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排気ガスの規制強化など環境変化への対応策-(PDF)

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排気ガスの規制強化など環境変化への対応策-(PDF)
SHINKIN
CENTRAL
BANK
SCB
産業企業情報
15−9
(2003.1 2 .17)
総合研究所
〒1 0 4 -0031 東 京 都 中 央 区 京 橋 3 - 8 - 1
TEL.03-3563- 7541 FAX.03-3563-7551
URL http://www.scbri.jp
中小トラック運送業の動向
−排気ガスの規制強化など環境変化への対応策−
視点
トラック運送業は、規制緩和による競争激化、荷主からのニーズの多様化、国と
地方自治体によるトラックの排気ガス規制強化、など大きな環境変化に見舞われて
いる。特に、近時は、国内貨物輸送量の停滞と運賃価格の低下がみられ、中小トラ
ック運送業の経営環境が極めて厳しい状況にある中で、本年 10 月からはトラック
の排気ガス規制として「自動車 NOx・PM(窒素酸化物・粒子状物質)法」と首都
圏1都3県の「環境確保条例」が施行された。そこで、こうした厳しい事業環境を
踏まえ、中小トラック運送業者の今後の事業展開の方向性について考察する。
要旨
●トラック運送は国内貨物輸送の中核的地位を占め、日本経済の中で重要な役割を
果たしている。反面、事業者は小零細規模層が多く、また顧客荷主との取引上の力
関係も弱いことから、その事業基盤は概して脆弱といえる。
●業界は、輸送需要量の停滞と参入規制の緩和に伴う競争激化、荷主企業からの値
下げ要請、運送ニーズの多様化、国と地方自治体のトラック排気ガス規制の強化、
など厳しい事業環境に見舞われ、事業者の収益性は極めて悪化している。
●排気ガス規制の強化は、特に大都市圏で厳しい。こうした地域では、事業環境の
悪化から既に収益力が低迷している小零細事業者が多く、規制対応のための車両更
新などの資金調達やコストアップの影響を強く受けている。
●このような状況下で事業者の今後の進むべき方向性としては、運送特化型と運送
の周辺分野への進出型に分けられる。そこで、それぞれの事業展開の留意点を整理
するとともに、事業者の具体的な対応事例を紹介した。
キーワード
中小トラック運送業、運送業の規制緩和、物流ニーズの多様化、自動車排気ガス
規制
©信金中央金庫 総合研究所
目次
1.トラック運送業の業界構造と環境変化
(1)業界構造、(2)業界動向、(3)事業環境の大きな変化
2.排気ガス規制と業界の対応
(1)排気ガス規制の背景
(2)排気ガス規制の強化
イ.国の規制、ロ.自動車 NOx・PM 法、ハ.1都3県の環境条例
(2)業界に与える影響と対応策
3.今後の事業見通しと事業展開の方向性
(1)業界見通し、(2)事業の進むべき方向性
4.企業事例の紹介
おわりに
1. ト ラ ッ ク 運 送 業 の 業 界 構 造 と 環 境 変 化
(1)業界構造
トラック運送業は、その事業内容により、一般貨物自動車運送業(2002 年3月の事業
者数は特別積合せ貨物運送業をのぞき 51,732)、特別積合せ貨物運送業(同 268)、特
定貨物自動車運送業(同 1,076)、霊柩運送業(同 3,795)に分けられる(図表1)。
トラック運送の事業者(56,871)では、一般貨物自動車運送業が大半の 91 %を占め
ている。トラック運送業界の市場規模は、直近の 00 年度で約 11 兆3千億円となってい
る。
事業者を従業員規模別にみると、300 人以下が 99.7%を占める典型的な中小企業性業
種であり、特に中心の一般貨物自動車運送業では 20 人以下の事業者が 67%(10 人以下
38%)、また、車両台数 20 両以下の事業者が 72%(10 両以下 46%)に達しており、
事業規模の小零細性が顕著となっている。これは、小口・分散・多品種の運送需要が多
(図表1)トラック運送業の分類
事 業 名
事 業 内 容
一般貨物自動車運送業 特定または不特定多数の荷主の貨物を営業区域を定めて
運送する。1台1荷主の「貸切り」と複数荷主の貨物を
積込む「積合せ」がある。営業区域を限定した近距離運
送が中心である。国土交通大臣の許可制
特別積合せ貨物 一般貨物自動車運送業のうち事業場などで集荷した貨物
運送業
を仕分けし、他の事業場などに積合せ運送し、そこで配
達に必要な仕分けを行うものであって、これら事業場間
で当該積合せ運送を定期的に行う事業者。多数の小口貨
物を広域に運送する宅配便も含まれる。別途許可が必要
特定貨物自動車運送業 特定荷主の貨物を運送する。荷主の自家運送の代行とも
いえ荷主の子会社形態が多い。国土交通大臣の許可制
霊柩自動車運送業
運送対象が遺体で、運送に専用車両を使用するなどの特
殊性から許可は当該事業に限定する旨の条件が付される。
1
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いこと、比較的小資本で創業できることなどに基づく。なお、特別積合せ貨物運送業は、
輸送ネットワークを拡大した大手業者による中小業者の吸収により寡占化が進み比較
的事業規模が大きいところが多い。
中小零細規模業者の一般的特徴は、①同業大手の下請・孫請が多く、また元請でも少
数の特定荷主に専属的に依存し受注形態が従属的・受身的である、②事業分野は本来業
務である運送が中心で、保管・荷役・包装・加工・在庫管理などの顧客からの新しいニ
ーズに対応した運送の周辺分野への取り組みが相対的に遅れている、③安全運行管理、
労働時間の短縮などの社会的規制に十分対応できていない面がある、などの問題点があ
る反面、④大手に比べ営業地域は限定的であるが、逆に地元の顧客や交通事情などに精
通し、その小回り性を利かした小ロット・緊急運送などきめ細かな顧客対応ができる、
などの強みを持つ。
(2)業界動向
輸送トンキロ数で国内貨物輸送量(注1)の推移をみると、1991 年度に 5,599 億トンキ
ロでピークをつけた後は一進一退をたどり、直近の 01 年度では 91 年度比 3.7%増の
5,807 億トンキロにとどまっている。近時の輸送量の停滞は、景気の長期低迷に加え、
サービス経済化の進展、製品の軽薄短小化、製造業の海外シフト、公共事業の削減など
の経済活動の構造変化が要因となっている。
一方、輸送機関別輸送量では、トラック全体(営業用、自家用合計)では緩やかな増
加傾向にある(図表2)。これは、道路網の整備を背景に戸口から戸口への輸送という
利便性・機動性が買われたためで、01 年度では 91 年度比 10.3%増加し、その間減少し
た内航海運 ( △
1.5%)、鉄道(△
18.5%)などとは
対照的な動きを
(図表2)輸送機関別貨物輸送量の推移(トンキロ数)
(億トンキロ)
7,000
6,000
示している。
5,000
直近の 01 年度
4,000
での輸送機関別
3,000
貨物輸送量の割
2,000
合は、トラックが
1,000
53.9%(91 年度
0
50.7%)、内航海
国内航空
内航海運
鉄道
自家用トラック
営業用トラック
85
88
89
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99
00
01 (年度)
(備考)国土交通省「陸運統計年報」
運 42.1 % ( 同
(注1)
貨物輸送量を計る単位として、輸送貨物の重量で表示する「輸送トン」と、輸送貨物の重量に輸送した距離を乗じた「輸送ト
ンキロ」がある。ここでは、輸送活動の大きさを示す「輸送トンキロ」で輸送量をみる。
2
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44.3%)、鉄道 3.8%(同 4.8%)、国内航空 0.2%(同 0.2%)となっており、トラッ
クは内航海運と合わせ国内貨物輸送の中核的地位を占めている。
なお、国内貨物輸送量を輸送トン数でみると、機動力と近距離輸送に強みを持つトラ
ックが 01 年度で全体の 6,157 百万トンのうち 5,578 百万トンと実に 90.6%の圧倒的シ
ェアを占めている。
ところで、トラック運送は、運送業者の営業用トラックによる運送と荷主自身による
自家用トラックで
の運送に分かれる。
(億トンキロ)
営業用トラックの
輸送量は、一貫して
(図表3) トラック運送業の輸送量と営業収入の推移
(億円)
3,000
140,000
営業収入(右目盛)
120,000
2,500
100,000
2,000
増加傾向にあり 01
年 度 は 91 年 度 比
27.2 % の 増 加 と な
った反面、自家用ト
輸送量(左目盛)
80,000
1,500
60,000
1,000
40,000
500
20,000
85
ラックの輸送量は
88
89
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99
00
01
(年度)
(備考)国土交通省「陸運統計要覧」 営業収入の01年度数値は未公表
同期間に 33.0 %の
大幅減となっている。これは、内外企業との厳しい競争下にある荷主企業が、物流面の
効率化やコスト削減の必要性から自家運送を専門のノウハウを持つ運送業者や運送子
会社に切り替えたことに基づく。そして、01 年度でのトラック輸送量全体に占める営業
用トラック(トラック運送業)の割合は、91 年度の 72%から 83%に高まっている。
このように、トラック運送業の輸送量は概ね順調な伸びを示している反面、トラック
運送業の市場規模を示す営業収入は 93 年度の約 12 兆3千億円をピークに趨勢的には減
少傾向をたどり、直近の 00 年度では 93 年度比 7.8%減の約 11 兆3千億円となっている
(図表3)。これは、
単位輸送量当たりの
運賃低下に起因して
おり、労働集約的業種
(%)
72
の約 50%を占めるな
68
60
58
56
54
52
67
50
66
実車率(左目盛)
高い収益構造下で、大
65
きな利益圧迫要因と
64
輸送効率は、同業者
実働率(左目盛)
70
69
なっている。
62
71
で人件費が営業収入
どの固定費の割合が
(%)
(図表4) トラック運送業の輸送効率の推移
73
積載効率(右目盛)
48
46
85
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99
00
01
(年度)
(備考)国土交通省「自動車輸送統計年報」
積載効率:輸送トンキロ/能力トンキロ、能力トンキロとは各トラックが最大積載量の貨物を輸送した場合の輸送能力
実車率:実車キロ/走行キロ、実車キロは貨物を乗せて走った距離、走行キロは貨物の輸送の有無を問わず走った距離
実働率:実働延日車数/実在延日車数
トラック運送業の大半を占める普通トラックの数値
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間での貨物・車両の相互融通による共同運行の浸透(復路貨物の確保など)、運行経路
の効率化、荷主企業への理解を求めた積み合せ運送などの工夫・努力もあり、実車率は
向上している。しかし、貨物輸送量がかつて程の伸びがない中で事業者数の増加に伴い
競争が激化し、加えて、多頻度・小口・時間指定・緊急配送など荷主側の事情で運送条
件が複雑化・多様化していることから積載効率は悪化している(図表4)。
そこで、トラック運送業者の収益実態を全日本トラック協会の「経営分析報告書(平
成 13 年度版)」でみると、一般貨物自動車運送業の1社平均の営業収入(売上高)は
減少傾向にあり、同じく1社平均の営業利益で算出した売上高営業利益率も低下し、01
年度は 0.0%と赤字寸前の状況となっている(図表5)。車両規模別には1∼20 台の小
零細規模層で売上高営業利益率はマイナスが続いている。また、経常利益が黒字の企業
割合は、車両規模層別に水準の差はあるが、すべての層で低下し厳しさが増している実
態が浮き彫りとなっている。
(図表5) 一般貨物自動車運送業の車両規模別収益状況(1社平均)
営業収入(千円)
営業利益率(%)黒字企業割合(%)
99年度
00年度
01年度 99年度 00年度 01年度 99年度 00年度 01年度
全体
270,134 252,391 242,949
0.8
0.1
0.0
65
60
57
1∼10台
65,547
63,999
62,417 -1.9 -2.2 -2.3
54
48
47
11∼20台 150,988 149,217 145,832 -0.1 -0.8 -0.8
64
59
54
21∼50台 341,556 329,424 321,283
1.0
0.3
0.2
72
66
64
51∼100台 766,572 735,823 730,165
1.3
0.8
0.7
79
77
75
101台以上 1,679,508 1,445,105 1,367,014
1.7
0.8
1.0
86
79
70
(備考)全日本トラック協会「経営分析報告書(平成13年度版)」
(備考)全日本トラック協会「経営分析報告書(平成
13 年度版)」
黒字企業割合は経常利益段階を示す
黒字企業割合は経常利益段階を示す。
( 3 ) 事 業 環 境の 大 き な 変 化
トラック運送業は、近時、イ. 90 年 12 月の貨物自動車運送事業法の施行(同時施行
の貨物自動車取扱事業法と合わせ物流二法と呼ばれている)などに伴う各種規制緩和の
進展、ロ.内外競争の激化に伴う荷主企業からの運送ニーズの多様化・高度化、ハ.環境
問題の深刻化から特に都市部におけるトラック排出ガス規制の強化、など事業環境の大
きな変化に見舞われている。いずれも、企業経営に大きな影響を与えるもので、その対
応如何により企業間格差の拡大をもたらすとともに、事業存続の危機をも招くこととな
る。本章では、イとロについて、また今日的テーマであるハについては、次章で詳しく
検討する。
イ. 規制緩和
業者間の競争促進と利用者へのサービス向上を図った物流二法の施行などにより、①
事業参入が既存業者に配慮した需給調整を伴った免許制から原則自由の許可制へ移行、
②運賃は画一的で公定的色彩の強い許可制から事業者が独自に設定できる届出制に変
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更、③営業区域規制は漸次縮小し 03 年4月に全廃となった、など 90 年以降業界の規制
緩和が大きく進展してきた。
かかる規制緩和により、比較的小資本で創業でき、また短期間で収益が得られる当業
界への新規参入が相次ぎ、02 年3月の事業者数(56,871)は、主力の一般貨物運送業を
中心に物流二法施行年度の 91 年3月に比べ 42%の増加となった(なお、大手業者によ
り集約化が進んだ特別積合せ運送業並びに荷主による物流子会社から運送専門業者へ
の転換が進展した特定貨物運送業の事業者数は同期間それぞれ 9.8%、25.0%減少して
いる)。最近は、厳しい事業環境の下で倒産・廃業が増え、事業者数の増加テンポはや
や鈍っているものの、引き続き小零細層を中心に年間 1,400 程度増加している。
規制緩和の進展は、市場規模が縮小する中で低価格化や他地域からの攻勢による受注
競争激化を招き、特定地域に根ざして特定荷主との継続的・安定的な取引を確保してき
た小零細事業者の事業基盤を揺るがしている。輸送コスト削減、輸送効率向上、荷主企
業からの新しいニーズへの対応などの創意工夫が従来にも増して必要となっている。
ロ. 荷 主 ニ ー ズ の 多 様 化 ・ 高 度 化
需要の多様化と低価格志向の浸透、アジアとの競合激化など事業環境が大きく変化す
る中、荷主企業は扱い製品の多種少量化、短納期化、低コスト化への取り組みを強めて
いる。そして、従来生産面、販売面に比べ合理化が遅れていた物流面の合理化・効率化
を推進するため、トラック運送業に対しても運賃の引下げと合わせて多様な物流ニーズ
を寄せてきている。具体的には、運送面では多品種・小ロット配送、時間指定配送、緊
急配送、配送時間の短縮、また、保管・荷役・加工・在庫管理など運送の周辺分野まで
含めた一貫物流サービス、荷主との情報のオンライン化、などである。
これら荷主企業の多様化・高度化するニーズには既に中小業者も一部では対応してい
るが、それに伴う輸送効率の低下やコスト負担増の運賃への反映が難しく、採算悪化を
防ぎながら、如何にこれらのニーズに応えていくかが大きな課題となっている。
2. 排 気 ガ ス 規 制 と 業 界 の 対 応
(1)排気ガス規制の背景
国内自動車保有台数の増加に伴い(四輪車の保有台数は 02 年3月で 7,320 万台)自
動車の排気ガスに含まれる二酸化炭素(以下 CO という)が地球温暖化、また窒素酸
化物(以下 NOx という)と粒子状物質(以下 PM という)が大都市を中心とした大気
汚染の大きな原因となっている。環境負荷の低減は世界的課題となっており、我が国に
おいても 00 年以降の尼崎などでの自動車排気ガスに係る公害訴訟などをとおして、そ
の規制強化への気運が一層高まってきた(注2)。そして、排出量の多さから自家用乗用車
(注2)
NOx・PM の排出総量のうち、自動車からのものはそれぞれ 52%、43%となっており (NOx は改正前の「自動車 NOx 法」
5
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を中心としたガソリン車には主に CO を、トラックを中心としたディーゼル車には主
に NOx と PM をそれぞれ削減することが強く求められている。
国土交通省の
「陸運統計要覧」によれば、トラック運送業者が保有するトラックの 99%
がディーゼル車であり(自家用も含めたトラック全体では 75%)、また 92%は積載量
が4t以上の普通トラックとなっている(同 33%)。このため、トラック運送業は、重
量区分で最も重いカテゴリーのディーゼル車に対する NOx・PM の排出量規制の影響を
強く受けることになる。
(2)排気ガス規制の強化
イ. 国の規制
国は中央環境審議会の (図表6)ディーゼル車にかかるNOx・PM排出規制
短期
長期
新短期 新長期
89 年から 02 年まで5次に 車両 規制種類
重量・規制物資
規制値 規制値 規制値 規制値
わたる答申に基づき、自動
1.7t以下
NOx(g/km)
ー
0.40
0.28
0.14 1.7t以下
車排気ガスに係る CO 、
PM(g/km)
0.2
0.08 0.052
0.013
NOx、PM などの規制値を
1.7t超
達成(規制)時期ごとに提
2.5t以下
1.7t超
3.5t以下
NOx(g/km)
ー
0.70
0.49
0.25
示した。ディーゼル車に対 PM (g/km)
0.25
0.09
0.06 0.015
2.5t超
する NOx、PM の排出に
3.5t超
NOx(g/kwh)
ー
4.50
3.38 2.00
ついても 93∼94 年を達成 PM (g/kwh)
0.7
0.25
0.18 0.027
規制年
93∼94年97∼99年02∼04年 05年
年とした「短期規制」、97
(達成年)
∼99 年達成の (備考)中央環境審議会
「長期規
制」、02∼04 年達成の「新 車両重量は車両総重量(車両重量+最大積載量+
乗車定員×55㎏)を指す。
短期規制」、05 年達成の「新長期規制」など逐次目標規制値 (図表7)自動車NOx
・PM法の排出基準
を高めてきた(図表6)。
これらの規制は、トラックメーカーに対しては新型車の保安
車両総重量
別規制物資
1.7t以下
基準として達成年までに各々の規制値に適合した車の開発・供 NOx(g/km)
給を求める(旧規制適合車は、新規制実施後1年以内に生産し PM(g/km)
たものしか販売できない)一方で、後述する「自動車 NOx・
0.25
0.026
1.7t超
2.5t以下
NOx(g/km)
PM 法」や首都圏の1都3県の「環境確保条例」(条例の名称 PM(g/km)
2.5t超
は東京都のもの)などの排ガス規制の基準となっている。そし
て、現在は原則、長期規制が最新の規制基準となっている。
ロ. 「自動車 N O x ・P M 法」
基準値
0.4
0.03
3.5t以下
NOx(g/kwh)
PM(g/kwh)
4.5
0.09
3.5t超
大都市圏の主要な大気汚染源である NOx・PM の排出量を NOx(g/kwh)
PM(g/kwh)
4.5
0.25
の対策地域での 97 年度調査、P M は 94 年度調査による首都圏、関西圏の大都市圏)、また自動車の排出量のうちディーゼル車は
NOx で 80%、P M でほぼ 100%を占めている。
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削減するため、92 年制定の「自動車 NOx 法」を 01 年に改正し、首都圏(東京、神奈
川、埼玉、千葉)、近畿圏(大阪、兵庫)、中京圏(愛知、三重)の8都府県の対策地
域内(276 市区町村)に本拠を置くトラック、バス、およびディーゼル乗用車の保有規
制を行った。改正法には、対象物質に公害訴訟などにより健康被害(がん、喘息、花粉
症など)が問題化した PM を、また対策地域に中京圏をそれぞれ加えた。同法は対策地
域内で事業を行うトラック運送業者が規制の対象となるが、①対策地域内に使用の本拠
を置く車は定められた NOx と PM の排出基準(図表7)をクリヤしないと 02 年 10 月
以降対策地域内での新たな車両登録ができない、②すでに使用している車は車種や新車
登録日(初度登録日)に応じて定められる規制適用の猶予期間(トラックは普通9年、
小型8年)を超えると 03 年 10 月以降、車検の有効期間満了後は使用できなくなり、違
反には懲役または罰金の罰則がある(注3)。
また、対策地域内でトラックなど自動車を 30 台以上使用する運送業者は、国土交通
省に対して事業活動に伴う NOx・PM の排出量を抑制するための「自動車使用管理計
画」を提出し、毎年その取り組み状況を報告することが義務づけられた。
ハ. 1都3県の「環境確保条例」
国の規制に加え、大気汚染が著しい首都圏の東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県は、
00∼02 年にかけて東京都の「環境確保条例」を皮切りに相次いで条例を制定し、03 年
10 月から1都3県内で国が定めた長期規制値に適合しないディーゼル車の地域内走行
を禁止することとした。
「自動車 NOx・PM 法」と比較すると、規制対象の物質が PM のみで NOx は含まれ
ないこと、対象車両は乗用車を除くディーゼル車のみであること、地域内を走行する車
は使用の本拠地を問わず対象となること、などの違いがある(図表8)。長期規制に適
合した車は、03 年 10 月からの規制の対象外であるため新車登録から7年経過してもそ
のまま走行できるが、規制に適合しない車は新車登録日から7年間は規制適用を猶予し
走行を認めるが、猶予期間を超えると長期規制適合車など低公害車に買い替えるか、1
都3県の知事が指定した PM 除去装置を装着しないと地域内での走行ができなくなる。
条例違反には運行禁止命令、氏名公表、罰金などの罰則がある。なお、東京都と埼玉県
は 05 年度以降、条例の規制値を長期規制より厳しい新短期規制並とすることを予定し
ている。
また、1都3県内の事業者でトラックなど自動車を 30 台以上使用する者は、各地方
(注3)
トラック運送業の主力となる普通トラックは自動車 NOx・PM 法上の車両重量区分では 3.5t超の車に該当するが、その排出
基準は国のディーゼル車排出規制では長期規制値(図表6)と同水準である。このため、長期規制以降の適合車以外のトラックは
すべて規制対象となる。また、規制対象はディーゼル車のほかガソリン車を含むが、ガソリン車への代替が可能の 3.5t 以下のトラ
ックは、国のディーゼル車の長期規制や最近販売され始めた新短期規制適合車より厳しいガソリン車並の基準をクリヤする必要が
ある。現状では基準に適合したガソリントラックがあるが、ディーゼルトラックは販売されていない。政策的には 3.5t 以下のトラ
ックはガソリン車への代替を誘導しているといえる。
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自治体にディーゼル車規制への対応策および低公害車導入計画などを記載した「自動車
環境管理計画書(5年間)」を提出し、計画に基づく実績報告書を毎年提出しなければ
ならない。200 台以上の自動車を使用する事業者は、05 年度末までに使用台数に対して
指定低公害車を超低公害車(3.5t 超の重量車では国の新短期規制値に対して排出ガス
75%低減レベルの東京都などが指定する自動車)に換算して5%以上導入することが義
務づけられた。
3)業界に与える影響と対応策
既述のとおり総じて厳しい収益環境にある業界にとって、新たな資金手当とコストア
ップを伴う「自動車 NOx・PM 法」と「環境確保条例」の施行は大きな負担となり、対
応力の乏しい企業は減車による事業の縮小や廃業を余儀さくされることが予想される。
(図表8) 「自動車NOx・PM法」と首都圏1都3県の「環境確保条例」との比較表
自動車NOx・PM法
首都圏1都3県の条例
排出規制物資
NOx・PM
PM
規制対象自動車 対策地域内に使用の本拠の
当該都県内を走行する全ての
位置がある自動車
自動車
対象地域
東京、埼玉、千葉、神奈川、
東京(島部を除く)神奈川、埼玉
大阪、兵庫、愛知、三重の
千葉の全域
8都府県内の276市町村
対象車種
・トラック、バス、特殊自動車
ディーゼルのトラック、バス、
(燃料の種類は問わない)
特殊自動車
・ディーゼル乗用車
3.5t超長期規制並、3.5t以下別基準
規制値
NOx
規制なし。
PM
3.5t超:長期規制並
長期規制並(ただし東京、埼玉
3.5t以下:新短期規制の1/2
は05年4月以降の知事が定める
日から新短期規制並)
適合しない車は、①対策地域内
適合しない車は猶予期間経過後
での新たな車両登録ができない、 は指定のPM減少装置を装着しな
規制内容
②すでに使用している車は新車
いと地域内の乗り入れができな
登録日に応じて定められた猶予
い
期間経過後の車検通過を認めない。
後付け装置による 国が優良と評価したNOx・PM低減 各都県が指定するPM減少装置の
対応
装置を装着すれば法規制適合と
装着により規制適合とみなす
判断する。ただし、NOx・PM両方
を低減する装置は現在ない。
規制開始時期
新規登録 2002年10月1日
2003年10月1日
使用過程車 2003年10月1日
猶予期間
原則として初度登録から8∼12
初度登録から7年間
年間(初度登録の時期に応じて
さらに03年9月から05年9月
までの激変緩和措置がある)
トラックは普通9年、小型8年
規制の担保手続
車検
都県職員による立入検査、路上
検査
罰則など
車検証の不交付
運行責任者に対して運行禁止
6ヵ月以上の懲役または30万円
命令、命令違反について氏名
以下の罰金
公表、罰金50万円以下
なお荷主も条例を遵守する自動
車を使用するようにする義務が
ある。義務違反には勧告や氏名
公表する場合がある。
(備考) 国土交通省、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県のHP、パンフレットなど
をもとに信金中金総合研究所作成。神奈川県の取締りは04年4月から実施。
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かかる法律、条例は規制対象地域が限定されており、対象地域外の近距離運送中心の地
方の運送業者は規制の影響をほとんど受けない。しかし、「環境確保条例」については
他府県に広がる可能性(兵庫県は 03 年 10 月に同様の条例を制定、施行は 04 年 10 月)
があること、法律などの施行を契機に荷主企業の環境問題に対する意識が一層高まると
みられること、などからトラック運送業者にとって車両の排気ガス規制適合が必要とな
る地域が拡大していくと思われる。
トラック運送業界は、中小零細規模業者を中心に近時の厳しい収益環境の下で車両の
更新が遅れており、後述のように保有トラックの中の長期規制適合車の割合が少なく、
また適用の猶予期間を経過した車も多い。このため、運送事業を適法に遂行するために
は、不適合車の長期規制適合車など低公害車への買い替え、PM 除去装置の装着が緊急
に必要となる。そこで、「自動車 NOx・PM 法」と「環境確保条例」別に影響と対応策
をみてみる。
イ. 「自動車 N O x ・P M 法」
全日本トラック協会の調査によれば、対策地域の8都府県のトラック運送業の保有ト
ラック(02 年3月で小型車も含め 497 千台)の大半を占めるディーゼルトラックの長
期規制適合車の割合は 19.3%と低水準にとどまっている。また、規制開始当初は激変緩
和措置として、原則8∼9年の規制適用の猶予期間を設けている(図表9)が、目先 03
年9月 30 日以降の車検満了時後使用できなくなる 89 年9月 30 日以前の新車登録の普
通トラック台
数を推定する (図表9)自動車NOx・PM法上の排出基準を満たしていない普通トラックの
新車登録日と使用可能日
と、8都府県
新車登録年月日
使用可能最終日
で 457 千台中 89.9.30以前
03.9.30以降の検査証の有効期間満了日
89.10.1∼93.9.30
04.9.30以降の検査証の有効期間満了日
75 千 台 と
93.10.1∼96.9.30
05.9.30以降の検査証の有効期間満了日
16%を占めて 96.10.1∼02.9.30
初度登録日から起算して9年間の末日に当たる日
以降の検査証の有効期間満了日
いる(注4)。
(備考)環境省・国土交通省「自動車NOx・PM法の手引き」
猶予期間を
超えた車は、後述の「環境確保条例」と異なり NOx・PM 除去の後付け装置による規制
をクリヤする方策がないため、廃車か買い替えが必要となる。買い替えには、3.5t 超の
トラックは国のディーゼル長期規制適合車など低公害車を、3.5t 以下のトラックはガソ
リン車または、今後供給が予定されている新長期規制のディーゼル適合車をそれぞれ対
象とする必要がある。なお、
05 年からのディーゼル車の新長期規制の実施により、
NOx・
PM の排出基準値がより厳しくなるため、保有トラックに対する規制の動向に注視する
(注4)
自動車検査登録協会の保有車両の「年度別新車登録台数」にかかる資料をもとに、自家用も含めた普通トラック全体に占める
89 年9月 30 日以前の新車登録車の割合から算出、運送業者の保有トラックに占める普通トラックの割合を全国平均の 92%とし、
8都府県内のトラックは全て対策地域内に使用の本拠を置き、89 年4∼9月の登録車は年度の 1/2 とみて推定した。
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必要がある。いずれにしても、厳しい収益環境の下で買い替えを先延ばしし、引き続き
使用を予定していた車両を低公害車(既存車に比べ 10∼40%程度割高)に更新しなけれ
ばならない事業者の負担は大きい。
ロ. 1都3県の「 環 境 確 保 条 例 」
規制対象は1都3県(神奈川、埼玉、千葉)を走行する他地域のディーゼル車にも適
用される。物資の大きな集散地である1都3県には全国各地のトラック運送業者のディ
ーゼル車が乗り入れており、条例による規制の影響は1都3県の事業者に限らず広範囲
に及ぶ(三菱総合研究所が 01 年7月に実施したアンケート調査によれば、東京都内に
は何らかの形でトラックを乗り入れている運送業者は全国の事業者の7割強に達して
いる)。
全日本トラック協会の調査によれば、1都3県のトラック運送業者の保有トラック
(02 年3月現在小型車も含め 267 千台)のうち条例に適合した長期規制適合車の割合
は、東京都 22.3%、神奈川県 20.2%、埼玉県 21.2%、千葉県 19.5%と既述の「自動車
NOx・PM 法」の対策地域8都府県平均(19.3%)に比べやや高いものの、総じてその
水準自体は低い(全国の集計値はない)。
また、条例が施行される 03 年 10 月時点での1都3県の規制適用の猶予期間7年を超
える 96年9月以前の新 (図表10)1都3県におけるトラック運送業者の保有台数
車登録車の割合は図表 と猶予期間超過車台数(02年3月現在、単位千台)
東京
神奈川
埼玉
千葉 (参考)全国
10 のとおりで地域的に 保有台数(A) 102.8
61.9
59.9
43.3
1,102
超過台数(B)
50.3
31.6
34.2
27.0
682
バラツキはあるがいず (B)/(A)%
48.9
51.1
57.1
62.4
61.9
れもかなりの高水準と (備考)自動車検査登録協力会の資料より信金中金総合研究所
作成
なっている (算出方法
は前掲注4に準じており、自動車検査登録協会の「都道府県別、年度別新車登録台数」
にかかる資料をもとに、各都県の自家用および小型車も含めたトラック全体に占める 96
年9月以前の新車登録割合から推定)。
「自動車 NOx・PM 法」と同様に、割高な低公害車への早めの更新や PM 除去装置(価
格は4t車で 30 (図表11) 自動車NOx・PM法および条例の規制対象性
∼120 万円程度)
車両の「使用の本拠地」が YES
の装着に伴う資金 自動車NOx・PM法の対策
YES
手当の必要性、コ 地域内か否か
NO
スト負担増などの
条例制定地域を
走行するか否か NO
影響を受けるが、
特に買い替えを先
条例制定地域を
走行するか否か
延ばしし新車登録
YES
NO
自動車NOx・PM法と
条例の規制対象
自動車NOx・PM法の
規制対象
条例の規制対象
規制対象外
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年の古い車両を多く保有する企業(小零細企業が多い)への影響は大きい(注5)。
「自動車 NOx・PM 法」と1都3県条例による規制対象を整理すると図表 11 のとおり
となる。
ハ.対応策
厳しい事業環境の下での規制強化への反発や対応策を講じることの資金とコストア
ップ負担などから、トラック運送業者の一部には運行禁止命令など条例違反の摘発を受
けた段階で初めて対策を講じるところもある。しかし、一方で規制実施に備え計画的に
対応を進めてきた運送業者も少なくないこと、荷主企業にも条例遵守のトラック使用が
義務付けられていること、などから未対応企業は条例違反に伴う摘発だけでなく、荷主
企業から発注の選別を受ける可能性が大きい。
結局、「自動車 NOx・PM 法」と「環境確保条例」への対応策は、低公害車と PM 除
去装置の購入の資金手当とそれに伴うコストアップをいかに吸収するかに絞られる。
低公害車、PM 除去装置の購入に際しては、国、地方自治体、トラック協会などから
補助金、利子補給などの助成措置が用意されている(P19∼20 の別表1、2参照)。
財源の制約の中で申込みが殺到したことにより、PM 除去装置購入の助成が受けられ
ない、急増した車両代替や PM 除去装置の需要にメーカーの供給が追いつかない、など
から 03 年 10 月の規制スタート時での1都3県の未対応トラックの割合は相当数にのぼ
った模様である(新聞報道によれば都県により異なるが小零細企業を中心に未対応率は
20∼50%程度とみられている)。このため、1 都3県では、メーカーの PM 除去装置や
低公害車の受注証明があれば施行後3ヵ月間(12 月まで)に限り規制の適用を猶予する
こととした。車両代替や PM 減少装置の装着は、来年度以降も新たに規制対象となる車
に対して必要となることから、引き続き助成制度やその財源措置について情報収集に努
め早めの対応が必要がある。
なお、PM 除去装置を装着しても NOx は減少しないため「自動車 NOx・PM 法」に
完全には適合せず、同法の対策地域内では猶予期間(8∼9年)経過後は車検が通らず
使用できなくなる。また、05 年に予定されているディーゼル車の新長期規制の実施によ
り基準規制値が厳しくなり、長期規制適合車や新短期規制を想定した PM 除去装置が基
準に満たなくなる危険がある。
このような状況変化に対応するため情報収集をしっかり行い、新長期規制を想定した
車両代替、PM 除去装置の設置などにより、重複投資を極力避ける必要がある。
車両代替や PM 減少装置購入に伴うコストアップに対しては、助成金・補助金の有効
活用、荷主企業への運賃値上げ要請、配車・運行経路の再点検による傭車の有効活用も
(注5)
PM 除去装置は二種類 (DPF と酸化触媒)あり、価格は4t 車用 DPF で約 120 万円、酸化触媒で約 30 万円と大きな開きがあ
る。車種・新車登録時点により適合する装置が異なり、概ね、短期規制適合以降の車は酸化触媒でよいが、短期規制にも適合しな
い車は DPF が必要となっている。
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含めた車両の効率的運行、地方同業者との提携により相互に地域別車両の使い分け、過
去の取引にとらわれない採算を重視した顧客と事業分野の見直し、輸送効率向上とコス
ト削減策の全社的取り組みなど様々な対応策がある。それぞれが自社の置かれている状
況を正しく認識した上で、自社にふさわしい対応策を計画的に実行していくことが重要
である。
ニ. 規制実施後の動き
東京都トラック協会の調査や新聞報道などから本年 10 月の排ガス規制実施後のトラ
ック運送業界を巡る状況をみると、①規制対応にかかるコストアップ分の運賃引き上げ
要求は輸送需要の停滞などを背景に荷主にはほとんど受け入れていない、②10 月前から
続いている規制に伴う廃業や減車により東京都内の運送業者のトラック保有台数は減
少傾向が強まっており、年末年始の輸送需要ピーク時での円滑な輸送に支障が出るおそ
れがある、③東京都トラック協会の PM 除去装置メーカーなどへの調査(11 月下旬実
施)によれば、
「環境確保条例」実施前にメーカーに発注しながら供給が間に合わず PM
除去装置装着や車両代替の対応ができなかった都内の営業用トラックのうち、3ヵ月間
の条例適用猶予期限内(本年内)でも対応ができない車両の割合は PM 除去装置で 32%、
車両代替で6%に達する見込みである、④1都3県の各自治体、各トラック協会の PM
除去装置に対する補助金の申し込み受付が 11 月を最後に終了した、などが主のものと
して挙げられる。
トラック運送業者の責めに帰さない事由により越年対応を余儀なくされる車両が残
るため条例適用猶予期間のさらなる延長とともに、来年度以降も新たに規制対象となる
車両が発生することから国、地方自治体、トラック協会などの補助金、利子補給などの
一定程度の助成措置の継続が強く望まれる。
3. 今 後 の 事 業 見 通 し と 環 境 変 化 へ の 対 応 策
(1)貨物需要など業界見通し
トラック運送業は、経営の小零細性や取引の従属性などの問題を抱えているが、貨物
輸送の中核的担い手として今後も重要な役割を果たすことになろう。そして、単なる量
的な貨物輸送の担い手にとどまらず、質的な面でも物流全体の効率化・低コスト化に寄
与することが期待されている。
今後の国内の貨物輸送需要量は、循環要因である景気回復のほか、荷主企業の物流ア
ウトソーシングのさらなる進展、リサイクルや廃棄物処理など静脈物流の需要の拡大な
ど、増加が期待できる面はあるが、サービス経済化、生産の海外シフトなどの構造要因
からすう勢的には大きな伸びは望みにくい。
物流に対するニーズは、引き続き低コスト化・効率化をベースに多様化・高度化する
と思われる。荷主における物流の合理化については、従来の部門単位、営業所単位から
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全部門的、全社的な取り組みとなり、運送業者に対してはコスト削減に加え、運送の多
様化、運送周辺を含めた総合物流サービスへのニーズが引き続き強まるといえる。そし
て、運送業者の対応力の違いで荷主による従来の取引関係にとらわれない発注選別が進
むと思われる。
トラック運送業の事業環境は、かかる荷主ニーズの多様化の進展に加え、既述の排気
ガス規制は 2010 年までに新長期規制より一段と厳しい規制値が導入されるほかに、安
全運行管理体制の強化、最高速度規制など社会的規制の強化(注6)や環境負荷の小さな海
運、鉄道との競合など今後とも激しく変化することが予想される。
こうした事業環境の変化はリスクを伴うが、反面、大きなビジネスチャンスを生むこ
とがあり、今後は、経営者の意識改革を伴った既存事業の再点検と見直しや経営の効率
化などへの積極的な挑戦が望まれる。
(2)今後の事業の進むべき方向性
トラック運送業者に対する荷主のニーズは、一方は物流の多様化、高度化であり他方
は低コスト化である。前者への対応には新たな設備投資や人材育成に伴うコストアップ
と運送効率の低下を招くこととなり、もう一方のニーズである運賃値下げへの対応とは
相容れない面がある。
運賃の値下げ要求への対応は、小零細規模事業者を中心に劣位にある荷主との力関係
からみてかなり難しい。運賃交渉を有利に進めるには、所要コスト(原価計算)をしっ
かりと把握し付帯サービス対価も含め説得力を持った交渉を行う、日頃から荷主が納得
するような合理的輸送サービスの提供に努め荷主物流の中核に食い込む、荷主の顧客先
のニーズにかかる情報収集など多面的な荷主貢献に努める、など荷主とのしっかりした
信頼関係を確立することが重要といえる。
物流の多様化・高度化ニーズに対しては、中小事業者は資本的・人的制約があり自社
の経営資源の実態に合わせ範囲を絞った形とならざるを得ないが、積極的に取り組む必
要がある。このため、常日頃から荷主の物流動向やニーズを早期・的確に把握し人材育
成などに取り組むための内部体制を整備すると同時に、信頼できる同業他社とのネット
ワーク化など外部資源の有効活用のための体制構築にも努めることが重要である。
トラック運送業者の進むべき方向性は、イ.運送専業に徹しコスト競争力や他と差別
化したサービスに特徴を持つ、ロ.運賃引下げ競争の厳しい運送部門以外の周辺分野に
進出し収益の源泉を多様化する、の二つに大きく分けられる。いずれに進むか、いずれ
に力点を置くかは、荷主との関係、保有経営資源、企業の経営方針などにより異なるが、
一般的には小零細企業は前者を選ぶ傾向があり、経営資源に相対的に余力があり、比較
的大手の荷主を抱える中堅企業は後者も選択肢となる。いずれにしても自社をとりまく
内外環境を総合的、多面的に検討し、経営戦略を明確にしながら自社の実態に合った形
(注6)
安全運行管理の強化は 03 年4月から実施され、点呼の強化、運行指示の徹底などを義務づけた。最高速度規制は事故防止を
目的に 03 年9月から実施され、車両総重量8t 以上または積載重量5t以上の大型トラックに対して時速を 90km以下に抑える速
度抑制装置 (約 20 万円)の装着を義務づけた。
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で計画的に進めることが重要である。イ、ロ、を進める際の留意点を整理すると以下の
とおりとなる。
イ. 運 送 専 業 に 徹 し コ ス ト 競 争 力 や 他 と 差 別 化 し た サ ー ビ ス に 特 徴 を 持 つ
①荷主・扱い荷・地域・事業分野を絞り込むなど得意分野への経営資源の重点投入によ
り他社に負けない領域を持つ。特に、過去から蓄積したノウハウなどの経営資源を再
点検しその有効活用を図る。
②過去からの一荷主・一トラック・一運転手の組み合わせなどにとらわれずに配車・運
行経路を抜本的に見直し、車両稼動時間の増加など効率的な運行体制を再構築する。
③同業者との共同運行、荷主の協力を得た積み合せ運送などで輸送の効率化を図る。
④インターネットの活用も含め営業活動の積極化による新規顧客の開拓に努め、受身的
取引から脱却する。
⑤トラックの保有台数に固執せず、必要なら減車を伴う選別受注も含めて赤字受注を排
除する。
⑥時間管理の徹底など品質向上に努める一方で、利益管理体制を強化して従業員のパー
ト化や傭車の活用などコストダウンによる収益力向上を図る。
ロ. 運 賃 引 下 げ 競 争 の 激 し い 運 送 部 門 以 外 の 周 辺 分 野 に 進 出 し 収 益 の 源 泉 を 多 様 化 す る
①荷主の周辺分野のニーズが一過性でなく継続することをしっかり見極めて必要とな
る設備投資、人材育成、新たなノウハウの習得を行う。また、設備投資などは多くの
荷主にも通用する汎用性を持ったものとする。
②同業他社、荷主などとの共同化、ネットワーク化を推進し外部資源の有効活用を図る。
③荷主のニーズや物流の実態を多面的に把握する一方で、過去の多くの取引経験を生か
しコスト削減につながる効率的物流システムを提示できる能力を持つ。
④荷主との情報オンライン化による在庫などの物流管理、流通加工サポートなどを通し
て荷主貢献に努め、荷主物流の中核に食い込む。
⑤保有経営資源を再点検し、できる分野から進出し逐次その範囲を拡大していくという
スタンスを持つ。
4.企業事例の紹介
前章(2)イ、ロ、で示した運送専業型と周辺分野進出型の企業について、それぞれ
2∼3社づつ事例を紹介する。
(運送専業型)
( 1 ) ( 株 ) イ ズ ミ 物 流 東京都
業歴 17 年、年商 16 億円、従業員 300 人、保有車両台数 200 台、
得意先 大手製パンメーカー、ファミリーレストランなど
イ.主要荷主のニーズにきめ細かく対応
大手コンビニ向けの弁当の配送などを行っていたが、かねてより受注活動を行ってい
た大手製パンメーカーから3年前にクリスマス用ケーキの配送を受注したことを契機
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に、同社の配送アウトソーシングの流れに乗り、現在は同社の 10 ヵ所以上の工場と取
引し運送下請けの中で上位にランクされるまでなった。
同社は3年前まで自社配送を行ってきたこともあり、多頻度・広域・時間指定配送を
行う運送業者との取引が少なかったこともあるが、当社が短期間で上位の座を占めるま
でになったのは以下の理由による。すなわち、①関連会社がすでに有していた他のパン
メーカー製品の時間指定配送のノウハウを生かし、時間精度の高い運送が実行できた、
②大手コンビニ向けの弁当配送に利用していたチルド車を転用できた(弁当配送は大手
コンビニ系列の運送会社に移管)、③車両の増車、チルド化、大型化並びに営業所の増
設などで同社のニーズに積極的に応じてきたなどにより、他の運送会社との差別化を実
現できたことによる。当社としては総力を挙げて同社に対して配送アウトソーシング化
のメリットを提供し得たといえる。
当社は倉庫、配送センターなどへの設備負担を伴う周辺分野への進出は今後も難しい
と判断し、引き続き運送そのものの品質の確保を強みとした事業展開を行う予定である。
ちなみに、品質確保のため、コスト管理を強化しながら運送はすべて自社社員と自社車
両で行い、傭車は行わないという徹底ぶりである。
ロ.排ガス規制は計画的対応でクリヤ
排ガス規制対策については、コストアップ分は荷主への転嫁が困難であり、また、ト
ラックメーカーも需要拡大を背景に、値引きには応ぜず車両代金の支払いも長期の車両
手形を極力避けるといった厳しい状況にある。
こうした中、当社では荷主だけでなく、荷主の取引先(コンビニなど)も運送業者の
排ガス規制への対応状況を厳しくみるようになっている。当社では規制強化とそれに伴
う荷主からの対応要請の流れを早くから意識し、計画的に車両代替、PM 除去装置の装
着の準備を進め、現在では全車両が規制をクリヤし、むしろそのことを武器に営業活動
を行うほどである。これも運送品質の追求で顧客の信頼を得る当社の営業戦略の一環と
いえる。
( 2 ) 新 星 陸 運( 株 ) 東京都
業歴 47 年、年商9億円、従業員 70 人(うち運転手 50 人)、保有車両 68 台(トラク
タ 35、小型積載車5,セミトレーラ 28)、得意先 ゼロ(日産自動車系の物流会社)、
ジャパンビークル(日産ディーゼルの物流子会社)、輸送機工業(富士重工系トレーラ
メーカー)など
イ.車両稼働時間の増加などの輸送効率向上に工夫
事業内容は、日産自動車の主に北陸地区ディーラー向け乗用車の運送(新車のほかに
中古車も含む)、日産ディーゼルのトラックの陸送、弱電部品などの一般貨物運送であ
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る。売上の6割を占める乗用車運送は、従来は量産規格車をまとまったロットで特定場
所に輸送することが多かった。しかし、最近は顧客のニーズに合わせた少量生産が増え、
ディーラーの在庫削減とも相俟って多くの場所を巡回しながら小ロットかつ時間指定
輸送する形態が増えている。当社は運行経路の見直し、運送体制の変更(従来の1台1
人から2台3人体制)などにより車両稼動時間の増加、輸送効率の向上を図っている。
トラックの陸送は、コストの大半が人件費、燃料費、交通費(陸送後の帰りの汽車賃)
で、削減の余地が乏しいため、価格引下げを吸収しにくい分野である。しかし、現在は、
排ガス規制に伴う買い替え需要の拡大によりフル稼働状態で運転手の増員に追われる
繁盛ぶりとなっている。
ロ.助成制度や荷主からのつなぎ融資を活用して全車規制をクリヤ
当社は以前は8年程度のサイクルで車両を更新してきたが、バブル崩壊後の収益悪化
から更新を繰り延べ、結果的に使用年数の長い車が増えている。トラックデーィラーが
長期割賦の車両手形での販売に慎重になっている環境下、当社は1億円以上を必要とす
る車両の更新投資に地方自治体の助成制度を上手く活用し規制をクリヤした。この際、
補助金や融資金の調達までの間、得意先から1千万円のつなぎ資金の融資を受けるなど、
資金調達の円滑化に努めている。
( 3 ) 東 京 液 体 運 輸 ( 株 ) 東京都
業歴 38 年、年商5億円、従業員 24 人、保有車両(LPG タンクローリー)24 台、
得意先 コスモ石油ガス 70%、LPG 卸・小売業者の配送 30%
イ.荷主からの運賃値下げ厳しくコスト削減、輸送効率向上の対応に追われる
コスモ石油ガスの運送業者で、同社の千葉県五井製油所から LPG を顧客の工場、LPG
販売会社、地方ガス会社などに配送してきた。
従前はコスモ石油ガス依存度が 100%であったが、徐々に取引依存度引き下げを図り、
現在は LPG 販売業者からの直接受注による配送が売上の3割を占めている。
近時、石油関連業界においても相次ぐ運賃の値下げが行われ、提示した価格で受けら
れなければ他業者に発注を移すという厳しいスタンスが取られている。その一方では、
安全運転、時間指定の確実なデリバリーが要求される。
当社は運賃値下げに対し、人員削減とパート化や社有車の減車と傭車依存の拡大によ
る固定費削減並びに長距離と短距離の運送組み合わせによる配車回転率のアップなど
で対応している。今後は、他社とのグループ化による配車の相互融通による輸送効率向
上も大きな課題である。
ロ.車両代替・PM除去装置の装着で排ガス規制はすべてクリヤ
排ガス規制強化への対応として、保有車両 24 台のうち7台代替(昨年4台、今年3
台)、DPF 装着3台、酸化触媒装着 14 台で 10 月からの規制を全てクリヤした。
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当社としては、行政側の監視への対応はもちろんであるが、荷主や荷主顧客からの規
制適合への要請の強まりから対応をスピードアップさせた。
(周辺分野進出型)
( 1 ) 大 沢 運 送( 株) 埼玉県
業歴 38 年、年商 25 億円 従業員 160 人、保有車両 90 台、物流センター・倉庫 10 ヵ
所(普通倉庫業免許、保税蔵置場許可、通関業許可を取得)、得意先 樹脂メーカー、
建材メーカー
イ.総合物流企業への脱皮により荷主との関係緊密化を図る
当社は、運送から倉庫・保税蔵置場・貿易まで顧客の多様なニーズに応えることがで
きる総合物流企業で、売上構成は、運送 70%(自車売上、傭車売上は半々)、倉庫 25%、
構内作業5%(フォークリフトによる運搬、出入庫)となっている。
激しい国際競争に見舞われている荷主企業からは物流全体のコストダウンニーズが
増加し、運送だけでなく保管・加工などの機能を担えるトータルのコーディネート力の
優劣が受注確保の鍵を握るようになってきた。このため、当社は 96 年の倉庫業の免許
取得以降、積極的に物流センター・倉庫を建設し、さらに顧客向けに在庫確認や配車状
況などをリアルタイムで情報提供するためのコンピューターネットワークシステムを
構築するなど、単なる運送業からの脱皮を図ってきた。当然、多額の設備投資負担を必
要としたが、荷主企業との関係緊密化が図られ結果的に厚い信頼感を勝ち取ることに成
功した。
総合物流業への転換を目指す経営戦略の下、顧客の動向など自社を取り巻く環境の変
化を見逃さず、自社の体力を十分に勘案しながらタイミングよく実行してきたためとい
える。総合物流企業を目指した経営戦略が正しかったと自負しており、今後も投資負担
は大きいが、将来性のある倉庫部門に力を入れていきたいとしている。
ロ.固定費削減など収益力を強化し投資負担などに対応
倉庫など設備投資負担、やや遅れ気味の排ガス規制対応や運賃などの低価格化対応な
どが課題となっている。このため、①人員圧縮や社有車の削減と傭車化の推進による固
定費削減、②多頻度・小ロット・短納期配送の効率化のための荷主の協力を得て積合わ
せや同業他社との共同配送を増やす、など収益力強化を推し進めている。
( 2 ) 岡 野 運 送( 株 ) 埼玉県
業歴 65 年、年商 15 億円、従業員 240 人(運転手 150 人)、保有車両 120 台、
取引先 食品関係 10 数社
イ.運賃交渉、品質向上などで特色ある工夫 ・努力を行っている
得意先は、食品関連の大手企業が中心で、扱いは食品に特化している。単なる運送だ
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けでなく荷主の配送センター(2ヵ所)内に従業員を配置し、コンピュータシステムに
よる受発注管理、在庫管理、ピッキング、仕分け、検品、積込み、包装などのトータル
サービスを手掛けている。倉庫・配送センターの建設は、資金固定化や荷主の物流量・
物流拠点の変化によるリスクを回避するため、自前では行わない。荷主が必要とする場
合は、農家など地主を紹介し荷主自身による倉庫建設または地主建設倉庫の借庫を薦め
ている。
運賃など料金の値下げ要請は強いが、荷主とは文書での契約を締結し少なくとも契約
期間中の値下げを回避する一方で、契約更新時でも値下げにより赤字となるものは取引
途絶を覚悟で断固断っている。当社の堅実な仕事振りに加え、荷主が新製品を発売する
時は当社社員に試食させその評価をフィードバックするなどの付帯サービスの提供努
力が顧客に評価され、無茶な値下げ要求は受けていない。
「品質なくして価格なし」をモットーに品質向上に注力している。品質向上には社員
の質を高めることが不可欠との認識の下、品質保証国際規格ISO9002 の認証取得(00
年 11 月)、ドライバー・マニュアルに基づいた安全運転教育、ドライバーの日常点検
(唱和、点呼など)の励行によるトラブル・事故防止に注力している。また、傭車はコ
ストが安いだけではなく品質面にも留意して傭車先を選定し、傭車先運転手も社内ミー
ティングに参加させている。
ロ.排ガス規制をクリヤしたことを文書で荷主に通知し関係強化を図っている
当社は排ガス規制を車両の買い替え、PM 除去装置の装着などクリヤしており、その
ことを荷主に対して文書で通知し、この問題に対する荷主の注意喚起を促すと同時に安
心感を与えるようにしている。
また、排ガス規制への対応を機に減車による採算重視の営業活動も進めている。運賃
の値下げ要請が強まる厳しい受注環境の中で、売上より利益を重視し減車による赤字受
注回避を行っている。換言すれば量から質への転換である。
以 上
(伊藤 隆)
参考文献>
全日本トラック協会編 『トラック輸送産業の現状と課題』 全日本トラック協会、2002 年
全日本トラック協会編 『経営分析報告書』 全日本トラック協会、2002 年
中田信哉、長峰太郎共著 『物流戦略戦略の実際』 日本経済新聞社、2000 年
森田富士夫著 『トラック業界・改革なくして高収益なし』 エール出版社、2001 年
日本創造経営協会編 『トラック経営革新』 同友館、1999 年
本レポートは、情報提供のみを目的とした上記時点における当研究所の意見です。施策実施等に関する最終決定は、
ご自身の判断でなさるようにお願いします。また当研究所が信頼できると考える情報源から得た各種データ等に基づ
いてこの資料は作成されておりますが、その情報の正確性および完全性について当研究所が保証するものではありま
せん。
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(別表1) ディーゼル車の排出ガス規制に伴うPM除去装置に対する補助金
国土交通省
NOx・PM法の対策地域
対象者 内を走行する車の所
有者
単年度DPF換算で6基
以上又は導入率10%
以上を導入する者
(酸化触媒3=DPN1)
車両総重量8t超で
対象車両 初度登録が93/10∼
03/3の車両
東京都
東京都内の中小企業で都
内を使用の本拠とする
ディーゼル車を所有し
又は所有者の承諾を得て
使用する者
対象装置 国、地方公共団体
が認定した装置
対象経費 装置と装着費用
補助率 対象経費の1/4
都知事が指定した装置
東京都トラック協会
使用の本拠の位置が東京
都内の営業用車両を使用
する会員事業者
車両重量3.5超の都内登録 下記3要件を備えた車両
車で初度登録が01.9.20
・車両総重量3.5t超
以前の車両
・初度登録が98.3以前
・94年排出ガス規制(短
期規制)適合車及びそれ
以前の規制車両 都知事が指定した装置
装置と装着費用
対象経費の1/2
装置と装着費用
○下記3条件を全て満
たす場合は対象経費
の1/4
なお、地方公共団体
・1∼30台までの車両
又はトラック協会
・初度登録が97/3まで
から協調補助金を受
の車両
ける、国の他の補助
・国土交通省の補助対
金を重複して受けな
象外の車両
い、ことが受給要件
○下記のいずれかに該当
となる。
する場合は対象経費の
1/8、但し国と地方公
共団体との併用は3/4
・31台目以降の車両
・初度登録が97/4∼
98/3の車両
補助限度 上限なし。
○車両総重量8t超
○車両総重量8t超
額(1台
酸化触媒 ・補助率1/4の場合
当り)
20万円
酸化触媒10万円、DPF20万円
DPF ・補助率1/8の場合
40万円
酸化触媒、DPFともに5万円
○8t以下3.5t超
○8t以下3.5t超
酸化触媒 ・補助率1/4の場合
10万円
酸化触媒5万円、DPF15万円
DPF ・補助率1/8の場合 30万円
酸化触媒、DPFともに2.5万円
(備考)国土交通省、東京都、全日本トラック協会、東京都トラック協会のHP、パンフレット、取材
をもとに信金中央金庫総合研究所が作成。なお、各自治体や地区トラック協会により助成
内容が異なる場合があるため、該当自治体などに確認する必要がある。
また、1都3県の自治体、地区トラック協会いずれも03年度の予算を使い切ったため東京都、
東京都トラック協会の03年11月を最後に申込受付は終了している。
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(別表2)ディーゼル車の排出ガス規制に伴う低公害車購入に対する融資・補助金
中 小 ・ 国 民 公 庫 、 国 交 省 等 東京都
○政府金融系金融機関
東京都内の中小企業者
中小企業者
○補助金
一般貨物自動車運送
業者
第ニ種利用運送業者
自動車リース事業者
○融資 中小・国民公庫 ○融資あっせん
1.NOx・PM法の対策地
1ディーゼル車特別融資
域に使用の本拠を有する 使用ディーゼル車を車両
排出基準非適合車を適合 総重量が同等の新車に買
車に買い替える、同地域 換え、都内登録が必要
に使用の本拠有する適合 ・3.5t超は最新規制適
対象車両 車を取得、リースする。 合のディーゼル車など
2.対策地域外に使用の ・3.5t以下は最新規制
本拠を有する非適合車を 適合のガソリン車など
適合車に買い替え、対策 (ディーゼル車除く)
地域外に本拠を有する
2低公害化促進融資
適合車を取得、リース
対象は上記1並びに都指
する。
定の低公害車(増車可能)
○補助金(国交省または ○補助金
経済産業省)
3.5t超の都内に登録する
車両総重量3.5t超のCNG、CNG車への買い替え
ハイブリット車など
ただし、国又はトラック
但し、購入する場合は単 協会から協調補助金を
年度3台以上導入する、 受ける必要がある。
地方公共団体又はトラ
また、03年10月以降は
ック協会から協調補助金 条例違反車両の更新は
を受ける、国の他の補助 対象とならない。
金を重複して受けない、
ことが要件となる。
融資限度 ○中小・国民公庫
○融資限度
中小 7億2千万円、 上記1 3千万円
国民 7千2百万円
上記2 1億円
東京都トラック協会
使用の本拠の位置が
都内の営業用車両を
使用する会員事業者
補助率
補助限度
○補助率・補助限度額
CNG・ハイブリット車は
通常車両価格との差額
に対して補助限度額だけ
定めている。
補助限度額はCNG・ハイ
ブリット車で積載量
2t以上4t未満21.5万円/台、
同4t以上53万円/台
対象者
○補助率・補助限度 ○補助率・補助限度
CNG・ハイブリット車は
CNG・ハイブリット車は
価格の1/4又は通常車両
通常車両価格との差額の
価格との差額の1/2のう
うち国の負担分を除いた
ち少ない額
額の1/2
補助限度額はCNG車、 補助限度額はCNG・ハイ
ハイブリット車で積載量 ブリット車で車両総重量
2t以上4t未満59万円/台、8t超40万円/台、同3.5t
同4t以上173万円/台
超8t以下30万円/台
○融資あっせん
最新規制適合車(長期
規制・新短期規制適合
車)
03年10月以降は都条例違反
車両の更新は対象とならない。
○補助金
CNG車、ハイブリット車
などの購入またはリース
国又は東京都の補助金を
利用することが必要
○融資限度
3千万円(前倒し買替
は3千万円上乗せ)
融資利率
固定利率(03年11月30日)1は長プラ+1.35%
長プラ 協会が1.2%の
貸付期間10年 特利
2は長プラ、いずれも
利子補給
上記1 1.25% 期間で 都が1/2補助
上記2 1.75% 異なる。
信用保証
1 4.5%、2 0.4∼0.9%
率
いずれも都が2/3補助
担保
中小 必要
1購入車両、2一部必要
融資窓口の商工中金の
保証人 国民 いずれかが必要
1不要、2 5千万超必要 判断による。
(備考)図表11に同じ 03年度の融資のあっせん、補助金の受付期間は、東京都トラック協会は
04年1月までの予定。なお、東京都のディーゼル車特別融資は今年度限りとなっている。
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(産業企業情報)
号 数
題 名
発行年月
15−1
中小企業の財務管理
−財務をめぐる環境変化と改善の進め方−
2003 年 4月
15−2
厳しい事業環境下で正念場を迎える内航海運業界
−競争的市場構造への対応が急務−
2003 年 8月
15−3
中小企業再生支援協議会の制度概要とその現状
2003 年 8月
15−4
大口債務先の経営改善支援の手順・ポイント
−大・中規模の温泉旅館のケーススタデイを中心に−
2003 年 9月
15−5
中小企業の経営改善支援事例
−空調ダクト事業者を事例として−
2003 年 10 月
15−6
中小企業の経営改善支援について
−非鉄金属鋳物製造業を事例として−
2003 年 10 月
15−7
金型産業の現状と今後の方向
−問われる国際競争力と企業の対応−
2003 年 10 月
「ヘルスケア・サービス」の重要性と今後の展開
15−8 −コミュニティ・ビジネスの一領域として信用金庫に求められる積 2003 年 11 月
極的対応−
*バックナンバーの請求は信金中央金庫営業店にお申しつけください。ご意見をお聞かせくだ
さい。
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産業企業情報 15−9
2003.12.17
©信金中央金庫 総合研究所
信金中央金庫 総合研究所 行
今回の産業企業情報(15−9)について
今後、取り上げてもらいたいテーマ
信金中央金庫 総合研究所に対するご要望
差し支えなければご記入ください。
年 月 日
貴金庫(社)名
ご担当部署・役職名
御芳名
御住所
(お取引信用金庫名)
ありがとうございました。信金中央金庫営業店の担当者にお渡しいただくか、総合研究
所宛ご送付ください。
(〒104−0031 東京都中央区京橋3−8−1)
(E-mail:[email protected])
(FAX:03‐3563‐7551)
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