...

34 チームで試行錯誤する - Aiming 開発者ブログ

by user

on
Category: Documents
9

views

Report

Comments

Transcript

34 チームで試行錯誤する - Aiming 開発者ブログ
34 チームで試行錯誤する
小林 俊仁
あなたはクソゲーを作りたいですか? この答えは「no」でしょう。では、あなたはクソ
ゲーを作ったことがありますか? 経験豊富なゲームクリエイターなら、この答えは「yes」
でしょう。あらゆるゲームは、その企画が産まれた時には、素晴らしい希望があったはず
です。でも、世の中にはクソゲーが溢れています。
いつ、何がクソゲーをクソゲーたらしめているのでしょうか? 私の経験では、その大き
な理由の 1 つは「試行錯誤ができない組織」でした。
組織の壁・職種の壁・人の壁
ゲーム開発をはじめるには、誰かの脳内イメージをチーム全員に伝えなければなりませ
ん。そのための道具が仕様書ですが、そもそも文章でゲームのおもしろさを表現しきるこ
とは非常に難しいため、その通りに作ったものがおもしろくなるとは限りません。むしろ、
仕様書通りに作っただけのゲームはクソゲーだ、とも言えます。
では、ゲームをおもしろくしていくプロセスはどこにあるのでしょうか? 私は、それは
その後の試行錯誤の中にこそあると考えています。逆に言えば、試行錯誤ができない組織
はクソゲーを改善していくことができないのです。
しかし、組織で試行錯誤する、というのは難しいことです。手戻りがあると、「クソ仕様
書きやがって」とプランナーに原因を求める人がいます。「技術的にムリって警告したのに
直さなかったプランナーが悪い」「リスクをちゃんと説明しなかったエンジニアが悪い」と
いったケンカもあります。「上の決定が悪い」などと諦めちゃった部下と、「部下が働かな
い」などと裸の王様になってしまう上司、といった構造もあるでしょう。これらは、組織
の壁・職種の壁がチームとしての働きを阻害する例です。さらには、個々人の間にも壁が
存在します。キレたり、苛立ったりして他者を制御しようとする人がいます。それに対し
て「あいつには言いにくいから黙っとこう」として控える人たちがいます。被害者同士で
同盟を作る人もいます。
組織には、こういった様々な壁が、複雑な網の目のように入り組んでいるのです。そし
て「言いにくいこと」を「言いにくいこと」にしている原因はここにあります。
チームでゲームを作るには
試行錯誤とは、失敗を認めて改善を続けていくプロセスのことです。「ここがクソだから
やっぱこうする」は、ゲームデザイナーにとっては自分の仕事の否定であり、プログラマー
やアーティストにとっては怒りや諦めの元です。試行錯誤をするには、誰かの仕事を無に
68
ゲームクリエイターが知るべき 97 のこと
してしまうコミュニケーションすら、積極的に取る必要があるのです。このためには、チー
ムを、チームとして働かせるための素地を作る必要があります。
チームメンバーを尊敬し、感謝や謝罪を表現してください。日頃からそうしている人は、
「やっぱりクソだからこうする」といったことも他人に受け入れてもらいやすいでしょう。
間違いは、しっかりと謝って新しい意図を伝えてください。逆の立場であれば、一旦それ
をしっかりと受け取ってみてください。
少しだけ他者の仕事を学んでみてください。多少の知識を持つ事で、お互いの理解が増
え、レッテルを貼らない会話が可能になるでしょう。
職種や部や上下関係は一旦脇に置いて、試行錯誤の単位をチームとして切り出してみて
ください。そしてチームの席を近づけ、会話を増やしてください。
情報を個人に留めず、公開してチームのものにしてください。進捗状況、失敗や成功、
チームの取り組みなどを、壁に貼るなり wiki に書くなりしておくのもよいでしょう。勇気
を持って公開すると、チームの議論の下地を作るだけでなく、思わぬところから助け舟が
出てくるかもしれません。
自分の責任範囲を少しだけ広く想像し、自分なら何ができるのか、と考えてみてくださ
い。その立場こそがリーダーシップです。言われたことをやったから自分は正しい、とす
るのではなく、チームで価値を作り出すことにコミットしてください。
素晴らしいチームを作るのは、あなた自身なのです。
小林 俊仁(こばやし としひと)
株式会社 Aiming
東京開発グループ ゼネラルマネージャー
1977 年生。京都大学大学院情報学研究科在学中からコミュニティーエンジン株式会社で
オンラインゲームの開発に関わる。2003 年に同社取締役に就任後、北京に移住して子会
社を設立し、
CEO に就任。中国版プレイオンラインの設計・開発、モバゲータウンの中国ロー
カライズ(加加城)等に携わる。2007 年 2 月に日本に帰国し、オンラインゲームの技
術ディレクター・プロジェクトマネージャーを務める。2010 年 5 月から ONE-UP 株式
会社 東京開発グループグループマネージャー兼テクニカルディレクター。2011 年 6 月
から現職。
チームで試行錯誤する
69
Fly UP