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シリアルの波に乗り成功を手に

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シリアルの波に乗り成功を手に
シリアルの波に乗り成功を手に
Donald Telian / Technologist, Cadence Design Systems, Inc. [email protected]
マルチギガビット・シリアル・リンクの設計プロセスをいかに加速させるか。
マルチ・ギガヘルツ(MGHz)のシリアル・テクノロジへの移行
ミッタのインピーダンスを変えると、赤で示した信号のように回路
は、津波規模の変化に対応する海の変化を表しています。製品設計
動作がさらに大きく乱れます。赤の信号は、青の例よりも確定的に
は今、シリアル・データ転送のスピードとスループットに適合させ
見えますが、この例のトランスミッタは、シリアル・データを抽出
るために業界の様々な方面で変革がなされつつあります。
するのに、レシーバのしきい値を満たすだけの電圧振幅を回路に与
ここでは、ザイリンクスのSerial Tsunamiイニシアティブのパ
ワーをいかに活用するかを紹介します。また、技術者が現在すでに
利用している有用なツールや効果的な手法についても検討します。
えていません。
マルチ・ギガヘルツのシリアル・リンクを正しく機能させるに
は、以下が必要となります。
●必要な電圧振幅に対応するようにトランスミッタのサイズを調整
効率の良いデータ転送
ビットをマルチ・ギガヘルツ・シリアル・リンクで移動させるに
しろ、お金を銀行口座に移すにしろ、すべてのデータを間違いなく
確実に転送することが重要です。簡単にデータを失うわけにはいき
ません。
図1は、マルチ・ギガヘルツ・デザインに関する2種類のデータ
転送を示しています。上部は、シリアル・リンクそのものを表しま
する。
●伝送媒体の差動インピーダンスを理解する
(Z_differential は通
常 2*[Z_uncoupled - Z_coupled])
●終端抵抗を用いてレシーバの入力の2つのネット間でインピーダ
ンスを整合させる。
●詳細な特性データを取得し、相互接続の不連続性や動作(ビア、
コネクタ、誘電損失)を考慮する。
す。データはトランスミッタ(Tx)により送出され、差動相互接続を
介して転送された後、レシーバ(Rx)で受信されます。すべての要素
が互いに整合がとれていなければ、効率の良いデータ転送は行われ
図1 シリアル・リンクとそのデザイン・チェーンにおける効率良い
データ転送
データ・ソース
ません。伝送媒体は、3つの要素(Tx、伝送媒体、Rx)すべてが
伝送媒体
データのユーザ
うまく整合するように慎重にデザインする必要があります。
同様に、図1の下部は、ザイリンクスのシリアル・テクノロジと
ユーザの設計プロセス間のデザイン・チェーンを示しています。シ
シリアル・
リンク
Tx
差動
相互接続
Rx
リアル・リンクの場合と全く同様に、データ転送を問題なく実行す
るには、ユーザの設計プロセスに適合する媒体でザイリンクスのテ
クノロジをユーザに提供しなければなりません。
ザイリンクスはCadence社と共同で、ザイリンクスVirtex-II
ProTM FPGAに搭載されているRocketIOTM マルチ・ギガヘルツ・
トランシーバの動作を効率良く伝達する手段として、
SPECCTRAQuestデザイン・キットを開発しました。ザイリンク
デザイン・
チェーン
ザイリンクスの
テクノロジ
SPECCTRAQuest
デザイン・キット
ユーザ・
デザイン
図2 シリアル・リンクのいずれかのコンポーネントが不整合の場合、
性能に悪影響を及ぼす可能性があります。
スとCadence社とのパートナシップについて、またこのキットを
利用してユーザの設計プロセスを加速させ、より優れた製品を開発
する方法については後ほど詳述するとして、まずマルチ・ギガヘル
ツ・シリアル・リンクについて詳しく示します。
シリアル・リンクの動作
シリアル伝送の有効性を判断する一般的な方法として、アイ・ダ
イヤグラムの「開き(opening)」を測定するやる方があります。図
2は、少しずつ異なる3つのテスト・ケースで受信した信号のア
イ・ダイヤグラムを重ね合わせたものです。緑で示した信号の回路
は、トランスミッタ、相互接続配線、レシーバのインピーダンスの
すべてがうまく整合がとれています。この点で、3つの要素すべて
が連携して許容範囲の振幅をもつアイ・オープニングが見られ
ます。
図2の他の2つの波形は、3つの要素のうち1つだけアンバランス
RocketIOデザイン・キットSPECCTRAQuest
となった場合の結果を示しています。青で示した信号の回路は、伝
ザイリンクスは、マルチ・ギガヘルツ設計プロセスの不連続性を
送ラインのインピーダンス不整合の結果、信号が誤動作したりア
有することも考慮した上で、Cadence社の高速PC基板デザイン・
イ・ダイヤグラムの開きが崩れたりしています。しかし、トランス
ツール用のRocketIOデザイン・キットSPECCTRAQuestの開発を積
3-1
極的に進めました。このキットは、最初2002年3月にVirtex-II Pro
技術者も熟知している状況の中でRocketIOシリアル・トランシー
FPGAとともに市場導入され、その時点でXcell誌に掲載されました
バを説明しているためです。
(support.xilinx.co.jp/publications/xcellonline/partners/xc_
speckit42.htmを参照)。SPECCTRAQuestキットは、ユーザの設
ICからPC基板への橋渡し
計プロセスに適合する直接挿入可能な電子ファイルやモデルを提供
シリアル・リンク内のすべての要素を適合させる必要があるのと
することにより、RocketIOテクノロジのインプリメントを支援す
同様に、シリアル・デザイン・チェーンの要素も整合をとる必要が
るものです。キットに含まれるマルチメディアのチュートリアルを
あります。しかし、ザイリンクスはここで課題に直面しました。す
利用すれば、必要なステップを即座に理解することができます。
なわち、PC基板の設計者が一般に使用しているモデルのフォー
Tellabs社の技術者、Mohammad W. Ali博士は、キットにより
マットは、この新しいテクノロジでは機能しないものだったのです。
自らの設計プロセスのスループットと品質が大幅に向上したことを
実際、RocketIOトランシーバを唯一正確に表しているのは、その
実感しました。博士は「デザイン・キットの中の新しいシリコン・
シリコンを設計するのに使用したモデルであり、ICの設計ツールで
パッケージ・ボード・ソリューションのお陰で、時間を大幅に節約
しか機能しないICレベルのモデルだったのです。
できます。特に、私のように種々の手法で配線された2.5 GHz差
図1に示すように、SPECCTRAQuestデザイン・キットは、こ
動ペアを含むマルチボード・シミュレーションを行っている場合は
の問題に応えてICとPC基板の両方のモデリングの世界を橋渡しす
とりわけ有効です。このSPECCTRAQuestキットに含まれている
る有効な「伝送媒体」となりました。SPECCTRAQuestキットに
新しいインターフェイスを使用すれば、10∼20倍も高速なシミュ
採用されている新しいテクノロジにより、複雑なICモデルをもつい
レーションが可能です」と述べています。
ずれのPC基板レイアウトもシミュレーション可能となりました。
RocketIOトランシーバにより、信号伝送のスループットは1桁
これには、高速なPC基板の設計プロセスで通常見られる
向上しました。 また、これに付随するデザイン・キットにより、
SPECCTRAQuestのユーザ・インターフェイスからのすべてが含
設計プロセスのスループットも同様に向上しました。これはマル
まれます。もしザイリンクスがPC基板の技術者に対して新しいIC
チ・ギガヘルツのデザインに取り組んでいる場合でも同様です。
シミュレーション・ツールの習得を要求していたら、その技術者の
デザイン・チェーンに不整合が生じ、RocketIOトランシーバは採
デザイン・チェーンの最適化
用されなかったでしょう。
優れた技術だが難しくて利用できないと言われるテクノロジがす
Applied Materials社の技術者、Wenwei Qiao氏は、ザイリン
べて、実際にそのように優れたものであるとは限りません。これま
クスとCadence社のキットに入っている複雑なシリコン・モデル
で新しいテクノロジが成功を見なかったのは、それらが単に入手す
をSPECCTRAQuestの環境で利用することにしました。理由は、
るのが困難であったり、複雑すぎて使いこなせなかったことが理由
それらのモデルが、IBISスタイルのモデルのようにずっと容易に使
です。このため、高速シリアル通信を成功させるために解決すべき
えるからです。
「インストールしてからわずか10分で、マルチギガ
パラレルに関する2つの問題を図1に示します。
ビット・ソリューションのシミュレーションを開始できました」と
1. シリアル・データをトランスミッタからレシーバに適切に転
送する
2. ザイリンクスがシリアル・テクノロジをユーザに
確実に提供する
同氏は語っています。このユーザ・インターフェイスにより、何千
というテキストベースのモデルやネットリストに苦労して目を通す
図3 デザイン・チェーンとサプライ・チェーンの比較、ならびにデザイン・キット
の役割
2つ目の問題に絞って見てみると、これは「デザイ
ン・チェーンの最適化」の問題になります。デザイ
デザイン・チェーン
サプライ・チェーン
展開
流通
エンジニアリング
製造
展開
流通
ン・チェーンを最適化することは、RocketIOキットが
提供すべき10∼20倍の設計作業の改善を行う唯一の
A社
方法です。
図3は、このデザイン・チェーンについて示したもの
です。「デザイン・チェーン」という用語は「サプラ
イ・チェーン」ほど一般的でないため、それぞれの機
能と互いの関係が理解しやすいように、この両方を示
しています。デザイン・チェーン内では、モデル、
EDAファイル、データベースの形式をとる「仮想コン
B社
コンポーネント・
キット
ポーネント」が含まれているデザイン・キットが、あ
デザイン・
る企業のテクノロジを展開するグループから、もう一
キット
エンジニアリング
製造
展開
流通
エンジニアリング
製造
方のエンジニアリング・グループに送られます。
ザイリンクスの例では、RocketIOキットを使って、
マルチ・ギガヘルツ・テクノロジがどういうものかを
ザイリンクスの顧客に効率良く伝えます。この作業は、
C社
変更の多いテキスト形式のデータシートを使わずに、
ユーザの設計プロセスに容易に挿入可能な電子ファイ
ルを提供することによって行います。これらのファイ
ルは世界中の技術者がすぐに理解できる「実行可能な
仕様」と言えます。なぜなら、RocketIOキットはどの
3-2
代わりに、設計作業に注力して製品の品質向上を図ることができ
ます。
モントリオールに本社を置くソフトウェア無線(SDR)ソリュー
ションのプロバイダ、Radical Horizon社のハードウェア技術者で
あるStephane Tessier氏は、このキットがマルチギガビット・リ
ンクの開発に「不可欠な製品」であることを認めています。同氏は、
キット内のチュートリアルで短時間で習得が可能で、このキットに
より「ボードのシミュレーション回数を減らすことができる」と考
えています。
結 論
キットを現在使用している技術者に対するアンケート調査から、
その技術者全員がキットがシリアルマルチ・ギガヘルツ・デザイン
に有用であると考えていることがわかりました。またすでに、技術
者の75%が、ザイリンクスとCadence社とのこの共同開発キット
を使用すれば製品の品質向上に役立つと考えています。
2002年においてSPECCTRAQuestとRocketIOの2つのデザ
イン・キットの統合は、ザイリンクスSerial Tsunamiイニシアテ
ィブの不可欠な要素となり、EDN誌による2002年度のトップ製
品100に選ばれました。
Serial Tsunamiは完成していますが、常に進化しています。こ
のシリアルの波に乗る技術者の仲間入りをするには、
SPECCTRAQuestデザイン・キットの無償コピーをダウンロード
してください。次期デザインには、マルチ・ギガヘルツ・シグナリ
ングのパワーを搭載することができます。
追加情報
SPECCTRAQuest RocketIOデ ザ イ ン ・ キ ッ ト は 、
support.xilinx.co.jp/support/software/spice/spicerequest.htmから無償でダウンロードできます。その際、登録と
クリックによるライセンスの守秘義務契約が必要です。
Cadence社のSPECCTRAQuest (SQ)ならびに他の無償SQデ
ザイン・キットに関する情報は、www.specctraquest.comで入
手できます。
デザイン・チェーンの最適化に関するエグゼクティブによる白書
は、http://register.cadence.com/register.nsf/designChain/か
ら入手可能です。
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