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2015 年 7 月 9 日 日 本 銀 行 金 融 機 構 局 金融高度化センター 金融

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2015 年 7 月 9 日 日 本 銀 行 金 融 機 構 局 金融高度化センター 金融
2015 年 7 月 9 日
日
本
銀
行
金 融 機 構 局
金融高度化センター
金融高度化セミナー「地域創生に向けた創業支援への取組み」
-金融高度化センター創設 10 周年記念-
(2015 年 6 月 4 日開催)パネル・ディスカッションの模様1
パネリスト
奥田 展久 氏 (株式会社 日本政策金融公庫 国民生活事業本部
小松
末田
宮垣
柳谷
モデレータ
真実
義明
健生
修平
氏
氏
氏
氏
創業支援部 創業支援グループ グループリーダー)
(ミュージックセキュリティ―ズ株式会社 代表取締役)
(株式会社 西京銀行 執行役員 地域連携部長)
(但馬信用金庫 本店営業部 部長)
(福井信用金庫 営業推進部 法人営業課 課長)
山口 省藏 (日本銀行 金融機構局 金融高度化センター 副センター長)
(山口)パネル・ディスカッションを始めます。まず、4 名のパネリストの方から、それぞ
れどのように創業支援に取り組まれているか、ご紹介頂ければと思います。
1.それぞれの取組み
(山口)最初は、山口県周南市を中心に創業支援に取り組んでいる西京銀行の末田
さんから、お願いしたいと思います。
1
パネル・ディスカッションにおけるパネリストの意見は、必ずしも所属する組織を代表したもので
はない。
1
(末田氏)…資料「西京銀行の挑戦!
~創業サポートによる地域活性化~」参照
(1)取組み体制
当行では、創業を地域連携部が担当しています。陣容は 11 名で、地方創生
に関する自治体との窓口、具体的な取組みの実行部隊としての役割を担ってい
ます。
創業支援について、創業ニーズの掘り起しから創業後のフォローまで一貫し
た体制を敷いています。関係機関と協力し、創業者を育て、安定的な雇用の受
け皿となる事業を作ることで、地域貢献に取り組んでいます。特に「ソーシャル
ビジネス」に着目し応援しています。
(2)具体的な取組み
まず、創業者の掘り起しを目的に、参加者が 10 名程度の小規模な「創業セミ
ナー」を頻繁に開催しています。
また、「さいきょう実践創業塾」を開催しています。「さいきょう実践創業塾」で
は、全 6 回、36 時間を使い、創業希望者がマーケティング、財務、税務、人材育
成まで幅広く学習し、最後に事業計画の発表をします。
「さいきょう S1 グランプリ」は、ソーシャルビジネスに着目したアイディアプラン
オーディションで、現在 3 回目を実施中です。写真を掲載しているキッチンカー
は、人口 400 人の周南市須金という里山で、地域の食材を使用したお弁当販売
を始めた起業事例で、準グランプリを獲得しました。須金は、観光農園が広がり、
年間 4 万人もの観光客が訪れるものの食事処がないことが課題でした。この事
業がマスコミにも取り上げられてサポーターが増えたため、農家レストランをオ
ープンするなど、事業を拡大しています。
「ビジネスプランコンテスト」は、創業した経営者がプレゼンテーションを行うイ
ベントです。県内の有力企業約 40 社が参加しており、ビジネスマッチングによる
販路拡大のサポートを目的としています。
この他、補助金申請のサポートや、「ハイスクール起業塾」にて、次世代(高
校生)の起業マインドの醸成に努めています。
(3)山口県周防大島の取組み
人口 18 千人の周防大島は、高齢化率 50%の島ということで有名です。課題
2
解決による地域再生に向けて、廃校をコミュニティケア施設に転換する事業を
手がけ、50 人の雇用を創出しました。この島の人口ピラミッドは日本の 40 年後
の姿と言われています。当行は、起業をキーワードに、この島を地域再生のモ
デルにしようとチャレンジしているところです。
(山口)次に、福井県で 10 年以上前から創業支援に取り組んでいる福井信用金庫の
柳谷さん、お願いします。
(柳谷氏)…資料「福井信用金庫の創業支援
への取り組みについて」参照
(1)取組み状況
当庫では、独自のローン商品である「ふくしん創業支援資金」の発売(平成 15
年度)と同時に創業への取組みを本格化させました。最近の融資先数は平均し
て年 50 先です。昨年度の日本政策金融公庫福井・武生支店における創業支援
実績が 101 件、福井商工会議所の開業支援が 65 件であることを踏まえると、地
域において一定の成果を上げていると考えています。
業種別では、飲食、宿泊などのサービス業、卸・小売業など、小口で創業しや
すい業種が目立っています。また、法人営業課内に専担者を置いた医療、福祉
も増えてきています。
(2)取組み体制・特徴
「ふくしん創業支援資金」は、融資金額が 5 百万円以内、原則担保不要です。
福井県内の市町の創業関連融資には、自己資金要件(半分以上)があるため、
そうした制約がない「ふくしん創業支援資金」には優位性があると考えていま
す。
創業融資に係る事務フローで特徴的なのは、法人営業課が深く関与している
ことです。営業店の担当者に同行して創業者を訪ね、事業計画の作り込みを支
援しています。融資稟議の際には、法人営業課が事業計画に妥当性があると
判断した案件のみが審査課に回ります。この結果、法人営業課には創業融資
のノウハウが集積され、レベルアップした支援の実施が可能となっています。
開業後、決算を 1 期終えた時点で、営業店の地区担当者がフォローアップを
行います。経営状況の把握に止まらず、預金取引や他の取引の推進といった
面でも一役買っています。
事業計画を判断する上でのポイントとして、仮に事業に失敗しても再起可能
3
な資金計画であることを重視しています。また、過去の失敗事例を研究し、同業
種の開業支援に役立てています。地域と共存共栄するという理念を持っている
金融機関としての目線を重視した判断を行っているわけです。
創業情報に関しては、営業店が足で稼いだ情報を「融資情報管理システム」
に入力し、当庫内で共有しています。また、「開業サポートセンター」(福井商工
会議所)等、他の支援機関との情報交換も行っています。特徴的なのは、医療
や理美容関係の卸売業者等と常に情報交換を行っており、創業案件の紹介を
受けることです。
なお、情報はもらう一方ではなく、当庫から他の支援機関を紹介することもあ
ります。双方向で紹介しあうことでネットワークが広がり、各支援機関の強みを
活かした厚みのある支援が可能になっています。
当庫では、平成 21 年度より、創業関連融資先数が大幅に増加しました。これ
は当該年度より、創業支援を店舗業績評価に反映したこと、情報を集めた営業
店に対し本部専担部署がサポートすることで、とかく手間のかかると思われがち
な創業支援のハードルを下げたことが影響したものと思われます。
(3)今後の取組み
創業者の新しい資金調達手法として、当庫取引先の経営コンサルタントが昨
年度末に「福井を良くするクラウドファンディング」を立ち上げました。当庫は事
業計画アドバイザーという形で参画しています。
また、他の支援機関との連携面では、この 5 月から日本政策金融公庫福井・
武生支店、福井商工会議所と事業計画書の共通化を始めています。創業希望
者の負担軽減に加え、3 者の創業に関する目線が統一される効果が期待され
ます。
最後に、福井市中心市街地活性化の取組みについてお話します。福井市で
は、福井駅前の商店街を、美容やエステ、健康に良い料理を出す飲食店の集
積地にして活性化を図ろうという「美のまちふくいプロジェクト」が進められており、
昨年 3 月に開催されたイベントを契機に 10 店舗が開業しました。この結果、
2010 年には 20%であった空店舗率が 16%まで改善しています。この他にも、民
間の街づくり会社が立ち上がったり、他の商店街では「食」の集積地を目指すこ
とで活性化を図る動きがみられます。当庫は、地元の金融機関として、これらの
取組みを支援していきたいと思っています。
(山口)次に、兵庫県の但馬地区で、公的な補助金をうまく活用する創業支援を行っ
ている、但馬信用金庫の宮垣さんにお願いします。
4
(宮垣氏)・・・資料「但馬信用金庫の取り組みについて
~公的な補助金を活用した支援~」参照
(1)営業エリアの概要
当庫の主要営業エリアである兵庫県北部の但馬地区(豊岡市、養父<やぶ>
市、朝来<あさご>市、香美<かみ>町、新温泉町)は、東京都とほぼ同じ面積
ですが、人口は約 17 万人と、東京都(1,346 万人)の 1.3%しかない田舎です。
もっとも、地域資源は豊富です。但馬牛は神戸ビーフ、松阪牛の素牛ですし、
「八鹿豚<ようかぶた>」と呼ばれるブランド豚もあります。ブロイラーは 1950 年
代に但馬で開発されたものです。海産物では、松葉ガニ、ハタハタ、蛍イカなど
が採れます。豊岡市では、鞄が地場産業となっており、国内の 7 割を生産してい
ます。また、コウノトリも共生できる、農薬をあまり使わない農法で作った「コウノ
トリ米」を地域ブランドで売り出しています。
このような豊富な資源や素材をうまく使って、事業を組み立てていくことが長
年の課題でしたが、その中で注目したのが地域経済循環創造事業交付金で
す。
(2)地域経済循環創造事業交付金の概要等
地域経済循環創造事業交付金は、「あと一歩」で実現できるような地域活性
化事業について、地方自治体が、民間事業者や地域金融機関と組んでビジネ
スプランを作成し、総務省に申請するものです。事業の初期投資に充てられる
交付金の上限額は 50 百万円と多額で、例えば、地元食材を使った 1 億円の食
品加工工場を作る場合、50 百万円は交付金、残りの 50 百万円は地域金融機
関が貸出を行うことになります。
この交付金にはいくつかの条件があります。1 つ目は、地元資源の活用と、
地元の人材を雇用することです。地元資源としては、原材料のみならず燃料な
どでも構いません。なお、交付金の申請主体となる「地元」自治体の捉え方につ
いては、例えば、当庫では豊岡市の事業者が豊岡市の産品等を使い事業を行
うのであれば、豊岡市と組みますし、但馬地区全域から資源を集めて事業を行
う場合には、兵庫県と組んで事業計画を作成するようにしています。2 つ目は、
地域金融機関が交付金額程度の融資を行わなければならないことです。その
際、経営者保証を徴求しないことになっています。実際に事業計画を策定する
際には、投資効果、地元雇用創出効果、地元産業直接効果、課税対象利益等
創出効果といった指標を確認しながら作業を進めます。
5
2014 年度は、申請した 10 事業すべてが採択されました。このうち兵庫県と組
んで申請した事業が 1 件で、残りは単体自治体と組んだものです。因みに、
2015 年 4 月にも 1 件採択されました。
(3)推進体制
この交付金は、地方自治体が申請主体となりますが、当庫では、積極的に自
治体や事業者に対し、提案して回っています。営業店においても、融資増強に
つながるため、特別な業績表彰を行わなくとも推進しています。
当庫では、この交付金の利用を、特に 6 次産業化に関心のある顧客に提案し
ています。
また、創業よりも第二創業に適していると思います。理由は、①地域資源を使
うため、一般の原材料よりも「割高」になること、②地域資源のブランドを大切に
する方が多い中で、仕入れには地域内で一定の信用や実績が必要になること、
③交付金と融資を組み合わせると 1 億円近くのプロジェクトも対象となりますが、
創業の場合はそれほど多額の初期投資をしない方が良いと考えられること、な
どです。
(4)行政との関係作り
行政との関係では、行政が構築した枠組み・事業に参加するだけではなく、
行政と共同で事業の企画・運営を行うパートナーとして、この 10 年来取り組んで
きています。
例えば、豊岡市との間では、野生復帰したコウノトリがもたらす経済効果を共
同調査しました。また、「豊岡市中心市街地活性化基本計画」の策定委員長に
当庫職員が 1 年に亘り委嘱を受け、本計画に基づき第 3 セクター方式で、地場
産業である鞄に特化した拠点施設を作りました。現在、順調に稼働しています。
さらに、この 5 月に豊岡市が認定を受けた産業競争力強化法に基づく「創業支
援事業計画」でも、具体的な事業を提案し、一緒に計画の策定を行いました。
こうした中、今年の中小企業白書には 6 ページに亘って豊岡市の特集が組ま
れました。豊岡市では城崎温泉のインバウンド客と鞄業界の活性化によって、
国の実質経済成長率を上回る成長を遂げていることが書かれています。
(山口)次に、地域金融機関と連携したクラウドファンディングの活用により、企業の支
援を行っている、ミュージックセキュリティーズの小松さんにお願いします。
(小松氏)…資料「インターネットを活用した
『資本性』の資金供給について」参照
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(1)会社概要
2000 年に創業した当社は、本店(大手町)のほか大阪、熊本、北海道に拠点
を構え、従業員は 40 名です。
第二種金融商品取引業者として、いわゆる投資型クラウドファンディングを、
全国の金融機関と連携しながら取り組んでいます。私は、一般社団法人第二種
金融商品取引業協会の理事を務めています。
(2)創業から今まで
当社は、レコード会社に所属しない音楽家が、作りたい音楽を作れない状況を
変えること、すなわち、金融の力で音楽家にクリエイティブな活動を行ってもらう
ために立ち上げました。
2000 年に第 1 号の「音楽ファンド」を匿名組合出資で組成し、その後も数多く
の同種のファンドを作りました。2007 年に、日本政策投資銀行の方から、「クリエ
イティブでアーティスティックな事業をやっている酒蔵があるが、資金調達ができ
なくて困っている」との話を聞きました。その酒蔵が主催する「田植えの会」に参
加して話を聞いたところ、熱い思いはあるものの、音楽家と同様の悩みを抱えて
いることが分かり、新たに「純米酒ファンド」を組成しました。
その後、いろいろなファンドを組成したいと思う中、これまでの個別の Web サイ
トで資金を募集する仕組みを一まとめにする必要があると考え、2009 年にマイク
ロ投資プラットフォーム「セキュリテ」を立ち上げました。
2011 年の東日本大震災の際には「セキュリテ」のノウハウを活かして、「被災
地応援ファンド」を組成しました。半分が寄付、半分が投資という珍しいファンドで、
約 3 万人から 10 億円以上の資金を集め、被災した事業者の資金調達の手伝い
をしました。この間、金融庁との協議で、一定の条件(5 年以上の投資期間等)を
満たせば、「被災地応援ファンド」で調達した資金を「資本性借入金」として、金融
機関が融資をする際に資本とみなせることが可能になりました。
当社のような匿名組合を使った投資型クラウドファンディングは世界的にも珍
しいことから、海外の金融機関から、連携の依頼が寄せられています。この結果、
2014 年に米州開発銀行と連携し、ラテンアメリカ系のファンドを組成しています。
(3)マイクロ投資プラットフォーム「セキュリテ」について
「セキュリテ」に掲載するファンドは、匿名組合契約のスキームを使います。投
資を受けた事業者が資金を使う期間は平均 3~5 年で、じっくり使用できます。現
在 390 本のファンドが存在し、1 ファンド当たりの資金調達金額は平均で 12 百万
7
円程度、一口の金額は 1 万円が最も多く、投資者は多いファンドで 2,500 人程度
に上ります。
当社では、「セキュリテ」を通じ、全国の個人の方から集める新しいお金の流
れを創ることで、事業者のニーズに応えたいと考えています。
現在、地域金融機関では、地方創生に合わせて専担部署を作られている先
が多いかと思います。ミュージックセキュリティ―ズに地域の事業者を紹介し、全
国から資金を集めることも地域の活性化につながると思いますので、是非、連携
できることを期待しています。
2.創業者の掘り起し
(山口)ここからは、金融機関による創業支援の課題 3 点を取り上げ、私の方から、パ
ネリストの方々に質問する形で、議論していきたいと思います。
資料(「金融機関における創業支援の現状と課題」)の 26 ページにある①創
業者の掘り起し、②民間金融機関の役割と関係機関との連携、③創業支援体
制の整備について、それぞれ議論します。
最初に、「創業者の掘り起しをどうするか」について、意見を伺いたいと思いま
す。この点に関しては、まず、創業セミナーや創業塾を開催している西京銀行の
末田さんにお願いします。
(末田氏)3 年前に創業に取り組んだ際、一番苦労したのが、創業を目指している方
がどこにいるのか全く分からないことでした。そこで、当行では、潜在する創業ニ
ーズを掘り起こすためには「創業=西京銀行」と連想してもらうことが重要であ
ると考え、まず、取り組んだのが「創業セミナー」になります。2 年間で 46 回開催
し、イメージの植え付けをしています。
次に取り組んだのが「実践創業塾」になります。募集に際し、「創業セミナー」
参加者への声かけはもちろんのこと、関連機関へのチラシの配布、テレビCM
放映、新聞や地域情報誌での広告、当行 HP への掲載等、様々な媒体を使って
募集をかけることでイメージ作りをしています。
この他、「実践創業塾」の塾生と講師のネットワークから、新たな塾生が生ま
れるケースも出てきています。因みに、第 3 回目の「実践創業塾」(15/1~3 月開
講)の塾生に参加の端緒を聞いたところ、各種媒体により存在を知って参加した
塾生が約半数、残りの半数は口コミ(他者の紹介)によるものでした。
(山口)先ほど、柳谷さんのお話の中で、福井信用金庫では業界関連業者から創業
者情報を入手していると伺いました。この点について、詳しく教えて頂きたいと
8
思います。
(柳谷氏)医療関係については、医療機器・薬品の卸売業者や会計事務所、理美容
関係については、関係する卸売業者から情報を得ています。
特に、医療関係については、卸売業者や会計事務所に専門の担当者がいま
す。そこで診療圏の調査や基礎的な事業計画を作ってくれるため非常に助かり
ます。
具体事例として、歯科関係の卸売業者から紹介された歯科医の開業案件が
ありました。福井市内での開業を決めていましたが、具体的な場所までは決め
ていなかったため、卸売業者に診療圏の調査を依頼し、開業の適地を決め、当
庫取引先の不動産業者に土地を紹介してもらいました。事業計画については、
当庫と卸売業者も協力して作成し、融資実行に至りました。
歯科医や小規模のクリニックの開業では、独立する意思のある医者が、医局
の先輩で、既に開業している医者に相談するパターンがよくみられます。相談を
受けた先輩は、自分が取引している会計事務所や卸売業者を紹介するケース
が殆どであるため、閉じたネットワークの中で事が進んでいきます。言い換えれ
ば、この閉じたネットワークの仲間に入ってしまえば、他の金融機関からの攻勢
に晒されることなく、融資を実行できます。そうした意味合いでも、業界関連業者
と付き合う効果は大きいと思っています。
(山口)但馬信用金庫では、地元商店街の活性化に取り組む過程で創業者の発掘に
つながった事例があると伺っています。宮垣さん、その点についてお話し頂けま
すでしょうか。
(宮垣氏)当庫では地元商店街と共同で様々な商店街振興イベントを企画・開催して
います。その中の 1 つに、空店舗 1 棟全てを借り上げ、複数の若手クリエイター
が出展したイベントがありました。評判が良く、自信を付けた出展者の中から、
女性のアクセサリー職人と、男性の鞄職人が創業しています。最近でも、同様
のイベントを通じファンを増やした男性の鞄職人が、創業補助金の採択を受け、
創業の準備を進めています。このように、クリエイターの卵と消費者が出会う場
をプロデュースすることで、創業につながることの気付きを得たところです。
因みに、今回、策定協力した豊岡市の「創業支援事業計画」にも、同様の計
画を落とし込んでいます。
(山口)これまでの 3 行庫の話の共通点は、自らが仕掛け、自らが探しに行っているこ
とだと思います。待っていては、創業者はなかなか見つからない感じがします。
(山口)次の世代の新たな産業を担うような企業、いわゆるベンチャー企業の発掘と
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いったものも期待したいと思っています。この点について、上場企業の中には、
創業期に日本政策金融公庫にお世話になった先が多いとのお話がありました
ので、奥田さんにご意見を伺いたいと思います。
(奥田氏)私から、3 つのことをお話ししたいと思います。1 つ目は「広く」、2 つ目が「長
く」、3 つ目が「深く」です。
「広く」については、先ほど、ベンチャー企業向け融資の代表格となる「資本性
ローン」のお話しをしましたが、その実績は、年間創業融資企業(26,010 先)のう
ち 1.3%と僅かです。最初から、ベンチャー企業を狙ってもなかなか遭遇できま
せん。広範な創業支援の結果として、ベンチャー企業が含まれているかもしれ
ないといったイメージを持つことが必要です。
「長く」については、ベンチャーと言われる企業の決算状況をみると、約 7 割が
償却前経常利益では赤字です。この状況が何年も続き、漸く成長軌道に乗るた
め、この間は辛抱するしかありません。「IPO はいつなんだ」と急かすことは禁物
で、長期スパンで見守る心構えが必要です。
「深く」については、ベンチャーと言われる企業は、一般の創業支援の判断か
らすると、取り上げにくい企業です。理由は、首を捻りたくなるような業種や商品、
サービスであるためです。ところが、深く調べてみると何か光るものが見えてき
ます。担当者が面倒だと言って断っている案件の中に、意外とポツリと光るもの
があったりします。従って、「ちょっと違うよな」、「よく分からないな」という案件に
対して、深く目を向けることが大事だと思います。
私は 15 年程、現場にて営業の経験がありますが、IPO に結びつくようなベン
チャー企業には巡り合えませんでした。もっとも、公庫の職員の中には上場会
社の創業に 4~5 件も関わった者もいます。夢を持って取り組んで頂ければと思
います。
3.民間金融機関の役割と関係機関との連携
(山口)第 2 の論点に移りたいと思います。公的な支援が充実している中で、公的機
関を含めた他機関との連携を民間金融機関はどのようにやっていけば良いか
を中心に、民間金融機関の役割について取り上げたいと思います。この点につ
いて、宮垣さんいかがでしょうか。
(宮垣氏)昨年 5 月に養父市が国家戦略特区(養父市中山間農業改革特区)に認定さ
れました。これを受け、当庫では、農業関連の事業が市内で多数興ることを期
待している市役所の思いも踏まえ、地域経済循環創造事業交付金を、養父市
内で重点的に提案しました。その結果、短期間に 4 つの事業が国の採択を受け
10
ることになりました。また、養父市では、「創業支援事業計画」を申請していなか
ったため、次回の申請に向け、一緒に計画を策定していくことにしています。
また、豊岡市とも、数多くの連携をしています。地域経済循環創造事業交付
金は、豊岡市が全国の自治体の中で採択数が一番で、金融機関では当庫が一
番になっています。6 月 1 日に開かれた「経済財政諮問会議」でも話題として取
り上げられており、豊岡市とはさらに連携していこうと話しています。
他の自治体の事例では、この交付金の採択を受けた事業者 A から、事業者
B の紹介を受け、事業者 B の計画を作りました。計画を策定している途中で、さ
らに事業者 C もやりたいという話を聞き、計 3 件、採択してもらいました。これま
で、当該自治体とはあまり接点がありませんでしたが、この交付金を通じてでき
た協力関係を発展させ、「地域産業振興に関する連携協定」の締結に向けて最
終調整をしています。
(山口)次々と連鎖していく地域産業振興が興味深いと思います。ところで、民間金融
機関は公的金融機関とどのように連携していくのが良いのか、奥田さんからア
ドバイス頂けますでしょうか。
(奥田氏)前任の中国創業支援センターの所長をしていた時、民間金融機関の創業
支援勉強会などに呼んでもらうことがありました。その際、勉強会会場に入ると、
冷たい視線が体中に突き刺さる感覚を受けました。「公庫=敵」と見られている
からです。
ところが勉強会が進むにつれ、何かの気付きが生まれ打ち解けあっていきま
す。それは「共有」ということだと思います。具体的には創業融資に関してリスク
を共有できることや、公庫と手を組めば、公庫の様式、情報、インフラ、ネットワ
ーク、ノウハウを共有できるということです。この結果、「不可能が可能になる」と
いうイメージが浮かび連携につながっていきます。
また、年間に 10 万事業所が生まれます。仮にそれら全てが創業とした場合、
公庫では 26 千先に創業融資を行っていますので、約 1/4 について公庫が関わ
る形になります。いずれ企業が成長すれば、民間金融機関にバトンタッチする
わけですが、できれば、創業の段階から連携の形を作って頂くと、バトンタッチし
やすくなると思っています。
(山口)福井信用金庫では、公庫との連携をどのように捉えているか、柳谷さんにお
伺いしたいと思います。
(柳谷氏)当庫では、日本政策金融公庫のことを「敵」ではなく、創業支援における頼
りになるパートナーであると考えています。その理由は、リスクの分散という観
点は勿論ですが、事業計画の妥当性を、異なる 2 つの組織の目線で判断できる
11
ことが有効であると考えているためです。
具体事例として、総事業費が高額な民営の老人介護施設の創業案件があり
ました。当時、ノウハウが蓄積されていなかった当庫では、民営の介護事業はリ
スクが高いとの認識にあり、公庫に相談しました。そして、双方の目線で事業計
画を練り上げ協調融資に至りました。公庫とは、今後より一層連携を深めていき
たいと思っています。
(山口)少なくとも福井信用金庫では、日本政策金融公庫を温かい視線でみているこ
とがわかりました。多数の地域金融機関と連携しているということで、ミュージッ
クセキュリティーズの小松さんにもご意見を伺いたいと思います。
(小松氏)…資料「インターネットを活用した『資本性』の資金供給について」参照
当社では、現在、43 の地域金融機関(銀行、信用金庫、信用組合)と有償ビ
ジネスマッチングの契約を締結しています。また、自治体、商工会議所、国際機
関との連携を含めて、月間約 150 社を紹介してもらい、約 1 か月をかけて当社
がデューデリを行い、月間 10~20 本程度のファンドを作っています。事業者か
ら初期報酬を受け取るので、その一部を有償ビジネスマッチングの対価として、
紹介してもらった地域金融機関に支払っています。
地域金融機関との連携では、まず、応援したい企業の紹介を受けます。パタ
ーンとしては、①融資取引のある先の紹介、②融資取引はないものの、今後営
業をしていく上で、営業ツールとして当社のファンドを紹介してもらうケースがあ
ります。
実際にファンドを組成するフェーズに入ると、事業者が事業計画を策定するこ
とになります。この際、金融機関が計画策定を支援することによって、事業計画
の精度や、経営者の規律が高まります。この結果、事業者と金融機関の距離感
も縮まり、良いファンドができていくことになります。
ファンドの募集は当社のサイトを使います。また IR なども同じサイトを使って
行ってもらいます。現在、金融機関の窓口で、こうした金融商品の販売を進めて
もらえるよう、金融庁や金融機関と話を詰めている最中です。
12 ページに地域金融機関紹介ファンドの事例を載せています。この中で、滋
賀銀行では、関連企業の「しがぎんリース・キャピタル」が当社の株主になって
いるほか、同行のベンチャーキャピタルから、匿名組合へ出資をしてもらってい
ます。また、取引先企業を当社に紹介した行員の方に対し、業績評価につなが
るポイントを付与してもらっています。この点、他の金融機関でも、同様の動き
が増えてきています。
次に、最近増えている、地方公共団体との連携モデルについて、兵庫県を例
12
にお話します。県庁から委託を受けた産業振興に取り組む「ひょうご産業活性
化センター」が、地域金融機関から事業者の紹介を受け、「選定委員会」に諮っ
た上で選定し、当社がファンドを組成するという流れになっています。昨年度の
当該事業にかかる兵庫県の予算は 830 万円程でしたが、総額 1 億円程度のフ
ァンドを組成しています。仮に、その予算を補助金として使うと、額面通り 830 万
円で終わってしまいます。しかし、このモデルでは、全国から 10 倍以上の資金を
集めるなど、呼び水効果が高いと言えます。
因みに、今年度から始まる大分県との連携モデルでは、県が事業者を経営
革新計画認定先と認定した場合、当社に支払う初期報酬の半分を県が負担す
るプランになっています。また、釧路市との連携でも、交付金を初期報酬に充当
するようなモデルを作っています。
このように、地域金融機関と自治体、当社の 3 者連携が、全国各地で広がっ
ています。
(山口)金融機関と他機関との連携については、クラウドファンディングの活用であっ
ても、行政や公庫との連携であっても、地域の情報について一番知っている地
域金融機関が中心になって、アレンジしていくことが大事だと感じます。
4.創業支援体制
(山口)次に 3 番目の論点である、創業支援体制について取り上げます。西京銀行で
は、2012 年に地域連携部を作られたということですが、営業店の活用方法を含
め、具体的な取組みについて、末田さんに教えて頂きたいと思います。
(末田氏)当行では、地域連携部の立上げと同時に、地域連携部主導で「創業セミナ
ー」や「個別相談会」を矢継ぎ早に行いました。しかし、これでは創業への取組
み意識が一部の行員に止まり、銀行全体の文化や風土になっていかないと感
じました。
そこで、当行では、行員を「創業セミナー」や「創業塾」に参加させることにしま
した。そこには、「創業とは何か」を勉強してもらうこと以外にも、担当地区の創
業希望者と一緒に勉強することで、実際に創業する際のサポートが円滑に進む
といった狙いもありました。
この他、創業の相談から融資実行まで長期間を要するケースがあることに鑑
み、この間の進捗状況を管理するため「創業支援カルテ」を活用しています。
総合表彰においても、「創業支援カルテ」を集計し、創業の受付件数や取組
みの好事例を評価対象としています。表彰の対象にしたことで、営業店の創業
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サポートに対する意識は格段に上がり、平成 26 年度の「創業支援カルテ」の作
成枚数は 119 件、このうち 88 先が融資実行に至っています。
(山口)西京銀行や福井信用金庫のお話にあるように、手間がかかる割には融資に
結びつきにくい創業支援に関しては、業績表彰等に織り込むことで営業店に取
組みのインセンティブを与えている金融機関が多いとの印象です。
また、創業支援体制の中では、与信体制をどうするか、と言った点も重要だ
と思います。この点、福井信用金庫では創業者に対する事例研究を行い、それ
を活かしていると伺いましたので、柳谷さんにお話頂きたいと思います。
(柳谷氏)先ほどお話したように、「ふくしん創業支援資金」の稟議は、必ず法人営業
課にて事業計画の妥当性を判断してから審査部門に回ります。また、事業計画
を作り込む過程では、営業店とともに創業者のところに行って詰めますので、法
人営業課には、創業に関するノウハウが蓄積されています。
それにもかかわらず、当初計画通りに売上が伸びずデフォルトしたケースに
対しては、二度と同じ失敗を繰り返さぬよう徹底的に検証し、次に迎える同業種
の審査、事業計画の作り込みに役立てています。
これまでの経験で印象的だったのが、賃貸物件で開業した 2 軒の飲食店(焼
肉屋、ラーメン屋)の空調設備が、夏場の同時期に故障し、事業がとん挫した事
例があります。それ以降は、空調設備などの什器・備品の契約内容を確認する
とともに、仮に故障した際の資金手当についても確認するなど、失敗事例を活
かしています。
(山口)失敗事例があるというお話が出ましたが、創業向け与信というのは、ハイリス
クな割にはローリターンではないかとの見方があります。柳谷さんはどのように
捉えていますか。
(柳谷氏)当庫では、創業向け与信はハイリスク・ローリターンではなくて、チャンスだ
と捉えています。実際に 10 年以上創業融資に取り組んできている中で、創業関
連融資先の債務者区分の構成は、当庫全体の債務者区分の構成より若干良
い値となっています。
また、経営に関する知識が殆どない創業希望者を支援するのは苦労もあり
ますが、経営者を「ゼロ」から育てるチャンスでもあります。支援をしていく過程
で、創業希望者と当庫の間に経営に関する共通言語のようなものが醸成され、
創業後の助言や指導が容易にもなります。
さらに、創業後、事業が継続されていく中での預金取引や新たな資金需要な
どの複合取引を考えれば、創業支援には積極的に取り組むべきものと考えてい
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ます。
5.Q&A
(山口)ここで休憩時間までに出して頂いたフロアからの質問を取り上げたいと思いま
す。多くの質問を頂いたのですが、時間の制約がありますので、このうちの幾つ
かについて、パネリストの皆さんからお答え頂こうと思います。
まず、日本政策金融公庫にまとめて 3 問頂いております。そのまま読みますと
① 「創業融資の取扱件数は分かりました。だいたいどの位の承認率なので
しょうか」
② 「創業融資の審査技術について教えて欲しい。前職の経験値など経営者
の能力評価をどうしているのか」
③ 「目標売上高の確からしさの検証方法について教えてほしい」
という質問です。奥田さんからご回答頂ければと思います。
(奥田氏)日本政策金融公庫では、お客様を門前払いすることはなく、内容の如何を
問わず全て受け付けます。従って、前裁きがない中での話なので、あまり参考
にならないと思いますが、承認率は皆様のご想像よりかなり高いと思います。
審査の技術に関しては、公庫内にマニュアルが存在するわけではありません。
経験を積んで、成功する創業者像を自分の中でイメージ作りるすことが大事だ
と思います。成功する創業者をイメージするのは難しいかもしれませんが、皆さ
んにも、「こうした人は経営者に向いているな」というものは頭の中にあると思い
ます。そのイメージと重ね合わせることで、属性的な部分をみて頂ければと思い
ます。
売上高の検証については、経営指標を使います。公庫が作成している経営
指標は、小企業の経営指標となっていますので、創業者に近い数字が出ます。
また、平均値のほか、上方信頼限界、下方信頼限界が示され、その範囲に数
値が収まっているか確認できますので、例えば、経営者に提出された計画値と
指標の値との間に大きなかい離があれば、その理由について説明を求めること
で、売上高の実現性を判断することができると思います。
(山口)次の質問に移ります。「米国では創業に失敗した人材には VC から二度とお金
が付かないということが露見し始めています。日本では、失敗した人のリベンジ
に対する支援はどうなのでしょうか」という質問が来ています。福井信用金庫で
は、失敗を見越した貸し方をしているとのお話があったかと思います。柳谷さん、
その点についてコメントをお願いします。
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(柳谷氏)金融機関として、一度痛い目に遭った創業者から再チャレンジしたいと言わ
れても、心情的にやりにくい部分があります。このため、当庫では、事業計画を
判断する入口の段階で、当初借入額をどれだけ減らせるか、仮に事業に失敗し
ても、同居家族からの借入返済が可能か否か、当事者が他の職場に勤めなが
ら借入返済が可能か否か、という点をアドバイスしています。
(山口)日本政策金融公庫には再チャレンジに関する融資制度があるかと思います。
奥田さんにお話し頂きたいと思います。
(奥田氏)第一次安倍政権の際、再チャレンジに向けた制度が作られました。新しいビ
ジネスプランがあれば、過去の公庫との取引で、返済が芳しくなかったという履
歴の持ち主であっても取り扱うことになっています。
再チャレンジの場合、民間金融機関との協調融資が困難であることが予想さ
れますので、一般に、公庫単体でも、リスクを背負いきれるかどうかが審査のポ
イントになります。
(山口)最後の質問です。「創業者が不安に感じているもの」として経営者保証の問題
があります。日本政策金融公庫では、無保証で融資をしているケースが多いと
のお話ですが、創業者に保証を取って融資する場合と、保証を取らずに融資す
る場合では、差はあるのでしょうか。奥田さんにお願いしたいと思います。
(奥田氏)公庫の「新創業融資制度」では、経営者の保証について選択制を取ってお
り、保証が付いた場合には金利を 0.1%差し引く仕組みになっています。この 2
つのケースについて、継続的にみてきていますが、デフォルト率や信用コストと
いった部分に大きな差はないように思います。
6.まとめ
(山口)最後に、パネリストの方々に、改めて、金融機関の創業支援に関する会場の
皆様へのメッセージとして、奥田さんから順番に一言ずつ、お話し頂きたいと思
います。
(奥田氏)創業支援と「地域の創造と発展」は、切っても切り離せないものです。それを
自分の手でできる意義は大きく、積極的に取り組んで頂きたいと思います。公
庫にお声が掛かれば、いつでも出向いて行きますので、今後ともよろしくお願い
します。
(小松氏)当社が行っている、全国の個人から資金を集め投資する事業について、よ
く、金融機関への資金ニーズを食っているのではないかと言われます。しかし、
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実際には、資金の性質は違いますし、むしろ金融機関が新しい顧客を開拓する
際のきっかけになります。その意味でも、是非、上手く利用して頂きたいと思い
ます。
(宮垣氏)但馬地区では、昨年度、総務省の交付金を活用した地産地消のビジネスが
数多く立ち上がりました。地元の行政や事業者の中には、これをさらに進めてい
こうという気運があり、何かあれば信用金庫に相談しようといった姿勢もみられ、
有難く思っています。
交付金申請に際しては、当庫職員も事業計画を一緒に作っていきます。この
結果、事業に関するノウハウが身に付き、通常の審査業務や経営改善支援業
務にも活かせていると感じています。この流れを引き続き強化していきたいと考
えています。
(柳谷氏)私は、創業支援によって「目利き力」が養われていると感じています。金融
機関が融資を判断する際には、とかく決算書に目が向きがちになりますが、創
業案件には決算書がありません。創業者を指導し、当庫の審査に耐えうるよう
な、また我々が応援したくなるような事業計画を作成する中で、「目利き力」や
「ヒアリング力」は相応に鍛えられ、結果として、通常の融資審査でも役立つこと
になります。
昨今、金融機関の事業性評価について問われていますが、その課題解決に
もなる創業支援に、皆さんも積極的に取り組んで頂ければと思います。
(末田氏)当行が行っている「実践創業塾」や「S1 グランプリ」から起業した方の話を伺
うと、「熱心に話を聞いてもらい、同じ目線で考えて、後押しをしてもらった」とか
「ヒト、モノ、コトを繋いでくれるパイプ役として頼りにしている」といった声が聞か
れます。京都信用金庫理事長の講演にあったように、親身になって話を聞く姿
勢は、改めて重要なことであると認識している次第です。
最後に、金融機関が創業に取り組む最大のメリットは、金利競争にあまり頼
らずにメインバンクになれるところにあると考えています。当行では、創業支援
により一層取り組んでいきたいと思っています。
(山口)最後に私から一言申し上げたいと思います。私は、最初の説明でも先ほどの
質問でも、「創業関連融資はハイリスクである」と申し上げました。しかし、本日
のセミナーでは、「創業関連融資はハイリスクではない」とのお話がありました。
それはおそらく、そうおっしゃっている金融機関さんが融資した後も、創業者
に寄り添って支援をされているからだと思います。単に貸したまま放置していて
はそうはいかないと思います。
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しかし、そこに大きなヒントを感じました。「金融機関が寄り添って支援するつ
もりになれば、取引できる顧客は拡がる」ということではないでしょうか。「今まで
は、リスクが高く見えて、自分達の取引相手とは思っていなかった先が、自分達
の寄り添い方で変わる」ということだと思っています。
本日ご参加頂いた皆さんには、地元の創業者にうまく寄り添って、地域の希
望の芽を育てていかれることを期待しまして、パネル・ディスカッションを終了し
たいと思います。本日は、長時間ありがとうございました。
以
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