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ダーバン通信5 (2011 年 12 月 7 日 南アフリカ・ダーバン) 条約AWG

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ダーバン通信5 (2011 年 12 月 7 日 南アフリカ・ダーバン) 条約AWG
ダーバン通信5
(2011 年 12 月 7 日
南アフリカ・ダーバン)
12 月 6 日、COP17 の会場で、「I♡KP」のネクタイを細野環境大臣にプレゼントする海外の NGO
のメンバー(2011/12/5:写真:佐藤由美)
条約AWG議長、新たな統合文書を提示
12月7日朝、条約AWGの議長は、2週目に入ってからの議論を踏まえた、新たな統合文書
(Amalgamation text)を提示しました。
アップデートされた統合文書では、12月5日に提示された最初の統合文書の4つの法的オ
プションのうち、オプション1では明確でなかった「内容、期限、議論の場」の内容につい
て、具体的な提案がなされています。また、オプション1の2が新たに加えられ、オプショ
ン2にもオプション2の2が加えられています。オプション3と4は変わっていません。
オプション1-1:条約第17条に従って、議定書を作り上げることを決定する
*内容について
オプションA:バリ行動計画(decisions 1/CP.13)とカンクン合意(decisions
1/CP.16)を基礎とする
オプションB:緩和(すべての締約国の目標および又は行動、MRVとマーケットメ
カニズムを含む)、適応、技術移転と資金(リストは網羅的ではな
い)
*時間枠
・2012年に交渉を開始
・COP18(2013年)あるいは少なくともCOP21(2016年)で採択する
*話し合いの場について
条約AWGあるいは新しいAWG
1
オプション1-2:法的拘束力ある文書/成果に通じる、バリ行動計画(decisions 1/CP.13)
とカンクン合意(decisions 1/CP.16)を基礎とする合意を完成させるよう、
条約AWGに要請する。
オプション2-1:一連の決定で、バリ行動計画及びカンクン合意をもとに合意された成果
を完成させることを決定する。
オプション2-2 :一連の決定で、カンクン合意をもとに合意された成果を完成させるこ
とを決定する。
オプション3:バリ行動計画、カンクン合意、COP17での議論及び条約第17条に従って締
約国からの提案をもとに合意された成果を完成させるまで、条約AWGで法的
オプションについての議論を継続。
オプション4:決定無し。
オプション1-1と1-2との違いは、オプション1が新たな議定書に合意することになってい
るのに対し、1-2では採択される合意は、「議定書ではなく法的拘束力ある文書/成果」と
されているところです。
オプション2-1と2-2の違いは、オプション2が「条約AWGのもとで、バリ行動計画及びカ
ンクン合意」を基礎とするとしているのに対し、2の2では基礎とするものが「カンクン合
意」だけになっています。この2-2に関する背景として、12月6日のコンタクトグループで、
アメリカが「バリ行動計画」及び「条約AWG」を議論の基礎とする記述の削除を求めたのに
対し、インドがこれに反対したことから、2つのオプションに分けられました。
2013年以降の枠組みの議論を、バリ行動計画を基礎に進めるか、カンクン合意を基礎に
進めるかについては、今年4月のバンコクでのAWGで議題の設定をめぐって、まる一週間揉
めた論点です。今回も中国や後発開発途上国(LDC)がバリ行動計画に拘ってますが、これは、
バリ行動計画の方がカンクン合意より包括的であることや、先進国の削減義務の議論は議
定書AWGで行い、途上国の削減行動の議論は条約AWGで行う「2トラック」方式を前提として
いるからです。
リーダーシップを(12月7日のecoの意訳)
法的オプションの議論で、 ecoが受け入れられるものは一つしかない。オプション1だけ
だ。このオプションだけが、バリ行動計画とカンクン合意をベースに、条約の下に議定書
あるいはその他の法的拘束力ある文書の交渉を2012年に始め、2015年に合意するとしてい
る。なんてすばらしいのでしょう!
しかし、噂ではアメリカ、インド、中国がこの素敵なオプションに反対しているらしい。
ecoは、インドと中国の京都議定書への愛情と第二約束期間への強い情熱を共有するが、
このオプションに対する拒絶反応には失望を隠しきれない。
ecoは、「共通だが差異ある責任」とそれぞれの能力に応じたルールベースのシステム
を支持してきたインドと中国を、敬意をはらうべき友達だと考えている。もしこれらの国々
が、拘束力ある第二約束期間を本当に真剣に考えているのであれば、ダーバンで第二約束
期間を決めるマンデートに建設的に関わるべきである。
インドと中国は法的オプションの議論で頑固な態度を維持するよりも、つい先日、報道
陣に見せたような柔軟な態度をとるべきである。
もちろん、
「責任」は条約にも記されているとおり、公平で、共通だが差異ある責任とそ
れぞれの能力に応じたものでなければならない。しかし、こうした原則を盾にプロセスを
2
妨害するのではなく、こうした原則に基づいてこそ、法的オプションの強化に向けて仕事
をすべきだ。自国の利益のみに縛られるのではなく、いまこそ地球の利益にまで視野を広
げるべきである。
グローバルアクションデーに参加して
12 月 3 日のグローバル・アクションデーに、ダーバンでパレードが行われました。パレ
ードには何千人もの人々が参加していて、国籍・年齢・性別に関わらず、ごちゃまぜにな
って温暖化対策の発展を求めていたのが印象的でした。
その中で、私たちは、原発から再生可能エネルギーへの転換を求める横断幕を掲げて行
進しました。日本語でも書いてた事もあったのか、私たちの横断幕は注目を集め、多くの
人が写真や映像を撮ってくれました。途中、アフリカで HIV 関連の取り組みを進める
「NAPWA」の人たちが、一時間以上私たちの横断幕を一緒に持ってくれました。
地震の被害や福島原発の事故のことは多くの参加者が知っていました。ある参加者は以
前に陸前高田市にボランティアに参加しており、原発事故のことも心配してくれていまし
た。私たち以外にも原発反対をアピールする NGO も多く、原発を無くしたいという私たち
の思いは、パレードに参加した多くの人に共通の思いだと感じました。(CASA から参加し
ている「俺たちの環境サミット」のメンバーより)
12 月 3 日、ダーバン市内で行われた「Global Day of Action March」(2011/12/3:写真:「俺たち
の環境サミット)
細野環境大臣が、海外と日本の NGO と懇談
12 月 6 日午後 5 時 45 分から 1 時間、細野豪志環境大臣と海外と日本の NGO との懇談が
行われました。
先に行われた海外の NGO との懇談では、最初に細野環境大臣に「I♡KP(私は京都議定
書が大好きです)」と書かれたネクタイがプレゼントされました(写真)。その後、懇談が
行われ、まず細野環境大臣から日本の交渉ポジションについての説明がなされ、海外の NGO
から、京都議定書の第 2 約束期間への参加、将来枠組みの交渉の期限、緑の気候基金(GCF)
問題、長期資金の財源問題などについて要請が行われました。
その後、日本の NGO との懇談が行われ、後記の要請文書を手渡すとともに、3 点につい
ての要請を行いました。また、ここで前向きのシグナルが出されないと、日本国内の温暖
化対策も進まないことが心配されることや、民主党が行おうとしている自動車重量税など
3
の廃止の問題や、森林吸収源問題についての日本のポジションなどについても懇談しまし
た。
日本の NGO からの要請文は以下のとおりです。
細野豪志 環境大臣
殿
2011 年 12 月 6 日
「環境・持続社会」研究センター
足立治郎
気候ネットワーク
平田仁子
WWFジャパン
山岸尚之
地球環境と大気汚染を考える全国市民会議
早川光俊
レインフォレスト・アクション・ネットワーク日本代表部
川上豊幸
貴職の地球温暖化問題に関するご活動,とりわけ,福島原子力発電所事故に対するご活動
に対し,心から敬意を表します。
私たちは,COP17 に参加している,気候変動問題の国際交渉に関わっている日本の NGO で
す。
11 月 28 日に始まった COP17 では,京都議定書の第二約束期間を求める声が日増しに高ま
っています。気候変動の影響に対し脆弱な国々にとって,法的拘束力ある削減目標をもつ京
都議定書は,顕在化しつつある気候変動の影響を食い止める大きな希望であり,「アフリカ
の地を京都議定書の墓場にすることを許さない」とのアフリカの国々をはじめとする脆弱な
国々の訴えが大きな共感を呼んでいます。
2013年以降の削減目標や制度枠組みの交渉は,交渉開始から8年を経ても合意の目処がた
っていません。
私たちは,京都議定書の約束期間に「空白」を生じさせないこと,ここダーバンで,2013
年以降の法的拘束力ある包括的な枠組みの交渉プロセスを決めるマンデートに合意するこ
とを強く期待しています。また,カンクン合意の運用化に関しては,世界の温室効果ガス排
出のピークアウトの時間枠や長期目標,2℃目標との「ギャップ」を埋めるための目標の引
き上げと各国の目標のより明確な位置づけ,MRV・ICA・IRAなどを通じた共通の算定ルール
と緩和行動の可視化,必要な資金を確保できる資金システムの確立などが盛り込まれること
が必要だと考えています。
そこで,大臣に以下の点をお願いしたいと思います。
1
京都議定書の第二約束期間に対する日本のポジションを再考するとともに,自らの参
加を含め,柔軟な姿勢で交渉にあたっていただくこと。
2
2013年以降の法的拘束力ある包括的な枠組みの合意に向けたプロセスを,ここダーバ
ンで開始し,遅くとも2015年に完了するマンデートの合意に向けて,リーダーシップを
発揮していただくこと。
3
カンクン合意の運用化では,2013年からの着実な行動が確保されるような合意に向け
て,柔軟な姿勢で交渉にあたっていただくこと。
世界気象機関 (WMO)は,「温室効果ガスの濃度は過去最高を更新し,私たちの地球,生物
4
圏,海洋に不可逆的な変化をもたらす平均気温に急速に近づいている。」としています。気
候変動は急速に進んでいます。現在及び未来の子供たちのために,大臣のいっそうのご努力
をお願いしたいと思います。
閣僚級会合での細野環境大臣のスピーチ
12 月 7 日の午前の閣僚級会合のセッションで、細野環境大臣がスピーチを行いました。
スピーチは、日本は京都議定書の第 2 約束期間には参加しないとの従来のポジションを
繰り返すもので、ほとんど新たな提案などはないものでした。
将来枠組みの交渉期限については、「2020 年を待つことなく、できるだけ早く」と述べ
ただけで、EU のように 2015 年などの具体的な期限への言及はありませんでした。
また、
「2℃目標を認識し、2050 年までに世界全体の温室効果ガス排出量を少なくとも半
減することを世界共通の目標にすべき」とは言いましたが、2020 年 25%削減目標には言及
せず、2℃未満にするための排出量と現在の各国の削減約束との間にはギガトン(10 億ト
ン)レベルのギャップがあることにも言及はありませんでした。
会議場から
12 月 28 日の開会総会で、中国が、中国、インド、ブラジル、南アフリカの BASIC グル
ープ(BA:ブラジル、S:南アフリカ、I:インド、C:中国)を代表して初めて発言し、話
題になっています。
現在の気候変動枠組条約には 195 カ国、京都議定書には 193 カ国が締約国になっており、
これらの締約国はいくつかの交渉グループに分かれています。大きなグループとしては、
EU(欧州連合の 27 カ国)、アンブレラグループ(日本・アメリカ・カナダ・ノルウェー・
アイスランド・オーストラリア・ニュージーランド・ロシア・ウクライナ)、G77+中国(途
上国グループ)などがあります。また、環境十全性グループ(Environmental Integrity
Group)という、EU に属していないスイスと、OECD に加盟したので途上国グループから独
立?した韓国とメキシコのグループもあります。また、G77/中国のサブグループとして、
小島嶼国連合(AOSIS)や、後発開発途上国(LDCs)、産油国が集まっている石油輸出国機
構(OPEC)、アフリカングループ、アルバ諸国(ALBA)、熱帯雨林諸国連合などがあります。
こうしたグループは、利害が一致することもあり、共通のポジションをとり交渉に対応
します。総会などでは、こうしたグループごとの発言に限定されることもあります。
BASIC は、中国(1 位)、インド(4 位)など排出量が大きいだけでなく、政治的にも途
上国のなかでも大きな影響力をもっており、2013 年以降の削減行動などの合意に向けた交
渉に大きな影響を与えるだけに、今後の動向が注目を集めています。
発行:地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)
〒540-0026 大阪市中央区内本町 2-1-19 内本町松屋ビル 10-470 号室
TEL: 06-6910-6301 FAX: 06-6910-6302
早川光俊、大久保ゆり、古家明子
現地連絡先:
早川光俊 +81 9070961688、[email protected]
大久保ゆり +27 793560538、[email protected]
#これまでの通信は、以下のサイトをご覧ください
http://www.bnet.jp/casa/cop/cop.htm
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