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(その1)(PDF : 1352KB)

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(その1)(PDF : 1352KB)
Ⅱ
1
土
壌
の
診
断
県内土壌の特徴
1)母材の種類と養分状態
本県の土壌母材は、大きく分け
て、母岩が風化したり崩れてきて
堆積したもの(山間や各河川の上
流に多い土壌)と、その上に火山
灰が乗ったもの(火山灰土壌)、
更にはこれらの土壌が河川の流れ
で運ばれて堆積したもの(平野部
の土壌)が主で、海岸の一部に波
や風の影響で堆積した砂丘が分布
する。
平坦の水田は、上流の母岩の影
響で土壌本来の養分状態が異なる。
大きな河川上流域の母材と養分
的特徴を下表に示した。
表
わが国における各種土壌の分布パタ-ン(模式図)
県内の主要河川と流域土壌等の養分的特徴
河川流域等
上流の母材
母材成分の特徴
九頭竜川流域
安山岩玄武岩が主体
Ca Mg Feが多くMnがやや少ない
(上流ではMnの過不足が混在)
日野川流域
砂岩珪岩質が主体
Fe Mn K Caが少ない
(全般的に養分が不足気味)
足羽浅水川流域
玄武岩が主体
Mg Ca Feが多く Kが少ない
(鞍谷浅水川流域はMnが多い)
敦賀美浜地域
花崗岩砂岩が主体
Ca Mg Fe Mn が少ない
(全般的に養分が不足気味)
三方小浜地域
輝緑凝灰岩等が混在
Ca Mg Feが多く Kが少ない
(色々な土壌が混在)
-3-
2)地形と水の動きや土壌の堆積
過 去において、 河川上流 から削ら
れた 岩石や土壌は 、流速の 早い間は
大き い径の岩や礫 が運ばれ 、平野部
に達 した時点で流 速が落ち て沈澱す
る。 さらに流速が 下がると 粗い砂、
微細 な砂の順に沈 澱し、残 った粘土
分が 現在の平野部 を漂った 後沈澱す
る。 但し、嶺南地 方の平野 部は、過
去の 陥没で海底に 沈み、山 地が海岸
迄迫っている。
土 壌のタイプは 、母材の 他に土性
(土 壌粒子の粗さ 細かさ) と地下水
位の 高低で分類さ れるが、 いずれも
作物 の生育や作業 性に大き な影響を
与える。
県 内の各河川と も、この モデルの
様な 土性の変化や 地下水の 動きが見
られ るので、診断 や対策の 参考とす
る。
-4-
3)粘土鉱物の分布と保肥力(肥もち)
過去における県内土壌の粘土鉱物に関するデータ と、主な粘土鉱物単独の保肥力
(CEC)とを図および表に示した。
本県は、主としてカオリナイト系(保肥力が小さい)やアルミバーミキュライト系
の粘土鉱物が主体で、作土のCECが12~15me程度の地区が多いが、鯖江市~越
前市(今立地区)の一部にモンモリロナイト系(保肥力が高い)の粘土鉱物が含まれ、
作土のCECも30~35me/100gの高い値を示す。
農耕地土壌における粘土鉱物
測定
粘
地点
主
主な粘土鉱物名と塩基置換容量
土
~
副
鉱
物
~
随伴
1
Kn,Al-Vr,Chl,Ilt
2
Al-Vr,Vr,Ilt,Chl,Mt,Kn,Int
3
Chl,Vr,Al-Vr,Kn,Mt
4
Al-Vr,Int,Chl,Kn,Mt,Ilt
記号
粘土鉱物
塩基置換容量
5
Al-Vr,Kn,Mt,Ilt
Gb
ギブサイト
0me/100g
6
Kn,Int,Chl,Al-Vr,Ilt
Kn
カオリナイト
3~15
7
Chl,Int,Al-Vr,Ilt(Kn)
Chl
クロライト
10~40
8
Chl,Int,Al-Vr,Ilt,Kn
Al-Vr
アルミバーミキュライト
10~40
9
Al-Vr,Chl,Int,Kn,Ilt
Ilt
イライト
10~40
10
Mt
モンモリロナイト
70~100
11
Chl,Ilt,Al-Vr,Int,Kn
Vr
バ-ミキュライト
100~150
12
Ilt,Chl,Int,Vr,Al-Vr,Kn
Int
混層鉱物
不定
13
Chl,Int,Ilt(Kn)
(腐植)
100~250
14
Chl,Int,Al-Vr,Kn(Gb)
-5-
Chl,Ilt,Int,Al-Vr,Vr,Kn
2
診断等の流れ
土壌や作物の診断は、現場に近い人から多くの情報を聞き取ることが大切である。
機関
作物
の
健康
観察→問診→触診→検査※→処方箋(※簡易検査~分析委託)
J A
農林総合事務所 農業試験場
民間分析機関等
経済連分析室
施肥相談
紹介
紹介
高度の機器による
簡易診断
一般成分分析
重金属等
専門分析
施肥指導
施肥処方
分析対策
生育・症状・地形・母材・用水の観察(情報量多い)
↓
土壌管理・施肥慣行の聞き取りと対策 →
↓
←
↓
↓
簡易な土壌分析(pH・EC) 異常値の検出→
各農家・JA支所
通常値
↓
↓
一般成分の測定診断
施肥成分の過不足→
JA全農型分析診断
・農林総合事務所測定診断室
通常値
↓
↓
一般成分の分析診断
施肥成分の過不足→
JA経済連分析診断室
通常値
↓
↓
一般成分と特種成分の分析診断(重金属等を含む)
農業試験場・民間
↓
↓
↓
↓
土壌母材・水質・工場等発生源対策
-6-
3
現場での診断
土壌や作物の栄養診断は、生育異常等の診断要請に 応える対策診断と、施肥指導のため
に土壌や作物の養分状態を定期的にチェックする予防診断がある。
作物の生育異常については、pHの偏り・ECの高まり・塩基バランスの偏りと、作
目・品種・台木との相性による事例が多く、たまに重金属過剰や塩害・煙害も散見される。
また近年、除草剤と推定される事例が増加傾向にある。
いずれにしても、現場観察と耕種概要の聞き取りが最も重要なので、性能向上の著しい
簡易土壌診断具等を活用し、聞き取りポイントの明確化と対応の迅速化を図る。
一方、定期的なチェックにおいては、圃場を代表する土壌や作物のサンプリング法が重
要となり、分析結果が基準値と大きくずれる時には、 再チェック後に農家の慣行的な耕種
概要を詳しく聞き取ることが対策上重要になる。
1)現場診断項目のチェックポイント
(1) pHの現場診断(カード型pHメーター等の活用)
低い時の症状:生育が遅れたり重金属(マンガン等)の過剰吸収
要因:新しい土壌(赤土・黄色土・黒ボク等の開畑や客土は塩基が欠乏)
湖底や河川底質の浚渫土(硫化物で黒い土は酸化して硫酸に変化)
長期石灰等の無施用(下肥や緑肥を長期連用や化学肥料多肥の土壌)
対策:アルカリ資材施用(砂質は少量をこまめに、粘土質や黒ボクは多めに)
高い時の症状:リン酸や微量要素(鉄・亜鉛等)欠乏を併発することが多い
要因:石灰・苦土質アルカリ肥料の過剰施用(ホウレンソウ跡地等)
母材が石灰岩質土壌なのに通常量の石灰を連用
施設の石灰・苦土質アルカリ肥料の多用(露地並の量を連用)
対策:石灰や苦土質資材の減量、急ぐ時は希硫酸や硫黄華の施用で逆中和
(2) ECの現場診断(カード型ECメーターや硝酸イオンメーターの活用・・・・畑地)
硝酸塩が多い時の症状:葉色が濃いのに生育がいじけ、根が伸びない。
要因:施設等での過剰施肥(アンモニア態や有機もいずれは硝酸態に変化)
対策:圃場からの持出し量に応じた施肥と緩効性や硝化抑制肥料の活用
低い時の症状:肥料切れ症状を示す時と地力窒素等で正常生育の場合がある
対策:生育に応じた追肥等
塩素イオン多い時の症状:活動旺盛葉の葉縁溢泌部近辺から黄化
要因:灌漑水中の塩分や畑地への塩素系肥料連用、高塩分バークの大量連用
対策:肥料の種類・有機質資材の塩分チェック、灌漑水を変更
-7-
(3) 煙害・ガス害等の現場診断(発生源を探す)
症状:活動旺盛葉位(中位)の被害がひどく、風下へ向けて帯状障害。
(フッ素、塩素等は葉先、亜硫酸、アンモニア、亜硝酸ガスは葉脈間に発生すること
が多い)
要因:物陰に塩ビ製品の焼却跡や工場の排気口があることが多いので注意する。
ハウスのガス害は、ガラス内面等に付着した液滴のpHを測る。
(高pH:アンモニアガス 低pH:亜硝酸ガス 施肥に起因する)
対策:煙害や工場等の排ガス害は、発生源と農家の話し合い。
ハウスのガス害は、肥料の種類や一回当たりの窒素施肥量の見直し。
(4) 油流入の現場診断 (用水路等の雑草や壁面への油分付着状況から発生源を探す)
症状:最初、油膜が水面を漂い、油付着部位から変色し、甚だしい時は枯死。
要因:工場の重油タンクやガソリンスタンド等からの漏れ。
家庭からのてんぷら油の混じった排水の流入。
農業機械や自動車エンジンオイル等の投棄。
対策:油の中和剤は、被害症状をひどくするので用いない。
多量に油の染み込んだ土壌では、流入部を囲み、石灰質資材を施用して夏 季に
油の分解を進め、翌年の施肥量を減らす。
(5) 水稲塩害の現場診断(カード型ECメーター等で、土壌や灌漑水・田面水のチエック)
症状:水稲、畑作物とも、最初、葉先から枯れるが、甚だしい塩害の時には、枯死す
る。水稲は鉄分を異常に吸収して、黒っぽい灰色に枯れる。この時、葉先を噛
むと塩味を感じることが多い。
要因:灌漑水(塩分濃度が高まると、流れの泡立ちが多くなり、高ECとなる )
塩分の多 いバーク堆肥(海中貯 蔵木材が原料の時 の 大
量連用)
漬 物等高 い塩分 の有機物 を投棄 (家庭 菜園や庭 木等で
枯死例有り)
対策:取水法の変更、多肥の防止とケイカルの施用、投入資
材のチェック
-8-
(6) 水持ちや水はけ等の現場診断
(地形・停滞水・土壌断面の観察や、初雪の積雪状況・春の融雪速度を観察)
① 症状:畝間に停滞水があり、畑作物の根が伸びない
要因:地下水位が高い(川沿いで時期により地下水位が変動する場合がある)
耕盤が締まっている(重粘土が乾燥過程や重機の作業で締まる)
耕盤以下が重粘土(礫質土壌でも礫と粘土が圧密されていることがある)
表面水の排除が遅い(畑作物は、4時間雨量4時間排水以上が望ましい)
対策:要因を確かめ、明渠、暗渠、サブソイラー、心土破砕等
② 症状:干ばつやフェーンの影響を受け易い
要因:水田 耕盤以下の土壌が粗い。作土が浅い。畦畔部の漏水が多い。
畑地 作土層が浅くて、堅い。粘土や腐植が少ない。
対策:優良粘土の客土、ベントナイトによる漏水防止、畔シート、深耕、良質堆肥の連用
③ 症状:土が異常に締まる
要因:粘土が多いのに腐植や石灰が少ない(新しい下層土が作土になった時等)
下肥の連用やカリの多用・耕耘時の練り過ぎ。
対策:良質堆肥の連用、塑性限界水分以下(乾いた状態)での耕耘作業等
政令指定土壌改良資材(ゼオライト、パーライト、木炭等)の施用
④ 症状:古いハウス等で、土が粉状になる
要因:施肥塩類の過剰蓄積。
粘土構造が崩れ、腐食含有量が減少して土壌の保水性が低下。
対策:施肥量の見直し、良質堆肥等の補給、優良粘土の補給
-9-
2)現場でできる調査法
(1) 耕盤の締まりや軟弱地盤の調査(コーンペネトロメーター法)
使用器具:地耐力測定機SR2型やDIK-5520型
圃場軟弱部のチェック例
<測定結果>
3~4Kg/cm 2 以下は機械走行不能・15Kg/cm 2 以上は植物根の侵入が困難
山中式土壌硬度計と手指法の関係
軟弱地盤
圧密耕盤
山中式土壌硬度計とコーンペネトロメーター法
- 10 -
(2) 地下水位や透水性の測定
① 地下水位
作物の適地下水位早見表(茨城農試)
10
作
物
50
名
サ ト イ モ
シ ョ ウ ガ
ニンジン(春まき)
(夏まき)
ニ ン ニ ク
タ マ ネ ギ
ヤマノイモ
ホウレンソウ
シュンギク
キャベツ(夏まき冬どり)
(極早生晩播)
ハ ク サ イ
レ
タ
ス
ハナヤサイ
ブロッコリー
スイートコーン
イ ン ゲ ン
ス
イ
カ
キ ュ ウ リ
カ ボ チ ャ
ナ
ス
ピ ー マ ン
ト
マ
ト
ア
ズ
ラッカセ
ダ
イ
ソ
サツマイ
キ
イ
ズ
バ
モ
低温地帯の輪換畑には不適
4月初め以後の地下水位
秋まきコムギ
秋まき六条オオムギ
秋まき二条オオムギ
飼
料
用
夏まき六条オオムギ
夏まき二条オオムギ
グレインソルガム
- 11 -
同
同
cm
100
② 透水性
減水深と水稲収量
土質別透水係数の範囲
土
質
透水係数(cm/sec)
透
水
性※
>10 -1
高
い
細礫、粗砂、細砂
10 -1~10 -3
普
通
微砂、シルト
10 -3~10 -5
低
い
粗粒または中粒の礫
ち密なシルト、粘土質シルト、粘土
10
均質な粘土
-6
~10
<10
-7
-7
非常に低い
不
透
水
※水が土壌構造の間隙を通る速度
透水係数と減水深
(三好)
透水係数
減水深
(cm/秒)
(mm/日)
1×10 -7
0.1
1×10 -6
0.9
1×10 -5
8.6
1×10 -4
86.4
1×10 -3
864
土壌構造
減水深=蒸発散量(株間水面蒸発量+葉面蒸発量)
+浸透量(降下浸透量+アゼ浸透量)
破砕転圧による増収効果(茨城農試)
処
対
理
耕盤のち密度
照
破砕転圧
19~22
減水深
収量比
cm/日
%
7.4
100
収量比は破砕転圧と
1.0
120~130
周辺の無転圧の比較
- 12 -
備
考
(3) pF値や土壌水分の測定
① 手触り法(山勘法):pF1.5以下 握ると指の間から水が滴る。
2.7
土を強く握ると、堅く締まる。
3.8
わずかに土の湿り気を感じる。
4.2以上 全く湿り気を感じない。
② pFメーター法:pF1.5~2.7の比較的植物
が吸い易い水分域(易有効水分域)の測定に
向く。
③ 石膏ブロック法:pF2.5~4.2の乾燥域(毛
管水切断点~枯死限界点)での測定に適する。
④ 誘電率法:pF1.0~5.0の広い範囲の測定に
向くが、高価である。
⑤ セラミック電極法:pF1.5~2.9と2.5~3.9
用の2タイプのセンサーがあり、比較的広い
範囲の測定に向く。
⑥ 土壌乾燥法 :あらゆる水分範囲の測定に向
くが、予め、その土壌のpFと水分の関係を求
めておき、測定毎に採土・乾燥・秤量を行っ
てpFを読み取る煩雑さがある。
(pF値)
0
1.8
3.0
3.8
4.2
7.0
正常生育有効水分
重力流去水
全
有
効
水
分
非有効水分
易 効 性 有 効 水 分
難効性有効水分
(水分恒数)
圃場容水量
生長阻害
初期萎凋点
永久萎凋点
作物の吸水利用からみた土壌水の分類
土壌水分とpFの関係
土壌水分と石膏ブロック抵抗値
- 13 -
3)土壌のサンプリング法
塩基(石灰・苦土・カリ・ナトリウム)・窒素(硝酸態・アンモニア態等)・腐植・リン酸・
鉄・マンガン・ホウ素・銅・亜鉛・ヒ素等の化学性と一部の物理性については、過去における調
査の有無を十分確認し、土壌本来の性質にからむ項目(土性や粒径組成・塩基置換容量・腐植・
鉄・マンガン等)の重複分析を避ける(持ち帰って分析が必要なもの、つまり、施肥により変化
し易い成分に絞る)。
(1) 予防診断(定期的な診断等)のサンプリング
① 圃場全体から数箇所の作土を採取し、合せて一点(5~600g)とする。
② マンガン過剰地帯では、混層耕や深耕前に、
下層土も採取する。
(通し番号、採土年月日、地点名を袋に記入)
(2) 対策診断(生育異常等の診断)サンプリング
①激しい生育異常部の数箇所から作土等一点を採
取し、更に、同一圃場(又は隣接圃場)の正常
生育部からも比較対照の土壌を一点採取する。
②塩類過剰の診断には、塩分の集積し易い畝肩部
や枯死株の根圏からも採土すると判断がし易い。
③現場での簡易診断に基づき、耕種概要の詳しい
聞き取りを行う。それでも要因がはっきりしな
い時には、土壌や作物それぞれに日時・場所・
「異常部」・「正常部」等を明記後、持ち帰っ
て分析に供する。
- 14 -
4 土壌断面調査法
作物の生産基盤である土壌の診断を行うには、 まず、多くの情報が得られる土壌断面調
査から始めることが基本である。
1)土壌断面調査の手順
(1) 調査ポイントの選定
・水田
:1筆の中央付近で、暗渠の直上は避ける。
・畑・施設園芸・樹園地 :1筆の中央付近で、通路は避ける。
(2) 調査にあたり準備するもの
・調査地点図
・土壌断面調査票、筆記用具、調査板(バインダ-)
・断面調査用具
スコップ、検土杖、ショベル、折尺、山中式硬度計、ジピリジル液、
テトラベ-ス液、土色帖、土壌袋、(GPS)
(3) 調査穴の準備
あらかじめ調査地点を選定し、1筆が特定できる地図を準備する。調査の前に穴を掘
っておいてもよい。しかし、水田(湿田)の場合は、地下水や降雨により水が溜まり、
汲み取りに時間がかかるので、調査の際に穴を掘る方がよい。
当然のことではあるが、調査する断面の上には決して立たないこと。
(4) 断面の作成(調査のための穴堀)
調査対象となる深さ1mまで掘るのが正式な方法である。
但し、簡便に行うには、スコップで30~50cmの穴を堀り、太陽と対峙する方向に断面
を作成する。それより下層は、検土杖を活用して調査する。
検土杖は1回で30cm調査できるので、3回試抗することによって約1mの土壌断面が
確認できる。なお、少しでも礫があると検土杖が刺さらないことがある。礫含量や礫層
の有無を確認するため、数か所のポイントで確認する。
前もって穴が掘ってある場合には、調査の際に断面の表面をうすく削ってから行う。
- 15 -
(5) 土壌断面調査
土壌断面調査項目ごとに調査を実施する(次項)。
(6) 分析試料のサンプリング
土壌断面調査時に作土を垂直方向に全域から数か所採土する(下図)。但し、土づく
り肥料が散布されている場合には、表層2cm程度削ってから採土する。
サンプルは、一般分析用は紙袋に入れるが、可給 態窒素(地力窒素)分析用のサンプ
ルは、乾燥しないようにポリ袋に入れる。サンプルは日陰に置き、高温にならないよう
に保管する。
可給態窒素は、微生物の働きで大きく変化するので、
乾燥や高温にならないように管理する。
[地表]
↓ 採土
しばらく保管する場合は、微生物の働きを停止させる
[作土]
ため、5℃前後の冷蔵庫の直接冷気があたらない場所に
置く。
[次層]
サンプルはなるべく早く、分析する機関(試験場や
分析センタ-など)に届ける。
2)土壌断面調査項目と調査方法
土壌断面調査は、土壌統群が分類できる程度の調査とする。(例:グライ化灰色低地
土)ただし、種々の肥培管理対策や土地改良計画などを講ずる際に参考とするため、なる
べく細かく調べた方が良い。また、特筆すべき点があれば調査項目にこだわらず記載して
おく。
次の項目の順番に調査を進める。1人は調査、1人は記録を担当する。
(1) 土壌層位
水田など人為的な管理を受けた土壌や森林など長年にわたる植生の影響を受けた土壌で
は、断面はいくつかの明確な土層が観察され、土壌生成の過程、来歴を物語っており、土
壌を分類する上で重要である。
土壌層位は上から順にO,H,A,B,C,R層と呼ばれる。このほか、場合によって
はG層(湛水条件下で生成されるグライ層)が存在する。O層は落葉などが堆積した有機
質層(有機物が容量で60%以上)で土壌には含めない。
A層は土壌断面の最上部(有機物が20%未満)とされ、植物の根や残渣の供給を受け、
それが腐植となって暗色または黒色がかった土壌となる。また、気候や人為的な影響を強
- 16 -
く受けた層位である。
B層はA層とC層の中間にあって母材の岩石構造はほとんど残っていないが、A層から
溶脱した鉄やアルミニウム、腐植などの集積が見られる。
C層はB層の下にあって土壌生成作用を受けず、母材からなる層である。
R層はC層の下にあって、母材を供給する母岩の層である。
(2) 作土深
作土深は、根の分布を規制し、一方では養分供給量を左右するなど、作物生産にとっ
て非常に重要である。一般に作土深が深くなるほど収量・品質が向上する傾向にある。
測定は原則として作物栽培跡地の作土深を測定する。
耕起前の圃場では、ショベルをさすと鋤き床に当たり 抵抗がある。ショベルで断面を
少しずつ削りながら、2層との境界を特定し、地表面からの高さを作土深とする。単位
はcmとする。2層が柔らかい場合には、手の感触で境界を決める。
地表面が波うっている場合には、平均地表面を想定する。また、耕起してある場合に
は、推定して記録する。県下水田の平均的な作土深は約 13cmであり、これを基準に推定
する。この場合には耕起有りと記載しておく。
一般に、一回のロ-タリでは深さ13cm前後しか起きないので、20cm前後の大きな値が
測定された場合には、慎重に再調査する。
(3) 層界
層界は、作土深、土性、ち密度、グライ層、斑鉄、礫、腐植等から決定する。
具体的には、断面を形成した後、作土深を測定し、グライ層、腐植含量を含めた土色、
斑鉄の有無、礫含量から決めれば良い。
断面に、ショベルで層界線をつけて、以下の調査を行う。
(4) ち密度
山中式硬度計による読みmmで表す。各層ごとに3点測定する。
ち密度は、土場内の通気性や透水性の善し悪しと関連が深く、また、根の伸長にも関
係する。一般に、数字が高くなると根が下層に伸長しにくくなる。強粘~粘質土壌では
20mm以上、壌質土壌では15mm以上、砂質土壌では10mm以上になると根の土層への侵入が
困難となる。
平滑に整えた土壌断面に対し、直角の方向に硬度計を押し当て、その円錐部のつばが
土壌面に密着するまでゆっくり水平に保ちつつ押し込み、その貫入の深さを数値 mmで読
む。同一の層位で場所を変えて数回測定し、最大頻度の数値 mmを代表値としてして記載
する。
(5) 土性
土性は、国際法の粒径区分に従い、2mm以下の粒径区分(砂、シルト、粘土)の重量
百分率で決められる調査項目で、土壌の理化学性に深く関係する。
- 17 -
粒径区分
区分
粒 径
礫
>2mm
粗 砂
2 ~0.2
mm
細 砂 0.2 ~0.02 mm
シルト 0.02~0.002 mm
粘 土 <0.002
mm (2μm)
区分の特徴
水をほとんど保持しない
孔隙に毛管力で水が保持される
同上、肉眼で見える限界
凝集して土塊を形成する
コロイド的性格をもつ
土性区分
区分 粘土含量
砂質
15%以下
壌質
15
粘質 ~25
%
25
強 ~45
粘
%
質
45%以上
土
性
区
略号
分
砂土
Sand
壌質砂土
Loamy Sand
砂壌土
Sandy Loam
壌土
粘土
シルト
砂
%
%
%
S
0~5
0~15
85~100
*
LS
0~15
0~15
85~95
*
SL
0~15
0~35
65~85
Loam
L
0~15
20~45
40~65
シルト質壌土
Silty Loam
SiL
0~15
45~100
0~55
砂質埴壌土
Sandy Clay Loam SCL
15~25
0~20
5~85
埴壌土
Clay Loam
15~25
20~45
30~65
シルト質埴壌土
Silty Clay Loam SiCL
15~25
45~85
0~40
砂質埴土
Sandy Clay
SC
25~45
0~20
55~75
軽埴土
Light Clay
LiC
25~45
0~45
10~55
シルト質埴土
Silty Clay
SiC
25~45
45~75
0~30
重埴土
Heavy Clay
HC
45~100
0~55
0~55
CL
壌質砂土および砂壌土は、粗砂および細砂の含量により次のように細分される。
壌質粗砂土 Loamy Coarse Sand(LCoS)
細砂40%以下、粗砂45%以上
壌質細砂土 Loamy Fine Sand(LFS)
細砂40%以上、粗砂45%以下
粗砂壌土
Coarse Sandy Loam(CoSL)
細砂40%以下、粗砂45%以上
細砂壌土
Fine Sandy Loam(FSL)
細砂40%以上、粗砂45%以下
土性三角図表
ただし、有機物は分解過程により次の2種類に分ける。
・黒泥土:有機物の分解が進み、黒色~黒褐色を呈し、作物の繊維組織がわずかに残るもの。
・泥炭土:有機物が未分解で、赤色を呈し、組織が確認できるもの。
- 18 -
現場では、下表を参考にして、指感によって層位別に判定する。
ただし、腐植含量の高い土壌や作土では、腐植の影響でねばりが弱くなり、土性をあ
らい方に判定しがちであるので注意する。
標準土性で指感を訓練しておくことが重要である。
可塑性および粘着性による土性判定方法(小山 1961)
可塑性
粘着性
なし
なし
S、LS
弱~中
弱
SL、L
弱
強
SCL、SC
強~極強
土
中~弱
性
SiL
強
強
L、CL
極強
強
SiCL
極強
極強
HC、LiC、SiC
可塑性および粘着性の区分(小山 1961)
区
分
な し
可
塑
性
粘
全然かたまらないか、ほとんど棒
着
性
全然指に付着しない
にのびない
弱
辛うじて棒になるがすぐ切れる
ほとんど感じない
中
径2mm位の棒まで延ばせる
指を離した時、やや抵抗を感じる
強
径1mm
指を離した時、やや強い抵抗を感じる
極 強
〃
〃
径1mm未満の糸状にまで延ばせる
指を離した時、強い抵抗を感じる
土性は最終的に次の4つに分類する。(自分なりに指の感覚を掴んでおく)
① 強粘質(HC、LiC、SiC、SC) 粘りが強く、ヌルヌルしており、太さ1mm以下の
コヨリ状となる。砂が多いものでは粘質と判定しや
すいので注意する。
② 粘質(SiCL、CL、SCL)
ある程度砂を感じるが、壌質ほどではなく粘りも
かなりある。
③ 壌質(SiL、L、FSL、SL)
粘りが少なく、ザラザラした砂を強く感じる
④ 砂質(LS、S)
ほとんど砂だけを感じる
注)土壌の生成過程を重視する従来の分類法によると、土性は作土を除いた次表層位
(おおむね25~65cm)の土性で代表したが、今回の分類では、作 物の生育に影響
が大きい作土を含めた上層の土性を重視することにする。
したがって、断面の各層位で土性が異なる場合には、作物の生育に影響 が大きい
作土を含めた上層の土性で代表することにする。
- 19 -
(6) グライ層の性状と位置
ジピリジル反応が即時鮮明であるか、または物理的に未熟成で 、色相は10Yかそれ
よりも青灰色を呈する土層をグライ層と呼ぶ。
地下水によって維持されている地下水グライ層と潅漑水などが浸透した停滞水によっ
て維持されている停滞水グライ層に分けられる。
①++:即時鮮明に呈色
② + :即時呈色するが、その程度は弱い
③ ± :しばらくすると弱く呈色する
④ - :しばらく放置しても呈色しない
グライ層の出現位置は地下水位と関係があり、地下水位が常時浅い水田では、全土層
となる場合がある。このような水田では根の働きを鈍らせることになり、場合によって
は根腐れの原因となる。
農耕地の土壌分類第3次改訂版によれば、「地下水にほぼ周年飽和されたグライ層の
上端が地表下50cm以内に現れる低地の土壌」はグライ低地土に分類される。
一方、潅漑水の影響によって、次表層位に厚さ2cm以上の斑鉄層(作土の2倍以上の遊
離鉄を含む)をもつか、灰色化層(雲状斑鉄に富み、ふつう構造が良く発達し、構造表
面が灰色の次表層位)の下端が地表から50cm以深に及ぶ土壌は低地水田土とする。
【乾田】
【半乾田】
【半乾田】
【半湿田】
【湿田】
厚さ
【強湿田】
下層
25cm
10cm
50cm
- - まで
- - 以下
以上
まで
斑 鉄 斑鉄
- - に斑
- - の逆
50~
にグ
- - の生
- - 鉄な
50cm
さグ
75cm
ライ
- - 成が
- - し
以下
ライ
にグ
- - 層の
斑 鉄 見ら
- -
にグ
層
ライ
- - 上端
- - れる
- -
- - 層の
- -
- -
- -
- - 上端
- -
- -
- -
- -
- -
- -
- -
灰色低地土
下層グライ
グライ土
強グライ土
斑鉄型
強グライ土
還元型
ライ
- - 層
灰色低地土
灰色低地土
表層グライ
グライ層の出現位置と乾湿田の区分
(平坦地の土壌タイプ、土壌分類法によって異なる)
- 20 -
(7) 斑紋生成の有無
遊離の鉄やマンガンが特定の部位に濃縮したものを斑鉄およびマンガン斑といい、
鉄質のものは黄褐~赤褐色、マンガン質のものは黒褐~黒色を呈する。これらの斑紋は、
土壌の収縮や水分の移動などによって酸化が進むことによって形成される。
水田の表層には、イネの根に沿った糸根状の斑鉄やマンガン斑が多い。管状の斑鉄
は通常グライ層中の根の孔に沿って発達する。膜状斑は、割れ目の表面や構造面にみら
れる。その他、形状により雲状の斑鉄や点状のマンガン斑に分類する。
マンガン斑は、酸化層に見られ、黒い斑紋を形成するので外見上認識できる。不明
瞭な時は、テトラベ-ス試薬をかけるとマンガンは試薬と反応し黒紫色を呈する。
「斑鉄有り」とは、糸根状斑、膜状斑で「含む」以上、管状斑では「有り」以上の
含量の場合をいう。特に、強グライ土の場合は、25cm以下の斑鉄の有無で還元型と斑鉄
型に分類する。
① あり
:断面積の
2~5%
② 含む
:
〃
5~10%
③ 富む
:
〃
10~20%
④ すこぶる富む:
〃
20%以上
断面積に占める斑鉄の面積割合は、下図を参照して決定する。
面積割合
- 21 -
斑鉄の種類と透水性
斑鉄とは、土壌中の溶けた(還元された)鉄が、根の跡や割れ目から侵入する空気や
水(酸素を含む)で酸化されて赤く沈着したものである。
斑鉄の量が多く深い圃場は、田面からの縦浸透水で酸素が適度に供給され水稲の根張
じょうでん
りが深く、活力も長持ちする(昔から 上 田 と言う)。
膜状斑鉄や管状斑鉄、暈管状斑鉄は、他の斑鉄に比べて透水性が高い。
斑鉄等の種類と特徴
①膜状斑鉄:土壌の割れ目に沿って、紙のようにひろがっている。
②雲状 〃 :周囲がぼやけており、表面だけでなく内部へもぼやけてひろがる。
③管状 〃 :管状に中心部があいたものと、棒状のものがある。
④糸根状〃:細根の跡にでき、周囲がぼやけたものがある。
⑤暈管(ウンカン)状〃:管状斑鉄の周囲に赤褐色のぼやけた輪郭がひろがったもの。
⑥点状 〃 :酸化マンガンの紫褐色・点状の集合(スコップ跡では茶色の筋状)。
⑦炭酸鉄結核:大昔、強還元下で生成した乳白色の豆状・紛状の塊。
斑鉄・結核のいろいろ(塚本・加甲)
(8) 礫層の出現位置
礫とは粒径が2mm以上のものを言う。礫の多少は耕耘の難易や有効土層を規制する。
礫の断面積に占める割合により、下記に分類する。(面積割合の目安は前項参照)
① あり
:断面積の
5%未満
② 含む
:
〃
5~10%
③ 富む
:
〃
10~20%
④ すこぶる富む:
〃
20~50%
礫層とは断面積で20%以上含まれ
⑤ 礫土
〃
50%以上
る層(④と⑤)を指す。
:
礫層の出現位置により下記に分類する。
① 0~30cm以内に出現
:表層礫質
①を礫質土壌に分類する。
② 30~60cm以内に出現 :下層礫質
③ 60cm以下
:礫層なし
- 22 -
検土杖で礫層を調査する場合は、数か所試坑して確認する。
また、礫の大きさや形状がわかる場合には記載しておく。
[大きさ]
[区分]
① 角礫
[形状]
① 細礫:
0.2 ~1cm
② 小礫:
1~5cm
② 亜角礫:
③ 中礫:
5~10cm
③ 亜円礫:
④ 大礫:
10~20cm
④ 円礫
⑤ 巨礫:
20~30cm
⑥ 巨岩:
30cm以上
- 23 -
:
:
~
[区分]
(9) 腐植含量
腐植とは、動植物遺体が土壌中で生物的作用によって分解されたのち、この分解生
成物が重縮合して形成された暗色を呈する比較的安定な高分子化合物をいう。ただ し、
その厳密な分離は難しいので、未分解の粗大な根や落葉枝の破片などを除いた土壌有
機物全体を指すのが普通である。
腐植含量は、土壌生成環境の指標であるばかりでなく、土壌の物理的、化学的、生
物学的諸性質、ならびに土壌の肥沃性を大きく支配する要因として、土壌分類や生産
力分級の基準に用いられ、野外における含量の判定、室内における定量が必須項目に
なっている。
腐植含量の正確な測定は室内での分析によらなくてはならないが、野外では肉眼観
察によっておよその含量を判定する。野外判定は、腐植が黒味を呈することから、土
色帖で判定した土の色を拠りどころにして「あり」、「含む」、「富む」、「すこぶ
る富む」、「腐植土」の5段階に大分けする。下表に5区分の腐植含量と土色のめや
すを示す。
腐植含量区分と判定の目安
区分
腐植含量
土色
明度
あり*
2%以下
明色
5~7
含む
2~5%
やや暗色
4~5
富む
5~10%
黒色
2~3
すこぶる富む
10~20%
著しく黒色
1~2
腐植土
20%以上
軽しょうで真黒色
2以下
*「あり」のうちごく小量と判定されるものは「なし」としてもよい
なお、火山灰土壌では、腐植含量の多少がとくに重視されるので、野外調査と室内
分析の結果から次表のような細かな判定法が出されている。
火山灰土壌の腐植含量と土色
腐植含量
明度
彩度
土色
12%以上
2以下
1
黒
10%前後
2
2
黒~黒褐
8%前後
3
2~3
黒褐~暗褐
5%前後
3
3~4
暗褐
3%前後
4
3~4
褐
2%前後
4以上
5~6以上
褐
色相
7.5YR
~
10YR
野外で土色から腐植含量を判定する場合は、湿土の色による。土色は水分状態で変
わり、風乾状態に近づくと急激に明るくなる。したがって、乾いた露出面は削り、生
土の色を出してから観察する。また、必要ならば湿らせて湿土の色に 基づいて判定す
る。
腐植が土を暗色にする効果は、その重縮合の程度(腐植化度)、炭水化物・たんぱ
く質・脂肪などの暗色に寄与しない有機質(非腐植物質)の割合などで変わるので、
先に表示したのはあくまで目安である。
- 24 -
以下に土色によって腐植含量を判定する際、留意すべき主要な点をあげる。
・土色に差がない場合でも、腐植含量は一般に表層土で高く下層土で低い。 従って、表
から判定が2区分にまたがるときは、表層土は高い方の区分に、下層土は低い方の区
分に判定する方が無難である。
・黒ボクの混入した沖積低地の土壌は、黒味の割に腐植含量の高くないことが多い。そ
のほか腐植による着色効果は土壌の粒度で異なり、表面積の小さい砂質の土壌では、
同一腐植含量でもより暗色に傾きやすい。このような土壌で、土色から判定される腐
植区分より低目に見積った方がよい。
・森林、とくに天然林の土壌は、腐植含量の高さほどには土色は黒くないのが 普通であ
る。この場合は、表より判定される腐植含量区分より高目に見積った方が無難である。
・未風化の火山砂、砂丘砂、河床の砂礫などの呈する色は、真黒(玄武岩質火山灰な
ど)のものから灰白色(石英砂など)までさまざまである。このような、土色という
より砂礫そのものが呈する色の場合は、当然腐植含量を推定する拠りどころにはでき
ない。
地表下25cmまでを混合したとして腐植含量により、次の3つに分類する。
① 多腐植質(おおむね全層の腐植含量が10%以上)
② 腐植質
(おおむね全層の腐植含量が5~10%以上)
③ 表層腐植層なし
①および②に相当する土壌が黒ボク土で、水田等で斑鉄が形成されている場合には
多湿黒ボク土とする。
(10) 土色
土色は、土壌の最も目につきやすい特徴である。土色自体は、土壌の機能に直接影響
するものではなく、むしろ、その機能が作用した結果であり、土壌の生成環境を反映し
たものである。従って、土色は、その土壌の化学性、物理性、生物的性状と密接に関係
し、土壌を同定するために、有効かつ重要な特徴である。
一般に、土色は腐植含量や鉄化合物の形態あるいはアルミニウムの多少などによって
決定される。このため、土色から様々な情報を得ることができる。
土色は、種々の複雑な色から構成され、乾湿によって変化する。このため、土色は現
場の湿土を用い、基色を標準土色帖と照らして決める。基色とは、斑鉄や石礫などを除
いたベ-スとなる色である。水田を例にとると、斑鉄が多い場合には一見赤く見えるが、
良く見るとその大部分は灰色(□/1)の場合が極めて多い。
土色帖の色見本のペ-ジに当たるのが「色相」、横軸が「彩度」、縦軸が「明度」で
ある。色相は色み(赤、青、黄など)、彩度は色みの強さ、鮮やかさ、明度は色の明暗
を示す。
記載は、『色相・明度/彩度』の順に記載する(例、10YR5/1)。
- 25 -
土の色が決まる要因
土 色
主な着色物質
*有機物・腐植
黒
土
壌
土壌診断との関連
黒泥・泥炭土、黒ボクグライ土
○腐植含量:保水、保肥力
砂鉄
黒ノッポ(腐植質火山灰土、黒ボク土)
黒色スコリヤ
黒い砂鉄を多く含む砂質土(未熟
〔マンガン斑、硫化
物〕
有機物過多田
○マンガン斑(黒褐 ~ 黒紫色):酸化
土)
還元
玄武岩質火山放出物(未熟土)
○硫化物(黒色):水稲の根腐れ
○水稲根黒色:腐根
*酸化第二鉄鉱物
赤~褐~黄
赤色土
○斑鉄(赤~黄褐色):酸化還元
(酸化鉄)
赤ノッポ(火山灰土、淡色黒ボク土)
水田の透水・排水性の指標
マンガン
褐色森林土、黄色土
畑、転換畑の通気不良、ODR、
暗赤色土
三相分布
〔斑鉄〕
○ 水稲根赤褐色:活性大、健全根
*第一鉄化合物
(還元鉄)
青~緑
グライ土(排水不良の青色の土、ロシア
○グライ層(青~緑灰色):二価鉄
語)
多く還元層、透水・通気不良、
強グライ土(湿田)、グライ土(半湿田)
還元障害、畑作物湿害、ジピリ
ジル反応、三相分布
〔硫化物、パイライト
○青~緑灰海成粘土:パイライト、グ
など〕
レガイトを含むこと多し、酸性硫
酸塩土壌、pH
*酸化鉄含有量極
少
灰~白
*青色泥層の酸化
ポドゾル性土壌(灰色土、ロシア語)、秋
○漂白層:秋落ち、老朽化水田
落
○白い粗粒土:保水、保肥力小
水田作土、マサ土、シラス、砂質土(白砂)
○白色塩類の土壌表面集積:干
過程
拓地、ハウス、塩害地、塩類障害、
*塩類の集積
EC、Cl -
灰色低地土(乾田)
塩類土壌
基本的には、土色帖の色見本に最も近い基色を層位ごとに記載する。
しかし、微妙な色相の違いの判断が困難な場合には、下記に従って色相を決定する。
① ジピリジル反応が+~++の場合(グライ層):10Yを含めた右側の色相で読む
② ジピリジル反応が±の場合
:7.5Yで読む
③ ジピリジル反応が-の場合
:5Yを含めた左側の色相で読む
④ (5Yから左の色相になるほど乾燥した土の色である)
反応・状態
色相
ジピリジル反応
酸化還元
← 5YR
10YR
7.5YR
2.5Y
-
5Y
7.5Y
±
酸化状態
10Y
N
2.5GY
+ ~ ++
還元状態
- 26 -
5GY
→
土色は次表層位(おおむね作土下~50cm)の湿土の基質の色について次のように区分す
る。
赤
色 ・・・・・・・色相5YRまたはそれより赤く、明度>3かつ彩度≧3
ただし、明度/彩度4/3、4/4を除く
暗赤色 ・・・・・・・色相5YRまたはそれより赤く、明度≦3かつ3≦彩度≦6
および明度/彩度4/3、4/4
黄
色 ・・・・・・・色相5YRより(5YRは含まない)黄色で、明度≧3かつ
彩度≧6、ただし、明度/彩度3/6、4/6を除く
黄褐色 ・・・・・・・色相5YRより(5YRは含まない)黄色で、明度≧3かつ
3≦彩度<6および明度/彩度3/6、4/6
灰
色 ・・・・・・・色相10Yより(10Yは含まない)も黄色または赤く、明度≧
3かつ彩度<3または無彩色で明度≧3
青灰色 ・・・・・・・色相10Yかそれよりも青い
黒~黒褐色・・・・明度3未満
ただし、暗赤色に入るものを除く
灰色低地土、(灰色台地土)、褐色森林土、黄色土は土色が分類の基礎となる。
したがって、グライ土、(グライ台地土)、黒ボク土、砂丘未熟土以外は、上記土色
の決定は慎重に行うことが重要である。
- 27 -
湿土の基質、堆積様式、土性により、概ね下記に分類される。
[土壌群]
[土色]
[主な堆積様式]
[土性]
[地目]
① グライ土
灰色~青灰色
水積
-
水田
② 灰色低地土
灰色~灰褐色
水積
-
水田、畑
③ 黒ボク土
黒~黒褐
風積、水積
-
水田、畑
風積
砂
畑
④ 砂丘未熟土
⑤ 褐色森林土
黄褐色
洪積世堆積
-
畑
⑥ 黄色土
黄色
洪積世堆積
-
水田、畑
(最終的には①~⑥が判れば良い)
次表層位中に土色の異なる層が存在する場合は、主として上位層かつ厚い層を優先す
る。
表層位が礫層の場合は必要に応じ礫層中の細土部分の色を用いる。
(11) 構造
土壌構造とは、相互に分割しうる一次粒子の集合したもの(二次粒子)あるいは二
次粒子の集合体である。一般に土層内では、砂や粘土などの土壌構成粒子がそれぞれ
バラバラにつまっているのではなく、乾燥や湿潤による収縮や膨潤の繰り返しや植物
の根および土壌動物などの作用によっていろいろな大きさの形状をした集合体を形成
していることが多い。これらは土壌構造と呼ばれ、土壌の生成環境をよく反映し、ま
た、生産力とも密接な関係がある。
土壌構造を調べるには、土層からやや大きめの土塊をとり出し、両手でそれを壊し
ていきながら、生じた土塊をよく観察する。そしてそれらの中に、大きさや形および
内部構造などの特徴が類似したグル-プが存在するならば、それが土壌構造である。
土層からとり出した土塊を壊すのにかなりの力を要し、かつ生じた土塊が不規則な
大きさおよび形をしている
ものは、一般に土壌構造と
はみなされない。
土壌構造には種々のもの
があり(右図)、その発達
程度によって強、中、弱、
無構造に分ける。土壌調査
の際、土壌構造の発達が認
められる場合(中程度以
上)に、各層位ごとに種類
と発達程度を記載する。
- 28 -
(12) 孔隙性
孔隙性は土壌内部にある空間の総称で、孔隙と亀裂に大別される。孔隙は、構造形成
単位である集合体の内部、あるいは無構造の場合には全土塊の内部に存在する空間であ
り、亀裂は集合体相互間に生じた空間である。
野外調査では、一般に土塊を割った面について、肉眼で識別しうる範囲の孔隙や亀裂
の大きさ、量(形状、連続性、伸長方向等)について調べる。
孔隙性の大きさによる区分
区分
孔隙(短径)
区分
亀裂(幅)
細
0.1~0.5mm
狭小
<1mm
小
0.5~2mm
中幅
1~3mm
中
2~5mm
幅広
3~5mm
粗
>5mm
極幅広
5~10mm
孔隙量の区分
区分
10cm平方当り
あり
1~50個
1~3個
含む
51~200
4~14
富む
2.5cm平方当り
>200
>14
3)断面の記載
各土壌断面調査項目を土壌断面調査票(次頁)に記載する。その際、記入漏れがあると、
土壌タイプを同定できなくなる恐れがあるので、空欄を設けないように注意する。(例:
礫含量やFe反応などがない場合には“なし”あるいは“-”と記入する。空欄にしておく
と、それらがないのか調査漏れなのか判別できなくなる)
また、調査項目以外のことで気がついたことは、後々参考となることがあるので記載し
ておくと良い。
- 29 -
<記載例>
土壌断面調査票
通し
2001
調査地点 岡保 地区
番号
耕作者名
福井市 寮町 辺操52-11 番地
前作もしくは現在の栽培作物
水稲
有 ・無 )5m間隔 耕起
暗渠 ( ○
( 有・ ○
無 )
辺操
太郎
H20 年
9月 10日 調査
畦立て
( 有・ ○
無 )
特記事項
稲わら還元、田面に水たまり
層
界
土
礫
腐
反
応
斑
紋
ち
色
その他
密
性
含量
植
Fe
Mn
度
cm
mm
膜
CL
なし
含
-
-
含
糸根含
5Y
13
弱塊状
5/1
13
柱状
膜
LiC
なし
含
+
-
含
糸根含
15
10Y 孔隙含
4/1
水稲根40cm
40
小中
亜角
LiC
有り
10GY
有
+
-
なし
5/1
80
泥炭がわず
10GY かに見られ
LiC
なし
有
+
-
なし
る
6/1
土壌分類
強粘質強グライ土、斑鉄型
- 30 -
4)土壌分類
土壌分類法は、平成7年に農耕地土壌分類委員会によって提案された「農耕地土壌分類、
第3次改訂版」に準じて、福井県用に作成したものである。
なお、この土壌分類法は、農業試験場が開発した「土壌断面調査結果の活用支援システ
ム」により、断面調査結果をコンピュ-タに入力すると直ちに土壌タイプが判定・分類さ
れ、対策情報が導き出されるしくみとなっている。
(1) 土壌群・土壌統群一覧表
土
壌
群
グライ土
(グライ
台地土)
灰色低地土
(灰色
台地土)
黒ボク土
砂丘未熟土
褐色森林土
黄色土
土
壌
強粘質強グライ土
粘 質強グライ土
壌 質強グライ土
砂 質強グライ土
黒ボク強グライ土
強粘質グライ土
粘 質グライ土
壌 質グライ土
砂 質グライ土
黒ボクグライ土
統
群
備
還元型、斑鉄型
還元型、斑鉄型
還元型、斑鉄型
還元型、斑鉄型
還元型、斑鉄型
考
本来、沖積世堆積の水積であ
るが、洪積世堆積のものは、
グライ土をグライ台地土とす
る
黒ボクは水積、風積、崩積、
洪積世堆積
本来、沖積世堆積の水積であ
るが、洪積世堆積のものは、
灰色低地土を灰色台地土とす
る
水積、風積、洪積世堆積、崩
積
強粘質灰色低地土
粘 質灰色低地土
壌 質灰色低地土
砂 質灰色低地土
腐植質黒ボク土
多腐植質黒ボク土
腐植質多湿黒ボク土
多腐植質多湿黒ボク土
砂丘未熟土
強粘質褐色森林土
粘 質褐色森林土
壌 質褐色森林土
砂 質褐色森林土
強粘質黄色土
粘 質黄色土
壌 質黄色土
砂 質黄色土
風積、水積
残積、洪積世堆積、崩積
残積、洪積世堆積、崩積
・礫層が地表下30cm以内から出現するものは、土壌統群名の前に礫質を冠する。
(例:礫質粘質グライ土)
・強グライ土以外でグライ層のあるものは、その位置によって、表層グライあるいは
下層グライを土壌統群名の後に付記する。(例:灰色低地土下層グライ)
・なお、堆積様式は、地形・地質から判断する。ただし、堆積時代が沖積時代以外で
あっても、水の営力によるものは水積と見なせばよい。丘陵地は洪積世堆積である。
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(2) 土壌分類の方法
① 次のフロ-に従って土壌群等を決定する。
主な土地利用
全層または作土を除くほぼ全層
25cm以下の斑鉄
グライ層
の有無
有 : 斑鉄型
50cmまでにグライ層が出現する
強グライ土
水田
無 : 還元型
グライ土
水田
グライ層が50cm以下から出現もしくはグライ層なし
無
灰色~灰褐色
灰色低地土
水田、畑
黄褐色
褐色森林土
畑
黄色土
水田、畑
斑鉄 無
黒ボク土
畑、水田
斑鉄 有
多湿黒ボク土
水田、畑
砂丘未熟土
畑
黄色
腐植層
有
風積で土性が砂
・グライ土および灰色低地土は、本来沖積世堆積の水積であるが、洪積世堆積のもの
(丘陵地や台地など)はそれぞれグライ台地土および灰色台地土とする。
② 土性、礫層の深さ、グライ層の位置によって、上記土壌群名を補完し、土壌統群名
とする。
・強粘質、粘質、壌質、砂質、(黒ボク)の違いを土壌群名の前に冠する。
(但し、黒ボク土、砂丘未熟土は除く)
・礫層が地表下30cm以内から出現するものは、土壌統群名の前に礫質を冠する。
・表層に逆さグライ層を持つ土壌は、表層グライを土壌統群名の後に付記する。
下層にグライ層を持つ土壌は、下層グライを土壌統群名の後に付記する。
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(3) 土壌断面図の記号と読み方
5)参考資料
(1) 土壌調査法(1978):土壌調査法編集委員会編、博友社
(2) 土壌調査ハンドブック(1984):ペドロスト懇談会編、博友社
(3) 農耕地土壌の分類(土壌統の設定基準および土壌統一覧表)第2次改訂版( 1983)
:農業技術研究所化学部土壌第3科
(4) 農耕地の土壌分類 第3次改訂版の手引き(1995):日本土壌協会
(5) 地力保全基本調査総合成績書(1978):福井県
(6) 土壌断面をどう見るか(1986):土壌保全調査事業全国協議会
(7) 標準土色帖:農林省農林水産技術会議事務局・日本色彩研究所
(8) 福井県地質図(2010年版)説明書:福井県
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