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再保険 マーケット・アウトルック

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再保険 マーケット・アウトルック
再保険
マーケット・アウトルック
再保険キャパシティが増加し、需要を上回る状態が続いて
いる
2013 年 1 月
Reinsurance Market Outlook
もくじ
エグゼクティブ・サマリー: 再保険キャパシティが増加し、需要を上回る状態が続いている
第 4 四半期のキャタストロフの活発化にかかわらず、供給過剰は続いている
Aon Benfield Securities によるキャットボンド市場の年次レビュー
元受保険者の資本が増加し、再保険需要は縮小している
ハリケーン「サンディ」によって、年間のキャタストロフ損害は過去の平均を上回った
格付け業者に関する最新事情
2013 年の M&A 推進要因
経済と金融市場の最新事情
銀行の財務レバレッジ
お問い合わせ先
エーオン ベンフィールドについて
2
3
5
9
12
16
23
31
32
39
40
40
Aon Benfield
エグゼクティブ・サマリー: 再保険キャパシ
ティが増加し、需要を上回る状態が続い
ている
2012 年、再保険資本は 5,000 億ドルに達した。2012 年には、多額の再保険回収を必要
とするキャタストロフ損害がなかったことで、世界のキャタストロフ損害額が「新たな水準」を
更新することを避けることができた。キャタストロフによる保険損害が大幅に減少したことは、
(再)保険者の自信回復に繋がった。一方、再保険者の資本が記録的な水準に達したこと
で、再保険需要に対する供給の余裕はかつてないほど大きくなってきている。再保険者の
資本規模でみた再保険の供給額は、10%以上増加し、調達された再保険キャパシティで
みた再保険の需要は、キャタストロフ契約では横ばいだが、ほとんどのノン・キャタストロフ
契約では減少している。
年は、再保険購入者に向けて再保険の価値提案をさらに高めるため、再保険者が株式以外の資本源
泉(訳注:再保険者が伝統的な株式発行による資本調達を基に行う引受の代替として、担保付ファシリティな
ど金融市場から得られる非伝統的な資本を引受の源泉として利用すること)に関するさらなる取り組みを推
進する年になると弊社では予測する。再保険の大規模な購入者はすでに、引受資本の加重平均コストを低く
抑えるために、よりコストの低い株式以外の資本源泉にアクセスしている。この流れは、再保険者の自社株
買い、統合、再保険者の運営するファンド・ビジネスの創造に繋がっている。今後 5 年の間には、主要再保険
者の半数以上が投資家向け保険関連ファンドの運営を行っていると推測される。
再保険者はまた、当面の投資環境下では再保険ビジネスへの多様化が魅力的であると捉える投資家が提
供する、再保険者のノン・プロポーショナルのレトロ・キャパシティのニーズにより適合する資本源泉に依存し
て、自らのテールリスクを管理し始めている。元受保険者は既にこうしたダイナミックスの恩恵を受けているが、
これからもこの状況は続くだろう。
元受保険に対する需要は世界的に継続して増加するだろうが、そのペースは減退する。成熟した経済は成
長率が落ち、直近の成長期の余剰投資は減らされるか、見直しが必要となるからである。しかし、保険と再保
険の需要には、まだ改善の見込みがある。
格付け業者のモデルあるいは、今後導入が予定されるソルベンシーの要件は、保険者や再保険者が、一定
の資本の下で引き受けることのできるリスク量を今までよりも減少させる方向にあるが、もし同様のストレステ
ストが企業側(被保険者側)に適用されたならば、保険が果たす役割はより明確になるだろう。最近の災害か
らの教訓が新たな需要を創造する可能性がある。災害の経験は、保険が付された物件は修復が早く行われ、
政府の支出も少なく、貸し手の資本を脅かすこともなく、コミュニティに対して継続性を提供することを示してい
る。ローン付物件に保険を付けるといった単純な方法を導入することもできない銀行の改革に、まだ、世界中
で多大な努力が必要とされているというのは驚くべき事実だ(たとえば、米国の銀行はローン提供物件に対
する地震保険の付保をいまだに求めていない)。
2013
3
Reinsurance Market Outlook
現実として、これらのリスクをファイナンスしてきた多くの国の政府は、保険料の援助を削減し、徐々に民営化
の方向を目指す傾向にある。保険の活用が増え、民間保険者の追加的な需要が発生すれば、再保険マーケ
ットは、その需要を十分吸収できる立場にある。再保険者の資本は、かつて多くの政府が現行の政府保険ス
キームを創立した時とは比較にならないほど成長している。
上記のようなダイナミックスが存在する一方で、当面の 2013 年 4 月、6 月、7 月の更改に関しては、弊社は
世界の再保険の供給が再保険の需要を上回る状態が続くと考えている。極めて甚大な損害がなければ、弊
社のお客様は、個々のリスク移転のニーズに沿って、秩序ある、そして競争的なマーケットを利用できること
になると考えている。
図表 1: グローバル・マーケットで再保険の需要と供給を決定する主な要因
再保険の供給を決定するグローバルな要因
+
2012 年第 3 四半期末における再保険者の記録的な資本
キャットボンドや、その他の担保付ファシリティに対する投資家の需要増
+
ハリケーン(スーパーストーム)「サンディ」の潜在的な損害拡大
再保険者の株価の継続的な低下
=
再保険マーケットの供給の増加
再保険の需要を決定するグローバルな要因
元受保険者の資本が強固であること
困難な経済状況下での保険需要の低下
カジュアルティ種目における損害発生頻度が継続的に低下していること
ほとんどすべてのマーケットで元受の競争が激しいこと
投資リターンの低迷
+
元受保険者の株価低迷と、株価押し上げのための自社株買いが進む土壌があること
+
ソルベンシーⅡの資本要件
+
ソブリン債関連の問題
=
見通し = 再保険需要の低迷
出典: Aon Benfield Analytics
注:この再保険マーケット・アウトルックは、それぞれの出再マーケットにおけるレート・オン・ライン、キャパシティ、保有レ
ベルの変化に関する弊社の見解と共にお読みいただきたい。また、個別のお客様に関しては、プログラムの過去の取引
関係、キャパシティ・ニーズ、ロス・エクスペリエンス、エクスポージャー管理、データの質、モデルの適合性、契約のマー
ジン等の要因で、マーケット全体のアウトルックとは異なる場合があり、弊社の専門の担当者がいつでも皆様のご相談に
応じさせていただきます。
4
Aon Benfield
第4四半期のキャタストロフの活発化にか
かわらず、供給過剰は続いている
再保険者の資本は、2012 年には 3 四半期連続で増加し、増加率は 10%を超えている。第 4 四半期はハリ
ケーン(スーパーストーム)「サンディ」の損害の影響で資本の増加率は鈍化する(しかし増加することには変
わりない)。2012 年は、再保険者にとって強固な年であり、ほとんどの再保険者はロスレシオを年間計画内
に収めることができた。ハリケーン「サンディ」の損害は実質上、保険者の保有内で収まるケースが多いかも
しれない;しかし、損害を被った保険者は、再保険によって、まだ不確実性が残るこの災害が最終的にさらに
悪化するかもしれないという懸念から解放されるという意味で、再保険の恩恵を受けていると言える。
供給は、世界のほとんど全ての地域で需要を上回っている。資本基盤が強固なため、元受保険者は保有水
準を高め、また縦に自己保有を多くとることで再保険料率に引き下げプレッシャーをかけている。
図表 2: 再保険者の資本の推移
10%
-3%
17%
-17%
$411B
18%
$470B
$455B
2010
2011
$402B
$500B
$342B
2007
2008
2009
Q3 2012
出典: 各社財務諸表、Aon Benfield Analytics
ハリケーン「サンディ」の影響
再保険者のハリケーン「サンディ」の影響は、各社で大きく異なるが、現段階での報告を基にすると平均して
株主資本の 5.2%となる。2011 年の主要災害からの影響が Aon Benfield Aggregate(弊社が編纂する主要
再保険グループ 31 社の集計)対象社で株主資本のおよそ 17.5%であったことと比べれば、その影響は少な
い。
5
Reinsurance Market Outlook
図表 3: 2011年の株主資本に対するハリケーン「サンディ」の影響度
12%
10%
8%
6%
4%
2%
ACE*
Platinum*
Munich Re
Swiss Re
RenaissanceRe
XL
PartnerRe
Argo
Everest Re
Alterra
Lancashire
QBE
Maiden
Arch
Allied World
Axis*
Aspen
Catlin
Endurance
Novae
税引後
株主資本は 2012 年 3 月 31 日現在
出典: 各社財務諸表、Aon Benfield Analytics
Montpelier
Alleghany**
Hiscox
Lloyd's
Beazley
Validus
Amlin
0%
*
**
によれば、2012 年 9 月末までの 9 か月間で年換算の ROE は、13.4%となってい
る。ハリケーン「サンディ」を除けば、年末の ROE は 2007 年に近いものとなっていたかもしれない。「サンデ
ィ」を含んでも、通年の各社合算ベースの ROE は、2009 年のような比較的キャタストロフが軽微であった年
に劣らぬものとなることが予測される。
Aon Benfield Aggregate
6
Aon Benfield
図表 4: 再保険者の資本、ROE、自社株買い、株価
25%
20%
15%
10%
5%
0%
2007
2008
2009
2010
2011
2007
9M
2012*
6%
550
500
Valuation - Price to Book (%)
120%
115%
110%
105%
100%
95%
90%
85%
80%
Pre-tax Return on Equity (%)
Global Reinsurer Capital (USDbn)
2008
2009
2010
2011
YTD
2012
Share Repurchases (%)
5%
450
4%
400
3%
350
2%
300
1%
250
2007
2008
2009
2010
2011
9M
2012
0%
2007
2008
2009
2010
2011
1H 2012
は、 1-9 月決算を発表しない会社を除く
出典 各社財務諸表。 ROE、株価、自社株買いは、Aon Benfield Analytics 作成の Aon Benfield Aggregate による
* ROE
:
7
Reinsurance Market Outlook
年前と比べてすべての保険セクターで ROE は改善している。再保険セクターの ROE は、変動が最も激し
いことに変わりないが、甚大なキャタストロフ損害の年となった 2011 年以降、2012 年には一貫して改善を示
している。また、個人保険分野の ROE は 2012 年第 3 四半期時点で、もっとも高い ROE を示している。
図表 5: セクター毎の加重平均ROE(税引き後)
税引き後)
1
Commercial
Average
ROE
9.01%
25%
20%
Commercial
Reinsurance
Specialty
Personal
Coefficient
of Variation
58.93%
Specialty
10.53%
59.65%
Reinsurance
8.74%
71.58%
Personal
13.03%
32.39%
15%
10%
5%
0%
-10%
2001 Q1
2001 Q2
2001 Q3
2001 Q4
2002 Q1
2002 Q2
2002 Q3
2002 Q4
2003 Q1
2003 Q2
2003 Q3
2003 Q4
2004 Q1
2004 Q2
2004 Q3
2004 Q4
2005 Q1
2005 Q2
2005 Q3
2005 Q4
2006 Q1
2006 Q2
2006 Q3
2006 Q4
2007 Q1
2007 Q2
2007 Q3
2007 Q4
2008 Q1
2008 Q2
2008 Q3
2008 Q4
2009 Q1
2009 Q2
2009 Q3
2009 Q4
2010 Q1
2010 Q2
2010 Q3
2010 Q4
2011 Q1
2011 Q2
2011 Q3
2011 Q4
2012 Q1
2012 Q2
2012 Q3
-5%
注: 上記分析には、Berkshire Hathaway と AIGが除かれている
出典: Aon Benfield Analytics
8
Aon Benfield
Aon Benfield Securitiesによるキャットボ
ンド市場の年次レビュー
年は再びキャットボンド発行額が増加した。合計で 63 億ドルに上る新規のキャットボンド取引が成立し、
年に比べて 35%の増加となった。キャットボンド新規発行総計は 2007 年以来最高の水準に達し、発
行残高総計は、2012 年末で 165 億ドルに達した。
図表 6: キャットボンド発行残高総計
2012
2011
50,000
Property Outstanding
45,000
Life / Health Outstanding
40,000
Cumulative Nat Cat Issuance
Total Cumulative Issuance
35,000
$ Millions
30,000
25,000
20,000
16,050
15,000
16,538
9,553
10,000
5,000
14,380 14,570 13,747 13,945
2,895
4,436
4,392
2003
2004
5,548
0
2002
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
出典: Aon Benfield Securities, Inc.
第 4 四半期には、SCOR Global P&C SE や United Services Automobile Association など、過去に発行
経験のあるスポンサーによる発行があった。第 4 四半期の最大の案件は、ピッツバーグの National Union
Fire Insurance Company による Compass Re Ltd. Series 2012-1 (Compass Re 2012) であった。AIG は、
関連会社が Compass Re 2012 によって 4 億ドルのキャパシティを確保したことで、グループでは総額 18
億 5,000 万ドルに上るキャパシティを確保したことになる。
スポンサーは投資家からの強い需要を背景にして、多くの案件において当初の予定を上回るキャパシティを
確保することに成功した。米国リスクが新規発行の牽引役であったことに変わりはないが、投資家にはメキシ
コ、ヨーロッパなどの他の地域、あるいは生命リスクに関するボンドなど多様化の選択が与えられた。
9
Reinsurance Market Outlook
下記の表は、第 4 四半期に成立した案件の詳細をまとめたものである:
スポンサー
The Fund for Natural Disasters
Münchener RückversicherungsGesellschaft Aktiengesellschaft in
München
発行体
MultiCat Mexico
Limited
シリーズ
Series
2012-I
クラス
United Services Automobile
Association
MX EQ
Parametric
B (S&P)
4.20%
8.00%
Class B
$
75
MX HU
(Atlantic)
Parametric
B+ (S&P)
2.64%
7.75%
Class C
$
100
MX HU
(Pacific)
Parametric
B- (S&P)
4.29%
7.50%
$
75
US HU, EU
Wind
Industry
Index
B (S&P)
2.87%
8.60%
$
60
US HU, EQ
Industry
Index
BB- (S&P)
1.89%
8.00%
EU Wind
Industry
Index
BB (S&P)
1.40%
3.65%
Atlas Reinsurance
VII Limited
Mythen Re Ltd.
Residential
Reinsurance 2012
Limited
Compass Re Ltd.
Zurich American Ins & Zurich
Insurance Co Ltd
Lakeside Re III Ltd.
合計
1 EUR = 1.2938 as of Nov. 1, 2012
*Residential Reinsurance 2012 Limited
: Aon Benfield Securities, Inc.
10
€ 130
Class A
$
120
US HU, UK
Mortality
Industry
Index
B+ (S&P)
2.20%
8.50%
Class C
$
80
US HU
Industry
Index
B- (S&P)
4.28%
11.75%
Class A
$
155
Indemnity BB+ (S&P)
0.48%
4.50%
Class B
$
70
Indemnity
BB (S&P)
0.91%
5.75%
Class C
$
95
Indemnity
Not Rated
3.67%
12.75%
Class D
$
80
Indemnity
Not Rated
7.61%
19.00%
Class 1
$
400
US HU, EQ
Industry
Index
Not Rated
4.14%
14.25%
$
270
US EQ,
CAN EQ
Indemnity
B+
2.04%
8.00%
Series
2012-2
Series
2012-II
Series
2012-I
凡例
カナダ
地震
EU – ヨーロッパ
HU – ハリケーン
S&P
格付け 期待損失* スプレッド
140
Queen Street VII
Re Limited
National Union Fire Insurance
Company of Pittsburgh
出典
トリガー
$
Class B
Swiss Re
担保
ペリル
Class A
Class A
SCOR Global P&C SE
発行額
(百万)
US HU,
EQ, ST,
WS, WF
$ 1,888
メキシコ
CAN –
MX –
EQ –
ST - Severe Thunderstorm
UK –
US –
英国
米国
と Compass Re Ltd.を除き、モデルによる年率ベースの期待損失
風水災
山火事
WS – 冬の嵐
W–
WF –
Aon Benfield
発行額は 2013 年度も引き続き強固な状態が続くだろう。上半期にはハリケーンシーズンを前にスポンサー
がキャパシティを確保しようとするため、特に米国を中心として活発な取引が期待される。
図表 7: 四半期毎のキャットボンド発行額
Q1
Q2
Q3
Q4
7,000
6,251
6,000
5,275
$ Millions
5,000
4,000
3,471
3,000
1,600
2,393
232
2,095
854
411
-
775
1,990
2,000
1,000
1,888
4,601
2,350
810
650
2009
742
1,015
1,493
300
2010
2011
2012
出典: Aon Benfield Securities, Inc.
11
Reinsurance Market Outlook
元受保険者の資本が増加し、再保険需
要は縮小している
元受保険者の資本は 2012 年の最初の 3 四半期において、前年末から 9%増加した。これは業界の歴史的
な年間の増加率と一致している。再保険の需要は、元受保険者が資本の増加につれて、保有を増やそうと
するため、ピークゾーンでも横ばいか多少の減少を示している。
図表 8: 元受保険者の資本の推移
-29%
2007
34%
2008
出典: 各社財務諸表、Aon Benfield Analytics
12
9%
1%
12%
2009
2010
2011
9M 2012
Aon Benfield
米国の元受保険者全般にわたって、2011 年の出再率はプロパティを除いて減少している。
図表 9: 米国保険者の出再率(出再保険料/
米国保険者の出再率(出再保険料/グロス保険料)
18%
Property
Casualty
Property & Casualty
Specialty
16%
14%
12%
10%
8%
6%
4%
2%
0%
1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011
出典: Aon Benfield Analytics
米国経済の中で、保険の占める役割は減退しているが、最大の保険市場である米国の状況は、他の先進国
の状況も反映しているものと思われる。経済回復の過程で保険業界が相応の配分を得たいと思うならば、弊
社が過去のレポートで指摘した様々な問題を克服する必要がある。
格付け業者の資本要件や規制当局が予定するソルベンシーの新たなスキームは、保険者が一定の資本の
下で引き受けることのできるリスク量を減少させる方向にあるが、リスクを移転した側(一般産業の被保険者)
に、これに相当する措置を取る格付け業者や規制当局はない。格付け業者は、元受保険者が再保険者から
得る一定のクレジットを考慮するが、その同じ格付け業者が、元受の被保険者が債券やハイブリッド証券を
発行する際に、その被保険者が手配した保険プログラムの効果を考慮することはほとんどない。企業責任に
関する甚大な損害が発生した場合の株主への影響を考えれば、そうしたリスクを移転しておくことのメリットは
はかり知れない。甚大な損害を起こした会社の格付けが数ノッチ格下げとなる事態があっても、格付け手法
自体を見直し、強固なリスク移転やリスクファイナンシングを行う会社を正当に評価し、格付けに反映させると
いうことには至っていないようである。
13
Reinsurance Market Outlook
図表 10: 暦年ベースの米国の発生損害のGDPに対する割合
0.035
0.03
y = 0.0005x + 0.018
R² = 0.8865
0.025
0.02
y = -0.0004x + 0.0313
R² = 0.731
0.015
1962
1967
1972
1977
1982
1987
1992
1997
2002
2007
2012
出典: Aon Benfield Analytics
米国のカジュアルティ元受料率はポジティブな傾向が続いている
によるカジュアルティ料率の変化の統計は、全社ベースの平均が(第 3 四半期で)7%増加して
いることを示している。第 2 四半期の増加率と比べてもスタンダード・コマーシャル分野(一般的な企業分野)、
スペシャルティ・コマーシャル分野(特殊な企業分野)とも僅かではあるが増加を示している。スタンダード・コ
マーシャルがスペシャルティ・コマーシャルを上回る伸びを示す傾向は続いており、第 3 四半期では、前者が
7.7%、後者が 6.4%である。
図表 11: カジュアルティの元受料率の傾向
Aon Benfield
10.0%
Q4 2011
Q1 2012
Q2 2012
Q3 2012
Standard
4.6%
5.4%
6.6%
7.7%
Specialty
2.0%
4.2%
5.4%
6.4%
Average
3.7%
4.9%
5.9%
7.0%
8.0%
6.0%
4.0%
2.0%
0.0%
-2.0%
-4.0%
出典: Aon Benfield の四半期料率推移調査レポート
14
2012, Q3
2012, Q2
2012, Q1
2011, Q4
2011, Q3
2010, Q4
2010, Q3
2010, Q2
2010, Q1
2009, Q4
2009, Q3
2009, Q2
2009, Q1
2008, Q4
2008, Q3
2008, Q2
2008, Q1
2007, Q4
2007, Q3
2007, Q2
2007, Q1
-10.0%
2011, Q2
-8.0%
2011, Q1
All Co. Avg
Specialty Co. Avg
Standard Co. Avg
-6.0%
Aon Benfield
米国代理店・仲介業協会(CIAB)によれば、調査対象となった全ての種目が料率の改善傾向を示している。
労災は第 3 四半期の上昇率が 8.89%になるなど最も早いペースで料率の上昇が続いている。(第 3 四半期
では)料率は全ての種目で第 1、第 2 四半期と同様の上昇幅を示している。第 1 四半期は全ての種目で料
率が上昇した最初の四半期となったが、料率の上昇がさらにどれほど続くのか、今後の動向が注目される。
図表 12: 米国の元受料率の傾向
Commercial Property
Workers' Comp
Commercial Auto
2.1
1.9
Index
1.7
General Liability
2011
Q1 2012
Q2 2012
Q3 2012
Commercial Auto
-0.15%
3.44%
3.24%
3.67%
Commercial Property
2.24%
6.67%
7.63%
6.02%
General Liability
-0.28%
3.35%
4.27%
4.25%
Workers’ Comp
3.64%
7.98%
9.03%
8.89%
1.5
1.3
1.1
0.9
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
出典: Council of Insurance Agents & Brokers(米国代理店・仲介業協会)
15
Reinsurance Market Outlook
ハリケーン「サンディ」によって、
年間のキャタストロフ損害は過去の平均
を上回った
年上半期には世界のキャタストロフ損害は比較的軽微であったが、年間では 484 億ドルに上り、2003
年から 2011 年の平均である 474 億ドルを上回った。190 億ドルとされる「サンディ」がなければ、明らかにこ
の平均を下回り、また 2010 年、2011 年の実績を下回ったことになる。
図表 13: 損害種類毎の保険損害の推移
2012
140
120
Earthquake
Other
Wildfire
EU Windstorm
Severe Weather
Winter Weather
Flooding
Tropical Cyclone
USD Billions
100
80
60
40
20
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2003-2011
Average
出典: Aon Benfield Analytics
米国を除く全ての地域で 2012 年の損害は平均値とほぼ同じかそれを下回った。32 億ドルに上る欧州の損
害は 2011 年の損害を上回ったが、近年の平均値は下回っている。アジアは 13 億ドルで、過去の平均を大
幅に下回り、2011 年を除いた過去の平均値 31 億ドルと比較しても、これを下回っている。
16
Aon Benfield
図表 14: 近年の平均値と比べた2012年の保険損害
60
2011
2012
2003-2011 Average
USD Billions
50
40
30
20
10
Africa
Asia
Europe
South America North America
(excl.-U.S.)
Oceania
United States
出典: Aon Benfield Analytics
弊社の分析によれば、キャタストロフ損害の GDP に対する比率は 1965 年と 2005 年が最も高く、共に
0.27%であった。この両年は共に米国のハリケーンがルイジアナ州に上陸した年であった(1965 年は「ベッツ
ィー」、2005 年は「カトリーナ」)。2005 年にはさらにハリケーン「リタ」、「ウィルマ」の来襲があった。次にこの
比率が高いのは 1976 年(英国とヨーロッパを襲った暴風雨「カペラ」)、と 2011 年(日本とニュージーランド
の地震、オーストラリアとタイの洪水、米国のハリケーン「アイリーン」)である。1992 年は、ハリケーン「アンド
リュー」が比率を押し上げ、第 5 位となっている。
図表 15: 世界のキャタストロフ損害のGDPに対する比率
0.30%
0.25%
0.20%
0.15%
0.10%
0.05%
2010
2008
2006
2004
2002
2000
1998
1996
1994
1992
1990
1988
1986
1984
1982
1980
1978
1976
1974
1972
1970
1968
1966
1964
1962
1960
0.00%
出典: 世界銀行、 Aon Benfield Analytics
17
Reinsurance Market Outlook
ハリケーン「サンディ」によって、米国北東部のキャタストロフによる保険損害の様相は一変した。2012 年に
は、ニュージャージー州とニューヨーク州では 2003 年から 2011 年の平均的な損害の 5 倍の損害が発生し
た。2010 年、2011 年に竜巻、雹などの甚大な損害が発生したアラバマ州、アリゾナ州では、2012 年の損害
が平均値を大きく下回った。
図表 16: 近年の平均値と比べた2012年の保険損害
出典: PCS
図表 17: 過去のロスレシオの中間値と比べた2012 年のロスレシオ
出典: SNL、PCS
18
Aon Benfield
ハリケーン「サンディ」は、米国で2
ハリケーン「サンディ」は、米国で2番目のハリケーン損害となった
ハリケーン「サンディ」は、10 月 29 日、米国に温帯 図表 18: ニュージャージーでの高潮損害
低気圧として上陸し、長期間の豪雨、記録的な高
潮、強風、洪水、数フィート(メートル)の雪をもたらし
た。米国のみで、「サンディ」は 620 億ドルの経済的
損失をもたらし、RMS、AIR、EQE の平均の保険損
害見込は、190 億ドルに上る。
米国に上陸する以前、「サンディ」は、カリブ海を通
過し、バハマ諸島を横断する前に、ジャマイカ(風速
毎時 80 マイル(130 キロ)のカテゴリー1 のハリケ
ーンとして)とキューバ(風速毎時 110 マイル(175
キロ)のカテゴリー2 のハリケーンとして)に上陸して
いる。影響は、カリブ全体に広がり、経済的損失額 図表 19: ニューヨークのブリージー・ポイントでの火災
はおよそ 25 億ドルと見られている。一方、保険損 FirDamage in Breezy Point, New York
害は大幅に少なく、バハマ諸島全体で 1 億ドル程度
と見られている。また、「サンディ」の余波は、カナダ
にまで及び、保険損害は 1 億 800 万ドルに上ってい
る。
「サンディ」の上陸後、数か月間は、「サンディ」のニ
ュージャージー上陸時の暴風雨としての等級問題が
米国で論じられることとなった。国立ハリケーンセン
ターは正式に、「サンディ」は、ニュージャージー州の
アトランティック・シティに近づく 1 時間前には、「熱帯
性」の特徴を既に全て失い温帯低気圧となっていた
と発表した。これは、「サンディ」が、「暖気核」ではな
く「寒気核」を持つ特徴へと変化したことが背景にあ
るが、以下にこの点について簡単な説明を行う。
図表 20: ニューヨーク、マンハッタンでの復旧作業
暖気核を持つ低気圧とは、暴風雨の中心が外周 Remediation in Manhattan, New York
の温度よりも高い(すなわち暖かい)低気圧である。
中心部分の暖気は、蒸発により、熱エネルギーが解
放されることで発生する。海洋の温度が最も高い時
に大気の最大の蒸発が発生するので、熱帯低気圧
は、夏の最も気温の高い月、そして海水温の最も高
い時期に発生し、暴風雨は暖気によってさらに勢力
を強めることになる。
19
Reinsurance Market Outlook
寒気核を持つ低気圧とは、暴風雨の中心近辺の高い地点にある寒気が、地上に向かって沈み込む特徴を持
っている低気圧である。暖気核から寒気核への変化(あるいは温帯低気圧への変化)は、熱帯低気圧が、大
きな気温勾配(気温の差)がある地域を通過する際に発生する。よくあるのは、熱帯低気圧が温帯低気圧に
変化し、その後は、さらに大きな前線に吸収されるケースである。
ハリケーン「サンディ」はまた、昨夏に成立した NFIP(全米洪水保険プログラム)法案への注目を高めることと
なった。2005 年のハリケーン「カトリーナ」からの債務がまだ 170 億ドルも残存しているにかかわらず、「サン
ディ」発生によって、NFIP は借入の限度額を 304 億 5,000 万ドルに引き上げようとしている。NFIP に関する
法律は、(もしさらなる延長が認められなければ)廃止される予定であったのだが、昨夏の法案成立によって
5 年間の延長となった。しかし米国連邦議会はすでに既存の債務の返済期間を 10 年間に延長しようとして
いる。年間保険料収入が 35 億ドルしかない中で、既存の 170 億ドルの債務の返済を行うだけでも保険契約
者には相当の負担がのしかかることになる。
ニュージーランドと日本の地震からは学ぶべき教訓がまだある
日本とニュージーランドでは損害の特徴や提供される担保内容が異なるものの、地震損害の査定、政府の関
与などに関しては、地震カバーを提供している他の国々が学ぶべき数多くの重要な要素が示されている。
日本の東日本大震災
政府あるいは業界団体による正式な情報の更新はないが、弊社の分析ではこの大震災の保険損害は約
370 億ドル(3 兆 700 億ドル)と推定する。このうち、40%は日本地震再保険株式会社(地再社)が再保険業
務を行う家計地震保険制度が負担している。大震災の発生後、政府はこの家計地震保険制度を見直すため
のプロジェクト・チームを立ち上げた。プロジェクト・チームのレポートでは様々な問題が提起されているが、そ
れらは主に下記の 3 点にまとめられる。
制度の強靭性:プロジェクト・チームは、民間保険会社の準備金が枯渇してしまうような場合に、政府と民間
保険会社間の保険責任をいかに配分するべきかを検討した。そして、民間保険会社が保険支払能力を超え
るような災害が発生した場合に採るべき措置を提案した。民間の負担能力の観点から、最悪の損害が起きた
場合に総支払限度額を設定するという考え方は、これを撤廃(あるいは削減)することなく、現状維持とするこ
とが提案された。
商品性:3 つの損害区分(5%を支払う「分損」、50%を支払う「半損」、100%を支払う「全損」)についても議論
のポイントとなった。分損と半損の間には大きなギャップがあるからだ(前者は損壊割合が 3~20%の場合、
後者は損壊割合が 20~50%と定義されている)。ただ、プロジェクト・チームはさらに損害区分を細分化するこ
とで支払いの迅速性が失われ、保険契約者の利便性を阻害する可能性がある点も、政府は考慮すべきであ
ると強調している。プロジェクト・チームは、現在は火災保険の保険金額の 30~50%と決まっている付保割合
支払限度額を、全損のみ担保で 100%とする新たなオプションを追加する可能性も検討したが、結果的に、
プロジェクト・チームはこのオプションの導入は時期尚早と結論づけ、将来の検討課題とすることとした。
地震保険の担保内容の妥当性には、いくつかの問題があることは確かだが、こうした問題は、被災者が受け
ることのできる各種公的支援によって軽減されている面もある。図表 21 に、住宅に関して行われる支援の例
をまとめた。
20
Aon Benfield
図表 21: 東日本大震災後の公的支援
公的支援の種類
円
米ドル
生活再建支援
1.0M
11.6K
基礎支援金 (上限)
2.0M
23.2K
加算支援金(建設・購入)
1.0M
11.6K
加算支援金(補修)
3.0M
46.4K
合計
災害復興住宅融資
14.6M
169.8K
基本融資額
4.5M
52.3K
特例加算
9.7M
112.8K
土地取得費
3.9M
45.3K
整地費
32.7M
380.2K
合計
出典: 日本政府内閣府
上記に加えて、災害復興住宅融資は、東日本大震災の場合は、当初 5 年間の金利負担が免除されており、
仮設住宅は、2 年間は無料で提供される(阪神・淡路大震災の場合)。借り手がローンの返済ができない場
合、銀行が、時には多くの経済的負担を覚悟でローンの返済猶予や返済免除を認めるケースが増えている。
保険料率:第 3 番目の分野は保険料率であるが、これに関してプロジェクト・チームは、地震リスク全体の見
直しの中で検討してゆくこととした。
地震保険の付保率が高まると考えられたが、これは住宅物件に限定されており、住宅に関する付保率は全
国ベースで 50%を超えたものの、一般、工場物件ではわずかな増加があったに過ぎない。企業が地震保険
に割り当てることのできる予算と、保険会社が再保険のスキームを維持するために必要とする保険料の間の
隔たりは埋まらぬままである。国内に広く事業の分散効果を持たず、財務的なゆとりのない中小企業がもっと
も地震リスクに晒されている状況は変わっていない。地震保険プロジェクト・チームは、住宅購入者にローン
を提供する金融機関は住宅購入者に地震保険の加入を促進するべきとの意見を具申しているが、いわゆる
二重債務問題の解消には、まださらなる取り組みが必要である。
ニュージーランド地震
ニュージーランド地震委員会(EQC)の提供するカバーには土地(地盤)の損害をカバーするという特徴があ
る。深刻な液状化により多くの土地が地盤沈下し、将来の災害に対して脆弱な状況となっており、土地が長
期的に有効に利用できるかどうか、懸念が生じている。特に、地震によって、洪水や液状化のリスクが増大し
た土地を特定することに注意が向けられている。2012 年には、EQC が対象とする損害範囲と責任を明確化
することに焦点を当てた見直しが行われた。この作業には、大震災前後のサーベイによって得た LIDAR(光
検出と測距)データや、掘削あるいはコア・サンプリングによる地質調査が使われた。この作業は終了したた
め、2013 年の検討の焦点は、費用と査定の問題に移行することとなる。
21
Reinsurance Market Outlook
カンタベリーで連続した地震を受け、政府は EQC スキームの見直しを宣言した。これは、カンタベリー地震に
おける EQC の実績を調査するというよりも、スキームが提供するカバーの見直しに焦点が当てられたもので
あった。担保される建物の種類、カバーの構造や範囲、料率、EQC の構造や、政府支出との関連などがテ
ーマとなった。2013 年の上半期には検討の結果を出し、2014 年末までには新たな法制が施行される予定で
ある。
ニュージーランド地震の大きな特徴に損害をもたらす余震が長期間続いたことがある。2010 年 9 月 4 日以
来、マグニチュード 3.0 を超える地震が 4,500 件発生し、マグニチュード 5.0 を超える地震は 60 件発生して
いる。EQC はこの間に発生した地震を、合計で 15 の個別の地震と捉えて、査定することとしている。詳細な
査定報告書など、入手可能な相当量の情報があるのだが、損害をそれぞれの個別の地震に振り分けるため
のデータが不十分で、これが重要な問題となっている。一方、EQC の支払い上限を超える損害(オーバーキ
ャップ損害)に関する EQC と民間保険会社の分担に関する問題は、2013 年はじめには終結すると見込まれ
る。
22
Aon Benfield
格付け業者に関する最新事情
再保険の需給面への影響=ほぼ変わりなし
再保険の需給面への影響=ほぼ変わりなし
再保険の需要に影響を与えるような格付け業者の着目点が多数あるが、これらは個々の出再会社のニーズ
によって異なる。
図表 22:格付け業者の主な着目点と再保険需要に与える影響
格付け業者の
再保険需要への
着目点
影響
強固な自己資本
若干減少 保険者はリスク保有を増やす余地が若干あるが、収益リスクの許容度
とのバランスを図る必要がある
予想自己資本と収益の質は格付けアンカー値を左右しうる重要ファク
S&P が提案する
不変
ターであるが、大半の会社は現在の格付け規準の枠組みの中で対応
新しい格付け規準
している
「サンディ」は利益面での影響に留まるロスと考えられるが、影響を受
ハリケーン
若干増加 けた会社は自己資本充実度を維持し、企業成長に係る計画を達成す
「サンディ」
るため、再保険の買い増しを必要とするかもしれない
収益が変動しやすいと自己資本充実度が高くても格下げのファクター
収益の変動性
不変
になる。これにはアグリゲート・カバーが引き続き有効だが、出再者は
料率に対して非常に敏感である
市場は成長しつつあるが、リザーブの充実度に対する格付け業者の関
米国労災保険
若干増加 心は高い。一部の保険者はテロリスク保険プログラム改正法
(TRIPRA)の延長が行われない場合の戦略の検証を行っている
ソルベンシーⅡ
若干増加 施行時期が遅れ、未だに定まらないが、保険者は準備を進めて行き、
自己資本要件に備えるべく再保険が検討されるであろう
M&A の動きは持
しばしばターゲット企業の格付けを強化し、自己資本充実度を高め、再
減少
続
保険プログラムが統合される
の債務危機に取り組む保険者にとっては再保険がソルベンシーマ
EU の債務危機
若干増加 EU
ージン改善に役立つ
リザルトは改善したものの、格付けのプレッシャーは依然残る
主要 4 社の格付け業者が公表している現在のアウトルックに見られるように、格付け業者は米国保険業界
について概ね安定的とする見方を維持している。残念ながら、他の地域に関するアウトルックついては必ずし
も定期的に公表されていない。
図表 23:格付け業者による米国保険業界のアウトルック
セクター
個人物件
企業物件
再保険
健康保険
生命保険
2012
A.M. Best
安定的
ネガティブ
安定的
安定的
安定的
S&P
安定的
安定的
安定的
安定的
安定的
Fitch
安定的
安定的
安定的
安定的
安定的
年 12 月 17 日時点 出典: A.M. Best, Fitch, Moody’s, Standard & Poor’s
Moody's
安定的
安定的
安定的
ネガティブ
ネガティブ
23
Reinsurance Market Outlook
年の 9 か月間の損保会社の業績は 2011 年に比べて大幅に改善した。2011 年は環太平洋地域での
地震、タイでの洪水、米国で発生した多くの竜巻、そしてハリケーン「アイリーン」といった多くのキャタストロ
フ・ロスに見舞われた年であった。2012 年 9 月末での米国の法定財務報告によると、62%の会社ではこの
時点でのコンバインド・レシオが 2011 年の年間コンバインド・レシオを下回っており、これらの会社の 9 か月
間の業績が好転したことによって、コンバインド・レシオの中央値が 9.6 ポイントも改善した。コンバインド・レ
シオが上がったグループにおいても、37%の会社ではコンバインド・レシオが 100%以下となり、堅実な保険
引受損益を残している。一部の会社では、ハリケーン「サンディ」の影響は第 4 四半期及び 2012 年全体の
業績に現れるが、業界全体の業績は、2012 年以降明らかに改善を示すであろう。以下の表は、NYSE もしく
は NASDAQ の上場会社で損保を中心に営んでいる保険者について、コンバインド・レシオの中央値の
2006 年~2011 年までの実績値とアナリストによる 2012 年の見通し(この見通しは「サンディ」のロスを含む)
を示したものである。
図表 24:上場保険会社のコンバインド・レシオの中央値(
:上場保険会社のコンバインド・レシオの中央値(Median)
2012
Median
2006-2011 average
110
104.1
105
100
95
90
87.9
88.3
2006
2007
97.6
96.6
94.5
93.6
2008
2009
85
80
75
出典: SNL Financial, Aon Benfield Analytics
2010
2011
2012E
年の平均コンバインド・レシオは、2006 年~2010 年と比較すると依然高いものの、2011 年より 6.5 ポ
イント改善すると見込まれる。また、格付けごとに見た A.M. Best の自己資本充実度(BCAR)の中央値の対
前年比の変化に示されているように、自己資本充実度も改善されると弊社では見ている。
図表 25:A.M. Best の自己資本充実度(BCAR)の基準
2012
2011
2012 見込み
格付け
最低
平均
平均
増減
A++
A+
A
AB++
B+
175
160
145
130
115
100
284
293
296
278
232
172
287
304
307
278
233
168
3
11
11
1
1
(4)
出典: A.M. Best, Aon Benfield Analytics
24
Aon Benfield
従って、2012 年は全体的に改善した年にはなるものの、過去 4 年のうち 3 年は格下げ数が格上げ数を上回
っており、米国の中でネガティブな格付けの流れに歯止めをかけるほどの強いファクターにはなっていない。
格下げ環境が続いている原因の一つは財務報告を基にした格付けアクションが時間的に遅れるためである。
従って、2012 年の業績改善状況は主に 2013 年に行われる格付け評価の中で反映されてくる。また、業績
の改善は格付け業者にとっても歓迎すべき状況ではあるが、1 年のみの成績で傾向が示されるものではな
いことも念頭にあり、従って 2012 年の改善を以って多くの格上げに結び付けることには難色を示すであろう。
図表 26:米国損保業界における A.M. Best の格付け変更
の格付け変更
100
Upgrades
Downgrades
75
50
25
0
2004
2005
出典: A.M. Best, Aon Benfield Analytics
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012YTD*
米国の労災保険市場では、格付け業者がリザーブの充実度、特に最近の事故年度のリザーブに関して懸念
を抱いているため、格付けへの一貫した厳しいプレッシャーを受けている。A.M. Best は 2012 年に 5 社の労
災専門保険者の格付けを引き下げ、1 社だけを引き上げた。さらに、11 の労災専門保険者の格付けのアウ
トルックはネガティブとされた状態で 2013 年を迎える。最近、料率改善が見られるものの、特に支払備金の
積み増しが進んでいるため、収益面ではまだ難しい状況が続いている。多くの労災専門保険者は二桁台の
保険料の増収を達成しており、テロリスク保険プログラム改正法(TRIPRIA)が更新または承継されず終了し
た場合に、エクスポージャーに対してどのように対処するのかが問われている。こうした背景は 2013 年に再
保険需要を増やす要因となる。
米国市場以外では、ユーロの債務危機が依然として影を落としており、欧州全体でソブリン格付へと財務力
格付への脅威が増している。また、欧州はソルベンシーⅡの施行を巡る不確実な状況も抱えている。これら
の重要課題が格付けに与えている影響は、S&P による 2012 年の損保業界での格上げ/格下げの状況を
表した図表 27 に示されている。
図表 27:2012 年の S&P の格付けの状況
格付けの状況(
状況(欧州、中東、アフリカの損保業界)
欧州、中東、アフリカの損保業界)
No. of Entities
30
25
Upgrades
Downgrades
Q3-12
Q4-12
20
15
10
5
0
Q1-12
出典: Standard & Poor’s
Q2-12
25
Reinsurance Market Outlook
によって格付けを下げられた多くの保険者の中には、巨額のユーロ圏債務に対するエクスポージャーを
抱えている大手保険者、あるいは格付けの下がった国に所在し、そのために格付け上限が抑えられている
大手保険者も存在する。ソブリン格付けと保険財務力格付けには相関関係があるために、ソブリン格付けの
環境が混迷を続ける限り、より大手でより業績の良い保険者でさえも、2013 年は格付けにさらに逆風が吹く
ことは避けられそうにない。
2012 年のアジア・太平洋地域の保険市場において格付け業者の関心を高めた主な要因は、東日本大震災
やタイの洪水など最近この地域で発生した記録的な自然災害であった。こうした損害を経験し、格付け業者
はこの地域の数社の保険者の格付けについて、引下げ、引き下げ方向のアウトルック、あるいはクレジット・
ウォッチ(アンダー・レビュー)などの格付けアクションを行った。クレジット・ウォッチ(アンダー・レビュー)とされ
た大半の保険者はその後資本を増強し、格付けは据え置かれた。また、これらのロスを契機として、モデル
化されていないペリル、データ品質、モデルの限界に対する保険者の理解など、キャタストロフ・リスク評価に
関する様々な側面についても注目度が高まった。
法規制の側面では、フィリピンにおける新たな最低資本金制度、マレーシアで導入された自己資本充実度評
価プロセス(ICCAP)、一部の国におけるリスク・ベース・キャピタル(RBC)要件の強化、また国際財務報告
基準(IFRS)の導入の広がりなど、規制改訂や強化が進んだ。しかしながら、こうした規制改革が財務力格付
けにどのような影響を与えるかは明らかではない。
2012 年 4 月に S&P が出したアジア・太平洋諸国の損害保険の見通しに関するレポートによると、保険者は
さらに厳格なリスクコントロールを押し進めており、料率は上昇、ロスを被った保険者は追加資本を必要とし、
保険業界の成長ペースは少し鈍るであろうと見られている。S&P はこの地域は引き続き成長の機会をもたら
す市場であると見ている。
S&P
ハリケーン「サンディ」は
ハリケーン「サンディ」は格付けに影響を及ぼす
格付けに影響を及ぼす災害ではない
及ぼす災害ではない
格付け業者は一貫して「サンディ」を収益面への影響に留まるイベントであり、資本に影響するロスではない
と見ている。また、多くの会社は強固なバランスシートを有しており、剰余金を大きく取り崩すことなく第 4 四
半期のロスを吸収できると見ている。「サンディ」についての再保険回収額は保険者によって大きく異なり、全
国的な営業展開を行う大規模な保険者では大半のロスは保有に収まり、再保険回収はキャット・カバーのリミ
ットに対して僅かな割合に止まる。一方、地域限定的な、あるいは一つの州だけで営業を行っているような小
規模会社にとっては再保険回収のウエイトは高くなる。以下は「サンディ」に関する四大格付け業者の公式見
解のサマリーである。
A.M. Best は、「サンディ」は大半が保有に収まるイベントであり、大多数の米国や世界の(再)保険者の収
益にも大きな影響は与えず、再保険料率にも大した影響は出ないであろう、と見ている。
Fitch は、世界の再保険業界の強い資本力は「サンディ」で予想されるロスを実質的に吸収するのに十分で
あり、もしロスが直近のモデルの見込み通りに収まれば、「サンディ」は市場の料率を変えるようなファクター
にはなりそうにないと見ており、大幅な料率引き上げがあるとしても、米国北東部地域でロスを被った種目に
限定されるであろうと結論づけている。
Moody’s は、「サンディ」が収益に及ぼすネガティブな影響はあるものの、幅広く引受を行っている大規模な
保険者は自己資本を損なうことなく、こうしたネガティブな影響を吸収しうるであろうと語っている。
S&P も同じく、「サンディ」による料率への影響は全体的には最小限に止まり、大半の(再)保険者にとっては、
現時点での大きな収益が「サンディ」によるロスの影響を和らげそうであると見ている。また、2012 年の資本
規模に基づくと、再保険者の資本に影響を及ぼす恐れのあるような市場での損害規模は約 500 億米ドル以
上となろうと語った。
要するに、格付け業者の大方の見方は、第 4 四半期と 2013 年において、「サンディ」による国内と世界の
(再)保険市場における影響は最小限に止まるとしており、現に、このレポートが出される時点で「サンディ」に
よって財務力格付けないしアウトルックが引き下げられた会社は 1 社もない。
26
Aon Benfield
格付け業者の規準は進化し続ける
近年の傾向と同じく、格付け業者の規準は進化を続けている。絶えず格付け規準の微調整を行いたいとする
背景には、さらに多くの未公表データの入手によって分析を深め、世界的に格付け手法に一貫性をもたせた
いとする格付け業者の意向と透明性を高めていきたいとする取り組みがある。以下は主要な格付け規準の
動きをまとめたものである。
S&Pの意見募集:
の意見募集:保険
募集:保険会社
保険会社の格付け手法
会社の格付け手法
2012 年 7 月 9 日に S&P は保険会社の格付けに関し、自社が新たに作成した規準案に対する「意見募集
(RfC)」を行った。S&P は、この手法改訂は会社の透明性を高め、よりフォワード・ルッキングな手法の使用
に移行することに重点を置くことを意図して行う、S&P 全社的な規準改訂の一環である、と語っている。S&P
は 10 月に自社の格付け先保険者に対し補完的な調査を行い、規準案の新たな項目で必要となる未公開デ
ータをさらに集めた。図表 28 は S&P が提案する格付けフレームワークの概略図である。
その後 S&P は寄せられた意見の概要を公表 図表 28: S&P 格付けフレームワーク案概略図
し、導入に関して次のような方針を発表した。
規準の改訂は約 6 か月以内(2013 年 4 月
頃)に公表する
新規準に伴って発生する格付けの変更は
新規準完成後数週間以内に発表する
世界的な(再)保険者の評価を最初に行い、
地域的な保険者の評価はその後となる
Insurance Ratings Framework
Insurance Industry Country Risk
Assessment (IICRA)
Capital & earnings
Competitive position
Risk position
Business risk profile
Financial flexibility
Financial risk profile
Anchor
Modifiers
新規準案には、新たな未公開データ、自己資
本充実度の見込みなど定量的ファクターの重
視、格付けの制約要素など新たな側面が含ま
れるが、S&P は、導入後も、大半の格付けに
は変更がなく、あったとしても 1 ノッチ以内の変
動に留まると見ている、と繰り返し語っている。
また、全体的な格付け分布の変化は僅かであ
ると見られているので、新規準の導入によるポ
ジティブおよびネガティブな格付けアクションの
数は、均衡が保たれるということになる。現時
点で弊社は 20 以上の会社について新規準案
による潜在的な格付けへの影響度を分析した。
その結果、大半の会社では現在の格付けが適合するが、一部ではそれを下回ると思われる会社がある一方、
新規準によって格付けが上がると見られる会社もあることが分かった。いずれにせよ、新規準は、将来にお
ける、会社の格付け、戦略、自己資本とリスクのマネジメントに影響をもたらす重要なファクターとなることは
間違いないであろう。
Peer comparisons
ERM-Management
Indicative stand-alone credit profile
Caps
Fixed-charge cover test
Liquidity test
Sovereign test
Stand-alone credit profile or group credit profile
Group or government support
Operating company issuer credit rating or insurer financial strength rating
Notch down for any structural subordination
Hold Co. ICR
27
Reinsurance Market Outlook
の規準:マネジメントとガバナンスの信頼性ファクター
2012 年 11 月に S&P は経営陣とガバナンスに関する信用力評価要因についての新たな規準を発表した。
保険会社の間ではこの規準改訂は上記の意見募集(RfC)ほどの関心を引かなかった。この発表に対する保
険業界の関心度が相対的に低かったのは、規準の目標が経営陣及びガバナンス評価に対する本質的な変
更というより透明性の強化に置かれていたことによる。従って、この規準の導入によっても大幅な格付けへの
変更が起きるとは思われない。しかしそれでも新規準は事業会社と保険会社の双方に適用される。事業会
社の格付けにおいてはこのファクターは事業リスクプロフィールの範疇に置かれる。保険会社に対しては
ERM の範疇に置かれ、提案中の規準のもとで個別のファクターとして扱われる。
弊社は経営陣とガバナンスを評価する方法が事業会社と保険会社との間で若干異なることについて分析を
試みたが、キャタストロフ・リスクの評価の仕方に興味深い違いがあることに気が付いた。キャタストロフ・リス
ク・マネジメントは S&P が保険会社の信用力を全体的に評価する上で重要となるファクターのひとつであり、
多数の格付けファクターに組み込まれ、このファクターの中には保険会社にのみ適用される経営陣とガバナ
ンスの規準の特別な項目も含まれる。しかしながら、過去のキャタストロフ・イベントの影響を見てみると、巨
額自然災害リスクに対するマネジメントと許容度は事業会社の信用力を評価する上でも重要なファクターで
あるべきと思われる。現在、事業会社の格付けフレームワークの中では、リスクを軽減するための保険購入
の実態にはほとんど注意が向けられていない。
ハイブリッド資本に対し高い自己資本要素を認定することに関するS&Pの意見公募
ごく最近、S&P は 2012 年 11 月 14 日付で格付け規準「Assigning "High" Equity Content to Corporate
Hybrid Capital Instruments(「高」資本性と評価されるハイブリッド資本)」と題する意見募集を行った。提案
されている規準は事業会社と北米の保険持株会社が発行するハイブリッド資本に適用されるものである。
S&P はこれらの資本調達手段を発行者の自己資本として S&P がみなす度合を決定する方法を改めようとし
ている。
この提案で大きく変わる点は、以下のケースに該当するハイブリッド資本については、今後 S&P は「高」資本
性としては認めないということである。
償還期限が明記されている、もしくは実質的な償還期限が決められていること
クーポンが段階的にステップアップする条件、もしくは繰上償還に関し同様の財務的インセンティブを有
するもの
一部の例外を除き、発行後 10 年以内のコールオプションが与えられているもの
S&P はこれらの規準はいずれも特殊であり、業界全体に対する影響は限定的であろうと語っている。もっと
具体的には、この規準が提案通りに導入されると、ハイブリッド資本に係る資本性の分類が変わるために、
自社の信用力を他の手段で補完しないとすれば、3 社までの会社が格付けに影響を受けるであろうと S&P
は語っている。さらに、S&P は、事業会社から発行されている約 10 本のハイブリッド資本は低資本性と評価
されることになる可能性があると見ているが、発行体の評価に織り込まれるこの低資本性は、格付けには影
響しないであろう。規準の改訂は保険業界全体には実質的な影響を与えないと見られるが、今後、発行する
ハイブリッド資本によって最大可能な資本クレジットを実現したいとの要求を満たすにはバーが高くなると思
われる。
S&P
28
Aon Benfield
はさらにERMとキャタストロフ・リスク分析を重視する
昨年来、A.M. Best は自社の格付けフレームワークの中で ERM の重要性を高め、その適用方法の明確化
を進めてきた。同社は格付けに際して行う補足質問票(SRQ)の中で、ERM に対する回答から得られた事実
に関するレポートを発表した。さらに、格付けレポートの中にリスク管理の項目を追加し、会社のリスク管理能
力の評価ついての詳細なリスクプロファイルの指標を提示した。
さらに A.M. Best は SRQ の項目を改め、会社に対し、累積ロスの見込み、PML の感応分析と決定論的なロ
ス・シナリオ・テスト、およびキャタストロフ・エクスポージャーと PML に対する「経営者の見方
(Management’s View)」を提出するよう求めた。この追加情報は 2011 年に多くのキャタストロフ・ロスが発
生したこと、および PML の大幅な増加につながったハリケーン・モデルの改訂版が出されたことによる状況
の変化に鑑みて追加されたものである。全体的にはこの追加項目を加えたことで、会社のキャタストロフ・マ
ネジメント能力に関してより明確な意見交換ができるようになった。「サンディ」の教訓によってキャタストロフ・
エクスポージャーについての経営者の見方が裏付けられるのか、あるいはエクスポージャーとリスク許容度
に関する彼らの評価を根本から見直すことになるのか、興味深いところである。
格付け業者と規制改革に関する Aon Benfield の年次出版レポートである「進化する規準(Evolving
Criteria) 」ではより広範囲にこれらの規準の直近状況、その他を取り上げており、www.aon.com/japan/で
入手できる。
A.M. Best
ソルベンシーⅡ
ソルベンシーⅡ:さらなる遅れ
欧州内で保険規制を統一させることを目論んで、新たに制定しようとしているソルベンシーⅡが更なる遅れに
直面している。欧州議会は、当初 2011 年末に予定されていた広範囲なオムニバスⅡ指令に関する議決は
2013 年 3 月以前には行われないであろうと発表した。
オムニバスⅡはソルベンシーⅡの枠組み指令を EU のリスボン条約に沿うような形に改めることになり、EU
の新たな監視体制も取り上げている。オムニバスⅡはレベル 1 の指令となるため、通常の立法化手続きを踏
まえる必要があり、欧州委員会、評議会、および欧州議会が関与することになる。
合意に至らない主な点は、第 5 回定量的影響度調査(QIS 5)の仕様書における非流動性プレミアムの代わ
りにマッチング調整と反循環的プレミアム(Counter-Cyclical Premium)を使って行う長期の保険契約の技術
的準備金の計算方法にある。
オムニバスⅡにはさらに法的な問題もある。欧州委員会の最初の草案では、規制内容の大半はレベル 2 規
則および実務的技術基準(ITS)の中で制定されるべきとして提案しているが、一方、欧州議会は影響がより
大きくなる規制的技術基準(RTS)の活用を増やすよう提案している。
29
Reinsurance Market Outlook
遅れによる影響
ソルベンシーⅡの導入が遅れることにより、以下のような多くの影響が現れる。
会社はソルベンシーⅡ の施行に備えた時間的スケジュールと資金計画を見直さなければならない。特に、
内部モデルの認可取得に向けて努力している会社にとっては、その努力が正当化されるかどうか悩むで
あろう
もしソルベンシーⅡの完全実施に至るまでの間に移行措置が認められるとすると、同じ市場の保険者間
で、またそれぞれのリスクカテゴリー間で資本要件にばらつきが生じる可能性がある
一部の規制当局者は市場を導入への準備に向かわせるためにソルベンシー1.5 的な措置を押し進めよ
うとしているが、こうした措置は欧州内で足並みを乱すことになる
新法規制が定まらないと保険会社の長期的な予算計画、商品設計、資本管理、戦略策定計画に支障を
きたし、ひいては投資家、契約者にも影響を及ぼすことにもなる
ソルベンシーⅠに関する疑問:現在の規制は依然有効なのであろうか、また、規制当局者はそれぞれ独
自のやり方でソルベンシーⅡに取り組もうとしているのであろうか?
導入に向けて準備が整っていることの潜在的なメリットは既に失われ、準備が整っていないことのデメリットも
減少しているが、業界は規制当局がソルベンシーⅡの実施に向けより柔軟性のある移行措置をどのように
進めるのかを見守っている。
30
Aon Benfield
2013年のM&A推進要因
年も M&A の動きは次のような傾向と 2012 年に見られたテーマによって活発になるであろう。以下は
過去数年間一貫して続いているテーマと傾向である。
1. 会社の株価は依然低水準にある ― 会社の株価は引き続きネガティブなプレッシャーを受けており、ラン
オフ専門会社は売却を考えている保険者に対して一括売却に関し競争力ある買収条件を提案している。
元来、ランオフ専門会社は資本を毀損した保険者や引受ポートフォリオを肩代わりする先として考えられ
てきた。売買される(再)保険会社の平均株価は依然として有形純資産額を下回っており、ランオフ専門
会社は市場価格にプレミアムを付けて安定的な事業を取得することができる。彼らは、最も魅力ある保
険料をもつ契約の更改権を売却し、積まれているリザーブ金額以下で古い保険責任をランオフさせ、大
きな資産レバレッジから投資リターンを実現することができれば、満足できるリターンを確保することがで
きる。
2. ユーロ圏の危機とバンカアシュランスのモデル ― 世界的な金融危機のあと、欧州の保険グループと保
険事業を傘下に持つ銀行グループは、大きく減少した資産を抱え、ソルベンシーの低下と格付け業者の
格下げ圧力に直面することになった。さらに、提案されているバーゼルⅢの指針では、保険子会社への
投下資本は、10%しか銀行親会社の Tier 1 資本として含めることができないという制限を課せられてい
る。 売値と買値の株価の期待値には依然大きなかい離があるものの、中核事業ではない保険ビジネス
は資本調達のために売却されつつある。
3. 恒久的な資本を求めるヘッジファンド ― ヘッジファンドは(再)保険会社を設立もしくは買収すること、お
よび長期的な投資マネジメント契約を結んで資産管理業務を行うことを模索している。この背景には、昨
年のレポートで初めて取り上げた以下の 3 つのファクターが存在している。
a. ヘッジファンドでは 2008 年と 2009 年に過去に例を見ないほどの解約が行われたが、生き残ったヘ
ッジファンドはより恒久的な運用資産(AUM)に高い価値を見出している
b. (再)保険会社の典型的な投資ポートフォリオである中期確定利付債券の利回りは、2013 年には
3%を若干下回るとみられる;そして
c. 保険市場の環境は依然厳しく、アンダーライティングから生ずるリスク調整後のリターンはヘッジファ
ンドの投資戦略から得られるリターンよりもしばしば低い
4. プライベート・エクイティ ― 歴史的に低い株価と一部のセクターでは条件が改善しつつあることに惹かれ
てプライベート・エクイティの投資家は(再)保険引き受け事業のより積極的なバイヤーになった。さらに、
プライベート・エクイティ投資家は手数料ビジネスである保険関連事業(リテール・ブローカー、ホールセ
ール・ブローカー、MGA および MGU などの代理業、およびキャプティブ・マネージャー)についても大き
な興味を持ち続けている。
5. 規模拡大の必要性 ― 多くの中小資本規模の保険者は、非常に厳しい引受環境が数年間続いた中でも
いずれ市場のハード化が訪れ、過去の多くの悪化要因が消え去るであろうとの期待を抱いて経営を行っ
てきた。しかし、市場ハード化へのスピードは遅いために、中小保険者はシナジー効果と規模の経済の
利益を求めて競争相手との合併の道を探ることになりそうである。
2013
31
Reinsurance Market Outlook
経済と金融市場の最新事情
EU債務危機
EU債務危機
ユーロ圏での展開を巡る不確実な状況は 2012 年を通して世界経済に暗い影を落とし、回復のブレーキとな
った。経済指標と失業率は景気低迷がより深刻になり、また広範囲に広がりつつあることを示している。最近
の IMF の数値はユーロ圏についてより弱い見通しを示しており、2012 年の GDP は 0.4%減少し、2013 年
に僅かながら 0.2%増加する見込みを立てている。この数値は 2012 年 7 月の見込みをそれぞれ 0.1 ポイン
ト、0.5 ポイント下回っている。図表 29 はユーロ圏および周辺国(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシ
ャおよびスペイン)の四半期ごとの GDP 増加率を示したものであるが、ユーロ圏が 2012 年第 2 四半期に再
び景気後退期に入ったことを示しており、その後しばらく景気後退が続くと見られる。
図表 29:年率換算ベースによる GDP の四半期ごとの対前年増率
Annualized
quarterly percent
change
Euro area
Periphery
4
3
2
1
0
-1
-2
-3
-4
-5
2011:Q1
2012:Q1
2013:Q1
出典: IMF World Economic Outlook, October 2012
2012 年 6 月 28 日と 29 日に開催された首脳会議で、EU の財務相はユーロ危機の打開に向け、多くの政策
課題を発表した。この中には銀行の監督業務をまとめて中央に一元化するための工程表も含まれている。政
府が乗り出した 6 か月間に、提案の中身が縮小され、2012 年 12 月の会議で欧州の首脳は細かな措置の
大半を延期したため、対応は幾分後退した。しかしながらポジティブな動きもあり、ユーロ圏の銀行に対し新
たな監督機関を創設することが合意され、ユーロ圏からの借り入れでスペインの銀行への救済も進んでいる。
ギリシャへのプレッシャーは救済条件が緩和されたため軽くなり、ユーロから直ちに離脱するとの見通しは遠
のいた。
32
Aon Benfield
一方、欧州中央銀行(ECB)が最近「国債買い入れプログラム(Outright Monetary Transaction=OMT)」を
発表し、ECB が貸し手の最後の砦になることを約束したことにより金融市場が信頼感を取り戻し、ここ数週間
で投資家の懸念は和らいだように見られる。イタリアのソブリン債の利回りは 2011 年末に危機的水準とされ
る約 7%(この水準は以前 ECB がギリシャ、ポルトガルおよびアイルランドへ介入を行った水準)に達した。
その後、2012 年後半に利回りは下がり、12 月末には約 2 年ぶりの低さとなる 4.6%となって、国外の投資家
はイタリア国債の保有を増やした。同様にスペインのソブリン債利回りについても、S&P が格付けを BBB-に
引き下げたものの、最大 7%を超えた水準にあったものが年央には約 5.5%にまで下がった。また、ギリシャ
のソブリン債利回りは今年後半に 37.1%のピークから 13.0%にまで下落した。
図表 30:ユーロ圏諸国の 10 年物国債の利回り推移
40%
35%
30%
Germany
Portugal
Italy
Ireland*
Greece
25%
20%
Spain
* 5-year
15%
10%
5%
0%
31/12/10
31/3/11
30/6/11
30/9/11
31/12/11
31/3/12
30/6/12
30/9/12
出典: Bloomberg (2012 年 12 月 17 日付)
大手格付け業者は(特に欧州と欧州金融機関に対しての)クレジット・アウトルックのネガティブ要因として弱
い経済見通しを挙げている。格付け業者はほとんどの欧州ソブリン債の格付けをネガティブ・アウトルックに
据え置いている。
10 月に S&P はスペインの長期ソブリン格付けをさらに 2 ノッチ引下げ BBB-(ネガティブ・アウトルック)とした。
スペインの景気後退が更に深刻化し、失業者が増えたこと、およびスペインの銀行の資本再構築コストを共
同で負担するとの一部のユーロ圏諸国の約束を S&P が疑問視したことによるものだが、格下げの動きは市
場を驚かせた。直近の見直しの中で、S&P は GDP に対する国債比率改善に対する取り組みの遅れを懸念
し、英国ソブリン格付けのアウトルックを安定的からネガティブに変更した。
2012 年 12 月 18 日に S&P はギリシャの長期ソブリン債の格付けを「選択的債務不履行(セレクティブ・デフ
ォルト=SD)」から「B-」に引き上げた。ギリシャ政府が苦境に陥ったソブリン債を買い戻したことによるものだ
が、この見直しは、ギリシャをユーロ圏に留め置こうとするユーロ圏各国の強い決意の表れを S&P が評価し
たものでもある。
33
Reinsurance Market Outlook
図表 31:ソブリン債格付け
Moody's
ベルギー
フランス
ドイツ
ギリシャ
アイルランド
イタリア
オランダ
ポルトガル
スペイン
英国
米国
日本
ソブリン
格付け
Standard & Poor's
2011 年 1 月
アウトルック 以来の格下
げ幅(ノッチ)
ソブリン
格付け
Fitch
2011 年 1 月
アウトルック 以来の格下
げ幅(ノッチ)
ソブリン
格付け
2011 年 1 月
アウトルック 以来の格下
げ幅(ノッチ)
Aa3
Negative
2
AA
Negative
1
AA
Negative
1
Aaa
Negative
-
AA+
Negative
1
AAA
Negative
-
Aaa
Negative
-
AAA
Stable
-
AAA
Stable
-
C
-
10
B-
Stable
5
CCC
-
6
Ba1
Negative
3
BBB+
Negative
2
BBB+
Negative
-
Baa2
Negative
6
BBB+
Negative
3
A-
Negative
3
Aaa
Negative
-
AAA
Negative
-
AAA
Stable
-
Ba3
Negative
8
BB
Negative
5
BB+
Negative
6
Baa3
Negative
5
BBB-
Negative
7
BBB
Negative
7
Aaa
Negative
-
AAA
Negative
-
AAA
Negative
-
Aaa
Negative
-
AA+
Negative
1
AAA
Negative
-
Aa3
Stable
1
AA-
Negative
1
A+
Negative
3
出典: Moody’s, S&P, Fitch (2012 年 12 月 19 日時点)
ソブリン債の格付けに対する最近のネガティブな方向性は、Generali や Mapfre を含む多くの保険グループ
や欧州再保険グループにも影響をもたらしている。スペインの格付けを連続して引き下げたことに伴い、S&P
は Mapfre グループと Mapfre Re の財務力格付けを BBB+へと引き下げた。この結果、Mapfre とスペインと
の間の格付けの差は S&P の規準では最大の許容範囲となる 2 ノッチに拡大した。
世界経済
は 2012 年 10 月版の「ワールド・エコノミック・アウトルック」のなかで、世界の経済成長率見込みを更に
下方修正し、2012 年を 3.3%、2013 年を 3.6%とした。2012 年 7 月の見込みをさらにそれぞれ 0.2 ポイント
と 0.3 ポイント引き下げたことになるが、IMF は前に発表した時よりも下振れリスクがさらに高まると判断され
ると語った。IMF の見込みは、欧州と米国の政策当局者が自国の短期的な経済課題に対し、早めに取り組
んでいることがうまくいっていると見たものであるが、一方、政府が巨額の負債を抱えるなかで世界経済がど
のように進むのか、また経済先進諸国の需要が落ち込んでいる中で新興国市場の成長の持続性は保たれ
るのであろうかといった不確実な環境があることも認識している。
IMF
34
Aon Benfield
図表 32:世界の GDP 成長率と将来見込み
World
Advanced economies
Emerging market and developing economies
10%
8%
6%
4%
2%
0%
-2%
2007
2008
2009
2010
2011
2012f
2013f
2014f
-4%
-6%
出典: IMF World Economic Outlook
2012
年 10 月
他のコメンテーターは、2013 年の経済環境は 2012 年の弱い状況から改善すると見ている。その大きな原
動力となるのは米国の住宅建設市場の回復、中国の財政と金融の刺激策、そして緩やかながらも欧州の好
転である。粘り強い金融緩和政策が成長を刺激すると期待される。しかしながら米国では、議会で延長が認
められない限り 2013 年 1 月に増税と約 6,000 億~7,000 億ドルの歳出削減を余儀なくされる「財政の崖」を
迎えることになるので、成長には危うさが残る。もしそれが現実のものになると、崖によって景気後退がもたら
されることになりそうである。
金融市場
世界中の政府は景気回復を促進させることを重要な政策の柱に掲げているので低金利を維持することに照
準を当てている。重要な鍵となる米国フェデラル・ファンド・レートは 2008 年 12 月以降記録的な低さである
0.25%に据え置かれており、英国政策金利は 2009 年 3 月以降 0.5%となっている。景気刺激策を打ち出す
ため、欧州中央銀行は 2012 年 7 月 5 日に主要政策金利を 0.25 ポイント引き下げ 0.75%とした。
35
Reinsurance Market Outlook
図表 33:5 年物国債の利回り推移
UK
6%
Eurozone
5%
USA
Japan
4%
3%
2%
1%
0%
1 06
1 07
1 08
1 09
1 10
1 11
1 12
出典: Aon Benfield Analytics, Bloomberg
経済環境が弱いため、また世界経済を活性化させるために、国債利回りは 2012 年を通して歴史的な低水
準に留め置かれた。5 年物米国債の利回りは年初に 0.83%でスタートしたが、7 月に 0.57%に下落、しかし
12 月末に 0.69%に上昇した。同時に、英国債の利回りは 7 月に 1.05%から 0.5%へと下落、その以後
0.85%に上昇した。ユーロ圏の国債利回りは 7 月に 0.76%から 0.24%へと下落したが年末に 0.33%に上昇
した。日本国債の利回りも 0.35%から 0.18%へと下落が続いている。低金利は当面持続するものと見られ、
(再)保険者の運用益へのプレッシャーが続く。
図表 34:国債に対する 5 年物社債のスプレッド
Percentage points
6.0
7.0
A
6.0
BBB
5.0
4.0
3.0
2.0
0.0
1 09
Eurozone
AA
A
BBB
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
1.0
1 10
1 11
出典: Aon Benfield Analytics, Bloomberg
36
AA
Percentage points
US
7.0
1 12
0.0
1 09
1 10
1 11
1 12
Aon Benfield
金融市場への懸念が広がっているにもかかわらず、年間を通してクレジット・リスクに対する投資家の選好度
は高くなってきていることが分かった。彼らは再び社債市場に注目し始めており、多くの(再)保険者はこのセ
クターでかなりの純投資を行っている。社債に対する需要が増えたことは国債に対する社債のスプレッドに表
れており、年央に僅かながら拡大したが、一般的に縮小傾向にある。欧州の BBB 格付けの社債スプレッドは
1 年間で約 1.2 ポイント縮小した。
図表 35:株価インデックス(2006 年 1 月=100)
140
S&P 500
FTSE 100
Eurotop 100
Nikkei
MSCI World
120
100
80
60
40
1 06
1 07
1 08
1 09
1 10
1 11
1 12
出典: Aon Benfield Analytics, Bloomberg
株式市場は 2012 年に上向きのスタートを切ったが、第 2 四半期に後退し、第 4 四半期にも多少の落ち込み
はあったが、下半期は再び回復した。S&P 500 インデックスは 12 月末に年初から 12%上昇した。欧州株式
市場(Eurotop 100)と英国株式市場(FTSE 100)ではそれぞれ 11%、6%上昇し、日本の日経インデックス
も 1 年で 15%上昇した。MSCI World の上昇率は 12%であった。
図表 36:CBOE S&P 500 ボラティリティ・インデックス
50
40
30
20
10
0
31/12/10
31/3/11
30/6/11
30/9/11
31/12/11
31/3/12
30/6/12
30/9/12
出典: Aon Benfield Analytics, Bloomberg
37
Reinsurance Market Outlook
市場ボラティリティは第 1 四半期で下落したが、世界経済とユーロ圏問題に対する懸念から第 2 四半期に再
び上昇した。しかし、欧州で深刻化する問題の一部に対して対応策(少なくとも一時的かもしれないが)が示さ
れた安心感から、指数は 2011 年の年初以降で最低となる水準にまで下落し、下半期では概ね安定した状
態が続いている。
38
Aon Benfield
銀行の財務レバレッジ
世界の 20 大銀行について分析したところによると、株主資本に対する総資産の割合で示される財務レバレ
ッジ・レシオは緩やかに下がり続けている。前年末に若干上昇したあと、2012 年第 3 四半期の平均の 22.4
倍は昨年の 22.6 倍から僅かながら 0.2 ポイント下がった。
現在、「資本が充実している」とされる銀行の財務レバレッジ・レシオは最大で 20 倍となっており、上位 20 行
の半分がこのレシオを満たしている。バーゼルⅢが発効すると、2013 年 1 月 1 日時点において「資本が充
実している」と見做されるためにはさらに厳しい 16.7 倍までとする必要がある。1 月 1 日の新たな基準に照ら
すとそのように見做される銀行は 10 行のうち 7 行だけになる。
「資本が適正である」と見做されるためには、連邦預金保険公社(FDIC)はバーゼルⅡの合意に基づいて、
財務レバレッジ・レシオを最大で 25 倍までと規定している。2012 年第 3 四半期末で「資本が適切である」と
見做された銀行は 20 行のうち 2 行であった。
図表 37:銀行上位 20 行の財務レバレッジ
Leverage Name
06/30/07
12/31/07
06/30/08
12/31/08
06/30/09
12/31/09
06/30/10
12/31/10
06/30/11
12/31/11
09/30/12
Deutsche Bank AG
53.4
54.5
62.4
71.7
50.5
40.9
46.4
39.0
37.0
40.5
38.5
Mitsubishi UFJ Financial Group Inc
Industrial & Commercial Bank of China
Ltd
23.3
24.4
26.2
29.2
28.7
24.3
24.1
23.3
22.6
23.1
22.3
16.7
16.1
17.1
16.2
18.6
17.5
18.4
16.4
17.4
16.2
16.2
HSBC Holdings PLC
18.0
18.7
20.1
27.0
20.5
18.8
17.8
16.9
16.8
16.4
15.9
Barclays PLC
55.2
52.7
61.3
56.1
41.0
29.2
32.0
29.3
28.9
28.1
29.5
BNP Paribas SA
36.4
36.0
42.1
48.6
46.8
33.5
34.6
30.0
28.3
28.9
25.7
Credit Agricole SA
33.2
37.2
40.5
42.4
36.7
36.4
38.4
37.2
35.9
43.2
44.5
JPMorgan Chase & Co
12.2
12.7
14.0
16.1
13.8
12.9
12.4
12.6
12.8
12.9
12.2
Royal Bank of Scotland Group PLC
24.3
34.7
30.5
40.8
32.7
21.8
20.6
19.3
19.3
20.1
18.9
Bank of America Corp
11.5
12.0
12.4
13.0
11.5
11.5
11.0
10.7
11.0
10.1
9.9
Mizuho Financial Group Inc
41.1
43.7
52.5
80.1
95.3
57.4
52.5
39.3
41.7
45.3
36.2
China Construction Bank Corp
41.4
16.4
15.5
16.2
18.0
17.3
17.8
15.5
16.0
15.1
14.6
Agricultural Bank of China Ltd
-15.9
-7.3
-30.7
24.2
25.1
25.9
27.4
19.1
19.4
18.0
18.0
Bank of China Ltd
14.8
14.3
15.0
15.0
17.4
17.0
18.1
16.2
17.1
16.4
16.1
Citigroup Inc
17.5
19.3
19.3
27.3
23.7
12.2
12.5
11.7
11.1
10.6
10.4
Sumitomo Mitsui Financial Group Inc
25.9
31.4
35.0
38.5
33.4
34.1
26.7
26.6
28.0
28.3
26.0
Banco Santander SA
19.3
16.5
18.5
18.2
18.1
16.2
16.9
16.2
16.8
16.4
17.4
Societe Generale SA
39.1
39.3
34.5
31.3
33.7
28.7
29.6
28.4
28.0
28.2
29.3
Lloyds Banking Group PLC
31.0
29.1
34.1
29.1
46.4
23.7
22.0
21.5
21.8
21.1
20.6
UBS AG
49.5
61.7
46.9
61.9
47.7
32.7
31.7
28.1
26.2
26.6
26.1
Average
27.4
28.2
28.4
35.1
33.0
25.6
25.5
22.9
22.8
23.3
22.4
出典: Aon Benfield Analytics
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