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老人性振戦(本態性振戦)
ROCKY NOTE http://rockymuku.sakura.ne.jp/ROCKYNOTE.html 老人性振戦(本態性振戦)の治療(090712) 70 代女性。数年前から頭の振戦があり、人前に出るのがイヤになっているという。無動/固縮無 し。姿勢/歩行障害無し。小字症無し。振戦で字が震えている。家族歴なし。緊張すると増悪すると いう。飲酒歴無し。姿勢時振戦がメインで、他のパーキンソン病の特徴が無いため、老人性振戦と 診断したが、治療について調べてみた。 基本的に、老人性振戦は本態性振戦と同じだが、発症が老年期の場合老人性振戦と呼ぶこと もある。診断に関しては「本態性振戦の診断」の項目も参照を。 http://rockymuku.sakura.ne.jp/sinnkeinaika/honntaiseisinnsennnosinndann.pdf 参考文献 1 は本態性振戦に関する一般向け情報だが、これくらいは一般の人も勉強しているこ ともあるのでポイントをまとめてみる。 □ パーキンソン病では安静時に振戦が生じるが、本態性振戦では動作時や姿勢保持に際して 振戦が出現する。 □ 老年期に発症する老人性振戦も、家族性振戦や本態性振戦と本質的には同じ部類に属す る。 □ ある一定の位置に姿勢を保持すると著しく増強するのが特徴的。 □ 他の振戦と同様に緊張すると強くなり、また運動や疲労によっても悪化。 □ 振戦は最初、上肢(手)に生じ、上肢に次いで頭部のふるえが加わる。(まれに頭部のふるえ が手より先に生じる。) □ 飲酒によりふるえが軽減する。 □ 下肢(足)のふるえは生じない。(下肢のみに本態性振戦とよく似たふるえが生じることがあり、 これを起立性振戦と呼ぶ。起立時にふるえが生じ、歩行中や座った時にはふるえは消失) □ 最もよく使われるのがβ遮断薬で、わが国では塩酸アロチノロールが保険適用。 □ クロナゼパムや抗てんかん薬のマイソリン、さらにアマンタジンも有効。 参考文献 2 には、老人性振戦の場合には坐位での頭部振戦が特徴的としている。本態性振戦 (老人性振戦)は姿勢時振戦をきたす代表的疾患であるが、その他姿勢時振戦をきたす疾患とし て以下のようなものが挙げられている。 1. 本態性振戦・家族性振戦 2. 老人性振戦 3. 甲状腺機能亢進症 ROCKY NOTE http://rockymuku.sakura.ne.jp/ROCKYNOTE.html ROCKY NOTE 4. 慢性アルコール中毒 5. 尿毒症 6. 透析脳症 7. ウィルソン病 8. 多発性硬化症 9. 中脳の血管障害・腫瘍の一部 http://rockymuku.sakura.ne.jp/ROCKYNOTE.html 10. 脊髄小脳変性症の一部 Dynamed では first-line therapies としてプロプラノロールとプリミドンが推奨されている。プロプラ ノロール以外のβブロッカーに関するエビデンスは限定的としている。日本では保険適用は無い ので使いにくいが、考慮すべき薬剤と思う。 □ propranolol (Inderal) 60-800 mg/day may improve clinical scores and self-reported severity □ propranolol LA (Inderal LA) 80-320 mg/day □ primidone (Mysoline) 50-1,000 mg/day appears effective for hand tremor in small trials 参考文献 5 は日本人における研究。本文を入手できなかったので抄録のみ参照した。少数のパ イロットスタディのようだが、日本で保険適用のある arotinolol(アルマール)の効果に言及している。 ZNS(エクセグラン)との比較だが、どちらも同等にベースラインと比較して振戦を減少させるとして いる。(参考程度) There was a significant improvement after ZNS and arotinolol administration compared with the baseline. There was no significant difference in the antitremor effect between ZNS and arotinolol; however, ZNS was more effective for tremors of cranial nerve areas. 参考文献 6 も抄録のみの確認。韓国の研究。この研究では propranolol と arotinolol が比較され ているが、arotinolol の方が有効と結論している。 RESULTS: Arotinolol was found to be as effective as propranolol at reducing tremor. Drug effects as evaluated using motor-task performance scores revealed that arotinolol had a more significant effect than propranolol. CONCLUSIONS: Arotinolol may be more useful than propranolol for the treatment of essential tremor. 以下は American Academy of Neurology で推奨されている経口薬の一覧。 ROCKY NOTE http://rockymuku.sakura.ne.jp/ROCKYNOTE.html ROCKY NOTE http://rockymuku.sakura.ne.jp/ROCKYNOTE.html (参考文献 4 より引用) 治療をするならまず、βブロッカーが良さそう。保険適用のことを考えると arotinolol ということに なるが、世界的には propranolol が最も信頼が厚い。もちろん、arotinolol の方が良いという研究も あるので、どちらからスタートしてみてもいいと思う。βが使いにくい場合には抗てんかん薬をまず 考慮するのが良さそう。 参考文献 ROCKY NOTE http://rockymuku.sakura.ne.jp/ROCKYNOTE.html ROCKY NOTE 1. http://rockymuku.sakura.ne.jp/ROCKYNOTE.html goo ヘルスケア 本態性振戦 http://health.yahoo.co.jp/katei/detail/index.html?sc=ST020240&dn=2 2. 有村公良.振戦の診断のポイント.Modern Physician, 27(1) : 9-16, 2007. 3. Essential tremor Dynamed Updated 2009 Jul 08 11:07 AM 4. Zesiewicz TA, Elble R, Louis ED, Hauser RA, Sullivan KL, Dewey RB Jr, Ondo WG, Gronseth GS, Weiner WJ; Quality Standards Subcommittee of the American Academy of Neurology.Neurology. Practice parameter: therapies for essential tremor: report of the Quality Standards Subcommittee of the American Academy of Neurology. 2005 Jun 28;64(12):2008-20. 5. 6. Morita S, Miwa H, Kondo T. Effect of zonisamide on essential tremor: a pilot crossover study in comparison with arotinolol. Parkinsonism Relat Disord. 2005 Mar;11(2):101-3. Lee KS, Kim JS, Kim JW, Lee WY, Jeon BS, Kim D. A multicenter randomized crossover multiple-dose comparison study of arotinolol and propranolol in essential tremor. Parkinsonism Relat Disord. 2003 Aug;9(6):341-7. ROCKY NOTE http://rockymuku.sakura.ne.jp/ROCKYNOTE.html