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新潟県におけるレジオネラ症患者発生状況(PDF形式 563 キロバイト)

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新潟県におけるレジオネラ症患者発生状況(PDF形式 563 キロバイト)
新潟県におけるレジオネラ症患者発生状況
新潟県保健環境科学研究所 細菌科
1
主任研究員
○細谷美佳子
(3) 診断法
レジオネラ症とは
1976 年、米国在郷軍人会(The Legion)
診断法の内訳は尿中抗原検出法が 90 名、
の会合参加者等による集団肺炎が発生し、レ
レジオネラ属菌検出法が 4 名、血清抗体価
ジオネラ症がはじめて認知されました。1998
測定法が 2 名でした。
年、レジオネラ症は感染症法において四類感
(4) 推定感染経路
染症に指定され、医師による患者の全数届出
入浴施設や自宅風呂が感染経路と推定され
が義務づけられています。主な病型には、重
た患者が約3分の1を占めていました。それ
症化傾向の強いレジオネラ肺炎とインフルエ
以外の推定感染経路として、配管清掃作業、
ンザ様の熱性疾患であるポンティアック熱が
建物解体作業、下水道工事、道路工事、畑仕
あります。レジオネラ症はレジオネラ属菌を
事などがありました。また、患者の半数が感
含んだ水しぶきや土ぼこりを吸い込むことに
染経路不明でしたが、その中には水しぶきや
よって発症しますが、レジオネラ属菌は自然
土ぼこりが発生しやすい環境にある職業の人
環境や人工環境に広く分布しています。2004
も含まれていました。
年には簡便な検査法である尿中抗原検出法が
保険適用になったことなどから、この方法に
よる診断が急増し、患者からレジオネラ属菌
が検出されることが少なくなっています。
2
新潟県の患者発生状況
2006 年から 2010 年に新潟市保健所を除
く県内保健所(以下、県保健所)にレジオネ
表1 患者の推定感染経路
推定感染経路
患者数(名)
水系感染
38
入浴施設、自宅風呂
31
配管清掃作業
5
その他
2
塵埃感染
7
水系・塵埃感染
1
不明
50
計
96
ラ症発生届(以下、届出)があった患者を対
象とし、届出をもとに発生状況についてまと
めました。
3
まとめ
今回、感染経路が特定された事例はありま
(1) 患者数の推移
せんでしたが、レジオネラ症感染防止対策を
この期間に県保健所に届出があった患者は
講じるためには感染源の特定が必要です。感
96 名で、毎年 20 名前後でした。
染源であると特定できるのは、患者と感染源
(2) 性別年齢分布
の両方から遺伝子型が同一の菌が検出された
平均年齢は 63.8 歳でした。男性は 82 名
場合、あるいは複数の患者から遺伝子型が同
で 50 歳代に患者数のピークがあり、女性は
一の菌が検出され、疫学的に感染源であると
14 名でこのうち 70 歳以上が 11 名でした。
判断される場合などが考えられます。感染源
を特定するためには、保健所の感染源調査で
16
水しぶきや土ぼこりが発生しやすい環境を見
女
男
14
患 12
者 10
数
落とさないこと、患者からのレジオネラ属菌
検出と収集の重要性を関係者に周知すること
8
(
が重要です。また、身近なところにレジオネ
4
2
ラ症感染の原因になり得る事柄があることか
年齢群(歳)
図1 患者の性別年齢分布
85-89
80-84
75-79
70-74
65-69
60-64
55-59
50-54
45-49
40-44
35-39
30-34
25-29
20-24
15-19
0
10-14
)
名 6
ら、県民や関係者に周知していく必要があり
ます。
新潟県における
レジオネラ症患者発生状況
1 レジオネラ症とは
新潟県保健環境科学研究所
細菌科
細谷 美佳子
(1)レジオネラ症の歴史と症状
・主な集団感染事例(国内)
„ レジオネラ症の認知
1976年、米国フィラデルフィア
1976年、米国フィラデルフィア
在郷軍人会(The
在郷軍人会(The Legion)
Legion)
集団肺炎事例
感染源はホテル
2002年
宮崎
温泉施設
(2)レジオネラ属菌の特徴
„
„ レジオネラ肺炎
インフルエンザ様症状
様症状
自然軽快
新生児病棟
温泉施設
温泉施設
患者は医師により全て
保健所に届出
患者は医師により全て保健所に届出
レジオネラ症の症状
„ ポンティアック熱
東京
静岡
茨城
・1998年 感染症法四類感染症に指定
の冷却塔
発熱、肺炎、意識障害
重症になり、死亡することもある
重症になり、死亡することもある
1996年
2000年
„
自然界に広く分布
河川、池、温泉、土壌
細胞内寄生性
・自然界
アメーバに寄生し、増殖
バイオフィルム内に生息
バイオフィルム内に生息
配管中の「ぬめり」
・生体内
マクロファージ内で増殖可能
マクロファージ内で増殖可能
白血球の一種で細菌などの異物を捕らえて消化する
レジオネラ属菌とバイオフィルム
消毒薬
アメーバに寄生して
増殖するレジオネラ属菌
バイオフィルム
栄養分
生体内でのレジオネラ属菌
一般の細菌はマクロファージ内で殺菌されるが
菌の抵抗機能
により殺菌されずに増殖する
菌の抵抗機能により殺菌されずに増殖する
人(感染者)の免疫力
と菌の抵抗機能
抵抗機能の力関係
の力関係
人(感染者)の免疫力と菌の
配管
バイオフィルム中で増殖、消毒薬からも保護
レジオネラ症対策とバイオフィルム対策は
切り離せない
免疫機能が低下している人、基礎疾患のある人、
免疫機能が低下している人、基礎疾患のある人、
高齢者が感染しやすい
高齢者が感染しやすい
(3)感染経路と感染源
感染経路
環境中
感染源になりうる人工環境
„ 水系感染
菌数は少ない
冷却塔
循環式浴槽、温泉、プール
加湿器、ネブライザー
シャワーヘッド、水景用水
„ 塵埃感染
腐葉土
土ぼこりと一緒に飛散し人工環境に侵入
人工環境内で増殖
空中へ放出
水しぶき、土ぼこりと
一緒に
肺に吸い込む
(4)レジオネラ症の検査
①尿中抗原検出法
„ 簡便、反応時間短い
„ 2004年保険適用
2004年保険適用
„ ニューモフィラ
血清群1のみ検出
届出患者数増加
届出の9割以上
患者から検出された菌種・血清群
デュモフィ
1%
ボゼマニ
1%
その他4%
ミクダデイ3%
ニューモフィラ血清群1
ニューモフィラ血清群6
血清群
その他
39%
血清群1
50%
ニューモフィラ血清群その他
ボゼマニ
血清群6 2%
Benin AL , Benson RF , Besser RE :Trends in
Legionnaire’s disease , 1980-1998 : declining
mortality and new patterns of diagnosis. Clin Infect
Dis 35 : 1039-1046,2002
デュモフィ
ミクダデイ
その他
患者の半数は尿中抗原検出法で陰性となる
(4)レジオネラ症の検査
②菌検出法
(5)感染源特定と遺伝子解析
„ 感染源を特定するためには
„ 専用培地必要、1
専用培地必要、1週間培養
„ ニューモフィラ以外の菌種も検出できる
„ 届出患者の数%
・ 患者菌株と
患者菌株と感染源菌株の遺伝子型一致
感染源菌株の遺伝子型一致
・ 複数患者菌株の遺伝子型一致し、患者に
複数患者菌株の遺伝子型一致し、患者に
共通の行動有り(例:共通施設の利用)
共通の行動有り(例:共通施設の利用)
どんな影響が?
菌株が必要
県内冷却塔由来ニューモフィラ血清群1の
遺伝子解析(PFGE解析)
地点
採取日
836
本館(右)
H10.10.14
837
本館(右)
H10.10.14
442
新館
H9.11.5
833
本館(左)
H10.10.14
353
本館
H9.10.6
444
新館
H9.11.5
445
新館
H9.11.5
844
隣接建物
H10.10.14
839
新館
H10.10.14
840
新館
H10.10.14
443
新館
H9.11.5
831
本館(左)
H10.10.14
832
本館(左)
H10.10.14
843
隣接建物
H10.10.14
845
隣接建物
H10.10.14
新潟県における患者発生状況
„ 期間
„ 対象
: 2006年
年12月
2006年1月~2010
月~2010年
12月
届出患者数推移
これ以前
新潟市
保健所分
を合わせ
ても年間
10名程度
25
20
患 15
者
数 10
名
)
:県内保健所(新潟市保健所を
除く)に届出があった
レジオネラ症患者96
名
レジオネラ症患者96名
2 県内発生状況
(
菌株番号
5
0
2004年
尿中抗原検出法
保険適用
20 0 6 2 00 7 2 0 08 2 0 0 9 20 1 0
届出年( 年)
患者の性別年齢分布
診断法
(男性82名、女性14名)
患
者
数
16
14
12
10
8
6
4
2
0
診断法
女
男
尿中抗原検出法
レジオネラ属菌検出法
レジオネラ属菌検出法
血清抗体価測定
法
血清抗体価測定法
(
90
4
2
96
85-89
80-84
75-79
70-74
65-69
60-64
55-59
50-54
45-49
40-44
35-39
30-34
25-29
20-24
15-19
計
10-14
)
名
患者数(
患者数(名)
年齢群(歳)
県保健所管内
感染源特定事例なし
推定感染経路
推定感染経路
患者数(名)
38
水系感染
入浴施設、自宅風呂 31名
31名
配管清掃等作業
5名
その他
2名
塵埃感染 (建物解体作業・下水道・道路工事、畑仕事)
建物解体作業・下水道・道路工事、畑仕事)
水系・塵埃感染
男性が多い
不明
7
1
3 まとめ
50
水しぶき・土ぼこり発生しやすい環境にある職業の人も
計
96
(1)患者発生状況から
„ 菌検出患者少ない
感染源特定は困難
菌検出の重要性を関係者に周知する
必要あり
„ 推定感染経路不明事例
が多い
推定感染経路不明事例が多い
水しぶきや土ぼ
水しぶきや土ぼこりが発生しやすい
環境(
や生活習慣))を見落とさ
環境(患者の職業
患者の職業や生活習慣
ないよう、関係者に周知する必要あり
(2)感染を防ぐために
予防のポイント
①バイオフィルムを付けない
②バイオフィルムを取り除く
③吸い込まない
増えやすい場所と予防法
場
所
循環式浴槽
予防のポイント
換水・清掃をこまめに
℃以上に設定する
温度を60℃
循環式給湯設備 温度を60
加湿器
タンクの水抜き、清掃
腐葉土
扱うときはマスクをする
特に注意が必要な人
高齢者、基礎疾患(糖尿病、腎障
害、肝障害、免疫不全)のある人、
体調の悪い人
増えやすい場所に近づかない
菌を吸い込まない対策
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