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緩和ケアとチーム

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緩和ケアとチーム
緩和ケアとチーム
緩和ケア部 丹波嘉一郎 岩田香織 奥田泰考 荒川由起子
1
到達目標
•  患者・家族にチームでアプローチすることの重要性を述べる •  緩和ケア病棟、在宅緩和ケア、緩和ケアチームにおけるケアの特
徴とその役割を述べる •  患者・家族が一貫したメッセージを受け取ることできるようにするた
めにチームメンバーとよいコミュニケーションをとることがなぜ重要
であるかを述べる •  すべてのチームメンバーが患者・家族と良いコミュニケーションを保
つために、自らが患者・家族に話したことを記述することを習慣にす
る •  患者・家族に希望する治療・療養とその希望する提供場所を主治
医・チームとともに尋ね、計画を立てる •  自分自身およびチームメンバーの価値観や信念を患者・家族に強
要しないことの重要性を説明する
2
3
本日の構成
•  チームはなぜ必要か? •  チームスタッフの役割(一部) –  奥田泰考 薬剤師 –  荒川由起子 管理栄養士 –  岩田香織 緩和ケア認定看護師 •  家族ケア(緩和ケア認定看護師) •  緩和ケアの場 緩和ケア病棟/緩和ケアチーム 4
日本の緩和ケアの歴史
1967年 イギリスでシシリー・ソンダースがセントクリストファーホスピスを開設
1977年 わが国にはじめてホスピスが紹介される 1977年 わが国にはじめてホスピスが紹介される 1977年 日本死の臨床研究会が発足 1981年 聖隷三方原病院でホスピスが開設(全室個室)
1984年 淀川キリスト教病院でホスピスが開設(半数大部屋)
1977年 日本死の臨床研究会が発足 1981年 聖隷三方原病院でホスピスが開設(全室個室)
1990年 厚生省が緩和ケア病棟入院料を新設
1991年 全国ホスピス・緩和ケア病棟連絡協議会の発足 1984年 淀川キリスト教病院でホスピスが開設(半数大部屋)
1996年 日本緩和医療学会が発足
ホスピスケア認定看護師及びがん性疼痛認定看護師の教育・認定開始
1990年 厚生省が緩和ケア病棟入院料を新設 2002年 厚生労働省が緩和ケア診療加算を新設(緩和ケア
1991年 全国ホスピス・緩和ケア病棟連絡協議会の発足 1996年 日本緩和医療学会が発足
チームの加算) ホスピスケア認定看護師及びがん性疼痛認定看護師の教育・認定開始
2007年 4月 がん対策基本法施行
2002年 厚生労働省が緩和ケア診療加算を新設(緩和ケアチームの加算) 2009年 5月現在 緩和ケア病棟整備施設195施設,3,766床
2007年 4月 がん対策基本法施行
2009年 5月現在 緩和ケア病棟整備施設195施設,3,766床
(広島県緩和ケア支援センターHPを改変 データ:日本ホスピス緩和ケア協会)
5
第一章 総則
第二条
がん対策は,次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない
一 がんの克服を目指し,がんに関する専門的,学際的又は総合的な研究を
推進するとともに,がんの予防,診断,治療等に係る技術の向上その
他の研究等の成果を普及し,活用し,及び発展させること。
二
がん患者がその居住する地域にかかわらず等しく科学的知見に基づく
適切ながんに係る医療(以下「がん医療」という。)を受けることが
できるようにすること。
三 がん患者の置かれている状況に応じ,本人の意向を十分尊重してがんの
治療方法等が選択されるようがん医療を提供する体制の整備がなされ
ること。
6
第三章 基本的施策 第二節 がん医療の均てん化の促進等
第十六条
がん患者の療養生活の質の維持向上
国及び地方公共団体は,がん患者の状況に応じて
痛等の緩和
を目的とする医療が早期から適切に行われるようにすること,
居宅においてがん患者に対しがん医療を提供するための連携協
力体制を確保すること,医療従事者に対するがん患者の療養生
活の質の維持向上に関する研修の機会を確保することその他の
がん患者の療養生活の質の維持向上のために必要な施策を講ず
るものとする。
7
がん対策基本法2007年4月1日施行
•  がんの克服 •  がん治療の均てん化 •  本人の意向の十分な尊重 •  早期からの対応 •  連携 緩和ケア重視の文言
•  QOLの向上 •  医療者の研修
8
従来の医療のモデル
移行
治療
受診
緩和ケア
死
9
PEACEプログラム研修会資料より
私が医師になった頃
移行
治療
受診
死
10
包括的医療モデル Cureとcareの初期からの連携
治療
携
連
連携
な
な
的
的
機
有
有機
受診
緩和ケア
死
遺族ケア
11
PEACEプロジェクト研修会資料を改変
病の軌跡 ( Illness Trajectory) 体調, ADL, QOL�
癌の種類などで差はある
2ケ月?
癌, 腎不全
心不全�
呼吸不全
神経疾患
急性期の対応
ADL:日常生活動作 QOL:生活の質
時間
12
あと2ヶ月という状態
ないないづくし
• 飲めない • 食欲ない • 眠れない • 元気がない • 便がでない • トイレまで歩けない
あるある大事変
•  (強い)痛みがある •  呼吸苦がある •  吐き気がある •  不安がある •  意識障害や認知障害(せん
妄)がある 13
医師の上にも三人
医師ひとりで支えるのは無理
•  ADLの低下 OT, PT •  麻薬なんて死んでも嫌 薬剤師
•  人工肛門,褥創,創部のケア •  金ない,コネない,支えない •  不安,うつ,適応障害,不眠症
看護師
MSW 臨床心理士 14
ADL,QOLが落ちてきた 患者・家族を医師/看護師だけでは 支えきれない
• 
• 
• 
• 
• 
• 
MSW 薬剤師 管理栄養士 臨床心理士 歯科衛生士 リハビリ(OT, PT, ST) •  ケアマネージャー •  在宅ケア医 •  訪問看護師 •  臨床心理士 •  歯科衛生士 •  チャプレン 15
患者本人
家族
石の上にも三年?
医師の上にも三人(以上) 看護師
OT, P
T
MSW, C
P
医療 薬剤師
スタッフ
〈
× ×
イラストはPEASE program資料から
16
チームメンバーからのLecture in Lecture
•  奥田泰考 薬剤師 •  荒川由起子 管理栄養士 •  岩田香織 緩和ケア認定看護師
17
1次緩和ケアと2次3次緩和ケア
•  1次緩和ケア:がん診療に関わるすべての医
療者に対応していただきたい緩和ケア=症状
コントロールと専門医への依頼 •  2次,3次緩和ケア:多職種参加によってより
深い対応が求められる本人・家族への緩和ケ
ア
18
2次3次緩和ケアを提供する形態
1)ホスピス・緩和ケア病棟
2)緩和ケアチーム
3)緩和ケア外来(チームによる)
4)在宅緩和ケア
19
緩和ケアチームの目的
•  急性期病院で末期疾患患者とその家族のケア
(症状コントロール,予後予測に基づいた対応な
ど)を改善する •  ホスピス/緩和ケア病棟や在宅ケア,近医への
療養環境の変更 •  緩和ケアの普及
20
患者からの必要性
•  症状コントロール –  ただし,しばしば不可避なものと諦めて訴えない –  担当医が症状を正しく評価できていない –  口腔や褥創のチェックができていない –  鎮痛薬や下剤の不適切な使用 •  心理的精神的/スピリチュアルな必要性 –  うつ,不安,苦悩,いらだち
21
家族への必要性
•  身体症状 –  疲労 ・・・20%の家族が身体的疾患に –  急性期病棟ではしばしば軽視される •  心理的精神的/スピリチュアルな必要性 –  うつ,不安 ・・・誰にも話せない –  医療スタッフにも遠慮⇆研修医交代, Ns多忙 –  病状だけでなく在宅療養への不安なども
22
終末期の一般病棟でのケアに対する家
族の不満
•  50%がケアに不満を感じている –  Nsによるケアが適切でない –  疼痛コントロールが不適切 •  37%が情報の不十分さにも不満 –  死が近いことをきちんと知らされていない
Addington-­‐Hallら, 1991 23
不安を減らすために
•  家族との面談を病棟スタッフとともに •  研修医と開業医,近医などとの橋渡し •  より適切な退院計画の調整
24
自治医大緩和ケアチームへのコンサルトの目的
%
25 外来初診時依頼項目(依頼項目の重複あり)
H17年度 N=29
H18年度 N=58
26
筑波大学病院緩和ケアチームのdata
入院身体症状内訳(依頼項目の重複あり)
H17年度
H18年度
27
筑波大学病院緩和ケアチームのdata
入院精神症状内訳(依頼項目の重複あり)
H17年度
H18年度
28
筑波大学病院緩和ケアチームのdata
医療人からみた緩和ケアチーム
•  独り相撲を取らないために –  多職種によるチェックとカバー •  1人でできることは限られている •  歓びはX倍に つらさはX分の1に •  チーム内のバランス,運営が大切 29
チームの大切さ
•  鍼灸師のマッサージで患者さんが楽になる •  歯科衛生士の口腔ケアでまた食べられる •  薬剤師の相談で怪しい鎮痛薬のオーダーが変更に
なる •  栄養士がシャーベットを作る •  作業療法士が指のない患者さんに折り紙を教える
歓びはかけ算で,苦しみは割り算で 30
軋轢を生む要素にも注意
• 
• 
• 
• 
• 
• 
• 
• 
• 
• 
境界のはっきりしない領域⇆なわばり主義 多職種間の敵愾心 コミュニケーションの壁 チームの要望に合わない指導者 チームメバーを省いた方針決定 メンバー内のゴールや期待の相違 行き場のない敵意,かつての軋轢 異なる人間性(合う合わない) 脅かされたり,依怙贔屓感があったり 資源不足
31
平成22年 厚生労働省告示第72号:基本診療料の施設基準等の一部を
改正する件「緩和ケア診療加算の施設基準」より抜粋
1)緩和ケア診療を行うにつき十分な体制が整備されている
こと。
2)当該体制において、緩和ケアに関する研修を受けた医
師(歯科医療を担当する保険医療機関にあっては、医師
又は歯科医師) が配置されていること(当該保険医療機関において緩和ケ
ア診療加算を算定する悪性腫瘍の患者に対して緩和ケ
アを行う場合に限る。)。
3)がん診療連携の拠点となる病院若しくはそれに準じる病
院であること又は財団法人日本医療機能評価機構 (平成七年七月二十七日に財団法人日本医療機能評価機
構という名称で設立された法人をいう。以下同じ。)等が
行う医療機能評価を受けていること。
32
保医発0305第2号:基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続き
の取扱いについて(通知)「緩和ケア診療加算に関する施設基準」より抜粋
(1)当該保険医療機関内に、以下の4名から構成される緩和ケアに係る専従のチーム(以下「緩和ケアチー
ム」という。)が設置されていること。 ア 身体症状の緩和を担当する常勤医師
イ 精神症状の緩和を担当する常勤医師
ウ 緩和ケアの経験を有する常勤看護師 エ 緩和ケアの経験を有する薬剤師
(3) (1)のアに掲げる医師は,悪性腫瘍患者又は後天性免疫不全症候群の患者を対象とした症状緩和治療
を主たる業務とした3年以上の経験を有する者であること。
(4) (1)のイに掲げる医師は,3年以上がん専門病院又は一般病院での精神医療に従事した経験を有する
者であること。
(6) 1)のウに掲げる看護師は、5年以上悪性腫瘍患者の看護に従事した経験を有し、緩和ケア病棟等におけ
る研修を修了している者であること。 (7)1)のエに掲げる薬剤師は、麻薬の投薬が行われている悪性腫瘍患者に対する薬学的管理及び指導など
の緩和ケアの経験を有する者であること。
33
緩和ケア診療加算
•  1日400点�
•  Dr2, Ns1, 薬剤師1の体制の専従チーム�
•  緩和ケア計画書と同意書�
•  週1回のカンファランス
•  毎日チームで診ないと算定されない •  上限は1日概ね30名 34
Prof. Fainsinger (Dr) Nurse pracSSoner
Registered nurse
35 Gary (Registered Ns) Dr. Thai (Singaporean) 36 緩和ケアチームを構成する職種
医師�
看護師�
MSW
OT
チャプレン�
事務�
ボランティア・コーディ
ネーター
�
ボランティア�
Day centre leader
St. Luke’s
0.65
3
1
0
1
1
1
St. Thomas’s
1
5
0.8
0
0.2
1
0
Henderson
1.2
1
1
0.4
0.3
1
1
40
-
3
1
6
-
(O’Neil ら,1992) 37 38 本院のチームの構成
• 
• 
• 
• 
• 
• 
• 
• 
• 
• 
医師(緩和研修経験あり2, Psy1, 麻酔2)�
歯科医師�
看護師�
薬剤師�
臨床心理士�
ソーシャルワーカー�
管理栄養士�
作業療法士�
歯科衛生士�
鍼灸師
ただし,専従ゼロ,専任2,他は兼任
4-­‐5名 1名 1名 1名 1名 1-­‐2名 1名 1名 1-­‐3名 ?
39
ホスピス/PCUと緩和ケアチーム ホスピス/緩和ケア病棟
対象
場所
目的
医療者
緩和ケアチーム
入院している(主に)進行がん患者
専用病棟
一般病棟
終末期ケア>症状コントロー 症状コントロール>退院計画>
ル>退院計画>レスパイト
終末期ケア
医師, 看護師, 薬剤師, リハ
医師, 看護師, 薬剤師
ビリ,管理栄養士, 臨床心理
(法の規定)
士, 歯科衛生士etc
在院日数
制限無し
日数で保険点数漸減
在院死亡率
87.1%
不明だがPCUよりは少ない
ボランティア
いる場合が多い
なし
40
エドモントンのホスピスとPCU TPCU(三次緩和ケア病棟)
対象�
場所�
ホスピス�
がんおよびその他の治癒不可能な疾病を持
つ患者の終末期ケア�
病院附属�
独立型�
病態�
急性期�
安定期/慢性期�
医療者�
医師主導�
看護師主導�
予後など�
退院→在宅/ホスピス�
常勤医なし�
在院日数�
24.7日�
32-33日�
在院死亡率�
57.8%�
96%
ボランティア�
なし�
少数あり�
41
緩和ケア病棟の目的
•  末期疾患患者とその家族の緩和ケアを専門的に
行なう –  症状コントロール –  Total painのケア –  End-­‐of-­‐life care •  在宅ケア,近医への療養環境の変更 •  レスパイトケア •  緩和ケアの普及/研修
42
緩和ケア病棟の要件(一部)
• 
• 
• 
• 
専従の緩和ケア研修を受けた医師 十分な看護師数 全室個室も可(ただし差額ベッドは5割以下) 入退棟に関する基準が作成され、医師、看護師
等により入退棟の判定 •  患者家族の控え室、患者専用の台所、面談室、
一定の広さを有する談話室 •  緩和ケアの内容に関する患者向けの案内作成と
患者・家族への事前説明
43
緩和ケア病棟での症状
症状�
倦怠感�
食思不振�
疼痛�
悪心�
便秘�
せん妄�
呼吸困難感�
不眠�
口腔不快感�
褥創�
Brueraら�
90
%
85
76
68
65
60
12
−�
−�
−�
Hockleyら�
88
%
92
69
54
54
34
69
88
81
61
44 自治医科大学附属病院緩和ケア病棟 入棟への流れ
末期癌である患者さま自身が病状を理解されていること 患者様・家族・主治医へのアンケート/紹介状/予約 (自治医大HPからのダウンロードか配布したもの) 緩和ケア外来への紹介受診(予約制,月/金午後) 入退棟判定委員会 可否/緩急(緩和ケア医,師長,MSW) 入院予約 → 師長から連絡 → 入院 45
転医/転科できない理由
•  予期しない原病の悪化 •  家族が在宅ケアに対応できない •  相談が遅過ぎて全身状態が悪過ぎて移せない •  ホスピスの空き待ち
Dunlopら 1989 ご相談はお早めに!
20年前の論文だが,今当院で痛感していること!
46
自治医科大学附属病院緩和ケア病棟
•  18床 全室個室 数歩で入れるトイレ •  半数は無料,半数は8400円/日
地獄の沙汰も金次第でない病棟
•  症状コントロール •  終末期ケア / レスパイトケア(家族の休息) •  在宅との連携
QOLの保持を目指す病棟
47
西
東
• 全室個室 18床 • 有料個室 9床 22.35㎡ • 個室料 ¥8400 • ソファベッド • ホワイトボード • 液晶テレビ • DVD/ビデオ • リクライニングチェア • 電子レンジ • 洗面台 • 無料個室 9床 15.24㎡ • ソファベッド • ホワイトボード • テレビ(有料) 48 病棟カンファランス
栄養士
緩和ケア医
薬剤師
医学生
MSW 研修医
看護補助
事務
精神科医
看護師
麻酔科医
臨床心理士
49
チーム アプローチ
50 チームと連携がキーワード
•  緩和ケアチームが介入すればOKか? •  緩和ケア病棟へ入れたらラッキーか?
多職種参加 多施設協同 51
がんセンター
ホームケア
ホスピス/緩和ケア病棟
本人・家族
急性期の大病院
地域の病院/診療所
52
緩和ケアチームや緩和ケア病棟と在
宅医療との連携
6月30日髙橋昭彦先生の講義で
53
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