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~現代舞妓物語の全ての100分の 5 くらい~

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~現代舞妓物語の全ての100分の 5 くらい~
5/100
~現代舞妓物語の全ての100分の 5 くらい~
取材・執筆
「お茶屋」さんの図。
京都には全部で5つの花街がある。五花街(ごかがい)と呼ばれている。
上七軒、祇園甲部、祇園東、先斗町、および宮川町の5つである。
その中でも上七軒は、最も歴史が古く由緒正しいと言われる花街だ。
いったい、このお茶屋の門をくぐった先にはどんな世界が待ち受けているのだろうか?
女将さん登場。
良枝お母さん。
もちろん元・舞妓はんである。
そのみち何十年の超ベテラン。京の花街の過去を知り、現在進行形で語ることのできる貴
重な人物である。
舞妓はんが登場!
舞妓になるには、中学の途中、もしくは高校に入学するあたりから「仕込み」という半年
~1年くらいの見習い期間を経て、厳しい修行を積む。
晴れて舞妓として認められると、このようにお座敷にあがり、お披露目となるそうだ。
まず、一舞を披露してくれた。
「舞妓」というくらいだから、基本的な仕事は「踊ること」だ。
ちなみに、私の祖母は、日本舞踊の流派を持つ先生だったこともあり、この手の踊りは小
さい頃から頻繁にみてきた。
しかし、京都で見る踊りは、ひと味違う。
歴史が裏支えしてきた格式を感じるのは気のせいではないはず。
出てきたお料理も、記録しておこうと思う。
撮り忘れた写真もあるのでご容赦を。
二品目にでてきたお造り。
たまり醤油につけていただく上品な感じのあしらい。
はものおすいもの。
添えた山菜や、かぼすが京の割烹料理らしく丁寧な感じ。
お味も、とっても上品。
いくつか出てきたのをすっとばして(撮り忘れた)、メインディッシュの鴨。
角煮風のあじつけでからしを絡ませていただく。
濃厚な鴨の脂が口の中にじわっと広がる。うまし。
これまたいくつか飛ばしたような気がするが、お食事にはさばの巻き寿司。
昆布で巻いているところが、素敵。
さばもとても良いものを使っていて、特有の香りとともにほどよく酢で締めた鯖のうまみ
がたまらん。
お椀。まあ、味噌汁だ。
複雑な味がしたので、家庭味噌汁とはひと味違うおだしを取っているのではないかと推測。
ちなみにお茶屋さんは、基本的に「場」でしかない。
料理は内製ではなく、ご近所の料理屋さんと提携して運ばれてくる。
原田は好奇心旺盛ゆえ、たびたび表に出て街の風景を眺めていたのだが、ちょうど料理を
運んでくるところを目撃した。
全部木簡というのだろうか、木製の取ってつきの入れ物にいれて目立たぬよう速やかにお
茶屋に運び入れ、また次の料理を取りにお店に戻っていった。(漫画とかに出てくるラーメ
ン屋が出前のときにつかう入れ物のウッドバージョンをイメージしてもらえば正解。)
街全体で、一つのビジネスを回しているわけだ。
聞くところによると、「この界隈で知らない人はいない」そうだ。
なんとも閉鎖的で保守的な世界なわけだが、それゆえ強い結束力で、
「あうん」の呼吸の仕
事をしておられるのだろうなと推測。
こういう世界や、価値観は嫌いじゃない。
カラオケルームにて。
お茶屋というと、畳を敷いたいわゆる「お座敷」をイメージするかもしれないが、夜の社
交場として近代化が進んでいる。このお茶屋さんには、カラオケルームもあるし、隣には
バーも併設している。
ちなみにこの日は総勢5名の舞妓さんに接待していただいた。
京都全体で100名前後しかいない舞妓はん。
どこのお茶屋さんでも日夜舞妓の奪い合い合戦のような様相だというから、一晩で5人も
舞妓はんを独占させて頂いたのはものすごい待遇だよなぁと後になって思った。
同行した和佐大輔の兄・薫氏。
高知生まれだから、「魚の骨抜きの達人」ということで鮎の骨抜きをお願いしたんだけど、
なんと頭から引きちぎれるという切ない結果に。
弘法も筆の誤り、というが骨抜きの達人も骨抜きだね。(謎)
みんながご飯を食べている間、僕は女将さんと若女将さんと共に2階の座敷を見学させて
もらうことに。
いかにも「これぞお座敷」といった感じの由緒正しきたたずまい。
そうそう、これが映画や漫画でよくみる「舞妓はん」の世界だよね。
これから、舞妓さんによる「踊り」をこの舞台で再現してもらうことに。
原田はというと、ワクワク探検隊なので普段は「絶対に見られない」裏舞台をこのあと階
間見てしまうのであった!
・・・続く!
じゃーん。談合の図。
もとい、踊りの打ち合わせ風景。
舞妓はんの世界はご存じのとおり、激烈なまでの上下社会。
軍隊並みのトップダウン構造で成立している。
当然、先輩=通称”お姉さん”の命令は絶対服従。
(もちろん信頼関係あっての秩序だよ。)
ここでは、誰が下座で誰が上座に立つかを手際よく指示、確認していた。
このコンビネーションのよさは、普段から寝食を共にする「家族」だからこそだな。
この襖が開くとき、「彼女たち」は現れる。
つつつつつ……登場~!
どんぴんしゃん・・・!
舞妓はんオールシスターズ登場!
引きの図。
女将さんが日本式ギターこと三味線でリーダーシップを取る。
この物憂げな表情も、日頃の稽古のたまものだろう。
指先まで神経を通わせているのが見て分かる。
オールシスターズ。全員いい呼吸。
ここで気づいたことがある。
舞妓は、現代でいう「芸能人」そのものだ。
なんてったって、舞妓はんが出世すると「芸妓」(芸者)になるわけだからね。
しかも、舞妓はんというのは今で言う「AKB48」そのものだ。
その心はって?
「会って、一緒に歌って踊れる」からだ。
しかもその芸たるや、何百年の蓄積ある体系を正確になぞるもの。
そりゃ、お座敷遊びは人を選ぶし、金もかかるというわけだね。
だって、芸能人を呼んで、数名で独占するようなものだもん。
というわけで、日本の芸能ビジネスの原点を垣間見た一瞬でした。
肩上げの着物も、舞妓はんの特徴どすえ。若いあやうげな艶めかしさ。
最後はジャパニーズフォーマルスタイルの会釈。
手はぴっちりと先をつけ、三角刑を作るように。
剣道を習っていた幼稚園~小学校のときに、僕が剣道の先生から教わったお辞儀のノウハ
ウは、舞妓はんたちも全員忠実に行っていた。
見る人が見ればこの折り目正しさは一目瞭然。素晴らしいね。
すっとたちあがり・・・
去って行く舞妓たち。
いかがでした~?と女将さん。
「もう一曲お願いします!」と図々しい原田。
OK。チューニングするから待っててくれよな!
・・・ちょっと言葉が違うけど、調音しなおす女将さん。
曲事に調律が違うんだって。
ギターも三味線も、まず基本は音合わせなのね。発見。
イエス。これがジャパニーズギター。
現代風にいうと、カンニングペーパー。
女将の手書き歌詞メモでござい。
映像シューティングは、僕の会社でもよく映像制作を一緒にやってもらってる根来さん。
個人的にもよく機材のことや、動画のことを教えてもらっていたりする。
映像業界では珍しく、局や制作会社出身でも、専門教育を受けたわけでもなく「好き」が
エスカレートして、映像を仕事にした珍しい動画クリエイターだ。
光量が控えめなお座敷だったので、今日はライト付き。
本日の首謀者である、佑本社長。
僕と和佐大輔が主宰している会員制のコーチングクラブのクライアントさんでもある。
佑本さんは、僕と同じく武蔵野の生まれで、完全に東京人なのに、若い頃から京都が大好
きで大好きで、わざわざ京都の着物会社に就職したという鬼のような「京都マニア」。笑
現在は、デパートなどで某商品(伝統文化系)を販売する事業などを手がけつつ、新規事
業として、日本の伝統文化を海外に発信していくということで、僕たちと一緒に画策中。
さきほどの根来さん(動画クリエイター)じゃないけど、強烈な「好き」は現実を動かす
力を持っている。今回の会だって、もとはといえばこの人の狂気的なまでの「京都狂い」
がなければ、この縁は結ばれなかった。
さ て 、 は じ ま り ま し た 二 回 戦 。 縦 シ ョ ッ ト も 収 め て お い た よ 。
このくらいのアップ目なカットを取るには、かなり近寄らないといけないのだ。
至近距離でうざいはずなのに、目一つ動かさないで舞い続けるのはさすが。
踊りの会終了~。
若女将も登場。
そして、若大将・・・もとい、城戸社長が登場。
城戸さんは、下北沢でリフォーム会社を営む建築士。
いわゆる「リノベートマンション」の仕掛け人だ。
リノベート業界に革命を起こすべく、僕たちが主宰する「創造的破壊クラブ」に参加して
くれている。いい年こいてやんちゃ千万、暑苦しくて熱ぽい素敵な人だ。笑
お座敷遊びの手ほどきをうける城戸さん。
「えーと、これはなんですかねぇ?」
なるほど。こうやるのね!の図。
(・・・猫手がかわいい。笑)
ご満悦中の城戸さん。
なぜか僕も煽られて挑戦してみることに。
ゲシュタルト崩壊って感じ。慣れている舞妓はんは強い。
お次は有名な「とらとら」遊び。
簡単に説明すると、近松門左衛門作「国姓爺合戦<こくせんやかっせん>」を題材にした
ボディーランゲージによる「じゃんけん」みたいなゲーム。
(簡単に分からないかこれじゃ。)
当たり前だが、メディアイメージであるような「野球拳」みたいな感じじゃないからね。
こういう感じで、「いっせーのせ」で
(1) 虎
(2) 加藤清正の槍
(3) 老婆(加藤清正の母)
のジェスチャーをする。
つまり、じゃんけん。
虎>老婆
加藤清正>虎
老婆>加藤清正
という要領。
上記は、どっちも虎なので引き分けの図。
笑うと、まだあどけないのが分かる。
舞妓はんは高校生くらいなんだから、そりゃそうよね。
教えてもらいながら、僕もチャレンジしてみることに。
おてんばな舞妓はんに、カメラを奪われるの図。
舞妓が、舞妓を取るという謎の図。
現代テクノロジーに興味があるのは、若い子ならみんな一緒だな。
女将登場。
あんたら!人様のカメラで何してはりますの!?
凍り付く一同。
なわけなく、ノリノリで写るの図。
舞妓はんに逆インタビューされる和佐大輔の図。
大輔・・・無茶ぶりされて、照れて戸惑ってるし。笑
舞妓はんには、みんな「芸名」がある。
基本的には置屋さん(プロダクションみたいなもの)の、お姉さんから一文字もらい、後
ろに自分独自の名前をつけてもらう。
このお店の場合、店名が「梅乃」なので、
みんな「梅+なんたら」という名前が付く、みたいな感じ。
つまり、「翔太」が「翔細」とか「翔痩」みたいな感じで下の子に一字継承されていくとい
うわけ。
舞妓が舞妓にカメラを向けられ照れて顔を隠すの図。
いや、だから・・・訳が分からないよこの図。
どお、この表情。
表情的には本日のベストショット by 隠し撮り。
再びカラオケルームに戻って飲み直し。
こういう感じで、舞妓はんたちがおしゃくをしてくれる。
礼儀正しさは、そこらへんのキャバクラや、スナックとは比べものにならない。
品良く遊べる唯一の飲み屋かもしれないね。
若いおっさんとしては、こういう店のほうが断然好きだなー。
バーの図。
意外なほどモダンでしょ?
バーで女将と語らうの図。
いろいろ現代お茶屋の現状や、真実や、裏話などを聞かせて頂いた。
しかし、京都の花街の女性は「強い」。
歴史的に男性より女性主導でビジネスが行われてきた街だけに、そこで女将をはる人物と
いうのは凛として、しゃんとして、筋がびしっと通っていて、それでいて暖かく優しい。
女将すげえ。
夜になるとこんな感じ。
この雰囲気は、いかにも一見さんお断り。
っていうか、ぱっと見てここに入ろうと思う人はまずいないでしょ。
分かりやすい、目立つ看板なんて野暮なものは出さないところが京風の花街商売なのだ。
政治家とか、偉い人が使うよねそりゃ。
完全におしのび向き。素人さんが歩いても相手にされない雰囲気ばりばり。
排他的であることは、ある意味価値がある。
選民思想的と言われればそれまでだけど、「一見さんを断る」からこそ、守れる文化も、価
値も、そこに集う人々もあるわけだ。
このコミュニティ全体が、その価値基準を守り、継承してきたからこそ現代でもお座敷は
特別かつ極上のおもてなし空間として機能しているのだろう。
若女将の裕子さん。
失礼な僕は、しゃあしゃあと
「宇多田ヒカルに似てるって言われません?」といじる。
「・・・言われます。」
たしかに、似てるでしょ!?
ご満悦しまくり、顔がおかしい和佐大輔。
新幹線で一緒に三宮(神戸)まで戻る。
明日は一緒にセミナーなのだ。
あまりに愉しくて、弟の3倍くらい顔面崩壊中の兄であった。
編集後記
5/100 というタイトル。これには意味がある。
いや、たいした意味ではないのだけれども。
舞妓は現代に約 100 人ちょっとしかいない。
その中で、今回の旅で 5 人の現役舞妓さんと出逢うことができた。
そんなわけで 5/100 とつけてみた。
一人一人が京の伝統お座敷文化を継承する、生きる京文化そのもののような存在だ。
若くして、親元を離れ、年に 2 回しか実家に戻ることを許されない中で、徹底して封建的
な徒弟制度を通じて一流の芸妓へと鍛え上げられる。
「自由」だ「個性」だと、個人自由主義的な価値観が時代の主流派を成す現代において、
彼女たちの生き様は、その対局を取るものだ。しかし、それがなぜかもの凄く潔く感じる
のは私だけだろうか。
多くの現代日本人が失ってしまったものを、彼女たちの中に見たような気がした。
確かにかつての、或いは僕たちがその名前を聞いたときに典型的に連想する「舞妓はん」
像と比べると、多くの仕組みが現代化されつつあり、「こんなのもアリなんだ!」と驚くよ
うな場面もあった。そのように、現代のお座敷文化は、時代の流れと共に、緩やかに変化
を続けていることも確認できた反面、それでもなお、変わらぬ彼女たちの凛とした「生き
様」から学ぶモノは大きい。
僕らが日常の中で、あくせくとしている今日も彼女たちは相も変わらずお座敷で舞い続け
ているのだろう。今日もやってくるお客様と一夜一夜に思いを乗せて交差する人生。
その一瞬に、華を纏わせ、舞続けて。
5/100
~現代舞妓物語の全ての100分の 5 くらい~
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執筆:原田翔太
発行:株式会社ユナイテッドリンクスジャパン
発行日:2011年6月3日
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