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テーマ B15: 行列と行列式の意味 線形代数と呼ばれる分野では,必ず

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テーマ B15: 行列と行列式の意味 線形代数と呼ばれる分野では,必ず
埼玉工業大学 機械工学学習支援セミナー(小西克享)
テーマ B15:
行列と行列式の意味-1/6
行列と行列式の意味
線形代数と呼ばれる分野では,必ず,行列と行列式が出てきます.これらがどのような
意味を持ち,またその違いは何なのかについて解説します.
1.連立方程式と行列
次の例題を考えてみましょう.
例題
リンゴ 2 個とミカン 3 個買うと代金は 350 円になり.リンゴ 5 個とミカン 6 個買
うと代金は 800 円になった.リンゴとみかんの 1 個の値段はそれぞれいくらか?
解答
リンゴとミカンの値段はそれぞれ x, y [円]とすると,次の式が成立する.
2 x  3 y  350

5 x  6 y  800
これを連立して解くと,
 x  100

 y  50
となる.よって,リンゴは 100 円,みかんは 50 円である.
この例題のように,連立方程式は
2 x  3 y  350

5 x  6 y  800
と表わすのが一般的ですが,これを次のように表わしてみます.
 2 3  x  350 
5 6   y   800 

  

 2 3
x
こうすると, 
は,連立方程式の係数部分だけを示し,   は未知の変数のみを表わ

5 6
 y
350 
し,
 は,連立方程式の定数項のみを表わすことが分かります.これらの例のように,
800 
記号[ ]を用い,文字や数字をその中に規則正しく並べることで,文字や数字を,意味を持
たせてグループ化することができます.このように,記号[ ]を用い,文字や数字を規則正
しく並べたものを行列といいます.また,行列の中の個々の文字や数字は,成分もしくは
要素と呼ばれます.
注意:行列は,連立方程式以外にも,ベクトルや写像を表わす際にも用いられます.
問題:次の連立方程式を,行列を用いて表わせ.
埼玉工業大学 機械工学学習支援セミナー(小西克享)
行列と行列式の意味-2/6
 x  2 y  3 z  10

 4 x  5 y  6 z  11
7 x  8 y  9 z  12

答え
1 2 3  x  10 
 4 5 6   y   11

   
7 8 9   z  12 
2.行と列
行列の成分の並びは,横方向に行,縦方向に列と読んで区別されます.ただし,行と列
の数は同じである必要はありません.行が m で,列が n の行列は,m 行 n 列の行列と読ん
でいます.例えば,行列の i, j  成分を aij ,( i  1,, m , j  1,, n )で表わすと,m 行 n 列の
行列は
 a11
a
 21


 am1
a12
a22
am 2
a1n 
 a2 n 




 amn 

と表わすことができます.
2.行列式の意味
行列は,文字や数字をグループとして表記したに過ぎません.したがって,行列自体が
値をもっているわけではありません.
a b   x   e 
 ax  by  e
もしくは, 

    
c d   y  f 
cx  dy  f
を解くと,
 ax  by  e

c b x  by  f b
 d
d
b
b

 a  c x  e  f
d
d

b
d  ed  bf
x
b ad  bc
ac
d
e f
埼玉工業大学 機械工学学習支援セミナー(小西克享)
y
e  ax

b
ea
行列と行列式の意味-3/6
ed  bf
ad  bc  ade  bce  ade  abf  af  ec
b
bad  bc
ad  bc
a b 
となりますが,解 x, y の式で,分母の ad  bc は,行列 
 の要素のみを用いた式になっ
c d 
ています.そこで, ad  bc の計算式を
a b
 ad  bc
c d
と表記することにします.このように,記号||を用い,その中に文字や数字を規則正し
く並べたものを行列式といいます.行列式では行列と異なり,行と列の数は常に等しくな
くてはいけません.具体的な行列式の計算方法は上述のように定められており,勝手に変
えることはできません.行列と行列式は意味が異なることに注意してください.
行列式の値は,行列の記号を用いて,
a b 
det 
  ad  bc
c d 
と表わすこともあります.ここで,文字を入れ替えると
a e
e b
 af  ec
 ed  bf ,
c f
f d
となるので,行列式の表記を用いると,連立方程式
a b   x   e 
 ax  by  e
もしくは, 

    
c d   y  f 
cx  dy  f
の解は
x
e
b
f
d
a
b
c
d
,y
a
e
c
f
a
b
c
d
と表わすことができます.
3 行 3 列の行列式は,Sarrus の方法で計算でき,
-
a
b
c
d
e
f  aei  bfg  cdh  ceg  bdi  afh
g
h
i
+
となります.
3.行列の計算
行列そのものは値を持ちませんが,行列に定数を掛けたり,行列どうしを足したり,引
いたり,掛けたりすることができます.連立方程式と比較してみてみましょう.
埼玉工業大学 機械工学学習支援セミナー(小西克享)
行列と行列式の意味-4/6
(1) 行列と定数の掛け算
連立方程式
 ax  by  e

cx  dy  f
の両辺すべてに 2 を掛けると,
 2  ax  by   2  e
 2 ax  2by  2e
すなわち, 

2  cx  dy   2  f
2cx  2 dy  2 f
これを,行列で表わすと,
 2a 2b   x   2e 
 2c 2 d   y    2 f 

   
となりますが,最初の
a b   x   e 
c d   y   f 

   
の両辺に 2 を掛けて
a b   x 
e
2
 2 



c d   y
f
とした式と比較すれば,
 a b   2a 2b 
 e   2e 
2

, 2    


 c d   2c 2 d 
 f  2 f 
であることがわかります.このように,行列と定数の掛け算は,行列の要素すべてに定数
を掛ければよいことがわかります.
(2) 行列どうしの足し算
連立方程式
 ax  by  e  gx  hy  k
と

cx  dy  f
 ix  jy  l
を対応する式どうし,両辺を足し合わせると
a  g x  b  h  y  e  k

 c  i x  d  j  y  f  l
となるので,これを,行列で表わすと,
a  g b  h   x  e  k 
 c  i d  j y   f  l 

  

となりますが,行列の足し算として表わした
a
c

b  x g

d   y   i
a
 
 c
b  g

d   i
と比較すると,
h   x   e  k 


j   y   f   l 
h   x   e  k 



j    y   f   l 
埼玉工業大学 機械工学学習支援セミナー(小西克享)
行列と行列式の意味-5/6
a b   g h  a  g b  h   e  k  e  k 
c d    i j    c  i d  j  ,  f    l    f  l 

 
 

     
となることがわかります.このように,行列どうしの足し算は,対応する行列の要素どう
しを足せばよいことになります.引き算も同様です.
(3) 行列どうしの掛け算
掛け算は少し複雑です.まず,
a b   x   e 
 ax  by  e
と, 

    
c d   y  f 
cx  dy  f
が等価であることを考えると,
 a b   x   ax  by 
 c d   y    cx  dy 

  

となることが分かりますが,連立方程式との比較からではこれ以上の計算方法を確認する
ことはできません.結論から述べると,1 つ目の行列における行の要素と 2 つ目の行列に
おける列の要素どうしを次のようにかけ合わせます.2 行 2 列以上の行列に対しても同じ
方法で,各要素を求めます.
a
c

b  g

d   i
h   ag  bi

j   cg  di
ah  bj 
ch  dj 
この関係を,行列式を用いて確認します.行列式で計算すると,
a
b
c
d

g
h
i
j
ag  bi
ah  bj
cg  di
ch  dj
 ad  bc    gj  hi   adgj  adhi  bcgj  bchi
 ag  bi   ch  dj   ah  bj   cg  di 
 agch  agdj  bich  bidj  ahcg  ahdi  bjcg  bjdi
 agdj  bich  ahdi  bjcg
 adgj  adhi  bcgj  bchi
a
b
c
d

g
h
i
j

と
a
b
c
d
ag  bi
ah  bj
cg  di
ch  dj

g
h
i
j

の行列式の値が等しくなるので,
ag  bi
ah  bj
cg  di
ch  dj
の関係が成立します.これを行列の計算に置き換えれば,
 a b   g h   ag  bi ah  bj 
 c d    i j    cg  di ch  dj 

 
 

と書けるわけです.
埼玉工業大学 機械工学学習支援セミナー(小西克享)
行列と行列式の意味-6/6
http://www.sit.ac.jp/user/konishi/JPN/L_Support/SupportPDF/Matrix.pdf
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