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オンライン証券会社の適時情報開示について −主要ネット証券の事例を

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オンライン証券会社の適時情報開示について −主要ネット証券の事例を
オンライン証券会社の適時情報開示について
−主要ネット証券の事例を中心に−
平島
鹿蔵(日本個人投資家協会)
はじめに
企業内容の開示制度は、平成8年以降の規制緩和や競争促進を図る一連の証券市場改革
推進の下に、金融庁等の行政面での「企業情報に関する電子開示システム」の開発・運用
とともに情報化に対応した「市場インフラ整備」上の重要な構成要素として位置付けられ
ている。企業の情報開示は、株主や投資者等の意思決定に有用な情報を正確かつ迅速に関
係者に伝達し、公正で透明な証券市場での株価形成と流通に不可欠な市場ル−ル化に向け
ての役割を果たすように要請されている。
一方、規制緩和と破格的な委託手数料の値下げ競争や、内外異業種からの新規参入、倒
産や買収・合併等の急激な変革に迫られてきた証券会社等には、証券市場での仲介業者と
して公正性を確保する責務がある。最近では、インタ−ネット証券取引の便益性等を背景
に、これを利用する個人投資家が急増し、無店舗でネット専業のオンライン証券会社も出
現している。ネット証券会社のディスクロ−ズは、通常の法定及び適時情報に加え、ネッ
ト取引に伴う特殊性(非対面・非書面)等に基づいた特別措置も考慮されている。
1
金融庁EDINET(エディネット)システム
金融庁は、IT電子政府構想の下に、行政サ−ビスの一環として「証券取引法に基づく
有価証券報告書等の企業情報に関する電子開示システム(EDINET:Electronic
Disclosure for Investors ‘NETwork )を、平成 13 年6月からの試験的段階を経て本年6
月より完全実施した。今後の法定開示書類は、従来の印刷物での提出と閲覧に代え、ED
INETシステムを通じインタ−ネット上において、登録と閲覧が容易になつた。
2
各証券取引所等の開示制度
各証券取引所等の自主規制機関では、常に規制の在り方を調査・研究するとともに法定
開示制度とは別に、適時情報開示制度を設けて開示情報の敏速な伝達に努めている。
1)東京証券取引所のTDnetシステム
東証では平成 11 年に、適時開示を上場会社に義務として規則化した。適時開示に係る情
報をより公平、迅速かつ広範に伝達する目的で、平成 10 年4月にTDnet(Timely
Disclosure networ の略称)システムを導入し、12 年同月より本格実施に移行した。上場
会社は、重要な会社情報が生じた場合に、直ちにTDnetへの登録が義務付けられ、東
証ホ−ムペ−ジ上の「適時開示情報閲覧サ−ビス」にて、検索・閲覧できる。
2)大阪証券取引所のED−NETシステム
大証においても、東証と同様に「適時開示規則」を制定し、重要な会社情報が生じた場
1
合には、当該内容を直に公示するよう義務づけている。重大な影響を与える事象が決定・
発生した際に作成される情報は、ED−NETシステム(Electronic Disclosure System)
の下に、インタ−ネットを通じてリアルタイムで公示・閲覧できる。
3)日本証券業協会(JASDAQ)
ジャスダック市場は、証券取引所市場の補完市場として、ベンチャ−企業向けの証券市
場とて重要な役割を果たしている。日本証券業協会では、証券市場の公正性・透明性を確
保し、投資家の信頼を得るためには、情報の正確かつ迅速な開示が不可欠との見解のもと
に、タイムリ−・ディスクロ−ジャ−を義務づけている。大証を除く全国証券取引所に上
場する会社の公示文書(決算短信、適時開示資料等)は、インタ−ネット公示システムの
「適時開示情報閲覧サ−ビス」にて閲覧できる。
3
ネット証券会社の適時情報開示
1)インタ−ネット証券の取引拡大
インタ−ネット取引の普及と便益性を背景に、従来の対面営業による取引からインタ−
ネット取引に移行する投資家が急増している。平成 16 年3月末でのインタ−ネット取引口
座数は約 495 万口に達し、前年同月に比べ 103 万口座(26.4%)に増加した。
平成 15 年度年度中の株式委託取引の売買代金は約 81 兆 950 億円(前年度比 284%)に増加
した。インタ−ネット証券会社は、平成 10 年3月末の 11 社から規模の拡大と共に、16 年
度3月末では 55 社に増加した。
2)主要ネット専業4社の概要
ネット専業証券4社の資本系列並びに営業収入と取引口座数は、下記の通り著しく増加
している。
会
社 名
資
本
系
列
営業収入
口座数
松井証券
東証1部上場・独立系
25,036(1.9 倍)
143,229 (1.5 倍)
イ−トレ−ド
SBIの子会社
14,765(1.9)
351,950 (1.4)
DLJデレクト
楽天の子会社
10,000(1.7)
161,781 (1.2)
マネックス
東証マザ−ズ上場
7,800(2.8)
249,266 (1.2)
注)
金額は 100 万円単位、括弧内は前年比倍数
上記4社のうち、独立系の東証一部上場企業(松井)は1社のみである。イ−トレ−ド
は、ソフトバンク・インベストメント(SBI)の子会社である。DLJデレクトは、平
成 15 年 11 月に楽天株式会社に買収された。同社は本年 16 年7月に楽天証券に社名変更予
定である。マネックス(ソニ−30.44%出資)は、平成 12 年東証マザ−ズ上場、平成 16 年
8月上旬に日興ビ−ンズ(5 位、日興コ−ディアルグル−プ 74%出資)と持株会社として
統合し、平成 17 年度中に、東証1部に上場変更の予定である。
なお、本報告では、最初に行政上の電子公示システムを概述し、次に、ネット証券での
特殊性に基づいた情報開示の状況を述べ、最後に、問題の所在等を考察したい。
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