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中国語熟語の分類方法について - ASKA

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中国語熟語の分類方法について - ASKA
愛知淑徳大学論集 一コミュニケーション学部篇一 第6号 2006 1−10
中国語熟語の分類方法について
曹 志偉※1
要 旨
外国人が中国語を習得する時、熟語は最大の障害物の一つである。学習者はレベルが上がるにつ
れて、ますます多くの熟語に出会うだろう。これは中国語が上達する一つの関所だと考えてよい。
学習者にとって、それをいかに乗り越えるかは非常に重要だと思う。
しかし、数多くの熟語を身に付けることは学習者にとって容易なことではない。このような現状
に対して、私は語学教育の現場に立って、今までと違う分類方法で熟語を多次元にオリジナル分類
して、学習者に一つの分類方法を提供することを試みたい。
本文は熟語の分類方法が基本的に「中日双方向による攻略法』という本※2に沿って、更に踏み
込んだ上で付け加えたものである。学習者の趣味をもたらすオリジナル分類方法を紹介し、さらに
熟語を覚える為に、効率よい方法を検討していきたい。この目的は学習者に短時間で、しかも有効
的な学習方法を提供することによって、熟語の難問を乗り越えさせることにある。更に中国文化へ
の関心や理解を深めるという願いもある。
1.はじめに
最近、中国語勉強を始める人が増えつつある。漢語水平考試(HSK)※3は受検者が年々増え、
確かな基礎作りができている人気の検定の一つである。中国教育部の統計によると、HSK試験は
2005年に中国を含め34ヵ国、100以上の試験会場で実施しており、受験者人数が20万人(年間受
験者数)を突破することを目指す勢いである。
しかし、HSK試験の基礎と初級レベルまでの受験者の合格率が高いのに比べ、中・高級レベル
に上がると、合格率はぐっと低くなってしまう。その原因はもちろん試験の内容が高度でかなりの
学習時間が必要とされるが、熟語も難しくてなかなかマスターできないことを一つの要因に挙げら
れる。それで中級以上合格のために、必要な熟語をマスターしなければならない。この熟語をどの
ように習得するのかポイントとなる。学習者にとって、効率よい分類方法は非常に重要ではないか
※1 外国語教育センター
※2 陳曇・曹志偉共著2005「中国語熟語760中日双方向による攻略法」晃洋書房
概要本書に収められた760個の熟語は、これまでの中国語の教科書や問題集の編集法と違い、短期間で覚
えやすい為に、テーマごとに新しい編集方法を取り入れた。また、理解度チェックの練習問題も豊富に用
意した。
※3 中国語運用能力検定試験は中国語で「汲悟水平考試」(HanyU Shuiping Kaoshi)と言う。これをHSK試
験と略称する。HSK試験が中国で開発されて、最近日本だけでなく全世界で広がりつつある。それに伴っ
て、HSK試験も日本国内の企業関係や語学関係者の間で浸透し、中国語能力判定をする試験としての位置
を占めつつある。
一1一
愛知淑徳大学論集 一コミュニケーション学部篇一 第6号
と思う。
熟語は確かに難しいが、オリジナル分類方法によって、熟語の勉強を入門すれば、時間が立つに
つれて、驚くほど力が付くことを実感できる。また、このような熟語の語意は文字の意味だけでは
なく、深い文化的意味合いが含まれて、その文化背景を理解してもらうことも重要である。
2.熟語の本源と構成
中国語の熟語は慣用語、成語、俗語の総称を指すものである。慣用語は習慣として使われている
言葉をさす。成語は主に固定の四文字の単語をさす。俗語は主に話す時に使われた五文字以上の固
定の言葉をさす。本文は学習者が勉強しやすいために、熟語を分類することを試みた。
熟語は大衆向きで分かり易く、しかも型にはまるという特徴がある。熟語は人々が日常生活の実
践の中で作り上げた物で、以前の成功経験、失敗教訓、科学知識、日常体験などが巧みに総括され
たものである。この熟語は言葉遣いが簡単明瞭で、いきいきとした表現や簡潔で奥深い意味合いな
どを含むという利点があるので、まさに中国語の真髄その物である。
熟語の本源と構成
熟語は音節が少なく、構造も簡潔である。その一部分は古代寓言、古代詩文及び歴史典故から生
まれた。その他にも庶民の生活経験、社会的実践からまとめたものもあるb
(1)生活経験によるもの。例えば、「泡磨莚」、「妙冷仮」などの言葉は人々の最も基本的な生活習
慣によるものである。
(2)社会的実践によるもの。例えば、「以卵投石」、「糖衣炮弾」などの言い方は軍事用語から、「桃
李満天下」、「瓜熟帯落」などは農業用語から、「走弓看花」、「狐假虎威」などの表現は動物用語から、
それぞれ生まれたものである。
(3)歴史典故あるいは名言から伝わってきたもの。例えば、「三国志・魏志・声硫侍」:“迭挙莫取名,
名如画地併,不可啖也”。この意味はただの名目で紙に描いた餅のように、なにも役に立たない
ということである。「画併充飢」とはただの空想で自らを慰めることの喩えである。
熟語の表現方法
(1)比喩の表現例えば、「画併充飢」で飢えている時に「机不拝食」のような食べる様子を、「隊
谷子だ芝麻」で過去のささいな事を、「刀子噴,豆腐心」で口が悪いが心の優しい人をそれぞれ
表現した方法である。
(2)借用の方法例えば、不合理な平均分配制度を「鉄仮碗」と、乱れたシーンを「一銅粥」と、
挫折してやるべき事でさえ放棄することを「因喧慶食」というようにそれぞれに表現する。
(3)誇張の方法例えば、「仮后百歩走,能活九十九」で散歩の重要さを、「含在噴里柏化了」で子
供が甘える様子を、「一口吃介肝子」でしてはいけないことをそれぞれユーモラスに説明している。
(4)形容の方法例えば、「錦衣玉食」とは派手な服装して豪勢な食事をとることで、贅沢な生活ぶ
りを形容する。「象箸玉杯」では食卓の賛沢な場面をあるがままに再現する。
要するに、熟語には直感的かつ生き生きとした誰でも楽しめるという特徴がある。これは話し言
葉や文学作品の中でも幅広く使われている。従って、熟語の文化的背景、構成及び表現方法を研究
することは、中国語の言語教育や比較文化の研究においても重要な意味がある。
一2一
中国語熟語の分類方法について(曹志偉)
3.オリジナル分類
オリジナル分類の目的は、熟語の単語帳や単なる受験対策問題集としてではなく、学習者にでき
るだけ短時間に、必要な熟語のマスター方法を提供することにある。多種多様な熟語を以下のよう
に分類して熟語の学習方法を検討してみよう。
(1}らくらく覚える三文字慣用語
三文字の慣用語は構造が簡潔で分かりやすい言葉である。そしてまた、皮肉や暗示、ユーモアな
どの意味も含まれている。それ故に、話し言葉の中に幅広く使われている。三文字の慣用語は人々
が何気なく使っているものから例を取り上げ、本来抽象的ではっきりしていない表現を生き生きと、
より鮮明にすることができる。三文字の言葉には雰囲気を和らげ、言語の表現力や影響力などを強
く働かせる役割もある。また、三文字の言葉はけなす意味が多いので、使う時にその場と対象を考
慮した上で使わなければならない。
①頭の漢字は同じだが、続ける文字によって意味は変わってくる。漢字のそれぞれの違う使い
方に気を付けて習得する必要がある。このような慣用語を積み重ねていく中で、言葉本来の面白さ
を自然に理解できる。
打包票 da baopiao 保証する。太鼓判を押す。
打官腔 da guanqiang 切り口上で言う。もったいぶった調子で言う。
打官司 di guatisi 裁判を起こす。訴えを起こす。
②頭の漢字は違うが、接尾詞は同じなので気を付けて意味の違いを識別しよう。このような慣
用語の言葉は誰かによって作られたものではなく、自然の流れの中で出来た決まり文句である。
妙冷仮chio 16ngfati 二番煎じを出す。冷や飯をいためる。
吃軟仮 chl ruanfan 男性が女性を頼りに生活する。
青春坂 qingchtn fati 若さを武器に青春時代にしかできない仕事。
(2)数の歌から覚えよう
数字が好き、または数字に敏感な学習者は数字から成語を覚えよう。これを繰り返し読み、ゆっ
くりと中国語のニュアンスを理解し、数字による成語の構成を把握した上で、自由に使えるように
練習する必要がある。
数字には簡単で覚え易いという特徴がある。この数字と成語の学習を通し、それを積み重ねるこ
とによって、成語を突破する糸口として、さらなる進化として期待できる。
四平八穏 si ping ba wen 極めて穏当である。無事なさま。
四面八方 si miati ba fang 四方八方。津々浦々。
四面楚歌 si miat1 chO ge 敵に囲まれて孤立している。
(3)生き生きとした動物の熟語
多くの動物の名前を使う修辞方法は中国語における特徴の一つである。動物の外形、習性などの
相違を巧みに用いて物事をより鮮明に表現することができる。
一3一
愛知淑徳大学論集 一コミュニケーション学部篇一 第6号
動物を使った熟語には言葉に迫力を与える特性がある。この特性には多くの意味合いが含まれて
いる。感受性に富んだ描写だけでなく、ユーモラスで表現豊かなものもある。人々を喜ばせた後に、
何かを考えさせ、気が晴れない時でも不愉快なことを忘れさせる効果がある。
①龍に関する表現
龍は中国では特別な存在の動物であり、神話、伝説の中で生きる動物の変身で、現実には存在し
ない。龍は吉祥の象徴であって、天に舞い上がる姿は前途有望やめでたいことなどに喩える習慣が
ある。時には虎、鳳風と併用して、猛威、縁起ものなどを表現する場合もある。
生尤活虎 sheng 16ng hu6 hU 生気に溢れる。元気いっぱい。
tz−E夙舞 16ng fei feng wU 生き生きとした姿。力強い。
望子成尤 wang zi ch6ng 16ng 息子の出世を願う。
②牛に関する表現
牛は中国語の中で正直、忠実、純粋などの良い表現として使われている。疲労を気にしないで黙々
と働くという意味合いが含まれている。その他には、牛の気性によって、頑固、融通のきかない、
理不尽などの意味合いもある。しかし、これは個性を強調するので、けなす意味はあまり含まれて
いない。
老黄牛 lao huangnia こつこつと働く。献身的な仕事ぶり。
牛脾『 niapiqi 頑固で強情な性質。
頂牛JL ding niUr 正面衝突する。意地を張って譲らない。
③馬に関する表現
馬は日常生活において、人間と関わりの一番深い家畜の一つである。それゆえ、文章や作品の中
で苦労をいとわず、辛さを耐え忍ぶ喩えとしてしばしば登場する。
千里弓qianlima 千里の馬。スピードが速い。
老耳枳途 laoma shi ta 年老いた馬は道を知る。特定の分野に詳しい。
千宰万耳 qiati jtm wati ma 千軍万馬の勢い。勢いが凄まじい。
④虎に関する表現
虎は野獣の王と言われる存在である。虎の猛威の外貌は凛々しい姿を表す場合もあるし、狐がそ
の凄まじい勢いを武器に虎の威を借りるなどといったけなす表現の場合もある。狐と併用して使わ
れるのはその一例である。
虎視眈眈 hU shi dati dan 虎視眈々。機会をうかがう。
狐假虎威 ha jia ha wei 虎の威を借りる狐。有力者の権勢を盾に威張る
騎虎唯下qi hU n;in xia 乗りかかった船。騎虎の勢い。
⑤狗に関する表現
「狗」犬という動物は中国語では下品な動物である。「狗」という文字が付く言葉は殆ど良い意味
ではない。この点について、日本と違うので、気を付けて取り組んで下さい。また、時には自分と
関係のないことに口を出したり、関わったりすることを椰楡する場合もある。
看家狗 kanjiag6u 番犬。(官僚や地主)手下。
狗伎人勢 g6u zhatig r6n shi 犬が他人の力を笠に着る。虎の威を借りる。
一4一
中国語熟語の分類方法にっいて(曹志偉)
狗急跳塙 g6u ji tiao qiang
追い詰められて非常手段を取る。
(4)植物のとりどりの熟語
植物と色彩は自然に生きる人間にとって、心を安らぐ大切な物である。言語表現においても、植
物や色彩の熟語は言葉に味を付ける重要な要素の一つであろう。中国歴代の文人や詩人も、自分の
気持ちを表現するために、自然に生えている植物や変化に富んだ色彩などを熟語に好んで使ってい
た。だから中国語の植物や色彩に関する熟語には奥深い文化的意味合いが含まれている。植物を用
いた熟語の場合、花、草、樹木などの自然特性は人の様々な個性を表現できる。
①「花」花という植物は人間生活に活力を与えてくれるように、熟語表現においても同じ役割を
担っている。熟語表現の奥深さをじっくり体感しよう。
如花似錦 r血 hua si jin 風景や前途が素晴らしい。
借花献佛 jiさhua xizm f6 もらい物で義理を果たす。
花盲巧悟 hua yat1 qiao yO 口先だけのうまい言葉。うまい事を並べる。
②「樹」木は植物の代表的な存在である。木の凛々しい姿、土に深く生えた根、青々と伸びた枝
葉の喩えなどは、どれもこれも言葉の表現に生きた力を与えてくれる。その熟語表現の中には「樹
大根深」のような称賛的な使い方もあるし、「粗枝大叶」のような反面的な暗喩もある。
樹大根深 shO da gen shen 基盤がしっかりしている。
’独樹一枳 da shth yi zhi 異なった旗印を立てる。別に一派をなす。
粗枝大叶 ca zhi da yさ 大ざっぱである。いい加減である。
③「草」草は植物そのものの象徴である。ごく身近な表現なので、平凡なことを表現する時によ
く使われる。草という言葉の根源には、普通という平淡な意味があるが、時には草の植物性や揺れ
る動きで人間の怯える様子を表現する熟語としても使われる。
草木皆兵 cao mth jie bing 草木が兵士に見える。疑心暗鬼である。
新草除根 zhan cao cha gen 根こそぎにする。根源を断つ。
夙吹草劫 feng chui cho dδng ちょっとした動き、変化、意外なこと。
(5)ユニークな食文化の熟語
食文化における熟語は食品やその食欲、味覚を表現し、庶民の言葉にも多く反映され、豊かな民
族習慣を表している。多彩な食文化は言葉の中にも色彩を添えている。中国人はよく食を話題にし、
食についての熟語を使い、さらに深い意味を表現する。食文化の熟語の由来と形成は複雑かつ面白
いことである。このような熟語は人々に愛用され、親しまれてきた表現なので、日常生活の中で幅
広く活用されている。
①「色、香り、味」を使う表現法
熟語には味覚のある言葉が多く含まれている。味覚は私たちに、奥深い意味合いを連想させた上、
言葉の表現力をいっそう際立たせる効果がある。
酸甜苦辣 suati tiat1 kU la あらゆる味。いろいろな経験。
良菊苦口 liati9 y20 kロ k6u 良薬は口に苦し。効き目がある。
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愛知淑徳大学論集 一コミュニケーション学部篇一 第6号
添油加酷 tiati y6u jia cU 大げさな言い方。話に脚色をつける。
②食材の形を巧みに使う表現法
これはよく見掛ける食材の外形、大きさ、特徴などで物事を生き生きと表現する方法である。ま
た、この表現法には我々にとって、とても身近な存在のものを用いるので、読者にも理解しやすい
といった特徴がある。この表現方法は文学作品の中に幅広く応用されている。
穎断些達 6u duan si liati 関係を断ち切れない。ぐずぐずと続く。
囲囹呑専 ha 1in ttn zao 丸呑みにする。物事を鵜呑みにする。
漆瓜廷熟gin gua 1ati shU すらすら覚える。熟練している。
③「1吃」の決まり文句の妙用法
「休吃了明?」(食事をしましたか)という言い方は中国人同士の間ではよく耳にするごく普通の
挨拶で、時には「吃」(食べる)とはまったく関係のない場合に使われたりもする。それゆえ、漢
語中の「吃」の使い方は外国語とは異なっている。この語意はしばしば外国人を困惑させる。「吃」
の様々な使い方は言葉の本来の意味を遥かに超えている。この熟語の中でも、ほとんどの使い方は
食べるという意味ではない。「吃」という動作を借りて、もっと生き生きとした、もっと具体的な
様子を表現している。この「吃」には飲む、得る、利用、獲得などの様々な意味合いが含まれている。
吃独食 chi dOshi 自分一人で食べる。利益を独占する。
吃老本 chi laob6n 今までの貯蓄をたよりに更に努力しない。
吃禁果chi jingu6 やってはいけないことをやってしまう。
④飲酒文化における表現法
食物を語るのに酒を避けては通れない。酒は食物文化において重要な役割を担っている。飲酒
はすでに一つの交際手段となっている。よって、飲酒に関する慣用語も際立って多い。下記の例を
見てみよう。
対酒当歌 dui jiu dati9 ge 酒に向かい自分の感情を語る。
以酒拝杯 yi jia sha huai 酒の勢いをもって所感を言う。
酔生夢死zui sheng meng si 何もしないで空しい生涯を送る。
(6)身振り手振りに関する熟語
漢字は表意文字だと言われている。つまり、「言侍身教」のように身振りや手振りの動作で感情
を表現する。このような表現は中国語に深く根付いている。具体的に言えば、体の感覚器官を使い、
身近な物事を表現するという習慣がある。しかし、どのような部位を使って表現するかは、その場
の状況や文化的意味合いなどで決められる。これは歴史や文化的感覚が必要とされる難しい表現だ。
①「目」の使い方
目は言語表現において重要な言葉の一つであり、色々な使い方がある。このような使い方には体
の一部としての目だけではなく、物事を見る目や見分ける目などの巧みな表現をする場合も含まれ
ている。
A「体の一部」としての目
この「目」の使い方は、目の本来の意味に限られない。目という感覚器官は、実用的かつ用途が
一6一
中国語熟語の分類方法にっいて(曹志偉)
幅広い表現に喩えられているので、注意しながら勉強して下さい。
画尤点晴 hua 16ng diati jing 画竜点晴。肝心な締めくくり。
面目全非 miat1 mO quan fei 変貌。様子が一変する。
眼花僚乱 yali hua liao luati 目がくらむほど眩しい。
B「見る目」としての目
物事を見る目は日常生活にとって、重要なことである。目の視力に限らず、目色、目付き、目が
あるが瞳がないなどのような生き生きとした表現もある。.これは目を喩えとして、派生したユニー
クな使い方である。
刮目相看 gua mO xiang kan 新しい目で見る。期待の目で眺める。
目中元人 mth zh6ng wU r6n 傲慢な態度。偉らぶる。
一目了然 yi md liio rati 一目で分かる。一目瞭然。
C「見分ける目」としての目
目で物を見ることは一般的であるが、更にその使い方を広げ、もっと多彩な発想に満ちた表現の
仕方もある。目で見極めるなどはその一つの例である。
擦亮眼晴 ca liati9 yatijing 目を光らす。物事をはっきり見極める。
拭目以待 shi ma yi dai 目をこすって待つ。確信している。
有目共賭y6u mth g6ng dO 誰の目にも明らかである。皆が認める。
②「心」の使い方
心という文字は目と同様に、人間が目で観察し、心で思考するという意味で、人々の考え方の変
化を捉えられる。「心」の使い方として、心本来の意味以外にも、内心、気持ち、精神など様々な
使い方が生まれる。その言葉の構成、意味合いの変化などに注意して取り組む必需がある。
A「体の一部」としての心
心は人間の内面の中枢をなす器官だと言われる。心の役割がいかに重要であるかを物語っている。
心で目に見えない内面的なものを洞察する。心の働きは人間の五感をコントロールするとさえいえ
よう。
別出心裁bi6 cha xin cai 新構想を打ち出す。新たな工夫を凝らす。
粗心大意 ca xin da yi そそっかしい。警戒心がない。
心領神会 xin ling sh6n hui 心で悟る。心底から理解する。
B気持ち、精神に関する心
心という目に見えない内面を喩えに、人間の心理を描く観察の鋭さを表現する。人間の行動はま
ず目で見て、心で考え、行動を起こすという構造である。
鈎心斗角 g6u xin d6u jiio 暗闘すること。いがみ合う。
好心好意 hao xin hao yi 心がこもっている好意。親切心。
悟重心長 yU zh6ng xin chang 言葉がねんごろでおもいやりが深い。
C人間の様々な感情に繋がる「心」
人間は感情の動物だと言われるように、中国語には喜怒哀楽を「心」という文字で表す習慣があ
る。顔で感情を率直に表現し、心で内面的な世界を描く特徴がある。
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愛知淑徳大学論集 一コミュニケーション学部篇一 第6号
心弛神往xin chi sh6n watig 思いを馳せる。ひたすら思いを巡らす。
心花怒放 xin hua na fati9 嬉しくてたまらない。狂喜する。
心悦誠服 xin yu6 ch6ng fO 心から喜んで服従する。喜んで心服する。
③「手」の使い方
言語表現においても、「手舞足踊」という言葉の通り人間像を描きあげるために、手という文字
に絡んで様々なユニークな表現がある。その中で体の一部での手、能力や手段、特技などの手といっ
た手と足の併用で幅広い使い方がある。、
A体の一部としての「手」
この場合、「手」の動き、働きを直感的に使うことが多い。手の働きが人々の生活にいかに大事
であるかを強調する。また、物事を成し遂げ、運ぶ働きなどを手でストレートに表現することが印
象的だ。
受不経手ai bロ shi sh6u 好きで手放せない。大切で手放せない。
束手元策 shth sh6u win ce 手を打つ策がない。なすべき方法がない。
順手牽羊 shOn sh6u qiati yatig その場にあった物を持ち去る。物を失敬する。
Bいろいろな「やり手」
「手」から派生した表現の仕方が実に多い。中国語における「手」の使い方は「この手、あの手」
という表現のように、様々な様相を呈していて、「妙手回春」はそのような使い方の一つである。
白手起家 b2i sh6u qi jia 裸一貫で起業すること。ゼロからのスタート。
妙手回春 miao sh6u hui chan 名医の卓越した腕。見事に挽回する。
受不粁手ai ba shi sh6u 好きで手放せない。大切で手放せない。
C足と一緒に使う「手」
人間の言葉の中枢はなんと言っても脳と心にある。目で観察し、心で捕らえ、言葉で表現すると
いうプロセスがある。人間の行動は感覚器官で察知して、手足で具体化する働きで行われる。手足
を共に使うことによって、言葉の表現力に動的な感覚を与えることは熟語の魅力の一であろう。
大手大脚 da sh6u d2 ji口o 金遣いが荒い。金にだらしない。
手忙脚乱 sh6u mang jiao luati てんてこ舞いである。慌てる様子。
手舞足蹟sh6u wU za dao 躍り上がって喜ぶ。有頂天になる。
4.趣味に合わせてスタート
以上のオリジナル分類は学習者が自分なりの趣味によって、選ぶことができる。例えば、数字に
敏感な方は数字の歌から入門し、動物の好きな方は動物熟語から選べ、飲食文化に関心のある方は
飲食熟語からスタートすることができる。自分の趣味に合わせて学習すれば、面白く感じることが
でき、知らないうちにたくさんの熟語を覚えることができる。自分の好きなテーマ、自らの力でそ
れを突破することができたら、その他の言葉も簡単になるという実感がつかめるだろう。
それによって、熟語の特徴を理解し、中国語表現の幅を広げることができる。例えば、植物を使っ
た熟語の中には人間の感情を表す言葉が非常に多い。植物の色々な属性、形、色合いなどから連想
される生きた人間感情の表れであろう。これは歴史や文化的感覚が必要とされる難しい表現だ。こ
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中国語熟語の分類方法にっいて(曹志偉)
の表現力を豊かにするだけではなく、言語レベルを測る目安の一つでもある。
漢語水平考試(HSK)にしても、中国語検定試験にしても、中級と上級は言葉遣いが巧みで高
度な熟語力が必要とされる。初級から中級まで、更に中級から上級への道のりは、登山で比喩する
と、基礎は平坦な道、初級は急な階段、更に上級は荊道をよじ登って頂点に辿りつくとそれぞれ例
えられる。
今までの中国語資格試験の中でも、「翅尾巴」、「一見舛情」、「横挑鼻子竪挑眼」などの言葉が頻
繁に出題されてきた。この意味で熟語を身につけることは中級と上級合格を目指す第一歩だろう。
また、このように分類された熟語を習得することによって、言葉の背景にある中国の文化に触れる
ことができ、自ら言葉の面白さを味わえる。
学習者はそれぞれの熟語の構成と使い方に興味を持ち始め、知らず知らずのうちにきっと熟語の
面白さを再発見できる。そして語学力アップを目指すと同時に、実際に庶民生活の中に生きている
言葉に触れ会うことができる。
5.終わり
本文は中国語を教える立場に立って、学習者がいかに熟語を効率よく習得することを念頭におい
て、今までと違う熟語の分類法を試みてきた。オリジナル分類方法は、様々な熟語を短時間で覚え
やすいため、学習者の興味を引き出す新しい編成方法を取り入れた。その特徴は以下である。
(1)中→日、日→中の双方向で赤シート学習ができる。学習者は繰り返し読むことによって、中
国語と日本語の表現が違うところや素晴らしさを味わうことで自然に覚える。
②学習者はオリジナル分類を使い、自分にあった勉強法を探し、スピードマスターができる。
今までに見えなかった文化背景や習慣の面白さを再発見できる。
(3)他の中級教材と合わせて使用でき、熟語の単語帳としても活用できる。また、熟語の量およ
び学習興味を引き出すことが目的である。さらに、漢語水平考試(HSK)や中国語検定の受験者
も参考できる。
(4)初級レベルの勉強を終えた学習者を対象に、熟語を短時間で覚えることは、さらなる語学力
アップが期待できる。いわゆる、中国語でのコミュニケーションに重点をおき、実践会話能力の向
上を目標とする。だから熟語を使えば使うほど中国語の学習が面白くなる。
(5)この分類の特徴はグループ分けがユニークで、リズミカルに読めて楽しいところだ。それに
学習者はどのテーマから読んでも、何時でもどこでも、直ぐ楽しめることである。
最後、言葉は文化という土壌から培われたもので、高いレベルに到達する為には、まず、言葉の
背景にある文化を理解することなのである。その意味で熟語は文化表現の一つの花であり、また文
化理解への一つの鍵といっても過言ではない。
参考文献
陳曇・曹志偉共著2005「中国語熟語760中日双方向による攻略法」晃洋書房
川口栄一編著1999「中国語運用能力検定試験模擬問題集IIII KJA出版
HSK B本実施委員会事務局編集「中国語漢語水平考試1
一9一
愛知淑徳大学論集 一コミュニケーション学部篇一 第6号
香坂順一等著1989「現代中国語辞典1光生館
香坂順一等著1992「中国語慣用語3001光生館
香坂順一等著1995「中国語成語3001光生館
北村亮介等著1995「辞典で解決しない中国語3001光生館
彰林宜等著1986「双日双解熟沼同典」吉林教育出版社
卓越等著1992「古今成悟八用伺典」升明出版社
李行健等著2002r現代測吾慣用活規萢同典」長春出版社
何宛屏等著2002「新隼成語詞典」商秀印弔棺
劉潔修著2000「成活」商多印弔棺
徐宗才著2000r俗塔」商各印弔棺
一10一
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