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「英国ブリストル大学でのストレスに対する生物学的応答

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「英国ブリストル大学でのストレスに対する生物学的応答
海外先進教育研究実践支援プログラム報告
「英国ブリストル大学でのストレスに対する生物学的応答に関する研究
を終えて」
滞在期間:平成17年2月1日∼平成18年1月9日
滞 在 国:英国(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)
事業名称:被虐待児におけるストレス応答解析
大学院医歯薬学総合研究科
池松 和哉 助手
近年,児童虐待が社会的問題として認知されています。私は法医学を専門としており,被虐待児症
例の生体検査を経験することも少なくありません。その中で,心理学や精神医学に関しては全くの素
人ですが,虐待を受けた子ども達が不安,怯えやうつ状態などの「情緒的・心理的問題」を抱えてい
るように感じることが多々ありました。そこで,ストレス,特に長期ストレスに対して生体はどのよ
うに反応するのか,また,できれば,反応した生体をストレス前の状態に戻すことができるのかとい
うことに興味を持ち,この度,海外先進教育研究実践支援プログラムのサポートを受け,ブリストル
大学の Henry Wellcome Laboratories for Integrative Neuroscience and Endocrinology(HWLINE)にて,ストレスに対する生物学的応答に関する研究を行う機会を得ることができました。
ブリストルは,人口50万人の英国南西部最大の町です。エイボン川の河口に位置する港町で,か
つては貿易で栄えていたそうです。また,超音速旅客機のコンコルドを製造したところでもあり,現
在でも航空・自動車産業が盛んだそうです。港町であるために,非常に坂が多く,大学の行き返りに
坂道を登るときには長崎に住んでいるような錯覚を覚えていました。ブリストル大学は,OxBridge に
次ぐ,英国でも有数の大学で,工学部・物理学部・医学部・教育学部だけでなく,演劇学部も有する
総合大学です。
ブリストル大学全景
今回の滞在では,Michael Harbuz 博士,David Jessop 博士の指導の下,James Leggett 博士,
Shirley Hesketh 博士と共に,HW-LINE にて短期ストレス,長期ストレスモデルにおけるストレス反
応を検討しました。具体的には,ラットに Lipopolysaccharide,Mycobacterial Adjuvant を投与し,
ストレス応答 Hormone である血中 Corticosterone 濃度を Radioimmunological Assay(RIA)法にて,
また,脳内での arginine vasopressin,corticotropin releasing factor,及び,C-fos の
messenger RNA 量を In situ Hybridization(ISH)法にて測定し,年齢別・性別に検討するという
ものでした。2,3日で結果が確認できる RIA 法は別として,ISH 法は結果を得るまでに2,3週間
程度要します。わずか 11 ヶ月しかない私の滞在期間にとって,ISH 法の待ち時間は一日千秋の思い
でした。帰国間際の12月下旬にようやく全ての結果を得,Harbuz 博士,Jessop 博士と結果につい
て Disscussion できたのは帰国の数日前でした。両博士より帰国後に論文を執筆するように命ぜら
れています。また,Harbuz 博士から6月より8月まで Master Course に所属していた Alison
Paygen さんの実験指導を依頼され,二人で実験を行いました。無事,Alison さんは Master Course
を卒業されましたが,私の拙い英語での説明に,いつも忍耐強く笑顔で Alison さんが聞いた後に,
優しく正しい英語を教えてくれたことが印象に残っています。
研究所実験室にて(Hesketh 博士)
ブリストル大学での研究経験を生かして,今後の研究を続けたいと考えています。
最後に,この貴重な機会を与えてくださいました関係者の皆様に心より感謝申し上げます。
追記:Michael Harbuz 博士は去る3月11日に急逝されました。慎んでご冥福をお祈りいたしま
す。
ラボの先生方と共に
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