良好な維持管理をサポートするため、芝刈り機等の必要
な用具類の補助や専門家による現地講習会の無料実施などの支援を実施して
いる。
②
維持管理状況(現状)
事業実施箇所の生育状況調査によると、良好に維持管理されている割合が、
事業実施後3年経過では 41.0%であるが、9年経過では 12.2%まで減少して
いる。一方、維持管理が不良である割合が、事業実施後3年経過では 2.1%で
あるが、9年経過では 24.5%まで増加している。
これらより、年数の経過による維持管理状態の悪化が課題としてうかがえる。
100%
2.1%
4.9%
3.3%
8.3%
17.6%
19.5%
12.4%
11.0%
22.3%
19.4%
16.1%
80%
15.0%
52.1%
24.5%
19.4%
60%
51.6%
48.2%
44.1%
40%
20%
45.0%
51.3%
43.9%
41.0%
27.5%
27.5%
21.4%
20.3%
18.3%
H21実施
6年経過
(220件)
H20実施
7年経過
(202件)
H19実施
8年経過
(191件)
0%
H24実施
3年経過
(144件)
H23実施
4年経過
(91件)
図
③
H22実施
5年経過
(193件)
不良
(50%未満)
やや不良
(50%以上 80%未満)
やや良好
(80%以上 100%未満)
良好
(100%)
12.2%
H18実施
9年経過
(139件)
事業実施からの経過年数別生育状況
生育不良の原因
箇所別に生育不良となった原因を見てみると、排水不良、密植、芝張り後の
養生不足など現場の不良によるものや、灌水不足、管理団体の代表者変更によ
る意識低下など管理の不足によるものが見受けられた。
芝生面積狭小で枯損
長時間駐車による
日照不足で枯損
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灌水不足による枯損
維持管理不足で枯損
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Ⅳ
今後の展開方向
県民を対象としたアンケート調査(平成 26 年度第2回県民モニター調査)では、
街なかの緑化を進めていくべきところはどこかという質問に対し、
「街路樹など沿道」、
「公園」、
「学校、幼稚園、保育園などの校庭・園庭」など身近な公共空間の緑化に対
する回答割合が高かった。
また「工場、事業所、商業施設」、
「家の庭や生垣」、
「集合住宅やオフィスビルなど
の屋上や壁面」とする回答も3割前後を占めており、街なかのさまざまな箇所の緑化
に関心があることがうかがえた。
このことから、地域コミュニティの場はもとより、教育・福祉・園芸療法などの場
において、県民の参画と協働による緑化活動の更なる推進を図るため、県民まちなみ
緑化事業による支援を引き続き行っていく。ただし、当検証により明らかとなった課
題に対応するため、次のとおり制度の改善、拡充を行う。
62.0%
街路樹など沿道の緑化
44.7%
公園の緑化
33.9%
学校、幼稚園、保育園等の校園庭の芝生化や緑化
32.1%
工場、事業所、商業施設などの敷地内を緑化
家の庭や生垣の緑化
26.6%
集合住宅やオフィスビルなどの屋上や壁面を緑化
26.1%
22.6%
アスファルト舗装等の駐車場を芝生化
17.6%
官公庁など公共施設の緑化
その他
わからない
0.0%
図
2.3%
1.2%
20.0%
40.0%
60.0%
80.0%
100.0%
街なかの緑化を進めていくべきところ(H26 年度第2回県民モニター調査)
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\\lb12z0672\都市政策課\緑化政策係\01 県民まちなみ緑化事業\報告書作成(山田作成中)\_委員会で提出した時点のもの
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1
緑の少ない人口集中地区における緑化を優先的に推進
人口集中地区における一人当たりの緑量を他地
域と同程度確保できるよう、緑の少ない地域での緑
化活動を優先的に支援し、緑の量の地域的偏在に対
応していく。また、安全・安心のまちづくりの観点
から、まちなかの防災力の向上に資する空地の緑化
を優先的に支援していく。
神戸市中央区での緑化事例
2
校園庭の芝生化の推進
人口が減少し、少子化が進展する中、地域創生に
資する子育て支援が求められている。子どもが活動
的で心身ともに豊かになる教育環境づくりや、学
校・園と地域が協働で子どもを育てる環境づくりな
ど、地域の子育て力向上に資する校園庭の芝生化の
更なる推進を図っていく。
校園庭の芝生化
3
大規模な都心緑化の支援
魅力ある空間形成による集客性の向上、環境への
配慮等から、都心に大胆な緑を整備する事例が増加
してきているが、市場価値の高い都心においては、
民間の自主的な取組のみでは、緑化の促進が困難で
ある場合が多い。そこで、当事業により、多くの県
民が利用する駅周辺等の公共性が高い都心空間お
ける大規模でデザイン性の高い緑化の取組を支援
していく。
4
新梅田シティ「新・里山」
適切な維持管理の推進
事業実施箇所について、現場の不良や管理の不足
などにより生育不良箇所が一定数存在しているこ
とが分かった。これらの改善を図るため、植栽計画
時等の専門家による講習会の受講の義務化、花緑い
っぱい運動推進員の活用による団体支援、芝生箇所
における利用人数に適した規模、芝生種類の基準の
作成など、適切な維持管理が行われるよう更なる取
組を実施していく。
- 46 -
専門家講習会の開催
Fly UP