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クロロトリフルオロメタン

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クロロトリフルオロメタン
株式会社 東レリサーチセンター
クロロトリフルオロメタン
Chlorotrifluoromethane
別名:CFC-13
【対象物質の構造】
CAS 番号:75-72-9
分子式:CF3Cl
【物理化学的性状】
蒸気圧
水溶解度
log Pow
(kPa) (mg/L)
2852
90
1.65
CFC-13
104.5
-81.4
(25℃)
(25℃) (文献値)
* 化学物質データベース(国立環境研究所) http://w-chemdb.nies.go.jp/
物質名
分子量
沸点(℃)
【毒性、用途】
毒性情報:不明
用途
:冷媒、超低温冷却装置用冷媒、消火剤
280
§1 分析法
(1)分析法の概要
内面を不活性化処理したステンレス製試料採取容器(キャニスター)で大気試
料を捕集する。ガス濃縮装置に大気試料を 1 L 導入して冷却濃縮し、GC/MS-SIM
にて分析を行う方法を検討したが、現状では効率よく大気中のクロロトリフルオ
ロメタンを濃縮する方法がなく、分析法を確立できなかった。
(2)試薬・器具
【試薬】
クロロトリフルオロメタン
塩化ビニルモノマー-d3
塩化メチレン-d2
高純度空気
過塩素酸マグネシウム
アスカライト
:Sigma-Aldrich 社製
:Cambridge Isotope Lab. Inc
:Sigma-Aldrich 社製
:岩谷産業 ZERO-A
:関東化学製 化学用
:和光純薬工業社製 8-20 メッシュ
【試薬の安定性・毒性】
・ クロロトリフルオロメタンの安定性は高いと思われる。
・ 塩化メチレン-d2 は変異原性物質である。ヒトに対しては、皮膚または目に接
触すると炎症を引き起こす場合があることが知られている。蒸気を大量に吸
引すると麻酔作用を示し、中枢神経系を抑制する。慢性毒性として肝機能障
害が知られている。
【器具・装置】
1 L 真空瓶
ガスタイトサンプルロック
シリンジ 100 μL 及び 250 μL
保温チューブ
メタルベローズポンプ
マスフローコントローラー
キャニスター S-CAN 15 L
キャニスター加圧ユニット
シリンジ採取コネクター
加熱脱着装置
(オートサンプラー付)
加熱脱着装置
:GL サイエンス社製
:GL サイエンス社製
:GL サイエンス社製
:IBS 社製 MB-21
:MQV9200(株式会社 山武)
:GL サイエンス社製
:GL サイエンス社製
:GL サイエンス社製
:JTD-505Ⅱ(日本分析工業)
:JHS-100(日本分析工業)
281
キューリーポイントパイロライザー
GC HP6890 シリーズ
MS
:JHP-3S(日本分析工業)
:HP6890(Hewlett Packard)
:AutoSpecUltima(マイクロマス)
(3)分析法
【試料の採取及び保存】
環境省「化学物質環境実態調査実施の手引き」(平成 21 年 3 月)に従う。採取
後は速やかに分析を行う。
【キャニスターの洗浄方法】
キャニスターを減圧及び高純度窒素により加圧し 8 回以上繰り返す。減圧状態
でバルブを閉め、室温に戻す。
【試料捕集方法、試料の前処理、及び試料の調製】
試料 15 L をキャニスターにメタルベローズポンプを用いて採取する。その際、
インピンジャーを 2 連でつなぎ、前段に過塩素酸マグネシウム(脱水剤)300 g、
後段にアスカライト(脱炭酸ガス剤)300 g を充填する。最終的にキャニスター内
を加圧状態にする必要があるため、試料で容器を加圧し、内部圧力を 200 kPa(0.2
MPa)に調製する。
キャニスターをガス濃縮装置へ接続し、目的成分を低温濃縮して測定する。
(注
1)
(注 1)本分析法の開発では、15 L のキャニスターを用いたが、大気試料の必要試
料量が 1 L であるため、容量が 6 L のキャニスターにおいても、容器内が十
分に加圧状態であれば同様に用いることが可能である。
【試料の保存】
捕集した容器は密栓し、常温で保存する。
【空試験試料の調製】
高純度空気をキャニスターに入れ、空試験試料とする。
【標準液の調製】
〔内標準ガス(塩化ビニルモノマー-d3 、塩化メチレン-d2)〕
マイクロシリンジを用いて標準物質を取り、真空状態にした 1 L 真空瓶のセプ
タムから 20.0 mg 注入する。なお、これらの化合物は常温で液体である(注 2)
。
一方の口に高純度空気を充満した 10 L テドラーバッグをとりつけ、真空瓶のバル
ブをゆっくりと開け、内部に空気を充填する。これを内標準ガス 1(濃度 20.0 mg/L)
282
とする。
次に別の 1 L 真空瓶を用意し、高純度空気で満たした状態から中の空気を 5 mL
を抜いた状態にしておき、上記の内標準ガス 1 をガスタイトシリンジを用いて 5
mL 抜き取り、用意した真空瓶に注入したガスを内標準ガス 2(濃度 100 μg/L)と
する。
同様に、別の 1 L 真空瓶を用意し、高純度空気で満たした状態から中の空気を 5
mL を抜いた状態にしておき、上記の内標準ガス 2 をガスタイトシリンジを用いて
10 mL 抜き取り、用意した真空瓶に注入したガスを内標準ガス 3(濃度 1000 ng/L)
とする。
調製に用いた全ての真空瓶には、攪拌用のガラスビーズを予め 5 粒入れておく。
〔標準ガス(CFC-13)〕
この化合物は常温で気体であり、ボンベに入った状態なので、取り出し口より
直接ガスタイトシリンジを用いて標準ガスをゆっくりと 5 mL 採取する。その標準
ガスを、高純度空気で満たした状態から中の空気を 5 mL を抜いた状態の 1 L 真空
瓶へ、セプタムを通じて注入する。これを標準ガス 1(調整時の室温が 25℃で濃
度が 21.33 mg/L)とする。
次に別の 1 L 真空瓶を用意し、高純度空気で満たした状態から中の空気を 10 mL
を抜いた状態にしておき、上記の標準ガス 1 をガスタイトシリンジを用いて 10 mL
抜き取り、用意した真空瓶に注入したガスを標準ガス 2(25℃で 213.3 μg/L)とす
る。
同様に、別の 1 L 真空瓶を用意し、高純度空気で満たした状態から中の空気を
10 mL を抜いた状態にしておき、上記の標準ガス 2 をガスタイトシリンジを用い
て 10 mL 抜き取り、用意した真空瓶に注入したガスを標準ガス 3(25℃で 2.133
μg/L)とする。
同様に、別の 1 L 真空瓶を用意し、高純度空気で満たした状態から中の空気を
10 mL を抜いた状態にしておき、上記の標準ガス 3 をガスタイトシリンジを用い
て 10 mL 抜き取り、用意した真空瓶に注入したガスを標準ガス 4(25℃で 21.33
ng/L)とする。
調製に用いた全ての真空瓶には、攪拌用のガラスビーズを予め 5 粒入れておく。
(注 2)注入した標準物質は瞬時にガス化する。この際、予め標準物質を採取した
シリンジの重量を測定しておき、注入後のシリンジの重量差から注入した
重量を求める。その理由として、真空瓶内が真空になっていることより、
ニードル部分に含まれる標準物質まで真空瓶内に入ることから、マイクロ
シリンジの目盛りから重量を推定できないからである。また、このとき、
シリンジニードル内に残らないようピストンを引いて、残量を確認する。
283
〔検量線〕
使用する GC/MS の検出下限値付近と予想される濃度レベルを含む、5 段階以上
の検量線作成用気体 15 L を調製する。減圧状態の容器上部にセプタム付注入口を
取り付け、標準ガスを注入する。注入量は、容器を窒素で加圧し内部圧力を 200kPa
(0.2MPa)に調製することを考慮し、検量線の濃度範囲が 0~150 ng/m3 となる量
にする。
1 L を加熱脱着装置に導入し、低温濃縮後、GC/MS で測定する。一定量入れた
内標準物質とのピーク面積比を求める。この面積比を検量線用気体の濃度比に対
してプロット(面積比を縦軸、濃度比を横軸)、検量線を作成する。なお、内標準
を用いない場合は、絶対検量線法を用いる。
〔定量〕
大気試料 1 L を装置に注入し、大気試料中クロロトリフルオロメタン濃度を測
定する。
〔濃度の算出〕
測定対象化合物の大気試料中濃度 C(ng/m3)は、次式から算出する。
C=(Ca-Cb)
Ca
Cb
:検量線から求めた採取試料キャニスター中の対象物質濃度(ng/m3)
:空試験用キャニスター中の対象物質濃度(ng/m3)
なお、Ca および Cb は以下のように求める。
A
Ca および Cb =
v × 293 / (273 + t) × P / 101.3
A
v
t
P
:濃縮した試料中の各測定対象物質の重量 (ng)
:装置へ導入した試料量 (m3)
:試料分析時における温度 (℃)
:試料分析時における大気圧 (kPa)
284
(3)-1
..
吸着剤常温捕集方式の検討
キューリーポイントパイロライザー加熱脱着装置(日本分析工業:JTD-505Ⅱ、
図 1)を高分解能型 GC/MS(日本電子:JMS-700)に接続して、吸着剤常温捕集方
式での検討を行った。
〔分析条件〕
[加熱脱着装置分析条件]
キューリーポイントパイロライザー
加熱脱着装置
1 次トラップ管温度
ヘリウムパージ流量
パージ時間
2 次トラップ管吸着剤
2 次トラップ管冷却温度
2 次トラップ管再加熱温度
[GC 分析条件]
装置
昇温条件
注入口温度
注入方法
キャリヤーガス
GC カラム
[MS 分析条件]
装置
測定方法
測定時の分解能
イオン化方法
: JTD-505Ⅱ
(日本分析工業)
: 150℃
: 50 mL/分
:1分
: Carboxen-1000
: –150℃
: 260℃
:HP6890 シリーズ (Agilent)
:40℃(4 分保持)→ 6℃/分 → 220℃(0 分保持)
:250℃
:スプリットレス方式
:ヘリウム 1.5 mL/min
:PolaBond Q PLOT 30 m×0.32 mm
膜厚 5 μm
:JMS-700 (日本電子株式会社)
:SCAN 法
:1000
:EI 法
予備検討で、吸着剤として最も濃縮できる可能性があると思われる吸着剤
(Carboxen-1000)を 3 g 充填したガラス製捕集管に、標準ガスを 4.27 mg(1 mL)
添加し、室温環境下で窒素ガスを 5 分間パージした後スキャン分析を行った。結果
のクロマトグラム、マススペクトルを図 2 に示す。
クロロトリフルオロメタンは検出されたが、比較のために測定したほぼ同じ濃度
のブロモクロロジフルオロメタン(ハロン 1211)は高感度で検出されたことから、ク
ロロトリフルオロメタン室温条件下では吸着剤に捕集(濃縮)できないことが確認
された(フロン 1211 も完全に捕集できているか確認していない)。よって、クロロ
トリフルオロメタンを常温で吸着剤に濃縮することは困難であることが確認され
285
た。
なお、用いた GC 分析カラムは低沸点物質の分析に有用な CP-PolaBond QPLOT
であるが、検出時間が 2 分未満とほとんど保持していない。実際の大気を測定する
場合、測定開始から 5 分間程度は水分等が検出されることが予想されるため、最適
な GC 分析カラムの選択も課題とされた。
トランスファーライン
PAT(一次トラップ管)
加熱脱着部
SAT(二次トラップ管)加熱脱着部
図1
加熱脱着装置(日本分析工業:JTD-505Ⅱ)の概略図
(メーカー提供資料を一部編集)
286
ピーク①を拡大
図2
クロロトリフルオロメタンの標準ガス 4.27 mg(1 mL)測定結果
上段:TIC クロマトグラム
中段:0~3 min の拡大
下段:ピーク①(クロロトリフルオロメタン)のマスクロマトグラム
287
(3)-2
..
吸着剤低温濃縮方式の検討1
キューリーポイントパイロライザー(日本分析工業:JHP-3S)加熱脱着装置(日
本分析工業:JHS-100)を高分解能型 GC/MS(マイクロマス社、Autospec Ultima)
に接続して、吸着剤低温濃縮方式での検討を行った。
【GC 分析カラムの検討】
GC 分析カラムの検討を行った。その結果を表 1 に示す。大気に含まれる水分や
炭酸ガスの影響をなるべく回避するため、目的化合物を 5 分以上保持できるカラム
が望ましい。
カラムメーカーとも相談した結果、通常の液層カラムでは保持できないことが予
想できたため、PLOT カラムである以下の 4 種類のカラムを検討した。なお、PolaBond
Q PLOT については、既に保持できないことが前述の検討で明らかであった。
①PolaBond Q PLOT
②Supel-Q PLOT
③Alumina Chloride PLOT
④Carboxen-1006 PLOT
表 1 GC 分析カラムの検討結果
長さ
内径
膜厚
検出時間 検討
GC 分析カラム名
(m) (mm) (μm)
(分)
結果
30
0.25
0.25
1.5
×
BPX-5(比較用)
PolaBond Q PLOT
30
0.32
5
1.5
×
Supel-Q PLOT
30
0.32
1.5
×
-
Alumina Chloride PLOT
50
0.32
3.0
×
-
Carboxen-1006 PLOT
30
0.32
8.0
○
-
検討結果の「×」とは、5 分以上保持できなかったことを意味する
これらの結果より、Carboxen-1006 PLOT(VARIAN 社)が唯一 5 分以上保持でき
るカラムであることが分かった。しかし、それでもピーク形状が太くなり、保持が
強すぎることを意味していた。また、この他に Carboxen-1010 PLOT というカラム
が存在するが、Carboxen-1006 PLOT よりも更に吸着力が高いことから、不適である
と考え検討は行わなかった。
高分解能型 GC/MS に Carboxen-1006 PLOT を接続し、GC 注入口(スプリット/
スプリットレス)より標準ガス(200 ng/10 μL)を直接注入した結果のクロマトグ
ラムを図 3 に示す。
事前のスキャン分析の結果(図 2)より、質量数 68.9952 がもっとも感度が高い
ことが確認できており、定量用モニターイオンとして採用する予定であったが、校
288
正用標準物質である PFK(パーフルオロケロセン)のモニターイオンと全く同じで
あり、バックグラウンドとして常に妨害し続けていることから確認用として採用し
た。質量数 86.9627 と比較して感度が低い質量数 84.9657 を、定量用モニターイオ
ンとして採用した。
大気での要求感度(0.0033 μg/m3 = 3.3 pg/L)から、濃縮大気量を 1 L と仮定した
場合、少なくとも 3.3 pg は十分に確認できる必要があることから、この時点では将
来的に要求感度を満たすことは困難であることが確認された。
図 3 GC 分析カラム(Carboxen-1006 PLOT)での
クロロトリフルオロメタン測定結果のクロマトグラム
289
【GC オーブン昇温条件の検討】
ピーク形状を改善する目的で、GC オーブン昇温条件の見直しを検討した。オー
ブン初期温度を 10~100℃で検討したところ、低いほどピーク形状が細く良好であ
ることが確認されたが、40℃以下ではさほど変化がなくなったため、40℃で行うこ
とにした。カラムメーカーの話では、Carboxen-1006 PLOT は室温以下にすると固層
が剥離することから、液体窒素や炭酸ガスを用いたオーブンクライオの技術は用い
ることができないと判断した。
また、ピーク形状は GC オーブン昇温速度に大きく依存することが分かり、GC
オーブン昇温速度が早いほどシャープなピークが得られることが分かった。そこで
検討を重ねた結果、GC オーブンの昇温能力の限界付近であるが、以下の昇温条件
とした。
(オーブン昇温条件)
40℃(5 分保持)→100℃/分 → 80℃(0 分保持)→80℃/分
→ 165℃(0 分保持)→ 65℃/分 → 250℃(3 分保持)
【吸着剤低温捕集方式の検討】
キューリーポイントパイロライザー加熱脱着装置を高分解能型 GC/MS に接続し
て検討を行った(模式図を図 4 参照)。装置の各設定条件は以下の通りである。
〔分析条件〕
加熱脱着装置分析条件
加熱脱着装置
キューリーポイントパイロライザー
1 次トラップ管温度
ヘリウムパージ流量
パージ時間
2 次トラップ管吸着剤
2 次トラップ管冷却温度
2 次トラップ管再加熱温度
: JHS-100 (日本分析工業)
: JHP-3S (日本分析工業)
: 200℃(分析対象物が常温で気体である
ため吸着の心配も少ないのであれば、ここ
まで高温である必要はないのではとの指
摘あり)
: 50 mL/分
:1分
: Carboxen-1000、0.25 g
: –190℃
: 280℃(ただし、冷却を停止した段階で
GC/MS への供給を開始し、その後再加熱
し最終的に 280℃にする)
290
GC 分析条
装置
昇温条件
注入口温度
注入方法
キャリヤーガス
GC カラム
:HP6890 シリーズ (Agilent)
:0℃(5 分保持)→ 100℃/分 → 80℃(0 分保持)
→ 80℃/分 → 165℃(0 分保持)→ 65℃/分
→ 250℃(3 分保持)
:250℃
:スプリットレス方式
:ヘリウム 2.0 mL/min
:Carboxen-1006 PLOT 30 m × 0.32 mm(VARIAN 社)、そ
の出口(MS)側に、1 m の無極性カラム(DB-1:30 m ×
0.25 mm × 0.25 μm)を豊田マイクロシステムズのカラム
チューブを用いて接続する。
MS 分析条件
装置
測定方法
測定時の分解能
イオン加速電圧
イオン化方法
電子加速電圧
電流
イオン源温度
モニターイオン
クロロトリフルオロメタン
塩化ビニル-d3
:AutoSpecUltima (マイクロマス社)
:SIM 法
:6000
:8 kV
:EI 法
:35 eV
:50 μA
:280℃
:m/z 84.9657(定量)、86.9627(確認)
:m/z 65.0112(定量)、67.0082(確認)
(なお、内標準物質を高感度で測定するため、8
分前後でファンクションを区切る(マスのマグネ
ットをジャンピングさせる)
)
試料ホルダ上部のセプタムより直接ガスタイトシリンジを用いて標準ガス(10
pg/10 μL)、内標準ガス(1000 pg/10 μL)をそれぞれ注入した。その後、ヘリウムガ
ス(流速:0.05 L/min)で装置内部を 1 分間パージし、測定した。結果のクロマト
グラムを図 5 に、標準ガスのスペクトルを図 6、7 に示した。
図 5 より、10 pg が S/N 比 10 程度で検出できるほどピーク形状は大幅に改善され
た。
(ただし、分解能 6000 以下ではバックグラウンドが高く 10 pg で十分な S/N 比
が得られなかった。)
291
保温チューブ
パージ&トラップ装置(JHS-100)
液体窒素排気
2次吸着管
Carboxen-1000
(1次吸着管)
空(無充填)
キャニスター
S-CAN 15L
試料排気
積算流量計 ダイヤフラム マスフロー
コントローラー
DC-21
ポンプ
MQV9200
DTC-21
ヘリウム排気
GC/MS
図4
加熱脱着装置を利用した低温濃縮装置模式図
292
キューリーポイント
パイロライザー
(JHP-3S)
クロロトリフルオロメタン(CFC-13)
注入絶対量: 10 pg
定量用モニターイオン: 84.9657
クロロトリフルオロメタン(CFC-13)
定量用モニターイオン: 86.9627
塩化ビニル-d3
注入絶対量:1000 pg
定量用モニターイオン:65.0112
塩化ビニル-d3
定量用モニターイオン:67.0082
図5
クロロトリフルオロメタンのクロマトグラム
293
クロロトリフルオロメタン
(CFC-13)
検出時間:7.50
注入絶対量: 200 ng
クロロトリフルオロメタン
(CFC-13)
マススペクトル
図6
クロロトリフルオロメタンのマススペクトル
294
塩化ビニル-d3
検出時間:8.55
注入絶対量:50 ng
塩化ビニル-d3
マススペクトル
ノイズ
図7
塩化ビニル-d3 のマススペクトル
295
クロロトリフルオロメタン注入絶対量 10 pg~208 pg の範囲で測定し、検量線を作
成した。結果を図 8 に示した。
y = 4.6122x
R2 = 0.9973
1.200
1.000
ピーク面積比
0.800
0.600
0.400
0.200
0.000
0.0
0.1
0.1
0.2
0.2
0.3
濃度比(対象物質/内標物質)
図 8 クロロトリフルオロメタンの検量線
(対象物質絶対量範囲 10~208 pg、内標準物質絶対量
296
1000 pg)
【GC 分析カラム、GC オーブン昇温条件の再検討】
文献等より、GC 分析カラム CP-Silica PLOT (30 m × 0.32 mm × 4 μm(Varian 社))
にオーブンクライオの技術を用いることで、良好なピークを得られる可能性があり、
検討した。その結果、極めて良好なピークが得られ、絶対注入量で 1 pg(前回 10 pg
の 10 倍低いレベル)が検出可能となった。カラムの検討結果を表 2 に示した。
表2
GC 分析カラム再検討結果(追加)
長さ
内径
膜厚
検出時間
検討
カラム名
(m) (mm) (μm)
(分)
結果
30
0.25
0.25
1.5
BPX-5(比較用)
×
CP-PoraBOND Q PLOT
30
0.32
5.00
1.5
×
Supel-Q PLOT
30
0.32
1.5
-
×
Alumina Chloride PLOT
50
0.32
3.0
-
×
Carboxen-1006 PLOT
30
0.32
8.0
-
△
CP-Silica PLOT
30
0.32
4.00
6.0
○
検討結果×とは、5 分以上保持できなかったことを意味する
検討結果△とは、5 分以上保持できたものの、ピーク形状が悪かったことを
意味する
(オーブン昇温条件)
-80℃(4 分保持)→ 100℃/分 → 40℃(0 分保持)→ 80℃/分
→ 80℃(0 分保持)→ 60℃/分 → 180℃(2 分保持)
測定結果のクロマトグラムを図 9、図 10 に示した。比較のため、変更前の条件で
の同一濃度のクロマトグラムと併記した。
297
クロロトリフルオロメタン(CFC-13)
注入絶対量:10 pg
定量用モニターイオン:84.9657
GC 分析カラム:Carboxen-1006 PLOT
クロロトリフルオロメタン(CFC-13)
注入絶対量:10 pg
確認用モニターイオン:86.9627
GC 分析カラム:Carboxen-1006 PLOT
クロロトリフルオロメタン(CFC-13)
注入絶対量:1 pg
定量用モニターイオン:84.9657
GC 分析カラム:CP-Silica PLOT
クロロトリフルオロメタン(CFC-13)
注入絶対量:1 pg
確認用モニターイオン:86.9627
GC 分析カラム:CP-Silica PLOT
図9
条件変更前
条件変更前
条件変更後
条件変更後
改良条件でのクロロトリフルオロメタンの分析クロマトグラム(1 pg)
298
クロロトリフルオロメタン(CFC-13)
注入絶対量:200 pg
定量用モニターイオン:84.9657
GC 分析カラム:Carboxen-1006 PLOT
クロロトリフルオロメタン(CFC-13)
注入絶対量:200 pg
確認用モニターイオン:86.9627
GC 分析カラム:Carboxen-1006 PLOT
クロロトリフルオロメタン(CFC-13)
注入絶対量:200 pg
定量用モニターイオン:84.9657
GC 分析カラム:CP-Silica PLOT
クロロトリフルオロメタン(CFC-13)
注入絶対量:200 pg
確認用モニターイオン:86.9627
GC 分析カラム:CP-Silica PLOT
図 10
条件変更前
条件変更前
条件変更後
条件変更後
改良条件でのクロロトリフルオロメタンの分析クロマトグラム(200 pg)
299
この装置系で確認できる最低絶対注入量(1 pg)から逆算すると、濃縮に必要な
大気量は最低でも 0.31 L になる。そこで、次の段階として、ヘリウムパージ時間を
10 分(0.5 L)、30 分(1.5 L)と長くし、保持時間を検証した。
ヘリウムを 10 分間(0.5 L)パージした結果、検出されたピークは明らかに小さ
くなっており、一部破過が起こっている可能性が示された。同様に 30 分(1.5 L)
パージした結果、ピークは検出されなくなった。水分等妨害成分をほぼ含まないと
考えられるヘリウムでも対象物質を低温濃縮(保持)し続けることができないこと
から、本装置系で実際の大気試料を用いた分析は困難であることが示された。
(3)-3
..
吸着剤低温濃縮方式の検討2
キャニスターを GC の PTV(Programmed Temperature Vaporizer:プログラム昇温
気化)式注入口に六方バルブを介して保温チューブで接続した。PTV 注入口のガラ
スライナーに Carboxen-1000 を 0.2 g 充填して、液体窒素にて吸着剤低温濃縮する手
法を検討した。この装置系について、概略図を図 11 に示した。装置の各設定条件
は以下の通りである。なお、予備検討で、内標準物質として用いていた塩化ビニル
モノマー-d3 の感度が不安定であったため、塩化メチレン-d2 に変更した。
PTV 注入口(冷却濃縮)分析条件
吸引大気量
:0.75 L(流量 0.1 L/min × 7.5 min)
ヘリウムパージ流量
:50 mL/min
パージ時間
:1 min
トラップ管媒体
:Carboxen-1000(SUPELCO 社)
トラップ管冷却温度
:–160℃
トラップ管再加熱温度
:375℃(ただし、冷却をやめた段階で GC/MS への
供給を開始し、その後再加熱し最終的に 375℃にす
る)
GC 分析条件
装置
昇温条件
キャリヤーガス
GC カラム
:HP6890 シリーズ(Hewlett Packard)
:-80℃(4 分保持)→ 100℃/分 → 40℃(0 分保持)
→ 80℃/分 → 80℃(0 分保持)→ 60℃/分 →
180℃(4 分保持)
:ヘリウム 1.2 mL/min
:CP-Silica PLOT(30 m × 0.32 mm × 4 μm)(Varian 社)の出
口(MS)側に、1 m の無極性カラム DB-1(100%ジメチルポ
リシロキサン相:30 m × 0.25 mm × 0.25 μm)を豊田マイクロ
システムズのカラムチューブを用いて接続する。
300
MS 分析条件
装置
測定方法
測定時の分解能
イオン加速電圧
イオン化方法
電子加速電圧
電流
イオン源温度
モニターイオン
クロロトリフルオロメタン
塩化メチレン-d2
: AutoSpecUltima (マイクロマス社)
: SIM 法
: 6000
: 8 kV
: EI 法
: 35 eV
: 450 μA
: 280℃
: m/z 84.9657(定量)、86.9627(確認)
: m/z 85.9659(確認)、87.9630(定量)
図 11 PTV 注入口を利用した低温濃縮装置模式図
操作方法
① PTV 注入口を液体窒素で-160℃冷やす。
② 六方バルブ A をキャニスター側に切り替え、大気濃縮する(ヘリウムは流さ
ない)。その際、GC オーブン内部の耐熱六方バルブ B はベント側にしておき、
カラム、及び MS へ大気が入らないようにする。
③ 六方バルブ A をヘリウム側に切り替え、内部の空気を追い出す(1 分間)。
④ 耐熱六方バルブ B を切り替え、通常の GC のラインにする。
⑤ GC オーブンをスタートさせ、PTV 注入口を急加熱し、吸着させたガス成分
を MS 側に送り測定する。
301
クロロトリフルオロメタン標準ガス(濃度:215 ng/L)10 μL(2.15 pg)を注入し、
低温濃縮した。なお、パージの際に PTV 注入口上部にあるセプタムより、内標準
ガス(濃度 10 μg/L)を 10 μL(100 pg)ガスタイトシリンジを用いて添加した。
その結果、10 分間ヘリウムパージを行っても、2.15 pg(絶対注入量)のクロロト
リフルオロメタンを保持できることが確認された。ただし、内標準物質である、塩
化メチレン-d2 のピーク形状は幅広であった。
ヘリウムパージ時間を 1 分間にして、検量線を作成した。その結果、対象物質絶
対量範囲 2.15~107.7 pg において、良好な相関が得られた。検量線を図 12、各標準
ガスのスペクトルを図 13~14、クロマトグラムを図 15~16 に示す。
y = 0.6625 x
2
R = 0.9980
0.800
0.700
0.600
ピーク面積比
0.500
0.400
0.300
0.200
0.100
0.000
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
1.2
濃度比(対象物質/内標物質)
図 12
検量線(内標準物質絶対量
100 pg、対象物質絶対量範囲
302
2.15~107.7 pg)
クロロトリフルオロメタン
(CFC-13)
検出時間:6.25
注入絶対量: 50 ng
クロロトリフルオロメタン
(CFC-13)
マススペクトル
図 13
クロロトリフルオロメタンのマススペクトル
303
塩化メチレン-d2
検出時間:8.55
注入絶対量:50 ng
塩化メチレン-d2
マススペクトル
図 14
塩化メチレン-d2 のマススペクトル
304
クロロトリフルオロメタン(CFC-13)
注入絶対量:2.15 pg
定量用モニターイオン:86.9627
クロロトリフルオロメタン(CFC-13)
注入絶対量:2.15 pg
確認用モニターイオン:84.9657
塩化メチレン-d2
注入絶対量:100 pg
確認用モニターイオン:85.9659
塩化メチレン-d2
注入絶対量:100 pg
定量用モニターイオン:87.9630
図 15
クロロトリフルオロメタンのクロマトグラム(2.15 pg)
305
クロロトリフルオロメタン(CFC-13)
注入絶対量:21.5 pg
定量用モニターイオン:86.9627
クロロトリフルオロメタン(CFC-13)
注入絶対量:21.5 pg
確認用モニターイオン:84.9657
塩化メチレン-d2
注入絶対量:100 pg
確認用モニターイオン:85.9659
塩化メチレン-d2
注入絶対量:100 pg
定量用モニターイオン:87.9630
図 16
クロロトリフルオロメタンのクロマトグラム(21.5 pg)
続いて、除水、除炭酸ガス処理を行なった大気試料を流速 0.1 L/min で 5 分間(0.5
L)装置冷却トラップ管に導入しながら、同様にクロロトリフルオロメタン標準ガ
ス(濃度:215 ng/L)10 μL(2.15 pg)を注入し低温濃縮を試みた。ヘリウムを用い
た場合とは異なり、ピークは検出されず目的化合物は破過していることが確認され
た。絶対注入量から逆算すると、必要大気試料量は最低でも 0.7 L になることから、
本装置系で実際の大気試料を用いた分析は困難であることが示された。
306
(3)-4
..
吸着剤低温濃縮方式の検討3
キャニスターをガス濃縮装置(Model 7100A:Entech 社製)に接続し、四重極型
GC/MS で測定する分析系を用いて検討を行った。各設定条件は以下の通りである。
なお、サロゲート化合物が入手できない点から、内標準物質を採用せず、絶対検量
線で検討するよう方針を変更した。
脱着温度
大気試料濃縮装置測定条件
装置
モジュール 1
ガラスビーズ
(空気中の主成分除去)
モジュール 2
TENAX-TA
(有機物質のトラップ)
モジュール 3
キャピラリーカラム
(クライオフォーカス)
試料導入量
温度条件
キャリヤーガス
捕集時:-150℃
脱離時:20℃
捕集時:-15℃
脱離時:180℃
捕集時:-160℃
脱離時:1 分加熱 約 100℃
150 mL/min(導入量 250 mL 以上)
50 mL/min(導入量 250 mL 未満)
1000 mL(試料濃度により 100~1000 mL の間
で変更して分析を行う)
試料導入速度
GC 分析条件
装置
分離カラム
Model 7100A(Entech 社製)
:Agilent-6890(Agilent 社製)
:HP-1 60 m × 0.32 mm, 1.0 μm
:35℃(7 min 保持)→(5℃/min 昇温)→140℃(保持なし)
→(15℃/min 昇温)→220℃(2 min 保持)
:ヘリウム 1.0 mL/min
MS 分析条件
装置
イオン化法
イオン化電圧
データ取得方式
インターフェース温度
:Agilent-5973A MSD(Agilent 社製)
:EI 法
:70 eV
:SIM モード
:230℃
307
検出時間を確認するため、空気で調整したクロロトリフルオロメタン(濃度 20
μg/mL、10 μL、絶対量 200 ng)を分析した。クロマトグラムを図 17 に示す。その
結果、CO2 と重なっていることが確認された。
クロロトリフルオロメタン
(CFC-13)
検出時間:5.18
注入絶対量: 200 ng
m/z 43.9
m/z 68.9
m/z 84.9
図 17
ピーク①のマスクロマトグラム
308
CO2 を含まない標準ガスで分析したクロロトリフルオロメタンのマススペクトル
を図 18 に示す。
クロロトリフルオロメタン
(CFC-13)
実測マススペクトル
クロロトリフルオロメタン
(CFC-13)
比較マススペクトル(ライブラリ)
図18
クロロトリフルオロメタンのスペクトル
この分析条件で検量線を作成したところ、濃度範囲4.27~426.5 ng/m3(濃縮ガス
量1 L、注入絶対量4.27 pg~426.5 pg)の範囲では、良好な相関関係は得られなかっ
た(r2 = 0.885)ことから、破過の可能性が強く疑われた。
破過の原因として、モジュール1のトラップ温度が-150℃では低すぎ、酸素が液
化してクロロトリフルオロメタンの濃縮を妨げていると考え、トラップ温度を-
100℃と高めて検討した。その結果を図19~20に示した。クロロトリフルオロメタ
ンは期待とは逆に、全くトラップできていなかったことから、当初の設定した温度
(-150℃=装置設定可能な最低温度)の方が適していると考えられた。
なお、破過の原因として、モジュール2(Tenax-TA)の捕集時温度が-15℃では
高すぎて保持できないことも考えられる。
309
CO2
m/z 43.9
m/z 84.9
m/z 86.9
図19
トラップ温度変更前(-150℃)のクロマトグラム
CO2
m/z 43.9
図 20
トラップ温度変更後(-100℃)のクロマトグラム
310
CO2 との分離を行うため、GC 分析カラムと GC オーブン昇温条件、MS インター
フェース温度を以下のように変更して分析を行った。
GC 分析条件
分離カラム :CP-Al2O3 / Na2SO4 PLOT 50 m × 0.32 mm × 5.0 μm
温度条件
:35℃(5 min 保持)→(10℃/min 昇温)→180℃(24 min 保持)
MS 分析条件
インターフェース温度
:200℃
クロロトリフルオロメタン標準ガスと一般大気(0.1 L)を分析した結果、クロロ
トリフルオロメタン(検出時間 5.55 min)と CO2(検出時間 5.75 min)を完全に分
離することができた(図 21)。
CFC13
427 pg
クロロトリフルオロメタンの
モニターイオン
図 21
CO2のモニターイオン
CO2
m/z 84.9
m/z 43.9
クロロトリフルオロメタン標準ガスと一般大気の測定結果
(個別に測定)
311
この条件で測定したクロロトリフルオロメタンのマススペクトルを図 22 に示す。
クロロトリフルオロメタン
(CFC-13)
実測スペクトル
クロロトリフルオロメタン
(CFC-13)
比較スペクトル(ライブラリ)
図 22
クロロトリフルオロメタンのマススペクトル
312
次に、クロロトリフルオロメタン標準ガスと一般大気を混合したガスを分析した
結果、同様に両者を完全に分離することができた。ただし、図 21 と比較しクロロ
トリフルオロメタンのピーク面積が著しく低くなっており、CO2 の影響により破過
している可能性が考えられた。クロマトグラムを図 23 に示す。
クロロトリフルオロメタンの
CFC-13
モニターイオン
427 pg
m/z=84.9
CO2のモニターイオン
CO2
m/z=43.9
図 23 クロロトリフルオロメタンと一般大気の混合ガスのクロマトグラム
次に、この分析系での IDL を算出する前検討として、窒素で調整した標準ガスを
段階的に希釈し、測定した。濃度範囲 4.27~427 pg の範囲で測定した結果、42.7 pg
付近が下限値と思われた。クロマトグラムを図 24~26 に示す。
m/z=84.9
m/z=86.9
図 24
クロロトリフルオロメタンのクロマトグラム(427 pg)
313
m/z=84.9
m/z=86.9
図 25
クロロトリフルオロメタンのクロマトグラム(42.7 pg)
m/z=84.9
m/z=86.9
図 26
クロロトリフルオロメタンのクロマトグラム(4.27 pg)
最低限達成すべき目標としていた 3.3 pg の検出は難しく、また大気試料を濃縮す
ると破過しやすくなる点からも、本装置系で実際の大気試料を用いた分析は困難で
あることが示された。
314
(3)-5
...
吸着剤準低温濃縮方式の検討
キャニスターをガス濃縮装置(UNITY2:MARKES 社製)に接続し、四重極型
GC/MS で測定する分析系を用いて検討を行った。各設定条件は以下の通りである。
大気試料濃縮装置測定条件
装置
:UNITY2(MARKES 社製)
モード
:Direct Sampling
:U-T8CUS-2S(MARKES 社製)
トラップ剤の構成
① 5 mm:Carbograph1 (夾雑成分除去用)
② 10 mm:Carboxen 1000 (夾雑成分除去用)
コールドトラップ
③ 45 mm:Carbosieve SⅢ (フロントラップ用)
各種トラップ剤の粒径は不明
サンプルをトラップする順番は、①~③
加熱脱離の順番は、逆の③~①
コールドトラップ
:0、-15、-30℃(設定可能温度)
温度
コールドトラップ
:350℃(8 min)
脱離温度
スプリット流量
:30 mL/min
カラム流量
:2 mL/min
トランスファー
:80℃
ライン温度
圧力
:20.0 psi
:1000 mL(試料濃度により 100~1000 mL の間で変更して
試料導入量
分析を行う)
GC 分析条件
装置
:Agilent-6890N(Agilent 社製)
分 離 カ ラ :①CP-Al2O3 / Na2SO4 PLOT(VARIAN 社製)50 m × 0.32 mm × 5.0 μm
ム
:②SPB-1 SULFUR(SUPELCO 社製)30 m × 0.32 mm × 4.0 μm
(GC 注入口に①を接続し、更に②を接続して MS に導入する)
温度条件
:35℃(5 min 保持)→(10℃/min 昇温)→ 180℃(19 min 保持)
キャリヤーガス
:ヘリウム
MS 分析条件
装置
イオン化法
イオン化電流
:JMS-Q1000GC K9(日本電子社製)
:EI 法
:200 μA
315
検出器電圧
イオン化電圧
データ取得方式
イオン源温度
インターフェース温度
:-1000 V
:70 eV
:SIM モード
:200℃
:200℃
初期検討として、ピーク検出時間、及び妨害成分の有無の確認を行った。
分析の結果、クロロトリフルオロメタン周辺に CO2 等が検出されたが、妨害するこ
とはなかった。クロマトグラムとマススペクトルを図 27~31 に示した。
図 27
TIC クロマトグラム(スキャン範囲 m/z = 40~200)
316
図 28
図 29
クリプトンのクロマトグラムとマススペクトル
キセノンのクロマトグラムとマススペクトル
317
図 30
クロロトリフルオロメタンのクロマトグラムとマススペクトル
図 31
CO2 のクロマトグラムとマススペクトル
318
次に、装置濃縮部分の破過試験を行った。濃度 38.9 μg/L の標準ガスを、100~1000
mL の範囲で段階的に装置に導入し、測定した(表 3)。検量線の相関は 2 次曲線の
ようになり、高濃度域で破過している可能性が考えられた(図 32~33)。
表3
注入量とピーク面積値
注入絶対量(μg) 注入ガス量(mL)
3.9
100
7.8
200
15.6
400
23.3
600
31.1
800
38.9
1000
m/z=85
10810
20628
32772
38414
45794
51453
m/z=87
768
2470
4529
4878
6549
7130
60000
50000
y = 1106.5x + 11072
R2 = 0.9565
ピーク面積
40000
m/z=85
30000
20000
10000
0
0.0
10.0
図 32
20.0
30.0
絶対注入量(μg)
40.0
破過試験の結果(m/z = 85)
319
50.0
10000
ピーク面積
8000
y = 172.31x + 924.11
R2 = 0.935
6000
m/z=87
4000
2000
0
0.0
10.0
図 33
20.0
30.0
絶対注入量(μg)
40.0
50.0
破過試験の結果(m/z = 87)
なお、表 3 と図 32、33 については、検出限界量として 100 pg とあるのに比べて
注入絶対量 3.9-38.9 μg と多量に注入しているために GC/MS の直線性が悪い可能性
があるとの意見があることも考えられた。
次に、濃縮装置にキャニスターを接続して、純窒素と一般環境大気でそれぞれ作
成した標準ガス(濃度:38.69 μg/L)を濃縮し、以下の水準で分析した。モニター
イオンは m/z = 50、69、85、87 を選択した。
トラップ温度:0℃・-15℃・-30℃
(装置の設定上、これら値以外の設定はできない)
ガス流速:16.7 mL/min、50 mL/min、100 mL/min
濃縮ガス量:100 mL(3.87 μg)、500 mL(19.3 μg)、1000 mL(38.7 μg)
結果を図 34~36 に示す。グラフの横軸は濃縮ガス量(mL)、縦軸はピーク面積
値である。分析の結果、濃縮トラップ温度-30℃、流速 100 mL/min の条件下が最
も良好な直線性を示した。
ただし、純窒素でのピーク面積値と比較して、環境大気でのピーク面積値が小さ
く、水分等が影響してトラップ効率が低下した可能性が伺えた。
320
一般環境大気
図 34
トラップ温度 0℃での検量線
一般環境大気
図 35
トラップ温度-15℃での検量線
321
一般環境大気
図 36
トラップ温度-30℃での検量線
その後、検出可能な絶対量を確認したところ、約 100 pg が限界であった。キャニ
スターの容量から考慮して、単純に濃縮試料量を増やすことでは解決できる見込み
が無いため、将来的に IDL、MDL を満足する感度は得られないと判断された。感
度が低い原因として、トラップ部設定可能な最低温度が-30℃と、他の手法と比較
して高いことが考えられた(本装置の冷却部は液体窒素を用いていない)。また、
他の装置系での検討結果と同様に、窒素ガスを用いた標準ガスでの測定に比べて、
大気を用いた分析では濃縮効率が著しく低下し、結果的に分析感度を更に低くして
いた。以上のことから、本装置系で実際の大気試料を用いた分析は困難であること
が示された。
322
【評価】
数多くの検討の結果、大気試料中のクロロトリフルオロメタンを効率的に濃縮す
ることができず、現段階では分析困難な状況である。
大気試料中のクロロトリフルオロメタンを分析する上で、その物理的特性(特に
沸点の低さ)が問題となり、一般的なフロン系化合物の分析に用いられている液体
窒素と吸着剤との組み合わせによる濃縮では、要求感度を満たすことはできなかっ
た。
キャニスターを用いた捕集が必須であることから、濃縮可能な試料量としては 1
L 程度と考えられ、濃縮できる試料量の少なさも、分析を困難とする原因のひとつ
である。また、予め捕集時に大気試料中の水分、CO2 を除去していても、純窒素で
調製した標準ガスでの分析に比べ、破過が確認される傾向がみられた。
よって、現段階では、本対象物質の分析法開発に関して、これ以上の向上は困難
であると思われる。
【参考文献】
1) P. J. Streete et al., ANALYST, 117: 1111-1127 (1992)
2) A. McCulloch, Atmospheric Environment, 26A7: 1325-1329 (1992)
3) W.T.Sturges et al., J of Chromatography, 642: 123-134 (1993)
4) M.A.Engen et al., J of Geophysical research 103 (D19): 25287-25297 (1998)
5) B. R. Greally et al., J of Chromatography A, 810: 119-130 (1998)
6) S.J O’Doherty et al., J of Chromatography A, 832: 253-258 (1999)
7) M.A.Engen et al., J of Chromatography A, 848: 261-277 (1999)
8) 『有害大気汚染物質 測定の実際』 (財)日本環境衛生センター
9) 上林志郎、大森瑞代、米田久仁 シャープ技報 73 (1994)
10) 谷村俊史、大堀智弘ほか 山口衛公研業報 第 16 号 (1995)
11) 佐川福雄、谷口政行、立花茂雄、吉田治生 神戸製鋼技報 47(3)(1997)
12) 小塚義昭、鈴木 茂 川崎市公害研究所年報 26 5-11 (2000)
13) 長谷川敦子、前田裕行ほか 大気環境学会誌 35 (2) 113-123 (2000)
14) 水戸部英子、村山等ほか 新潟県保健環境科学研究所年報 第 15 巻 (2000)
15) 笠間厚子、平野岳史 ニチアス技術時報 328 (6) (2001)
16) 世古民雄、臼倉浩一、恩田宣彦 分析化学 52 (12) 1215-1220 (2003)
【担当者氏名・連絡先】
所属先名称 :株式会社 東レリサーチセンター
所属先住所 :〒520-8567 滋賀県大津市園山 3-3-7
TEL:077-533-8620 FAX:077-533-8655
担当者名
:竹本紀之、荻野純一
:[email protected]、
E-mail
[email protected]
323
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