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(2016年11月28日号)米国大統領選挙特集:世界が驚いたトランプ当選

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(2016年11月28日号)米国大統領選挙特集:世界が驚いたトランプ当選
~~ しばかし社会科通信 ~~
アメリカ大統領選挙特集 65 号
2016 年 11 月 28 日 芝浦工大柏中学高等学校社会科
世界が驚いたトランプ当選~Make America Grate Again!~
*アメリカ大統領の強い権限*
国民から選挙で直接の信任を受けた大統領
は、行政の長として一人で方針を決められるな
ど権限が絶大である。議会の決めた法案を拒否
できるし、議会解散権がない代わりに任期が4
年(最大二期 8 年)もある。そして、米軍最高
司令官として、宣戦布告以外の全権限を持ち、
世界最強の軍隊を動かして、その経済力と合わ
選挙人(538 人)の内 290 人を獲得して民主党
せて世界に大きな影響を与えられる。
クリントン候補を破り当選した。これは、7月の
るのか、強い不安をもって動きを見つめている。
共和党全国大会で76分の演説を行った時。
21 日就任時に「TPP 離脱表明」をすると改めて
11 月 8 日はアメリカの大統領選挙投票日だっ
トランプが言明し、自由貿易が後退するとの懸
た。日本時間 9 日の午後 1 時にはクリントン候補
念が広がっている。
の当選が決まる、というのが大方の予想だった
白人労働者から票を集めたトランプ
が、昼頃から開票状況に変化が起こった。激戦
トランプ氏は、選挙戦を通じて、メキシコからの
と言われたペンシルバニア州だけでなく、中西
不法移民の強制送還やイスラム教徒の一時入
部の民主党が強かったミシガン・ウィスコンシン
国禁止の政策、女性蔑視の発言などから、大統
州で、トランプ候補がリードした。5 時にはトラン
領の「資質」を問われてきた。トランプ氏は、既存
プ当選が明らかになり、クリントン候補がトランプ
の政治・金融システムが一部の既得権層に不正
候補に敗北を認める電話をした。世界各国で驚
操作されていると主張。グローバル化によって
きの声が広がり、アメリカの沿岸大都市では若者
職を失った白人男性労働者、学歴の低い層が
を中心に「not my president」と叫ぶ抗議デモ
熱烈なトランプ氏支持者だと言われていた。そ
が暫く続いたが、内陸部では、トランプ当選に沸
れは、オハイオ州からペンシルバニア州にまた
き立つ支持者が各地で歓喜の声をあげている。
がる地域、鉄鋼業が急速に衰退した地域でトラ
日本の反応は、「トランプ・ショック」で株価が
ンプ氏が大きく票を伸ばしたことに現れた。
900 円以上下落し、円が 4 円も高くなった。しか
女性初の大統領を目指したクリントン氏は、大
し反対に、アメリカの株価は、当選前から上がり
統領夫人や上院議員、国務長官の経験と実績
続けて歴代最高値を更新するほど、経済対策
を強調。万全な組織力と資金力で臨んだが、有
への期待が盛り上がっている。その後も、各国
権者には既得権層の象徴と映り、激戦州で伸び
の政府関係者はトランプ氏がどのような政策をと
アメリカ大統領選挙の仕組み
日本との違い
・日本の首相は国会議員が選ぶ。アメリカの大統領は国民が選ぶ(形は間接投票)。11 月 8 日に
行われた選挙を「本選挙」と呼び、民主党と共和党の二大政党の間で争う。
立候補の資格
① 米国生まれであること(帰化者は不可)
③年齢が 35 歳以上であること
②14 年以上アメリカに住んでいること
(二大政党以外の場合、一定数の有権者署名が必要)
予備選挙から党の全国大会を経て候補者を指名
・二大政党は、夏までに各州で「予備選挙」を行って、支持者によって党の立候補者に優劣を決
める(立候補者を支持する代議員が選ばれる)。夏の全国大会で過半数の代議員を取った立
候補者が党の大統領選挙の候補者として指名されて、11 月初め火曜日の本選挙で争う。
本選挙は、州ごとに「大統領選挙人」を取り合う「間接選挙」
・アメリカ合衆国は 50 州が集まった連邦国家なので、全国の得票合計では決めない。州ごとに
獲得した「大統領選挙人」の数(総計 538 人)で当選を決める。
・「勝者独占方式」という、州で 1 票差でも最多得票となった候補者がその州の選挙人を全て取
る方式。選挙人は 12 月に形式的な投票を行って、1月 20 日に就任式を行う。
悩んだ。しかし、全国総得票数では、クリントン
48%、トランプ 47%で、クリントン氏が 200 万票
も多いと言われる。各州選挙人数で選ぶ現行方
式(上図参照)を変えるべきとの意見も出ているが、
憲法の規定なので改革はかなり難しい。
トランプ氏は第 45 代大統領として来年1月 20
日に就任式に臨む。就任時に歴代最高齢の大
統領となる。また、軍も含む公職経験の一切な
い大統領も初めて。現在は大統領以外の無数
の役職(4000 名と言われる)を、トランプタワー
に招きながら(マスコミの注目を浴びる)選定して
いる。白人がトランプ(58%対 37%)で、非白人
いる。大統領交代方法も全く異例となっている。
がクリントンという違いも大きい。
トランプ氏とクリントン氏の支持層は、その特徴
実は、トランプ氏が 10 月 22 日に、リンカーン
が大きく異なっていて、アメリカが分断されてい
演説で有名なゲティスバーグにて、就任後百日
るとも言える。出口調査からこれを分析しよう。最
で実施する 28 項目施策を発表した。腐敗したワ
大の違いが家計の評価で、良くなったと考える
シントン政治の変革や、中間層の夫婦子供二人
層が民主党クリントン(72%対 24%)、悪くなっ
家庭への 35%減税、手頃な価格の健康保険、1
た層が共和党トランプ(78%対 19%)である。次
兆ドルのインフラ投資などを打ち出していた。選
に大きなのが地理的特徴で、東海岸と西海岸の
挙最終盤に、トランプ陣営は労働者向け政策宣
大都市圏がクリントン(59%対 35%)、内陸部の
伝に力を入れていたのである。大金持ちのトラン
小都市や田舎がトランプ(62%対 34%)となって
プ氏がこれを実現するのかが注目される。
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