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特 許 公 報 特許第5759176号

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特 許 公 報 特許第5759176号
〔実 53 頁〕
特 許 公 報(B2)
(19)日本国特許庁(JP)
(12)
(11)特許番号
特許第5759176号
(45)発行日
(P5759176)
(24)登録日 平成27年6月12日(2015.6.12)
平成27年8月5日(2015.8.5)
(51)Int.Cl.
C12N
FI
5/10
(2006.01)
C12N
5/00
103 C12N 15/09
(2006.01)
C12N
15/00
ZNAA
A01H
5/00
(2006.01)
A01H
5/00
A
C12P 19/04
(2006.01)
C12P
19/04
Z
A23L
(2006.01)
A23L
1/10
Z
1/10
請求項の数13
(全71頁) 最終頁に続く
(21)出願番号
特願2010-538283(P2010-538283)
(73)特許権者 510174130
(86)(22)出願日
平成20年12月24日(2008.12.24)
ザ
(65)公表番号
特表2011-509072(P2011-509072A)
オーストラリア国
ユニバーシティ
(43)公表日
平成23年3月24日(2011.3.24)
(86)国際出願番号
PCT/AU2008/001906
(87)国際公開番号
WO2009/079714
コモンウェルス
(87)国際公開日
平成21年7月2日(2009.7.2)
アンド
平成23年12月15日(2011.12.15)
ーガナイゼーション
(31)優先権主張番号
2007907071
オーストラリア国
(32)優先日
平成19年12月24日(2007.12.24)
(33)優先権主張国
オーストラリア(AU)
審査請求日
ア,グラッタン
オブ メルボルン
3010
ヴィクトリ
ストリート
(73)特許権者 590003283
サイエンティフィック
インダストリアル
サウス
リサーチ
3169
ロックト
バッグ
オ
クレイトン
10
(73)特許権者 504265042
ザ
ユニバーシティー
オーストラリア
ストラリア
オブ アデレード
5000
アデレード
サウス
オー
ノーステラス
最終頁に続く
(54)【発明の名称】多糖シンターゼ(H)
1
2
(57)【特許請求の範囲】
核酸の発現を増加させることにより増加される、請求項
【請求項1】
1に記載の方法。
植物細胞により生成される(1,3;1,4)−β−D
【請求項3】
−グルカンのレベルを増加させる方法であって、該植物
(1,3;1,4)−β−D−グルカンの生成方法であ
細胞中のCslHによりコードされる(1,3;1,4
って、単離されたCslH核酸で植物細胞を形質転換す
)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/また
るステップ、および該植物細胞に該単離されたCslH
は活性を増加させるステップを含み、該CslHにより
核酸を発現させるステップを含み、該CslH核酸は、
コードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシ
(i)配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むか;ま
ンターゼは、
たは、
(i)配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むか;ま 10
(ii)配列番号2と少なくとも90%同一であるアミ
たは、
ノ酸配列を含み、かつ(1,3;1,4)−β−D−グ
(ii)配列番号2と少なくとも90%同一であるアミ
ルカンの合成を触媒するか、またはグルコピラノシル単
ノ酸配列を含み、かつ(1,3;1,4)−β−D−グ
量体の重合を触媒する、
ルカンの合成を触媒するか、またはグルコピラノシル単
(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコ
量体の重合を触媒する、
ードする、前記方法。
前記方法。
【請求項4】
【請求項2】
前記植物細胞が穀類植物細胞である、請求項1∼3のい
前記(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼ
ずれか1項に記載の方法。
のレベルおよび/または活性が、植物細胞中のCslH
【請求項5】
( 2 )
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以下:
記載の多細胞構造物。
同じ分類群の野生型植物細胞と比較してそのレベルおよ
【請求項13】
び/または活性が増加された、CslHによりコードさ
同じ分類群の野生型細胞と比較して(1,3;1,4)
れる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼ
−β−D−グルカンレベルが増加し、かつ同じ分類群の
であって、該CslHによりコードされる(1,3;1
野生型細胞と比較して食物繊維含有量が増加した細胞を
,4)−β−D−グルカンシンターゼは、
含む、請求項12に記載の多細胞構造物。
(i)配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むか;ま
【発明の詳細な説明】
たは、
【技術分野】
(ii)配列番号2と少なくとも90%同一であるアミ
【0001】
ノ酸配列を含み、かつ(1,3;1,4)−β−D−グ 10
優先権主張
ルカンの合成を触媒するか、またはグルコピラノシル単
本発明は、オーストラリア仮特許出願2007907071の優先
量体の重合を触媒する、
権を主張するものであり、その内容を参照により本明細
前記レベルおよび/または活性が増加されたCslHに
書に援用する。
よりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカ
【0002】
ンシンターゼ;ならびに/あるいは
発明の分野
同じ分類群の野生型植物細胞と比較してその発現が増加
本発明は、一般的には多糖シンターゼに関する。より具
されたCslH核酸であって、該CslH核酸は、
体的には、本発明は(1,3;1,4)−β−D−グル
(i)配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むか;ま
カンシンターゼに関する。
たは、
【背景技術】
(ii)配列番号2と少なくとも90%同一であるアミ 20
【0003】
ノ酸配列を含み、かつ(1,3;1,4)−β−D−グ
穀類の各種組織は、穀粒成長中、休眠中および発芽後に
ルカンの合成を触媒するか、またはグルコピラノシル単
おいて、多様な機能を有する。
量体の重合を触媒する、
【0004】
(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコ
例えば、果皮膜および種皮の組織は、発育中および休眠
ードする、前記発現が増加されたCslH核酸
中に種を保護することに係わる。しかし、穀粒が成熟し
のいずれか1以上を含む植物細胞であって、同じ分類群
、穀粒のこれらの外側組織が死んだ後、組織内残留物は
の野生型植物細胞と比較してそのレベルが増加された(
、ほぼ全体が細胞壁残留物から構成される。種皮とアリ
1,3;1,4)−β−D−グルカンを含む、前記植物
ューロン表面との間にある核組織は、穀粒成長のために
細胞。
栄養素の伝達に関与するが、成熟と同時にこの組織もま
【請求項6】
30
た、細胞壁断片を残すのみで崩壊する。成熟した穀粒の
請求項1または2に記載の方法により作製された、請求
デンプン質の胚乳の薄い有壁細胞は死ぬが、デンプンと
項5に記載の植物細胞。
貯蔵タンパク質が充満する。対照的に、厚い有壁かつ有
【請求項7】
核のアリューロン細胞は、穀粒の成熟時点でも生きてお
穀類植物細胞である、請求項5または6に記載の植物細
り、タンパク体および脂肪滴が充満している。デンプン
胞。
質胚乳の接触面には胚盤があり、胚乳を発育させるため
【請求項8】
の栄養素を運ぶ役割をすると共に、発芽中に胚乳の貯蔵
請求項5∼7のいずれか1項に記載の1以上の植物細胞
物の消化産物を成長する胚に輸送する。
を含む多細胞構造物。
【0005】
【請求項9】
穀粒中の各組織の異なる構造と機能は、少なくとも1つ
植物全体、植物組織、植物器官、植物部分、植物繁殖材 40
には、これらの細胞種それぞれの細胞壁組成によって決
料、または培養植物組織からなるリストより選択される
まる。
、請求項8に記載の多細胞構造物。
【0006】
【請求項10】
非セルロース多糖類は、穀類組織の細胞壁における主要
穀類植物、またはその組織、器官もしくは部分を含む、
な成分であり、例えば(1,3;1,4)−β−D−グ
請求項8または9に記載の多細胞構造物。
ルカン、ヘテロキシラン(主にアラビノキシラン)、グ
【請求項11】
ルコマンナン、キシログルカン、ペクチン多糖類および
穀粒を含む、請求項10に記載の多細胞構造物。
カロースなどを含む。これら非セルロース多糖類は、通
【請求項12】
常、穀粒全重量の10%未満を構成するにすぎないが、
同じ分類群の野生型細胞と比較して食物繊維含有量が増
穀粒品質の重要な決定因子である。
加された細胞を含む、請求項9∼11のいずれか1項に 50
【0007】
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個々の非セルロース多糖類とその他の壁構成成分との正
飼料製造業者を含む大規模食品加工活動において重要で
確な物理的関係は述べられてこなかったが、壁中で、セ
ある。さらには、(1,3;1,4)−β−D−グルカ
ルロースの微小線維は非セルロース多糖類およびタンパ
ンなど、穀類の非デンプン質多糖類は、ヒトの栄養素と
ク質のマトリックス相に組み込まれいる。壁の完全性は
して潜在的に有用な効果があることから、近年新たな関
、主にマトリックス相と微小線維構成素との間の広範な
心を引き寄せている。
非共有結合相互作用、特に水素結合によって維持される
【0014】
。いくつかの穀粒組織の壁中に、ヘテロキシラン、リグ
しかしながら、このような関心の高さにもかかわらず、
ニンおよびタンパク質の間に共有結合が存在する。各成
(1,3;1,4)−β−D−グルカン生合成をはじめ
分間の共有結合の範囲は、壁の種類および遺伝子型によ
っても異なる。
として、穀類中の非セルロース多糖類生合成を制御する
10
遺伝子および酵素の知識には大きな隔たりがある。
【0008】
【0015】
非セルロース多糖類、特にヘテロキシランおよび(1,
穀粒中の(1,3;1,4)−β−D−グルカン濃度は
3;1,4)−β−D−グルカンは、アリューロンおよ
、遺伝子型および環境の両者により影響を受けると考え
びデンプン質胚乳の壁、また恐らくは、胚盤においても
られている。例えば、穀類中の(1,3;1,4)−β
、比較的高い割合を占める。これらの組織において、セ
−D−グルカンの濃度は、遺伝子型、穂の穀粒の位置、
ルロース含量はそれに応じて低くなる。該してセルロー
ならびに植え付け場所、成長中の気候条件および土壌窒
ス含有量が低い壁は、リグニンを全く含まないという事
素などの環境条件に左右される。
実の他、穀粒の中央部の壁の構造的な硬さに関する限定
【発明の概要】
的な要件、および穀粒の発芽後に壁成分を急速に脱重合
【発明が解決しようとする課題】
するための要件に関係すると考えられている。
20
【0016】
【0009】
細胞により生成される(1,3;1,4)−β−D−グ
対照的に、果皮膜の細胞壁は、胚および胚乳のための保
ルカンのレベルの調節を促し、これによって穀粒または
護膜を提供し、発芽中に動員されないものであるが、同
栄養組織の品質を変えられるので、(1,3;1,4)
細胞壁中のセルロースおよびリグニンの含有量は非常に
−β−D−グルカンシンターゼをコードする遺伝子の同
高く、非セルロース多糖類の濃度は、それに応じて低い
定は望ましいと言える。そこで、細胞内の(1,3;1
。
,4)−β−D−グルカンのレベルの調節を可能にし、
【0010】
それに伴う穀類または栄養組織品質の変化を可能にする
(1,3;1,4)−β−D−グルカンは、混合結合も
ため、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンター
しくは穀類β−グルカンとも呼ばれ、非セルロース多糖
ゼをコードする遺伝子の特定は、是非とも必要である。
類であるが、穀類および牧草が属する単子葉植物イネ科 30
【0017】
(Poaceae)の植物、および同類のイネ目(Poales)の
本明細書における従来技術の参照は、従来技術がいかな
近縁ファミリーに天然に存在する。
る国においても共通する一般知識の一部を形成すること
【0011】
の同意と、またはいかなる形態の示唆と解釈されるべき
これらの非セルロース多糖類は、ほとんどの穀粒のデン
ではない。
プン質胚乳およびアリューロン細胞壁において重要な構
【課題を解決するための手段】
成物質であり、細胞壁の最高で70重量%から90%重
【0018】
量までを占めることがよくある。
本発明により、(1,3;1,4)−β−D−グルカン
【0012】
シンターゼのファミリーをコードするヌクレオチド配列
オオムギ、オートムギおよびライムギは(1,3;1,
及び対応のアミノ酸配列が提供される。本発明により、
4)−β−D−グルカンの豊富な供与源であるが、これ 40
(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼはC
らに比べ、コムギ、イネおよびトウモロコシは、この多
slH遺伝子ファミリーのメンバーによってコードされ
糖類濃度が低い。(1,3;1,4)−β−D−グルカ
ることが明らかにされた。
ンはまた、穀類および牧草の栄養組織にある細胞壁の比
【0019】
較的微量な成分である。栄養組織において比較的微量な
(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコ
成分として現れるが、(1,3;1,4)−β−D−グ
ードするヌクレオチド配列、および対応するアミノ酸配
ルカンは、例えば、動物による栄養組織の消化率の観点
列の同定の結果として、本発明はとりわけ、細胞中の(
から、またバイオエタノール生産用に作物残滓を使用す
1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベ
る観点からもなお重要である。
ルおよび/または活性を調節する、ならびに/あるいは
【0013】
細胞により生成される(1,3;1,4)−β−D−グ
(1,3;1,4)−β−D−グルカンは、酒造および 50
ルカンのレベルを調節するための方法および組成物を提
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供する。
らびに/あるいは
【0020】
同じ分類群の野生型細胞と比較してその発現が調節され
したがって、第1の態様において、本発明は、細胞によ
たCslH核酸
り生成される(1,3;1,4)−β−D−グルカンの
を含む細胞を提供する。
レベルを調節する方法であって、該細胞中のCslHに
【0026】
よりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカ
いくつかの実施形態において、細胞は、同じ分類群の野
ンシンターゼのレベルおよび/または活性を調節するス
生型細胞と比較してそのレベルが調節された(1,3;
テップを含む方法を提供する。
1,4)−β−D−グルカンシンターゼをさらに含む。
【0021】
【0027】
いくつかの実施形態において、(1,3;1,4)−β 10
さらに、第6の態様において、本発明は、本発明の第5
−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性
の態様に係る1以上の細胞を含む多細胞構造物を提供す
は、細胞中のCslH核酸の発現を調節することによっ
る。
て調節する。従って、第2の態様において、本発明は、
【0028】
細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンタ
本発明はまた、本発明の第5の態様に係る1以上の細胞
ーゼのレベルおよび/または活性を調節する方法であっ
を含む穀粒を提供する。したがって、第7の態様におい
て、該細胞中のCslH核酸の発現を調節するステップ
て、本発明は、そのレベルが調節された(1,3;1,
を含む方法を提供する。
4)−β−D−グルカンを含む穀粒であって、そのレベ
【0022】
ルおよび/または活性が調節された、CslHによりコ
いくつかの実施形態において、本発明は、細胞において
ードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシン
CslH核酸を発現させる、過剰発現させる又は導入す 20
ターゼ、ならびに/あるいはその発現が調節されたCs
ることにより、細胞により生成される(1,3;1,4
lH核酸分子を含む1以上の細胞を含む、上記穀粒を提
)−β−D−グルカンのレベルを増大させることを包含
供する。
する。あるいは、別の実施形態において、本発明は、細
【0029】
胞におけるCslH核酸のノックアウトまたはノックダ
第8の態様において、本発明は、以下:
ウンにより細胞中のCslHによりコードされる(1,
本発明の第7の態様に記載の穀粒を製粉することにより
3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼの発現をダ
製造される穀粉;および
ウンレギュレートする方法を提供する。
任意により、1以上の他の穀粒を製粉することにより製
【0023】
造されたる穀粉
本発明はまた、組換え発現系における(1,3;1,4
を含む穀粉も提供する。
)−β−D−グルカンの生成を促進する。例えば、(1 30
【0030】
,3;1,4)−β−D−グルカンは、プロモーター制
上記の通り、本発明は、部分的には、(1,3;1,4
御下にてCslH核酸を細胞に導入することにより組換
)−β−D−グルカンシンターゼをコードするCslH
え技術によって生成することもでき、続いてこの細胞は
ヌクレオチド配列およびCslHアミノ酸配列の同定お
CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−
よび単離に基づく。
D−グルカンシンターゼを発現し、(1,3;1,4)
【0031】
−β−D−グルカンを生成する。したがって、第3の態
したがって、第9の態様において、本発明は、単離され
様において、本発明は、(1,3;1,4)−β−D−
たCslH核酸分子、又はその相補体、逆相補体若しく
グルカンの生成方法であって、単離されたCslH核酸
は断片を提供する。
で細胞を形質転換するステップおよびその単離されたC
【0032】
slH核酸を細胞に発現させるステップを含む方法を提 40
第10の態様において、本発明は、本発明の第9の態様
供する。
に記載の単離された核酸分子を含む遺伝子構築物または
【0024】
ベクターを提供する。
第4の態様において、本発明は、本発明の第3の態様の
【0033】
方法により生成された(1,3;1,4)−β−D−グ
第11の態様において、本発明は、本発明の第9の態様
ルカンを提供する。
に記載の単離された核酸分子または本発明の第10の態
【0025】
様に記載の遺伝子構築物を含む細胞を提供する。
第5の態様において、本発明は、
【0034】
同じ分類群の野生型細胞と比較してそのレベルおよび/
第12の態様において、本発明は、本発明の第11の態
または活性が調節された、CslHによりコードされる
様に記載の1以上の細胞を含む多細胞構造物を提供する
(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼ;な 50
。
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【0035】
上記の通り、本発明は同様に、CslHによりコードさ
れる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼ
のアミノ酸配列を提供する。
【0036】
したがって、第13の態様において、本発明は、Csl
Hによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グ
ルカンシンターゼポリペプチド又はその断片を規定する
アミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドを提供する
。
10
【0037】
第14の態様において、本発明は、上記に定義の単離さ
れたCslHによりコードされる(1,3;1,4)−
β−D−グルカンシンターゼポリペプチドまたはそのエ
ピトープに対して生起された、抗体またはそのエピトー
プ結合性フラグメントを提供する。
【0038】
本明細書を通じて、文脈上他の意味に解すべき場合を除
き、単語「含む(comprise)」または「含む(comprise
s)」もしくは「含む(comprising)」などの、その変
20
化形は、記述された要素もしくは整数または要素もしく
は整数の群の包含を示唆するが、 その他任意の要素も
【0040】
しくは整数または要素もしくは整数の群の排除を示唆す
るものではないと理解されよう。
【0039】
ヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、本明細書において
配列識別子番号(配列番号)により示される。配列番号
は、配列識別子<400>1(配列番号1)、<400
>2(配列番号2)などに数値的に対応する。配列識別
子の概要を表1に示す。配列のリストは、本明細書の最 30
後に示されている。
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】(A)は、シロイヌナズナ(Arabidopsis)に
おける機能獲得実験に使用した、HvCslH1::p
GBW15構築体のT−DNAの概略を示す図である。
Gatewayクローニング後、3×HAタグを、全長
HvCslH1
ORFのNH2 末端に結合した。(B
)は、ノーザンブロット分析により決定された、成熟H
50
vCslH1トランスジェニックT1植物の葉における
( 6 )
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転写産物レベルの図である。上のパネル、X線フィルム
レベルの図である。対照遺伝子は、GAPDH、α−チ
撮影;下のパネル、対応する、臭化エチジウム染色した
ューブリンおよび伸長因子1aとした。(C)10日齢
ゲル。観察された2.5kbの転写産物のサイズは、タ
の第1葉中のHvCslH1の転写産物の正規化レベル
グ付加HvCslH1
の図である。対照遺伝子は、GAPDH、サイクロフィ
mRNAの予想されたサイズに
一致する。
リンおよびHSP70とした。QPCRプロットのエラ
(C)ウェスタンブロット分析により決定された、3週
ーバーは、標準偏差を示す。(D∼F)18S
齢のプールされたHvCslH1トランスジェニックT
(陽性対照、D)、HvCslH1(F)および陰性対
系統における3×HAタグ付加HvCslH1タンパ
照(E)のためのプローブを使用する、7日齢の第1葉
2
ク質レベルの図である。30マイクログラムの混合ミク
の成熟域のin
ロソーム膜タンパク質を各レーンに添加し、抗HA抗体 10
ルバー=100μm。
でブロットをプロービングした。BおよびC;番号はト
【図6】HvCslH1の構造的特徴を示す図である。
ランスジェニック系統を指し、Col−0は、野生型の
(A)HvCslH1のエクソン−イントロン構造であ
非形質転換系統を指す。Col−0、8および14系統
る。黒いバーがエクソンを示し、細い黒線がイントロン
は同じブロット由来であり、他の系統はすべて異なるブ
と5’および3’UTRを示す。四角形の上の数字はエ
ロット由来である。
クソンのサイズを示し、線の下の数字はイントロンのサ
【図2】β−グルカン特異的モノクローナル抗体を用い
イズを示す。イタリック体の数字は、5’および3’の
た、HvCslH1発現系の細胞壁におけるβ−グルカ
UTRのサイズを指し、下線のある太字は、開始コドン
ンの検出を示す透過型電子顕微鏡写真を示す(Meikle e
の上流の公知の配列の長さを指す。数字は塩基対で表さ
t al., Plant J 5:1-9, 1994)。(A∼C)8、16、
れている。太い黒いバーは、ARAMEMNON(http
11系統;(D)野生型Col−0対照;(E)6系統 20
://aramemnon.botanik.uni-koeln.de/)により予測され
。AおよびDは維管束の細胞;BおよびCは葉肉細胞;
る、6つのコンセンサス膜貫通ドメインを示す。(B)
Eは上皮細胞を示す。
HvCslH1のKyte−Doolittleの疎水
スケールバー=0.5μm(A∼C、E)、1μm(D
性プロット(Kyte and Doolittle, J Mol Biol 157: 10
)。
5-132, 1982)の図である。+1.6のカットオフを用
【図3】145日齢のシロイヌナズナ系統16−1ロゼ
いた19個のアミノ酸ウィンドウを使用した。6つの予
ット葉組織から調製されたアルコール不溶性画分(AI
測膜貫通ドメインを黒いバーで示す。数字はアミノ酸を
R)の(1,3;1,4)−β−D−グルカンエンドヒ
示す。(C)HvCslH1の予測膜トポロジーの図で
ドロラーゼ消化により放出されたオリゴ糖のHPAEC
ある。NH2 、アミノ末端;COOH、カルボキシ末端
プロファイルを示す図である(青色線)。16−1を予
;lumen、ERの内部、ゴルジ体または小胞体;c
め酵素処理し、緩衝液洗浄した(ピンク色線)。オオム 30
yt、細胞質、mem、膜、D,D,D,QXXRW、
ギ(Barley)成葉(全葉鞘)のAIRを、陽性対
CAZy
照試料として使用した(黄緑色線)。G4G3GR (3
slH1におけるQXXRWモチーフの配列は、QFK
−O−β−セロビオシルD−グルコース、DP3)およ
RWである。
びG4G4G3GR (3−O−β−セロトリオシルD−
【図7】全長のオオムギ(Hordeum vulgare)およびコ
グルコース、DP4)のピークを示す。
メ(Oryza sativa)のCSLH配列の系統樹を示す図で
【図4】シロイヌナズナトランスジェニック系統11の
ある。CSLBファミリーは、CSLファミリーの中で
高圧凍結葉の切片における、金標識抗HA抗体による3
CSLHファミリーと最も密接に関係しているので、シ
×HAタグ付加HvCslH1タンパク質の検出を示す
ロイヌナズナ(A. thaliana)およびポプラ(Populus t
透過型電子顕微鏡写真を示す。(AおよびB)葉肉細胞
richocarpa)のCSLBタンパク質配列もまた含まれる
。G、ゴルジ体、cw、細胞壁、v、液胞、er、小胞 40
。アライメントはClustalXを使用して作成し、
体。スケールバー=0.5μm(A)、0.2μm(B
近隣結合を用いる固有距離アルゴリズムを使用した。
)。矢印は、ゴルジ関連小胞の標識を示す。
各分岐群を支持するブートストラップ反復の数(総数1
【図5】QPCRおよびin
PCR分析に
,000から)を、その分岐群の節間の下に示す。アク
より決定された、オオムギにおけるHvCslH1の発
セッション番号は、HvCslH1(FJ459581
現を示す図である。(A)さまざまなオオムギ組織中の
)、OsCSLH1(Os10g20090、AC11
HvCslH1の転写産物の正規化レベル(コピー/マ
9148)、OsCSLH2(Os04g35020、
イクロリットルcDNA)の図である。正規化のための
AL606632)、OsCSLH3(Os04g35
対照遺伝子は、GAPDH、サイクロフィリンおよびα
030、AL606632)、PtCSLB1(http:/
−チューブリンとした。(B)受粉後0∼24日の成長
/genome.jgi-psf.org/Poptr1_1/Poptr1_1.home.html;
中の胚乳における、HvCslH1の転写産物の正規化 50
ID
situ
situ
RNA
PCR画像である。スケー
GT2ファミリーの特徴的モチーフ。HvC
no.572982)、PtCSLB2(ID
( 7 )
JP
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no.684214)、AtCSLB1(At2G32
およびポプラ(Populus trichocarpa)に由来するCs
610、NM_128820)、AtCSLB2(At
1B、FおよびHの全長アミノ酸配列の関係を示す系統
2G32620、NM_128821)、AtCSLB
樹である。
3(At2G32530、NM_179859)、At
【図13】OsCSLF2×HvCslH1トランスジ
CSLB4(At2G32540、NM_128813
ェニック植物交配の親として使用された4種のトランス
)、AtCSLB5(At4G15290、NM_11
ジェニックシロイヌナズナ植物系統の表皮細胞壁におけ
7617、AtCSLB6(At4G15320、NM
る、(1,3;1,4)−β−D−グルカン特異的モノ
_117620)である。
クローナル抗体を用いた、(1,3;1,4)−β−D
【図8】HvCslH1が位置する、2H染色体の短腕
−グルカンの検出を例示する透過型電子顕微鏡写真であ
の部分的ゲノムマップを示す図である。HvCslH1 10
る。HvCslH1系統個体15−8−3および15−
および4つのHvCSLF遺伝子のクラスターを、セン
11−7を、それぞれパネルAおよびBに、OsCSL
トロメア(黒丸により表示)に近接するSteptoe
F2系統個体H37−5およびH17−4−4を、それ
×Morexのビンマップ上の69.2∼71.5Mb
ぞれパネルCおよびDに示す。
に相当する区間にマッピングした。HvCslH1はビ
【図14】OsCSLF2×HvCslH1トランスジ
ン8に配置され、wg996マーカーと同時分離する。
ェニック植物交配から得られた子孫の細胞壁における、
Steptoe×Morexの参照マップにおいて、w
(1,3;1,4)−β−D−グルカン特異的モノクロ
g996はabc162と同時分離し、abc468の
ーナル抗体を用いた(1,3;1,4)−β−D−グル
2.3cM南であり、4つのHvCSLF遺伝子と同時
カンの検出を例示する透過型電子顕微鏡写真である。1
分離するマーカーである(Burton et al., Plant Physi
5−8−3×H37−5の交配による個体を(A)、1
ol 146: 1821-1833, 2008)。鍵となるマーカーを、染
20
5−8−3×H37−5の同胞を(B)、15−8−3
色体の上部からのそれらの距離をセンチモルガン(cM
×H37−7を(C)、15−8−3×H37−7の同
)で左に示し、Hanらの麦芽β−グルカンQTL分析
胞を(D)、5−8−15×H37−16を(Eおよび
(Theor Appl Genet 91: 921-927, 1995)におけるLO
F)に、15−11−13×H37−11を(G)に、
D(塩基10に対する対数オッズ)スコアを右に示す。
15−11−7×H17−4を(H)に示す。パネルA
【図9】(A)シロイヌナズナ系統16−2由来の14
∼E、G∼Hは、表皮細胞を示し、パネルFは葉肉細胞
5日齢の葉および茎を組み合わせた材料から調製された
を示す。
AIRの(1,3;1,4)−β−D−グルカンエンド
【図15】シロイヌナズナにおけるCslH遺伝子の発
ヒドロラーゼ消化により放出されたオリゴ糖のHPAE
現に使用したpGWB15ベクターのベクターマップを
Cプロファイルを示す図である(青色線)。
示す図である。
16−2を予め酵素処理し、緩衝液洗浄した(ピンク色 30
【図16−1】オオムギ品種ヒマラヤ(cv. Himalaya)
線)。オオムギ成葉(全葉鞘)のAIRを、陽性対照試
由来のCslH1遺伝子cDNAのDNA配列および翻
料として使用した(黄緑色線)。ラミナリビオース標準
訳アミノ酸配列を示す図である。DNA配列は10塩基
(水色線)。マルトース(Gα4G)およびセロビオー
ごとに番号を付け、単一の大文字オープンリーディング
ス(Gβ4G)の保持時間を矢印により印を付けた。(
フレームの翻訳アミノ酸配列を、下に1文字で示す。
B)Aの試料の酵素消化AIRのMALDI−TOF
【図16−2】図16−1の続き。
MSクロマトグラムを表す図である。DP2(ラミナリ
【図16−3】図16−1の続き。
ビオース)、DP3(3−O−β−セロビオシルD−グ
【図17−1】オオムギCslH1遺伝子cDNAおよ
ルコース)およびDP4(3−O−β−セロトリオシル
びゲノム配列と、3種のコムギCslH1遺伝子ホモロ
D−グルコース)のピークを示す。
グ(TaCslH1−1、1−2および1−3)のゲノ
【図10】オオムギ(Hordeum vulgare)およびコメ(O 40
ム配列との比較を示す図である。オオムギcDNA(上
ryza sativa)に由来するCslH配列の間の、ヌクレ
から、品種スクーナー(cv. Schooner)由来のHvCs
オチド配列同一性、タンパク質配列同一性およびタンパ
lH1(配列番号1)および品種ヒマラヤ由来のHvC
ク質配列類似性を示す図である。
slH1Him(配列番号69))ならびにゲノムクロ
【図11−1】オオムギ(Hordeum vulgare)およびコ
ーン(品種モレックス(cv.Morex)由来のHvCslH
メ(Oryza sativa)に由来するCslHアミノ酸配列の
1g(配列番号9)および品種ヒマラヤ由来のHvCs
ClustalWマルチプル配列アライメントを示す図
lH1gHim(配列番号71))のDNA配列を、3
である。
種のコムギ配列(TaCslH1−1、1−2および1
【図11−2】図11−1の続き。
−3(それぞれ、配列番号78、80および81)とと
【図12】オオムギ(Hordeum vulgare)、コメ(Oryza
もに、Muscleの比較プログラムを使用してBio
sativa)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)
50
Editでアライメントした。アライメントの位置を配
( 8 )
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列の上に番号付けし、ダッシュはアライメントを最適化
【図22】胚乳成長期のオオムギ品種ヒマラヤおよびコ
するために導入されたギャップを示す。コムギゲノム配
ムギCslH1遺伝子の定量的RT−PCR発現分析の
列(TaCslH1−1)と同一のヌクレオチドは、点
結果を示す図である。定量的リアルタイムRT−PCR
で表す。エクソン/イントロンの境界は、コムギゲノム
は、成長中の胚乳における、コムギCslH1遺伝子と
配列(TaCslH1−1)において太字で示す。参照
比較したオオムギCslH1遺伝子の発現パターンの差
用に、CslHコード領域のATG開始コドンは、アラ
を示す。Ta0
イメント位置98において始まり、終止コドンTAAは
ベルはこれに対して相対的レベルである。
位置3320において始まり、双方とも下線を付けてあ
【図23】Bx17プロモーターの制御下におけるオオ
る。
【図17−2】図17−1の続き。
dpa試料を1に設定し、他の発現レ
ムギ品種ヒマラヤのCslH1ゲノム配列の発現に使用
10
した、植物形質転換ベクターのプラスミドマップを示す
【図17−3】図17−1の続き。
図である。
【図17−4】図17−1の続き。
pZLBx17HvgH1と称する植物形質転換ベクタ
【図17−5】図17−1の続き。
ーの略図である。環状プラスミド内部のボックスは、さ
【図17−6】図17−1の続き。
まざまな遺伝エレメントを表す:Bxl7prom=オ
【図18−1】オオムギ品種ヒマラヤと、コムギのCs
オムギHvCslH1ゲノム配列の発現を駆動するBx
lH1タンパク質のアミノ酸配列の比較を示す図である
17プロモーター;Hvg9185_1=プライマー対
。オオムギ遺伝子の翻訳アミノ酸配列(最上段、HvC
SJ91およびSJ85を用いて単離されたHvCsl
slH1(Him))を、3種のコムギ配列(TaCs
H1ゲノムクローン1番;Nos3’=ノパリンシンタ
lH1−1pro、1−2proおよび1−3proと
ーゼポリアデニル化配列;NPTII=細菌カナマイシ
して示す)とともに、Muscleの比較プログラムを 20
ン耐性遺伝子。選択された制限部位の位置は、プラスミ
使用してBioEditでアライメントした。アライメ
ドマップの外側に示す。
ントの位置を配列の上に番号付けし、アライメントを最
【図24】カナマイシン耐性を付与する、植物の選択可
適化するために導入されたオオムギ配列に単一のダッシ
能なマーカープラスミドのプラスミドマップを示す図で
ュ(ギャップを示す)が存在する。アミノ酸は、それら
ある。pCMSTLSneoと称する植物形質転換ベク
の一文字形式で示し、オオムギ配列(HvCslH1(
ターの略図である。環状プラスミド内部のボックスは、
Him))と同一のアミノ酸は点で示す。
さまざまな遺伝要素を表す:35Sprom=植物の選
【図18−2】図18−1の続き。
択可能なマーカー遺伝子の発現を駆動するCaMV
【図19】子葉鞘の成長の間のオオムギ品種ヒマラヤの
5Sプロモーター;NPTII=植物カナマイシン耐性
CslH1遺伝子の半定量的RT−PCRおよびQ−P
遺伝子;STLSイントロン=ジャガイモ(Solanum tu
CR発現分析の結果を示す図である。パネルAは、子葉 30
berosum)大型サブユニットイントロン;35S
鞘の成長の間ならびに若葉(L)、根(R)および中期
lyA=CaMV
胚乳(E)におけるオオムギCslH1遺伝子の発現パ
3
po
35Sポリアデニル化配列;Amp
res=細菌アンピシリン耐性遺伝子。選択された制
ターンを示す半定量的RT−PCRの図である。構成的
限部位の位置は、プラスミドマップの外側に示す。
に発現される遺伝子(α−チューブリン)を対照として
【図25】オオムギ品種ヒマラヤCslH1遺伝子を発
示す。パネルBは、発芽開始後のさまざまな時点(日)
現するT0植物系統10由来の単一コムギ穀粒のβグル
における、成長中の子葉鞘中のHvCslH1に関する
カン含有量を示す図である。グラフは、T0系統10番
、正規化発現レベル(Q−PCR)を示す。
由来の個体コムギ穀粒のβグルカン含有量を示す。βグ
【図20】葉の成長の間のオオムギのCslFおよびC
ルカンは、粉末重量のパーセントとして示す。
slH1遺伝子の半定量的RT−PCR発現分析の結果
【図26】空ベクター対照(208)およびトランスジ
を示す図である。オオムギCslH1遺伝子の発現パタ 40
ェニック(236)オオムギ中のCslH1遺伝子の定
ーンを示す半定量的RT−PCRを、他のオオムギCs
量的RT−PCR発現分析を示す図である。発現は、受
lF遺伝子と比較した。構成的に発現した遺伝子(α−
粉7日後(7D)および受粉14日後(14D)におけ
チューブリン)を対照として示す。
る葉および成長中の穀粒において示す。
【図21】胚乳成長の間のオオムギ品種ヒマラヤおよび
【図27】オオムギおよびコムギのCslH配列に関す
コムギCslH1遺伝子の半定量的RT−PCR発現分
る、DNAコード配列およびアミノ酸配列の同一性/類
析の結果を示す図である。半定量的RT−PCRは、コ
似性の比較を示す図である。HvCslH1=オオムギ
ムギ品種ウェストニア(下のパネル)と比較したオオム
品種スクーナー由来のDNAコード配列(配列番号1)
ギ品種ヒマラヤ遺伝子(上のパネル)の成長中の胚乳に
および対応するアミノ酸配列(配列番号2);HvCs
おけるCslH1遺伝子の発現パターンの差を示す。D
lH1(Him)オオムギ品種ヒマラヤ由来のDNAコ
PA=開花後の日数である。
50
ード配列(配列番号69)および対応するアミノ酸配列
( 9 )
JP
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(配列番号70);TaCslH1−1=コムギ品種チ
−グルカン抽出の温度および条件によっても異なる可能
ャイニーズ・スプリング(Chinese Spring)由来のDN
性がある。
Aコード配列(配列番号72)および対応するアミノ酸
【0047】
配列(配列番号75);TaCslH1−2=コムギ品
穀類の(1,3;1,4)−β−D−グルカンについて
種チャイニーズ・スプリング由来のDNAコード配列(
報告されている平均分子量は、穀物種、細胞壁の種類、
配列番号73)および対応するアミノ酸配列(配列番号
抽出手順および分子量判定に用いた手順によるが、48
76);TaCslH1−3=コムギ品種チャイニーズ
,000(DP約300)から3,000,000(D
・スプリング由来のDNAコード配列(配列番号74)
P∼1850)に及ぶ。これらは、分子量に関して常に
および対応するアミノ酸配列(配列番号77)。
【発明を実施するための形態】
多分散であって、これはオオムギ(1,3;1,4)−
10
β−D−グルカンに関し、数平均分子量(Mw/Mn)
【0042】
1.18に対する加重平均により説明される。ある種の
以下の説明は、特定の実施形態のみを説明することを目
オオムギ (1,3;1,4)−β−D−グルカンはま
的とするが、上記の説明に関する限定であることを意図
た、少量のタンパク質と共有結合しており、推定分子量
しないと理解されるべきである。
最大40,000,000を有している。
【0043】
【0048】
本発明は、部分的には、(1,3;1,4)−β−D−
穀粒壁からの(1,3;1,4)−β−D−グルカン抽
グルカンの生合成酵素をコードする遺伝子の同定に基づ
出率は、自己会合、ならびに他の細胞壁多糖類およびタ
く。
ンパク質との会合の関数である。特に抽出率は、(1,
【0044】
3;1,4)−β−D−グルカン連鎖における分子量お
「(1,3;1,4)−β−D−グルカン」は、β−D 20
よび結合分布に依存する。他のポリマーとの過剰な結合
−グルコピラノシル単量体が(1→4)結合および(1
および高分子量が、(1,3;1,4)−β−D−グル
→3)結合の両者によって重合された直鎖の非分枝状多
カンを穀粒から抽出することをさらに困難にしている。
糖類を含むと理解されるべきである。
【0049】
【0045】
例えば、オオムギ、オートムギおよびライムギ粉の(1
天然の(1,3;1,4)−β−D−グルカンにおける
,3;1,4)−β−D−グルカンの一部は、pH7.
(1→4)結合と(1→3)結合の比率は、一般に2.
0、40℃の水で抽出することができる。さらなる画分
2∼2.6:1の範囲である。ただし、比率はこの範囲
は、より高温で溶解度を高めることができる。40℃に
以外のこともある。たとえば、ソルガム胚乳の(1,3
おいて水溶性の総(1,3;1,4)−β−D−グルカ
;1,4)−β−D−グルカン中、同比率は、1.15
ンの割合は、植物種内でも、また植物種によっても異な
:1である。2種類の結合は、規則的な繰り返し配列に 30
る。例えば、ロウ質の多い(アミロース分が高い)オオ
はならない。(1→3)結合単位は、2以上の(1→4
ムギは、通常のオオムギよりも水溶性の(1,3;1,
)結合により分離される。2ないし3つの隣り合う(1
4)−β−D−グルカンの割合がより高い。40℃でオ
→4)結合の領域が優勢であるが、これら単位の配置に
オムギから抽出された(1,3;1,4)−β−D−グ
は規則性がない。結合配列は、2つのグルコース単位よ
ルカンは、65℃で抽出されたもの(2.0:1)より
り、さらに前記結合への依存がなく、二次マルコフ連鎖
、三糖:四糖の比率がわずかに低い(1.7:1)。穀
分布に従っている。さらに、10%以下の連鎖は、5か
粒からの穀物(1,3;1,4)−β−D−グルカンを
ら20の隣り合う(1→4)結合の長いストレッチから
完全に抽出するためには、還元末端によるアルカリ性誘
なる場合がある。したがって、穀類の(1,3;1,4
導の分解を防ぐために、NaBH4 を含む4M
)−β−D−グルカンは、セロトリオシル(cellotrios
HまたはBa(OH)2 水溶液などのアルカリ性抽出剤
yl)(G4G4GR e d )、セロテトラオシル(cellotetr 40
を使用する必要がある。アルカリで抽出されたオオムギ
aosyl)(G4G4G4GR e d )単位、およびより長い(
(1,3;1,4)−β−D−グルカン画分は、分子量
1→4)−β−D−オリゴグルコシル単位の(1→3)
が高く、(1→4):(1→3)結合の比率が高く、よ
−β−結合した共重合体とみなすことができる。
り多くの、連続的に結合した(1→4)結合のセグメン
【0046】
トを有し、水による抽出物よりも三糖:四糖の比率が高
内在性(1,3;1,4)−β−D−グルカン中、三糖
い。ジメチルスルホキシド、高温の過塩素酸、トリクロ
単位と四糖単位の比率は、穀物種によって異なる。例え
ロ酢酸、N−メチルモルホリノ−N−オキシドおよびジ
ば、コムギではその比率は3.0∼4.5:1であるが
メチルアセトアミド−LiClなどの他の抽出剤も、(
、オオムギでは2.9∼3.4:1、ライムギでは2.
1,3;1,4)−β−D−グルカンの溶解度を高める
7:1およびオートムギでは1.8∼2.3:1である
ために使用してもよい。しかしこれら抽出剤は、脱重合
。さらに、実際の比率は、(1,3;1,4)−β−D 50
、またはポリマーの分解を生じる可能性がある。温水ま
NaO
( 10 )
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たはアルカリで抽出後、(1,3;1,4)−β−D−
レベルを調節する方法であって、該細胞中のCslHに
グルカンは、中性pHおよび室温でよく溶解するように
よりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカ
なる。しかし、冷却時に、(1,3;1,4)−β−D
ンシンターゼのレベルおよび/または活性を調節するス
−グルカンは会合し、沈着する可能性がある。
テップを含む方法を提供する。
【0050】
【0057】
上記の通り、本発明は、1つには(1,3;1,4)−
「細胞」は、任意の適当な真核細胞または原核細胞とす
β−D−グルカンの合成を触媒する生合成酵素の同定お
ることができる。したがって、本明細書において言及さ
よびそれをコードする遺伝子に基づく。かかる酵素を本
れる「細胞」とは、酵母細胞もしくは菌糸真菌細胞など
明細書において「(1,3;1,4)−β−D−グルカ
ンシンターゼ」と称する。
の真菌細胞;哺乳動物細胞などの動物細胞もしくは昆虫
10
細胞;または植物細胞をはじめとする真核細胞とするこ
【0051】
とができる。あるいは、細胞は、大腸菌(E. coli)細
本発明は、EST(expressed sequence tag)ライブラ
胞を含む細菌細胞または古細菌細胞などの原核細胞とす
リーおよびセルロースシンターゼ(CesA)遺伝子を
ることもできる。
含む他の配列データベースの分析に、一部起因する。さ
【0058】
らに具体的には、CesA遺伝子は、事実上、非常に大
いくつかの実施形態において、細胞は、植物細胞、線維
きな遺伝子スーパーファミリー(CesA遺伝子および
束植物細胞、例えば単子葉被子植物細胞もしくは双子葉
セルロースシンターゼ様(Csl)遺伝子ファミリーの
被子植物細胞、または裸子植物細胞などである。いくつ
両者を含む)のメンバーであることが、これら研究にお
かの実施形態において、植物は単子葉植物細胞である。
いて確認された。
いくつかの実施形態において、植物は、イネ目のメンバ
【0052】
20
ーである。いくつかの実施形態において、単子葉植物細
しかし、ほとんどの線維束植物のCsl遺伝子ファミリ
胞は、穀類植物細胞である。
ーは非常に大きく、CslAからCslHと称するいく
【0059】
つかのグループに分類されている。シロイヌナズナでは
本明細書において用いられる「穀類植物」という用語は
、29のCsl遺伝子が知られており、イネにおいては
、ヒトまたは動物の食料用の食用穀類を作出するイネ目
37の同遺伝子が知られている。シロイヌナズナのゲノ
(イネ科植物属)のメンバーを含む。イネ目穀類植物の
ムは、細胞壁代謝に関与する700超の遺伝子を含むと
例としては、決して本発明を限定するものではないが、
概ね考えられている。しかし、基本的に、これら遺伝子
コムギ、イネ、トウモロコシ、キビ、ソルガム、ライム
の具体的な機能はあまり明らかにされていない。
ギ、トリチカレ、オートムギ、オオムギ、テフ、野生米
【0053】
、スペルトコムギなどが挙げられる。しかしながら、穀
さらに、CesA遺伝子とは対照的に、Csl遺伝子の 30
類植物という用語は同様に、アマランス、ソバ、キノア
機能を特定することは困難であることが分かっている。
などの、食用穀類を作出しかつ偽穀類(pseudocereal)
事実、高等植物の複数のCsl遺伝子のうち、CslA
としても知られる非イネ目種のいくつかの植物を含むと
及びCslFグループのみに、一定の機能が割り当てら
理解されるべきである。
れている。
【0060】
【0054】
他の実施形態において、本発明は、他の単子葉植物、例
本発明によって、CslH遺伝子ファミリーのメンバー
えばロリウム種(Lolium spp)などの牧草を含むイネ目の
が(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼを
他の非穀類植物などの使用を包含する。
コードすることが明らかにされた。
【0061】
【0055】
上記の通り、本発明は、1つには、細胞中のCslHに
(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコ 40
よりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカ
ードする、CslHヌクレオチド配列および対応するア
ンシンターゼのレベルおよび/または活性を調節するこ
ミノ酸配列の同定の結果、本発明はとりわけ、細胞中の
とに基づく。
(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレ
【0062】
ベルおよび/または活性を調節し、ならびに/あるいは
「CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β
細胞により生成される(1,3;1,4)−β−D−グ
−D−グルカンシンターゼ」は、(1,3;1,4)−
ルカンのレベルを調節するための方法および組成物を提
β−D−グルカンの合成を触媒し、任意により、グルコ
供する。
ピラノシル単量体の重合を触媒することができる、Cs
【0056】
lHによりコードされる任意のタンパク質とみなされる
したがって、第1の態様において、本発明は、細胞によ
べきである。
り生成される(1,3;1,4)−β−D−グルカンの 50
【0063】
( 11 )
JP
21
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2015.8.5
22
いくつかの実施形態において、CslHによりコードさ
【0066】
れる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼ
本発明により想定されるさらなるCslHによりコード
は、配列番号2に示されるアミノ酸配列又はそれに対し
される(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンター
少なくとも50%の同一性を有するアミノ酸配列を含む
ゼの例としては、配列番号2のCslHによりコードさ
。
れる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼ
【0064】
のオーソログが含まれる。
いくつかの実施形態において、CslHによりコードさ
【0067】
れる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼ
例えば、配列番号2のオオムギ(Hordeum vulgare)オ
は、配列番号2に対して少なくとも50%、少なくとも
ーソログ又は対立遺伝子変異体には、例えば、配列番号
51%、少なくとも52%、少なくとも53%、少なく 10
70に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドがある
とも54%、少なくとも55%、少なくとも56%、少
。配列番号2のイネ(Oryza sativa)オーソログには、
なくとも57%、少なくとも58%、少なくとも59%
例えば、配列番号4、配列番号6および配列番号8に示
、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも6
されるアミノ酸配列を含むポリペプチドがある。配列番
2%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくと
号2のコムギ(Triticum aestivum)オーソログには、
も65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少な
例えば、配列番号75、配列番号76および配列番号7
くとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、
7に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドがある。
少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73
【0068】
%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも
本明細書に記載の通り、CslHによりコードされる(
76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なく
1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼの「レ
とも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少 20
ベル」の調節は、細胞中のCslH転写産物および/ま
なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%
たはCslHによりコードされる(1,3;1,4)−
、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも8
β−D−グルカンシンターゼポリペプチドのレベルの調
7%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくと
節を含むと理解されるべきである。CslHによりコー
も90%、少なくとも90.5%、少なくとも91%、
ドされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンタ
少なくとも91.5%、少なくとも92%、少なくとも
ーゼの「活性」の調節は、細胞中のCslHによりコー
92.5%、少なくとも93%、少なくとも93.5%
ドされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンタ
、少なくとも94%、少なくとも94.5%、少なくと
ーゼの総活性、比活性、半減期および/または安定性の
も95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、
調節を含むと理解されるべきである。
少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも
【0069】
97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5% 30
CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−
、少なくとも99%、少なくとも99.5%又は100
D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性に
%のアミノ酸配列同一性を含む。
関する「調節」によって、細胞中のCslHによりコー
【0065】
ドされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンタ
アミノ酸配列を比較する場合に、比較される配列は、配
ーゼのレベルおよび/または活性を減少または増加させ
列番号2の少なくとも100個のアミノ酸残基、少なく
ることを意図する。「減少させる」とは、例えば、細胞
とも200個のアミノ酸残基、少なくとも400個のア
中のCslHによりコードされる(1,3;1,4)−
ミノ酸残基、少なくとも800個のアミノ酸残基、又は
β−D−グルカンシンターゼのレベルまたは活性の1%
全長にわたる比較ウィンドウと比較しうる。比較ウィン
、5%、10%、20%、30%、40%、50%、6
ドウは、2つの配列の最適アライメントのための基準配
0%、70%、80%、90%、91%、92%、93
列(付加または欠失を含まない)と比較して、約20% 40
%、94%、95%、96%、97%、98%、99%
以下の付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含む場
、100%の低下を意図する。「増加させる」とは、例
合がある。比較ウィンドウをアライメントするための配
えば、細胞中のCslHによりコードされる(1,3;
列の最適アライメントは、Altschul et al.(Nucl. Aci
1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルまたは
ds Res. 25: 3389-3402, 1997)が開示したプログラム
活性の1%、5%、10%、20%、30%、40%、
のBLASTファミリーのようなアルゴリズムをコンピ
50%、60%、70%、80%、90%、100%、
ュータに実装して実施することができる。
2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍の増加
配列分析の詳細な検討は、Ausubel et al.のUnit 19.3
を意図する。「調節」とは同様に、CslHによりコー
に記載されている("Current Protocols in Molecular
ドされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンタ
Biology" John Wiley & Sons Inc, 1994-1998, Chapter
15,1998)。
50
ーゼを、この導入される酵素を通常は発現していない細
胞に導入すること、またはそのような活性を通常有する
( 12 )
JP
23
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24
細胞におけるCslHによりコードされる(1,3;1
(ii)配列番号1に示されるヌクレオチド配列に対し
,4)−β−D−グルカンシンターゼの実質的に完全な
て少なくとも50%の同一性を有するヌクレオチド配列
阻害を含む。
を含む核酸分子;および/または
【0070】
(iii)ストリンジェントな条件下で、配列番号1に
いくつかの実施形態において、細胞により生成される(
示されるヌクレオチド配列の1以上を含む核酸分子にハ
1,3;1,4)−β−D−グルカンのレベルは、細胞
イブリダイズする核酸分子
中のCslHによりコードされる(1,3;1,4)−
を含むと理解されるべきである。
β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活
【0075】
性を増加させることにより増加される。別の実施形態に
いくつかの実施形態において、CslH核酸は、配列番
おいて、細胞により生成される(1,3;1,4)−β 10
号1に対して少なくとも50%、少なくとも51%、少
−D−グルカンのレベルは、細胞中のCslHによりコ
なくとも52%、少なくとも53%、少なくとも54%
ードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシン
、少なくとも55%、少なくとも56%、少なくとも5
ターゼのレベルおよび/または活性を減少させることに
7%、少なくとも58%、少なくとも59%、少なくと
より減少される。
も60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少な
【0071】
くとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、
本発明の方法は、細胞中のCslHによりコードされる
少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68
(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレ
%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも
ベルおよび/または活性を調節することができる、当技
71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なく
術分野において公知の任意の手段を包含する。これには
とも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少
、CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β 20
なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%
−D−グルカンシンターゼアゴニストもしくはアンタゴ
、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも8
ニストの適用のような、細胞中でのCslHによりコー
2%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくと
ドされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンタ
も85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少な
ーゼの活性を調節する薬剤の適用、細胞中でのCslH
くとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、
によりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グル
少なくとも90.5%、少なくとも91%、少なくとも
カンシンターゼ活性を模擬する薬剤の適用、細胞中での
91.5%、少なくとも92%、少なくとも92.5%
CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−
、少なくとも93%、少なくとも93.5%、少なくと
D−グルカンシンターゼをコードするCslH核酸の発
も94%、少なくとも94.5%、少なくとも95%、
現の調節、または比活性、半減期および/もしくは安定
少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも
性の増加したもしくは減少した(1,3;1,4)−β 30
96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%
−D−グルカンシンターゼが細胞によって発現されるよ
、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくと
うな、細胞中での改変型もしくは変異型CslH核酸の
も99%、少なくとも99.5%又は100%の配列同
発現の達成などが含まれる。
一性を含む。
【0072】
【0076】
いくつかの実施形態において、(1,3;1,4)−β
同一性の%を計算するために、核酸配列を配列番号1と
−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性
比較する際に、比較されるヌクレオチド配列は、配列番
は、細胞中のCslH核酸の発現を調節することにより
号1の少なくとも300個のヌクレオチド残基、少なく
調節する。
とも600個のヌクレオチド残基、少なくとも1200
【0073】
個のヌクレオチド残基、少なくとも2400個のヌクレ
したがって、第2の態様において、本発明は、細胞中の 40
オチド残基、又は全長にわたる比較ウィンドウに対して
(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレ
比較されるべきである。比較ウィンドウは、2個の配列
ベルおよび/または活性を調節する方法であって、細胞
の最適アライメントのための基準配列(付加または欠失
中のCslH核酸の発現を調節するステップを含む方法
を含まない)に対して比較したときに、約20%以下の
を提供する。
付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含む場合があ
【0074】
る。比較ウィンドウをアライメントするための配列の最
本明細書において用いられる「CslH核酸」という用
適アライメントは、Altschul et al.(Nucl. Acids Res
語は、以下:
. 25: 3389-3402, 1997)が開示したプログラムのBL
(i)本明細書において定義されるCslHによりコー
ASTファミリーのようなアルゴリズムをコンピュータ
ドされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンタ
に実装して実施することができる。配列分析の詳細な検
ーゼをコードする核酸分子;および/または
50
討は、Ausubel et al.のユニット19.3に記載されて
( 13 )
JP
25
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26
いる("Current Protocols in Molecular Biology" Joh
ゼーションおよび/または洗浄条件は、異なる度合いの
n Wiley & Sons Inc, 1994-1998, Chapter 15,1998)。
相補性を有する配列に対してハイブリダイズするために
【0077】
調整することができる。例えば、90%以上の同一性を
上述したように、CslH核酸は、ストリンジェントな
有する配列は、Tm を約10℃下げることによりハイブ
条件下で配列番号1に示されるヌクレオチド配列を含む
リダイズできる。一般に、ストリンジェントな条件は、
核酸分子に対してハイブリダイズする核酸を含みうる。
定義されたイオン強度およびpHにおける特定の配列お
本明細書において用いられる「ストリンジェントな」ハ
よびその相補体の熱融解点(Tm )よりも低くなるよう
イブリダイゼーション条件とは、塩濃度が約1.5M
選択される。例えば、高ストリンジェンシー条件では、
Naイオン未満であり、通常は約0.01から1.0M
熱融解点(Tm )よりも、例えば1、2、3、4または
Naイオン濃度(または他の塩)、pH7.0∼8. 10
5℃低い温度でのハイブリダイゼーションおよび/また
3であって、温度は少なくとも30℃を条件とする。
は洗浄を利用することができる。中程度のストリンジェ
ストリンジェントな条件は、ホルムアミドのような不安
ンシー条件では、熱融解点(Tm )よりも、例えば6、
定化剤の添加によっても達成できる。ストリンジェント
7、8、9または10℃低い温度でのハイブリダイゼー
なハイブリダイゼーション条件は、低ストリンジェンシ
ションおよび/または洗浄を利用することができる。低
ー条件、中程度のストリンジェンシー条件、または高ス
ストリンジェンシー条件では、熱融解点(Tm )よりも
トリンジェンシー条件であってもよい。典型的な低スト
、例えば12、13、14、15または20℃低い温度
リンジェンシー条件には、37℃で30%∼35%ホル
でのハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用
ムアミド、1M NaCl、1%SDS(ドデシル硫酸
することができる。上記式、ハイブリダイゼーションお
ナトリウム)の緩衝溶液を使用するハイブリダイゼーシ
よび洗浄組成と望ましいTm を使用することにより、当
ョンと、50∼55℃で1×∼2×SSC中での洗浄( 20
業者は、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄溶
20×SSC=3.0M
NaCl/0.3Mクエン酸
液のストリンジェンシーにおけるバリエーションが本来
三ナトリウム)を含む。典型的な中程度のストリンジェ
的に記載されていることを理解するだろう。望ましい程
ンシー条件には、37℃で40%∼45%ホルムアミド
度のミスマッチは、45℃未満(水溶性溶液)または3
、1.0M NaCl、1%SDSの緩衝溶液中でのハ
2℃未満(ホルムアミド溶液)のTm の結果になるとす
イブリダイゼーションと、55℃∼60℃で0.5×∼
れば、より高温を利用できるようにSSC濃度を高める
1×SSC中での洗浄を含む。典型的な高ストリンジェ
ことができる。核酸のハイブリダイゼーションに関する
ンシー条件には、37℃で50%ホルムアミド、1M
広範なガイドは、Tijssen(Laboratory Techniques in
NaCl、1%SDSの緩衝溶液中でのハイブリダイゼ
Biochemistry and Molecular Biology-Hybridization w
ーションと、60℃∼65℃での0.1×SSCの洗浄
ith Nucleic Acid Probes, Pt I, Chapter2, Elsevier,
を含む。任意により、洗浄緩衝溶液は、約0.1%から 30
New York, 1993)、Ausubel et al.編(Current Proto
約1%のSDSを含む場合もある。ハイブリダイゼーシ
cols in MolecularBiology, Chapter 2, Greene Publis
ョンの時間は、一般に約24時間未満であり、通常は約
hing and Wiley-Interscience, New York, 1995)およ
4時間∼約12時間である。
びSambrook et al.(Molecular Cloning: A Laboratory
【0078】
Manual, 2
n d
ed., Cold Spring Harbor Laboratory Pre
ハイブリダイゼーションの特異性は、ハイブリダイゼー
ss, Plainview, NY, 1989)に述べられている。
ション後の洗浄の関数でもあり、最終洗浄液のイオン強
【0079】
度および温度により影響を受ける。DNA−DNAハイ
本発明により想定されるさらなるCslH核酸の例とし
ブリッドの場合、Tm はMeinkothおよびWahlの式(Anal
ては、配列番号1のオーソログであるコード領域を有す
. Biochem. 138: 267-284, 1984)から概算される。す
なわち、Tm =81.5℃+16.6(log M)+
る核酸が含まれる。
40
【0080】
0.41(%GC)−0.61(%ホルムアミド)−5
例えば、配列番号1のオオムギ(Hordeum vulgare)コ
00/Lである。ここでMは、一価の陽イオンのモル濃
ード領域オーソログ又は対立遺伝子変異体には、例えば
度、%GCは、DNA中のグアノシンおよびシトシンヌ
、配列番号69に示されるヌクレオチド配列を含む核酸
クレオチドの割合、%ホルムアミドは、ハイブリダイゼ
がある。
ーション溶液中のホルムアミドの割合であり、Lは、塩
配列番号1のイネ(Oryza sativa)コード領域オーソロ
基対中のハイブリッド長さである。Tm は、相補的なタ
グには、例えば、配列番号3、配列番号5および配列番
ーゲット配列の50%が完全にマッチするプローブに対
号7に示されるヌクレオチド配列を含む核酸がある。配
してハイブリダイズする温度(定義されたイオン強度お
列番号1のコムギ(Triticum aestivum)コード領域オ
よびpHに基づく)である。Tm は、1%のミスマッチ
ーソログには、例えば、配列番号72、配列番号73お
ごとに約1℃下がる。したがって、Tm 、ハイブリダイ 50
よび配列番号74に示されるヌクレオチド配列を含む核
( 14 )
JP
27
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28
酸がある。
的な方法は、内在性CslH核酸の発現をアップレギュ
【0081】
レーションまたはダウンレギュレーションさせるような
本発明により想定されるCslH核酸はまた、1以上の
細胞の遺伝的改変、CslH核酸での形質転換による遺
非翻訳領域、例えば3’および5’非翻訳領域、および
伝的改変、細胞中での内在性CslH核酸の発現を調節
/またはイントロンを含んでもよい。例えば、本発明に
する核酸分子の細胞への投与などを含む。
より想定されるCslH核酸は、例えば、mRNA配列
【0086】
、cDNA配列またはゲノムヌクレオチド配列を含む。
いくつかの実施形態において、CslH核酸の発現を、
【0082】
細胞の遺伝子的改変により調節する。本明細書において
いくつかの特定の実施形態において、CslH核酸は、
用いられる「遺伝的に改変された」という用語は、細胞
1以上の非タンパク質コード領域および/または1以上 10
の遺伝的に改変されていない形態に比べて、遺伝的に改
のイントロンを含んでもよい、生物由来のゲノムヌクレ
変された細胞中でのCslH核酸の発現の改変に影響を
オチド配列を含む。CslH核酸を含むゲノムヌクレオ
及ぼす任意の遺伝的改変を含むと理解されるべきである
チド配列としては、例えば以下が挙げられる:
。本明細書において包含される遺伝的改変の典型的なタ
オオムギ(Hordeum vulgare)CslHゲノムヌクレオ
イプとしては、トランスポゾン、化学物質、紫外線また
チド配列、例えば配列番号9および/または配列番号7
はファージ突然変異誘発などのランダム突然変異誘発と
1に示される配列;
、内在性CslH核酸を過剰発現または過小発現する変
イネ(Oryza sativ)CslHゲノムヌクレオチド配列
異体の選別;細胞中でのCslH核酸の発現および/ま
、例えば配列番号10、配列番号11および/または配
たは過剰発現を指令する1以上の核酸分子の、細胞への
列番号12のいずれか1以上に示される配列;ならびに
一過的または安定的導入;内在性CslH核酸の部位特
/あるいは
20
異的突然変異誘発;細胞中での内在性CslH核酸の発
コムギ(Triticum aestivum)CslHゲノムヌクレオ
現を阻害する1以上の核酸分子、例えば、コサプレッシ
チド配列、例えば配列番号78、配列番号79および/
ョン構築物またはRNAi構築物の導入などが挙げられ
または配列番号80のいずれか1以上に示される配列。
る。
【0083】
【0087】
上記の通り、本発明は、細胞中のCslH核酸の発現を
1つの特定の実施形態において、遺伝的改変は対象とな
調節する方法を提供する。本発明は、細胞中のCslH
る細胞への核酸の導入を含む。
核酸の発現を調節することができる任意の方法を包含す
【0088】
る。
核酸は、例えば、SambrookおよびRussell(Molecular C
【0084】
loning - A Laboratory Manual, 3
CslH核酸の発現に関して「調節する」という用語は 30
Harbor Laboratory Press, 2000)に述べられたものな
、一般的に、CslH核酸の転写および/または翻訳を
ど、使用される細胞種に適した、当技術分野において公
増加または減少させることを指す。「減少させる」とは
知の任意の方法を用いて導入することができる。
、例えば、CslH核酸の転写および/または翻訳の1
【0089】
%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、
細胞が植物細胞である本発明のいくつかの実施形態にお
60%、70%、80%、90%、 91%、92%、
いて、核酸分子の導入のための適切な方法には、アグロ
93%、94%、95%、96%、97%、98%、9
バクテリウム(Agrobacterium)媒介性の形質転換、マ
9%、100%の低下を包含している。「増加させる」
イクロプロジェクタイルボンバードメントに基づく形質
とは、例えば、CslH核酸の転写および/または翻訳
転換方法および直接的DNA取り込みに基づく方法が挙
の1%、5%、10%、20%、30%、40%、50
げられる。Roa-Rodriguez et al.(Agrobacterium-medi
%、60%、70%、80%、90%、100%、2倍 40
ated transformation of plants, 3
、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍以上の増加
lectual Property Resource, Canberra, Australia,200
を包含している。調節することはまた、通常特定の細胞
3)は、広範な植物種について、適切なアグロバクテリ
中では見いだされないCslH核酸の発現を導入するこ
ウム(Agrobacterium)媒介性の植物形質転換方法を総
と、または通常当該活性を有する細胞中のCslH核酸
説している。マイクロプロジェクタイルボンバードメン
の発現の実質的に完全な阻害(例、ノックアウト)を含
トは、植物組織を形質転換したり、植物、特に穀類植物
む。
の形質転換方法に使用されている。また、当該方法は、
【0085】
Casas et al.(Plant Breeding Rev. 13: 235-264, 199
細胞中の特定の核酸分子の発現を調節する方法は、当技
5)により総説されている。プロトプラスト形質転換お
術分野において公知であり、本発明ではそのような任意
よびエレクトロポレーションなどの直接的なDNA取り
の方法を包含する。CslH核酸の発現を調節する典型 50
込みによる形質転換プロトコルは、Galbraith et al.(
r d
Ed., Cold Spring
r d
Ed. CAMBIA Intel
( 15 )
JP
29
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30
編)(Methods in Cell Biology Vol. 50, Academic Pr
,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのノック
ess, San Diego, 1995)に詳しく述べられている。上記
アウトまたはノックダウンなどの方法を容易にする:
方法に加えて、さまざまな他の形質転換プロトコルを用
ノックアウト構築物との相同組換えによる、細胞中のC
いてもよい。例えば、浸潤、細胞および組織のエレクト
slH核酸のノックアウトまたはノックダウンを含む、
ロポレーション、胚のエレクトロポレーション、マイク
細胞中のCslH核酸の挿入突然変異(植物での標的化
ロインジェクション、花粉管経路、炭化ケイ素およびリ
遺伝子破壊の例としては、Terada et al., Nat. Biotec
ポソーム媒介による形質転換が挙げられる。これらのよ
hnol. 20: 1030-1034, 2002を参照);
うな方法は、Rakoczy-Trojanowska(Cell. Mol. Biol.
細胞中のCslH核酸の転写後遺伝子抑制(PTGS)
Lett. 7: 849-858, 2002)により総説されている。他の
またはRNAi(PTSGおよびRNAiの総説につい
さまざまな植物形質転換方法もまた、当業者にとって明 10
ては、Sharp, Genes Dev. 15(5): 485-490, 2001、およ
らかなものである。
びHannon, Nature 418: 244-51, 2002を参照);
【0090】
CslH核酸を標的とするアンチセンス構築物での細胞
導入される核酸は、一本鎖であってもまたは二本鎖でも
の形質転換(植物のアンチセンス抑制の例については、
よい。核酸は、mRNAに転写され、CslHによりコ
van der Krol et al.、Nature 333: 866-869、van der
ードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシン
Krol et al.、BioTechniques 6: 958-967、およびvan d
ターゼまたは別のタンパク質に翻訳される。また核酸は
er Krol et al.、Gen. Genet. 220: 204-212を参照);
、RNAi構築物、コサプレッション構築物、アンチセ
CslH核酸を標的とするコサプレッション構築物での
ンスRNA,tRNA、miRNA、siRNA,nt
細胞の形質転換(植物のコサプレッションの例について
RNAなどのような非翻訳RNAをコードしてもよく、
は、van der Krol et al.、Plant Cell 2(4): 291-299
あるいは、直接細胞中で作用してもよい。導入された核 20
を参照);
酸は、未修飾のDNAもしくはRNA、またはヌクレオ
CslH核酸を標的とする二本鎖RNAをコードする構
チド塩基、糖もしくはリン酸骨格に対する修飾を含むが
築物での細胞の形質転換(dsRNA介在遺伝子抑制の
、核酸に対する機能的等価性を保持する修飾DNAもし
例については、Waterhouse et al.、Proc. Natl. Acad.
くはRNAの場合がある。導入された核酸は、細胞中で
Sci. USA 95: 13959-13964, 1998を参照);
任意により複製されてもよいし、細胞の染色体または染
CslH核酸を標的とするsiRNAまたはヘアピンR
色体外エレメントに組み込まれてもよいし、ならびに/
NAをコードする構築物での細胞の形質転換(siRN
あるいは、細胞により転写されてもよい。導入された核
AまたはヘアピンRNA介在遺伝子抑制の例については
酸はまた、宿主細胞に関して同種または異種のいずれか
、Lu et al.、Nucl. Acids Res. 32(21): e171、doi:10
でよい。すなわち、導入された核酸は、遺伝的に改変さ
.1093/nar/gnh170, 2004を参照);ならびに/あるいは
れた細胞と同じ生物種の細胞から得られるか(すなわち 30
CslH核酸と機能的に連結されるようなmiNRA標
同種)、または導入された核酸は、異なる生物種から得
的配列の挿入(例えば、miRNAが媒介する遺伝子抑
られる(すなわち異種)。トランスジーンは、合成トラ
制の例については、Brown et al., Blood 110(13): 414
ンスジーンでもよい。
4-4152, 2007参照)。
【0091】
【0094】
1つの特定の実施形態において、本発明は、CslH核
本発明は、細胞に投与されるCslH核酸を標的とする
酸を細胞において発現、過剰発現または細胞に導入する
siRNAまたはマイクロRNAなどの合成オリゴヌク
ことにより、細胞により生成される(1,3;1,4)
レオチドの利用によって、細胞中のCslH核酸のダウ
−β−D−グルカンのレベルを増加させることを包含す
ンレギュレーションも促進するものである(合成siR
る。
【0092】
NA介在抑制の例については、Caplen et al.、Proc. N
40
atl. Acad. Sci. USA 98: 9742-9747, 2001、Elbashir
(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコ
et al.、Genes Dev.15: 188-200, 2001、Elbashir et a
ードするCslHヌクレオチド配列を同定することによ
l.、Nature 411: 494-498, 2001、Elbashir et al.、EM
り、さらなる実施形態において、本発明は、細胞中のC
BO J. 20: 6877-6888, 2001、およびElbashir et al.、
slHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D
Methods 26: 199-213, 2002を参照)。
−グルカンシンターゼの発現をダウンレギュレーション
【0095】
する方法も提供する。
上記例の他に、導入された核酸は、CslH核酸に直接
【0093】
関係しないヌクレオチド配列を含むこともあるが、それ
例えば、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンタ
でも、細胞中のCslH核酸の発現を直接的または間接
ーゼをコードするCslH遺伝子の同定は、以下などの
的に調節することがある。例としては、細胞中の内在性
方法による細胞中でのCslHによりコードされる(1 50
CslH核酸分子の発現を促進するまたは抑制する転写
( 16 )
JP
31
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32
因子または他のタンパク質をコードする核酸分子、直接
ーターが典型的に使用される。
的または間接的に内在性のCslHによりコードされる
【0100】
(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼの発
植物の構成的プロモーターは、通常植物のほぼ全ての組
現を促進または抑制する他の非翻訳RNAなどがある。
織での発現を指令し、環境および発生的要因からは、概
【0096】
ね独立している。本発明に従い使用することができる構
遺伝的に改変された細胞中での導入核酸の発現を達成す
成的プロモーターの例には、カリフラワーモザイクウイ
るため、必要に応じ、導入核酸は1以上の制御配列に機
ルス35Sおよび19S(CaMV35SおよびCaM
能的に連結されてもよい。「制御配列」という用語は、
V19S)プロモーターなどの植物ウイルス由来のプロ
機能的に連結された核酸またはそれによりコードされる
モーター、例えばアグロバクテリウム(Agrobacterium
転写産物もしくはタンパク質の転写、翻訳およびまたは 10
)から得られるノパリンシンターゼ(nos)プロモー
翻訳後修飾に必要なまたは有利な任意のヌクレオチド配
ターなど、アグロバクテリウム種(Agrobacterium spp.
列を含むと理解されるべきである。各制御配列は、機能
)より得られるオパインプロモーターなどの細菌性植物
的に連結された核酸に対し生来的でもまたは外来性でも
病原体由来のプロモーター、およびルビスコ小サブユニ
よい。制御配列としては、リーダー、ポリアデニル化配
ット遺伝子(rbcS)プロモーター、植物ユビキチン
列、プロペプチドをコードする配列、プロモーター、エ
プロモーター(Pubi)、イネアクチンプロモーター
ンハンサーまたは上流の活性化配列、シグナルペプチド
(Pact)およびオートムギグロブリンプロモーター
をコードする配列、および転写ターミネーターが挙げら
などの植物由来のプロモーターが含まれる。
れるが、これらに限定されない。典型的には、制御配列
【0101】
はプロモーターを少なくとも含む。
「誘導性」プロモーターには、化学的に誘導可能なプロ
【0097】
20
モーターおよび物理的に誘導可能なプロモーターが含ま
本明細書において用いられる「プロモーター」という用
れるが、これらに限定されない。化学的に誘導可能なプ
語は、細胞中の核酸分子の発現を実現する、活性化する
ロモーターは、アルコール、抗生物質、ステロイド、金
、または増強する任意の核酸をいう。プロモーターは、
属イオンまたは他の化合物などの化学化合物により制御
一般的に、プロモーターが制御する遺伝子の5'(上流
される活性を有するプロモーターを含む。化学的に誘導
)に位置させる。異種プロモーター/遺伝子の組み合わ
可能なプロモーターの例には、アルコール制御プロモー
せである構築物において、プロモーターと遺伝子(該プ
ター(例、欧州特許第637339号参照)、テトラサ
ロモーターが自然環境において制御する遺伝子、すなわ
イクリン制御プロモーター(例、米国特許第5,851
ち該プロモーターが由来する遺伝子)との間の距離にほ
,796号および米国特許第5,464,758号参照
ぼ等しい遺伝子転写開始部位からの距離に、プロモータ
)、グルココルチコイド受容体プロモーター(例、米国
ーを配置することが望ましい。
30
特許第5,512,483号参照)、エストロゲン受容
当技術分野において周知の通り、この距離の変更は、プ
体プロモーター(例、欧州特許出願第1 232 273
ロモーター機能を失うことなく収めることができる。
号参照)、エクジソン受容体プロモーター(例、米国特
【0098】
許第6,379,945号参照)などのステロイド反応
プロモーターは、物理応力、病原体または特に金属イオ
プロモーター、メタロチオネインプロモーター(例、米
ンなどの外部刺激に反応して、あるいは1以上の転写活
国特許4,940,661号、米国特許第4,579,
性化因子に反応して発現が生じる細胞、組織、器官また
821号および米国特許第4,601,978号参照)
は発生段階に関し、構成的に、または特異的に、機能的
などの金属応答プロモーター、ならびにキチナーゼプロ
に連結したヌクレオチドの発現を制御してもよい。つま
モーターまたはリゾチームプロモーター(例、米国特許
り、本発明の方法に従って使用されるプロモーターは、
第5,654,414号参照)またはPRタンパク質プ
構成的プロモーター、誘導性プロモーター、組織特異的 40
ロモーター(例、米国特許第5,689,044号、米
のプロモーターまたは活性化プロモーターを含んでもよ
国特許第5,789,214号、豪州特許第70885
い。
0号、米国特許第6,429,362号参照)などの病
【0099】
因関連プロモーターを含む。
本発明は、対象となる細胞で活性を有する任意のプロモ
【0102】
ーターを使用することを包含している。つまり、細菌、
誘導性プロモーターは、温度(高温、低温とも)、光な
真菌、動物細胞または植物細胞のいずれかで活性を有す
どの非化学的環境要因により制御される物理的に制御さ
る多様なプロモーターは、当業者であれば容易に理解す
れるプロモーターである場合もある。物理的に制御され
るだろう。しかし、いくつかの実施形態においては、植
るプロモーターの例には、ヒートショックプロモーター
物細胞を使用する。これらの実施形態では、植物で活性
(例、米国特許第5,447858号、豪州特許第73
な構成的、誘導性、組織特異的または活性可能なプロモ 50
2872号、カナダ国特許出願第1324097号参照
( 17 )
JP
33
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)、低温誘導性プロモーター(例、米国特許第6,47
例えば、Sorensen et al.、Mol.Gen. Genet. 250: 750-
9,260号、米国特許第6,084、08号、米国特
760, 1996、Horvath et al.、Proc. Natl. Acad. Sci.
許第6,184,443号および米国特許第5,847
USA 97: 1914-1919, 2000を参照)およびWaxy(W
,102号)、光誘導性プロモーター(例、米国特許第
x)遺伝子プロモーター(例えば、Yao et al.、Acta P
5,750,385号およびカナダ国特許第13215
hytophysiol. Sin. 22: 431-436, 1996、Terada et al.
63号参照)、光抑制性プロモーター(例、ニュージー
、Plant Cell Physiol. 41: 881-888, 2000、Liu et al
ランド特許第5081033号および米国特許第5,6
.、Transgenic Res. 12: 71-82, 2003を参照)がある。
39,952号)を含む。
1つの特定の実施形態において、種子特異的プロモータ
【0103】
ーは胚乳特異的プロモーターである。
「組織特異的プロモーター」には、選択的にまたは特異 10
【0106】
的に、生物中の1以上の特定の細胞、組織もしくは器官
プロモーターは、本明細書において「活性化可能プロモ
、および/または生物の1以上の発生段階で発現するプ
ーター」と呼ばれる、1以上の所定の転写活性化因子に
ロモーターが含まれる。組織特異的プロモーターは、場
より活性化可能であるプロモーターでもよい。例えば、
合によっては誘導性であってもよい。
活性化可能プロモーターは、上流活性化配列(UAS)
【0104】
に機能的に連結された最小プロモーターを含む場合があ
植物の組織特異的プロモーターの例には、米国特許出願
る。これはとりわけ、1以上の転写活性化因子のDNA
第2001047525号に記載された通りの根特異的
結合部位を含む。
プロモーター、欧州特許第316441号、米国特許第
【0107】
5,753,475号および欧州特許出願第97392
本明細書に記載の通り、「最小プロモーター」という用
2号に記載の通りの子房特異的および花托組織特異的プ 20
語は、少なくともRNAポリメラーゼ結合部位、好まし
ロモーターをはじめとする果実特異的プロモーター、な
くはTATAボックスおよび転写開始部位および/また
らびに豪州特許第612326号および欧州特許出願第
は1以上のCAATボックスを組み入れた任意のプロモ
0781849号および豪州特許第746032号に記
ーターを含むと理解されるべきである。細胞が植物細胞
載の通りの種子特異的プロモーターが含まれる。
である場合、最小プロモーターは、例えばカリフラワー
【0105】
モザイクウイルス35S(CaMV 35S)プロモー
いくつかの実施形態において、組織特異的プロモーター
ターに由来することができる。CaMV 35S由来の
は、種子および/または穀粒特異的プロモーターである
最小プロモーターは、例えばCaMV 35Sプロモー
。種子または穀粒特異的プロモーターの例には、pur
ターの(転写開始部位の)−90位から+1位(−90
oindoline−b遺伝子プロモーター(例えば、
CaMV 35S最小プロモーターとも称される)、C
Digeon et al.、Plant Mol. Biol. 39: 1101-1112, 199 30
aMV 35Sプロモーターの−60位から+1位(−
9を参照)、Pbf遺伝子プロモーター(例えば、Mena
60 CaMV 35S最小プロモーターとも称される)
et al.、Plant J. 16:53-62, 1998)、GS1
遺伝
またはCaMV 35Sプロモーターの−45位から+
子プロモーター(例えば、Muhitch et al.、Plant Sci.
1位(−45 CaMV35S最小プロモーターとも称
− 2
163:865-872, 2002)、グルテリンもしくはGt1遺伝
される)に相当する配列を含むことができる。
子プロモーター(例えば、Okita et al., J. Biol. Che
【0108】
m. 264: 12573-12581, 1989、Zheng et al.、Plant J.
上述した通り、活性化可能プロモーターは、上流活性化
4: 357-366, 1993、Sindhu et al.、Plant Sci. 130: 1
配列(UAS)に融合された最小プロモーターを含むこ
89-196, 1997、 Nandi et al.、Plant Sci. 163: 713-7
とがある。UASは、最小プロモーターを活性化するた
22, 2002を参照)、Hor2−4遺伝子プロモーター(
例えば、KnudsenおよびMuller, Planta 195: 330-336,
めに転写活性因子を結合することが可能な任意の配列で
40
ありうる。転写活性因子の例として、例えば、Gal4
1991、Patel et al.、Mol. Breeding 6: 113-123, 2000
、Pdr1、Gcn4およびAce1などの酵母由来の
、Wong et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99: 1632
転写活性因子、VP16、Hap1(Hach et al.、J B
5-16330, 2002を参照)、リポキシゲナーゼ1遺伝子プ
iol Chem 278: 248-254, 2000)、Gaf1(Hoe et al
ロモーター(例えば、Rouster et al.、Plant J. 15: 4
.、Gene 215(2): 319-328, 1998)、E2F(Albani et
35-440, 1998を参照)、Chi26遺伝子プロモーター
al.、J Biol Chem 275: 19258-19267, 2000)、HAN
(例えば、Leah et al.、Plant J. 6: 579-589, 1994を
D2(Dai and Cserjesi, J Biol Chem 277: 12604-126
参照)、Glu−D1−1遺伝子プロモーター (例え
12, 2002)、NRF−1およびEWG(Herzig et al.
ば、Lamacchia et al.、J. Exp. Bot. 52: 243-250, 20
、J Cell Sci 113: 4263-4273, 2000)、P/CAF(I
01、Zhang et al.、Theor. Appl. Genet. 106: 1139-11
toh et al.、Nucl Acids Res 28: 4291 - 4298, 2000)
46, 2003を参照)、Hor3−1遺伝子プロモーター( 50
、MafA(Kataokaet al.、J Biol Chem 277: 49903-
( 18 )
JP
35
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36
49910, 2002)、ヒト活性転写因子4(LiangおよびHai
ーミネーター、pinIIおよびpinIIIターミネ
、J Biol Chem 272: 24088 - 24095, 1997)、Bcl1
ーターなどのジャガイモのプロテイナーゼ阻害遺伝子(
0(Liu et al.、Biochem Biophys Res Comm 320(1): 1
pin)ターミネーターが含まれる。
-6, 2004)、CREB−H(Omori et al.、Nucl Acids
【0113】
Res 29: 2154 - 2162, 2001)、ARR1およびARR
細胞中のCslHによりコードされる(1,3;1,4
2(Sakai et al.、Plant J 24(6): 703-711, 2000)、
)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/また
Fos(Szuts and Bienz, Proc Natl Acad Sci USA 97
は活性を調節することにより、細胞中の(1,3;1,
: 5351-5356, 2000)、HSF4(Tanabe et al.、J Bi
4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルを調節する
ol Chem 274: 27845 - 27856, 1999)、MAML1(Wu
ことは、いくつかの産業上の用途がある。
et al.、Nat Genet 26: 484-489, 2000)などのウイル 10
【0114】
ス由来の転写活性因子が挙げられる。
例えば、(1,3;1,4)−β−D−グルカンは、粘
【0109】
性溶液を形成することで知られている。水溶性穀類(1
いくつかの実施形態において、UASは、少なくともG
,3;1,4)−β−D−グルカンの粘性を生じる物性
AL4転写活性因子のDNA結合ドメインと結合可能な
は穀類加工の多くの局面において重要な決定因子である
ヌクレオチド配列を含む。UAS配列は、少なくともG
。例えば、オオムギ麦芽および穀類添加物由来の不完全
AL4のDNA結合ドメインを含む転写活性因子と結合
に分解された(1,3;1,4)−β−D−グルカンは
する配列であり、本明細書において、UASG と呼ぶ。
、麦汁およびビールの粘性に寄与できるが、麦汁分離お
特定の実施形態において、UASG は、配列5’-CGGAGT
よびビールのろ過における問題を伴う(例、Bamforth、
ACTGTCCTCCGAG-3’またはその機能的ホモログを含む。
Brew. Dig. 69 (5): 12-16, 1994を参照)。したがって
【0110】
20
、例えばいくつかの実施形態において、本発明は、ビー
本明細書に記載の通り、UASG 配列の「機能的ホモロ
ル製造への適性を高めるため、オオムギ粒の1以上の細
グ」は、少なくともGAL4のDNA結合ドメインと結
胞中のCslHによりコードされる(1,3;1,4)
合でき、UASG ヌクレオチド配列と少なくとも50%
−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または
の同一性、少なくとも65%の同一性、少なくとも80
活性を減じることにより、オオムギ粒中の(1,3;1
%の同一性または少なくとも90%の同一性を有するヌ
,4)−β−D−グルカンのレベルを減じるために適用
クレオチド配列を含む任意のヌクレオチド配列をいうと
することもできる。
理解されるべきである。
【0115】
【0111】
水溶性穀類(1,3;1,4)−β−D−グルカンは、
活性化可能プロモーター中のUAS配列は、DNA結合
ブタや家禽などの単胃動物に対して反栄養的な効果(an
ドメイン標的配列の多数のタンデムリピートを含んでも 30
tinutritive effect)をもたらすとも考えられている。
よい。例えば、UASG はその天然の状態においては、
「反栄養的」な効果は、胃内容物の粘度を高め、消化酵
DNA結合ドメイン標的配列の4つのタンデムリピート
素の放散および酵素作用の分解産物の吸収を遅らせるこ
を含む。したがって、DNA結合ドメイン標的配列のタ
とである。言い換えれば、これは成長率を遅らせること
ンデムリピートの数に関して本明細書において用いられ
につながる。さらに、家禽の飼料配合において、高い(
る「多数」という用語は、少なくとも2つ、少なくとも
1,3;1,4)−β−D−グルカン濃度は、「粘性の
3つまたは少なくとも4つのタンデムリピートを含むと
」糞に関係しており、これは(1,3;1,4)−β−
理解されるべきである。
D−グルカンの消化性が低いことを示し、かつ生産者に
【0112】
とって主要な取扱いおよび衛生上の問題になりうる。し
上記の通り、制御配列は、ターミネーターも含むことが
たがって、別の実施形態において、本発明は、動物飼料
ある。「ターミネーター」という用語は、転写終了のシ 40
としての植物の適合性を改善するため、動物飼料に使用
グナルを示す転写ユニットの終端にあるDNA配列をい
される植物の1以上の細胞中の(1,3;1,4)−β
う。ターミネーターは、一般にポリアデニル化シグナル
−D−グルカンのレベルを低下させるのに適用すること
を含む3’非翻訳DNA配列であって、一次転写産物の
ができる。
3’末端に対してポリアデニル化配列の付加を促進する
【0116】
。プロモーター配列と同様に、ターミネーターは、使用
しかしながら、穀類(1,3;1,4)−β−D−グル
しようとする細胞、組織または器官で機能的な任意のタ
カンは、ヒトおよび動物の食事における食物繊維の重要
ーミネーター配列であってもよい。植物細胞中で有用で
な構成要素である。本明細書において用いられる「食物
ありうる適切なターミネーター配列の例には、ノパリン
繊維」という用語は、大腸における完全なもしくは部分
シンターゼ(nos)ターミネーター、CaMV
的な発酵とともにヒト小腸での消化および吸収に抵抗性
35
Sターミネーター、オクトピンシンターゼ(ocs)タ 50
を示す植物の可食部または類似の炭水化物を含むと理解
( 19 )
JP
37
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38
されるべきである。
CslH核酸を発現させるために使用することができる
「食物繊維」は、多糖類(特に(1,3;1,4)−β
多様な組換え発現系は当技術分野において周知である。
−D−グルカンを含む)、オリゴ糖、リグニンおよび関
組換え発現系の例は、大腸菌発現系などの細菌発現系(
連する植物物質を含む。少なくともヒトの食事において
Baneyx, Curr. Opin. Biotechnol. 10: 411-421, 1999
、食物繊維は、全般的な腸の調子、便通、血中コレステ
おいて総説されている。例:Gene expression in recom
ロールの低減、および/または血中グルコールの低減を
binant microorganisms, Smith (編), Marcel Dekker,
含めた有益な生理的効果を促進する。
Inc. New York, 1994、およびProtein Expression Tech
【0117】
nologies: Current Status and Future Trends, Baneyx
ヒトおよび単胃動物は、(1,3;1,4)−β−D−
(編), Chapters 2 and 3, Horizon Bioscience, Norwi
グルカンを分解する酵素を作らないが、いくぶんかの脱 10
ch, UK, 2004も参照)、バシラスspp.発現系(例:
重合が胃および小腸で発生していることが示されている
Protein Expression Technologies: Current Status an
。これは、片利共生微生物の活性によるものと推測され
d FutureTrends, 前記, chapter 4を参照)、およびス
る。水溶性(1,3;1,4)−β−D−グルカンと他
トレプトミセスspp.発現系(例:Practical Strept
の非デンプン質の多糖類を比較すると、腸内細菌により
omyces Genetics, Kieser
容易に発酵し、可消化エネルギーにわずかながら寄与す
ohn Innes Foundation, Norwich, UK, 2000を参照)、
る。単胃動物における反栄養的効果とは対照的に、ヒト
サッカロミセスspp.、シゾサッカロミセス・ポンベ
における高濃度のオートムギおよびオオムギ(1,3;
、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)
1,4)−β−D−グルカンは、特に食事後の血糖値お
およびピチアspp.の発現系、ならびに糸状菌発現系
よびインスリン反応を抑えることにより、非インスリン
などの酵母発現系を含む真菌発現系(例:Protein Expr
依存の糖尿病にとって有益な効果をもたらす。食物中高 20
ession Technologies: Current Status and Future Tre
濃度の(1,3;1,4)−β−D−グルカン(例えば
nds, 前記, chapters 5, 6および7、Buckholz and Glee
20%w/v)は、食物から食物コレステロールまたは
son, Bio/Technology 9(11): 1067-1072, 1991、Cregg
胆汁酸の吸収を抑えることにより、血清コレステロール
et al.Mol. Biotechnol. 16(1): 23-52, 2000、Cereghi
濃度を下げることにも関連付けられている。
noおよびCregg, FEMS Microbiology Reviews 24: 45-66
【0118】
, 2000、Cregg
したがって、別の実施形態において、本発明は、植物ま
0, 1993を参照)、チャイニーズハムスター卵巣(CH
たはその部分中の(1,3;1,4)−β−D−グルカ
O)細胞に基づく発現系(例:Protein Expression Tec
ンレベルを高めることにより、食用植物または食用植物
hnologies: Current Status and Future Trends, 前記,
部分の食物繊維含有量を増加させることに適用すること
chapter 9を参照)、バキュロウイルス発現系を含む昆
et al.(編), Chapter 17, J
et al.、Bio/Technology 11: 905 - 91
もできる。いくつかの実施形態において、食用植物また 30
虫細胞培養(例:Protein Expression Technologies: C
は植物の可食部分は、穀類植物またはその一部である。
urrent Status and Future Trends, 前記, chapter 8、
【0119】
KostおよびCondreay, Curr. Opin. Biotechnol. 10: 42
(1,3;1,4)−β−D−グルカンは、特に(1→
8-433, 1999、Baculovirus Expression Vectors: A Lab
3)−β−D−グルカンにおいて、他のいくつかの多糖
類と同じく、細網内系統の細胞の受容体との結合により
oratory Manual WH Freeman & Co., New York, 1992、
およびThe Baculovirus Expression System: A Laborat
媒介されるプロセスにより、ヒトの免疫反応を変化させ
ory Manual, Chapman & Hall, London, 1992を参照)、
るとも考えられている。さらに、血中の抗体が産生され
タバコ、ダイズ、イネおよびトマト細胞発現系などの植
る前に、最初の防衛線として発動するシステムである、
物細胞発現系(例:Hellwig et al.、Nat Biotechnol 2
ヒトの補体経路のタンパク質を活性化する能力を有する
ことがある。
2: 1415-1422, 2004の概説を参照)などを含む。
40
【0122】
【0120】
したがって、第3の態様において、本発明は、(1,3
本発明は、組換え発現系における(1,3;1,4)−
;1,4)−β−D−グルカンの生成方法であって、単
β−D−グルカンの生成も促進する。例えば、(1,3
離されたCslH核酸で細胞を形質転換するステップお
;1,4)−β−D−グルカンは、プロモーター制御下
よびその単離されたCslH核酸を細胞に発現させるス
にてCslH核酸を細胞に導入することにより組換え技
テップを含む方法を提供する。
術によって生成することもでき、続いて細胞はCslH
【0123】
によりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グル
いくつかの実施形態において、細胞は、先に定義された
カンシンターゼを発現し、(1,3;1,4)−β−D
通りの組換え発現系から得られる細胞である。
−グルカンを生成する。
【0124】
【0121】
50
第4の態様において、本発明は、本発明の第3の態様の
( 20 )
JP
39
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40
方法により生成された(1,3;1,4)−β−D−グ
,4)−β−D−グルカンシンターゼ、ならびに/ある
ルカンも提供する。
いはその発現が調節されたCslH核酸分子を含む1以
【0125】
上の細胞を含む、上記穀粒を提供する。
第5の態様において、本発明は、
【0134】
同じ分類群の野生型細胞と比較してそのレベルおよび/
いくつかの実施形態において、穀粒は、同種と野生型穀
または活性が調節された、CslHによりコードされる
粒を比較した場合に、(1,3;1,4)−β−D−グ
(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼ;な
ルカンのレベルが高くてもよい。別の実施形態において
らびに/あるいは
、穀粒は、同種由来の野生型穀粒と比較した場合に、(
同じ分類群の野生型細胞と比較してその発現が調節され
たCslH核酸
1,3;1,4)−β−D−グルカンのレベルが低くて
10
もよい。
を含む細胞を提供する。
【0135】
【0126】
穀粒がコムギ粒であるいくつかの実施形態において、コ
いくつかの実施形態において、細胞は、同じ分類群の野
ムギ粒は、風乾全粒の生体重基準で少なくとも1%、少
生型細胞と比較してそのレベルが調節された(1,3;
なくとも1.1%、少なくとも1.2%、少なくとも1
1,4)−β−D−グルカンシンターゼをさらに含む。
.3%、少なくとも1.4%、少なくとも1.5%、少
【0127】
なくとも1.6%、少なくとも1.7%、少なくとも1
いくつかの実施形態において、本発明の第5の態様の細
.8%または1.9%の(1,3;1,4)−β−D−
胞は、本明細書に記載された本発明の第1または第2の
グルカンのレベルを含む。
態様の方法で作製される。別の実施形態において、細胞
【0136】
は植物細胞、単子葉植物細胞、イネ目植物細胞および/ 20
第8の態様において、本発明は、以下:
または穀類植物細胞である。
本発明の第7の態様に記載の穀粒を製粉することにより
【0128】
製造される穀粉;および
さらに、第6の態様において、本発明は、本発明の第5
任意により、1以上の他の穀粒を製粉することにより製
の態様に係る1以上の細胞を含む多細胞構造物を提供す
造されたる穀粉
る。
を含む穀粉も提供する。
【0129】
【0137】
本明細書では、「多細胞構造物」は、1以上の細胞の任
したがって、本発明の第7の態様である穀粒を製粉して
意の凝集物を含む。したがって、「多細胞構造物」とい
生産される穀粉は、例えば、本発明の第9の態様の穀粉
う用語は特に組織、器官、生物全体およびその一部を包
の約10重量%、20重量%、30重量%、40重量%
含する。
30
、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、
さらに、多細胞構造物は同様に、コロニー、植物カルス
90重量%または100重量%から構成されてもよい。
(plant calli)、懸濁培養物などの培養細胞の多細胞凝
【0138】
集物を包含すると理解されるべきである。
本明細書に述べるように、「製粉」は、Brennan et al.
【0130】
(Manual of Flour and Husk Milling, Brennan et al.
上記の通り、本発明のいくつかの実施形態において、細
(編)、 AgriMedia, ISBN: 3-86037-277-7)に述べら
胞は植物細胞であり、したがって本発明は、本発明の第
れた製粉などの、穀粒を製粉する当技術分野において周
6の態様に係る1以上の植物細胞を含む植物全体、植物
知の任意の方法を包含する。
組織、植物器官、植物部分、植物繁殖材料または培養植
【0139】
物組織を含む。
【0131】
いくつかの実施形態において、穀粉に使用される本発明
40
の第7の態様である穀粒を製粉して製造される穀粉は、
別の実施形態において、本発明は、本発明の第5の態様
野生型粉と比較した場合により高いレベルの(1,3;
に係る1以上の細胞を含む穀類植物を提供する。
1,4)−β−D−グルカンを含む。
【0132】
【0140】
特定の実施形態において、本発明は、本発明の第5の態
「1以上の他の穀粒を製粉して製造される穀粉」は、先
様に係る1以上の細胞を含む穀粒を提供する。
に定義された任意の穀類植物から得られる穀粒を製粉し
【0133】
て製造される穀粉である。本発明の第8の態様である穀
したがって、第7の態様において、本発明は、そのレベ
粉の成分は、例えば0重量%、10重量%、20重量%
ルが調節された(1,3;1,4)−β−D−グルカン
、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、
を含む穀粒であって、そのレベルおよび/または活性が
70重量%、80重量%または90重量%を構成しても
調節された、CslHによりコードされる(1,3;1 50
よい。
( 21 )
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42
【0141】
上記の通り、本発明は、ヌクレオチド配列の断片を提供
いくつかの実施形態において、1以上の他の穀粒を製粉
する。ヌクレオチド配列の「断片」とは、少なくとも1
して製造される穀粉は、小麦粉である。また、これによ
5、20、30、40、50、100、150、200
り本発明の第8の態様の穀粉は、パン、ケーキ、ビスケ
、250、300、325、350、375、400、
ットなどを調理するのに特に適している。
450、500、550または600ヌクレオチド(n
【0142】
t)長とすべきである。これらの断片には、以下に限定
上記の通り、本発明は、部分的には、(1,3;1,4
されないが、診断用プローブおよびプライマーを含む多
)−β−D−グルカンシンターゼをコードするCslH
数の用途がある。もちろん、601∼3000nt長の
ヌクレオチド配列およびCslHアミノ酸配列の同定お
よび単離に基づく。
ものなどのより大きな断片も、全てではないが、Csl
10
H核酸の大部分に対応する断片と同様、本発明において
【0143】
有用である。
したがって、第9の態様において、本発明は、本明細書
【0147】
において上で定義した単離されたCslH核酸分子、又
いくつかの実施形態において、断片は、CslH核酸の
はその相補体、逆相補体若しくは断片を提供する。
機能的断片を含みうる。すなわち、本発明のポリヌクレ
【0144】
オチド断片は、本明細書に定義される通りの(1,3;
本発明において、「単離された」とは、元の環境(例え
1,4)−β−D−グルカンシンターゼの機能的活性を
ば、それが天然に存在するならば天然の環境)から取り
有するポリペプチドをコードしうる。
出された物質をいい、したがって、「人の手によって」
【0148】
その天然の状態から改変されている。例えば、単離され
第10の態様において、本発明は、本発明の第9の態様
たポリヌクレオチドは、ベクターもしくは組成物の一部 20
の単離された核酸分子を含む遺伝子構築物またはベクタ
とすることができ、又は細胞内に含まれてもよく、その
ーを提供する。
ベクター、組成物、または特定の細胞は該ポリヌクレオ
【0149】
チドの元の環境ではないので、依然として単離されてい
ベクターまたは構築物は、さらに1以上の宿主の複製起
る。「単離された」核酸分子は同様に、当技術分野にお
点、1以上の宿主中で活性である選択可能なマーカー遺
いて公知の方法を用いた化学合成によりまたはインビト
伝子、または細胞中で単離された核酸分子の転写を可能
ロでの増幅(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応など)によ
にする1以上の制御配列のうちの1以上を含んでもよい
り作製されるものを含めて、合成核酸分子を含むと理解
。
されるべきである。
【0150】
【0145】
「選択可能なマーカー遺伝子」は、細胞により発現され
本発明の単離された核酸分子は、ポリリボヌクレオチド 30
る場合に、これら形質転換された細胞の同定および/ま
またはポリデオキシリボヌクレオチドを含む。これは、
たは選択を促進する表現型を細胞に与える任意のヌクレ
未修飾のRNAもしくはDNA、または修飾されたRN
オチド配列を含む。適切な選択マーカーをコードするヌ
AもしくはDNAでもよい。例えば、本発明の単離され
クレオチド配列の範囲は、当技術分野において周知であ
た核酸分子は、一本鎖および二本鎖のDNA、一本鎖お
る。選択マーカーをコードするヌクレオチド配列の例は
よび二本鎖領域の混合であるDNA、一本鎖および二本
、抗生物質耐性遺伝子、例えばアンピシリン耐性遺伝子
鎖RNA、ならびに一本鎖および/もしくは二本鎖領域
、テトラサイクリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝
の混合であるRNA、一本鎖、またはより典型的には二
子、抗生物質オーレオバシジンAに対する耐性を与える
本鎖、もしくは一本鎖および二本鎖領域の混合でよいD
AURI−C遺伝子、ネオマイシンホスホトランスフェ
NAとRNAを含むハイブリッド分子を含んでもよい。
ラーゼ遺伝子(例:nptIおよびnptII)および
さらに、単離された核酸分子は、RNAもしくはDNA 40
ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(例
、またはRNAおよびDNAの両者を含む三本鎖領域か
:hpt)など、除草剤耐性遺伝子、例えばグルホシネ
ら構成されてもよい。単離された核酸分子は、安定性ま
ート(glufosinate)、ホスフィノトリシンまたはビア
たは他の理由により修飾された1以上の塩基、またはD
ラホス耐性遺伝子、例えばホスフィノトリシンアセチル
NAもしくはRNA骨格を含んでよい。「修飾」塩基は
トランスフェラーゼコード遺伝子(例:bar)、3−
、例えば、イノシンなどのトリチル塩基および通常のも
エノイルピルビルシキミ酸(shikimate)5−リン酸塩
のでない塩基を含む。さまざまな修飾をDNAおよびR
シンターゼをコードする遺伝子をはじめとするグリホサ
NAに対して実施することができることから、「ポリヌ
ート耐性遺伝子(例:aroA)、ブロミキシニル(br
クレオチド」は、化学的、酵素的または代謝的に修飾さ
omyxnil)ニトリラーゼをコードする遺伝子をはじめと
れた形態を含む。
するブロミキシニル(bromyxnil)耐性遺伝子、ジヒド
【0146】
50
ロプテレート(dihydropterate)シンターゼをコードす
( 22 )
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43
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44
る遺伝子をはじめとするスルホンアミド(salfonamide
【0156】
)耐性遺伝子(例:sul)およびアセトラクテートシ
当業者は、所望であれば、本明細書に記載された構築物
ンターゼをコードする遺伝子をはじめとするスルホニル
をどのように作製するか、また、所望の条件下で特定の
尿素耐性遺伝子、GUSおよびクロラムフェニコールア
細胞または細胞種でその発現を得るための必要条件を知
セチルトランスフェラーゼ(CAT)をコードする遺伝
るであろう。特に、本発明を実施するために必要な遺伝
子などの酵素コードレポーター遺伝子、緑色蛍光タンパ
子操作は、大腸菌細胞などの原核細胞または植物細胞も
ク質コード遺伝子などの蛍光レポーター遺伝子、ならび
しくは動物細胞での、本明細書に記載の遺伝子構築物ま
に、とりわけルシフェラーゼ遺伝子などの発光に基づく
たはその誘導体の増殖を必要とすることが、当業者に公
レポーター遺伝子を含む。
【0151】
知であろう。核酸分子をクローニングするための方法例
10
は、Sambrook et al.(2000, 前記)に述べられている
さらに、選択可能なマーカー遺伝子は、構築物中の個々
。
のオープンリーディングフレームであるか、あるいはC
【0157】
slHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D
第11の態様において、本発明は、本発明の第9の態様
−グルカンシンターゼポリペプチドとの融合タンパク質
の単離された核酸分子または本発明の第10の態様の遺
として発現する場合もあることに注目すべきである。
伝子構築物を含む細胞を提供する。
【0152】
【0158】
本発明の第10の態様は、本明細書に記載の通り、原核
本発明の第10もしくは第11の態様の単離された核酸
生物または真核生物中の遺伝子構築物の維持および/ま
分子、または本発明の第12の態様の遺伝子構築物は、
たは複製、ならびに/あるいは遺伝子構築物またはその
当技術分野において周知の任意の手段を介して細胞中に
一部を原核生物または真核生物細胞のゲノムに組み込ま 20
導入することができる。
せることを意図した、ヌクレオチド配列をさらに含む、
【0159】
本質的に全ての遺伝子構築物に及ぶ。
上記に言及される単離された核酸分子または構築物は、
【0153】
エピソーム(例:プラスミド、コスミド、人工染色体ま
いくつかの実施形態において、ベクターまたは構築物は
たは同様のもの)の一部分として、DNA分子として細
、アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介形質転換
胞中に維持されてもよいし、あるいは細胞のゲノムDN
により植物細胞に少なくとも一部移入されるようにつく
Aに組み込まれてもよい。
られる。
【0160】
したがって、ベクターまたは構築物は、左および/また
本明細書において用いられる「ゲノムDNA」という用
は右T−DNA境界配列を含む。
語は、その最も広義な背景において、細胞の遺伝子相補
【0154】
30
体を構成するあらゆるDNAを含むと理解されるべきで
適切なT−DNA境界配列は、当業者によって容易に確
ある。したがって、細胞のゲノムDNAは、染色体、ミ
認されよう。しかしながら、「T−DNA境界配列」と
トコンドリアDNA、色素体DNA 、葉緑体DNA、
いう用語は、アグロバクテリウム属の種(Agrobacteriu
内在性プラスミドDNAなどを含むと理解されるべきで
m sp)の細胞からアグロバクテリウム(Agrobacterium
ある。したがって、「ゲノムに組み込まれた」という用
)媒介性の形質転換を受けやすい植物細胞に移入される
語は、染色体への組み込み、ミトコンドリアDNAへの
核酸分子の範囲を定める、実質的に相同のおよび実質的
組み込み、色素体DNAへの組み込み、葉緑体DNAへ
に直接反復性のヌクレオチド配列を含む。例えば、Pera
の組み込み、内在性プラスミドへの組み込みなどを包含
ltaおよびReamによる論文(Proc. Natl. Acad. Sci. US
する。
A, 82(15): 5112-5116, 1985)およびGelvinの概説(Mi
【0161】
crobiology and Molecular Biology Reviews, 67(1): 1 40
単離された核酸分子は、とりわけ、細胞が単離された核
6-37, 2003)を参照されたい。
酸分子を発現するように、制御配列および/またはプロ
【0155】
モーターに機能的に連結することができる。
いくつかの実施形態において、ベクターまたは構築物は
【0162】
、アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介形質転換
細胞は、原核細胞または真核細胞でありうる。したがっ
を介して植物に移入するためにつくられているが、本発
て、細胞は大腸菌細胞もしくはアグロバクテリウム属の
明は、例えばBroothaerts et al.(Nature 433: 629-63
種(Agrobacterium spp.)の細胞を含む細菌細胞、また
3, 2005)に記載されているようなアグロバクテリウム
は古細菌細胞などの原核細胞とすることができる。細胞
属の種(Agrobacterium sp.)以外の細菌を介して、細
は、酵母細胞または菌糸真菌細胞などの真菌細胞、哺乳
菌媒介による植物細胞への導入を促進する遺伝子構築物
類細胞または昆虫細胞などの動物細胞、または植物細胞
に対する任意の適切な改変も包含している。
50
を含む真核細胞であってもよい。特定の実施形態におい
( 23 )
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45
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て、細胞は植物細胞である。いくつかの実施形態におい
修飾には、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、
て、植物細胞は、単子葉植物細胞、イネ目植物細胞また
アミド化、ビオチン化、フラビンの共有結合、ヘム部分
は穀物植物細胞である。
の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の
【0163】
共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファ
第12の態様において、本発明は、本発明の第11の態
チジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフ
様の1以上の細胞を含む、本明細書において上で定義し
ィド結合の形成、脱メチル反応、共有結合性架橋の形成
た多細胞構造物を提供する。
、システインの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミ
【0164】
ル化、ガンマカルボキシル化、グルコシル化、GPIア
上記の通り、いくつかの実施形態において、細胞は植物
ンカーの形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、
細胞であり、したがって本発明は、本発明の第11の態 10
ミリストイル化、酸化、ポリエチレングリコール(PE
様の1以上の細胞を含む植物全体、植物組織、植物器官
G)付加、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プ
、植物部分、植物繁殖材料または培養植物組織を特に含
レニル化、ラセミ化、セレノル化、硫酸化、アルギニル
むと理解されるべきである。
化およびユビキンチン化などのトランスファーRNA媒
【0165】
介によるタンパク質へのアミノ酸付加が含まれる(例と
別の実施形態において、本発明は、本発明の第11の態
しては、Proteins--Structure And Molecular Properti
様の1以上の細胞を含む、単子葉植物、イネ目植物もし
es 2
くは穀類植物またはその部分を提供する。
ny, New York, 1993、Posttranslational Covalent Mod
【0166】
ification Of Proteins, Johnson (編), Academic Pres
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の第1
s, New York, 1983、Seifter et al., Meth Enzymol 18
1の態様の1以上の細胞を含む穀粒を提供する。
n d
20
Ed., Creighton (編), W. H. Freeman and Compa
2: 626-646, 1990、Rattan et al., Ann NY Acad Sci 6
【0167】
63: 48-62,1992を参照)。
上記の通り、本発明は、CslHによりコードされる(
【0172】
1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのアミ
上記の通り、本発明は、単離されたポリペプチドの断片
ノ酸配列も提供する。したがって、第13の態様におい
も提供する。ポリペプチド断片は、該断片が「自立」す
て、本発明は、本明細書において上で定義した、Csl
るかまたは一部もしくは領域を形成する大きなポリペプ
Hによりコードされる単離された(1,3;1,4)−
チド内に含まれてもよい。
β−D−グルカンシンターゼ、またはその断片を提供す
【0173】
る。
ポリペプチド断片は、少なくとも3、4、5、6、8、
【0168】
9、10、11、12、13、15、20、25、30
単離されたポリペプチドは、ペプチド結合または修飾ペ 30
、35、40、45、50、60、70、80、90、
プチド結合、すなわちペプチドイソスター(isostere)
100、110、120、130、140または150
によって互いに連結されたアミノ酸を含み、20種の遺
アミノ酸長でありうる。
伝子コードアミノ酸以外のアミノ酸を含んでもよい。本
【0174】
発明の単離されたポリペプチドは、翻訳後プロセシング
いくつかの実施形態において、断片は、機能的断片であ
などの天然のプロセス、または当技術分野において周知
り、従って、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシ
である化学的修飾技術により修飾されてもよい。
ンターゼの機能的活性を含む。しかしながら、該断片は
【0169】
、CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β
修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖および/または末
−D−グルカンシンターゼの1以上の生物学的機能を保
端を含めて、単離されたポリペプチドのどこで行われて
有しないにもかかわらず、他の機能的活性は依然として
もよい。同じ種類の修飾は、所定の単離されたポリペプ 40
保有されてもよい。
チドの複数部位で同程度または種々の程度で存在しても
例えば、該断片はCslHによりコードされる(1,3
よいことが理解されるだろう。また、本発明の単離され
;1,4)−β−D−グルカンシンターゼの機能的活性
たポリペプチドは、多数の種類の修飾を含んでもよい。
を欠くが、CslHによりコードされる単離された(1
【0170】
,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼポリペプ
ポリペプチドは、例えばユビキチン化の結果として分岐
チドの完全形態または成熟形態を認識する抗体に対して
しても、および/または、分岐の有無にかかわらず環状
導入および/または結合する能力を保有する。CslH
でもよい。環状の、分岐した、および分岐した環状ポリ
によりコードされる単離された(1,3;1,4)−β
ペプチドは、翻訳後自然プロセスの結果であっても、あ
−D−グルカンシンターゼポリペプチドの完全形態また
るいは合成方法により作製されてもよい。
は成熟形態を認識する抗体を誘導するおよび/またはそ
【0171】
50
れに結合する能力を有するペプチド、ポリペプチドまた
( 24 )
JP
47
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48
はタンパク質断片は、本明細書において「CslHによ
たい。
りコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカン
【0179】
シンターゼエピトープ」と呼ぶ。
したがって、第14の態様において、本発明は、上記に
【0175】
定義の、CslHによりコードされる単離された(1,
CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−
3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼポリペプチ
D−グルカンシンターゼエピトープは、3∼4個の少な
ドまたはそのエピトープに対して生起された、抗体また
いアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、エピ
はそのエピトープ結合性フラグメントを提供する。
トープは、例えば少なくとも5個、少なくとも10個、
【0180】
少なくとも20個、少なくとも50個、少なくとも10
本発明の抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル
0個または少なくとも200個のアミノ酸残基を含んで 10
抗体、多重特異性抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、Fa
もよい。CslHによりコードされる単離された(1,
bフラグメント、F(ab’)フラグメント、Fab発
3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼポリペプチ
現ライブラリーにより産生されるフラグメントおよび上
ドの特定のエピトープが当該免疫学的活性を保有してい
記のいずれかのエピトープ結合性フラグメントを含むが
るかどうかは、当技術分野で周知の方法により容易に判
、これらに限定されない。
定することができる。したがって、1つのCslHによ
【0181】
りコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカン
本明細書において用いられる「抗体」という用語は、免
シンターゼポリペプチド断片は、1以上の、CslHに
疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的
よりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカ
活性部分、すなわち、抗原に対して免疫特異的に結合す
ンシンターゼエピトープを含むポリペプチドである。
る抗原結合部位を含む分子をいう。本発明の免疫グロブ
【0176】
20
リン分子は、免疫グロブリン分子の任意の種類(例、I
1以上の、CslHによりコードされる(1,3;1,
gG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)
4)−β−D−グルカンシンターゼエピトープを含むポ
、クラス(例、IgG1、IgG2、IgG3、IgG
リペプチドは、当技術分野で周知の合成および組換え方
4,IgA1およびIgA2)またはサブクラスであり
法を含むポリペプチドを生成する慣用的な手段により作
うる。
製することができる。いくつかの実施形態において、C
【0182】
slHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D
本発明の抗体は、単一特異性、二重特異性、三重特異性
−グルカンシンターゼエピトープを持つポリペプチドは
またはより多重特異性でもよい。多重特異性抗体は、本
、化学合成の周知の方法を用いて合成されてもよい。
発明のポリペプチドの異なるエピトープに対して特異的
例えば、Houghtenは、多数のペプチドを合成する単純な
であってもよいし、あるいは異種ポリペプチドまたは固
方法を述べている(Houghten, Proc. Natl. Acad. Sci. 30
相担体材料などの異種エピトープと本発明のポリペプチ
USA 82: 5131-5135, 1985)。
ドとの両者に対して特異的であってもよい。例えば、P
【0177】
CT公開WO93/17715号、WO92/0880
CslHによりコードされる単離された(1,3;1,
2号、WO91/00360号、WO92/05793
4)−β−D−グルカンシンターゼポリペプチド、およ
号、Tutt et al.、J. Immunol. 147: 60-69, 1991、米
びCslHによりコードされる(1,3;1,4)−β
国特許第4,474,893号、同第4,714,68
−D−グルカンシンターゼエピトープを有するポリペプ
1号、同第4,925,648号、同第5,573,9
チドは、例えば、本発明のCslHによりコードされる
20号、同第5,601,819号、およびKostelny e
単離された(1,3;1,4)−β−D−グルカンシン
t al.、J. Immunol. 148: 1547-1553, 1992を参照され
ターゼポリペプチドと結合する抗体の生成において有用
である。
たい。
40
【0183】
【0178】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、Csl
当該抗体は、とりわけ(1,3;1,4)−β−D−グ
Hによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グ
ルカンシンターゼポリペプチドの検出および局在決定に
ルカンシンターゼのアゴニストまたはアンタゴニストと
おいて、また、(1,3;1,4)−β−D−グルカン
して作用してもよい。別の実施形態において、本発明の
シンターゼポリペプチドのアフィニティ精製において有
抗体は、例えばインビトロおよびインビボ診断および治
用である。抗体は、当技術分野において周知の方法を用
療方法の両者をはじめとする本発明のポリペプチドの精
いて、多様な定性的または定量的イムノアッセイにおい
製、検出および標的化のために使用してもよい。例えば
て、慣用的に使用することができる。例えば、Harlow e
、抗体は、生体サンプル中のCslHによりコードされ
t al.、Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Sprin
る(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼの
g Harbor Laboratory Press 2
n d
Ed., 1988)を参照され 50
レベルを定性的にかつ定量的に測定するためのイムノア
( 25 )
JP
49
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50
ッセイにおいて使用しうる。例として、Harlow et al.
D−グルカンシンターゼポリペプチドまたは1以上の、
、Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Ha
CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−
rbor Laboratory Press, 2nd ed. 1988)を参照された
D−グルカンシンターゼエピトープを含むポリペプチド
い。
に対するポリクローナル抗体は、当技術分野で周知の様
【0184】
々な手法により作製することができる。例えば、本発明
本明細書において用いられる「抗体」という用語は、例
のポリペプチドは、抗原に対し特異的なポリクローナル
えば、共有結合によって抗体がCslHによりコードさ
抗体を含む血清の産生を誘発するため、限定するもので
れる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼ
はないが、ウサギ、マウス、ラット等の様々な宿主動物
またはそのエピトープと結合するのを妨げないような任
に投与することができる。例えばフロイントアジュバン
意のタイプの分子の抗体への共有結合により、修飾され 10
ト(完全および不完全)、水酸化アルミニウムなどのミ
ている誘導体を包含すると理解されるべきである。例え
ネラルゲル、リゾレシチンなどの界面活性物質、プルロ
ば、抗体の誘導体は、例えばグルコシル化、アセチル化
ニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油エマル
、PEG付加、リン酸化、アミド化、公知の保護/ブロ
ジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロ
ッキング基による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞
フェノール、およびBCG(カルメットゲラン桿菌)お
リガンドまたは他のタンパク質との結合などにより修飾
よびコリネバクテリウム・パルバムなど潜在的に有用な
されている抗体を含む。さらに、多くの化学的修飾のい
ヒトのアジュバントなど、様々なアジュバントを、宿主
ずれを公知の技術によって行ってもよい。これらは特定
動物種に応じて免疫反応を高めるために使用してもよい
の化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシ
。当該アジュバントもまた、当技術分野において周知で
ンの代謝合成などを含む。さらに、誘導体は1以上の非
ある。
古典的アミノ酸を含んでもよい。
20
【0189】
【0185】
別の例として、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ
抗体は、当技術分野で公知の方法を用いて生成すること
、遺伝子組換えおよびファージディスプレイ技術、また
ができる。
はその組み合わせの利用をはじめとする当技術分野で周
【0186】
知の多様な技術を使用して調製することができる。例え
例えば、インビボ免疫法を使用する場合、動物を遊離ペ
ば、モノクローナル抗体は、当技術分野で周知であって
プチドで免疫してもよいが、抗ペプチド抗体力価は、キ
、例えば、Harlow et al.、Antibodies: A Laboratory
ーホールリンペットヘモシアニンまたは破傷風トキソイ
Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd e
ドなどの、高分子キャリアにペプチドを結合することに
d., 1988)およびHammerling et al.、Monoclonal Anti
より、増強させることができる。例えば、システイン残
bodies and T-Cell Hybridomas (Elsecier, NY, 1981
基を含むペプチドは、マレイミドベンゾイル−N−ヒド 30
)などに教示されているものを含むハイブリドーマ技術
ロキシスクシンイミドエステル(MBS)法などのリン
を用いて作製することができる。本明細書において用い
カーを用いてキャリアに結合させてもよく、一方、他の
られる「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリ
ペプチドは、グルタルアルデヒドなどのより一般的な架
ドーマ技術により産生される抗体に限定されるものでは
橋剤を用いてキャリアに結合させてもよい。
ない。「モノクローナル抗体」は、真核生物、原核生物
【0187】
およびファージクローンを含む任意の単一クローンから
ウサギ、ラット、マウスなどの動物は、例えば遊離ペプ
誘導され、また抗体が生成される方法以外に由来する抗
チドまたはキャリアを結合したペプチドを用いて、約1
体をいう。
00マイクログラムのペプチドまたはキャリアタンパク
【0190】
質およびフロイントアジュバントを含むエマルジョンを
ハイブリドーマ技術を用いて特異的抗体を生成し、スク
腹腔内および/または皮内注射することにより、免疫す 40
リーニングする方法は、慣用的に行われ、当技術分野で
ることができる。例えば固体表面に吸着する遊離ペプチ
周知である。例えば、マウスは、本発明のポリペプチド
ドを用いるELISAアッセイにより、約2週間隔で、
または当該ペプチドを発現する細胞により免疫すること
検出可能な抗ペプチド抗体の有用な力価を提供するため
ができる。免疫応答が検出されると、例えば、抗原に特
に、何回かの追加免疫注射が必要となることもある。免
異的な抗体がマウスの血清中で検出された後、マウスの
疫された動物の血清中の抗ペプチド抗体の力価は、抗ペ
脾臓を摘出し、脾細胞を単離する。脾細胞は、周知の技
プチド抗体の選別により、例えば、当技術分野で周知の
術により、例えばATCCから入手可能な細胞株SP2
方法により固相支持体上へのペプチドの吸着と、選択さ
0由来の細胞などの適切な骨髄腫細胞に融合させる。ハ
れた抗体の溶出により、高めてもよい。
イブリドーマを選択し、限界希釈によりクローニングす
【0188】
る。ハイブリドーマクローンは、本発明のポリペプチド
CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β− 50
と結合することのできる抗体を分泌する細胞について、
( 26 )
JP
51
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52
当技術分野で周知の方法によりアッセイする。一般に高
号、同第5,780,225号、同第5,658,72
レベルの抗体を含む腹水は、陽性ハイブリドーマクロー
7号、同第5,733,743号および同第5,969
ンを有するマウスを免疫することにより生成することが
,108号により開示された方法が挙げられる。
できる。
【0194】
【0191】
ファージ選択後、ファージ由来の抗体コード領域を単離
1以上の、CslHによりコードされる(1,3;1,
し、全抗体または任意の望ましい他の抗原結合性フラグ
4)−β−D−グルカンシンターゼエピトープを認識す
メントを生成するために使用することができ、哺乳動物
る抗体フラグメントは、公知の技術によって作製するこ
細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母菌および細菌を含む、
とができる。例えば、FabおよびF(ab’)2フラ
任意の望ましい宿主で発現させることができる。例えば
グメントは、(Fabフラグメントを生成するため)パ 10
、組換え技術によりFab、Fab’およびF(ab’
パインなどの酵素、またはペプシン(F(ab’)2フ
)2フラグメントを生産するための技術はまた、PCT
ラグメントを生成するため)を用いて、免疫グロブリン
公開WO92/22324、Mullinax et al.(BioTech
分子のタンパク質分解性切断により生成することができ
niques 12(6): 864-869, 1992)およびSawai et al.(A
る。F(ab’)2フラグメントは、可変領域、軽鎖定
JRI 34:26-34, 1995)およびBetter et al.(Science 2
常領域および重鎖のCH1ドメインを含む。
40: 1041-1043, 1988)に開示された方法など当技術分
【0192】
野で周知の方法を用いて、使用することも可能である。
本発明の抗体は、当技術分野において周知の種々のファ
【0195】
ージディスプレイ法を用いて生成することもできる。フ
一本鎖Fvおよび抗体を生産するために使用可能な技術
ァージディスプレイ法において、機能的抗体ドメインは
の例は、米国特許第4,946,778号および同第5
、それらをコードするポリヌクレオチド配列を保持する 20
,258,498号、Huston et al.(Methods in Enzy
ファージ粒子の表面に提示(ディスプレイ)される。特
mology 203: 46-88, 1991)、Shu et al.(Proc. Natl.
定の実施形態において、当該ファージはレパートリーま
Acad. Sci. USA 90: 7995-7999, 1993)およびSkerra
たはコンビナトリアル抗体ライブラリー(例:ヒトまた
et al.(Science 240: 1038-1040, 1988)に記載されて
はマウス)から発現される抗原結合ドメインを提示する
いる。
ために使用することができる。対象とする抗原と結合す
以下、本発明の実施形態を示す。
る抗原結合ドメインを発現するファージは、例えば標識
(1)細胞により生成される(1,3;1,4)−β−
化された抗原、または固体表面もしくはビーズに結合も
D−グルカンのレベルを調節する方法であって、該細胞
しくは捕捉された抗原などを使用し、選択または同定す
中のCslHによりコードされる(1,3;1,4)−
ることができる。これら方法に使用されるファージは、
β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活
典型的には、該ファージにより発現されるfdおよびM 30
性を調節するステップを含む方法。
13結合ドメインを、ファージ遺伝子IIIまたは遺伝
(2)細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカン
子VIIIタンパク質のいずれかに組換え技術によって
シンターゼのレベルおよび/または活性を調節する方法
融合したFab、Fvまたはジスルフィド安定化Fv抗
であって、該細胞中のCslH核酸の発現を調節するス
体ドメインと共に含む、線状ファージである。
テップを含む方法。
【0193】
(3)(1,3;1,4)−β−D−グルカンの生成方
ファージディスプレイ法の例としては、Brinkman et al
法であって、単離されたCslH核酸で細胞を形質転換
.(J. Immunol. Methods 182: 41-50, 1995)、Ames et
するステップ、および該細胞に該単離されたCslH核
al.(J. Immunol. Methods 184: 177-186, 1995)、Ke
酸を発現させるステップを含む方法。
ttleborough et al.(Eur. J. Immunol. 24: 952-958,
(4)前記細胞が植物細胞である、(1)∼(3)のい
1994)、Persic et al.(Gene 187: 9-18,1997)、Burt 40
ずれか1に記載の方法。
on et al.(Advances in Immunology 57: 191-280, 199
(5)前記細胞が単子葉植物細胞である、(4)に記載
4)、PCT公開WO90/02809号、WO91/
の方法。
10737号、WO92/01047号、WO92/1
(6)前記細胞が穀類植物細胞である、(4)または(
8619号、WO93/11236号、WO95/15
5)に記載の方法。
982号、WO95/20401号および米国特許第5
(7)(3)に記載の方法により生成された(1,3;
,698,426号、同第5,223,409号、同第
1,4)−β−D−グルカン。
5,403,484号、同第5,580,717号、同
(8)以下:
第5,427,908号、同第5,750,753号、
同じ分類群の野生型細胞と比較してそのレベルおよび/
同第5,821,047号、同第5,571,698号
または活性が調節された、CslHによりコードされる
、同第5,427,908号、同第5,516,637 50
(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼ;な
( 27 )
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らびに/あるいは
物繁殖材料、または培養植物組織からなるリストより選
同じ分類群の野生型細胞と比較してその発現が調節され
択される、(26)に記載の多細胞構造物。
たCslH核酸
(28)穀類植物、またはその組織、器官もしくは部分
のいずれか1以上を含む細胞。
を含む、(26)または(27)に記載の多細胞構造物
(9)同じ分類群の野生型細胞と比較してそのレベルが
。
調節された(1,3;1,4)−β−D−グルカンをさ
(29)穀粒を含む、(28)に記載の多細胞構造物。
らに含む、(8)に記載の細胞。
(30)CslHによりコードされる(1,3;1,4
(10)(1)または(2)に記載の方法により作製さ
)−β−D−グルカンシンターゼポリペプチドまたはそ
れた、(8)または(9)に記載の細胞。
の断片を規定するアミノ酸配列を含む、単離されたポリ
(11)植物細胞である、(8)∼(10)のいずれか 10
ペプチド。
1に記載の細胞。
(31)ポリペプチドまたはその断片が、CslHによ
(12)単子葉植物細胞である、(11)に記載の細胞
りコードされる1以上の(1,3;1,4)−β−D−
。
グルカンシンターゼエピトープを含む、(31)に記載
(13)穀類植物細胞である、(11)または(12)
の単離されたポリペプチド。
に記載の細胞。
(32)(30)または(31)に記載の単離されたポ
(14)(8)∼(13)のいずれか1に記載の1以上
リペプチドまたはその断片に対して生起された抗体また
の細胞を含む多細胞構造物。
はそのエプトープ結合性フラグメント。
(15)植物全体、植物組織、植物器官、植物部分、植
【0196】
物繁殖材料、または培養植物組織からなるリストより選
本発明をさらに、以下の非限定的な実施例により説明す
択される、(14)に記載の多細胞構造物。
20
る。
(16)穀類植物、またはその組織、器官もしくは部分
【実施例1】
を含む、(14)または(15)に記載の多細胞構造物
【0197】
。
オオムギはCSLH遺伝子を1種だけ有する
(17)穀粒を含む、(16)に記載の多細胞構造物。
オオムギ中の候補CSLH遺伝子を、コメCSLH配列
(18)そのレベルが調節された(1,3;1,4)−
とともに、中止になったStanford cell wall website、
β−D−グルカンを含む穀粒であって、そのレベルおよ
NCBI、HarvEST、GrainGenes、Barley Gene Indexおよび
び/または活性が調節された、CslHによりコードさ
Barley BaseなどのオンラインESTデータベースに照
れる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼ
会することによりまず同定する。オオムギ由来の全CS
、ならびに/あるいはその発現が調節されたCslH核
LH関連ESTは、全長3’非翻訳領域(UTR)およ
酸を含む1以上の細胞を含む、上記穀粒。
30
びタンパク質のCOOH末端の488個の(予測では約
(19)以下:
750の)アミノ酸残基をコードする領域に含まれる約
(17)または(18)に記載の穀粒を製粉することに
1,500bpの単一の連続配列にアライメントできた
より製造される穀粉;および
(表2)。この遺伝子をHvCslH1と名付けた。H
任意により、1以上の他の穀粒を製粉することにより製
vCslH1由来プローブを用いたオオムギBACライ
造される穀粉
ブラリのスクリーニングにより、すべてがHvCslH
を含む穀粉。
1を含むいくつかのゲノムクローンが同定され、これに
(20)単離されたCslH核酸、又はその相補体、逆
より、欠落した5’末端が得られた(データ非掲載)。
相補体もしくは断片。
単一の2,256bpORFを含み、推定分子量82.
(21)(20)に記載の単離された核酸分子を含む遺
伝子構築物またはベクター。
6kDaおよびpI7.0であるタンパク質をコードす
40
る、2,430bpのHvCslH1
cDNA断片を
(22)(20)に記載の単離された核酸分子または(
PCR増幅した(図6A)。ARAMEMNONを用い
21)に記載の遺伝子構築物を含む細胞。
たこの配列の概念上の翻訳の分析により、5つから9つ
(23)植物細胞である、(22)に記載の細胞。
の膜貫通ドメイン(TMD)が見出され、さまざまなプ
(24)単子葉植物細胞である、(23)に記載の細胞
ログラムの間のコンセンサスは、2つのNH2 末端およ
。
び4つのCOOH末端のTMD(図6B)であり、成熟
(25)穀類植物細胞である、(23)または(24)
タンパク質の両末端は、細胞質性であることが予測され
に記載の細胞。
る。このトポロジーもまた、細胞質内にD,D,D,Q
(26)(22)∼(25)のいずれか1に記載の1以
FKRWモチーフを含む大型の中心ドメインを配置して
上の細胞を含む多細胞構造物。
いる(図6C)。ヌクレオチドレベルでは、HvCsl
(27)植物全体、植物組織、植物器官、植物部分、植 50
H1は、3種のコメCSLH遺伝子と、68∼74%の
( 28 )
JP
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同一性(62∼69%のアミノ酸同一性)を有している
の断片を増幅することに成功した。H1R10プライマ
(実施例6を参照されたい)(Hazen et al., Plant Ph
ー、すなわち1.3kb断片の5’末端近くにアニーリ
ysiol 128: 336-340, 2002)。系統発生学的再構成は、
ングするために設計されたアンチセンスプライマーを用
HvCslH1が、おそらくOsCSLH1のオオムギ
いたBAC
オーソログであることを示している(図7)。Sloo
プンリーディングフレームの残り+配列の上流の748
p×Halcyonの倍加半数体集団を使用するHvC
bpの同定を可能にした。先に得られた結果から予測さ
slH1の遺伝子マッピング(Read et al., Aust J Ag
れたように、BAC
r Res 54: 1145-1153, 2003)は、HvCslH1は染
BAC
色体2Hの短腕上にあり、Burtonらにより報告さ
CSLH遺伝子が1種だけ存在することが確認された。
れた(Plant Physiol 146: 1821-1833, 2008)4種のH 10
【表2】
クラスターからおよそ1.5cMであり、非発芽オオム
ギ穀粒中のβ−グルカン含有量を調節する主要QTL内
にあった(Han et al., Theor Appl Genet 91: 921-927
, 1995;図8)ことを示している。
【0198】
支援情報
BACライブラリのスクリーニングを用い、全長HvC
slHファミリーメンバーの完全なセットを得た。オオ
ムギゲノム(品種モレックス)の6.5等価体を含むB 20
ACフィルターをスクリーニングし、3種の明らかに陽
性のクローンを同定した(データ非掲載)。HindI
IIを用いて消化したこれらのクローン由来のBAC
DNAのブロットを検出した場合、同じ3種のクローン
である3−5−10、3−7−3および3−7−8が陽
3−5−10および3
−7−8の消化パターンは同一であると思われ、多くの
バンドはBAC
3−7−3と共通であり、このことは
、3種のBACはすべて、オオムギゲノムの同一の領域
または非常に類似した領域を含むことを示している。ゲ 30
ノムDNAのブロットを同じプローブとハイブリダイズ
させた場合、単一のバンドが、HindIII、Eco
RIまたはEcoRVを用いて消化したレーンに観察さ
れ、BAC消化の結果を裏付けた。すべてのHvCsl
H
ESTもまた単一の遺伝子に由来するので(表2)
、これらのデータは、オオムギゲノム中にはCSLH遺
伝子が1種だけ存在することを強く示唆している。
【0199】
アダプタープライマーPCR法(Siebert et al., Nucl
Acids Res 23: 1087-1088, 1995)を使用して、HvC 40
slH1の5’末端を同定した。DNAを、BAC3−
5−10および3−7−3から単離し、アダプターが連
結された平滑末端DNA断片を作製するさまざまな制限
酵素を用いて消化した。次いで、遺伝子の5’末端を含
有する断片を増幅するために、アダプター特異的プライ
マーおよびHvCslH1特異的プライマー(表3)を
用いて、ネステッドPCRを実施した。プライマーAP
2およびH1R6を使用する、NruIにより消化され
たBAC
3−7−3
DNAの増幅により、N末端配
列の約20個のアミノ酸以外をすべて含む1.3kbp 50
【0200】
【表3】
3−5−10から得られた配列は
3−7−3と同一であり、オオムギゲノム内に
vCSLF遺伝子(HvCSLF3、4、8、10)の
性であると検証された。BAC
3−7−3DNAの直接配列決定は、オー
( 29 )
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58
ト)を、プールされた3週齢のカナマイシン耐性T2 実
生から調製した。抗HA抗体を用いたウェスタンブロッ
ティングは、HvCslH1転写産物を含有する28の
系統のうちわずか4系統だけが予想サイズ(約90kD
a)のポリペプチドを蓄積したことを示した(図1C)
。分子量がより大きいタンパク質およびより小さいタン
パク質が検出されることもあった(例えば、レーン11
)。90kDaのタンパク質は、総タンパク質抽出物(
データ非掲載)または非形質転換シロイヌナズナ植物か
10
ら調製された混合膜分画(図1C、Col−0レーン)
中には観察されなかった。HAタグ付加HvCslH1
が、HvCslH1
mRNAを発現する植物系統の一
部だけに蓄積する理由、あるいは、HvCslH1のタ
ンパク質レベルと、HvCslH1の転写産物のレベル
(図1BおよびCを比較されたい)または植物中に存在
するHvCslH1トランスジーンの数(データ非掲載
)のいずれかとの間に相関がない理由は知られていない
が、このことは以前から観察されていた(Burton et al
., Science 311: 1940-1742, 2006)。HAタグ付加H
20
vCslH1を発現する8、11、16および24系統
と検出可能なレベルのタンパク質を発現しない6系統(
対照)を、次の実験のために選択した。
【0201】
【0203】
免疫EMを使用して、トランスジェニックシロイヌナズ
ナ植物の細胞壁が検出可能なレベルのβ−グルカンを蓄
積するかどうかを決定した。8、11、16、24およ
び6系統の自家受粉子孫(T2 世代)由来の成葉片の切
片を、β−グルカンに特異的なモノクローナル抗体で検
出し(Meikle et al., Plant J 5: 1-9, 1994)、その
30
後18nmの金粒子と結合した二次抗体を使用して検出
【実施例2】
した。金粒子は、HAタグ付加HvCslH1陽性の8
【0202】
、11および16系統(それぞれ、図2A、C、B)の
シロイヌナズナにおけるHvCslH1の発現は、(1
細胞壁中に明らかであるが、HvCslH1を発現した
,3;1,4)−β−D−グルカンの堆積をもたらす
(データ非掲載)24系統または検出可能なHvCsl
シロイヌナズナにおける異種発現のために、HvCsl
H1タンパク質を有さなかった6系統(図2E)のいず
H1
ORFを、Gatewayを可能にするバイナリ
れにおいても細胞壁中に明らかではなかった。各陽性ト
ーベクターのpGWB15にクローニングし(Nakagawa
ランスジェニック系統は、組織標識の異なるパターンを
et al.,J Biosci Bioeng 104: 34-41, 2007;図15)
示した。8系統において、表皮細胞壁、時として木部壁
、HvCslH1をCaMV
35Sプロモーターの制
にまばらな標識が観察されるが(図2A)、一方11系
御下に置き、3×HAエピトープタグをコードされるタ 40
統では、表皮壁および維管束組織壁はわずかに標識され
ンパク質のNH2 末端に付加した(図1A)。形質転換
ただけであるが、より強い(よりまばらではあるが)標
シロイヌナズナ種子の初期選択により、PCRでHvC
識が葉肉壁において観察された(図2C)。広範囲に分
slH1の含有が確認されたいくつかの推定トランスジ
布する明るい標識が、16系統の成葉の細胞壁すべてに
ェニック実生を同定した。これらのT1 植物のRNAブ
存在した(図2B)。「構成的に」発現される35Sプ
ロット分析により、ロゼット葉中におよそ90%のHv
ロモーターにより駆動される遺伝子を発現するトランス
CslH1転写産物が蓄積したことが示された(図1B
ジェニックシロイヌナズナ系統による異所性多糖類産生
)。抗HAタグ抗体を使用するウェスタンブロッティン
の不規則かつ非一貫性のパターンは、以前から観察され
グを使用して、これらの系統におけるHvCslH1タ
ている(Burton et al., 2006,上記)。非形質転換シロ
ンパク質を検出した(図1C)。混合したミクロソーム
イヌナズナの葉の切片においては、標識は見られなかっ
膜の分画(50,000∼100,000×gのペレッ 50
た(図2D)。標識レベルの低下は、このβ−グルカン
( 30 )
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59
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を特異的に加水分解する枯草菌(Bacillus subtilis)
ex3 およびHex4 の存在を示した(図9B)。16
のエンドヒドロラーゼとともにプレインキュベートを行
−1および16−2系統におけるβ−グルカンの量は、
ったトランスジェニック植物の葉切片に見られた(Burt
G4G3GR のピーク面積から推定されるように、それ
on et al., 2006,上記、データ非掲載)。
ぞれ、総細胞壁の0.005%および0.003%(w
【0204】
/w)であった。
トランスジェニックシロイヌナズナの細胞壁にβ−グル
【実施例3】
カンが存在することの生化学的確認の提供、および新生
【0205】
β−グルカンの微細構造の調査のために、葉および/ま
HvCslH1は、HvCslH1を発現するトランス
たは茎材料を、植物8、11および16系統に由来する
ジェニックシロイヌナズナ植物の、ER関連小胞および
系統の自家受粉のT3 およびT4 の子孫からプールした 10
ゴルジ関連小胞内に位置するが、細胞膜には位置しない
。これらの系統は、HvCslH1トランスジーンにつ
11系統由来の高圧凍結葉の切片を、金標識抗HA抗体
いてホモ接合性であった。β−グルカンは、植物の年齢
とともにインキュベートし、HvCslH1の細胞内位
とともに蓄積されることが見出されたので、試料は植物
置を決定した。標識は、小胞体およびゴルジ由来小胞に
が老齢になった際に採取した。細胞壁を調製し、(1,
見出されたが、細胞膜には見出されなかった(図4A、
3:1,4)−β−グルカン特異的エンドヒドロラーゼ
B)。同様の結果が、根および実生の標識切片において
を用いて消化し、放出されたオリゴ糖をHPAECおよ
観察された(データ非掲載)。
びMALDI−TOF
MSによってプロファイルした
【実施例4】
。(1,4)−β−グルコシド結合が(1,3)−β−
【0206】
D−グルコシル残基の還元末端側にある場合、(1,3
オオムギにおいて、成長中の穀粒、花の組織および二次
;1,4)−β−D−グルカンエンドヒドロラーゼは、 20
細胞壁肥厚中の葉の細胞で、HvCslH1は、低レベ
これらの結合を特異的に加水分解する。この酵素の作用
ルで転写される
により、さまざまな重合度(DP)の、一連のオリゴ糖
さまざまなオオムギ組織において、HvCslH1転写
が生成される。この一連の診断用オリゴ糖は三糖類のG
産物のレベルを、定量的RT−PCR(QPCR)を使
4G3GR および四糖類のG4G4G3GR (式中、G
用して決定した。遺伝子特異的プライマーを表4に表す
は、β−D−グルコピラノース、3および4は、それぞ
。
れ(1,3)および(1,4)結合を示し、GR は還元
【表4】
末端残基を指す)。8および11系統ならびに植物16
に由来する2種の独立した系統(16−1および16−
2系統)由来の葉または葉および茎から調製した細胞壁
を、(1,3;1,4)−β−D−グルカンエンドヒド 30
ロラーゼを用いて処理した場合、可変量のG4G3GR
およびG4G4G3GR が放出された(図3、図9A)
。これらのオリゴ糖は、酵素で処理しなかった対照では
検出されなかった。G4G3GR とG4G4G3GR と
の比(DP3:DP4)は、16−1系統において3.
5であることが推定され、これは、オオムギ葉試料由来
のβ−グルカンに関して得られたDP3:DP4比の3
.6と同様である。グルコース(G3GR )の(1,3
)−β結合二糖類であるラミナリビオースと同時溶出し
たピークが、複数の試料において、8、11および16 40
−2系統においてさまざまなレベルで観察された(図9
【0207】
A、データ非掲載)。この産物はオオムギおよび酵素未
図5(A∼C)は、一連のオオムギの栄養組織および花
処理の対照試料には存在せず(図9A)、その出現が、
組織のcDNAにおいて、HvCslH1転写産物が慣
(1,3;1,4)−β−D−グルカンエンドヒドロラ
用的に1,000sコピー/μl
ーゼ調製物中の酵素の混入あるいは内在性二糖類または
ルで蓄積されたことを示す。この値は、本発明者らが通
シロイヌナズナ内の酵素活性によるものではないことが
常10,000sから100,000sコピー/μl
検証される。このプロファイルにおけるオリゴ糖の種類
cDNAの範囲の値で研究した他のオオムギCESAお
をMALDI−TOF
MS分析によってさらに確認し
よびCSLの一部より低かった。HvCslH1転写産
、MALDI−TOF
MS分析は、HPAECプロフ
物のレベルは、子葉鞘および葉脚を含む、急速に伸長す
ァイルにおいて観察された比と同様の比でHex2 、H 50
cDNA未満のレベ
る細胞を含む組織において比較的低く、これらは活発に
( 31 )
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61
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β−グルカンを合成する組織である。
hartoideae))は、複数のCSLH遺伝子を有すると思
【0208】
われる。HvCslH1
HvCslH1転写産物のレベルは葉頂において最も高
加形態を、シロイヌナズナにおいて異種発現させた場合
く、ここでは、細胞はもはや活発に成長せずβ−グルカ
、タンパク質が検出された4つの植物系統の3つが、β
ンの蓄積も減っている(図5C;2、4)。葉における
−グルカン特異的モノクローナル抗体により認識された
HvCslH1の転写は、10日齢の実生の葉頂から開
多糖類を、それらの細胞壁に蓄積した。トランスジェニ
始した約13cm長の葉内の6か所の範囲から単離され
ック系統の単離細胞壁を、特異的(1,3;1,4)−
たRNAを使用してさらに特徴を調べた。これらの範囲
β−D−グルカンエンドヒドロラーゼを用いて消化した
は、完全に成熟した細胞(範囲A)から分裂細胞を含む
場合、特有の三糖類(G4G3GR )および四糖類(G
葉脚(範囲F)を含む。in
4G4G3GR )が、オオムギ胚乳由来のβ−グルカン
situ
PCR(実施 10
例5を参照されたい)を使用して、HvCslH1
cDNAのエピトープタグ付
m
に見出される比と同様の比で検出され、トランスジェニ
RNAを含む葉頂中のそれらの細胞を同定した。この技
ックシロイヌナズナ系統由来の細胞壁が、β−グルカン
術において、遺伝子転写産物が検出された細胞は、紫か
を含んだことを実証する。さらに、エピトープタグ付加
ら暗い褐色に染色される(図5D、18S
RNA陽性
HvCslH1は、トランスジェニック植物細胞の小胞
対照)。転写の起こらなかった細胞は、明るい褐色に染
体およびゴルジ由来小胞において見出された。HvCs
色され、陰性対照として検出される(図5E)。HvC
lH1を発現したトランスジェニックシロイヌナズナ系
slH1は、維管束間の、厚膜組織の繊維細胞および木
統の形態学的表現型は、野生型植物と同一であると思わ
部細胞などの二次細胞壁肥厚にある細胞において大部分
れる。
は転写される(図5F)。オオムギ葉から採取した切片
【0211】
を使用する免疫EMおよびβ−グルカン抗体での検出に 20
(1,3)−および(1,4)−β−グルコシル結合の
より、これらの細胞の細胞壁中のβ−グルカンを同定し
全割合ならびに16−1系統植物に由来する細胞壁の(
た。
1,3;1,4)−β−D−グルカンエンドヒドロラー
【0209】
ゼ消化からのG4G3GR およびG4G4G3GR 産物
HvCslH1転写産物のレベルを、さらに、一連の2
の比は、オオムギ組織から単離されたβ−グルカンにお
4日の成長中の胚乳においてより詳細に調査した(図5
いて観察される比と同様であるが、観察された一つの独
B)。HvCslH1の発現は、成長中のデンプン質胚
特な特徴は、16−2系統の細胞壁から、(1,3;1
乳全体で低かった。胚乳細胞壁においてβ−グルカンが
,4)−β−D−グルカンエンドヒドロラーゼにより放
最初に検出されるおよそ1日前の4DPAにおいて、最
出される主要なオリゴ糖がラミナリビオースであること
大転写レベルに達した。この転写パターンは、成長中の
であった(G3GR ;図9A)。可変レベルのG3GR
穀粒においてもまた発現された、いくつかのオオムギC 30
の存在はまた、三糖類の四糖類に対するレベルの増加、
SLF遺伝子(HvCSLF3、4、7、8および10
したがってDP3:DP4比の増大に関連した。大部分
)の転写パターンと同様であるが、HvCSLF9およ
の植物系統の細胞壁消化物中にG3GR が存在すること
び6は、さらにより高い転写産物レベルを示す。
は、交互の(1,3)−β−および(1,4)−β−結
【実施例5】
合のグルコシル残基(−G3G4G3G4−)の多糖類
【0210】
含有切片を示す。これらが個別の多糖類中に存在するか
考察
、またはさらに通常の微細構造の特徴を有するβ−グル
本明細書に提示したデータは、イネ科植物特異的CSL
カン鎖の一部を構成するかは分かっていない。交互の(
H遺伝子ファミリーのメンバーであるHvCslH1の
1,3)−β−D−グルコシルおよび(1,4)−β−
産物が、シロイヌナズナにおいてβ−グルカンの生合成
D−グルコシル残基は、オオムギと、他の穀類のβ−グ
を仲介することを示している。オオムギは、ESTデー 40
ルカンにおいて共通ではないが、非開花植物のトクサ属
タベース分析、ゲノムDNAブロット分析およびBAC
(Equisetum)由来のβ−グルカンの重要な成分を表し
ライブラリのスクリーニングに基づき、CSLH遺伝子
、さらに担子菌類および子嚢菌類を含む多くの真菌由来
を一つだけ有すると思われる。パンコムギ、イタリアン
のβ−グルカン中に検出される。G3GR はトランスジ
ライグラス(Lolium multiflorum)、トールフェスク(
ェニックシロイヌナズナにおけるβ−グルカンシンター
Festuca arundinacae)およびミナトカモジグサ(Brach
ゼの誤制御を介して生じる可能性があり、その膜の微小
ypodium distachon)(すべてイチゴツナギ亜科(Pooid
環境が異なるため、またはオオムギにおいて、(1,3
eae))などの他のイネ科植物のEST分析は、オオム
)−βグルコシド結合形成を抑制する(または(1,4
ギと同様の1種の同定CSLH遺伝子を有するが、トウ
)−βグルコシド結合形成を促進する)未知の因子が、
モロコシ、ソルガムおよびサトウキビ(すべてキビ亜科
シロイヌナズナに最適以下のレベルで存在するためと思
(Panicoideae))、コメなど(エールハルタ亜科(Ehr 50
われる。植物16に由来する系統の中でこの因子のレベ
( 32 )
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ルがわずかに変化することが、得られた構造の違いの原
く両方の型のβ結合を生成することができることを示し
因であろう。β−グルカンの構造のばらつきに関する別
ている。CSLHファミリーは、糖質作用性酵素(Carb
の考えられる説明は、組み立て後のプロセシングの微妙
ohydrate Active Enzymes:CAZy)データベースに
な差に関すると思われる(さらに、下記の支援情報を参
より、グリコシルトランスフェラーゼファミリー2(G
照されたい)。
T2)のメンバーであると分類され(http://www.cazy.
【0212】
org; Coutinho et al., J Mol Biol 328: 307-317, 200
オオムギにおいて、HvCslH1は、組織が完全に成
3)、このファミリーは、(1,3)−β−または(1
熟した細胞を含む葉頂で最も高度に転写された。HvC
,4)−β−結合のいずれかの合成を独立して触媒でき
slH1および任意のオオムギCSLFの連携転写(co
ordinatetranscription)を示す証拠はなく、それらが
る酵素を含み、二機能性酵素、すなわち2種のグリコシ
10
ド結合を合成できる酵素の例でもある。例えば、ヒアル
コードする産物が、タンパク質複合体の成分ではないこ
ロン酸合成酵素(HAS)は、(1,4)−β−グルク
とを示唆している。例えば、HvCslH1の転写は、
ロン酸−(1,3)−β−N−アセチルグルコサミンの
オオムギにおいてβ−グルカンが特徴的に蓄積される組
繰り返し二糖単位を合成し、両方のトランスフェラーゼ
織である子葉鞘または成長中の胚乳などの伸長する細胞
活性が、1種のポリペプチドにある。マウスHAS1に
中では高くない。通常は、細胞増殖の調節、およびおそ
おいて、D,D,D,QXXRWモチーフを含む領域は
らく暗所においてエネルギー供給源として動員できるグ
、これらの活性の両方に関与する。D,D,D,QXX
ルコースの一時貯蔵に関係すると思われる栄養組織の一
RWモチーフをさらに含む、CSLHの活性部位は、同
次細胞壁に見出されるが、β−グルカンは、木部管状要
様に二機能性であると思われる。別の可能性は、CSL
素および厚膜組織繊維の木化細胞壁においてもまた見出
Hシンターゼが、単子葉植物および双子葉植物に共通の
され、ここでは、β−グルカンに対する抗体を使用する 20
、第2の結合の合成に関与する別のグルコシルトランス
免疫EMにより、中葉領域(一次細胞壁)と膜組織細胞
フェラーゼと、唯一のグルコシド結合を合成することで
の二次細胞壁との両方において標識が示される。ins
ある。
itu
PCRは、葉中のHvCslH1遺伝子の転写
【実施例6】
が、維管束間の厚膜組織の繊維細胞および木部細胞など
【0214】
の細胞に限定されていることを示すので、植物中の他の
材料と方法
場所における一次細胞壁のβ−グルカン合成における役
バイナリーベクターの構築および植物の形質転換
割を除外することはできないが、この遺伝子の主要な役
HvCslH1
割は、二次細胞壁成長の間のβ−グルカン合成にあるこ
成葉頂のcDNAから、Herculase(登録商標
とが示唆される。
)(Stratagene)を用い、プライマーHvH1TOPO
【0213】
30
ORFを、オオムギ品種スクーナーの
fおよびHvH1TOPOr(表3)を使用して増幅し
β−グルカンの微細構造がどのように生じたかにかかわ
、PCR産物を、pENTR/D−TOPO(Invitrog
らず、CSLHがシロイヌナズナにおいてβ−グルカン
en)にクローニングした。製造業者(Invitrogen)のプ
の合成を仲介できることは明らかであり、どのようにこ
ロトコルを使用し、LR反応を使用して、NH2 末端に
の多糖類が合成されるかという本発明者らの理解に関す
3×HAタグを含むデスティネーションベクターpGW
る暗示を有する研究成果である。β−グルカンの組み立
B15にcDNAをクローニングし(Nakagawa et al.,
てに関すると考えられる機序は、優勢なセロトリオシル
J Biosci Bioeng 104: 34-41,2007)、DNA配列決定
およびセロテトラオシル単位の合成、これらの(1,4
により、予測配列を確認した。HvCslHl::pG
)−β−単位と単一の(1,3)−β−結合とのランダ
BW15構築体を、大腸菌(Escherichia coli)からア
ムな結合、そして三糖類単位と四糖類単位のモル比を制
グロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium
御する手段で説明できるはずである。少なくとも2種の 40
tumefaciens)AGL1株に、三親接合を介し、ヘルパ
グルコシルトランスフェラーゼ活性が共同して作用する
ープラスミドpRK2013を使用して移した。シロイ
と思われ、一方の活性は、(1,4)−β−結合グルコ
ヌナズナCol−0植物を、フローラルディップ法を使
ース残基を連続的に付加し、三糖類および四糖類を組み
用して形質転換した(Clough and Bent, Plant J 16: 7
立て、他方の活性は、単一の(1,3)−β−結合を付
35-743, 1998)。
加する。多糖類シンターゼの本発明者らの最近の知見に
【0215】
基づき、いくつかの機序は仮定として可能である。最も
RNAブロット分析
簡略な説明は、1種のポリペプチドが両方のグルコシド
T1植物の成熟ロゼット葉からTRIzol(登録商標
結合型の合成に関与していることである。本発明者らの
)(Invitrogen)を使用して抽出した、約10μgの総
トランスジェニック実験は、CSLHタンパク質が独立
RNA試料を調製し、1%w/vアガロース−ホルムア
してβ−グルカンを作ることができ、したがっておそら 50
ルデヒドゲル上で分離した(Farrell, RNA methodologi
( 33 )
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es: A laboratory guide for isolation and character
週間後、カナマイシン耐性の実生をプールし、液体窒素
ization, Academic Press, Inc., San Diego, 1993)。
中で凍結し、ホモジナイズ用緩衝液(50mM
RNAをHybond(商標)N
e
Images
+
膜に転写し、Gen
NaP
O4 緩衝液、pH7.5、0.5Mスクロース、20m
CDP−Star検出モジュール(
M KCl、10mM
DTT、0.2mM
PMSF
Amersham-Biosciences)に概説された方法に従って、プ
、83μL植物プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma、P
レハイブリダイズおよびハイブリダイズを行った。プラ
9599))を含む乳鉢および乳棒で4℃において粉砕した
イマーH1F2およびHvH1TOPOr(表3)を用
。ホモジネートを、50μMメッシュのフィルターを通
いて増幅したHvCslH1断片を、Gene
Ima
してろ過し、S/Nを、6,000×gで10分間、4
Primeラベリングモジュー
℃において遠心した。S/Nをデカントし、50,00
ges
Random
ル(Amersham)を使用し、製造業者のプロトコルに従っ 10
0×gで30分間、4℃において、4.5mlの超遠心
て標識し、プローブとして使用した。
管(Beckmann)において遠心した。50,000×gの
【0216】
S/Nをデカントし、ペレットを、10mM
定量的PCR分析
−MES緩衝液、pH7.5に、ガラス−テフロンホモ
RNA抽出、cDNA合成およびQPCRを、Burton e
ジナイザーを使用して再懸濁した。再懸濁したペレット
t al.(Plant Physiol 146, 1821-1833, 2008)に記載
を、Tri−MES緩衝液を用いて4.5mLに希釈し
された変法を用いて、Burton et al.(Science 311, 19
、100,000×gで、1時間、4℃において遠心し
40-1942, 2006; Plant Physiol 134, 224-236, 2004)
た。ペレットを、上に概説したように、0.25Mスク
に記載のように実施した。オオムギ対照遺伝子のプライ
ロース、10mM
マー配列を表4に記載する。
5に再懸濁した。タンパク質濃度を、Bradford
【0217】
20
Tris
Tris−MES緩衝液、pH7.
アッセイ試薬(BioRad)を使用して測定し、ウシ血清ア
in
situ
PCR
ルブミンを標準として使用した。
in
situ
PCRを、Koltai & Bird(Plant Phy
【0219】
siol 123: 1203-1212, 2000)の方法に従って、下記の
ウェスタンブロッティング
変形を加え実施した。組織を切片にした後、ゲノムDN
膜タンパク質(30μg)の試料を、60℃において2
Aを、37℃において6時間、1×DNase緩衝液お
0∼60分間、200mMジチオスレイトールおよび試
よび4U
料緩衝液(37.5mM
RNase非含有DNase(Promega)中
Tris−HCl、pH7.
で処理することによって取り出した。cDNAの合成を
0、10%グリセロール、3%ドデシル硫酸ナトリウム
、RNase
Hステップを省き、遺伝子特異的プライ
(SDS)、0.025%ブロモフェノールブルー)中
マー(1μg、表3)を逆転写に使用したことを除き、
でインキュベートし、SDS:タンパク質比を1.5m
Thermoscript(商標)RT(Invitrogen) 30
gSDS対30μgのタンパク質にして、その後8%S
を使用して実施した。PCRを、1×PCR緩衝液、2
DS−PAGEゲルに添加した。電気泳動後、ゲルをニ
00μm
トロセルロース(OSMONIC(商標)Nitrop
dNTP(Promega)、0.2nmolジゴ
キシゲニン−11−dUTP(Roche)、2mM
Mg
Cl2 、200ngの各プライマーおよび2U
Taq
ure
22μm)に、0.05%SDSを含有するT
owbin緩衝液(25mM
Tris塩基、192m
DNAポリメラーゼ(Invitrogen)を含む、最終容量
Mグリシン、20%メタノール)中で4℃において10
50μL中で実施した。サイクリングパラメーターは、
0V、90分間かけてブロットした。次いで、膜を、3
下記のとおりである:初期変性96℃2分、次いで、9
%w/v粉乳を含有するTris緩衝生理食塩水(TB
4℃30秒、59℃30秒、72℃1分を40サイクル
S;20mM
。その後切片を洗浄し、1.5Uのアルカリホスファタ
ーゼ結合抗ジゴキシゲニンFabフラグメント(Roche
Tris塩基、150mM
NaCl)
において一晩ブロッキングし、その後、1%BSAを含
40
有するTBSで1:1000に希釈したラット抗HAポ
)とともにインキュベートし、Koltai & Bird(2000、
上記)により概説されたように、10∼20分発色させ
リクローナル抗体(Roche)中で室温で1時間インキュ
た。陰性対照切片では、逆転写酵素を省き、すべてのH
するTBSで3回洗浄し、次いで、3%w/v脱脂粉乳
v
を含有するTBSで1:1000に希釈した抗ラットI
18S
ベートした。膜を0.05%SDS(TBST)を含有
rRNAプライマーを含み、ゲノムDNA
から任意の増幅があったかどうかを確認した。
gG
【0218】
。膜をTBSTで3回洗浄し、その後、シグナルを、S
混合ミクロソーム膜の調製
uperSignal(登録商標)West
HvCslH1トランスジェニック植物のT1種子を回
化学発光基質(Pierce)を用いて検出した。
収し、約100個の種子を、50mg/Lカナマイシン
【0220】
(Sigma)を含有する1×MS寒天培地上に撒いた。3
50
HRP結合抗体(Dako)中でインキュベートした
免疫電子顕微鏡法
Pico
( 34 )
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68
シロイヌナズナ組織を固定し、Burton et al.(Science
の(1,3;1,4)−β−D−グルカンエンドヒドロ
311, 1940-1942, 2006)に従って、抗(1,3;1,
ラーゼ(McCleary et al., J Inst Brew 91: 285-295,
4)−β−D−グルカン特異的抗体(Meikle et al., P
1985)を加えた。混合物を、連続混合しながら、50℃
lant J 5: 1-9, 1994)を用いて標識した。抗HA抗体
において2時間インキュベートし、その後S/Nを、(
を用いた標識のために、植物組織を2つの銅のプランチ
1,3;1,4)−β−D−グルカンエンドヒドロラー
ェットの間に置き、Leica
ゼ放出オリゴ糖として回収した。陰性対照および(1,
EM高圧フリーザーに
おいて急速に凍結させた(2.7×10
−10,000℃s
− 1
5
kPaおよび
3;1,4)−β−D−グルカンエンドヒドロラーゼ処
の適切な速度に設定する)。
理S/Nを、グラファイト化カーボンカートリッジ上で
プランチェットを、−50℃、72時間に設定したLe
、Packer et al.(Glycoconj J 15: 737-747, 1998)に
ica自動凍結置換装置中で100%エタノールに移し 10
より記載のように脱塩し、乾燥させた。
た。試料を、室温(RT)で一晩置き、取り出し、LR
【0223】
White樹脂でろ過し、Burton et al.(2006、上
HPAEC分析
記)に記載のようにゼラチンカプセルに包埋した。包埋
乾燥させた(1,3;1,4)−β−D−グルカンエン
した葉組織の切片をフォルムバー被覆金グリッド上に回
ドヒドロラーゼ放出オリゴ糖を、100μLのMill
収し、1%w/v
i H2 Oに溶解し、20μLを、0.2M
BSAを含有するリン酸緩衝生理食
塩水(PBS;137mM
PO4 、2.7mM
NaCl、10mM
Na
中の50mM
KCl、pH7.4)で1:20
oPac
NaOH
NaOAcを用いて平衡化したCarb
PA1カラム(Dionex)に、パルスアンペロ
0に希釈したラット抗HAポリクローナル抗体中で室温
メトリック検出装置(PAD)およびオートサンプラー
で1時間、次いで4℃で一晩インキュベートした。グリ
を搭載したDionex
ッドをPBSで数回洗浄し、次いで、1%w/v
システム(Dionex)を使用して注入した。オリゴ糖を、
BS 20
BioLC
ICS 300
Aを含有するPBSで1:20に希釈した18nm金(
0.2M
Jackson ImmunoResearch)と結合した抗ラット二次抗体
M NaOH中350mMまでの線形勾配で、15分か
中で室温で1時間インキュベートした。次いで、グリッ
けて、1mL/分で溶出した。ラミナリビオース(Seig
ドを洗浄し、染色後、Burton et al.(2006、上記)に
aku)、マルトースおよびセロビオース(双方ともSigma
記載のようにTEM下で見た。
)を、標準として流した。
【0221】
【0224】
細胞壁材料の調製
MALDI−TOF
アルコール不溶性画分(AIR)を、植物材料を液体窒
残りの(1,3;1,4)−β−D−グルカンエンドヒ
素中で、乳鉢と乳棒を使用して粉砕することによって調
ドロラーゼ放出オリゴ糖のアリコート(30μL)を凍
製した。5倍量の80%エタノールをホモジネートに加 30
結乾燥させ、DMSOに溶解し、NaOH法(Ciucanu
え、その後4℃において1時間回転することによって混
and Kerek, Carb Research 131: 209-217, 1984)を使
合した。3,400×gで5分間遠心後、上清を取り除
用してメチル化した。メチル化オリゴ糖を、ジクロロメ
き、残留物を室温で80%エタノール中で1時間、2回
タン(DCM)中に分配し、DCM相をMilliQ水
還流し、その後50%エタノール中で1時間、2回還流
で3回洗浄した。DCM相を、N2 気流下で乾燥させ、
した。エタノール可溶性画分を取り除き、AIRを10
その後10μLの50%アセトニトリルに再溶解した。
0%エタノールで1回洗浄し、その後40℃において真
1μLのアリコートを、1μLの2,5−ジヒドロキシ
空乾燥させた。
安息香酸マトリックス(50%アセトニトリルに溶解し
【0222】
て10mg/mL)と混合し、1μLの混合物を、MA
(1,3;1,4)−β−D−グルカン特異的エンドヒ
ドロラーゼ消化
LDI
40
NaOH中50mMのNaOAcから0.2
TOF質量分析計(Voyager DSTR, Applied Bi
osystems)において分析するために、MALDIプレー
AIR(100mg、上記のように調製)を、5mLの
トにスポットした。
20mM
【0225】
NaPO4 緩衝液、pH6.5中で2時間、
MS分析
50℃において、200rpmで振とうしてインキュベ
EST分析、コンティグの組み立ておよびバイオインフ
ーター中で連続混合しながらインキュベートした。2時
ォマティクス
間後、懸濁液を遠心分離(3,400×g、5分)にか
BLASTサーチツール(Altschul et al., Nucl Acid
け、上清(S/N)を取り除いた。別の5mLの緩衝液
s Res 25: 3389-3402, 1997)を使用して、CSLH
を加え、インキュベートおよび遠心分離を繰り返した。
ESTを、現在中止になったStanford
この2次インキュベートで得たS/Nを、酵素非含有陰
l Wall
性対照として使用した。ペレット化したAIRを、5m
.ncbi.nlm.nih.gov/)、HarvEST(http://harve
LのNaPO4 緩衝液に再懸濁し、これに、100μl 50
st.ucr.edu/)、GrainGenes(http://wheat.
Cel
website、NCBI(http://www
( 35 )
JP
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70
pw.usda.gov/GG2/index.shtml)、Barley
ne
5759176
Ge
とによって変性させ、次いで、中和溶液(1.5M
Index(http://compbio.dfci.harvard.edu/
tgi/plant.html)およびBarley
aCl、0.5M
Base(www.
mM
Tris−HCl
N
pH7.2、1
EDTA)に浸したろ紙上に置くことによって中
barleybase.org)を含む、公共のデータベースに照会
和した。次いで、膜を、2×SSC、0.1%SDSで
することにより得た。配列を、Sequencer(商
3回洗浄し、標準的条件(Sambrook et al., Molecular
標)3.0(GeneCodes)またはVector
(登録商標)Advance
NTI
cloning: a laboratory manual, Cold Spring Harbour
9.1.0(Invitrogen
Laboratory Press, New York, 1989)を使用してハイ
)のモジュールであるContigExpressのい
ブリダイズを行った。
ずれかを使用して、コンティグに組み立てた。DNAま
【0227】
たはタンパク質の配列を、ClustalX(Thompson 10
BAC
et al., Nucl Acids Res 24: 4876-4882, 1997)を使用
陽性クローンを、25μg/mlクロラムフェニコール
してアライメントした。系統発生学的分析を、固有近隣
を含有するLBブロス中で、37℃において一晩培養し
結合アルゴリズムを使用して実施し、ツリーのロバスト
た。細胞を、遠心分離(12,000×g、3分)によ
性は、1000回のブートストラップ反復を使用して評
ってペレット化し、このペレットを90μLのTES緩
価した。配列類似性を、MatGat
衝液(25mM
2.02(http
DNAの単離
Tris−HCl
pH8.0、10
://bitincka.com/ledion/matgat/)(Campanella et al
mM
., BMC Bioinformatics 4: 29, 2003)を使用して計算
た。溶解溶液(0.2M
した。膜貫通ドメインは、ARAMEMNON(http:/
リコート(180μL)を加え、ゆっくりと混合し、そ
/aramemnon.botanik.uni-koeln.de)(Schwacke et al.
の後135μLの3M
, Plant Physiol 131: 16-26, 2003)に記載の一連のプ 20
た。染色体DNAを遠心分離(12,000×g、15
ログラムを使用して予測した。翻訳後修飾を予測するモ
分)によってペレット化した。S/Nを回収し、2μL
チーフは、Toolsメニュー(http://www.expasy.or
のRNase
g/tools/#pattern)のExPasyに記載のプログラム
おいて1時間インキュベートした。Tris飽和フェノ
を使用して同定した。タンパク質パラメーターは、Ex
ール−クロロホルム(比1:1)の400μLのアリコ
Pasy(http://www.expasy.org/cgi-bin/protparam
ートを加え、試料を再度遠心分離にかけた(12,00
)のProtParamを使用して計算した。
0×g、5分)。S/Nを回収し、BAC
【0226】
2∼3倍の冷却95%エタノールを使用して、室温で1
オオムギBACスクリーニング
0分かけて沈殿させた。BACDNAを、遠心分離(1
非Yd2
5,000×g、15分)によりペレット化し、70%
品種モレックス(Clemson University Genom
ics Institute, CUGI)由来のオオムギゲノムの6.5
30
EDTA、15%w/vスクロース)に再懸濁し
NaOH、1%SDS)のア
NaOAc
A(10mg/mL)を加え、37℃に
、4℃において保存した。
イゼーション溶液(0.53M
【0228】
H7.2、7.5%w/v
SDS、1mM
p
EDTA
DNAを、
エタノールで洗浄し、20∼50μLのTEに再懸濁し
等価体を含有するBACフィルターを、プレハイブリダ
NaPO4緩衝液
pH4.6を加え
ゲノムウォーキング
、11μg/mlサケ精子DNA)中で、65℃におい
Siebert et al.(Nucl Acids Res 23: 1087-1088, 1995
て6時間ブロッキングした。プライマーH1F1および
)のアダプターライゲーション法を使用して、公知のC
H1R1またはH1R5(表3)を用いて増幅した、放
SLH
射性標識cDNAおよびgDNA断片を加え、65℃に
た。オオムギゲノムDNAを消化するために使用した制
おいて、24時間インキュベートした。フィルターを、
限酵素は、EcoRV、NruI、PvuII、Sca
2×SSC、0.1%SDSで、室温で3回洗浄した。
IまたはSspIであった。一次PCR反応を、2μL
最終の洗浄を、1×SSC、0.1%SDSを用いて実 40
のライゲートDNA(1:10希釈)、1×PCR緩衝
施した。フィルターを、X線フィルムに2dで撮影した
液、2mM
。陽性BACクローンを同定し、CUGIウェブサイト
およびアンチセンスプライマーH1R7各100ng(
(http://www.genome.clemson.edu)に支持されたよう
表3)、0.4mM
に整理した。クローンを、25μg/mlクロラムフェ
ポリメラーゼ(Invitrogen)を含有する25μL量で実
ニコールを含有するLB寒天上に画線し、37℃におい
施した。
て一晩増殖させた。各クローンのコロニーを採取し、2
サイクルパラメーターは、下記のとおりであった:96
5μg/mlクロラムフェニコールを含有するLB寒天
℃2分、次いで94℃30秒間、59℃30秒間、72
上に載せた、グリッドの付いたナイロン膜に置き、37
℃1分間を40サイクル、および最終ステップ72℃で
℃で一晩インキュベートした。DNAを、膜上に固定し
7分間。二次PCR反応を、1μLの一次PCR産物を
、0.4M
用いて、アダプタープライマーAP2およびネスティッ
NaOHに浸したろ紙上に20分間置くこ 50
EST配列の上流のゲノムDNA断片を増幅し
MgCl2 、アダプタープライマーAP1
dNTPならびに1単位のTaq
( 36 )
JP
71
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72
ドプライマーH1R6各100ngを使用して実施した
えた。プレートを、4℃の低温室に3∼5日置き、同時
。反応組成およびサイクルパラメーターは、アニーリン
に発芽させた。次いで、低温湿性処理プレートを、昼と
グ温度に61℃を使用した以外は上記と同じであった。
夜の温度がそれぞれ23℃および17℃の環境制御成長
【0229】
キャビネット(Thermoline L+MモデルTPG1260 TO-5x400
BACの配列決定
、Smithfield、NSW、Australia)に移した。ロゼット葉
配列決定のために、0.5から1μgの単離BAC
D
における平均光強度レベルは、16時間の明サイクルで
NAを、5pmolのプライマーおよび1×Big
D
、三足蛍光灯(Sylvania Standard F30W/133-T8 Cool W
ye
Terminator
v3.1(BDT)ミッ
hite)により供給された、約70μE
−
m
2
−
S
1
で
クス(Applied Biosystems, USA)と、最終容量20μ
あった。MSプレート上で3週間後、個々の苗を、水和
Lで混合した。サイクルパラメーターは、下記のとおり 10
させた直径42mmのJiffyペレットに移した。ト
であった:96℃15分、次いで96℃10秒間、55
レイに6つのペレットを9列並べ、3つのトレイを個々
℃10秒間および60℃4分間を65サイクル。DNA
に2×3.5フィート金網台の棚に置き育てた。相対湿
を、0.1容量の3M
度を測定し、60から70%の間にした。植物に、地下
NaOAc
pH5.2および
2.5容量の95%エタノールを用いて氷上で10分間
灌漑によって2∼3日ごとに、Peter’s
沈殿させ、次いで12,000×gで30分回転させる
fessional(商標)GeneralPurpo
ことによってペレット化した。ペレットを70%エタノ
se植物用肥料(Scotts Australia)を補給した水道水
ールですすぎ、乾燥させ、配列決定のためにAGRF(
を与えた。
Brisbane, Australia)に送付した。
【0232】
【0230】
シロイヌナズナトランスジェニック植物のゲノムDNA
HvCslH1のマッピング
20
遺伝子マッピングを、60系統のSloop×Halc
Pro
の抽出およびPCR分析
DNAを、単一のシロイヌナズナの葉から、Edwards et
yonの倍加半数体(DH)マッピング集団を使用して
al.(Nucl Acids Res 19: 1349, 1991)に記載の方法
実施した(Read et al., Aust J Agric Res 54: 1145-1
に従って抽出した。ゲノムDNAの1μLアリコートを
153, 2003)。DNAブロットハイブリダイゼーション
、プライマーH1F2およびHvCslH1TOPOr
(Sambrook et al.,1989、上記)の標準的方法を使用し
(表3)を使用する、下記のサイクリング計画:94℃
て、プライマーH1F1およびH1R5(表3)を使用
2分、その後94℃20秒、57℃30秒、72℃30
してPCR増幅したHvCslH1プローブを、6種の
秒を35サイクルで、トランスジェニック植物のPCR
制限酵素(BamHI、DraI、EcoRI、Eco
スクリーニングにおいて鋳型として使用した。
RV、HindIII、XbaI)の1種を用いて消化
【実施例7】
した、親系統のゲノムDNAを含有する膜とハイブリダ 30
【0233】
イズさせた。次いで、二遺伝子ハイブリッド集団を、明
コメおよびオオムギ由来のCslH
らかな多型をもたらす酵素(DraI)を用いて消化し
ノ酸配列のアライメント
た。多型をスコア化し、HvCslH1マップの位置を
コメおよびオオムギ双方におけるCslH配列に関する
、MapManager
QTバージョン0.30(Ma
DNAおよびアミノ酸配列のアライメントを実施し、配
nly et al., Mamm genome 12: 930-932, 2001)の「fin
列間の同一性および類似性のパーセントを計算し、その
d best location」機能を使用して決定した。マップの
結果を図10に示す。DNAおよびタンパク質配列をア
位置は、http://www.barleyworld.org/において利用可
ライメントし、http://bitincka.com/ledion/matgat/か
能な供給源を使用したQTLデータと相関した。
らダウンロードしたMatGATバージョン2.02に
【0231】
シロイヌナズナの成長条件
DNAおよびアミ
おけるデフォルトパラメーターを使用して比較した。
40
【0234】
シロイヌナズナの種子を、滅菌溶液(次亜塩素酸ナトリ
マルチプル配列アライメントおよび系統樹作成を、Thom
ウム(有効塩素2%)、Tween−20数滴)中で1
pson et al.(Nucl Acids Res 25: 4876-4882,1997)に
5分間表面滅菌し、次いで滅菌MilliQ水で4回す
より記載されたClustalXプログラムを使用して
すいだ。
実施した。タンパク質のアライメントおよび結果として
表面滅菌種子を、50mLの滅菌1×MS培地(4.3
の系統樹を、それぞれ図11および12に示す。
3g/L
MurashigeおよびSkoogの基礎
【実施例8】
塩類(Phytotechnology Laboratories)、2%w/vス
【0235】
クロース、1%w/vバクトアガー)を含有する85×
HvCslH1およびOsCSLF2トランスジェニッ
25mmのペトリ皿に広げた。形質転換体の選択のため
クシロイヌナズナ系統の異種交配
に、50mg/Lのカナマイシン(Sigma)を培地に加
50
タグ付加HvCslH1タンパク質が抗HA抗体を使用
( 37 )
JP
73
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74
して検出された、2種のトランスジェニックシロイヌナ
333bpのコンセンサス配列を、図16に示す。75
ズナ系統15−8および15−11を、OsCslF2
1アミノ酸(配列番号70)の単一の長いオープンリー
、H37およびH17−4を含む他の2種のトランスジ
ディングフレームが存在する。
ェニックシロイヌナズナ系統と、Burton et al.(Scien
【0240】
ce 311: 1940-1942, 2006)により記載されたように、
オリゴヌクレオチドプライマーSJ91およびSJ85
遺伝的に異種交配させるために選択した。HvCslH
を、コンセンサス配列の5’および3’末端から設計し
1およびOsCSLF2タンパク質を同じ細胞型の中に
、これらを使用して、図17においてHvCslH1g
発現することによって、単一遺伝子(CSLHまたはC
Him(配列番号71)と称するゲノムDNAから32
SLFだけ)トランスジェニックシロイヌナズナ植物に
03bpのDNA断片を増幅した。
おいて観察されるレベルより高いレベルの(1,3;1 10
【0241】
,4)−β−D−グルカンが細胞壁中に堆積される可能
オオムギcDNA配列およびゲノム配列のアライメント
性があると考えられた。さらに、このことは、免疫電子
により、CslH遺伝子が、コンセンサスGT..AG
顕微鏡研究および化学的細胞壁分析において、(1,3
スプライスドナー/アクセプター部位に、個々に隣接す
;1,4)−β−D−グルカン検出の助けになるはずで
る8個の小型(およそ100bp)のイントロンを有す
ある。
ることが示された(図17)。
【0236】
【0242】
親系統の4種すべてが、それらの細胞壁に(1,3;1
CslH1のコムギホモログを、TIGRデータベース
,4)−β−D−グルカンを含有することを、免疫電子
においてTC255929と同定した。ESTのCJ6
顕微鏡法により確認した(図13)。4種の集団それぞ
14392、CJ609729およびCJ721204
れに由来する個体を、雌雄の親として使用した。雌親( 20
により例示されるように、配列の3つのクラスにより、
例えば、個体H37−5)の花はおしべの葯が裂開する
この仮想コンセンサスが構成された。PCRプライマー
前におしべを取り去り、雄親(例えば、個体15−8−
を、ATG開始コドンの周囲のオオムギ配列(SJ16
3)の裂開したおしべを使用して受粉した。個々の異種
3)および3’末端における3種のEST型すべてのコ
交配した花を標識し、得られた種子の鞘を脱水して回収
ンセンサス配列(SJ164)から設計し、コムギ栽培
した。
品種チャイニーズ・スプリング由来の全長ゲノム断片を
【0237】
増幅するために使用した。2種の配列型を同定し、Ta
個々の異種交配子孫を土に撒き、鋳型として葉のゲノム
CslH1−1(配列番号78)およびTaCslH1
DNAならびにHvCslH1特異的プライマーおよび
−2(配列番号79)と名付けた。
、別の反応において、OsCslF2特異的プライマー
【0243】
を使用するPCRによりそれらの遺伝子型を決定した。 30
TaCslH1−3(配列番号80)と称する第3のホ
成葉を固定し、包埋し、切片にし、(1,3;1,4)
モログを、材料および方法においてより詳細に記載した
−β−D−グルカンモノクローナル抗体を用いて標識し
、プライマーSJ204およびSJ164を使用して単
た。図14に観察されるように、多くの子孫が、親系統
離した。
より非常に高いレベルの標識を有することが見出された
【0244】
。例えば、パネルDに示す個体の表皮細胞中の標識は、
オオムギ配列との比較により、イントロン−エクソン接
その15−8−3×H37−7の親と比較して非常に多
合部が、3種の遺伝子すべてにおいて保存されているこ
い(図13)。同じ遺伝子型の同胞(図14、パネルC
とが示された(図17)。3種のコムギ遺伝子は、94
)は、表皮細胞壁の標識のレベルが一貫して低いことを
.8∼96.1%同一である。
示した。
【実施例9】
【0245】
40
3種のコムギCslH1遺伝子の推定コード領域の配列
【0238】
(配列番号72、配列番号73および配列番号74)は
オオムギ栽培品種ヒマラヤおよびコムギ由来のCslH
、それぞれ、752アミノ酸のポリペプチド(配列番号
cDNAおよびゲノム配列のクローニング
75、配列番号76および配列番号77)をコードする
CslH1遺伝子の全長cDNA配列を、オオムギ栽培
。
品種ヒマラヤから、オオムギEST配列、コメCslH
【0246】
1遺伝子配列(LOC_Os10g20090)に基づ
オオムギおよびコムギのCSLH1遺伝子のDNAコー
くプライマーを使用するcDNAからのPCR、および
ド配列およびアミノ酸配列を、muscleアライメン
5’RACEの組み合わせを使用して単離した。
トプログラムを使用してアライメントし、同一性および
【0239】
類似性のパーセントを、PAM250マトリックスを使
HvCslH1(Him)(配列番号69)と称する2 50
用して計算した。同一性および類似性のパーセントを示
( 38 )
JP
75
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76
す表を、図27に示す。
。RNAを、開花約15日後に成長中の穀粒から単離し
【0247】
、cDNAを、Superscript
図27に示すように、コムギタンパク質は、互いに約9
して調製した。その後、オオムギトランスジーンの発現
4∼95.0%の同一性を有し、オオムギタンパク質と
を、リアルタイムPCRにより分析した。使用したプラ
約92.6∼93.1%の同一性を有する。
イマーは、コムギおよびオオムギの遺伝子双方を増幅す
【実施例10】
るので、表5は、内在性のコムギCslH遺伝子と比較
【0248】
した相対的発現レベルを示す。
オオムギおよびコムギにおけるCslH遺伝子の発現
【表5】
IIIを使用
CslH1遺伝子の発現を、半定量的(RT−PCRお
よびゲル電気泳動)と定量的(リアルタイムPCR)法 10
により調査した。
【0249】
βグルカンのレベルは、子葉鞘の成長に伴い増加し、そ
の後成長の停止後に減少するので、子葉鞘は、βグルカ
ンの生合成に関する遺伝子の発現を調べるために良好な
組織である。CslH1遺伝子は、成長の停止後にだけ
最大の発現を示し、最も古い組織(6∼8日齢、図19
A/Bに示すように)において高い。
【0254】
【0250】
大部分の系統が、対照より数百倍高いレベルでオオムギ
他の組織もまた調べた。成長中の葉において、CslH 20
CslH遺伝子を発現し、9、10、12および14系
1遺伝子は、葉の頂点の最も古い組織において示差的お
統は最も高い発現を示した(1000倍を超えて高い)
よび最大発現を示す(図20)。これらの結果から、C
。
slH1遺伝子は、分裂および伸長を停止し、したがっ
【0255】
て分化する細胞において、選択的に(しかし排他的では
成熟時に、単一穀粒のβグルカン含有量に関して分析し
ない)発現すると思われる。成熟胚乳中の細胞は、成長
、結果の要約を表6に示す。
の同様の段階にある、すなわち、細胞分裂が停止し、細
【表6】
胞の拡大が緩慢になり、細胞が特殊化したデンプン保存
柔組織に分化する。
【0251】
オオムギ胚乳組織において、CslH1遺伝子発現は、 30
開花後4日ほどでピークを迎え、その後、後期の間に増
加し、28日目で最大に達する(図21)。
【0252】
コムギにおいてCslH1遺伝子発現には大きな差があ
り、開花後4日目で発現はピークを迎え、その後は非常
に低い。これらの結果をリアルタイムPCRにより確認
し、開花後28日目において、CslH遺伝子の発現が
、オオムギにおいてコムギより約10倍高いことが示さ
【0256】
れた(図22)。
【実施例11】
PCR陰性系統はすべて、平均すると穀粒重量の0.6
40
9%の、最も低いβ−グルカン含有量を有し、一方、P
【0253】
CR陽性系統由来の穀粒は、0.97%の高い平均β−
コムギ穀粒におけるオオムギCslH遺伝子の過剰発現
グルカン含有量を有した。表6の最後の列は、所与の系
トランスジェニックコムギ植物を、バイオリスティック
統由来の任意の単一穀粒の最大β−グルカン含有量を示
形質転換により、発現が胚乳組織においてのみ起こるよ
し、最も高いPCR陰性系統は1.0%(大部分の穀粒
うにグルテニンプロモーターの制御下で全長ゲノムHv
はこれより非常に低い)であるが、いくつかのPCR陽
CslH1(品種ヒマラヤ)遺伝子により作出させた(
性系統は有意に高いβ−グルカンレベルの穀粒を有し、
図23)。系統を、トランスジーンの有無に関して、若
9系統および10系統(最も発現が高い)は、最大1.
葉材料のPCRによりスクリーニングした。12種のP
9%のβ−グルカンを含む穀粒を有する。β−グルカン
CR陽性系統および3種のPCR陰性系統(H1−2、
のこれらのレベルは、以前はコムギでは見られなかった
−7および11)を、成熟まで温室において成長させた 50
。
( 39 )
JP
77
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【0257】
【0261】
これらのT0植物の先端は、トランスジーンについて分
DNA、RNAの単離およびcDNAの合成
離するT1種子を含有する。DNAを単一の遺伝子座に
植物DNAを、十分に膨張した葉の組織から、CTAB
挿入した場合、3種のトランスジェニック対1種の野生
に基づく方法(Murray and Thompson, Nucleic Acids R
型種子の比が観察されるはずである。図25は、H1ト
es. 8: 4321-4325, 1980)を使用して単離した。総RN
ランスジェニック10系統由来の個々のT1種子のβ−
Aを、葉および子葉鞘の組織から、Qiagen社のR
グルカンレベルを示し、これにより、およそ3/4(4
NAeasyキットを使用して単離した。
7/61)が、PCR陰性系統の平均(0.7%)より
RNAを、成長中の胚乳からフェノールSDS法および
高いβ−グルカンレベルを有することを見出すことがで
LiCl沈殿(Clarke et al., Functional and Integr
きる。最も高いβ−グルカンレベル(1.9%)と平均 10
ative Genomics 8, 211-221, 2007)を使用して単離し
PCR陰性レベル(0.7%)との比から、β−グルカ
た。RNAは、DNAseを用いて、Ambion社の「DN
ン含有量の増加は、野生型コムギ穀粒で通常見られる量
Aフリー」キットを使用して処理し、次いでcDNAを
の2.7倍である。さらに重要な観察結果は、穀粒の多
、SuperscriptlII逆転写酵素を使用して
くの割合が、少なくとも1.4%のβグルカンを有する
、製造業者(Clontech)の指示書に従って合成した。
ことである。
【0262】
【0258】
CslH遺伝子のクローニング
系統がホモ接合性になり、遺伝子量が増加した場合、こ
CslH遺伝子をクローニングする方法は、CslF遺
れらの穀粒においてβ−グルカンのさらなる増加が見ら
伝子のクローニングおよび特性決定において記載された
れることが予想される。
方法と同様であった(Burton et al., Plant Physiol 1
【実施例12】
20
46: 1821-1833, 2008)。コメセルロースシンターゼ様
【0259】
H1遺伝子(LOC_Os10g20090)のオオム
実施例9から11までの材料および方法
ギホモログの1.8kb仮想コンセンサス配列(TC1
植物材料
40327)を、TIGRデータベースにおいて同定し
オオムギ(Hordeum vulgare)栽培品種ヒマラヤおよび
た。PCRプライマー対(SJ27−SJ73およびS
コムギ(Triticum aestivum)栽培品種チャイニーズ・
J72−SJ75)を、コメCslH1配列に基づいて
スプリング、ウェストニア(Westonia)およびボブホワ
設計し、これらを用いてcDNA由来の配列を増幅した
イト(Bob White26)を、標準的温室条件下で成長させ
。次いで、遺伝子の5’末端を5’RACEにより、S
た。
MARTcDNAライブラリと、ネステッドCslH1
【0260】
プライマーSJ28およびSJ79を使用して、製造業
プライマー配列
30
者(Clontech)の指示書に従って増幅した。
実施例9から11まで、および本実施例において参照す
【0263】
るプライマー配列を、下記の表7に示す:
全長ゲノムクローンを、プライマーSJ91およびSJ
【表7】
85ならびにPhusion
Taqポリメラーゼ(Fi
nnzymes)を用いて、製造業者の推奨するサイクリング
条件(変性98℃30秒、その後、98℃5秒、63℃
7秒および72℃3分を35サイクル)に従って増幅す
ることによって単離し、pCRBluntII
TOP
Oクローニングベクター(Invitrogen)にクローニング
した。
40
【0264】
コムギCslHゲノムクローンを、PCRによって、P
husionポリメラーゼを用いて、栽培品種チャイニ
ーズ・スプリングからプライマーSJ163およびSJ
164を使用して70℃のアニーリング温度で単離した
。ゲノムウォーキングキットを、製造業者(Clontech)
の指示書に従って使用し、さまざまなボブホワイト(デ
ータ非掲載)から、3種のコムギCslHホモログすべ
てのコード領域の上流に伸長する配列を得た。第3のホ
モログに特異的なプライマー(SJ204)を設計し、
50
SJ164とともに使用して第3の全長単離ゲノムクロ
( 40 )
JP
79
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80
ーンを単離した。予測エクソン/イントロン境界が、配
番号71)を、プライマーSJ91およびSJ85を使
列決定cDNA断片により正しくスプライシングされ得
用して増幅し、高分子量グルテニンBx17プロモータ
ることを確認した(データ非掲載)。
ーの1.9kb断片とノパリンシンターゼターミネータ
【0265】
ーの間に、EcoRI断片として挿入した(図23)。
RT−PCRによるコムギおよびオオムギ中のCslH
Bx17プロモーターは、成長中の胚乳において高レベ
遺伝子の発現分析
ルの発現をもたらす(Reddy and Appels, Theor Appl G
総RNAを、7日齢の植物の第1葉、さまざまな年齢の
enet 85: 616-624, 1993)。
濃い色の成長した子葉鞘および開花後4日(DPA)間
【0268】
隔をあけて回収した成長中の穀粒の切片から単離し、D
ボブホワイト26コムギ植物を、バイオリスティック法
NAse処理し、Superscript
(Pellegrineschi et al., Genome 45: 421-430, 2002
IIIを用 10
いて製造業者(Invitrogen)の指示書に従って逆転写し
)を使用して、50mg/L
た。PCR反応を、HotStarTaq(Qiagen)を
て用い形質転換させた。HvCslH発現ベクター(p
使用して実施した。
ZLBx17HvgH1)とNPTII選択可能なマー
cDNAを希釈し、1μl当たり1ngの元のRNAと
カー(pCMSTLSneo、図24)の発現を駆動す
等量のレベルでPCR反応に使用した。半定量的RT−
るCaMV
PCRのためにはCslH1プライマーSJ72および
ミドとを等モル量で混合し、未熟胚に同時に撃ち込んだ
SJ74、CslF遺伝子のためのプライマー対は下記
。
のとおりであった;(CslF6;SJ107−SJ8
【0269】
2)、(CslF4;SJ94−SJ95)、(Csl
トランスジェニック植物を、トランスジーンの存在に関
F9;SJ97−SJ93)、(CslF3;SJ44 20
して、若葉組織およびSigma社のRedExtract
−SJ38)、(CslF8;SJ96−SJ37)。
nAmp(商標)キットを使用して、プライマーSJ2
アニーリング温度は59℃を使用した。試験増幅を実施
44およびSJ79を用いてスクリーニングした。
して、増幅が飽和(チューブリンの24サイクルを除き
【0270】
、およそ32∼35サイクル)でなかったことを確実に
開花(葯の出現および花粉の脱落)において、先端をタ
し、産物を、アガロースゲル電気泳動後の臭化エチジウ
グ付加し、穀粒をおよそ15dpaにおいて試料採取可
ム染色によって分析した。リアルタイムPCRを3連の
能にした。先端由来の3種の穀粒をプールし、RNAを
試料について、Rotorgene6000装置(Corb
抽出し、逆転写し、トランスジーンの発現レベルを、リ
ett Life Sciences, AU)においてHotStarTa
アルタイムPCRによりプライマーSJ183およびS
q(Qiagen)、SybrGreenならびにプライマー
J85を使用して分析した。発現レベルを、α−チュー
SJ183およびSJ164ならびにアニーリング温度 30
ブリン(プライマーTUBおよびTUB2F)に対して
60℃を使用して実施した。相対的発現レベルを、コム
正規化し、最終的に最も低い発現体と比較した比で表し
ギ0dpa試料を比較因子(1に設定)として用いて、
た。
装置のソフトウェアを使用して計算した。この試料のC
【0271】
t値は25.5サイクルであった。15dpaにおける
成熟単一穀粒由来の粉を、β−グルカン含有量に関して
トランスジェニック穀粒の分析のために、相対的発現値
、リケナーゼ酵素法(AACC Method 32-33, Megazyme as
を、チューブリンに対して正規化し、最も低い発現系統
say kit, McCleary and Glennie-Holmes, J. Inst Brew
(H1−13)と比較した。
ing 91: 285-295, 1985)の小規模バージョンを使用し
【0266】
て分析した。β−グルカン含有量を、粉砕全粒粉のパー
Q−PCRによるオオムギ中のCslH遺伝子の発現分
析
G418を選択試薬とし
35Sプロモーターを有する第2のプラス
セント(w/w)として表した。
40
【実施例13】
HvCslH1転写産物を、発芽後0.5から7日の成
【0272】
長中の子葉鞘において測定した。HvCslH1転写産
オオムギ品種ゴールデンプロミス(Golden Promise)中
物は、伸長段階の完了および葉の出現後にだけ蓄積され
のオオムギCslH遺伝子の過剰発現
ることが示された。発現の最も高いレベルは、子葉鞘が
オオムギCslH
老化(ねじれおよび収縮)する7日後に見られた(Gibe
ド領域を、2種のGateway可能なオオムギ形質転
aut et al., Planta 221:729-738, 2005)。
換ベクターに移した。ベクターpRB474は、胚乳特
【0267】
異的発現を提供するオートムギグロブリンプロモーター
胚乳においてオオムギCslH遺伝子を過剰発現するト
を含有し(Vickers et al., Plant Mol Biol 62: 195-2
ランスジェニックコムギ植物の作製
14, 2006)、ベクターpMDC32(Curtis and Gross
全長オオムギ品種ヒマラヤのゲノムCslH配列(配列 50
niklaus, Plant Physiol. 133: 462-9, 2003)は、すべ
cDNA(配列番号1)の全長コー
( 41 )
JP
81
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82
ての植物組織において構成的発現を駆動する二重35S
量を穀粒重量のパーセントとして、下記の表8に示す。
プロモーターを含有する。
【表8】
【0273】
オオムギの形質転換
ベクターを、アグロバクテリウム・ツメファシエンスに
移し、オオムギ栽培品種ゴールデンプロミスの未熟胚盤
を、確立されたプロトコルを使用して形質転換し、トラ
ンスジェニック植物の2種の集団を作製した。トランス
ジーンの挿入は、サザンブロッティングにより確認した
。植物236−1から236−18は、オートムギグロ 10
ブリンプロモーターにより駆動されるオオムギCslH
遺伝子を含有する。植物237−1および2は、35S
プロモーターにより駆動されるオオムギCslH遺伝子
を含有する。植物208−2、−3、−5および−7は
対照植物であり、オートムギグロブリンプロモーターの
みを有する空ベクターpRB474についてトランスジ
【0277】
ェニックである。
空ベクター対照系統(208)は、およそ4%の(1,
【0274】
3;1,4)−β−D−グルカン含有量を有し、これは
転写産物の分析
野生型ゴールデンプロミス穀粒では典型的である。T1
葉および受粉後7および14日(DAP)の成長中の穀 20
穀粒をバルク化した(したがって、ヌル分離穀粒(null
粒の試料を、236種の植物から回収した。総RNAを
-segregant grain)を含有する)にもかかわらず、有意
、TRIzol試薬(Invitrogen)を使用して、標準的
な数のトランスジェニック系統(網掛け部分)が対照よ
プロトコルに従って抽出し、cDNAを、Burton et al
り高い総(1,3;1,4)−β−D−グルカン含有量
.(Plant Physiol 146: 1821-1833, 2008)に従って合
を示し、最も高い値は5.9%であった。
成した。定量的リアルタイムPCR(QPCR)を、Bu
【0278】
rton et al.(2008、上記)に従って実施した。Csl
当業者であれば、本明細書に記述されている本発明が、
H遺伝子の転写産物レベルを、トランスジェニック穀粒
具体的に記述されているもの以外の変形および変更を許
の胚乳において、一般的に非常に低い野生型胚乳レベル
容することを理解するであろう。本発明はそのような全
と比較した。
ての変形および変更を含むと理解されるべきである。本
【0275】
30
発明は同様に、個別的にまたは集合的に、本明細書にお
図26に示すように、空ベクター対照系統(208)は
いて述べられ、または示されているステップ、特徴、組
、CslH転写産物の典型的な野生型のレベルを有する
成物および化合物の全て、ならびに該ステップまたは特
。トランスジェニック系統(236)は、7日目(7D
徴のいずれか2つ以上の任意のおよび全ての組合せを含
)においてHvCslH1
む。
mRNAレベルの有意な増
加を示し、受粉後14日目(14D)においてさらに増
【0279】
加する。
同様に、本明細書において用いられる単数形の「1つの
【0276】
(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、
β−グルカンの分析
文脈上既に特段の指示がないかぎり、複数の態様を含む
トランスジェニック植物由来のT1種子を回収した。個
ことに留意しなければならない。すなわち、例えば、「
々の個体植物由来のバルクT1穀粒の試料を粉砕して粉 40
トランスジーン(a transgene)」への言及は、単一の
にし、存在するβ−グルカンの量を、Megazyme
トランスジーンだけでなく2以上のトランスジーンを含
法(上記)を使用して分析した。個々の植物からのデー
み、「植物細胞(aplant cell)」は単一の細胞だけでな
タを、2回の再現の平均値として表し、β−グルカンの
く2以上の細胞を含むなどである。
( 42 )
【図1】
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【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
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( 43 )
【図6】
JP
【図8】
【図9】
【図7】
【図10】
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( 44 )
【図11−1】
JP
【図12】
【図11−2】
【図13】
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B2
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( 45 )
【図14】
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【図16−1】
【図16−2】
【図15】
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( 46 )
【図16−3】
JP
【図17−2】
【図17−3】
【図17−1】
5759176
B2
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( 47 )
【図17−4】
JP
【図17−6】
【図18−1】
【図17−5】
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2015.8.5
( 48 )
【図18−2】
JP
【図20】
【図21】
【図22】
【図19】
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2015.8.5
( 49 )
JP
【図23】
【図25】
【図24】
【図26】
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( 50 )
【図27】
JP
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( 51 )
【配列表】
0005759176000001.app
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.
FI
C12N
9/10
(2006.01)
C12N
9/10
C12P
21/08
(2006.01)
C12P
21/08
(73)特許権者
508034912
グレインズ
(74)代理人
.オー.ボックス
5367
平木
祐輔
藤田
節
新井
栄一
100111741
田中
夏夫
ダブリン,モニカ,スザンヌ
オーストラリア国
(72)発明者
ウッド
ラス
スミス
(56)参考文献
9
3073
ヴィクトリア,レザーヴァー,ホッブス
クレセント
1/15
3084
ヴィクトリア,イーグルモント,モスマン
ドライブ
4
2913
ストリート
オーストラリアン
キャピタル
テリトリー,ニコルズ,フリート
18
5066
サウス
オーストラリア,ヘーゼルウッド
パーク,ハワード
テ
48
バートン,レイチェル,アニータ
オーストラリア国
審査官
ストリート
フィンチャー,ジェフリー,ブルース
オーストラリア国
(72)発明者
ポンズ,ラトローブ
ジョブリング,ステファン,アラン
オーストラリア国
(72)発明者
ヴィクトリア,ムーニー
ベイシック,アントニー
オーストラリア国
(72)発明者
3039
ペットリノ,フィロメナ,アンジェラ
オーストラリア国
(72)発明者
テリトリー,キングストン,ピー
100122389
弁理士
(72)発明者
コーポレーション
キャピタル
100118773
弁理士
(74)代理人
ディベロップメント
オーストラリアン
100091096
弁理士
(74)代理人
アンド
2064
弁理士
(74)代理人
リサーチ
オーストラリア国
5041
サウス
オーストラリア,パノラマ,パノラマ
ドライブ
7
鶴 剛史
米国特許出願公開第2006/0143729(US,A1)
米国特許出願公開第2007/0192907(US,A1)
HUNTER,C.T. et al.,Analuses of Mu-induced knockout mutations in cell wall biosyntheti
c genes of maize identified through reverse genetics.,Plant Biology 2005, Meeting of
the American Society of Plant Biologists,2005年
7月16日,Abs # 420,pp.177,
URL,http://abstracts.aspb.org/pb2005/public/P49/8025.html
LIEPMAN,A.H. et al.,Expression of cellulose synthase-like (Csl) genes in insect cells
reveals that CslA family members encode mannan synthases.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA
,2005年
2月
8日,Vol.102, No.6,pp.2221-6
BURTON,R.A. et al.,Cellulose synthase-like CslF genes mediate the synthesis of cell w
all (1,3;1,4)-beta-D-glucans.,Science,2006年
3月31日,Vol.311, No.5769,pp.1
940-2
HAZEN,S.P. et al.,Cellulose synthase-like genes of rice.,Plant Physiol.,2002年
2月,Vol.128, No.2,pp.336-40
( 53 )
JP
5759176
B2
2015.8.5
DOBLIN,M.S. et al.,A barley cellulose synthase-like CSLH gene mediates (1,3;1,4)-beta
-D-glucan synthesis in transgenic Arabidopsis.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,2009年
4月
7日,Vol.106, No.14,pp.5996-6001
RICHMOND,T.A. AND SOMERVILLE,C.R.,The cellulose synthase superfamily.,Plant Physiol.
,2000年10月,Vol.124, No.2,pp.495-8
(58)調査した分野(Int.Cl.,DB名)
C12N
5/10
A01H
5/00
C12N
15/09
A23L
1/10
C12N
9/10
C12P
19/04
C12P
21/08
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
Thomson
Innovation
Fly UP