...

海外実習報告第 7 日目 9 月 18 日(金) 富永美利亜

by user

on
Category: Documents
128

views

Report

Comments

Transcript

海外実習報告第 7 日目 9 月 18 日(金) 富永美利亜
海外実習報告第 7 日目 9 月 18 日(金)
富永美利亜,小川龍之介,今村琴乃
今,世界遺産で有名な棚田があるバナウエにいます。今日の午前は,農水省の普及員方と現地の棚田
を所有している農民お二人による案内のもと棚田見学に行きました。
朝 8 時に宿泊先の Green View Lodge
を出発,徒歩 5 分ほどに位置する農業省の事務所へ。今回案内していただく普及員お二方とそこで合流
し,ジプニーを貸し切って目的地へ向かいました。到着して外を眺めると,今まで見たことのない絶景
が広がっていました。急傾斜の多いこの地域で,生き延びるために考え出した方法が棚田であるのだと
感動しました。栽培したお米を売って生計のた
しにする農家はほんのわずかのようで,ほとん
どは自家消費だそうです。同行していただいた
農民のお二方に棚田に関する詳しいお話を伺い
ました。一人は,農民組織の所長を務めるアン
ドレスさん,もう一方は農民組織の座長を務め
るローベンさんという方です。米の収穫は,年
に一回で,
1 月~2 月を耕作準備期間としている
そうです。準備期間中に,棚田一区一区を区切
っている石壁に生えている雑草を取り除いたり,
稲の苗を作ったりします。取り除いた雑草の中
には窒素や尿素を含むものがあるため,それら
訪問した棚田
は緑肥として水田にすき込むそうです。できた
稲の苗は,一本一本手で整列して植えていきます。田植え作業は,農民総勢で 1~2 週間かけて一気に終
わらせます。これは,害虫による被害を軽減するための工夫だそうです。その後の 6 か月間が生育期間
となり,農家さんは暇になります。その間は,出稼ぎにでたり,地元で石壁工事や大工仕事をしたりし
て生計を立てます。収穫期の 8 月になると,地域農民総勢で収穫にあたるとのことです。収穫後にでた
稲わらは,棚田の土と混ぜて土を肥やします。こうしてでき
たお米は,売る場合は 100 ペソ/kg という高値がつくそうで
すが,ほとんどが自家消費されます。そのため,収穫期に雇
用した人件費は現金の代わりにお米で支払うことも。
昼食をとり,
続いて向かった先はバナウエ市内にある市場。
バナナはもちろんのこと,トマト,オレンジ,キャベツ,白
菜などバナウエでとれた様々な新鮮野菜がこの市場で売られ
ていました。生きたニワトリも売られており,買ったニワト
リを片手にすたすたと歩いている現地の人をみて,日本では
絶対にみることのない光景だったので驚いてしまいました。
農業省の普及員の話によると栽培した作物を仲買人が買い取
ってマニラ市街を中心に売ってしまうそうです。仲介役であ
る仲買人が多額のマージンをとってしまうので,これが農民
購入したニワトリ
を乏しくする原因だそうです。これをどうにか改善しようと
フィリピン政府が補助金や政策を打ち出しているみたいですが,普及員の方のお話によるとほとんど機
能していないそうです。フィリピンは,日本の農業協同組合みたいな組織がなく,約 70%の農家によっ
て生産された作物は,仲買人によって取り扱われます。そのため,ほとんどの農家は肩身が狭く,どう
しても生活が向上しない状況が続いてしまっているのです。はやく農業協同組合のような組織を立ち上
げ,システム化し農民の生活を豊かになるものにしていってほしいものです。
ここで農業省の普及員の方々とお別れをし,
次に向かった先はバナウエの歴史博物館。棚田の歴史や,
イフガオ族の文化,アクセサリーなど立派に展示されていており、イフガオ族の習慣や他族に対する敵
対心の強さなどがわかり非常に興味深く面白い場所でした。その次に向かったのは,バナウエでは珍し
い黒豚を飼育しているところへ訪問。バナウエでは,白豚が主流らしく,黒豚は白豚にくらべ赤身がお
おいことからあまり現地の人は好まないといいます。
なぜ,
ここで黒豚が飼育されているのかというと,
黒豚は雑食でさつまいもの茎葉を食べるので経済的かつ飼育している家族の方々が赤身肉を好むからだ
そうです。一方白豚は,購入飼料を与えなければならないらしく,1 パック 50 ㎏の飼料が 1400 ペソ,
これを豚一頭に対して 1 週間強で消費してしまうようです。黒豚に比べたら経済的とは言い難いようで
す。
これで今日行くところはすべて訪問し終わり,
夕飯を食べて明日バギオへの長旅に備えて就寝します。
只今午後 10 時ころですが,外はまだにぎやかでカラオケ大会が行われています。日本では考えられませ
んが,現地の人たちの生活を間近にみることができて非常に有意義です。以上,フィリピン,バナウエ
からでした。
海外実習報告第 7 日目 9 月 19 日(土)
岸本 栞,林田 空,岩谷あかり
この研修が始まる前,二週間の滞在の中でのスケジュールを一日ずつ確認した時に,スケジュール表
の中でひときわ目立っている日がありました。それはバナウエへの7時間ほどの移動です。ついにその
日がやって来ました。
朝の 7 時過ぎに,慌ただしく朝食を済ませて車
に乗り込み,気持ちよく晴れた空の下バナウエを
後にしました。バギオへ向かうためにはとても長
い山道を上り下りしなければならないため,皆車
酔いの対策をしっかりして乗り込みました。右手
には山肌,左手には広大な景色が広がる中を突き
進んでいくと,これまでの研修で訪れた町などで
は決して見る事ができなかった,幾種類もの草木
があふれかえる風景を窓から眺めることができま
した。崖の下にミニチュアのような棚田や民家と
森が見える度ごとに,車の中ではカメラを取り出
車内から見た山間の風景
して撮影会が始まります。
標高が上がるにつれて,
それまでに見えていた樹木がまばらになり,代わりに松をはじめとする針葉樹が山の斜面に増えてきま
した。ただこの辺りの山では,地下水の流れをしっかり調査せずに開発をしてしまったそうで,土砂崩
れが起きる危険性が高くなっているとのことです。崖が崩れている横を冷や冷やしながら通ることも何
度かありました。
午前 11 時過ぎに,出発地のバナウエと今日の目的地であるバギオの中間地にあるバギアスという地
域の肉料理レストラン『Farmers Den』へ到着し,昼食をとりました。このレストランは今まで訪れたレ
ストランや肉屋とは異なり,主に牛肉と鶏肉を扱
っていました。フィリピンでは豚肉の消費割合が
極めて高く,レチョン(豚の丸焼き)をはじめ多
くの豚肉料理がある一方,牛肉の需要は相対的に
極めて低いことが特徴です。道中でも牛肉をあま
り取り扱っていない店を多く見てきました。この
『Framers Den』では料理の提供だけではなく,店
先様々な種類の部位を販売していました。つりさ
げられた大きなぶつ切りの肉や皮,カウンターを
見れば骨や彩り豊かな内臓類が並べられ,日本で
は通常破棄されてしまう頭部まで販売されていま
した。今回の海外実習における肉生産分野の担当
店頭に吊り下がる牛肉
は日本とは全く異なる販売形式や肉の種類を目の
前にし,喜々として店主に数多くの質問をし,情報収集を行いました。
レストランではそれらの肉を実際に使ったと思われる料理を堪能しました。数人分を山盛りにして出
されるご飯,塩味のきいたスープは牛でダシをとったのでしょうか,生きている時のウシの臭いが漂っ
てきました。牛肉とネギの炒め物は,肉自体は少々固かったものの味付けは甘めで日本人好みのもので
した。そしてホルモンスープはどれがどの部位か分からない程に様々な部位が混ぜられた,まず日本で
は味わえない珍味でした。モツ,ギアラ,レバー,皮(なんと毛がちょっぴり付いていました)
,よくわ
からない肉・・・。臭いことは前述したものと同様,牛の臭いがしましたが,それぞれの具は食べてみ
るとコリコリとした食感と不思議な舌触りが楽しめ,1 週間食べ続ければ慣れる!と思いました。きっ
と牛臭さも癖になるはずです。
ちょっと奇抜なフィリピン料理を,
個人的には楽しむことができました。
昼食後,私たちは再びバギオへと向かいました。ずっと山道が続き,頂上のほうへ行くと霧が濃く視
界がかなり悪く,数メートル先が見えるか見えな
いかの状況です。その中でも生活をしている人々
がおり,
崖のほうで野菜の栽培も行なわれており,
中には牛を飼っている家もありました。斜面では
人間が作業をすることや,畑を耕すなど野菜や家
畜を育てることは難しいと考えていたので,この
光景を見て驚きました。途中で山にある展望台に
立ち寄りました。ここはハイウェイで一番高い場
所で高さは 7400 フィートだそうです。
展望台から
は私たちが登ってきた山の景色が一望でき,景色
の雄大さと人間が営む斜面での段々畑での野菜の
栽培が対照的に感じました。
フィリピンの国道での最標高点
昼食後 3 時間ほどでバギオに到着しました。バ
ギオの町は昨日まで滞在していたバナウエと比べて建物や車が多く,大都市です。バナウエの町にはバ
イクの横に人が乗ることのできる荷台のようなものを付けたトライシクルという乗り物が多くみられま
したが,バギオでは全く見られませんでした。理由を聞くと,バギオの町は坂道や交通量が多く,トラ
イシクルがあると渋滞の原因になってしまうので禁止されているそうです。今回の実習でフィリピンの
様々な町を訪れましたが,それぞれの町で,雰囲気や人々の生活の様子が違うので興味深かったです。
今晩はみんなで大きなショッピングセンターに行き,夕食を取りました。私たちがそこを訪れたのは午
後 6 時頃だったのですが,お店の中はまだ多くの人たちでにぎわっていました。
明日はベンゲット州立大学の学生と交流をします。学生たちと親睦を深め,ベンゲット州立大学の学
生たちはどのようなことを学んでいるのか,どのような生活をしているのかについて理解を深められる
ことを期待しています。
海外実習報告第 8 日目 9 月 20 日(日)
担当者 大八木侑子,北村克朗,山川紗有美
今日は各自で朝食をとった後,8 時半から私達が宿泊している施設でベンゲット州立大学(Benguet
State University 以下 BSU)の教授,学生と交流会をしました。
午前中は宿泊施設の 2 階の会議室に集まり,初めに BSU の土壌学の教授のメレステラ先生から挨拶を
いただいた後,開会のお祈りと両国の国歌を斉唱しました。フィリピンの国歌は日本での事前研修で聞
いていたので歌詞は分からないまでも,メロディは思い出しながら聞くことができました。また,日本
の国歌「君が代」を歌うのは久しぶりだったので,みんな少し緊張しながら歌っている様子でした。国
歌斉唱の後は教授,学生の順に自己紹介をしました。BSU からはメレステラ先生の他に獣医学部の学部
長,そして獣医,作物学,動物科学,昆虫学,植物病理学,土壌科学,有機栽培,環境科学を専攻して
いる男子 5 人,女子 4 人,計 9 人の学生来てくれました。自己紹介の後は私達の中の代表 6 名による畜
大についてのプレゼンテーションを行いました。プレゼンテーションでは日本と私たちの大学がある北
海道,帯広について説明しました。次に畜大の施設や専攻,学生生活についてパワーポイントで説明し
た後,英語版の畜大紹介ビデオを流しました。
畜大の紹介が終わった後は昼食までフリーな
交流時間となりました。初めに日本の文化の紹介
として折り紙で鶴を折ることにしました。畜大の
学生が前にでて折り方を説明しながら全員で折
りました。BSU の大学生は折り紙が初めてだった
らしくとても興味を持ってくれたようでした。英
語で細かい折り方を説明するのは難しかったの
で実演を交えて説明し,みんな鶴を折ることはで
きるようになりました。鶴を折った後はお互いの
国や専攻などのことについて話しながら他の折
り紙を折っていました。会話の中では日本のマン
交流会での折り紙体験
ガ,アニメについて盛り上がることもありクール
ジャパンのすごさを感じることができました。また,学生の中には日本人である私達よりも折り紙が上
手な学生もおり,それには負けまいと競争しながら折り紙を折る姿を見ることができました。最後に作
った折り紙を集め,どの折り紙がきれいか投票し上位 3 位の折り紙を決定しました。2 位になった作品
は BSU の大学生が作った子犬であり,日本人でもなかなか作れないほどの完成度で作られていました。
折り紙のあとは昼食まで少し時間があったので日本とフィリピンのゲームを一つずつ行いました。日
本の遊びとしては「だるまさんが転んだ」を行ったのですが「だるまさんが転んだ」の発音がフィリピ
ンの人には難しそうに思えました。私達もルールをうろ覚えだったので,昔遊びを振り返るいい機会と
なりました。
「だるまさんが転んだ」のあとはフィリピンのゲームを行いました。半円状に人がならび,
仕切る人に最初に指された人が「ヒップヒップ」と言いながら下で手を 2 回たたく,次の人は「フライ
ン」と言いながら両手をあげる,次の人はまた言葉を発しながら手をたたく,次の人は手をあげるとい
うものです。単純に思えましたが,素早く指される中で次にどっちをやるべきかが難しくなかなか面白
いゲームでした。どちらのゲームも大いに盛り上がりアイスブレーキングとしてはよかったのではない
でしょうか。
交流会のあとは BSU 内の学食で昼食をとりながら,お互いのことについて話すことができました。私
達から日本のことについて話すときは英語の話すことも難しかったのですが自分たちが話しているこ
とが本当のことか自信が持てない時もあり,日本人である私達
も日本のことについて理解していないことがたくさんあると
いうことを感じました。
昼食後には,ベンゲットの卸売市場に行きました。卸売市場
ではベンゲット周辺の作物農家がこの卸売場に持ってきて,そ
こから各地に発送されます。しかしそれには裏があり,農家の
人がこの卸市場に持ってきて仲買人が安い作物も買い,マニラ
で高くして売っています。そのため農家は収入が上がらず厳し
い生活を送っているのが現状です。その卸売り場で写真撮影中
やベンゲットの学生に話を聞いている間に子供が数名の学生
物乞いをしているのを目の当たりにして,身をもって貧富の差
を感じることが出来ました。
その卸売市場の後には La Trinidad Trading Post City Tour
ということでテッシー先生がベンゲット周辺を案内してくれ
ました。まず始めに植物園に行きました。植物園にはたくさん
ベンゲット野菜卸売市場
の植物がありました。日本にはないフィリピンの熱帯雨林なら
ではの植物があり植物園全体の花の配色を考慮した植栽や全体の設計が素晴らしいと感じました。
ライトパークでは乗馬体験用のたくさんの馬を
見ました。しかし,日本と違い馬の扱い方がとても
ひどく感じました。例えば,馬の毛を日本ではあり
えないようなピンク色に染めていたり,鞭のような
もの使って馬を従わせていたりしていました。その
ため馬はストレスを感じてか隣の馬と噛み合った
り,鉄の棒をかんでいたり,足ふみをしていたりと
馬に異常行為がみられたので可哀そうに感じまし
た。馬の目からは楽しさを一つも感じられませんで
した。これをみて私たち農業畜産で動物に関わるこ
とが多い学生として,フィリピンでの動物の扱い方
ライトパークの馬たち
について衝撃をうけました。
マンションはフィリピン大統領の別荘です。建物自体の中には入ることはできなかったのですが,敷
地内の一部分にはいることが出来ました。実際に入ってみると別荘がとてつもなく大きいことがわかり
ました。
次にフィリピンミリタリーアカデミー(Philippine Military Academy)を訪問しました。これはフィ
リピン陸軍士官学校があり,フィリピンの士官を養成する施設です。その中の博物館に入りフィリピン
の軍隊の歴史や戦争の歴史について知ることが出来ました。
キャンプジョイヘイはアウトレットが集まった場所で,買い物をしました。周りのホテルの宿泊者が,
欧米人が多いため価格表記が US ドルで示されており,フィリピンにいながら異国の雰囲気を感じまし
た。今日,一日の最後は BSU の学生と一緒に中華料理を食べて夕ご飯を楽しみました。今日一日中 BSU
の学生と一緒に過ごしていたことで仲良くなり食事中の会話も盛り上がり,また分かれる時にはみな別
れを惜しんでいました。
海外実習報告書 9 日目 9 月 21 日(月)
担当者 高橋畔奈,宮形 栞,毛利大地
朝食を食べ終え,午前 8:45 に宿泊先の向かいにあるベンゲット州立大学を表敬訪問しました。ラデ
ィラッド学長をはじめ各担当副学長の先生方が出席されて 9 時より会合が始まりました。ベンゲット州
立大学の教育方針は教育,研究,普及,アグリビジネスであり,主な学部としては農学部,環境科学部,
獣医学部,看護学部,また複数の文系の学部などがある総合大学であると知りました。
農学部では 2004 年からコーヒー,イチゴ,野菜
を用いた有機農業の研究をされており,今もなお
有機野菜の人気が増すフィリピン人を対象にした
有機農業の普及を進めていると聞きました。しか
し,
ベンゲット地域は気候がやや涼しいことから,
稲作の栽培には適しておらず,稲作は行っていな
いと知りました。学長に挨拶を終えた後,メリエ
ンダと呼ばれているフィリピンでは軽食を意味す
る間食をいただきましたが,サンドイッチ,焼き
そばのような麺料理,そしてパパイヤなどが入っ
た様々なフルーツの盛り合わせがふるまわれ,予
想以上に豪華でした。そして私たち学生のみんな
表敬訪問での自己紹介
がおなかいっぱいになったところで,昨日からお世話になっているティメレステラ先生に学内の施設を
案内していただきました。
最初に,もともとは小さなクラス単位で活動し
ているプロジェクトから立ち上げられた食品加工
センターに行き,グアバジャムの製造工程を見学
しました。グアバジャムのほかにもサクランボを
混ぜたグアバジャム,イチゴジャム,そして砂糖
の代わりにはちみつを利用したピーナッツバター
なども生産しているそうで,試食としてピーナッ
ツチョコレートをいただきました。チョコレート
の中に手作りのピーナッツバターが入っており,
食後のデザートにはとても合うような甘い味がし
ておいしかったので日本でも作られるといいなと
思いました。ここの施設では甘いもののほかにキ
食品加工センターでのグアバジャム製造
ムチも製造しており,
意外性を感じて驚きました。
また,
この施設は 11 人の社員が働いているのですが,
大学が運営しているのではなく,加工品を販売したときに出る利益で自活的に運営しておりこのような
ところで自給性や持続性もめざす食糧生産を実現しているということに感心しました。しかし大学内で
加工をしているため,この施設で働く社員全員に対する給料の 30%は大学に支払うのだと聞きました。
次に,パンを製造している加工施設に行きました。ここでは一袋 25 ㎏の小麦粉を一日に 7 袋分,パ
ンの製造用として消費しているそうであり,タイやシンガポールから輸入した小麦粉を強力粉や薄力粉
などに調整して再び輸出をすると聞いて非常に驚き,輸送コストが高そうだなと思いました。
ベンゲット州立大学の学内見学を終えた後,車で
約 15 分のところにある有機農法でコーヒー栽培を
行っている IHFCA(Institute of Highland Farming
Systems and Agroforestry)に行きました。最初にこ
の施設についての説明をパワーポイントで説明して
いただきました。この施設は JOCV(海外青年協力隊)
の支援によって 1981 年に設立され,以来、有機農法
によるコーヒー栽培と大学の教育機関として運営さ
れています。そのあとに実際にコーヒー農園に行っ
てコーヒーがどのように栽培されているかを見学し
ました。コーヒーは 11 月から約 5 か月間後の翌年 3
コーヒー農園内で飼育されている豚
月までが収穫期であるため,私たちが見たコーヒーの実はまだ緑で熟していませんでした。しかし,収
穫するときには赤色や黄色やオレンジ色などの鮮やかな色になるそうです。ここのコーヒー農園では化
学肥料を一切使っておらず,その代わりに家畜糞尿や植物残渣などによって作られる堆肥を使用してい
ました。また,コーヒーには様々な種類がありますが,この地域は山の中にある高地で気温が低い地域
に適しているアラビカという品種のみ栽培しているのだと聞きました。
午前中の最後の目的地である豚舎に行きました。この豚舎は同じコーヒー農園の敷地内にあり,3 頭
のメスと 1 頭のオスがいて,15 匹ぐらいの生後 1 週間の子豚がいました。3 頭のメスのうち 1 頭だけが
在来品種であり,フィリピンの在来品種特有の気性の荒さが際立っていました。しかし,子豚がミルク
を飲むときの子豚と母豚の光景はかわいくてものすごく癒されました。ここで飼育されている豚は研究
用にあるため,9 歳や 13 歳になっているここの母豚は出荷されずに約 10 回も妊娠をして一回あたりの
妊娠につきに約 10 匹の赤ちゃんを産むと聞き,人間にはありえないことだなと思って驚きました。しか
し豚はやはり行動や顔がとてもかわいく,非常に癒
された時間を過ごすことができました。
昼過ぎは雨がひどく,雷も鳴っていましたが,ツ
ブライ市役所を訪問しました。今年の 3 月までツブ
ライ市でプロジェクトを行ってきた国際農業者交流
協会常務の坂本さんがフィリピン来訪中で,わざわ
ざここまで来ていただき日本語でプロジェクトと協
会の概要を説明して頂きました。この協会は海外で
農業をしたい人を募り,アメリカやヨーロッパなど
に派遣しているそうで,マニラでもプロジェクトが
行われているようです。ツブライで行われていたプ
ツブライ市役所訪問
ロジェクトは,今もほかの地域で行われていて,炭
を作る際に出る水蒸気を冷やし,
酢酸やココナツの殻などを加えて木酢を作るといったものだそうです。
この木酢は耕作や畜産の分野で広く使用されており,日本の酪農学園などの農業系大学でも利用されて
いるようです。具体的な使用例として,豚の下痢の際の薬,牛のカビ系の皮膚病の薬,飼料,消臭剤,
肥料などがあるそうです。木酢というものがあることを初めて知ったので,とても興味を持ちました。
木酢は世界で使用されているのか質問したところ,炭を作る際の副産物であるため,炭を作る文化のあ
る南米やタイなどで利用されているようです。協会のある地区のツブライでは,7000 件の農家のうち 300
件が使用しているようです。
その後,ツブライ市役所が管理している畑や豚舎や鶏舎,コンポストや木酢の生産場に向かいました。
コンポストの生産施設場では悪臭はほとんど感じられませんでした。大学や帯広近辺ではよく見る施設
でしたが,大きな広葉樹の葉やココナツの殻が混ぜら
れているのを見て土地柄を感じました。コンポストは
2 週間ごとに切り返し,2~3 カ月で完成するそうです。
木酢の生産工程場は至ってシンプルで,土のかまど
で炭を作り,発生する煙をパイプに伝わらせ冷却し,
水滴にしてバケツに溜めるというものです。出来上が
った木酢には,280 以上の様々な成分が含まれている
そうです。ここにはたくさんの鶏や豚が飼育されてい
ましたが,敷料に木酢をまぜて使用しているので,臭
いは比較的少ないようです。
木酢の製造過程。煙を冷却して集めている。
飼育されている家禽は,茶色の鶏は食用,白い鶏は
卵の生産に飼育されているそうです。豚は,タグがついているものは研究用,そうでないものは食肉用
であると聞きました。他にもスナップビーンやレモングラスなど様々な植物が栽培されており,研究の
広さに感心しました。
時間がおしていたため,ホテルのレストランに直行しました。同行して頂いたフィリピンの方の近く
に座ることが出来ました。この方は日本の長野県で 8 カ月研修をしたそうで,日本語も話せる方だった
ので,日本の気候や野菜の特徴,文化や交通についてたくさん話しました。とても気さくな方で,楽し
い時間を過ごすことが出来ました。
今日の研修で,木酢の汎用性について興味を持ちました。炭を作る際の副産物として生産出来,300
~500 倍に薄めて使用出来る上に,通年で農薬を使用するよりもコストが少なく,豚の下痢止めの薬や
牛の皮膚病の薬など、幅広い用途で利用出来ることに感心しました。野菜においては木酢の使用で生産
量が増加しているらしく,他の国でも利用出来れば食糧生産の向上や家畜衛生に役立てるのではないか
と考えました。
Fly UP